■参考資料
Child Pornography: An Internet Crime
Max Taylor (著), Ethel Quayle (著)
ペーパーバック: 248 p ; サイズ(cm):
出版社: Brunner-Routledge ; ISBN: 1583912444 ; (2003/05/01)
■Child Pornography: An Internet Crimeの研究対象と方法論
・研究内容は児童ポルノ画像(写真)と児童ポルノをダウンロードした受刑者とのインタビューの分析である。
・児童ポルノの閲覧と接触犯罪(強姦等の、実際に児童に接触して行われる性犯罪)関係については、接触犯罪も行っていた受刑者とのインタビューを元に、個別の事例における犯罪発生のメカニズムを分析している。
・殆どすべての議論において実在児童の写真を前提としている。そのため、漫画やアニメ等は検討の対象になっていない。
検証者よりの注釈と結論
両博士の著書においては、例えば「接触犯罪の正当」と「ダウンロードの正当化」という、全く異なる行為の正当化事例として同じ証言が引用されています。
また、別の部分では、受刑者が画像収集行為と接触犯罪を区別することによって画像のダウンロードを自己正当化していることを紹介しつつ、他方で「児童が電子画像に縮小される(the child is reduced to an electronic image)」という、いささか一般的には理解しがたい概念をもとに、画像収集行為を批判しています。「電子画像に縮小される」とは、画像を加工、整理などしている過程で、画像が児童虐待によって作られているという意識が欠落していくという概念で、あるいは写真と被写体とを同一視するスーザン・ソンタグの写真論が背景にあるものではないかと推測されますが、いずれにしても犯罪をテーマにした研究において、あからさまに特定の価値観に依拠した判断基準を持ち込むことは好ましくありません。
両博士のポルノ規制に対する考え方にも現われていますが、両博士は最初から「ポルノは規制すべし」との結論を用意したうえで研究に着手したのではないかとの疑念を抱かせるような内容であり、少なくとも「法規制の根拠とするにはあまりにも客観性、公平性にかけた研究」ではないかと考えます。
海外の研究に頼らずとも、国内にも児童ポルノ問題に詳しい専門家は存在しており、例えば大阪弁護士会の奥村弁護士は『「所持」の禁止は問題が生じかねない。むしろ「譲受」を禁止すべき』とか、あるいは『(児ポ法の改正に)旅行業法の改正を盛り込む必要があるのではないか?』など、ご自身のブログで興味深いご意見を披露されています。まず、国内の専門家から話を聞くなど、地に足の着いた地道な調査が求められているのではないでしょうか?