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【ミ】『The Mission is Your Life』

117稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/14(金) 01:04:40
>>116
「くそ…自分でそうできねえように仕込んでる癖によく言うぜ。しかし………
 あのオッサン、そんなのオレでも的外れだって分かるっつの。適当言いやがって…」

会場の熱に浮かされてたと思ったが、そいつは単なる痛みの副作用っぽいな。
それより問題なのは、それと並行して続く『眠気』………
痛みすら感じず、騒音の方がむしろ『苦痛』に感じる有様…。
アイツも痛みは感じていねえようだが…動きが乏しいのは何でだ?
案外、あいつも『眠気』の影響を受けているのかもしれねえな…。
上手くコントロールしてるらしいし、そこにつけいる隙はあんまりなさそうだが。

だが、じゃあどうすりゃあ良い?
アイツのスタンド能力は未だに読めねえ。
というか、アイツはまだ目立った動きを何もしてねえ。
殴ったり、蹴ったり…そんな怪しげな行動は一切してなかった。
にも拘らず、俺は異常な『眠気』を覚えてる…この理由はいったい?

……………。

オレの身体に不調が出始めたのは、コイツのつまんねえコントを聞いたときから。
『眠気』が覚めるような行動なら、オレは何度もとっていたはずなんだ。
肘撃ち、銃弾回避、銃撃、それから鼓膜破壊…どれも、
眠気が覚めるには十分な行動だったはず。にも拘らず現実に俺は今もダルい。
つまり…今この瞬間も、相手の能力は続いているってことなんだろう。
だから、オレは今もこうして倦怠感に悩まされ続けている。

じゃあ、アイツのコントの時から、今も変わらず機能しているものって、なんだ?
拳銃は試合開始に取り出した。オレもだ。コント中、拳銃は後ろ腰だった。
ヤツが持っているのは拳銃と…あとはコントの時使ったマイクだけ。他に何かギミックなんて…、
………いや待て。あるぞ、ギミックが。
ヤツがマイクを使って歌を披露している真っ最中から今に至るまで、
オレの『耳に聞こえている』ギミックが………!

だがまだだ。まだ確信が得られねえ。
オレは両耳を抑えてみる。オレの予想が正しければ、これで何かが変わるはず…。

118『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/14(金) 23:21:50
>>117
     「そう、かな? ゴメンね。
      けれど、待てば待つほど、
      不利になるのは『コーマ』君の方、じゃないかな?」


     ≪な、成る程ォォ〜〜〜〜ッッ
       す、筋は通ってますね。えぇー、はい≫


     ≪さ、さあ! 両者狙いを定め、緊迫の時間が過ぎる!
       どちらもまだ手の内は見せていないッ! 睨み合いです!≫


     「知ってる? この闘技場、『二つ名』が付けられるんだって。
      何だか馴染みがなくて、今まで考えたことなかったけど……」


自身に作用する『スタンド能力』について、考察を進める『稲積』。
『稲積』と『小久保』に同じ能力が作用していると仮定し、
『能力』そのものよりも『発動』の方法について重点的に思考する。

自身に『継続的』な能力の影響を受けていると考え、
『パフォーマンス時』と『戦闘時』に共通する『現象』を『要因』だと仮定する。


               ス ゥ ゥ


『拳銃』を手にしたまま、両の掌底を利用して左右の耳を抑える。
『スピーカー』からの『音』、そこに『能力』が作用していると考えてのことだ。
……だが、変化はない。一つ、この推理には大きな課題が残っている。
『音』が原因ならば、『観客』や『実況席』に能力が作用していないのは何故か。


                  グ ラ  ァ . . .

                                       ドサァ!


意識が遠のく。伏せたままでは格好が付かないと、柱の陰で立ち上がろうとした矢先だ。
思わず『砂』に足を取られ、『稲積』はシュートをミスったサッカー小僧のように、
仰向けに倒れ込んでしまう。その余波で砂が舞い上がり、何も見えない『空間』に散らされる。


               ブ       ≪おっと、『稲積』選手! 思わず転倒です!
                 ワ       しかし、試合が膠着して来ましたね。『尾藤』さん?≫
                ァ
              ァ         ≪やむを得んだろう、障壁を下ろせ。
                 ァ       フッ、やはり『銃』に浪漫を求めるがそもそもの間違い。
               ァ         赤き花の咲き乱れる『斬り合い』の美学には到底及ばぬわッ≫


舞い上がる『砂塵』、そこに何かの『陰』が宙に浮いて見える。
大きさは『500mlの紙パック』程度、楕円形だ。


   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱小□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□柱□□■∴
   ∴■□□柱□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴∴■□柱□□?□□柱□■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□稲■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

119稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/15(土) 23:14:36
>>118
「くッ…くそ……違ったか…!」

そう思い、慌てて顔を上げ――――『見た』。

      「………」  「なんだ、アレ…?」

おそらく、この過剰な光量…そのお蔭で『砂塵』の中でも
光がとおりやすくなって、それで見やすくなったから分かったんだ。
この状況…アイツが何らかの『スタンド』だってのは間違いねえ!

   「おい…待てッ!」 「クソッ!」

一瞬じゃあ、それが『何』なのか分からねえッ!
咄嗟にもう一回、倒れたまま砂を掴んで『何か』の方に撒き散らしてえ。
『何か』の移動スピードや移動の向き(法則性があるのかないのかとかも)、
それから具体的なディティールを読み取る、っていう意味合いもあるが…
それと同時に、『敵スタンドの正体の一端』を誰にでも見やすくすることで、
『一応戦闘は進展してる』ってところをアピールする意味合いもある。
流石に障壁を下げられたらオレはキツイからな。


以下質問。
・小久保は『パフォーマンスタイム』終了時、マイクをどうしていた?
・また、マイクの音は頭上のスピーカーから聞こえていたという認識で良い?

120『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/15(土) 23:37:04
>>119
>・小久保は『パフォーマンスタイム』終了時、マイクをどうしていた?
『スタームルガー』と入れ違いに『ポシェット』へと仕舞われた。

>・また、マイクの音は頭上のスピーカーから聞こえていたという認識で良い?
その通りです。

             バフッ

                    ブワァァァァ――――


乱反射する光に紛れ、浮かび上がるのは『ヴィジョン』だ。
もう一度、掴み取った『砂』を巻き散らし、その姿を一層と鮮明にする。
楕円形のヴィジョンではない。その下に無数の『触手』が生えている。
これは『クラゲ』だ。空間をフワフワと漂っている、……そのスピードは遅い。


           フ、シュゥゥ〜〜〜〜ッッ


砂塵の軌道がおかしい。まるで『クラゲ』から離れていくようだ。
『クラゲ』から吹き出る何かが弾いている。……そう考えるのが自然だろうか。


          「……見つかっちゃった、か」


          ≪――――と、あれは何でしょう!?
            『稲積』選手の投げた『砂』が、
            何かを浮かび上がらせた!?≫


『稲積』の視線の端、『小久保』は『遮断壁』の上に足を乗せる。
そのまま、厚みを利用して登り上げ、全く躊躇することなく――――


                   バッ


横っ飛びに跳ねる。その手に構えられた『スタームルガー』は威圧的に黒光る。
この『高度』を利用すれば、『柱』の陰に隠れた『稲積』を狙い撃てる――――
『失敗』で生じる隙を恐れないアクション、観客のテンションも高揚する。



     「うおおおおおおお!!!!!」

                           「いいぞぉー、小久保ォォ―――」


                      ボヘミアン・スタイル
         「私が名付けるなら、『 酔 生 夢 死 』。
          『デカダンス・チルアウト・イビス』の能力、それだけじゃあないの、

          私自身、この『三十四年間』、そんな生き方しかしなかったから。
          ……だから今は、闘うのが、皆に見られるのが、――――『愉しい』」


自嘲的な独白と同じく、引き金に掛かる指へと力が掛かる。

121『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/15(土) 23:41:23
>>119-120
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□小━□━━□□□■∴
   ∴■□□/□□□□□┃□□■∴
   ∴■ |/┃□□□□□柱□□■∴
   ∴■□ ̄柱□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴∴■□柱□□?□□柱□■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□稲■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

『小久保』の横っ飛び軌道。

122稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/16(日) 00:04:57
>>120-121
「『音』…じゃあ………ねえ」

そこじゃあなかった。
確かに『音』は目に見えねえ。イカサマの核だとしても見つかりはしねえ。
だが、もっと簡単なところに『それ』はあった。……『半透明のスタンドヴィジョン』。
そして『不可視のガス』を噴出する能力――――。

     「『気体』か……オレの推理はある意味間違ってなかった。
      恒久的にオレを能力にハメる為に『何かをし続けている』。
      そこは、そこの観点だけは間違ってなかった………。
      ただ、その何かってのは……オレに『吸わせること』だったんだな」

あのギャグの内容やつまらなさ自体には、何の意味もなかった。
ただオレの足を止めさせるための時間稼ぎ、それだけだったんだな。
『イカサマ』ってのは、見えないヴィジョンを利用してスタンドのノロマさをカバーする為。

             「その『スタンド』から噴き出るガスをッ!」

オレだけが能力を受けて観客席、実況席に影響がないのは、敷居で覆われているから。
銃撃戦だから、という理由で自然に敷居を設けさせることができるから、誰も不審には思わない。

だが、あのアマの方もオレが察したことに気付いて勝負に出て来やがった。
ただ………あの女の銃の腕はさっき見てる。
『両手を構えて』『しっかりとオレの方を狙って』撃つ構え、
ヤツは動いているものにしっかりと狙いを定めるような腕は持ってねえ。

上手く行くかは分からねえけど、オレは『息を止め』、
北東方向、つまり柱の東側へ転がるようにして移動する。
…いい加減逃げ回るのも嫌気がさして来たところだが、立ち上がることにすら
苦労するようなコンディションで相手の目の前に出たって的になるのが関の山。
とりあえず、『息を止める』行動が正しいかどうか確認しなけりゃあ始まらねえぜ。

123『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/16(日) 00:38:56
>>122
遂に『イカサマ』の正体を見破った『稲積』。
試合開始直前の『五分』の間にガスを散布していたのならば、
『樹脂』によって密閉されたアリーナに十分な量が充満しているだろう。


                スゥゥ――――z____


呼吸を止めて『ガス』の吸引を防ぐ『稲積』。
……しかし、これが果たして『何分』続くだろう?
『無酸素運動』は『一分』が限界とも言われている。
そして、時間を稼げば稼ぐほど、自身が有利になるのを『小久保』は十分承知している。


    ド         ≪撃ったァァァ〜〜〜〜ッッ!!≫

      バ       ≪まさか、『遮断壁』を足場に利用するとはッッ!!≫

    バ         「『コーマ』君、こんな能力じゃあ『戦闘』には使えない。
      バ       ……使えたとしても、『アリーナ』では勝ち抜けない。
     ァ
     / /      いいえ、そうじゃあない。『アリーナ』が認めない。
    ・ ・        透明なクラゲで『麻酔』を撒くなんて、そんなの『闘い』じゃあない」


立ち上がるのは可能だ。普段より力を込めれば出来る。
砂の地面を転がり、そのまま『柱』を壁にして北東へ移動しようと――――


                  ゴツッ
                            ボスッ
                                     ボスッ

――――ダメだ。『寝そべっている』。
柱と壁の間、そこに転がって進めるほどの『スペース』は存在しない。
柱にぶつかった『稲積』に銃弾が二発。『左脇腹』を貫通し、『左肩甲骨』を穿つ。
傷口から『血液』が噴き出し、砂面を赤黒く染めていく……。


       「だから、この『拳銃』が必要なの。
        銃の腕を磨けば、魅せる闘いが出来るッ」


               「この銃は、絶対に渡さないッ!」


虚構の笑みが張り付いていた小久保の表情は変わらない。
だが、その瞳には真摯な炎が宿る。銃を握る手に力が篭もる。


                 ドサササササ―――――


そのまま『障壁』を超えて砂の地面へと転がる『小久保』。
手をこまねいているのは『稲積』だ。――――ここから、反撃の準備はあるか。


   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□小┃□□□□□柱□□■∴
   ∴■□□柱□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴∴■□柱□□?□□柱□■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□稲■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

124稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/16(日) 01:26:48
>>123
撃たれた。
オレの脇腹、そして左肩甲骨。
そこから、血が流れ出るのが分かる。オレの生命が、確かに失われていく。

「…………」

それを自覚しながら、立ち上がる。
…どんなに想いを連ねても、『イカサマ』は『イカサマ』だ。
コイツのせいで吉田サンは苦悩した。その事実は変わらない。
だが。

     『――――御託を並べるのはやめようぜ。
      その為のアリーナで、その為の賭けだ。
      お互い譲れないモンがある。でも両立はしねえ。それで良いだろ』

かといって、想いが否定されるわけでもねえ。だから、オレは
この場面で言葉を荒げたりはしない。むしろ冷静に、自分の置かれた状況を把握する。

肩と脇腹に一発ずつ。間違いなく放置すれば死ぬ傷だ。
それほどの怪我を、オレは今負ってるってことだ。そこまで追い詰められてるってことだ。
それを、正しく認識する。
適当な理屈をこねて誤魔化したりはしねえ。それが、オレの能力の第一歩だから。

        ・・・ ギシイ

噛み締め、二つの『歯』に『肩甲骨』と『脇腹』から『苦痛』を込める。
…思えばコイツの能力もオレにとっちゃあ相性の悪い能力だ。
『麻酔』で痛みがなければ『肉体的苦痛』も何もねえからな。
だが…オレが噛み締められる『苦痛』は『肉体的苦痛』だけじゃあねえ。

『痛みはなくてもこんな負傷、出血量とか大丈夫なのか』。
『このまま負ければ、相棒は自分の手から永遠に離れてしまう』。
『惨めに転がり回って何もできないまま負けるのか』。
『吉田サンが託してくれたモノを、無駄にしてしまうのか』。
『イカサマに、屈するしかないのか』。

…痛みはなくたって、冷静に現状を把握すればそういう『精神的苦痛』だって認識し、『噛み締め』られる。
そしてオレは『苦痛』を噛み締めて生み出した『追尾弾』二発と通常弾四発を拳銃に込める。

125『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/16(日) 17:38:23
>>124

    ド     生命の流出する感覚を他人事のように味わう『稲積』。
    ク      『麻酔』によって『痛覚』の失われた『稲積』の身体、
    ・      銃撃による『苦痛』さえ、カイロを押し当てられる『熱さ』でしか感じられない。
 ド  ・
 ク         そして、それは『追尾弾』の発現にも大きく影響する。
 ・         『苦痛』をエネルギー源とする『追尾弾』を、今の『痛覚』では発現出来ない。
 ・         原因は別になるが、『精神的苦痛』を認識しての『追尾弾』も同じだ。
          『苦悩』、『葛藤』、それは他者に与えられた直接的な『痛み』ではない。『内省』だ。


    「そう、だね。
     ……けれどね、これで解ったでしょう?
     弾丸の撃ち合いになれば、私の方が『有利』だって」


だが、その冷静な『現状把握』こそ、『稲積』の活路になるのは間違いない。
『スタンド能力』のトリガーとして、ではない。窮地を認識し、打破する為の『思索』だ。
今の『窮地』とは何か? 『身体能力』が鈍っていることか、相手に『銃撃』が通じないことか?
――――どうすれば、『麻酔』を破れるのか。その『答え』は、今の『内省』から導かれるだろう。


    ≪『稲積』選手、二発の被弾です。
      しかし、脇腹からの『出血量』、やや掠めた程度か『軽い』ですね。
      戦闘続行ですッ! まだ、両者の『アドレナリン』は止まらないッ!≫


    ≪ケツでも打ったか、『小久保』選手は?
      中々起き上がらんが、それを見越しての『遮断壁』ということか。
      しかし、この使い方は読めなんだ。運営も用意した甲斐があったろうな≫


                                ゴスッ
    「おいおい、全然タマ飛ばねェぞ!」

                               「どうなってんだよおい!
                                ファイターやる気出せよ!」

              「挑戦者だろーが『稲積』ィ!
               『水鉄砲』で粋がってんじゃねぇぞ!」          ゴスッ!


一部の観客が樹脂で固められた金網を殴り付け、その苛立ちを露わにする。
膠着した試合にキレ始めたのだろう。動きのない『稲積』への不満は大きい。

126稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/16(日) 22:37:21
>>125
・通常弾の装填も行えていない、という認識で良いだろうか。

127『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/16(日) 22:38:19
>>126
書き忘れ失礼しました。四発の通常弾を装填しています。

128稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/16(日) 23:12:16
>>127
回答感謝。

>>125
傷が、『浅い』………?
いや、確かにオレの脇腹には弾丸が当たってるはずだぜ。
何か奇跡的な偶然でも起きねえ限り、大量出血間違いなしのはずだ。
そうでない可能性と言えば……。

訝しむように、空いている手で脇腹に手を当てる。
それから、…少しおぞましいが指で傷口をなぞって、何かないか確かめる。
銃弾が体内に残ってるだけかもしれねえが……だとしても『掠めた程度』と
誤解されるレベルで出血量が少ねえのは少しばかりおかしい気がするぜ。
マイクと一緒に持ち込まれた『銃弾』……アレに、何か細工がしてねえとも限らねえ。
なら、その銃弾か、銃弾に付着していたものを取り除くことで『麻酔』を破れるかもしれねえ。

…そして結果が空振りだったとしても、立ち止まってる場合じゃねえ。
そこの確認は勿論怠らねえが、これは興行だ。
観客の声は戦ってるオレにとっちゃあ理不尽だが、
『興行を盛り上がらせる』ことを了承した以上、不満にこたえる義務があるぜ。

さしあたって…『ガスを出す源』であるクラゲを射撃する。
銃撃の感覚は既に分かってる。片手でもノロマなクラゲくらいは撃ち抜けるはずだ。
…あそこで悠長にふわふわさせてるあたり、単なる銃撃は意味をなさねえか
命中してダメージを受けたとしても大勢には問題がない……
つまり、ダメージフィードバックの類が薄いか、ねえってことなんだろうが…。
それでも一応、やっておかなきゃ始まらねえこともあるぜ。

129『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/16(日) 23:34:52
>>128
『傷口』の具合に着目し、そっと触れてみる『稲積』。
『銃弾』への細工を疑うも、傷口に『塗料』や『小細工』の類は見当たらない。
どうやら、『奇跡的』に出血量が浅いだけのようだ。――――無論、『幸運』だ。
『出血』が増えれば呼吸にて取り入れた『酸素』の供給も鈍り、『三分の一』で死に至る。


      l /     ≪おおっと、『稲積』選手が虚空を撃つ!
     ト        ブーイングへの『報復』なのか、
      バ       無言の一撃が恐ろしいィィ――――!≫
     .ッ

            「て、テメェ畜生!」
                             「こっちじゃねぇだろ!?」

『クラゲ』の浮遊する位置を確かに撃ち抜き、銃弾はフェンスへ直撃する。
観客の一部が逃げ退き、おっかなびっくりの文句が飛んでくる。
未だに『小久保』の様子は解らないが、ダメージが通った様子はない。
『群体型』と呼ばれるスタンドだ。そのフィードバックは一体一体には乏しい。
事実、小久保は立ち上がり、柱の陰に隠れて『スタームルガー』を両手で構える。


      「あっ、やっぱりそっち狙う?」


                  グラァ ・ ・ ・


      ボヘミアン・スタイル
まただ。『 酔 生 夢 死 』の二つ名の通り、このままでは『夢』のように『酔い潰れる』。
一匹二匹、クラゲを倒しても『ガス』を吸い込み続けるのに変わりはない。
仮に『ハンカチ』等で呼吸を抑えても、『肺』に溜まったガスが全身を駆け巡る。
しかし、『稲積』の能力では『クラゲ』の位置を探す為に、砂を撒き散らす手段は乏しい。
そもそもの能力である『追尾弾』さえ完封されている始末だ。

――――いや、『追尾弾』は本当に『使えない』のだろうか?
例えば、『痛覚』に頼らない『苦痛』を受ける術さえあれば、
それを利用した『追尾弾』は発射できるだろう。

130稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/17(月) 00:37:37
>>129
「ぐっ…やはりダメか…」

息を止めても状況が改善する様子はねえ。
こっちから手を出せる、『麻酔』をどうにかする方法もねえ。
都合よくなんかねえ…当然だ、相手はイカサマをしてるんだ。
計画的に、少しの穴もねえ作戦を練って来てる。
オレみてえなガキがちょっと考えただけで答えを捻りだせるはずもねえ。

だから…そんなオレが上を行くには、
『オレだけが持つ』強みってヤツを使う必要があるよな…!

問題は、どう弾丸を相手のどてっ腹にぶち込んでやるか。
『痛覚』がなくなる以上、オレに『追尾弾』を撃つことはできねえ。
『心理的苦痛』だって、やろうとしたが失敗した。
考えようにも、耳障りなスピーカー音の実況にクソ眩しい照明で集中力はどんどん削られる。
コイツを『苦痛』として噛み締める手も…あるにはあるが、
伏せた状態のヤツに当てるには、軌道的にチト無理がある。

………。
……いや、必ずしも『追尾弾』そのものを小久保に当てる必要はねえ、のか…?
なら。

         ・・・スゥ

オレは立ち上がり、柱の東脇を通って北へ移動する。
拳銃を西に向けつつ移動することで牽制にしつつ……真ん中の柱の北東まで。
この位置は、鉄骨の側面に取り付けられた『投光器』のすぐ近く。
ちょうど『真下』にいる小久保ほどじゃあねえが………十分『熱い』はずだぜ。

          ギリィ

それこそ、『苦痛』に感じるほどに…な。

131『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/17(月) 01:31:40
>>130
さながら張り巡らされた『蜘蛛の巣』に捕まり、
藻掻けば藻掻くほど『糸』が絡まり、縛られる『獲物』のようだ。
だが、『ハチ』の羽撃き、『ゴミムシ』の粘液、自然界でも脱出の例はいくらでもある。
『稲積』は己の強みを生かし、隙なしの『計略』を破る算段を立てる。


   ズ    「そこッ   当たってッ!」
   ザ
    ッ                      ヂュイン!
                                 チュインッ!!


一つ、認識が異なっていた。『小久保』は既に立ち上がっている。
柱の陰から姿を表し、『柱』の北東部へと移動する『稲積』へと銃撃を放つ。
しかし、柱から身体を乗り出さずに銃撃を放ったのが災いし、
二発の銃弾は『稲積』の傍に立つ柱に命中し、明後日の方向へ飛んで行く。

反射的に足を止める『稲積』。
この位置でも『投光機』に照らされるが、期待した『熱量』は持たない。
肉体の『熱』に混じってしまっており、この『熱感覚』では『追尾弾』は作れない。
しかし、入場時から感じているように『眩しい』。『出力』だけなら十分だと思うのだが――――


        バ      「ッ!  しまっ―――」
        ス
        ッ/     ≪ああっ、とォォ〜〜〜〜〜ッッ
        ・        これは痛い! よりにもよってェェェ――――≫


三発目、銃撃による跳弾が『稲積』の右爪先に命中した。
末端部の負傷であっても『苦痛』を感じられず、『熱』を帯びるのみだ。
『跳弾』によるラッキーヒット、『小久保』は『失敗』したと誤解でもしたか懺愧の悲鳴を上げ、
真っ赤に染まる『砂』の様子を確認した『森田』が、痛々しそうな声を上げて実況を行う。

末端部の『出血』ではあるが、その量は先ほどよりも多い。
何度も喰らっていれば『失血』による『戦闘不能』は免れないだろう。


                  ドク

                              ドクドク ・ ・ ・


   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□柱□□■∴
   ∴■□小柱□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱稲■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

132『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/17(月) 01:37:36
『アリーナ控室』に待機を命じられている『吉田』であったが、
電話による報告を受け、即座に『緒形』と『山本』を呼び寄せた。
会場に『樹脂成形』を施している『吉田』には移動の制限が掛かっており、
自由に会場を動き回れない彼に代わって、この二人が『監視』と『調査』を代行していた。
痩躯の美青年である『山本』はタブレットを無造作に掴んだまま不機嫌そうに床を眺め、
アシンメトリのロングヘアが特徴的な『緒形』はスケッチブックを小脇に抱えて直立不動の姿勢を取る。


「お、『緒形』さん!
 『小久保』さんの能力は!?」


      「『オフィサー・キックス』では見抜けないわけです。
       まさか、『透明』のスタンドヴィジョンなんて――――」

      「『覆い隠す』のならば、『オフィサー・キックス』で剥ぎ取れます。
       しかし、最初から『見えない』のならば、どうやっても見つけられない……」

      「陋劣なる奇策すら謀らずに我が目を逃れる様、不遜にして大罪そのもの。
       否、天性に胡座掻きし愚か者は私か……!
       羞恥に塗れた失態ッ 恥辱ッ グッ、ゥゥ、ァァァ――――」


「いいえ、本当に良くやってくれました……!
 これで、これで『稲積』さんに顔向けが出来ます!」


      「しかし、既に『スタンド能力』の術中にあるのならば、
       どう足掻いても『脱出』は難しいでしょう。

       さっ、と描画して見ましたが、これも役に立つかどうか――――」


『オフィサー・キックス』を出し抜かれて仏頂面を見せる『山本』に代わり、
事務的な表情を崩さぬままの『緒形』によって戦闘状況の説明が成されていく。
差し出されたスケッチブックに描画された『デカダンス・チルアウト・イビス』の能力詳細、
そこに目を通し始める『吉田』の目が光る。――――間もなく、その双眸は心配そうに伏せられるが。


    「いいえ、『打開』するだけならば私でも『山本』さんでも、
     ――――それこそ『尾藤』さんでも出来ます。以前にもやっている……!」


 [呼気でガスは外気へ] _
                     /|
              /
    ┌───┐ /
    │.     ・│/   (  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ )     / ̄ ̄\
    |  ┌―[] ←―) 麻酔ガス.(───( ・ ・   )
    └┐│┌┘    .(_ ____)      ̄|  |
     / ∧ .\                   ノ||\
    .|[肺][肺]|  ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    .| | | !   ┃『クラゲ』から排出された『麻酔ガス』を吸引した『稲積』は、
    .|/ ̄ ̄\|  ┃『肺』から血液中にガスを吸収、血管を通じて全身を駆け巡る。
    .|∞血管∞|  ┃
    .|\__/|  ┃『肺胞』に残るガスは微量で、大部分は『呼気』と共に排出。
    .|        |  ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

133稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/17(月) 23:02:04
>>131-132
「ぐァッ」
       「〜〜〜〜ッッ!!」  ガ クゥ

痛みはねえ…ねえが、思わずしゃがみ込んでしまう。
クソ、足がやられた…ラッキーは早々続かねえってことかよ!
ちくしょう、ヤツが立ち上がってたんなら『スピーカーの音量』を
噛み締めて追尾弾にしとけばよかった…。
…まあ、それでも完璧にやれるとは限らねえけど。

やっぱり、確実にヤツを仕留めるなら『追尾弾』だ。
だが、その為にはこのクソったれの麻酔ガスをどうにかする必要がある。
コイツに『酔い潰される』前に突破口を見出さなくちゃ――、
…………そう言やあ、奴らは見づらいが『群体』で
麻酔ガスを耐えず散布して、オレの動きを鈍らせてる訳だが…、
さっきも言った通り、永遠に散布してるってことはそうする必要があるってことだ。
息を止めるだけじゃ、麻酔ガスの効果は収まらなかったが………、
      . .. . . . . . . . . . . ... . . ... . . . .
そいつはオレの肺の中に麻酔ガスが溜まってたからじゃねえのか?
思いっきり吸ったタバコの煙が、肺の中に充満するみてえに…。
つまり吐き出さないと効果は持続し続ける、そういうタイプの性質を持ってるんじゃねえのか?

           「………」

確証はねえ。だが、やれることは何でも試すべきだ。

    「ふ」 「う」
             「ゥゥううううう………」

しゃがみ込んだ体勢のまま、息をゆっくりと吐いていく。
これでダメなら……そろそろ本格的に『身を削る』必要がありそうだが…。

134『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/22(土) 23:01:54
>>133

            フォォォ ・ ・ ・


両肺に溜まった『麻酔ガス』を抜き出そうと、深く深く息を吐き出す『稲積』。
その効能はすぐには解らないが、身体は軽くなったように感じられる。

だが、息は吸い込まなければならない。
吐き出した状態で呼吸は止まっており、
もしも『吸い込め』ば大気中の『麻酔ガス』も同時に吸い込むハメになるだろう。
そして、仮に『呼吸』を止めたとしても、体内に残る『麻酔ガス』の『半分』でしかない……。


             ザリッ


砂を踏みしめる音が聞こえる。
『小久保』が『スタームルガー』を構え、『スタンダード』へと移行する。

135稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/22(土) 23:25:15
>>134
「………」

効果は薄い、か。
……………。
…ってことは、『やる』しかねえよなあ。

   「クソったれ…」 「いやだなあ」

     「コイツが間違ってたら後には退けねえってのに」

呟きながら、震える拳銃の銃口を太腿に当てる。
痛みがないとはいえ、拳銃だ。自分で銃創を作るっていう事実に、
全く恐怖がねえといえばウソになる。…いや、これすら強がりだな。
正直に言って『怖い』からこそ、この決断を先延ばしにしてたんだ。

                カチッ

オレ自身の右太腿を二発『撃つ』。
血が出やすくなるように…『動脈』を狙ってな。

      「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」

                   ガァン
                     ガ ァ ン !

…呼吸によって得た酸素は、血管を通って全身に運ばれる。
こんなのは小学生でも知ってる理科の知識だ。
………理科か? 保健体育か? そんなのはどっちでも良いか。
タバコのニコチンだって血管を通って脳に運ばれるんだ。
          . . ... . . . . . . . . .. .. ... . .
ってことはよ…脳に届く血が減れば麻酔も弱まるってことだよな?
息を吐いて止める、たったそれだけで自覚できるレベルで症状が改善されたんだ。
気絶しないまでも、身体に影響が出るレベルで失血したなら確実に効果が出るはずだ。
こうすることで俺の『命の砂時計』って奴は確実に減るが、んなこたぁどうでも良い。
重要なのは『痛み』を取り戻すこと。それさえできれば『追尾弾』が撃てる。

撃った後は、左足で踏み切って遮蔽壁の影に飛び込み(倒れ込み)てえぜ。
どうやら相手だって撃って来るみてえだしな。
一応、しゃがみ込んだ状態だからモロに狙える体勢じゃねえと思うが…
それでも遮蔽壁の上に立つとかしたら、狙われやすくなるかもしれねえし。

136『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/23(日) 00:09:51
>>135
『稲積』が吐き出したのは『肺中』の麻酔に過ぎない。
『血管』を通じて全身を巡る『麻酔ガス』、こちらへの対処は終えていない。
銃口を太腿へと押し当て、震える指先にて『トリガー』を引く。


     ガ     l /      ≪ああっ、と!?
     ァ    力         何を考えてるんだ『稲積』選手ゥゥ〜〜〜〜ッッ!!≫
     ン/   ァ
     ・     ン/      ≪『激痛』で目を醒ます気か、『小久保』を真似ての『スイッチ・シフト』か。
           ・          何にせよ、もう『退路』は絶たれたわけだが――――≫


          ブッシュゥゥ〜〜〜〜〜ッッ!!


二発の銃声、太腿に燃えるような『熱』が伝わる。
ふと、思い出されるのは先ほどの『ラッキー・ヒット』だ。

┌───────────────────────────────────────
│        バ      「ッ!  しまっ―――」
│        ス
│        ッ/     ≪ああっ、とォォ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ
│        ・        これは痛い! よりにもよってェェェ――――≫


│三発目、銃撃による跳弾が『稲積』の右爪先に命中した。
│末端部の負傷であっても『苦痛』を感じられず、『熱』を帯びるのみだ。
└───────────────────────────────────────

『弾速』と『意識』の速度差が生じるため、銃撃のミスとピッチャーの暴投はワケが違う。
即ち、『発射』の後に『成否』を理解するのは、予感であっても有り得ないのだ。
つまり、『小久保』は命中の『前』ではなく、『後』に失態を叫んだことになる。


      「なるほど、ね。
       これが、アリーナで『勝つ』ってことなの、かな」


――――それは即ち、銃弾が『命中』してしまったことを、嘆いたのに他ならない。
被弾による『失血』、それこそが『誤算』だったのだろう。
失われる血量に比例し、その意識は徐々にだが明瞭さを取り戻していく。
成功に乗じて遮断壁の影へと飛び込む『稲積』だが、『小久保』は追撃をしない。


しばらくすれば『追尾弾』を撃てるほどに『痛み』を認識出来るだろう。
だが、それは大量の『出血』によって麻酔を洗い流したことに他ならない。
何よりも、『バイト・ザ・ブリット』は『自傷』によってダメージを移し替えることは出来ないのだ。


        ゾ
              ア      ≪さあ、もう後がないのは『稲積』選手ッ!
  
                       かつて、現行犯を取り押さえる為に警察官が放った銃弾が、
         ア            犯人の『太腿』に命中し、失血により死亡した事件がありました。

                ア     つまり、メンヘラが同情を引くための『リストカット』とは違うッ!
                       興奮状態であれば『一分』と経たない内に、
          ア               『大量出血』による『意識喪失』は免れないでしょォォォ!!!≫


活路は見えた。
だが、手中に収めた蜘蛛の糸には無数の亡者がしがみついている。

137稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/23(日) 01:03:02
>>136
     「…『退路』は断たれたが」

             「お蔭で『血路』は開けたぜ」

意識が明瞭になった。これだけで十分だ。
片足が死んだが面倒臭せえ行動制限は消えた。
袖で口元を抑えてこれ以上の『麻酔ガス』の摂取を予防しながら、

「『勝利』を確信するのは、まだ早いよな。お互いによ」

言いながら、右目を閉じて頭上を見上げる。
真上には『投光器』。クソ明るい光量だ…。
まだ麻酔の残った頭でなくとも、『苦痛』に感じる眩しさだろうぜ。
コイツを『噛み締め』たい。

あとは、小久保がどう動くか、だな…。
まあ、相手が動いたらクソうるせえ実況がその都度教えてくれるか。

138『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/23(日) 01:30:13
>>137

         ガビァ !


『クモの糸』を手にした『稲積』は天井を見上げ、目映い程の『光』を睨む。
投光機から放たれる烈光は『稲積』にとっては視覚的な暴力に過ぎない。
『左目』に生じる『目眩み』を噛み締め、『追尾弾』を作り出す。


                ――――グラァ


意識が揺らぐ。麻酔による不自然な『朦朧』とは異なる。
失血による眠るような『意識』の揺らぎ、確実に生じている。
自体の解決は『小久保がどう動くか』ではなく、『稲積がどう動くか』に掛かっている。


      ザッ       ≪『小久保』選手、闊歩!≫
                 動きを止めた『稲積』選手を仕留めに掛かります!≫
       ザッ
               ≪――――と、ここで『遮断壁』の撤収が命じられました!
                 さあ、互いの命を守ってきた壁が今、取り払われます!
                 床に潜っていく形です。間もなく、取り払われます!≫


     「そう、だね。
      ――――なんだろう、ね」


            「きっと今まで、攻め切れていなかった。
             この闘いを、終わらせたくないみたい」


            「時間を稼ぐ、その為の言い訳に聞こえる、かな?


二重の『眩み』を味わう間に『小久保』が移動を行う。


   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□━━□━━□□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□柱□□■∴
   ∴■□□柱□□□□□┃□□■∴
   ∴■□□┃□□□□□┃稲□■∴
   ∴■□□小━━□━━□□□■∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

139稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/23(日) 02:12:30
>>138
「いいや、違うだろうな」

首を横に倒し、チカチカする左の視界を閉じて、代わりに右目で世界を見る。
やっぱりアイツは『向かってくる』か…。
そもそも『麻酔』が破られた以上、『時間切れ』の勝利はなくなってるしな。

     「ところでオレはこの戦いで学んだぜ…」

だからオレが知りたかったのは小久保のヤツが向かってくる方向だ。
『ルート』ってのは、『バイト・ザ・ブリット』にとっちゃあ重要なもんだからな。
小久保は、『遮蔽壁』を越えて来る。
『攻め切る』って言ってたヤツが、今更柱や遮蔽壁を回り込んでくるとは思えない。
『その可能性』に、『賭ける』。

既に入れてある『歯弾』を全解除。
息を止めてから『追尾弾』を一発装填する。
それから『遮蔽壁』に手をかけ、上体を起こす。
上半身を晒すことになるが、アリーナは『殺害』を禁止されてる。
頭部を狙うことはできねえから、狙いを定めるのはちと難儀だろう。
なら、オレが撃つ方が早い。

         アリーナ
        「『此処』で勝つには、自分の力を存分に振るうだけじゃ不十分。
         相手の能力を推測して、対策することも、必要なことだってな」

それでも、上半身に一発もらえばオレの方もすぐ昏倒するだろうし、
小久保は前提としてまだ一発しか食らっていねえ。
出血量から言っても、オレがここから一発だけ食らわせても状況は好転しない。
小久保が『攻め』に転じたのも、そういう計算だって少なからずあるはずだ。

   「テメェが負けるとしたら、そいつは多分オレの能力を推理しなかったからだ。
    …まあ、一度しか能力を使ってねえのに推理もクソもねえだろうけど、
    そいつはテメェとオレの能力の相性が『致命的』に悪かったせいだから諦めろ」

だから、狙うのは今まさに降りようとしてる『遮蔽壁』。
『追尾弾』はその性質上、破壊出来ねえ地形構造物は回避しようとする。
この場合曲がり切れなくて一度は遮蔽壁に着弾するかもしれねえが、
その後は『遮蔽壁に沿って』真上に移動し、投光器と同じ高さまで上昇してこっちに戻って来る。
…ちょうど、『その傍』ないし『真上』にいる小久保を下から上に貫く形で。
腹を撃たれただけならオレのが先に落ちる。手足ならもっとだ。
だが、『体全体』を貫かれたんなら…先に落ちるのはヤツの方だ。

            歯ぁ食いしばれよ
          「『バイト・ザ・ブリット』…!
           散々苦労させられたんだ…思う存分食らってもらうぜ」

140『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/23(日) 23:39:56
>>139

      ズ       小久保は前進する。『稲積』の予想とは異なり、『遮断壁』の裏を歩み。
      オ       そして、構えた『スタームルガー』を『稲積』に突き付け、
      ォ        ――――それよりも早く、『稲積』の抜き撃ちが光る。
       .・             ゝ、
        .          _ノ ド   。
                   )   ハ   /
                  ノ     ァ ・
                  ヽ


計算違いはあった。一つは遮断壁を越えなかったこと。
緩やかな速度で降りる壁を越えるのは、生じる隙が大き過ぎる。
柱と壁の間を歩み、真っ直ぐに『稲積』へと接近を図る。            /
                                            /
                                        /|/
                                      ア

          ドボッ       i/              ァ
                   ス   シャ        ア
                            バ ァ


円弧を描いて標的を追尾する弾丸の特性に加え、
『稲積』が眩しさを覚える為には最も至近の『投光機』を利用するのが必然。
即ち、『稲積』の頭上に位置する『投光機』目掛けて喰らい付く『追尾弾』は
『∠』の軌道を描き、天井の照明目掛けて疾駆する――――


     「ま、た、            ≪決まったァァ〜〜〜〜〜ッッ!!≫

      カーブする、弾丸」      ≪『魔弾』の一撃、再びの襲来!
                        こ、これは、『小久保』選手の肉体を『掘削』ゥ!≫
      「あ、
          は            ≪小久保選手、この軌道は複数の臓器を損傷しているはずッ!
             っ 」         も、最早、耐え切れる道理がありませんンンン!!!≫


脇腹から命中した『弾丸』は肉体を駆け巡り、左肺を抉って脱出孔を創り上げる。
さながら滝のように溢れ出る『血液』。『小久保』の表情が変化する。
――――『麻酔切れ』だ。大量出血と肺の損傷により、『鎮静効果』が減衰している。
互いを遮る壁は消え去り、溢れ出る『血時計』は互いの命を等しく削っていく。


      「この、チャンスを、待ってたんだ……?

       正体の見えない『デカダンス』の迫る中、
       この、機会を、狙う為に、わざと――――」


                  「い、や、だ。『負けたく』、ない。

                   どんな痛みも、苦しみからも、逃げて来た。
                   私の能力なら出来た、けれど――――」


      「『無痛』という『痛み』からは、逃げられなかった。
       海に揺れるクラゲみたいに、意味のない人生は、ずっと張り付いていた。

       この、このアリーナで変わりたい。『勝ちたい』、

                                         ウソ、は、な」


                  ドクンッ
                                 トクンッ
                                             。 。 。


   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□□□□□□□□□■∴
   ∴■□□□□□□□□□□□■∴
   ∴■□□□□□□□□柱□□■∴
   ∴■□□柱□□□□□□□□■∴
   ∴■□□□□□□□□□稲□■∴
   ∴■□□□小□□□□□□□■∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

141稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/24(月) 00:40:01
>>140
「そうだ…とカッコつけたいところだが、残念ながら違うぜ。
 能力を使えなかったのはテメェの能力が全く分からなかったからだし、
 今の一撃だって色々誤算が合ったが結果オーライで上手くいっただけだ」

ある意味で………コイツの能力は、いやコイツの在り方はオレと似てる。
コイツは『麻酔』で自分の『苦痛』を取り除くことが出来た。
オレは、『苦痛』を噛み締めて……相手に『撃ち返す』ことが出来た。
『麻酔』と『撃ち返し』…『苦痛』から逃れるっていう一点において、オレとコイツに違いがあるか?

オレが痛みを恐れないのは、『撃ち返し』っていう担保があるからだ。
『苦痛』が自分の武器になるから…恐れずに飛び込んで行くことができた。
現に『噛み締め』を奪われたオレは、惨めに地面を這いつくばることしかできなかったからな。
結局オレなんていうのは、その程度の人間なんだ。
いくら負けられない理由があるとか言ってカッコつけてみたところで、見る人が見れば失笑モノだろうよ。

                「…だからって負けても良いってことにはならねえ」

どんなに惨めで泥臭くたって、失笑モノの戦い方だって。
『勝ちたい』って思った理由が、負けられない理由がウソになるわけねえだろ。

…頼むぜ。動いてくれよ、身体…!

『歯弾』を三発ほど装填しなおし、改めて小久保を見据える。

142【酔生夢死 “ボヘミアン・スタイル”】:2015/08/24(月) 01:26:40
『デカダンス・チルアウト・イビザ』を発現したのは、『小学校五年生』の頃だった。
女子サッカーチームに所属していた『小久保』は練習中に転倒し、
左足首を大きく捻った。――――不思議なことに、痛みを感じることはなかった。
練習が終わり、歩き方がおかしいとコーチの指摘を受け、近くの診療所まで運ばれ、
医師の診断を受けて初めて、足首を捻挫していると判明したのだ。

『痛み』を覚えない。その能力を自覚しながらも、『小久保』の人生は変わらなかった。
『苦痛』を恐れない、『恐怖』を感じない、『敗北』を味わえない。
それは『向上心』の低下に他ならない。ぬるま湯の中を揺蕩うに過ぎなかった。
初めての失恋は五分で遠い記憶となり、祖母の死去さえ夢のような出来事に思えた。
『拘り』も『執着』も存在しない惰性のままの生活。それに異を唱える感覚さえ消失していた。


         「ここが『アリーナ』だ。
          花代、お前の生き方が変えるステージになる」


              「コイツらは高い金を払ってチケットを購入して、
               トーシロのケンカを肴に酒を飲むんだ。

               ファイトマネーだって安いぜ。けれど、ファイターも観客も集まる。
               何でだろうな?  ――――『素人』、だからじゃあねぇかな、って思うのよ」


         「互いの『人生』を賭した闘い、『精神』の具現ならそれが出来る。
          洗練された『技術』でも、鍛え上げた『体躯』でもねぇ、『意地』で闘うんだ。
          粗暴なぶつかり合いにこそ、ファイターの『情熱』ってのが伝わってくる」


         「ちぃっと荒療治になるけど、お前が本当に変わりたいと思うなら、
          ――――この『アリーナ』には、それだけの準備がある」


         「『拳銃』と『ファイター』、両方が揃う術が出来たのよ。
          ちょっと待ってろよ、すぐに用意してやるからな。

          ――――お前の『デカダンス・チルアウト・イビザ』、
          ハッキリ言ってタイマンなんか全く向いてねぇよ。
          それこそ、クレーン車でF1レースに出場するようなもんだ」


         「でもさ、一人くらい居たっていいじゃあねぇのよ。
          向いてないのに一生懸命になって、一生懸命になれないのに頑張って、

          そーいうバカなヤツ、俺は好きだぜ」


テンガロンハットを被った小さな男。自分を『ビリー・ザ・キッド』と称していた。
彼は、ここまでお膳立てをしてくれた。イカサマの方法も、銃の練習場も、全て与えてくれた。
――――今、『命』を賭けずにどうする。

143『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/24(月) 01:33:23
>>140-141(小久保、稲積)
『勝ちたい』という気持ちに偽りはない。
似通った『スタンド』だからこそ、その思いは一層強まるのか。



       「もう、『吸引麻酔』は、使 ぇ゙  ぁい」


            「『恐怖』を消す『セロトニン』、も
             『亜酸化窒素』も、利か、ない、から――――」


張り付いた虚構の笑みが消える。
表情筋の強張るのは『笑気ガス』による副作用、それを理解出来る文脈だった。
銃弾を三発だけ装填する中、見据えた先にいる『小久保』の異常に気付く『稲積』。


       ≪おい、何をしている! 『森田』ァ!≫

       ≪し、試合は終了です! もう、ここから『小久保』選手に逆転はない!
         互いに流血も著しい、これ以上は命の危険に関わります――――≫

       ≪天から見下ろして神にでもなったつもりかぁ、『森田』!
         所詮、お前は戦況を伝えるだけの『ラッパ吹き』に過ぎん、
         まだ闘ってんだろうが! コイツらの目が黒い内は、試合続行ッッ≫


『流血』が乏しい。吹き出る血液の量が著しく減っている。
そして、『小久保』の吐息はか細く、寒中水泳でもしてきたかのように、青ざめている。
麻酔切れによる『恐怖』ではない。もっと、物理的な現象だ。


        「『局所麻酔』、『心臓』を『麻痺』させて、
         ポンプがなければ、水は、溢れな、ぃ……」


              「元々、生きてなかった『命』ッ!
               ゎ たしは、


               ―――――もう、『ドローゲーム』じゃ済まされないッ!」


接近する『小久保』。至近に位置する『小久保』の掌、それが『稲積』の視界に映る。
青白い肌には目立つ、油絵の具を上塗りしたような無数の『カサブタ』。
『火傷痕』、『裂傷』、いずれも『射撃訓練』によって生じる創傷だ。
学園で練習を重ねた『稲積』だからこそ解る。


               ドバァッ!


一発の銃撃。『稲積』からは1mほどズレて、金網へと命中する。
満身創痍の心身ではこれが限界なのだろう。――――だが、それは『稲積』も同じだ。
立ち上がれる。銃を握れる。だが、身体能力は既に限界値だ。
ここからはもう、純粋な『撃ち合い』で勝負が決する。


   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴■□□□□□□□□□□□■∴
   ∴■□□□□□□□□□□□■∴
   ∴■□□□□□□□□柱□□■∴
   ∴■□□柱□□□□□□□□■∴
   ∴■□□□□□□□□□稲□■∴
   ∴■□□□□小□□□□□□■∴
   ∴∴■□柱□□□□□柱□■∴∴
   ∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
   ∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

144稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/24(月) 01:59:58
>>143
「!?」

コイツ………『命を賭けやがった』!
ハハ、ハハハ。コイツはとんでもねえぜ。
アリーナのルールで死ぬまではやらねえとか、そういうのを一切飛び越えやがった。
心臓を止めてまで血液の流出を止めて…。

      「面…白れえ」 「『行き着くところ』まで………付き合って…やるぜ」

                   「小久保ォお!」

足は…動く。銃も握れる。
拳銃はまともに狙えそうもねえけど、
あと数十秒もする頃には寝こけちまってるだろうけど。

       「……ぁァああああああァァあああ!!」

次弾はきっと当てて来る。オレも、やるしかねえ。
もう策なんかねえ。オレは……オレは、自分の腕を信じるしかねえ。
愛銃を…『スタームルガー』を握ってきた日々が、
オレの糧になってると信じて、小久保にありったけの弾丸をブッ放す。

…そう言やあ、一度言ってみたかったとは思ってたんだっけ。
『抜きな。どっちが早いか、試してみようぜ』――ってよ。

145『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/25(火) 23:04:17
>>144
“火器に頼るだけの無様な素人試合”、解説の『尾藤』が放った揶揄の言葉だ。
懸念の振りをした挑発なのは明らかだった。――――が、しかし、
今この試合を見る者の中で、誰が『無様』と嘲笑えるのだろう。


       ≪ダメだッ! 試合を中止しろ!
         アリーナで死人が出れば、警察の目をゴマカしきれないッ!≫

       ≪森田ァ! テメェはナマポでメシ喰ってんのかァ!?
         行政じゃあねェだろ、この声が聞こえねぇのかァァ――――≫


       「撃てェェェ――――!!」                       ┌
                                                ス
                         「イケェェェ――――!!」       パ
                                                ニ
        ┌                                       ッ
          稲        「小久保ォォ―――――!!!」         シ
                                                 ュ
          積                                    |
           ィ/          「死ぬなァァァ――――!!!」     |
           ・                                        N
            ┘                                   |
                                                 ┘


会場の歓声は止まらない。激励と興奮、悲痛なまでの叫びが怒濤となって二人を襲う。
二人だけではない。罵声や野次を飛ばしていた観客達さえ、この一戦を見届けたがっている。
そう、『決着』を告げるのは運営側の『天声』でもない。そして、観客達の『歓声』でさえない。


                                        .
                                       ノ |
             / l /        c                  ⌒ `      _/
          人          / |       _|_                 ) K
              ッ   / |   オ  ノ|   ̄  ̄  \   ________
                             . )_ .
                                   /Y ・


――――『銃声』ッ!
『小久保』と『稲積』、いずれも装弾数は『三発』。
この弾丸は『勝機』そのもの。尽きたその時、立ち上がっていた者が『勝者』となる。

        |/
       ホ      ボ        『一射目』、両者ともに『金網』を穿つだけに終わる。
        ス/    ォ/       疲労が互いの距離感を歪ませる。――――だが、『本能』が補正する。
        ・      ・         無意識下の『二射目』、明暗を分ける一撃となった。


                  ド     『稲積』は片目を瞑っている。
                   バ    『苦痛』と認識出来るほどの『目眩み』、簡単には回復しない。
                    /   即ち、距離感の見誤りは『小久保』よりも大きかった。
                   ・     バニラシェイクに刺さるストローのように、弾頭は容易く臓腑を抉った。


『痛み』を喪失させるスタンド能力、『デカダンス・チルアウト・イビザ』。
『痛み』を噛み締めるスタンド能力、『バイト・ザ・ブリット』。
奇しくも相似したスタンド能力が勝敗を分けるとしたら、その歩んだ『過程』である。
この決戦において多くを『積み重ねた』のは、果たしてどちらだったか。
『三発目』の銃声によって、『頂』を勝ち取る者は決するのだ――――

146『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/25(火) 23:26:13


┌─────────────────────────────────
│「姉ちゃん!
│ スタンドを使ってそのコーヒーの中身を野郎の『箱』にブチ撒けてくれ!」

│     「受け身は――――オレに任せろ!」                   .....

│      . . . .. . .. . . . .. .
│この中で一番怪我をして良いのはオレだ。
└─────────────────────────────────

      多くの『痛み』を受けてきた。

┌──────────────────────────────────
│                      . . . .. . .. . ..
│腕に食らったのは想定外だったが、此処まではプラン通りだ。
│次の弾丸を装填している暇はねェ。今ある以上を撃っている暇も……ねえ!

│       「こっからは正真正銘ノンストップだ」

│ 「オレかテメェ、どっちかが倒れるまで終わらねえ!」
└──────────────────────────────────

      仮に、『痛み』を受けても尚、『撃ち返せる』のだとしても。

┌─────────────────────────
│    「散々食らったんだ」 「今度はテメェの番だぞ」

│              バイト・ザ・ブリット
│         「『歯ぁ食いしばれ』」
└─────────────────────────

      甘受する『痛み』こそが『武器』になるのだとしても。

┌─────────────────────────────
│その手には、今まであったオレの『愛銃』がねえ。
│なくなった。
│いや、正確には、『奪われた』。

│「………………クソッ」

│「またお生憎様だな。オレは平常心だ。
│ 確かに少しは傷心だが、こんなのはよくあることだ。
│ オレは、何も、取り繕っちゃいねえ! 『強がり』なんてねえ!」
└─────────────────────────────

      背負った『受難』に嘘はない。

┌──────────────────────────────────────
│「…話が早くて助かる」

│      「元より、アンタから提示された条件なら
│       何であろうと呑むつもりでいたんだ、オレは」

│――もしイカサマがあったとして…オレはそれでも小久保の挑戦を受けていただろう。
│拳銃を返してもらう為なら、どんな不利な条件だって受けて立つ。
└──────────────────────────────────────

      『君』はいつだって、『傷』と共に闘ってきた。

147『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/25(火) 23:41:47
>>145-146
『三射目』の銃弾は糸で引かれるように、正確な軌道で『稲積』の正中線を穿った。
即ち、構えた『プラスチック拳銃』を飴玉のように刳り砕き、
合わせられた両手を削撃し、胸骨に打ち込まれた楔となって、――――『止まった』。
意識を奪わんばかりの『激痛』、それを噛み締める間もなく、眼前にて対峙する『小久保』は、


                 グ
                 ラ
                  ァ
                 ・
                  ・
                 .

                                 ―――――ドサッ


『倒れた』。
『呼吸』さえままならない『出血量』、全身を駆け巡る『衝撃』。
それは決して、今までの『人生』において味わったことのない『苦痛』に他ならない。
『稲積』の放った『三射目』、破壊された拳銃から間髪入れずに飛び出した銃弾は、
『小久保』の下顎を砕くと、その『重み』によって意識を刈り取った。


             ≪    は    ≫


                            ≪     なぁ!≫


              ≪     ―――――ッッ!!!≫


『稲積』から遠ざかっていく世界。
足元に広がる赤い砂の上に身を横たえると、鈍い音が響いた。
既に『血の沼』となった地面、そこに前のめりになって倒れこむ。


                 ドサァァ――――


両者、尻餅を付かずに『前のめり』になって倒れこんだ。
全身を弛緩させた『小久保』の手中から零れ落ちた『それ』は、
『稲積』の伸び切った右腕の先端へと、微かに触れる。


                             ジュォ...


灼けた『口吻』を交わされる。
『相棒』は今、『稲積』の下へと帰って来た。

148稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/26(水) 00:01:23
>>145-147
「がハッ」 「あ、あ゛ァァあ…」

痛みに呻きながらも…指先に触れた『熱』を、実感する。
吉田サンの拳銃が勢いを殺してくれたから、
運が良かったから致命的にはならなかった…危ないところだった。
やっぱりいつもみてえに泥臭さしかない結果だったが…
それでも。

      「『勝ち取った』のは………あ゛ア…オ、レだッ……!!」

しっかりと、掴み取る。
今度は、取りこぼしたりしねえように…強く握りしめる。

149『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/26(水) 00:15:35
>>148


              ジュォォォ...


握り締めた『相棒』、その硬質な感触を覚えるも束の間、
その熱が急激に冷めていく。――――いや、『感覚』が引いているのだ。
世界は遂に『稲積』を置き去りにし、目映く照らす光さえも消えていく。


                     ・

                     ・

                     ・


     「――――さん」

                          「――――さん!」



              「――――『稲積』さんッ!

               い、生きてる……!
               良かった、本当に良かった――――」


意識が覚醒する。アリーナ会場とは異なる、蛍光灯の淡い光。
無機質な砂の地面ではなく、柔らかく肌触りの良いシーツに包まれ、
『稲積』は寝台の上に半裸で横たわっている。
全身を覆う『包帯』、そして硬質の『ギプス』、体内に何かを埋め込まれた違和感を覚える。


       「無事です。……何度も言ってるじゃないですか。
        『バイタルサイン』はずっと維持されていました。

        よっぽど、怪我の多い人生を送ってきたのでしょうね。
        『吉田』さんの『生分解性プラスチック』での『止血』や『縫合』がなければ、
        どちらも危なかったですが、――――あっ、目覚めました」


少し離れた位置にて立ち尽くし、鼻声になりながら安堵する『吉田』。
傍にはアシンメトリーの長髪をした女性が座り、一瞥を送ってから立ち上がる。
部屋を二つに分かつ白いカーテン、女性は仕切られた奥へと消えていく。
そこにもう一つ、ベッドがあるのだろう。

150稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/26(水) 00:18:41
>>149
「……………、」

あたりを見渡す。
ここはどこだ?
っていうか、何でオレは此処に寝て…、……ッ!

  「そ、そうだッ!」 「試合、試合はどうなった!?」

そう言いながら、身体を起こそうとする。

151『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/26(水) 00:30:15
>>150
「無理はダメです!」


起き上がろうとする『稲積』を慌てて止める『吉田』。
『吉田』が止める間もなく、身に走る『激痛』が『稲積』を押し留める。
更には『頭痛』だ。破れた左耳の鼓膜が揺れる度、意識を奪わそうになる。


        「試合は、貴方の『勝利』です。
         やりましたよ、『稲積』さん!

         何度もハラハラさせられました、
         ですが、信じていた……!
         本当に、本当におめでとうございます!」


感嘆する『吉田』が視線を向けた先、『サイドボード』の上には相棒が眠っている。
未だに激戦の痕跡が残る。微かな『硝煙』の匂いが、『稲積』の鼻先を過ぎった。


        「こちらは、まだダメです。
         恐らくですが、今夜がヤマかと――――」


                「そう、ですか。
                 何にせよ、本当に文句なく――――」


        「文句なく、『完敗』だった、な。
         おめでとう、『コーマ』君」                    カラカラカラカラカラ...


扉を押し開けて現れたのは、満身創痍の『小久保』だ。
能力によって『痛み』を消しているのか、『稲積』と違って平気な顔だ。

152稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/26(水) 00:39:57
>>151
「あ゛ッ」 「あが、が、〜〜〜〜〜〜ッッッ」

言われるまでもなく、無理する余地なんかなかった。
片手で頭を抑え、反射的に『苦痛』を『噛み締め』そうになって…やめた。
それで何とかなるのはほんの少しの間だけだ――っていうのもあるが、
この『苦痛』は、甘んじて受けることにした。

ああチクショウ、ここまでの痛みなんか生まれて初めてかもな。
『スタンド』を手に入れた時も、腹に一発しかもらってなかったし…。

「あー………ありがとう、ございます。
 吉田サンがいなけりゃ、今のオレはなかった」

痛みを堪えてるからかかすれた声で、吉田サンに礼を言う。
オレの愛銃も、この人の助けがなければ帰ってはこなかった。
痛みはあるが、コイツの為だと思えば『噛み締め』なくても耐えられる。
………耐えられ、る。多分。

「………」

そしてその後…聞こえて来た声に、眉を顰める。
オレと一緒に此処に来た奴…とくれば、心当たりはある。
肺と下顎を穿った上に心臓まで止めてたんだ…。当然…。

            「…小久保」 「テメェ………」

………。平気そうな顔だが、コイツ、もう………。

153『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/26(水) 01:02:47
>>152
「いいえ、私の方こそお礼を言いたい。
 彼女の『尻尾』を掴めたのは、貴方のおかげですから」


『苦痛』を噛み締めようとして、『稲積』はそれを止めた。
全身の血管を『有刺鉄線』に入れ替えられたように、
内部から切り裂く『激痛』がその身を襲う。ギリギリと、締め上げるように。


         「私は、この『痛み』は消す、けどなぁ
          そうじゃなければ、ここまで来られないし」


               「それに、消せない『痛み』だってある。
                コーマ君との闘いで、やっと気付けた」


『小久保』は寂しげに笑んだ。双眸は細められ、緩やかな弧を描く。
口元に覆われた『樹脂製マスク』に、先ほどまでの激戦を如実に表していた。


         「『小久保花代』、貴方はパフォーマンスと称しながら、
          『蓮田』選手と『稲積』選手に能力の行使を行いました。

          これは明確な『レギュレーション違反』であり、
          運営者である我々はこれを糾弾し、罰するものと」


         「――――ダメです、『緒形』さん。
          彼女のもぎ取った『一勝』、お忘れですか?

          『パフォーマンスタイム』の扱いは、
          『双方の合意があって、試合中に行われる演出行為』との結論となりました」


白いカーテンの奥から現れ、事務的な口調にて『弾劾』する『緒形』。
しかし、『吉田』は首を振って否定する。納得とは、到底言い難い押し殺した口調で。

154稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/26(水) 01:21:21
>>153
「テメェが能力を使うなら、余計にオレは使わねえ」

ひくひくと表情筋を痙攣させながら、笑みを浮かべて見せる。
…ああそうだよ、『意地』ってヤツだよ。
ギリギリの、危うい勝利だったモンだから何かしらの『プラスアルファ』で
自分の中の評価を上げとかないと、自信を持って胸が張れねえんだよ。
その『プラスアルファ』がやせ我慢ってのも含めて、みみっちいのは自覚済みだ!

           「………」

二人の話に、オレは首を突っ込めねえ。
何だかんだ言ってコイツは『イカサマ』を帳消しにすると
(オレに思わせるくらい)の戦いをしてみせた。個人的に思うところはねえ。

だが一方で、ルールはルールだ。
通すべき『筋』ってモンを通さねえ行為は、許されるモンじゃねえ。
イカサマ行為をはたらいたことへの『報い』は、受けるべきとも思う。

だから、二人の話にオレは口を挟めねえ。
ただ………『報い』っていうなら、コイツは既に受けている気も、しなくもねえけど。

155『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/26(水) 01:39:12
>>154
「そう、かー。残念、ざんねん。
 『麻酔』を使ってグッスリ眠れるように、
 わざわざ来たんだけど、そっかぁ……男の子だよね」


運営側の二人が告げる糾弾の言葉にも、『小久保』は臆する様子はない。
『ルール』とは『庇護者』に有利なように『遡及』されるのが常だ。
一戦目の後に制定されたルールであっても、庇護者の有利になるならば、常に優先される。
『尊属殺人』による『法の不遡及』が最も有名な事例だろう。

何処か意地悪く煽るような言葉を続ける『小久保』、
その目線は寂しそうに床上を這い、マスク越しに翳った吐息を零した。


「そう、だね。『あの人』もそう言ってた。
 ……読み通り、ってことになるのかな。

 でも、私はもう『アリーナ』では闘わない。
 『追放』、って形にしてもいい。拘る必要がなくなったもの」


                    アリーナ
         「きっと、私の『 人 生 』はこれから始まるんだ。
            『痛み』の重みを知った、今日この日から、ね」


         「それを告げに来たの。お礼と、お別れ」

156稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/26(水) 01:58:27
>>155
「……………」

アリーナからの『自主追放』。
そいつが、こいつの選んだ『報い』って訳か。
多分イカサマが認められても同じ結果になっただろう。
なんとなく寂しくなるが…止めはしない。

       「そう、か。ならオレはささやかながら
        祝わせてもらうとするぜ。テメェの門出をな」

吐き捨てるように言って、身体から力を抜く。
オレはこれからもアリーナに籍を置く。
拳銃は取り戻したが、そうじゃなくてもアリーナには興味があったしな。
まあ、復帰できるのは大分先になりそうだが…。

157『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/26(水) 02:17:44
>>156
『因果応報』、その意味は『稲積』自身が良く解っているだろう。
そっと車椅子を動かし、回れ右をする『小久保』。
その小さな背中を押すように、『緒形』は車椅子の上部ハンドルを握る。


       「平気、だけど。
        私の能力、知ってるでしょ?」


            「勿論、見事に騙しきってくれましたね。
             ――――だから、最後まで『監視』致します」


                   カラカラカラカラ ・ ・ ・


『緒形』に車椅子を押され、『小久保』は去っていく。
別れ際、小さく上げられた手。それが不自然に止まり、表情が引き攣る。
そのまま、廊下の向こう側へと消えていく二人。『吉田』はそっと呟いた。


       「彼女の能力は闘いには向いていない。
        あれで良かったのでしょう。――――けれど、『稲積』さん。


        貴方がもし、この『アリーナ』で戦い続けるのであれば、
        私は勿論、応援します。……そして、」


『吉田』は立ち上がり、平べったい何かを『稲積』へと差し出す。
それは『スケッチブック』だ。油性マジックが添えられており、
枕元にはいつの間にか『類語辞典』、『幻想単語辞典』、『形容辞典』が置かれている。


       「『二つ名』を、貴方には『異名』を冠する資格があるッ!

        『通り名』、『キャッチコピー』、『ブランドネーム』、
        いずれも『実績』がなければ、名乗るには心許ないでしょう」


            「しかし、今日の闘いはッ!
             熨斗を付けるだけの『鬼気』が、確かにありました。

             ――――本来であれば、他者から自然と呼ばれるのが『二つ名』。
             しかし、自身を鼓舞し、ファイターとしての在り方を定める『名』もまた、
             私は尊いと思います。  ――――どうでしょう、『稲積』さん?」


じーっと、反応を伺うように『吉田』の視線が注がれる。

158稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/26(水) 23:22:56
>>157
「二つ名、オレの、異名………」

        「……」 ニィ

なんだそれ、燃えてくるじゃあねーか…!
小久保も言ってたがオレは男の子なんだぜッ!
そーいうの、大好きに決まってるだろ!

スケッチブックを受けとり(激痛にもだえ)、
辞典類のうちめぼしい項目を眺め(激痛にもだえ)、
そして――――決める。
使いたい言葉は、自然とあっさり決まった。

激痛にもだえながら、受け取った『スケッチブック』に
オレの『二つ名』を書いていく。
汚ねえ字で、震えてるが…それでも力強く。

  ダイハード
「『不撓不屈』」

「『不撓不屈』で不死身の『ダイハード』だ。
 捻りはねえが…オレらしいと思わねえか?」

そう言って、少しばかり引き攣ってるが、笑みを浮かべてみせた。

159『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/27(木) 00:35:40
>>158
真っ白な紙上を走る黒インキ、痛みに震える手先が緩やかに動き、
最後の一画を書き終えた時、『吉田』の感嘆が漏れた。


       「『不撓不屈』、決して『歪まず』、決して『曲がらず』。
        揺らぐことのない『信念』が宿る、良い言葉です。

        『稲積誇生』さん、どうかその言葉のままに闘って下さい。
        我々『アリーナ』もまた、貴方達の『闘志』に敬意を表しますッ」


         オ                      『稲積』の闘いは一先ずの幕を下ろした。
                      ォ         己の『相棒』を奪還し、鮮烈なるデビュー戦を観客達に見せつけた。
                                ――――否、激闘を見届けたのは『オーディエンス』だけではない。
              オ


       「ある『仲介人』の協力で、現在は『C級ファイター』が急増しています。
        もうすぐ、運営側は『B級ファイター』とのランク戦を開催するでしょう。

        『C級ファイター』に連勝し、『B級ファイター』を倒した者に、ランクアップの資格がある。
        つまり、『B級ファイター』からは『勝者』との闘いになる。

        『稲積』さん、もしも貴方に『闘志』があるのならッ!
        是非とも、『B級』に挑んで頂けませんか!?」


                                       「――――彼らもきっと、この試合を『観戦』している」


そう、闘いはまだ続くのだ。
それは『アリーナ』とは限らない。きっと、この先も『愛銃』を向ける標的が現れるだろう。

160稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/08/27(木) 00:52:35
>>159
「痛てて…吉田サンも酷だぜ。
 こんな重傷人にそんな話するなんてよ…」

そうは言うが、多分オレの顔は、言葉とは真逆の感情を灯してるんだろうな。

        「傷が治るのが、待ち遠しくなってきちまうじゃねえか」

『無秩序に安易に力を振るうのは、チンピラのすることだ』って星群サンは忠告した。
彼からしたら、このアリーナはどう映るんだろうな? チンピラか? ――それとも勇敢な『戦士』か?
そいつは多分、この先のオレ自身の行動で決まるんだと思う。
この『愛銃』に恥じねえ闘いをできるかどうか。御大層な二つ名に負けねえ闘いをできるかどうか。
全ては、この先のオレ次第だ。

「望むところだ――――オレも、『バイト・ザ・ブリット』も
 まだまだこんなモンじゃねえってこと、『観戦』してた連中に教えてやるぜ…!」

161『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/27(木) 01:20:24
>>160
かつて己に向けられた『忠言』を今一度噛み締める『稲積』。
『安易』の基準は人それぞれ、状況次第なのは言うまでもない。
だが、『無秩序』か否かは、――――目の前の『吉田』をどこまで信用出来るかだろう。


          「お待ちしております、『稲積』さん。
              もう一度、あの『銃声』を響かせて下さい――――」


血の抜けた青白い肌、身を包む包帯、シーツ。
『医務室』の純白な色彩から抜き出るような『黒』、
彼もまた待ち望んでいる。主人と共に『咆哮』を轟かせる日を、舞台を。


苦痛に磨かれる『稲積』の牙、向ける先は果たして――――


稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』→『左鼓膜裂破』、『左脇腹銃創』、『左肩甲骨ヒビ割れ』、
                     『右爪先銃創』、『右肝臓銃創』、『胸骨中央部ヒビ割れ』、
                     『両拳銃創』、『右手に軽度の火傷』、『出血多量』……『全治五ヶ月』。

――――但し、『カナディアン・スウィートハーツ』の『生分解性プラスチック』により、
負傷の『八割』を治療。『全治一ヵ月』。ファイトマネーの『三十万円』と『二つ名』を取得。


小久保『デカダンス・チルアウト・イビザ』→『登録抹消』、『再起可能』。


『スタームルガー セキュリティ6』→『帰還』

162『稲積誇生と笑う犬の冒険』:2015/08/27(木) 01:27:10
十体で構成された『クラゲ』型のヴィジョン。
ゼラチンのように強度は脆いが『光』を『透過』し、
極度に『明度』が変化しなければ滅多に視認出来ない。

触手で触れた生物に『麻酔』を投与する。
『麻酔』による『機能停止』は生物であれば『瞬間的』に発揮され、
『麻痺』、『失調』、『失神』、『筋硬直』までその効果は自在である。

麻酔薬の『散布』も可能ではあるが、その場合は『遅効性』であり、
大雑把な麻酔効果しか与えられない。『戦闘』には不向きな能力である。

『デカダンス・チルアウト・イビザ』
破壊力:E スピード:E 射程距離:B
持続力:D 精密動作性:E 成長性:E

163春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/03(日) 22:52:36
『所持品』:
『ココアシガレット』一箱(6本入り)、『ミルクキャラメル』一箱(12粒入り)
『服装』:
焦げ茶色のコート、擦り切れたジーンズ、履き古したスニーカー。
『スタンド概要』:
触れた『食物』に『麦角』を与える細い人型スタンド。
『食物』から切り離せば、『麦角』は消えてしまう。

『メメント・モリ』
破壊力:C スピード:B 射程距離:E
持続力:B 精密動作性:C 成長性:D

164東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/03(日) 23:49:03
『所持品』:財布、スマホ、ロープ(ポリエステル製、9mm×1m)
『服装』学生服(冬服)、スニーカー、青海波紋柄のバンダナ

『スタンド概要』:
全身から『塩』を噴くスタンド。纏うタイプ。
このスタンドの触れたものは『塩』を噴く。
その様は積雪のようで、
最初はうっすらと、次第に厚くなり、
最終的には『岩塩』と化し、対象を閉じ込める。
『塩』は水に弱く、『岩塩』でも瞬時に溶解する。
スタンド自身も『塩』に覆われるが、これは『鎧』として機能する。

『ザイオン・トレイン』
破壊力:B スピード:B 射程距離:E
持続力:B 精密動作性:C 成長性:B

165『迫真 -Reality- 』:2016/01/04(月) 00:23:44
>>163(冬樹)
触れた『食物』に『麦角』を与える。
『麦角』を突き刺した生物に『麦角菌』による『中毒症状』を引き起こし、
『四肢』に刺されば『壊死』、『頸頭部』の場合は『精神異常』を引き起こす。
尚、『壊死』や『精神異常』は『摂食』によっても『発動』出来る。

『メメント・モリ』
破壊力:C スピード:B 射程距離:E(2m)
持続力:B 精密動作性:C 成長性:D

-------------------------------------【能力詳細】-------------------------------------

【ヴィジョンについて】
・細身の人型スタンド。
・『視聴覚』を共有せず、『ダメージフィードバック』を共有する。
・『スタンド会話』は可能。

【『麦角』について】
・基本的に『摂食』が可能であれば『食物』として扱う。
・『麦角』は接触した『食物』を『菌』によって『コーティング』し、
 『アーモンドチョコ』のように元となった『食物』の形状を維持する。
・『麦角』は食物の『鋭角面』に『突起』を作り出し、これによって『中毒症状』を起こす。
 (角砂糖であれば『角』、クッキーならば『縁』、『球体』のように『鋭角面』がなければ『不可』)
・その鋭利さは『ボールペン』程度、強度は『プラスチック並』。
・『麦角』は実体化したスタンド物質、色は『黒』。
・『麦角』の射程距離は『300m』。能力射程も同様。持続時間は『3時間』。
・『麦角』を作れる『食物』の『サイズ』は最小が『米粒』。最大が『バイク』程度。
・同時に作れる『麦角』の数に『制限』はない。
・『麦角』を突き刺し、『傷』を負わせることで『中毒症状』が発動するが、
 『麦角』の厚みは『元となった食物』に比例し、最大でも『1cm』ほど。
 威力は『食物』の『質量』にも左右され、腕力で突き刺すなら『五寸釘』程の大きさが必要。
・その性質上、『投擲』で能力を発動するのは、ほぼ『不可能』。
・但し、既に負った『傷』に突き刺すのであれば『パワー』は問題にならない。

【『壊死』について】
・『麦角』を刺した位置から『末端部』に至るまで、『炭化』したように『壊死』が起こる。
・『壊死』によって『四肢』の感覚は消失し、動かすことも出来ない。
・本体の意思により、『壊死』の規模は発動時に『軽減』することが可能。
・『胴体』や『頸頭部』に命中しても、『壊死』は発動しない。

【『精神異常』について】
・『麦角菌』若しくは『LSD』による『精神異常』を起こせる。
・症状は『単一』であるほど強くなり、『複数』であれば弱くなる。
・『麦角』の『再摂取』により、持続時間の『延長』、効果の『重ねがけ』が可能。
・また、『LSD』で起こせる効能の範囲に限られるが、
 他者の能力による『精神異常』を『精神抑制』の効果で打ち消すことも可能。
・おおよその基準は下記の通り。

【大:持続時間は13秒】
・心身の自由を『剥奪』するほどの症状。
 『全身痙攣』、『五感幻覚』、『特定の幻覚、幻聴』、『パニック障害』。
 これらの症状を一時的に緩和する『精神抑制』。

【中:持続時間は130秒】
・心身の自由を『阻害』するほどの症状。
 『部位痙攣』、『眼内閃光』、『幻聴』、『痛覚無視』、
 『共感覚』、『フラッシュバック』、激しい『頭痛』・『吐き気』。
 これらの症状を一時的に緩和する『精神抑制』。

【小:持続時間は1300秒】
・心身に『違和感』を覚えるほどの症状。
 『夜目』、『多幸感』、感覚的な『トリップ』。
 これらの症状を一時的に緩和する『精神抑制』。

166『迫真 -Reality- 』:2016/01/04(月) 00:24:55
>>164(東雲)
『纏うタイプ』のヴィジョン。
触れた物体からは『塩』が吹き出し、やがて『岩塩』に変わる。
このヴィジョンに能力を作用させた場合、『岩塩』は『鎧』となる。

『ザイオン・トレイン』
破壊力:B スピード:B 射程距離:E
持続力:B 精密動作性:C 成長性:B

---------------------------------【能力詳細】--------------------------------

【ヴィジョン】
・白色の布地に砂を塗布したようなデザイン。『非実体』。
・『ザイオン・トレイン』そのものに『防御力』は存在しない。
・『ダメージフィードバック』は本体の皮膚に存在する。

【能力について】
・能力射程は『20m』。接触後の『20秒以内』であれば、能力発動を遅らせられる。
・能力の対象となるのは生命の有無を問わず『固体』のみ。
・サイズの上限は『乗用車』。能力対象の個数に制限はない。
・能力を解除する場合、『塩』・『岩塩』ごとの解除は不可。対象ごとに『一斉』の解除となる。
・通常物質から発生した『塩』、『岩塩』は『通常物質』であり、スタンドから生じれば『スタンド物質』となる。

【噴塩化について】
・能力対象から『粉吹きイモ』のように塩が生じ、秒速『5mm』で積み重なる。
・『塩』同士には雪のような『接着力』が存在し、『数cm』単位で積もれば容易くは振り払えない。
・逆を言えば、能力対象が動き続けることで『岩塩化』を防げる。
・『噴塩』は『ダメージフィードバック』の影響を受けない。
・以下の『岩塩化』が完了することで『噴塩』は停止する。

【岩塩化について】
・対象と等しい『厚さ』にまで『塩』が積み重なった時、『塩』は『岩塩』となる。
・『岩塩』の強度は『岩』に等しい。
・『岩塩』は『水』に弱く、触れれば瞬時に『溶解』する。これによる『発熱』は起きない。
・『スタンド物質』の塩であっても、『岩塩』の『質量』は本物同様に存在する。
・この『質量』は能力対象にも影響を及ぼし、それは『スタンド』も例外ではない。
・『岩塩』を纏った際の『重み』は『ダメージフィードバック』の対象となる。

┌──────────────────────────────────────────┐
│      例:『直径10cm』のサイコロ ――『20秒』経過―→ 『直径20cm』の『岩塩ブロック』へ。    │
│         .『厚さ2cm』のまな板   ―― 『4秒』 経過―→  『厚さ4cm』の『岩塩板』に        │
└──────────────────────────────────────────┘

【岩塩鎧について】
・『ザイオン・トレイン』の『岩塩鎧』は『岩塩化』の応用である。
・自身を能力対象におき、体厚の薄い『掌』や『足甲』から『岩塩化』に至り、
 やがて『頭部』や『胴体』の『岩塩化』を完成させ、『全身鎧』となる。
・『全身鎧』を纏った際、『スピード:C』にまで移動力は低下する。
・『関節』を含めた全身が『岩塩』に包まれて『拘束』される危険を回避するため、
 『岩塩鎧』の作成中には『スピード:C』で『動き続け』、『関節部』に遊びを作る必要がある。
・逆に『スピード:B』での移動は、『塩』が払われてしまい『岩塩化』に到らない。
・『掌』にのみ『岩塩鎧』を纏わせれば、『スピード』を保ったまま動き回れる。

167『迫真 -Reality- 』:2016/01/04(月) 00:35:16
>>163(冬樹)

    「ヘッヘッヘッ、こりゃあどうも。
     めっきり、忙しない季節になりましたがねぇ、

     こっちの方が、いかがですか? 旦那ァ?」

『黄金町』に引っ越した『冬樹』が町をフラフラしていると、
子汚い『乞食』のような小男が擦り寄り、話しかけてきた。
ここは『倉庫街』。話を聞くに『冬樹』の事情を良く知っているようだ。
人気のない今なら、『始末』するのも難しくないが――――

>>164(東雲)


           ウオオオオ――――!!!


                   ワアアアアア――――!!!


ここは『アリーナ』。
熱狂の渦に溢れていた、『闘士』達の居場所だった。
しかし、心なしかその『歓声』は、前よりも静まっている。

『東雲』は『ラクアクア』ではなく、直接『アリーナ』に来ていた。
その理由は『慧観』とのマッチングを依頼する為か、
『観戦チケット』を手に入れる為か、誰かを探す為か、
はたまた、『潮風』に誘われてか、いずれにせよ、アリーナの入り口にいたのだ。

          「今日は、何のご用事で?」

入り口に立つ黒服の男が、『東雲』に問いかけた。

168春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/04(月) 01:07:47
>>167
「・・・・」

ま、ここは随分空気が『淀んでる』。『分かる』だろうってもんだ。
あっしは口の端を吊り上げる。

「あいにく、ここんとこヒマでねェ。
歳初めで『目出度い』気分なのかも知れないが、
あっしにもちょいと、その目出度さを分けて欲しいもんだよ」
「――用があんなら、さっさと案内しな」

飄々と。あくまで飄々と、『小男』にそう囁く。
何か妙なマネをしたら――そのときは確実に仕留める。躊躇は、ない。

169東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/04(月) 01:19:16
>>167

「・・・・・」

(ここも少し落ち着いてしもぉたのぉ)

その原因は、やはり『慧観』の一戦であろう。ただの娯楽闘技場が扱うには、彼が抱えているものは重過ぎる。
自分を含めた『闘士』が、それだけで退くほど安い理由で戦っているわけではないが、『観客』にとってはそうはいかないわけだ。
このまま『アリーナ』が沈静化すれば、それは『慧観』の望むところでもある。
そしてそれは、この『東雲』の望むところではない。

「『慧観』選手へと試合を申し込みにきました」

170『迫真 -Reality- 』:2016/01/04(月) 23:04:41
>>168(冬樹)
「――――まあ、まぁまぁ、
 いやはや、これはズイブンと、
 『虫の悪い』時にお声を掛けてしまって」

『冬木』の醸し出す殺気に気後れでもしたのか、
小男は卑屈な笑みを浮かべたままへっぴり腰を引いて、
両手をすり合わせる『ハエ』のような仕草のまま、『冬樹』を見上げる。

  「アタシは『曳舟利和』って言いましてねぇ、
   下賤な身ですが、『仲介人』ってのを、やっております。

   実を言いますと、『ボディーガード』を探しておるのです。
   とある『住職』を、どうか『守って』頂きたくごぜぇます。
   それだけでしたら、なんといいますかね、
   腕利きの『喧嘩屋』や『ファイター』を雇えば良いのですが……」

  「どうか、襲い掛かる『スタンド使い』を、
   『殺さない』で頂きたい、というのが、
   どーにも、『クライアント』の要望でごぜぇまして、

   ヘッヘッヘッ、お聞きしておりますよ。
   怪しげな『毒』を忍ばせ、心身を自在に『破壊』する、
   ――――『スタンド』、アタシはそー、呼んでますがねぇ……」

『曳舟』はおもむろに周囲を見回してから、作ったように小さな声で『冬樹』へ囁く。

>>169(東雲)
「……ああ、なるほどな。

 実は、だな。『慧観』はまだ『入院中』だ。
 お前も観ていただろう。――――『冷蔵庫』の一撃。
 あれが思ったよりヒドかった。『脳』の血管が切れ、緊急手術だ」

       「流石に、身体の内部では『吉田』さんでも治せん。
        市内の大型病院で『手術中』だと聞いている……」

律儀にも『黒服』は『東雲』に対し、現状の説明をしてくれた。
『黒服』の表情は渋い。やれやれ、とばかりに首を振ってみせる。

       「今からではもう、『試合』は見られんだろう。
        『慧観』とのマッチングを組みたいのなら、
        俺の方から、『吉田』さんに話しておこう」

『黒服』は懐から『無線機』を取り出すと、耳に宛てがう。

171春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/04(月) 23:23:12
>>170
「いやいや、そんなに下手に出なくたって良いんだよ?
あっしはただの『老いぼれ』さ」

そう言いながら、『曳舟』を注意深く観察する。
こいつの『低姿勢』はこちらへの『恐れ』から
来るものじゃあないだろう。そんな人間は、
こんなに堂々と接触はしてこない。

「『仲介人』ねェ。似たような形で、仕事を
受けたこともあったが――『殺すな』か」

齢40を超えて、『初体験』の依頼内容だった。
あっしは小さく、首を傾げる。
ま、こんなところだ、多少聞かれても問題なかろうが、
奴さんの立場もあるだろうし、声を潜めて話を続けようか。

「その『住職』とやらが狙われる理由には、
興味は無いけどねェ、あっしに声をかけるってことはだ。
相手は当然『殺す気』で来るんだろ?」
「それを『殺さず』制圧しろってわけかい。
そんな『面倒』な仕事……当然相応の『値』がつくんだろうね。しかも」

        ス ゥ 〜 

値踏みするように言い、腕に被らせるように
青灰色の『ビジョン』を発現する。

「『こいつ』絡みと来たってもんだ。
一つ確認したいが、『殺さなければ』良いのかい?」

172東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/05(火) 00:13:26
>>170

「・・・そうだったんですか」

そこまでの大事に至っていたとは。流石は『太田垣』、破れてもタダでは帰さなかったということか。
それでは試合どころではないだろう。手術が無事成功するのを祈るばかりだ。


「お願いします」

頭を下げ、『黒服』に依頼する。
さて、どうしようか。他にも試合が見られないのであれば、もはやここにいる理由はなくなってしまったが…。

173『迫真 -Reality- 』:2016/01/05(火) 23:25:15
>>171(冬樹)
決して『曳舟』への警戒を解かず、じっくりと観察する『冬樹』。
『曳舟』はコメツキバッタのような姿勢を崩さず、卑屈な笑みを浮かべる。

    「ヘッヘッヘッ、何を仰られますか……。

     アタシは昔からこーいうサガでごぜぇまして、
     お天道さまを避けて、雨と埃を喰って生きて参りました。
     これも全て、皆様の『間』に立って、『需要』を満たすため……」

回りくどい言い方ではあるが、『曳舟』自身に似合った『姿勢』だと言いたいのだろう。
依頼内容を吟味する『冬樹』に対しても、細めた目や盛り上がった頬を崩さない。

>「それを『殺さず』制圧しろってわけかい。
>そんな『面倒』な仕事……当然相応の『値』がつくんだろうね。しかも」

     「勿論、でごぜぇます。
      ――――『150万円』、一晩でこれだけでごぜぇます。

      ……ええ、勿論。
      実を言いますと、襲い掛かる『スタンド使い』というのが、
      『アリーナ』という『闘技場』に所属する『ファイター』でして、

      『護衛人』も『襲撃者』も『依頼人』も全部がぜぇんぶ、
      『アリーナ』の関係者、壮大な『内輪もめ』ってやつですなぁ」

『死者』が出てはならない理由を『曳舟』は勿体を付けて語り始める。

     「ヘッヘッヘッ、『K-1』しかり、『MMA』しかり、
      『拳』で生まれる『絆』なんて、とんでもねぇホラ話でごぜぇます。
      いつだって、人と人の間をつなぐのは、“コレ”でしょうなァァ〜〜〜ッッ」

>>172(東雲)
「ああ、ちょっと待っててくれるか?

 ……ん? なんだ、反応がないな。
 中にいないのか? ……なんだ、おかしいな」

『黒服』は怪訝な顔をして『トランシーバー』を見つめている。
『故障』を疑って色々なボタンを押しているが、通信に応えないようだ。

      「おい、どうした?」

                    「『吉田』さんを知らんか?
                     トランシーバーに反応がないんだが」

      「控室だろ? 毎度毎度足を運んで、あの人も律儀だよ。
       ――――おお、『東雲』君じゃん。次の対戦、いつ?」

                    「ちょっと様子を見てくる。
                     ……折角だな、『東雲』。
                     直接、マッチングを頼んでみるか」

フランクな『黒服』が見張りの交代にやって来たのを見計らい、
門番の『黒服』は『吉田』の様子を探ろうと、『東雲』を誘っている。

174春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/05(火) 23:35:09
>>173
「・・・・ま、そういうことで良いやね。


どうにも『食わせ物』の匂いがするが、
当人がこう言うんだ。まあ、『尊重』しとこう。

「『1.5』。まあ、そのくらいは貰わないと
割に合わんだろうね。
しかし『闘技場』?随分とまあ、『変わった』
連中もいるもんだ。『スタンド使い』の戦いに、
『カネ』が動くってのかい」

未知の世界に、未体験の依頼。
いつもなら、我が身最優先、首は突っ込まないんだが――
最近は、どこか『空虚』だ。『受けてもいいや』、そう思った。

「ま、『内ゲバ』だろうが何だろうが、
貰えるモン貰えるなら文句は言わないよ。
しかし、『ファイター』ってんなら、あんまり
『傷物』にしちゃあマズいのかね?」

単純に『殺さなければいい』のなら、『何だって』出来るが、
『損耗を避けてほしい』という話だと、ちょっとこちらも
取れる手が減る。その辺、確認しとこうかね。

175東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/05(火) 23:41:01
>>173

「・・・・・?」

『吉田』さんの仕事に対する姿勢は勤勉実直そのものだ。
その彼が応答しないとは。と思っていたら、どうやら他の『選手』の応対に当たっていたらしい。

「こんにちは」「次の試合は、『慧観』さんが全力を取り戻し次第のつもりです」

新たな『黒服』に礼をしつつ、述べる。
門番の方の心遣い、ありがたく頂戴しよう。どうせならば、伝言よりも直に頼むのが自分としても良い。

「よろしいのですか?それならば、是非とも」

黒服の後について、自分も控え室へと向かおう。

176『迫真 -Reality- 』:2016/01/06(水) 00:11:48
>>174(冬樹)

    「ヘッヘッヘッ、『キズ』なんてのは、ツバ付けて治しましょ。
     ですがねぇ、死んじまったらどーしよーも、ねぇですわなぁ。

     ……またぁ、気を悪くされちまったらすみませんがねぇ、
     いえいえ、アタシも『冬樹』の旦那とは、後々も円満なねぇ、
     ながぁーい関係でいてぇんですよぉ、気味悪がっちゃあイヤですよぉ?」

長ったらしい前置きを『言い訳』に使いながら、
『曳舟』はスリスリと揉み手を練って腰を屈めていく。

    「――――『手足』を切り捨てるくれぇなら、構わねぇと聞いとります。
     『治す』手立てがある、そういう意味じゃあねェんですよ。

     連中は『手足』を捨てても『戦える』、そう聞いとります」

『曳舟』の眼の奥が妖しく煌めいた。
どうやら、『一筋縄』ではいかないようだ。

>>175(東雲)
フランクな『黒服』は口笛を吹いて、『東雲』を囃した。

               ギギギギギ ・ ・ ・

「そう、固くならなくていいぜ。
 俺にしてみれば、アンタらの方がよっぽどヤベェ」
    
     「姿形も見えねぇ『怪物』を好きに暴れさせられる。
      この『サングラス』がなきゃあ、俺も信じちゃあいなかった」

押し開けられる鉄扉の『軋み』に隠すように、『黒服』は呟いた。
彼が装着しているのは『実況席』にいた『森田』と同じ『サングラス』だ。

     「――――『吉田』さんは?」

                          「ああ、『山本』と一緒だったぜ」

     「なんだ、珍しいな。
      二人とも『控室』とは」

                          「監視は『緒方』さんがいるからな。
                           アイツもめっきり、『解説席』には
                           立たなくなったもんだな……」

     「『解説』になってないからな」

                          「あれ、『東雲』君じゃん。
                           次のマッチング、いつよ?」

『黒服』はその辺をフラフラしていたファイターに話を聞いていた。
20代前半のファイターは『東雲』を知っていたらしく、気軽に話しかけてきた。

177春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/06(水) 00:29:50
>>176
「なるほどねェ」

『手足』くらいなら捨ててもいい、と来た。
これは『筋金入り』の『戦闘者』だ。

「自分の身はもうちょっと労わるモンだろうに。
……ま、そういうことなら良かったよ。あっしも、『やりやすい』」

ニィ

口の端を吊り上げる。
ま、『精神的』なダメージのことは、聞いちゃいないが、
そっちは『気付かれない』だろう。

「『ヤワ』な連中じゃあなさそうで、何よりだ。
さて、それじゃあ……場所はどこなんだい」

ロケーションを尋ねる。
場所次第じゃ、『食糧』の現地調達もままならないからねえ。

178東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/06(水) 00:33:04
>>176

「恐れ入ります」
「ですが、わしは『力』があるからといって威張り散らすような輩にはなりとうないんです」
「年上であるあなた方には、こう話すべきだと親父も言うとったので」

軽く笑いながら、しかし首を振る。
しかしなるほど、あの『サングラス』が一般人にもスタンドを可視化させているのか。
『フィールド』を覆うガラスも、同じようなものだろう。

「こんにちは」「『慧観』さんが復帰次第、わしは彼に勝負を挑むつもりです」
「同じ相手を狙っとったらすいません。先にわしが頂いちまいます」

ぐっ、と握り拳を見せながら、同じ『闘士』である彼にそう返す。

179『迫真 -Reality- 』:2016/01/08(金) 23:12:47
>>177(冬樹)

    「場所は、ちょうどこの『倉庫街』でごぜぇます。

     何せ、営業停止になった『100円ショップ』の倉庫がありまして、
     そちらに『呼び寄せられる』と、クライアントからは伺っております……」

『100円ショップ』、扱う品は小物が多いだろうが、
『食料』については問題がなさそうだ。『大型』のものは乏しそうだが。

    「ヘッヘッヘッ、冬樹の旦那が動きやすければ、何よりでさぁ」

『曳舟』は下手な愛想笑いを浮かべる。
他に何もなければ、仕事に取り掛かれそうだ……。

>>178(東雲)
「――――やれやれ、『傲慢』だってのなら、
 悪態の吐きようだって、あるってのにな……」

        「人間らしく振る舞いやがって、やってらんねぇぜ」

『黒服』は皮肉げに吐き捨てるが、その言葉に邪気は感じられない。
お手上げだ、と言わんばかりの苦笑いが、微かに口元へ浮かんでいた。

        「いやいやいや、大したものじゃあないか。

         『和をもって尊しとなす』、ステキな言葉だと思わないかい?
         そうとも! 世の中には『輪』が必要だ。

         東雲クゥン、君のように『目上』を敬い、そして『目下』を導く。
         コミュニティーってのはそーやって、成り立つものじゃあないか。
         いやいや、感心感心。バンカラって外面してるってのに、
         中々どーして、『輪』というものを解ってるねぇー。俺も見習わなくっちゃあなぁ。」

挨拶をしてきたファイターが、敬服するかのように軽い拍手を送った。
『皮肉』ではなく、純粋な『感服』って視線が『東雲』に突き刺さる。

        「C級ファイターの『長堀カイト』だ。
         次は是非、『闘技場』で会おうじゃあないか」

『長堀』は『握手』を求めるように片手を差し出す。

180春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/08(金) 23:36:41
>>179
「ふぅん・・・・ま、いい環境じゃないか」

『100円ショップ』の倉庫となれば、
食糧のみならず、多様な小物の調達が期待できそうだ。
どうやって『誘き寄せるのか』、疑問は残るが、
それは『仲介』の知ることじゃあないだろう。

「存分にやらせてもらう、そう『クライアント』には伝えとくれ。
ところで・・・・さすがに『襲撃側』の『スタンド』のことは、
聞かされちゃあいないと思うが」
「あっしが『護衛』する『住職』とやらも、その口ぶりだと
『スタンド使い』なんだろ?どんな『人となり』、『能力』なのか、
円滑な仕事のために、ちょいと聞いといても良いかね」

181東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/08(金) 23:40:00
>>179

「このアリーナにゃあ、わしより更に『強い』ヤツらがおるんでしょう」
「『傲慢』になっとる余裕などありませんよ」

人間、やはり強くなればなるほど『慢心』しやすくなるものだろう。
だが、ここには更に目指すべき上の人間がいる。だからこそ、傲慢にならずに済むということでもある。
そして、語りかけてきた彼の意見に頷き同意する。自分はまだ一端の学生に過ぎないが、
それでもこういった社会性が人間において重要であることは知っている。
…少し耳が痛い話でもあるが。自分の課題の一つは、『堪え性』だろうか。

「『長堀』サンですね、その時はよろしくお願いします」

爽やかな人だ。こちらも笑いながら、片手を差し出し握手に応じる。

182『迫真 -Reality- 』:2016/01/08(金) 23:51:39
>>180(冬樹)
>どんな『人となり』、『能力』なのか、
>円滑な仕事のために、ちょいと聞いといても良いかね」

    「護衛対象は『白岡慧観』、
     国道沿いにごぜぇます、『玉泉寺』の住職でさぁ」

    「スタンド使いの闘う『闘技場』とあらば、
     中には悲惨な『事故』ってのも起きますなぁ……

     『慧観』の息子は、『アリーナ』の事故で死にましてなぁ。
     彼は『アリーナ』を憎み、ファイター達を片っ端から『再起不能』にしやしてねぇ。

     それが『運営』の逆鱗に触れた、ってところですなぁ。
     だが、『運営』ってのも一枚岩じゃあねぇんですわ――――」

『慧観』を始末すべきか、否か。そこで『真っ二つ』に分かれたのだろう。
『曳舟』の語り口調に感情は感じられない。完全に『無関係』のようだ。

    「スタンドの名は『エンプティ・エステート』。
     『仏具』を生み出す異能ですがねぇ、重要なのは『ヴィジョン』ですわ。

     聞けば『三面六手』を持つ、巨躯の『阿修羅像』。
     そのパワーを警戒し、今回の『闇討ち』に至ったわけですわなぁ」

>>181(東雲)
>「『傲慢』になっとる余裕などありませんよ」

      「その通り! いやいや、解ってるねぇ」

      「このアリーナは一つの『社会』だ。トーゼン、『秩序』ってのがある。
       そいつを乱すよーな『傲慢』な行為は、そりゃあ許されざるぜ。」

『長堀』は我が意を得たりとばかりに頷く。
応じた握手は力強く、彼自身の強い『意思』を感じる。

      「おっと、そろそろ待ち合わせだ。
       それじゃあ、吉田さんによろしくね」

『長堀』は鉄扉の向こう側へと消えていき、
『東雲』は『黒服』に尾いていくように、控室にたどり着いた。

       コンコン

                  コンコンコン

      「吉田さん、吉田さん。
       ――――留守か?」

『黒服』は訝しげに呟きながら、何度も『ノック』をする。
――――ふと、『東雲』は鉄サビのような匂いを感じた。
匂いは『控室』の奥から感じられる。

                    ィィィン―――

ふと、耳鳴りを覚える。
何かイヤな予感が、脳裏を過った。

183東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/09(土) 00:04:56
>>182

「…気持ちのえぇ人じゃのぉ」

去りゆく『長堀』に礼をした後に、呟く。
『慧観』と戦う前に考えるべきではないだろうが、それでも彼との試合も楽しみである。
そうして『黒服』の案内の元、『控え室』に到着した。

「・・・・・?」

ここでも応答なしか。また別の場所へ移動したのだろうか?それならば、なんとも間の悪い─────。
いや、この臭いは。強烈な一撃を鼻にもらった時と同じような、これは、まさか。

「すんません」

『ザイオン・トレイン』を発現。断ってから控え室のドアを開ける。
もし鍵がかかっていたなら、蹴り飛ばしてでも開ける。

184春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/09(土) 00:05:15
>>182
「ははあ、『怨恨』絡みかい。そりゃあまた、面倒な……
『恨み』で動く人間は、『利』でも『理』でも止まらん。
始末したいのはよく分かるよ」
「ま、あっしには関係ないがね」

むしろ、そんな存在を『守ろう』という者の存在に、違和感を覚える。

「『巨体』のスタンドか……敵になることは無いにしろ、
『共闘』するって視点でも、ちょいと扱いに困りそうだねェ」
「ま……『住職』も『死人』を扱う商売だ、『仲良く』やるさ」

キヒヒ、と引きつったような笑みを浮かべる。
……とりあえず、現状ではこれ以上聞くことは無いだろう。

185『迫真 -Reality- 』:2016/01/09(土) 00:19:17
>>184(冬樹)
>「ま……『住職』も『死人』を扱う商売だ、『仲良く』やるさ」

  「ヘッヘッヘッ、旦那もお上手でいらっしゃるっ」

  「『死』に慣れてるという点じゃあ、
   『葬儀屋』も『始末屋』も、
   似通っちゃあいるんでしょうなぁ……」

これぞ好機とばかりに、『曳舟』は露骨なすり寄りに走る。
犬の尻尾でも生えていれば、千切れんばかりに振っているだろう。

  「ヘッヘッヘッ、先回りでお願ェしますぜ。
   なにせ、頭数だけはしっかり揃えてると聞いとります。

   『冬樹』の旦那ぁ、末永いお付き合いにしてぇですなぁ。
   どうぞどうぞ、無事に事を終えてくだせぇよ――――」

>>183(東雲)
>「すんません」

             「――――!?」

           l/
          ト
                バァン!!


事態を把握した『東雲』の行動は早かった。
施錠されたドアを蹴り飛ばし、蝶番をぶち破る。

      オ オ オ オオ 

                 オ  オ オ オ ォ ォ ォ ―――― ――  ―

破れたドアが廊下へ倒れこむと、室内の様子は把握できた。
『控え室』は『事務室』に近く、八畳の室内にスチール机が並んでいる。
卓上のラジオやウォーターサーバー、マカダミアチョコレートの箱は、
缶詰になってアリーナの裏方仕事をする『吉田』の姿が目に浮かぶようだ。

                  「ゥ、  ァァ  」


                  「おま、ぇ、  

                   しの  ぉ  め――――」

床上には二人の人間が倒れている。
仰向けになって息を荒げているのは、解説席の『山本』だ。
虚ろな双眸で『東雲』を見上げ、血色の悪い貌を真っ青に染め上げている。


            ゴ ゴ       「逃げ、ろ」
        
              ゴ ゴ                「敵、襲―――」

            ゴ ゴ       「『見えな』、  かった――――」

『山本』に覆いかぶさるように、『吉田』が倒れこんでいる。
傍には彼の愛用していた『セルロイド』のメガネが、無造作に転がっていた。


            ――――『血』だ。
            二人の衣服はズダズダに切り裂かれ、
            おびただしい『鮮血』が、殺風景な室内を染めていた。


            「お、い」     「どうなってやがるッ!?」

            「東雲ェェ――――!!!」

事態を把握できていない『黒服』は、混乱したように叫んだ。

186春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2016/01/09(土) 00:28:52
>>185
「……ま、そうだね。あっしもまだまだ『仕事』は続けたい。
そんじゃ、また」

末永い付き合い、とは言うが、お互い『使える間』の付き合いだろう。
その間は良好な関係でいよう、とは思った。

話を切り上げて、件の『倉庫』に向かう。

187東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/09(土) 00:34:26
>>185

「…ッ!!」

「山本サン!吉田サンッ!」

部屋の中の惨状を見て悟る。
間違いない、『敵襲』だ。だが誰が、そしてなんの目的で?
『アリーナ』という、強者たる『スタンド使い』が集まる場所を運営するからには、当然それに対する備えはあったろう。
二人がやられてしまったのは、その備えをも突破したか、あるいは襲撃者への『制裁』はこれから起こるというのか。
だが何にせよ、まずは周囲を警戒しなければ。
内側から『施錠』されていた以上、他に出口がなければここに襲撃者がいるはずだ。

「『襲撃』です!恐らく『スタンド使い』ッ!」
「ここはわしに任せて、事態を他の人に伝えてください!」

袖元からロープを取り出し、両手で半分まで握りつつ残りを振り回す。
同時に『吹塩化』。辺りに『塩』を撒き散らして、空中や床で何かにぶつかる様子をソナー代わりにしたい。

『見えない敵』、そしてこの『切り傷』。…嫌な予想は頭をよぎる。

188『迫真 -Reality- 』:2016/01/09(土) 00:47:39
>>186(冬樹)
何やら言いたげな『曳舟』であったが、
『冬樹』はサラッと話を切り上げて、仕事の現場へと向かう。


               ヒュォォォォ――――z_____


吹き荒れる潮風が冷たい。
この仕事は苛烈を極めると、何処か直感が巡っていた。

春夏秋 冬樹『メメント・モリ』→『受諾』

>>187(東雲)
>「ここはわしに任せて、事態を他の人に伝えてください!」


    「あ、ああ!

     ――――こちら、『浦部』ッ! コード821発生!
     現在、東雲選手と同行中! 被害者は二名!」

              「――――山本と吉田さんだッ!

               早く来てくれ! あの出血じゃあ、長くねェよ!」

『浦部』と名乗った『黒服』は、悲痛な叫びをトランシーバーに叩き込む。
言葉通り、噴出する『血液』は今も床を濡らしつつある。


             ファサァァァァ――――


ソナー代わりの『塩』をバラ撒くが、大した反応は見受けられない。
『山本』はヨロヨロと身体を動かし、『タブレット』を突き出した。

        「ゃられ、た……。

         『吉田』さんの、手当を……。
         『カナディアン・スウィートハーツ』、『樹脂成形』の能力だ。

         この人は、俺なんかをかばうために、
         自分の身を捨ててまで、『治療』を優先してくれた……」

山本は悔やむような声を絞り出し、『東雲』に話しかけた。
彼の手にしたタブレットは巨大な亀裂が走り、マトモに見られる状態ではない。

        「・  ・  …… ァ ナ タ   しの ぉ めさん?」

ふと、『東雲』の脳裏に『吉田』の声が響いた。
ノイズが混じるような聞き取り難い声は、彼の『窮地』を如実に示していた。

        「たす、けて、下さい……」

                 「どう、ぁ、   助け、  下さい――――」

か細い声を漏らしながら、必死の声色で『助け』を求めている。

189東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/09(土) 01:17:25
>>188

「ちぃっ!おらんのか?!」

あるいは透明になり壁を抜ける能力、水道管から現れる能力などもあり得るか。
その場合なら、ここから既に逃走している可能性もあるか。
とにかく、ここでいるか分からない敵を警戒している理由はない。
『吉田』サンが生死の境をさまよっているのだ。

「大丈夫です、必ず助けますけぇ!」

とはいえ、自分に大した応急手当の知識などない。
せいぜい切り裂かれた衣服を破り、出血している箇所に巻きつけて抑えるくらいだ。
この出血では動かすのもよろしくないだろう。

190『迫真 -Reality- 』:2016/01/09(土) 01:27:51
>>189(東雲)

        ビリリィ

                 ググッ

『吉田』の着用している作業着を破り、止血を試みる。
『東雲』の必死な治療も虚しく、血液の喪失は進行している。

   >「大丈夫です、必ず助けますけぇ!」


      「ぁ す けて 、くださ」

                       「どうぁ、  たすけ、て――――」

うわ言のような呟きが、『吉田』の口から漏れる。
『東雲』の背後から足音が聞こえてくる。
『負傷』も珍しくないアリーナらしく、救援は迅速のようだ。


           「たす、けて」


                    「『慧観』、選手を」


           「たすけて、ください……」

『吉田』は息も絶え絶えになりながら、そっとタブレットを指差した。
亀裂の生じた『タブレット』に電源が入り、半壊した『液晶』に地図が表示される。
『GoogleMAP』に映し出されたのは、『倉庫街』の地図だ。
ある一点において、『マーキング』が施されている。

           「おい、何があった!?」

                   「なんだ、血まみれじゃあねぇか!?」

           「場外乱闘ごときで、随分と騒いでくれるじゃあないか。
            クックックッ、アリーナもよっぽど、話題不足と見えるが――――

            ――――おい、吉田ッ!?  しっかりしろ!?」

どやどやと押しかける『黒服』、何故か野次馬のように『尾藤』も付いてきている。
彼らは『吉田』と『山本』の負傷に驚きつつも、すぐに用意していた『担架』を広げる。


                 ゴトッ


『尾藤』の背負っていたギターケースが、驚きのあまり、ズリ落ちた。

191東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/09(土) 02:47:05
>>190

「すぐに医者が来ます!じっとしとって下さい!」

うわ言のように繰り返す『吉田』サン。それほど恐ろしい目にあったのか。
しかし、こんな見よう見まねの応急手当では事態が好転するはずもない。
ただただ早く、救護の人間が駆けつけてくれることを祈るしか───。


>           「たす、けて」


>                    「『慧観』、選手を」


>           「たすけて、ください……」

「・・・・・『慧観』を?」

それがこの襲撃に関係があるのか?次に狙われるのは『慧観』ということか?
そして板状の電子機器に示された、『倉庫街』と思われるポイント。
こちらに向かえ、そういうことだろうか?
そこへ、アリーナの人間が現れた。

「『襲撃』です」「二人とも、『見えない』敵にやられたっちゅうとりました」
「特に『吉田』サンの方は重大です」「…どうかよろしくお願いします」

『ギリッ』

事情を説明しつつ、立ち上がる。とにかく、示された場所に向かう他はない。
だがその前に、確認しておきたいことが二つある。

「次に狙われるんは『慧観』サンじゃと『吉田』サンは言うとりました」
「『慧観』サンの連絡先、『アリーナ』は知ってますか?」

「それと『尾藤』サン」
「あんた、今『鏡花水月』は持ってますか?」

192『迫真 -Reality- 』:2016/01/09(土) 13:04:07
>>191(東雲)
『浦部』と共に救護を始める『黒服』達は、
巧みなチームワークで『山本』と『吉田』を担架に乗せる。

       「しっかりしてくれ!」

              「ファイターの搬送は後回しだ!
               『森田』さんにも連絡を頼むッ!」

『浦部』は周囲の黒服達の指揮を取りながら、二人を搬送する。

>「それと『尾藤』サン」
>「あんた、今『鏡花水月』は持ってますか?」

         「俺を、誰だと思っている?
          ――――『常在戦場』、アリーナにおいては必然だ。

          『東雲』、背中を守れ。『吉田』と『山本』の弔い合戦だッ」

『東雲』の問い掛けを『応戦』の要請と勘違いした『尾藤』は、
床上に落ちた『ギターケース』を蹴り開け、『日本刀』を取り出した。
それを、すぐさまに抜き放って構えると、見えない敵を探すように周囲を見回す。

                                  . . .
              ドロォ .     「おい、てめぇ……」
                   ・               . .
                              「なんだよ、それッ」

担架を運ばずに控室に残った、数人の『黒服』が表情を一変させた。
水鏡のように磨かれている『鏡花水月』の刀身、
それは今、『鮮血』で真っ赤に染まっている――――

        「―――――ッ!?
                                    スゥゥ...
         なっ、違ッ!  誤解だッ!」
                     ...
                    「テメェ、『消えてる』じゃあねェか!」
                        . .
                    「『凶器』片手にほざいてんじゃあねぇぞ!」
                                        . . .
                    「締め出し喰らって逆恨みか、クソ侍ッ!」

『慧観』が狙われてると伝えはした『東雲』だったが、
どうにもそれどころではないと、『黒服』は聞き流してしまったようだ。
ブチキレた『黒服』達は腰元に吊るした『電撃警棒』を抜き放ち、
見えない『尾藤』を捉えようと、ジリジリと間合いを詰めてくる。

        「クソッ、話にならん……」

                    「『東雲』、手を出すなよ。
                     そこに『慧観』がいるっていうなら、

                     こっちから出向いて『潔白』を証明する」

いつの間にか『東雲』の背後に回り込んでいた『尾藤』が、
姿を消したまま『東雲』に小声で話しかける。

        「それと、なるべく不自然じゃあない形で、
         俺について『言及』してくれ。出来れば『持続時間』を伸ばしたい」

『ザ・カレッジ・ドロップアウト』は『言及』によって『姿』を消す能力だ。
それを『東雲』は体感によって理解し、『観客席』でも伝えられている。
ここで『姿』を消させられるなら、『尾藤』の逃走時間を稼げるだろう。

193東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/09(土) 21:15:51
>>192

「お願いします…ッ!」

『黒服』達の手際の良さに、内心感嘆する。流石は荒事専門のアリーナに勤めているだけある。
これならば、あるいは。いや、きっとだ。きっと、二人は助かるはずだ。

「………」

一方、意気揚々と『鏡花水月』を取り出す『尾藤』サン。杞憂だったか、と胸を撫で下ろす。
しかし取り出されたその美しい日本刀は、血の色に染まっていた。
当然、周囲の『黒服』達は『尾藤』サンを警戒している。現場を見る限り、容疑者としては濃厚だ。
だが、だからこそ『尾藤』サンは犯人ではないと思う。『鏡花水月』が凶器として使われたとしても
だ。

「…わしはまだ、『尾藤』サンが犯人と決めつけるんは早いと思います」
「『観客席』におった人間なら、『鏡花水月』の能力は知っとってもおかしくない」
「まぁこの短時間で『尾藤』サンが得物を奪われ、しかもそれに気付いてないまま
 返却されるっちゅう展開は、想像し辛いかもしれませんが…」

あり得なくもないのが、この尾藤という男でもある。
とにかく、『言及』はこの辺りでいいだろう。

「わしは『慧観』サンに会うてきます。もしかしたら、『襲撃者』とブツかれるかも知れません」
「今のところは誰が狙われてもおかしくないでしょう!気ィつけて下さいッ!」

そう残すと、『ザイオン・トレイン』を解除してロープをしまいつつ、『倉庫街』へと走る。
『尾藤』サンと共に行くなら、歩調を合わせる必要がある。

194『迫真 -Reality- 』:2016/01/11(月) 22:26:26
>>193
>「…わしはまだ、『尾藤』サンが犯人と決めつけるんは早いと思います」
>「『観客席』におった人間なら、『鏡花水月』の能力は知っとってもおかしくない」
>「まぁこの短時間で『尾藤』サンが得物を奪われ、しかもそれに気付いてないまま
> 返却されるっちゅう展開は、想像し辛いかもしれませんが…」

   「バカを言うな!
    どー考えてもだなぁ!」

         「――――いや、『東雲』の言うことも最もだ。
          何にせよ、あの『鏡花水月』が重要な『凶器』なのは明白、

          まずは『尾藤』はともかく、『鏡花水月』を……?
          おい、あの男、何処に消えた?」

中には冷静な『黒服』もいるようだ。
『尾藤』に対する疑惑はひとまず払拭出来たが、
『黒服』達は『重要参考人』として、『尾藤』を探す方針のようだ。

       ――――ダダダダダダッッ

廊下を駆ける『東雲』の傍を、『尾藤』が並走している。
『ザイオン・トレイン』を解除した『東雲』の走力が人並みとはいえ、
身体能力の高い『東雲』のトップスピードに追い付き、汗一つ書いていない。

         「助かったが、お前は先に行け。
          どの道、『黒服』の連中を撒く必要がある」

         「どういう『トリック』を使ったかは知らんが、
          俺の『鏡花水月』をパクっておいて、
          手入れも怠ってこっそり返す『無礼者』には、
          俺とて容赦を見せる必要は、ないだろうさ――――」

太い眉を歪め、『尾藤』は怒りを露わにしている。


   「いたぞ、『尾藤』だッ!」

                            「抜刀してるぞ!
                             逃がすんじゃねェ!」

         「左を曲がれば『裏口』だ。
          そっちから出て行くんだな――――」

『緊急事態』の発生により、入り口の『鉄扉』の前には数人の『黒服』が警備をしている。
姿を消した『尾藤』は『脱出口』を告げると、何処かへ去っていった。

195東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2016/01/11(月) 22:53:41
>>194

(流石じゃのう)

足腰にはそれなりに自信があったが、並走する隣の侍もそれは同じということだ。
伊達に『尾藤正真流』とかいう剣術を会得しているわけではない。
どこか詰めの甘い所さえなければ、更に隙のない強敵として完成されていただろう。
もっとも、彼が成長するならば自分はより更に成長するだけだが。

「承知しましたけぇ」

侍の言葉に頷く。流石に四六時中『消えている』わけにもいかないか。
しかし『尾藤』サンの言うことが本当ならば、やはり『闘士』の中に犯人がいる可能性はそれなりに高い。
あの『ギターケース』の中から尾藤サンに気付かれず刀を盗み、更にそれを返すことができる。
そして『鏡花水月』の能力を知っているとなると、『観客席』にいた『スタンド使い』が候補に上がる。
まぁこの前の和服の少年のように、『闘士』でないスタンド使いがいてもおかしくはないが。

「ご武運を」

別れを告げ、再度『ザイオン・トレイン』を身に纏う。
彼に告げられた裏口から『倉庫街』へと、余力を残しつつも、なるべく急いで向かおう。

196『迫真 -Reality- 』:2016/01/11(月) 23:30:45
>>195
>「ご武運を」

『尾藤』の無事を祈る言葉に、応えは返って来なかった。
代わりに、あちこちから『尾藤』を探す声が聞こえてくる。

    「クソッ、どこに消えたッ!?」

               「いや、声を出すな。
                『声』で消えるのがヤツの能力だろうが」

『声』を封じられた『黒服』達は連携が取れず、
神出鬼没の『尾藤』を中々捉えられないようだ。
その間に『東雲』は裏口へと駆け、『黒服』の背後を抜けていく。

    「――――おい、あれ!」

               「バカっ、勝手に出て行くんじゃねェ!」

怪我人を運ぶ為の『搬送車』を移動する為に
警備をしていた『黒服』の隙間を抜けていく『東雲』。
制止を掛けようと大声を張り上げる『黒服』達だが、
彼らの指示に従う道理は、今の『東雲』には存在しない。


             ヒュォ ォ ォ ォ  ――――


『潮風』を追い抜くほどの速力で、真冬の『倉庫街』を駆けて行く。
『東雲』の推測ならば、犯人は『ファイター』の可能性が高い。
そして、それが『慧観』をも狙うとならば、
決して一筋縄ではいかない『スタンド使い』だろう……。

197太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/11(月) 23:42:46
真っ黒な『外套』と『帽子』を着用した人型スタンド。
触れた『平面』に『どんでん返し』を設置する能力。

(…なのだが、現在、精神的再起不能のため発現不可)

『ザ・サードマン』
破壊力:C スピード:B   射程距離:D
持続力:C 精密動作性:A 成長性:A
-----------------------------------------------

【持ち物】
あったか〜いミルクティーの入った肩掛け1000ml水筒  
倉庫街の鳩にあげたり、自分が食べたりするため、パンの耳をビニールに入れてきた
財布はさっき無くした…。

【服 装】
ダウンジャケット、灰色のシャツ、ふわふわ手袋、黒のズボン、
やっすいムートンブーツ(毛皮ではない、でもあったかい)

198『迫真 -Reality- 』:2016/01/13(水) 21:54:18
>>197
「――――異常は、ありませんね。
 サッカーでも野球でも、それこそトライアスロンだって、
 お好きなスポーツは、なんだって出来るほどに『完治』している」

学校帰りの夕方、『太田垣』は『松前総合病院』ではなく、
市内の『大学病院』へ『負傷』の後遺症がないか、診察を受けた。
特段、理由があるわけではなく、『なんとなく』といったところだ。

      「しかし、前の『病院』では『緊急入院』ですか。
       失礼ですが、『事故』か何かでしょうか?

       ――――ああいえ、肉体の『前面』と『背面』、
       両方を強く打ち付けられていますので、
       『自動車事故』だと思ったのですが、

       その割には『負傷』の度合いが浅いですからね」

『太田垣』を診察しているのは四十代前半の医師だ。
醸し出す雰囲気の割には外面は若々しく、
纏った真新しい『白衣』と同じく、清潔感を漂わせている。

199太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/13(水) 22:09:49
>>198

「大仏にブン殴られたって言ったら信じるッスか?」



 という訳で病院にいるのだった

「なんか…なんだろう、体のレスポンスがそれとなく悪いというかァ」
「モヤっと …モヤっとするような」
「そのなんか…なんというか…」


壁に張られた謎キャラクターのカレンダーのまちがい探しを眺めながら返事しとく。
最後の7個目がどォ〜しても見つからない。


(よく考えるとそれは外科の領分じゃあ無いな…)
(…この医者、『性別』は?女医だってんなら今後の対応を考えなきゃならない)

200『迫真 -Reality- 』:2016/01/13(水) 22:53:05
>>199
「……どう、でしょうね」

突拍子もない『太田垣』の答えに対し、
医師は曖昧に言葉を濁すと、カルテに視線を戻した。
彼は『男性』だ。理智的な表情をしている。

     「モヤッと、ですか。
      なんとも、図りかねますね」

精神的に『覇気』がない。
『太田垣』のパフォーマンスを一言で述べるなら、これだ。
そのせいか、自身に起こる『違和感』を言葉に出来ず、
医師の背後に逸れた視線は『間違い探し』に向いてしまった。

     「とにかく、肉体的には異常はございません。
      退院後は何かと慣れないとは思いますが、
      少しずつ、前の生活を取り戻していきましょう」

      「では、お帰りの際は、受付によっていって下さい」

事務的な言葉に背中を押され、『太田垣』は診察室から出て行く。
――――結局、七つ目の『間違い』には気づかなかった。
診察券を受け取って会計を済ませる最中、視界の端に『ニット帽』が過った。

     「――――おや、貴方は」

その男に見覚えはあった。
巨躯をカジュアルな冬服に包んだ男は、
ずんぐりむっくりした体躯から『だるま』を連想させる。

     「『太田垣』、君でしたな。
      対戦相手との『入院先』は別になると、
      『アリーナ』からは伺っておりましたが」

『慧観』は闘技場で対峙した際と変わらない、柔らかな表情を浮かべる。
その手には『スマートフォン』が握られ、GoogleMAPが表示されている。

201太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/13(水) 23:22:11
>>200
『健康』ってことになったのね、結局。薬の処方も無しなのね。

ヨソ見が多い、いつの間にか迷子になる、なんか突然キレッキレになる、とは昔も言われてたし、
通知簿では『もっと冷静になれ』って感じのことを毎回書かれていた。
まあきっとその類のアレなんだろう…多分、ね。



 「……」
 「……あッ…『住職』?」



洋服も着るのか、この人。
ニット帽……やっぱ坊主って頭冷えんの?


「えーと、本日はお日柄もよく…
       …じゃない、何だ」

 「…もう『退院』はしたんスよ」
 「今日はちょっと、別のアレで」
 「………」
 
ここで会ってしまうとは…微妙な気分だ。適当に話切りあげて帰っちゃおうかね

202『迫真 -Reality- 』:2016/01/13(水) 23:28:23
>>201
まさにバッドタイミングな『遭遇』だ。
歯切れの悪い『太田垣』に対し、『慧観』は和らいだ表情を崩さない。

    「そうですか。ならば、結構なことです。
     ――――少し、歩きましょうか」

柔和な笑みの裏に、有無を言わさぬ圧しの強さを感じられる。
人目に付かない場所で、行いたい話なのだろう。

203太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/13(水) 23:50:45
>>202
この人と顔を合わせるのは、正直気まずいのだが、いますぐ帰りたいのだが、

「えっと、でも自分用事が…」
「……」

 「…ハイ ワカリマシタ」


だがタダで退くつもりなど毛頭ない。
移動しながら、目についた自販機の前で、
あー喉が渇いちゃたァー、と言って奢ってもら…

「……あッ何でもないですごめんなさい」
「さ、さ、行きましょ、ね?」

…自分は何処に連行されるのだろうか。慧観のスマホを目の端に捉える。

204『迫真 -Reality- 』:2016/01/14(木) 00:19:01
>>203
『太田垣』はスマートフォンを視線で追う。
画面に表示されているのは『倉庫街』の周辺地図だ。

      「そう、時間は取らせませんから」

『慧観』には押し殺した迫力こそあるが、『悪意』は感じられない。
『太田垣』の視線の意図を組んでか、『自販機』の前で立ち止まり、
がま口から小銭を取り出して装填した。


           ガチャッ
                     ポン


『慧観』は暖かい『缶コーヒー』を『太田垣』へと差し出した。
そして、葉の散った並木道を、二人はゆっくりと歩いて行く。

      「――――『吉田』さんから、連絡が来ました。
       貴方との試合を見て、『知空』の最期の闘い、
       それを映した『ビデオ』を渡してくれると、確約してくれました」

      「本来であれば『秘中の秘』です。
       特に、試合として成立していない、
       『殺害シーン』が映された『ビデオ』など、
       運営としては、存在を認めてはならないもの」

原子力発電所のタブーから『堀北真希』の新居まで、
口に戸を立てられないインターネットの発達した昨今では、
『情報流出』の対策に万全を期すのは、必然だろう。

205太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/14(木) 00:58:31
>>204
コーヒーを受けとった。
…ぶっちゃけ、水筒を持ってるので、
飲み物なぞ奢ってもらう必要なぞ無かったのだ。
……自分ってばうっかりさん。えへへ。

>「――――『吉田』さんから、連絡が来ました。
> 貴方との試合を見て、『知空』の最期の闘い、
> それを映した『ビデオ』を渡してくれると、確約してくれました」

>「本来であれば『秘中の秘』です。
> 特に、試合として成立していない、
> 『殺害シーン』が映された『ビデオ』など、
> 運営としては、存在を認めてはならないもの」

 
  「それは…
     …『認めてもらえた』って事ッスね?」

    (マジか)(思い切ったな吉田氏)
    (で、住職の目的地は『例の倉庫街』。この流れは…)


「これから『受け渡し』って所ッスかね」
「伝えてくれてありがとうございます……じゃあ…自分…帰ります…」

 …
  ………。


「まぁ〜さかぁ〜〜〜〜〜ッ  自分これから連れていかれるんスかぁ〜〜〜ッッッッ!!??」
「なんでェ〜〜〜ッ !?」

206『迫真 -Reality- 』:2016/01/14(木) 22:51:21
>>205
>「まぁ〜さかぁ〜〜〜〜〜ッ  
> 自分これから連れていかれるんスかぁ〜〜〜〜ッッッッ!!??」

    「ハッハッハッ、これは妙なことを仰りますなぁ。
     『太田垣』君には、もう関わりのないことでしょう」

『慧観』の大笑いは『太田垣』の予想を裏切る形となった。
その笑みが消え去ると、『慧観』の表情は真剣味を帯びていく。

    「偶々の巡り合わせとはいえ、袖触れ合うは他生の縁。
     今日を逃せば会う機会もありますまい、『礼』を述べたく思います。

     あの闘いを観戦した『吉田さんは、
     私の『気概』に応えたいと、自ら『連絡』を取ってくれた。
     それは紛れも無く、貴方との闘いが『烈戦』だったからに他ならない」

    「――――無論、今でも『闘争』は愚かしい。
     しかしながら、そのバカさ加減に救われた、
     ……そうしたことも、長い人生にはあるものですな」

最後の言葉はため息混じりに流れて、『慧観』は再び、『太田垣』へと目を向ける。
金縁メガネの奥から覗ける双眸は、大海のように底が知れなかった。

    「では、息災で。
     もう二度と、鉄火場に戻ることもありますまい」

『慧観』の言い残した言葉に従うか否かは、『太田垣』の『闘志』が一番解っていた。

207太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/14(木) 23:34:20
>>206
なんだか思い過ごしだったようだ。ほっと一安心。

「戦わずに済むことは戦わずに済ませたいッスよね」
「自分ももォ〜ッ勘弁。流された結果アリーナに『巻き込まれる』のは勘弁ッスね」

缶コーヒーのプルトップを開く。あったかい湯気。


 「…住職……アンタは?」

 「『アリーナ』に強く、関わってしまったんッスよ
  自分らの意志とか関係なく… 縁を切るなんて簡単にいくモンッスかね
  あそこは『強いヤツの流す血』が求められる場所ッスから…きっと  」


缶に口を付けながら、ようやく慧観の顔を見る。
冬の午後の光の具合か、金縁メガネの奥から覗ける双眸は、大海のように底が知れなかった。


「…いや、自分の杞憂でしたかね、失礼。」
  
誰が何といおうと、無視しとけばいいのだ。
胸に昂る闘志は、適当に誤魔化して、燻らせたままにしとけば良いだろう。
ましてや殴りあって大喜びしてそこに誇りを見出しちゃう、アリーナの連中は加減知らずのバカばっかなんだな。

 
 (…俺の戦う理由なんて、自分は知らんぞ。)
 (まさか『殺された息子』なんていないし)
 (俺たいして強くないし…心も体も)
 (闘志とか……知らん、知らんぞ)
 (なんかモヤっとしてるし)

208『迫真 -Reality- 』:2016/01/14(木) 23:54:37
>>207
> 「…住職……アンタは?」

> 「『アリーナ』に強く、関わってしまったんッスよ
>  自分らの意志とか関係なく… 縁を切るなんて簡単にいくモンッスかね
>  あそこは『強いヤツの流す血』が求められる場所ッスから…きっと  」

『太田垣』の忠告に対し、『慧観』は口角に笑みを浮かべた。
平時も試合も問わず、今までに何度も見せた柔和な笑顔。
何時もと違って、何処か『憂い』を帯びるように両の目は留められていた。

去って行く『慧観』の背中を眺め、『太田垣』は病院を後にする。
『白亜荘』に直帰する気にもなれず、しばらくはネオンストリートで時間を潰し、
やがて、目的もなくフラフラと歩き続けると、鼻先に潮風が流れてきた。


           ブオオオォォォォ――――


大型トラックの出入りする『倉庫街』、紛れも無い『アリーナ』の根城。
いつの間にか『太田垣』の足は因縁の地へと辿り着いていた。


                ブブブブブブ――――


ふと、『太田垣』の携帯電話がバイブレーションを起こす。
電話の着信。『吉田松太郎』と登録されている。

209太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/15(金) 00:24:36
>>208
本来なら、駅前かなんかに行って鳩がパンの耳をつっつくのを見ている予定だったのだ。
それが

「…何故ここに…」

 ポケットの振動と同時に、鼻に流れこむ腐ったような潮の臭い。海面はゴミまみれに違いない。
 眼前を通り過ぎる、トラックの廃棄ガスを浴びる。くっせえ。

  ブブブブブブ――――
     『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ   シ ャアッ ! 』
 
             【着信:吉田松太郎】

  「何故…」

求めていたとでも言うのか。運命がそう引き寄せるわけがない。
違う、たぶん偶然に、何も考えず歩いていたからこうなる。
さっきの慧観の様子はアレだったが、あの人ならたいがいの事はなんとか出来るはずだ。心配はないのだ。

  ブブブブブブ――――

          『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ   シ ャアッ ! 』

          

     『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ   シ ャアッ ! 』
   『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ   シ ャアッ ! 』



 『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ   シ ャアッ ! 』
 『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ   シ ャアッ ! 』


『デレレレレレレ ドゥルル  デレレレレレレレレレレレンッ  「あ〜〜ッ出るよ分かったよッ!」


 「もしもしッ!?何かッ!?」
 「住職には『自分は行かない』ッてそれとなく伝えたッスよ!?」

210『迫真 -Reality- 』:2016/01/15(金) 22:49:51
>>209
>「住職には『自分は行かない』ッて
>それとなく伝えたッスよ!?」

        「――――何の話をしている?
         まあいい、……ならば好都合だ」

『吉田』からの番号のはずが、電話口から聞こえたのは『尾藤』の声だ。
『尾藤』は躊躇うように言葉を留めていたが、やがて話し始める。

        「聞け、アリーナで『吉田』と『山本』が襲われた。
         襲撃者は強奪した『鏡花水月』を凶器にし、
         俺を『スケープゴート』へ仕立て上げている」

にわかに信じがたい話ではあるが、真剣味を帯びた『尾藤』の声に混じり、
走り回る足音や、何かを呼びかける怒声が聞こえてくる。

        「そして、次に狙われるのは『慧観』だ。
         『吉田』と何やら打ち合わせてたらしいが、
         ……その様子だと、心当たりがあるようだな」

211太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/15(金) 23:46:11
>>210

   ドゥ ロロロロロ ロロ ロ ロロロロロ


トラックの轟音が響く中でも、尾藤の言っている事はすんなりと耳に入ってきた。…ああ、やっぱりこうなるのか。



「……」
「…住職いわく『秘中の秘』らしいッスけど…事情をギリ察せる程度のことを教えるッス
  …もしあんたが何か企んでようと阻止したかろうと、自分には、どーでもいいんで、」


  「吉田氏と住職は、今日、2人で会う予定で、
     『とある物品の取引 』があるはずだった。
        場所は『倉庫街』…以上。」



「…じゃ、後は『住職』に電話してください…吉田氏の携帯にきっとアドレス残ってるでしょうに」
「あの人なら事態が分かれば、なんとか出来るッスよ、きっと……」 


 

   
 
    キョ  ―――――〜オ 
                  ギャッ ギャッ ギャッ ギャッ ギャッ
 

             近くの空でカモメが啼いている。


「……切ります」

212『迫真 -Reality- 』:2016/01/16(土) 00:03:33
>>211
『太田垣』の告げる言葉を『尾藤』は黙って聞いていた。
多少はボカした事情を語り終えた『太田垣』、『尾藤』は一拍置いた。

      「太田垣」

              「――――悪かったな」

憮然とした、謝罪の言葉が『尾藤』から発せられた。
カモメの鳴き声に遮られることもなく、ハッキリと耳に届いた。

      「『慧観』とのマッチングを紹介したのは、
       俺の余計なお世話だったな。

       ……お前も、巻き込まれるかも判らん。
       だから、出来るだけ『人混み』に向かえ。
       襲撃者も、そっちの方が狙いにくいからな」


            「――――チッ、クソッ!」


  ブッ
             ツー  ツー ・ ・ ・


それだけを言い残し、電話は呆気無く切れた。
電話口からの様子を聞くに、二人が『追い詰められた』のは明らかだ。
『尾藤』も逃走の最中、隙を見て『太田垣』に電話を入れたのだろう。


            ブロロロロロロォォォ―――z_____


トラックに混じり、黒塗りのハイエースが『太田垣』の前を徐行する。
信号待ちで停止したハイエースの荷台にはストレッチャーが設置され、
その上には誰かが寝そべっている。

――――メガネを掛けた、血まみれの中年男性だ。

213太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/16(土) 00:37:31
>>212
  (『人混み』、…」)
  (自分が『倉庫街』にいる事、電話越しにバレてたか…?)

 何故尾藤は謝ったのだろう…別に誰か悪かったとかではない。
 けっきょく自分は自分でしかなかった、それだけだ。
 …それとも俺あの人に何かされたっけ?


> ハイエース(動詞)されてる、見覚えのある、丁度さっき会ったような感じの人


   
 ええ…尾藤に電話…駄目だ、お取込み中だ。
 警察に通報でもするか…いや、なんか駄目そうな気がする

 いややっぱり、見間違いの可能性も…
 近づいて運転席を覗き込んでみる。

  「…見間違いじゃないよな…」
  「…巻き込まれかけ、所の話じゃねーッスよ自分」

  「というワケで ちッス」

 運転手の顔を見てご挨拶。

214『迫真 -Reality- 』:2016/01/16(土) 23:23:34
>>213
運転手をしている黒服を纏った青年に話しかける『太田垣』。
彼は『太田垣』を見ると舌打ちをし、クラクションを鳴らした。


           プッ
                    プゥゥ―――!!


事態は『予断』を許さないのだろう。
やがて、信号機が『青』へと変わると、
『ハイエース』は直進していった。

215太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/17(日) 20:57:30
>>214
くろふく:D、みたいな顔と印象の奴…偉かったりファイターだったりではなさそう、つまる所首謀者である可能性は低そう。
こいつは下っ端、リーダーのもとに護送中、って所か。

 「まあ何にせよ『関係者:太田垣良』の顔は見せておいたわけで…」
 「あの黒服Dが自分の事知らないほどに下っ端で事情に疎くない限り、
  ……そして自分が過大評価されていたら、『目撃者』『警戒対象』として認識されたかもってわけッスね」


(…ナンバープレートでも見ておくか…隠されてるかもしれないけど)
(あと周囲の確認。ヒッチハイクに応じそうな車は?タクシーは?鍵のかかってなさそうな捨て自転車は?)

最後に、大きく距離が離れていないなら、手元のスマホでも投げてみようか。ガラスに当たれば面白いことになりそう


 (まあ全部無駄なあがきだろうけど)
 (どこの角で曲がるかまでを見たら … …アリーナに、行こう)

216太田垣良『ザ・サードマン』:2016/01/17(日) 21:28:17
某PLにボコボコに言われて気づきました

もしかしてこれって『負傷した吉田が移送されてる』状況に立ち会ってるって事ですか
すみません『眼鏡』という点からてっきり『慧観誘拐中』に立ち会ったものかと認識しておりましたが…


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