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【場】『H“E”Il 2 YOU』 その2【ミ】
219
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/12(水) 20:24:48
>>218
「いえ、四ヶ月も前から会う約束をするなんて、よほど忙しいのか、それともよほど愛が深いのか、とね」
また、振り向きもせずに答えた。
冗談めかしてはいても、酷く無遠慮な物言いだった。
「すみませんね。嫌というわけじゃないんですが、お気持ちだけということで」
「ちなみに私も、あまり甘いものは食べません。
スコーンなんかは好きですし、それに、事務所にお茶請けぐらいはありますが」
コツコツコツと、階段を上る音が響く。
ザァザァザァと、雨音がこだまする。
屋根の下に入ったことで、かえって雨の音が建物に反響して大きく聞こえた。
そうして、カツカツカツと階段を上れば、事務所の扉。紫はコートのポケットをまさぐった。
「ええ、まぁ。
浮気調査に失せ物探し、所在調査に盗聴器探し。それと、身辺調査」
「およそ探偵がやることなら、たいていはやりますよ。
そうでないことでも、ものによってはやります。私を頼ってくる限りはね」
「あー、『別れさせ屋』はやりませんが」
あるのだ、そういう業務が。
「要するにターゲットと浮気して恋愛関係をリセットする仕事なんですが……っと」
そんな話をしているうちに、鍵が見つかったようだ。
ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んでガチャリと回す。
扉を開けば……
「ようこそ、『紫名探偵事務所』へ。
まずは……シャワーでも浴びます? そのままってわけにも行かないでしょう」
そう広くもない事務所のお出迎えだ。
玄関口で靴を脱いでスリッパに履き替えながら、紫は微笑んで問いかけた。
220
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/12(水) 22:17:13
>>219
「こっちに住んでる親戚への挨拶のついでとか言ってたわ。」
「挨拶なんて私達がとっくに済ませてるのに。
親戚付き合いも大変なのね。」
紫の物言いを小鍛治は気にしていないようだ。
余裕そうな小鍛治の態度は本当に彼女が余裕である証拠なのかもしれない。
「『別れさせ屋』やらなくて正解ね。」
紫のやらない仕事について話すときも彼女の肩に力は入っていなかった。
「人の愛の形は誰も好き勝手に出来ないし、してはいけないの。」
「身辺調査もプライバシーの点から見れば犯罪的なのだけど
『別れさせ屋』よりはマシに思えるわ。」
「よかったわ。あなたがもしそんなことしていたら……」
「私、あなたをこの階段から突き落としていたわ。」
そう言って笑う。
彼女の髪の色と同じ黒々とした瞳の中でねっとりとした炎が燃えているのかもしれない。
「うふふ。冗談よ。」
「ところで、シャワーを貸してもらう案なのだけど、私替えの服が無いのよ。
紫さんの服を一時だけ貸してもらう方法もあるのだけど、サイズが合わないかもしれないわね。」
小鍛治の背は紫よりほんの少しだけ小さい。
サイズは合うのかもしれない。
ただし、胸などが窮屈にならなければの話だが。
「別に嫌味じゃないのだけど。」
221
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/12(水) 23:02:55
>>220
「なるほど、親戚への挨拶。
家長というのは、色々と苦労が多いものとは聞きますが」
そういう紫は、既に両親を失っていた。兄弟もいない。
田舎に祖父母が住んでいるが、家族と言えばそれぐらいで、親戚づきあいも特にない。
だから実際のところ、小鍛冶の苦悩を理解できるとは少し言い難い。
「あはは、そりゃ怖い。
初めてですよ、別れさせ屋をやってなくてよかったなんて思うのはね」
階段から突き落とすかもしれない、なんて言われて、紫はけたけたと笑った。
少しも本気にしていないようだった。
もしかすると、本気だったとしてもこうして笑うのかもしれないが。
「実際向いてないんですよ、別れさせ屋なんて。
性に合わないしガラでもない。好いた腫れたも知らない女がやる仕事じゃないでしょう」
ただでさえトラブルの多い仕事なのだし、と続ける。
探偵業は常にトラブルと隣り合わせだ。人のプライバシーを覗き、時には土足で踏み込む仕事なのだから。
そこに別れさせ屋などという面倒な仕事を背負い込めば、面倒なことになるのは目に見えている。
適性以前に、そもそもやる気が無いという様子だった。
「ま、探偵なんて金で雇うストーカーだなんて言われたら、強く否定はできませんけどね。
しかし知りたいことがあると私を訪ねてくる人がいるのであれば、なんだって探しますよ。
需要と供給、なんて言うと色気がありませんが、探偵ってのはそういうもんです」
そして特に機嫌を損ねた風でもなく、笑ったまま傘を傘立てに入れ、コートを脱ぎ始める。
下にはシャツとサスペンダーで吊ったパンツが隠れていて、確かに小鍛冶と比べれば細身であった。どこが、とは言わないが。
「ああ、サイズのことでしたら大丈夫でしょう。
職業柄、変装用にサイズに余裕のある服のストックがありましてね」
「……とはいえ、下着はどうしましょうかね。
その様子ですと下着まで濡れていそうですが、ショーツはともかく流石にブラは……」
紫の視線が小鍛冶の胸に注がれる。
実際はショーツすらサイズが合うか怪しいところではあるが、確かにブラは確実に合わないだろう。
そこにコンプレックスを感じている様子でもなく、ただ事実としてスタイルの違いを問題視しているようだった。
「……一応乾燥機もありますし、とりあえず一時的にということなら問題ないかと思いますが。
どうします? それとも下のコンビニで買ってきますか?」
222
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/12(水) 23:31:37
>>221
「そうね。犬の気持ちが分からないと犬とは付き合えないもの。
人の気持ちが分からなければ人とは付き合えないわね。」
「あなたがそういうのを知らない女性なら、いえ知っていてもしないほうがいいわ。」
そう言って玄関口で立ち止まる。
袖の長い服に手をかけて脱いだ。
下に半そでのシャツを着ていたらしい。
「正直、紫さんのすることに私が口出しするのは余計なお世話かもしれないわね。」
「でも覚えておいて?『私はあなたを突き落とす覚悟は出来てるの』」
「あなたがストーカーだろうと名探偵だろうと関係ないわ。」
微笑みながらさらりと言ってのける。
しかし今の彼女にとって重要なのは探偵のあり方ではなく服だ。
「服は、おまかせするわ。」
「下着はいいわ。あまり好きではないというか。下着を必ずつける、というのもなんですものね。」
「それよりも、紫さんと話してるほうがいいもの。」
靴を脱ぎ、靴下も脱ぐ。
そうしてやっと探偵事務所に足を踏み入れる。
「シャワーと乾燥機まで案内してもらえるかしら?」
223
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/13(木) 00:08:35
>>222
(そう、人の気持ちがわからなければ、人とは付き合えない。
だから私は人とは付き合えない。相手が『名探偵』か、『怪盗』でもない限り)
その言葉は、ぐっと飲み込んだ。
あんまりにも愚痴っぽいからだ。
そんなことを思いながら、脱いだコートをハンガーにかけて……
続く小鍛冶の言葉に、少し驚いた顔を見せた。一瞬だけ、静止する。
「……プッ」
そして、噴き出した。
「あははははは! そりゃ結構! 精々受け身の練習をしておきましょう!」
それはつまり、階段から突き落とされても構わないということだったし、自分の行いを曲げるつもりはないという意思表示でもあった。
もちろん、紫も別れさせ屋だとか、あるいはあからさまな悪意のある仕事をするつもりはない。
つもりはないが、もし仮に小鍛冶に階段から突き落とされるような仕事をすることになっても、それが正しいと思う限りは止まる気はないらしい。
嘲笑う意図があるわけではないが、紫はけたけたと笑っていた。
「あはははは、はー……失敬、失敬」「おほん」
しばらくそうして笑って、いっそ涙ぐんでしまうまで笑って、一息つく。
「ではこちらにどうぞ。
服は貴女がシャワーを浴びている間に置いときます」
そう言って小鍛冶を案内する。
玄関口を通れば、ソファと机が置かれた応接間がある。
ソファは背を倒してベッドにもできるタイプだ。もしかするとここで寝ているのかもしれない。
部屋の右手には給湯用のコンロや冷蔵庫があり、反対側にはぎっしりと本や資料の詰まった本棚。
そして紫が案内する方には、扉があり、その扉を開くと脱衣所を兼ねた洗面所があった。洗濯機と乾燥機もそこにある。
そこに並ぶように、トイレと風呂場。風呂場はオーソドックスな、一人分のバスタブとシャワーがある簡素なもの。
これが紫名探偵事務所の全てだった。
全体的に手狭だが、手入れは行き届いているし、少なくとも人が過ごせる環境ではあった。
「ああ、最初はお湯が出ないんで、しばらく出して水がお湯になってからシャワーを浴びてくださいね」
224
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/13(木) 00:31:22
>>223
「うふふ。そうしてもらえるとありがたいわ。」
大笑いする紫。
小鍛治は口元に手をやり笑う。
非常に奇妙な空間であった。
初対面の相手を階段から突き落とすという小鍛治
それを受けて笑う紫。他のものが見たらなんと思うだろうか。
「では、お借りするわ。」
ぼとぼとの体で動く。
彼女が一歩踏みしめるごとに足跡がつく。
目だけを動かして中の様子を確認しつつ進んでいく。
興味深いものを探したりはしない。
あくまで確認のための視認それだけだった。
「紫さん。何分ぐらいで服は乾くかしら?」
洗面所で服を脱ぎ乾燥機へと放り込む。
適当に操作して動かす。
風呂場へと入るとシャワーを操作する。
雨を浴びていたときと同じような体勢でシャワーヘッドを見つめる。
「たしかに最初からお湯は出ないわね。」
かといってお湯が出るまで体に当てないようにする気は無いらしい。
「紫さん?もう出るわ。」
「シャワー、ありがとう。」
礼を言って風呂場から出る。
服はなにが置いてあるだろうか。
225
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/13(木) 00:55:50
>>224
「どうぞ、ごゆっくり」
「服はまぁ、30分程度で乾くでしょう」
そう言って風呂場に向かう小鍛冶を見送った。
小鍛冶が服を脱いでいる間に、クローゼットを開ける音や、コンロに火をつける音などが聞こえるかもしれない。
「――は―――でしょう? ―――から―――」
『それは――――だね――瞳を―――』
もしかしたら、シャワーを浴びている間に話し声も聞こえたかもしれない。
紫と、成人男性の声。
同居人でもいるのか。否、隠れる場所もないし、人がいるのならすぐにわかるはずだが。
小鍛冶が風呂場から出ると、味気ない白いワイシャツとカーゴパンツが畳まれて置いてあった。
どちらもメンズサイズで、確かにサイズには余裕がある。大きすぎることを懸念してか、ベルトも一緒に置いてあった。
なお、本人の希望通りと言うべきか、ショーツもブラも置いていない。
「ああ、いえいえ」
礼を言う小鍛冶に、紫が応接間から扉越しに返答した。
「ところで小鍛冶さんは、コーヒーに砂糖やミルクは入れますか?」
226
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/13(木) 01:24:14
>>225
(同居人かしら。いえ、でも……いいわ。
知ってどうしようと言うの、無駄よ。)
同居人の存在を怪しむがその考えを打ち消す。
存在しないはずだ、部屋の中は確認している。
じゃあこの声はどこから……?
「……いつこれを使うのかしら。」
探偵の衣装というのは彼女には思い浮かばないらしい。
だがこれは紫にとって必要な商売道具なのだろう。
ワイシャツのボタンを上まで閉め、カーゴパンツをはきベルトを締める。
綺麗に着こなす、というよりキチンと着る。
洗面所の鏡で髪を整えて紫の元へと戻っていく。
身だしなみには気を遣うほうなのかもしれない。
「コーヒーね。ミルクだけお願いするわ。」
応接間の中に三度ノックをして入る。
そして入るや否やこう聞いた。
「紫さん。ここって私とあなたの二人だけでよろしくて?」
「別に答えてもらわなくて構わないの。
紫さんのプライバシーは守るわ。」
「それと、シャワーだけじゃなくて、お電話も貸して貰えるかしら。」
227
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/13(木) 01:44:23
>>226
「アイ、アイ、どうぞ」
三度ノックをしてから応接間に入ると、紫がソファに腰かけてコーヒーを飲んでいた。
対面にはもう一つのコーヒー。これは小鍛冶のものだろう。ミルクとティースプーンも置かれている。
音も立てずにコーヒーを飲み、静かにコーヒーカップをソーサーの上に戻してから、視線を小鍛冶に向ける。
やはりというか、他に人はいないようだった。
「ええ、ここに住んでいるのは私だけですし、他に客がいるわけでもありませんよ?
ペットを飼ってるってわけでもありません。
正真正銘、私と貴女で二人きりですとも」
特に気負うようでもなく、そう答える。
しかし、確かに話し声は聞こえたのだが……
「幽霊ならいるかもしれませんけどね。
ここ、安かったんですよ」
紫はそう言って笑うばかりだ。
「電話なら、ご自由に。ここにありますので」
電話は、机の上に置かれているようだった。
もしかすると、他に置く場所が無いのかもしれない。
机には電話以外にも様々な物が邪魔にならない程度に置かれていた。
228
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/13(木) 02:07:19
>>227
「コーヒーまで用意してもらって申し訳ないわね。」
「でも、お礼をするといったらあなた断るんじゃない?」
コーヒーにミルクを入れ、少し混ぜてから飲む。
音は立てない。ただ静かに半分ほど飲むんだ。
ほぅと一息ついた。
「そう。幽霊ね。私には慣れたものだけど。あなたもそう?」
ゆっくりと立ち上がり、電話へと近づく。
しかし電話は見ていない。ただ獲物を捕らえる獣のように紫を見ている。
その顔は微笑んでいるがその眼光は鋭い。
「電話、借りるわ。」
ダイヤルを押す、携帯電話の番号で母の番号だ。
数度の待機音がしてから、応答された。
「もしもし、母さん?やっぱり来なかったわ。」
「いえ、いいのよ。分かってるわ。
今日、帰って来れないんでしょ?それも分かってるわ。」
普通の会話、なのだが彼女は自らの『銃』を取り出す。
まるで蛍光灯が点滅するように、出したり消したりを繰り返す。
豪華な銃ではない。かといって地味一辺倒と言うわけでもない。
およそ1mほどの銃身を持つ銃だ。
「今日は私も帰らないわ。あの子の家に行くわ。
……私が嘘をついたことあるかしら?そうでしょ?あなたとは違うの。」
「えぇ。さようなら。」
通話は終了された。その手に銃は無い。
通話を切る少し前に消えたのだ。
「紫さん?改めて聞くわ。」
「ここには私とあなた以外いない。さっき聞こえた話し声は幻聴。そうよね?」
229
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/13(木) 02:32:47
>>228
「別に礼をされるのが嫌だってわけじゃないんですがね。
恩を着せようってつもりがないだけですよ、私は」
そう言って、静かにコーヒーを飲む。
彼女はブラックで飲んでいるようだった。
コーヒーカップを持つ手には、クエスチョンマークの刺青が刻まれている。
茶うけにか、机の上には小さな籠があり、そこから小さなチョコを取った。
「私ですか?
ええ、まぁ、慣れっこですよ。とてもね」
幽霊に慣れているかと聞かれて、そう笑って答えた。
ご丁寧に肩を竦めるジェスチャーも交えて。チョコの包装を開けて、口に含んだ。ビターチョコだ。
「………………」
しばし、電話をする小鍛冶の隣で黙りこくる。
視線をチラリと向けたが、起こしたアクションと言えばそれぐらいだ。
彼女の出す『銃』に気づいているのか、いないのか。それすらも曖昧で判別しがたい。
獣のような瞳を向けられて、しかし返す瞳はどこか怜悧であった。
「ええ、そうですね」
問われて、答える。
「ここには私しか住んでいなくて、他に客がいるわけでもない。
別にペットを飼っているわけでもないから、正真正銘二人きりです」
そう言って、片目を瞑り。
「――――しかし、『幽霊』はいる」
大真面目に、そう答えた。
クエスチョンマークが刻まれた手で上を指す。
その指の上に、浮遊する『安楽椅子』が現れたかと思うと――――その椅子は縮み、そこには小人が座る。
『確かに僕は故人には違いないが……『幽霊』は心外だね』
「ならなんて呼びます? 世界唯一の詰問探偵?」
『いつも君が言うように、『名探偵』とでも呼ぶかい?』
「素直に『ホームズ』と呼びますよ、貴方を呼ぶのならね」
紫と語り始めるその小人は、鹿撃ち帽をかぶり、インバネスコートを羽織り、鷲鼻の目立つ英国人。
俗に『シャーロック・ホームズ』と呼ばれる男の姿をしていた。
230
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/13(木) 03:23:20
>>229
(運がいいわね。あの女は。)
電話を切って小鍛治は心の中でそう呟く。
「幽霊?そう、いるのね。幽霊が。」
刺青の彫られた手を見つめる。
ただ微笑んでいる。余裕の笑みだ。
紫の雰囲気に飲まれていない。
「そう。理解したわ。あなたはそういう事が出来る力があって、さっきはそれを使って会話をしていた。
彼が正真正銘のシャーロック・ホームズかは置いておくけど、あなたの言葉に嘘偽りはないわ。」
紫とホームズの会話を見て、小鍛治はそう判断した。
事実そうなのだろう。
ゆっくりとまたソファに座る。
「さて、どうしようかしら。」
「紫さん。彼がホームズであると証明出来るかしら。」
「別に無理ならしなくてもいいの。」
指を組んで紫にそう聞く小鍛治。
その視線はホームズに注がれている。
期待している、わけではない。
ただ、待っている。答えを。
231
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/13(木) 20:08:16
>>230
「ホームズの証明。
それはちょっと、難しい」
特に気分を害した風でもなく、けらけらと笑った。
ホームズは「付き合ってられない」とばかりに肩を竦め、それきりだ。
世間話をするための能力ではない。頼めば、それぐらいはしてくれるが。
「そもそも『シャーロック・ホームズ』などという人物は実在しない。
今そこにいる彼は私の知識とイメージ、そしてちょっとした超能力が生み出したレプリカに過ぎないのでしょう。
最初から虚像(フィクション)であるのに、その存在を証明するというのはあまりにも困難です」
ごうんごうんと乾燥機は回り、ざぁざぁと雨音が窓を叩き、そして名探偵の言葉は続く。
「しかし、彼はホームズが持ち得る知識を持っている。持ち得る技を持っている。
ホームズのように考え、ホームズのように話し、ホームズのように振る舞う」
「人の記憶を完全にロボットに移植することができたとして、そのロボットは人足り得るか?
……なんて、哲学の話をするつもりもありませんがね」
「地球が太陽の周りを回っているのか、それとも太陽が地球の周りを回っているのか。
そんなことに興味がないように、私も彼が本当にホームズであるか否かに興味は無いし……」
「また、どちらであっても何も変わらない」
足を組んでソファに腰かけ、静かにコーヒーを飲む自称名探偵は、まっすぐと小鍛冶の目を見てそう語る。
迷いのない瞳だった。苦悩もなければ、熱意もない瞳。
「なにより、彼自身が自分はホームズだと定義しているのですから」
「それが全てで、それで十分ですよ。
少なくとも、少し前まで『シャーロック・ホームズ』を自称していた女にとってはね」
ニィと、冗談のつもりなのか自嘲しているのか、それともそのどちらでもないのか、判別しがたい笑みを浮かべた。
証明終わり
「以上、 Q.E.D.」
232
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/14(金) 00:00:54
>>231
「そう。わかったわ。」
「いいわ。」
紫の証明に対し小鍛治の返答はそれであった。
口に微笑みを浮かべ、組んでいた指をほどく。
満足はしているようだ。
「ホームズはフィクション、その通りね。」
「存在しないものの証明は出来ないわ。」
「それに、彼がどういう存在なのかも分かったわ。」
残っていたコーヒーを飲み干す。
空のカップを置き、紫のほうを向きなおす。
その目に鋭さはない。優しく微笑みかけている。
「あなたに興味がわいてきたわ。」
「それにあなたは良さそうよ。」
まっすぐな黒髪を揺らして笑う。
「紫さん。なにかお話しましょうか。」
「お話の主導権はあなたが持って、あなた自身のお話をしたいのならどうぞ。
私に話をさせたいのなら、お好きにどうぞ。」
「嫌ならいいわ。服が乾くまでしばしの静寂を楽しみましょう。」
そこでぷいと視線を安楽椅子に座る者へと向けられる。
「私の記憶が正しければ、ホームズは女嫌いのはずだし私達は騒がないほうがいいかしら。」
233
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/14(金) 00:41:19
>>232
「ご理解いただけたようでなによりです」
紫はにっこりと笑った。
彼女もコーヒーは飲み干していた。
「コーヒーのおかわりは入れます?」
「私は入れますが」
コーヒーの入ったポットは机の上にあった。
それを手に取り、自分のコーヒーカップにコーヒーを注ぐ。
そしてポットを元の位置に戻して、コーヒーカップを口元に。くいと傾ける。
「……さて、お話ですか」
カップをソーサーの上に置いて、紫は机の上で頬杖をついた。
行儀は、あまりよくない。
ニコニコと笑っている。さぁ、いよいよ楽しくなってきたぞ、という顔。
話を振られたホームズが肩を竦めた。
『私は女性を100%信用しないというだけですよ、ご婦人』
「ま、ホームズにはお引き取り願いましょうか。
女二人の会話に聞き耳を立てるほど、不作法な人でもないはずです」
『呼んだのは君だろう? 構わないけれどね』
紫がパチンと指を鳴らすと、安楽椅子と小人は消える。
「さて、さて。
私は貴女のお話が聞きたいですね。
自分の話をするよりは、聞く方が好きでして」
「話したくなければ結構ですが……」「例えば、小鍛冶さんはどんなお仕事を?」
234
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/14(金) 01:12:35
>>233
「いただこうかしら。」
「今度はミルク、いらないわ。」
紫と同じようにポットからコーヒーを注ぐ。
しかし口は付けない。まだその時ではないのだろう。
「えぇ、お話よ。」
紫のように頬杖を……つく事は無かった。
行儀は、いい。
「そうね。いくら信用していなくてもアイリーンには出し抜かれたようですけど。
それと、1つ言っておくわ。信用できないのは女性だけじゃあないのよ。」
そう付け足して、ホームズが消えるのを見届ける。
ようやくコーヒーを口にする。三分の一ほど飲んでソーサーの上に返した。
「どうぞ。今までのお礼、というわけじゃないけれど、お好きなように。」
質問をされる準備は出来ている。
その意思表示だ。
「お仕事?」
「まるで面接か取調べみたいね。もっとも、紫さんは名探偵なのでしょうけど。」
「学生よ。」
とくに溜める様子もなく言い放つ。
「高校生。よく大学生や社会人に間違われるけど。」
235
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/14(金) 01:44:00
>>234
「苦いですよ」
ミルクはいらないという小鍛冶に、紫は悪戯っぽくそう言った。
そして消え去るホームズに言葉を贈り、見送る小鍛冶。
『だから信用ならないんだ、女性と言うのはね。もちろん、それ以外の全てが信用できるというわけでもないが』……ホームズなら、そう答えたかもしれない。
だが、答えるべき人物はもう消えた。
再び、事務所は紫と小鍛冶で二人きりだ。
「まぁ、まずはパーソナリティからということで」
「私の職業は『名探偵』だと最初に名乗りましたし、貴女はそれを知っている。
なら、私が貴女に職業を聞くのは自然なことだと思いませんか?」
行儀悪く頬杖をついたまま、彼女は笑っていた。
しかし小鍛冶の答え―――高校生だという答えを聞いて、驚いた表情を見せる。
「高校生?」
「……読み外しましたね。もう少し上だとばかり」
次いで、苦虫を噛み潰したような、悔しそうな顔。
仮にも『名探偵』を自称する者としての、プライドのようなものだろうか。
「少し色気がありすぎですよ、高校生にしてはね……」
「では次は……」
負け惜しみのようにこぼして、逡巡するように視線を横に。
すぐに視線を戻して、小鍛冶の瞳を射抜く。
「せっかくですし、私と貴女の出会いの理由――――お父上について、話していただいても?」
また、表情は笑顔に変わっていた。
薄ら笑いとでも表現するべき、不敵な表情だったが。
コーヒーに手を付ける様子はない。頬杖をついたまま、答えを待っている。
「もちろん、話したくなければ結構ですが」
236
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/14(金) 02:16:52
>>235
「かまわないわ。」
あまり苦さとかは気にしないのかもしれない。
それとも、ミルクを入れた味から苦さを想像したのかもしれない。
そして実際に飲んでみて、小鍛治は苦味を平然と受け入れた。
「あら、名探偵さんらしくないわ。」
「そういう時もあるのね。」
読みが外れたという紫。
それに微笑んで見つめる。嘲笑ではない。
「あら、ありがとう。」
色気があるといわれてお礼の言葉を返し、次の質問へ。
父についてのことだ。
小鍛治は動じない。微笑んで紫の視線を受ける。
「いいわ。お答えしましょう。」
コカジ ケンジ
「小鍛治賢治。格闘家よ。人にも教えるけど、まだ現役。」
「乱暴で喧嘩っ早い。そういう人。」
「今日は急用。呼ばれたっていって来なかった。」
コーヒーに口をつけ、喉を潤す。
口を離すと笑って言った。
「これでいいかしら?」
237
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/14(金) 23:02:38
>>236
「そういう時もあるんですよ、残念ながらね。
私は『名探偵』ではあっても、特別優れた能力があるわけじゃあないのです」
少し悔しそうにそう言うと、頬杖をついたままコーヒーをくいと飲んだ。
特別優れているわけでもないのに、『名探偵』。ひどく矛盾したことを言う。
彼女の言葉は負け惜しみのようでもあったが、その部分だけは真実を言っているようでもあった。
「……小鍛冶、賢治」
「なるほど、現役の格闘家の方でしたか」
格闘家というのは、縦横の繋がりを重視するものだ。
それが古くからのものであったり、生来のものであったりすれば、特に。
どうも言動の端々から察するに小鍛冶の家は立派な家であるようだし、そういうことなのだろう。
紫はそう結論付けながら、小鍛冶の言葉を聞く。
「ええ、そうですね。
貴女の口から語られる、貴女のお父上の人となり。
私はそれが聞きたくてこれを問いましたし、貴女はそれに答えてくれました」
「ではせっかくなのでもう一つ尋ねますが――――」
ごうんごうんと、乾燥機が回る音がする。
紫は頬杖をついたまま、にこにこと笑ったまま、再度問いかけた。
「貴女はその『小鍛冶賢治』さんについて、どう思ってらっしゃいますか?」
「好いているのか?」
「嫌っているのか?」
「それともその両方なのか……」
「あるいは、そんな単純なものでもないのか」
「私はそれに、興味があります。
ノーコメントでも、それはそれで結構ですけどね。
『無回答』であろうとなんだろうと……貴女の『回答』が聞いてみたい」
238
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/15(土) 00:25:58
>>237
「私の父に興味があるのかしら?」
父について聞く紫に対して冗談めかして言う。
もちろんその気は無いだろう。
ただそれが分からない紫ではないと思っている。
「どうぞ。父の話でもなんでも。」
髪をかき上げてくすくすと笑う。
この状態を楽しんでいるのだろうか。
それとも、もっと別の何かが小鍛治を笑わせているのだろうか。
「あら、そういう質問なのね。」
「そうね……嫌い、だけど死ねとは思わないわ。」
それが回答であった。
「今度の相手はどうとか、今度はプロレスをするだとか、
私も母もあまり興味は無いのに。
怪我もして返ってくるし、野生児みたいよ。野蛮って言ってもいいわ。」
「ただ、マメにハガキを書いて送るのは評価できるわ。それだけよ。」
「家より親戚を優先した男だけど。」
言うとコーヒーを飲み干した。
239
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/15(土) 01:05:46
>>238
「『依頼人』か『助手』ならいつでも募集してますがね」「あと『怪盗』も」
頬杖をついていた手を上に向け、肩を竦めた。
そのままソファにもたれかかる。ギッとスプリングが軋む音がした。
「ま、人の話を聞くのが好きなんですよ、私は」
そう言って、こちらもくすくすと笑う。
つくづく妙な距離感の空間であり、会話だ。
二人の立つ足元が薄氷でできているのか、それとも熱された鉄板なのか、ただのフローリングなのか。
傍から見て、非常に捉えどころのない会話だ。
「ほう、ほう」
「そりゃ格闘家が無傷で帰ってくるということもないでしょうけれどね」
格闘家が闘うということは、それは当然傷つけあうと言うことで。
それは当然のことだが、しかし確かに、妻や娘に理解されることかというと疑問なところだ。
そもそも闘う意味がわからないだとか、そういう次元で。
ともあれ、紫はけらけらと軽薄に笑いつつ。
「しかし、律儀な人ではあるようじゃないですか」
「私の父なんて、ヒマラヤに行くなんて言ってそれっきりですよ。
滅多に家にいる人じゃありませんでしたが、もう顔も合わせることもないかと思うと寂しいもんです」
そう言って、視線を窓の外に向けた。
どこか遠くを見ているようだった。そしてハッとしたような顔をして、誤魔化すように笑う。
「おっと、いけないいけない。
変に年長ぶるつもりは無いんですが」
「とはいえせっかくですし、次はそちらから――――」
ピー
ピー
ピー
「おや」
電子音が鳴った。
乾燥機が役目を終えた音。いつの間にやら、随分時間が経っていたらしい。
外の雨も、だいぶ小雨になっていた。
240
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/15(土) 01:29:04
>>239
「怪我のことは理解してるわ。」
「ただそれを隠そうとするのが嫌いなの。」
「隠し事する人は信用できないわ。」
さらりと言う。
怒ることも悲しむことも無い。ただ事実を述べただけだ。
微笑んで淡々と話している。
「そうね、物で媚びたりメールで済ませないのはいいことよ。」
「紫さん。お父様が恋しいの?」
小鍛治の視線は紫に向けられている。
小鍛治の瞳が紫を見ている。
思えば移動するときも会話中も小鍛治は紫を見ていたような気がする。
「いいことよ。それはとても人間らしい心ですもの。」
ピー
ピー
ピー
「あら。」
「乾いたみたいね。残念だけど、お話はこれで終わりかしら。」
「着替えてくるわ。」
移動してしばらくすると着替えた小鍛治が戻ってきた。
手には畳んだ服がある。先ほど着ていたものだ。
「ありがとう。」
「今日は楽しかったわ。連絡先聞いてもいいかしら?」
241
:
紫 斜六『アームチェア・トラベラーズ』
:2015/08/15(土) 02:03:26
>>240
「なるほど、それも道理でしょう」
男の見栄であるとか、あるいは家族を心配させまいとする父の心だとか。
そういったものも、女に伝わることは少ないものだ。
一般論とは関係なく、小鍛冶がそういう人間だということもあるかもしれないが。
「……名探偵も、意外と人間ですよ。
人間じゃない名探偵だっていますけれど」
そうこぼして笑うその表情は、どこか寂しげだった。
着替えるために脱衣所に行く小鍛冶を視線で見送り、残ったコーヒーを飲み干して。
しばらく外を見て待っていた。窓の外を。
小鍛冶が着替えて応接間に戻ってくれば、ニコリと笑って立ち上がる。
「ええ、私も楽しい時間を過ごせました。
貴女も楽しんで頂けたと言うのなら幸いですよ」
そしてかけたコートのポケットをまさぐって、中から名刺入れを取り出して。
「連絡先でしたら、これを。
『御用』があっても、そうでなくても。いつでもお待ちしていますよ」
「結構暇なんです、私。いやはやお恥ずかしい」
言って名刺を差し出す。
名刺には、事務所の紫の名前と、連絡先と、住所とが記してある。
肩書は、きっちり『名探偵』であった。
「さぁ、雨はだいぶ小降りになったようですが、足元は滑ります。
転ばないよう気を付けてくださいね」
応接間を抜けて、玄関まで先導し、扉を開けて、茶目っ気たっぷりに笑って。
「――――また会いましょう、小鍛冶さん。
次にお会いした時は、紅茶でも飲みながらお話がしたい。
スコーンだって添えましょう。甘いジャムは少な目で、ね」
242
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/15(土) 02:22:26
>>241
「私は信用できない人は嫌いなの。」
「隠し事するのは悪いことじゃあないわ。
私にバレなければ信用してあげられるけど、バレたら駄目。」
「永遠に隠し通して欲しいわ。」
それが小鍛治の持論らしい。
「そんな顔しないで。」
脱衣所に向かうとき、小鍛治は紫にそう告げる。
顔は見ていなかった。
「あら、名刺。そういうのがあるのね。」
名刺を受け取る。
小鍛治の服にポケットは存在しなかった。
スカートにも存在しなかった。
「えぇ紫さんも気をつけて。色々と、階段から落ちないように。」
「それと、名探偵さん?人の心が知りたいなら、底の見えない人にしたほうがいいわ。
友達が多いだけとか、派手なだけとかそういう人は駄目よ。」
「それじゃあ、また今度。」
数日も経たないうちに紫の事務所に贈り物が届く。
小鍛治明からの贈り物。扇形の落雁であった。
添えられた手紙には『コーヒーにも合う和菓子らしいわ。』
とだけ書いてあった。
243
:
小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』
:2015/08/15(土) 02:23:06
>>242
メ欄
244
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/15(火) 00:01:31
人気の少ない、夕方の公園。
一人の男がベンチに座り、何やら楽しそうに中空を見つめている。
30過ぎであろう男が、なにが楽しくてどこを見つめているのか。
「〜♪」
……鼻歌まで歌っているぞ。
果たして、その視線の先にあるのは、二匹の『甲虫』がまるで編隊飛行かなにかのように縦横無尽に空を飛ぶ光景だった。
羽音を立てて飛行する甲虫は、しかし一般人には見ることも聞くこともできない。
円形で金色の甲虫……それに、影は無かった。
二匹で螺旋を描いて天に昇り、左右に分かれて円を描いてからまた中央へ。
そんな動きをする甲虫は、自然界にはいないはずだ。
動きは若干ぎこちなく、描く円の半径はだいぶ大きかったが。
245
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/15(火) 22:55:51
>>244
二匹の甲虫が、今度は勢いよく空から地面に向かって……ぶつかる!
という瞬間に、サッと地面スレスレを飛行する軌道に移る。
………………片方は。
「ありゃっ」
ピタリと甲虫の動きが止まった。片方の、飛んでいる方は。
もう片方は、地面に転がっている。
片方が曲芸飛行に失敗して、そのまま地面にぶつかってしまったのだ。
結構勢いよくぶつかったが……しかし、また気を取り直して飛行を再開した。大事は無いらしい。
246
:
霞森 水晶『Q-TIP』
:2015/09/16(水) 01:50:33
>>244-245
ザッ
フィーン
フィーーン
「ご機嫌ね。」
ベンチの後ろから、男に掛けられる声。
「あの蟲は……あんたのペット?
ラジコンみてーな飛び方してるアレのことよ。」
フィーン
いつからそこにいたのだろう?
黒から青に移り変わる、グラデーションのポンチョを着た少女だ。
・・・・その目は明確に『甲虫』を捉えている。
247
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/16(水) 02:19:03
>>246
「うん?」
男は首だけを後ろに向けた。
二匹の『甲虫』は、その場で旋回を始める。
金色が夕日を照り返して赤く光る……というより、元々赤金色であるようだが。
「うーん、ペットって言い方でいいのかな、あれは。
どっちかというとそれこそ『ラジコン』?」
癖の強い黒髪をくしゃっと右手で抑えながら、軽薄に笑う。
「新しいおもちゃを買ったから、ちょっと遊んでみようと思ってね。
これが中々難しいんだ。うまく飛ばすには慣れがいるのかな」
248
:
霞森 水晶『Q-TIP』
:2015/09/16(水) 02:38:44
>>247
「喋りにくいわね、この位置関係。」
グィ
「よっ――」
トサ
背もたれを跨ぎ、男の横に座る。
人1.5人分ほどの間を空けて、だ。
「ふうん。最近の玩具は進んでるのね。
凧上げとかとは次元がちげーわ。」
フィーーン
鋭い目を更に細める。
「見ていていいわよね?
別に何するわけでもないわよ。」
フィーーン
「……それに。」
断定して、旋回する二匹を見る。
「上手く飛ばすコツなら、分からねーでもないわ。
もっとも、タイプが違うかもしれないけどね。」
……そう、零した。
249
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/16(水) 02:56:25
>>248
「僕は結構嫌いじゃないけどね、ベンチの前と後ろってのは」
ちょっと距離感があって、それが心地いい……なんてのたまいつつ。
視線は霞森を捉えたまま、甲虫は同じ場所をグルグルと回るまま。
「お好きにどうぞ?
男の子ってのは新しいおもちゃを自慢したくなる生き物だからね。
わざわざ見物してくれるって言うのなら、願っても無いぐらいだ」
ヴ ゥ゛ゥ ン
「そろそろ一人で飛ばすのも飽きてきた頃合いだったし」
甲虫が編隊飛行を再開する。
が、やはりその動きはぎこちない。
そもそも精密な動きなんて想定していないような、そういう動きだ。
それを二匹同時に飛ばしているから、という事情もあるのだろう。
円は大きく、軌跡の図像は雑な線を描く。
「……やっぱり、難しい。
コツは是非とも教えてほしいとこだけど、『練習だ』なんて答えはやめてくれよ、『先輩ちゃん』?」
そう言って、男はにへらと惰性的な笑みを浮かべた。
250
:
霞森 水晶『Q-TIP』
:2015/09/16(水) 03:12:21
>>249
「あたしは嫌いなの、面倒でしょ?
首も疲れるし。」
後ろから話す方は面倒でもないが。
……ともかく。
「んじゃ、お言葉に甘えるわ。」
ヴ ゥ゛ゥ ン
編隊飛行する『甲虫』。
しばし、それを目で追う。そして。
「『蟲の飛び方』を知りゃいいのよ、後輩クン。
あんたの玩具は……『心で操る』んでしょ?
違ったらわりーけど、たいてい、そうだものね。」
フィーーン
フィーーン
「手で操るなら、『手捌き』に技巧をしみこませたらいい。
でも、心で操るなら、あんたの心が『飛び方』を知る必要がある。」
ポンチョの裾から、多数の『光』が漏れ出す。
まるで蛍のような――
フィーーーーン……
「こいつは虫じゃないけど――
似たようなもんよ。飛び方は、ね。」
フィーーン
フィーーン
いや、これは――『妖精』だ。
蟲の羽を備えた、小さな人型。
――その数、2体。
「見て、追って、習えばいいわ。
幸い、あたしもこいつもヒマだから。」
フィーーーン
甲虫二匹へと飛んで、近づいていく。
251
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/16(水) 03:32:59
>>250
「『心で操る』、ねぇ……」
ぼやきながら、視線を空飛ぶ甲虫へ送る。
「いやそりゃ確かにそうだけど、とするとあれかい?
僕は意外と自分のハートに素直になれないシャイボーイだったりするのかい?
確かに少年の心は忘れず生きてるつもりだけど、そんな歳でも――――」
と、視線を霞森の方に戻して、面白くもないジョークを飛ばそうとした時。
フィーーン
フィーーン
……『妖精』が、宙を舞った。
「……さっきから、なんの音かと思ったら」
甲虫は、妖精たちを歓迎するように縦に円を描いた。
妖精と甲虫が共に空を舞う。……まるで、伝承に伝え聞く妖精郷かなにかだ。
「OK、つまりあれだろう?
蟲の気持ちになって飛ぶ……僕自身が蟲になるつもりで飛ばす。そういうわけだ」
観察するように、甲虫は妖精の周囲を回りつつ。
その光景を眺めながら、新しいおもちゃを見つけた子供みたいな顔で笑った。
「なるほど――――うん。『そういう僕』も、悪くない」
252
:
霞森 水晶『Q-TIP』
:2015/09/16(水) 04:02:01
>>251
「年なんて大して重要じゃあないわ。
あんたは冗談のつもりかもしれないけど、心が重要なのよ。」
これは『玩具』の動かし方の話だ。
ふん、と鼻を鳴らす。
フィィィーーーーン
フィン
フィーー……
「『Q-TIP』」 「こいつの名前。」
フィーーン
妖精は蟲を掻い潜り、宙を舞う。
まるで誘(いざな)うように、夕空に光の線を描く。
「……あたしにはあんたの『心』のボタン配置は分からない。
だから、教えられるのは受け売りのコツだけ。
心。『蟲の心』で動かせば、あんたの玩具は自由に飛べる。」
少年のように笑う男に、少女は無表情で頷く。
その目に年相応の輝きは乏しい。
「上手く遊べるといーわね。
幸いこの町は……遊び場には事欠かないらしいわ。」
付け加えるように、言った。
そしてまたぼんやりと、妖精と虫の舞いを見る。
253
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/16(水) 04:24:47
>>252
「心。
……心、か」
ヴン
ヴゥ゛ン
甲虫は誘われるがまま、赤金の体を輝かせて光の軌跡を追う。
追いかけっこをする子供みたいに、ただただ背中を追うばかり。
「わかるよ、そういうの。
僕のは『そういうの』だからね」
その動きは、先ほどまでに比べれば随分滑らかだ。
もとよりそういう風にできていないのか、やっぱり精密で複雑な飛び方はできないようだけど。
それでも、『自然と飛ぶ』ということには大分近づいていた。
「『レッドバッジ・オブ・カラッジ』……って言うらしいよ、僕のは」
二匹の甲虫の名。
空飛ぶ二匹の『赤い勲章』。
「……ああ、思いっきり遊ぶさ。
せっかく先輩ちゃんに良い事聞いちゃったし、ね」
無邪気な笑顔は一瞬で、すぐにその顔はどこか危うげな色を孕む。
ペロリと舌なめずりまでして、いっそそれも子供っぽいとでも言うべきか。それには少し、邪気があるか。
「…………で、かく言う先輩ちゃんは遊ばないのかい?
今の言い方だと、そんな感じだったけど。
それとも先輩ちゃんは女の子だから、そういうのに興味ないのかな?」
254
:
霞森 水晶『Q-TIP』
:2015/09/16(水) 04:49:32
>>253
「……まあ、わかったんならよかったわ。
そうそう、別に受講料は求めねーわよ。」
鼻を鳴らす。
冗談のつもりだ。
フィ〜〜ン
「赤いバッジ……ねえ。
まあ、名前なんてそんなに重要でもねーわね。」
フィーン
フィーン
妖精は翅を起用に動かし、舞う。
その動きは精密で――捉えどころがない。
フィーン
「あん? ああ……遠慮しておくわ。
あたしは『観客』が、『Q-TIP』は『一人遊び』が性に合ってるの。
心が求めるままに飛んだら、そうなる――ってことよ。」
フィーン
空は――黄昏の色を示しつつあった。
「夜が来るわね。あたしは星を見てから帰るわ。
……あんたはどうする? 健全な少年は帰る時間だけど。」
フィーーン
妖精が、挑発するように『甲虫』の周りを回る。
少女は感慨も無さそうに空を見上げつつ、問う。
255
:
溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』
:2015/09/16(水) 05:14:13
>>254
「そりゃありがたいね。
今は大して持ち合わせがないんだ」
肩を竦め、冗談に冗談で返しつつ。
「うん、名前なんて重要じゃない。
大事なのはどう考えて、どう行動するかさ――――なんて言うのは、気取り過ぎか」
どこか恥ずかしげに苦笑する本体を尻目に、甲虫たちはいよいよ速度を上げていく。
もちろん、それを操っているのは男の『心』なのだが。
カーブの度に大きく膨らんだ軌道を描き、必死に妖精を追いかける。
まるで足の速い子に『まってくれよ』と追い縋る鬼ごっこの鬼みたいに。
「そうかい、残念。
僕は君とも遊んでみたかったんだけど……まぁいいさ」
陽が傾き、地平線に飲み込まれようとしていく。
二匹の甲虫が赤金の輝きを放てるのも、あと少しだけだろう。
「僕たちが好きなのは『ごっこ遊び』だけど、その相手はこの指止まれで探すことにするよ」
男はそう笑って、すっくと立ち上がった。
右手を顔の高さに突き出せば、甲虫は妖精に別れを告げるように最後にクルリと宙返りしてから男の手元へ戻っていく。
その手に触れれば、吸い込まれるように赤金の輝きは姿を消し。
「――――さて、僕は悪い大人だから、まだいたっていいんだろうけど。
でも、夜空を見上げて星を見るなんて、悪い大人のやることでもないだろう?
悪い大人らしく、僕は夜の街に消えていくことにするよ」
そしてクルリと踵を返し、首だけを霞森の方へと向けて。
「じゃあね。楽しかったよ、先輩ちゃん」
それだけ言って、ひらひらと手を振りながら男は去って行く。
今日の出会いはきっと二度あるものじゃないだろうけど、それも悪くないかな、なんて思いながら。
256
:
霞森 水晶『Q-TIP』
:2015/09/16(水) 07:16:44
>>255
「あたしはそう思ってんのよ。
名前も、見た目も、大した意味はない……ってね。
そりゃ、きれいか汚いか、くらいの違いはあるけど。」
無視は出来ない。
だが、本質ではない。
・・・・本質は『心』だけ。
フィーーン
フィーン
妖精は軽快に、その追走から逃れる。
それでも、最初よりはずっと、その追走劇はサマになっていた。
「あんたが思うようにすりゃあいいわ。
あたしもあたしの思うようにやる。
悪い大人らしさも、あんたの基準ならそれでいーわ。」
無表情で頷く。
妖精が帰ってきて、周囲を舞う。
「あたしも、まあまあヒマつぶしにはなったわ。
じゃあね、後輩クン。」
小さく手を振る。
その周囲に、増え始める燐光。二つ、三つ――
フィーーン
フィーン
フィイイーーン
「……わかってるっての。
少しくらい、早送りでもいいじゃない。」
星が出るまで、待つ。
夜が明けた時、少女がどこに去ったかを知るものはいない。
257
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/18(日) 23:07:21
特に何か転機があったわけではない。
あえて言うならば、「そうしたかったから」だ。
「……、…」
ショーウィンドウに映る自分の姿を、改めて見る。
ワックスで立たせた、染めたての真っ赤な髪。
思春期そのものの痛々しさのような鮮色だが、自分では割と気に入っていた。
・・・・雑踏の中、窓を見つめて一人、立ち止まっている。
258
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 00:17:56
【場】メインストリート その4
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1424962526/823
『異なる時空』より、何かが現れようとしている……
(移動してきました、出現場所を指定してください)
259
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/19(月) 00:46:25
>>258
荒咬が現れたのは―――
ショーウィンドウの向こう側、すなわち『店内』だった。
マネキンとマネキンの間に割って入るように、立ち尽くす…
どうやらここは服を売っているらしい。
店内は、騒々しい。
中々の客入りだ。突如として『異なる時空』より現れた荒咬に注意を向けているものはいない。
「………は?」
目の前の子供を除いて、だ。
赤い髪にワックスを付けて立たせた少年。
窓越し、つまり店の外から、困惑した様子で荒咬を見つめている。
260
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 20:04:37
>>259
鹿沼の前に出てきたのは、『美女』だ。
それもなぜか『男物の服』を着ている。
鹿沼と目が合った。
「ウッフーン」
美女――荒咬子は妙なポーズをとりながら、目の前の鹿沼にウィンクを送っている。
傍らには、人型の『スタンド』の像が立っている。
261
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/19(月) 22:05:46
>>260
「……、…?」
鹿沼は変わらず混乱しているようだ。
…いや、耳の辺りがほんのり赤くなった。
≪いや、あの……≫
ガラスの向こうから、くぐもった声。
≪何してんの…?≫
それは、突如何もないところから現れたことに向けての言葉かもしれないし、
男物の服を着て、妙なポーズとともにウインクをしてみせたことへのツッコミなのかもしれない。
気まずそうに、ちらちらと荒咬…… 荒咬子を見ている。
262
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 22:23:30
>>261
「……ねェ」
荒咬子はツカツカ歩いてきて、表に出てきた。
その傍らには『スタンド』も一緒だ。
「そこのキミ。アタシ、キレイ? 女性に見える?」
いきなり話しかける。
鹿沼は、その様子から『妙な違和感』を……
よく観察すれば、『歩き方』や『喋り方』が『男』であること感じるだろう。
263
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/19(月) 22:31:35
>>262
「エッ」
「あ、いや、……」 シドロ モドロ
どもっている。思春期のようだ。
が、荒咬子の『女性に見える?』という言葉。そして振る舞い。
「……あの」
「オカマ、なのか……?」
「いや、男には見えない、けど」
オブラートに包むことを知らないようだ。
恐る恐る尋ねる。
264
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 22:38:24
>>263
「そのとーり! アタシ、男よ」
「ウフフフ! それでもアタシ、女性にしか見えないのネ〜
『ザップ』で色んな『チャンネル』に行ってきたけど、『女の子扱い』されるのは初めてだワ!
これも『スタンド』の…… 『守護霊』のおかげネ!」
嬉しそうに、ピョンピョンと飛び跳ねている。
「ところであなた顔が赤いけど、もしかして……」
「『女の子になる』ことにキョーミあるゥ?」
265
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/19(月) 22:55:02
>>264
「ええ……?」
ちょっとヒいている…!
が、まだ顔は赤い。効果は依然としてあるようだ。
「あ、やっぱりその『スタンド』、アンタのなんだ……」
「ここ数年で、一気に増えたな……」
「けど、『性転換するスタンド』? か、え、その……変わってる、よな」
そして。当然のように、『スタンド』についても言及する。
どうやらひどい誤解をしているが……
>「『女の子になる』ことにキョーミあるゥ?」
「!! ち、 違っげーよ!!」
真っ赤になって否定。もはや髪の色と遜色ない。
「……って、はぁ。同じ男なら、気使う必要もねーのか。
アンタ、自分の服見ろよ……パツンパツンじゃんか、色々。」
目を合わせないまま、指摘をする。
男物の服と言うのは、当然男の体格を想定して作られている。
そのため女性が、それもある程度成熟した身体の女性がそれを着ると、まあ、然るべきことになるのだ。
266
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 23:05:56
>>265
「アット、このスタンドはアタシだけど、『変身』はアタシじゃないワ。
この変身は、百井さんっていう人にやってもらったの〜」
「探せば見つかると思うから、アナタも興味わいたら頼んでみるといいわヨ⌒☆」
真っ赤になった鹿沼をどう勘違いしたのか、そんなことを言う荒咬子。
そのとき、自分の服の様子に気付いたようだ。
「って、アララ。
アタシはやっぱり、女性の服を着てる女性のが好きね〜」
「デモ、服屋で服を買ってるヒマはないわネ。あと『13分』くらいしか持たないもの。
『ブラジャー』、付けてみたかったけど…… また今度にするワ」
「ア、ソウソウ。アタシは『ザップ』。能力は『異なるチャンネルへの移動』よ〜」
自分のスタンドを紹介する。
267
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/19(月) 23:32:13
>>266
「はぁ…、いや、女の身体には興味ネーケド」 ゲーン
「アンタ、変わってんね…」
女性の身体を堪能している荒咬子に、しみじみと言い放つ。
「『異なるチャンネル』…? テレビみてーなモン?
あ、さっきの『テレポート』がそれか……。ふーん」
興味があるのかないのか、一人で何かを納得したように頷き、
>『ブラジャー』、付けてみたかったけど……
「ま、まぁ、趣味は人それぞれだしな…」
ひどく投げやりに結論付けた。
「……でも、その状態を堪能するなら、コートくらいは羽織ったほうがいいと思うぜ」
「目立つし」
268
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 23:42:06
>>267
「コート!? 何! 言ってん! の〜!」
いきなりプリプリと怒り出した。
「そんなの羽織ったら、この美女になった姿を『自慢』できなくなるじゃな〜い!」
「あなただって、『スタンド』を思いっきり使いたいって欲望はないの?」
首をかしげながら、聞く。
「アッ! 早く次の『移動』しないと美女になってられる時間がなくなっちゃうワ!」
269
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/19(月) 23:53:17
>>268
「えっ、ええ…!?」
怒っている荒子に困惑する鹿沼。
「なんつーか、アレだな… 露出狂と話してる気分だぜ、今。」
「俺? 俺は特に… 物心ついた頃からの付き合いだし」
「そういうのはもう飽きてる、つーか。変な目で見られるし、疲れるよ」
見た目の派手さの割りに、消極的な人間のようだ。
「あ、さっき言ってた… 『チャンネル』ってやつ?」
「なんていうか、こういうときどういう言葉をかけるべきか分かんねーけど」
「俺としても、美女が目の前で男になってく絵は見たくないな」
荒子が別の次元にいくのであれば、それを見送る……。
270
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/19(月) 23:58:59
>>269
「露出狂? そうかもネ〜 ウフフ」
荒咬子はニコニコしている。
声と服を無視して顔だけ見れば美女なのだが……
「アタシ、『ザップ』。生身の名前は荒咬左武郎。
また黄金町で会うこともあるかもしれないわね〜」
「んじゃ、アデュー! 次は男の姿で会いましょう!」
スタンドの『ダイヤルを回す』。
※詳細を読んで荒咬が『どこに移動するか』をレスの秒数下一桁で決め、URLを指定してください。
『ザップ』能力詳細
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1311712763/564
271
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/10/20(火) 00:25:17
>>270
「男の時に会っても、気付くかは分かんねーけど」
「まあ、うん。ヨロシク」
『ダイヤル』の示す移動先は―――
移動先⇒【ミ】『エヴリナイト・ミッション』 その2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/netgame/9003/1422716133/
272
:
荒咬『ザップ』
:2015/10/20(火) 00:28:58
>>271
ジジ…… ザザ……
『 Z A P 』 !
→ ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1422716133/540
273
:
荒咬子『ザップ』
:2015/10/24(土) 00:48:59
→【ミ】『エヴリナイト・ミッション』 その2より移動
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1422716133/553
『 Z A P 』 !
異なる時空より、男の服装をした美女が出現した。
「……ってアララ、元の場所に戻ってきちゃったじゃなーい!」
「あの男、やっぱり『ヨハネスブルグ』よね〜? なんでレースなんてしてたのかしら〜」
「……さて、『変身』の時間はまだ10分以上残ってるわね。どんどんいくわよ!」
スタンドを発現、『ダイヤルを回す』。
※次にレスする人は、詳細を読んで荒咬が『どこに移動するか』をレスの秒数下一桁で決め、URLを指定してください。
1レスのみで構いません。お気軽にどうぞ。
『ザップ』能力詳細
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1311712763/564
274
:
ようこそ、名無しの世界へ…
:2015/10/24(土) 00:58:54
>>273
『ダイヤル』の示す移動先は―――
移動先⇒【戦】『座木 十番勝負』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1407520052/
275
:
荒咬子『ザップ』
:2015/10/24(土) 01:03:11
>>274
『 Z A P 』 !
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1407520052/175
276
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/10/31(土) 00:31:39
人間には休息が必要なんだよ。
僕だって人間だからさ、休みたくなるんだよなァ。
ま、常に休んでるけど。
「あ、すいませェん。」
「ケーキセット、一つ。」
いやァにしても、この喫茶店混んでるねェ。
空いてる席無いんじゃないのォ?
こういう時ってさァ、相席になったりするんだよなァ。
ぐるっと目で周りを見てみる。
やっぱり店の中はほぼ満席みたいだ。
「誰か相席になるのかなァ……」
僕の前には誰が座ってくれるのかなァ?
277
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/10/31(土) 23:45:57
>>276
「どれ、一つ相席をよろしいかな?」
アイボリーカラーのジャケットにダークグレーのシャツ、
カッチリした格好とケツアゴの目立つ青年が『加賀』の前に現れた。
「中々、人気の店みたいだね?
ケーキセットがその秘密かね、じゃあ私もそれを」
278
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/01(日) 00:01:59
>>277
「どうぞ。」
「僕は全然気にしないよォ?」
おっと男性か。
いやいや、別にガッカリしてないよォ?
確立は50%だからね。こういうのも十分ありえるさ。
「えェ?あぁ、そうなんじゃない?」
ちょっと相手を見てみる。
日本人っぽくないなァ。
対する僕は白いシャツに灰のジャケット、後は群青のネクタイだけど
どれもよれてる。アイロンが家にないからねェ。
あってもアイロンかけないだろうけど。
「あぁ、結構評判だってさ。」
「今日はハロウィンのかぼちゃモンブランらしいよ。」
「ところでおたくは甘いのとか好きなクチ?」
僕はそう言って相手に質問を投げた。
初対面だけど、向こうから世間話してきたし、まぁいいかな。
279
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/11/01(日) 00:12:48
>>278
「ハッハッハッ、失敬失敬。
どれどれ、おおっ!これは美味しそうだね。
勿論、甘いモノには目がなくってねぇ〜〜〜っっ
故郷の『マドレーヌ』をミルクティーに浸して食べるのが好きだったとも」
全体的な骨格はアングロ・サクソン系に見えるだろう。
しかしながら、モデルのような美貌というよりも、
『ハーフ芸人』のような親しみやすさを覚える顔立ちだ。
「カフェー、もう長く帰っていない故郷を思い出すよ。
……と、来たね。ちょっと失礼」
ウェイトレスが二人分のコーヒーとケーキセットを持ってきた。
ピエールのは『ブレンドコーヒー』だ。話に聞いていたモンブランも付いている。
280
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/01(日) 00:37:21
>>279
「マドレーヌゥ?」
「あぁ、焼き菓子だっけェ?あんまり馴染みがないんだよねェ。」
僕は別に甘党じゃない。
甘いとか辛いとかどうでもいいもん。
……僕からすればね。
「おたくってさぁ。どこの出身?」
「帰ってないって事は日本じゃないと思うけどね。」
僕は日本出身だよ?
「ん?来たみたいだねェ。」
僕と彼の前にケーキセットが置かれる。
僕のコーヒーってなんだっけ、適当に指差しちゃったからなァ。
ブレンドだっけ?まぁ、腹に入れば同じだよね。
「……お先にどうぞ。」
さて、彼の反応を見て味の具合を見てみようかなァ。
甘党なら、こういうのよく食べてるだろうしねェ。
……そんなに味、気にしてないけど。
281
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/11/01(日) 00:49:24
>>280
「なんといっても焼きたての香りが絶品だよ。
『マドレーヌ効果』、なんて言ってね。
失われた記憶を『嗅覚』や『味覚』の刺激で想起する現象のことだが、
その名を付けられるほどだ、よっぽど『鮮烈』だと思ってよいだろうね」
ズズ・・・
『ブレンドコーヒー』を一口啜る。
あくまでも眼前に有る『モンブラン』を味わう為、
口内を温める為の儀式としての一口だ。
「勿論、私が『フランス』の出身だから、
郷土贔屓、の意見と思ってくれて構わないよ。
君は地元の人かな?
程良い都会と田舎の交じり合い、広大な自然。
良い町じゃあないか。故郷だなんだと言っているがね、
私はこの町も好きになってきたところなんだ。……おっ、美味い」
フォークでモンブランを削り、その欠片を口内に放り込む。
深い黒色の瞳を緩め、微かな笑みを浮かべた。
282
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/01(日) 01:17:07
>>281
「『失われた時を求めて』?だっけ。そんな話あったような。」
なかったような。
少なくとも僕にマドレーヌ効果みたいな経験はないなァ。
思い出すような記憶もない。
「へぇフランスねぇ。つまり君は、パリジャン?」
それともジャンバルジャン?
なんでもいいじゃん、僕からすれば。
「そうそう。ここが地元。
……多分ね。」
そうこうしてるうちに彼はモンブランを口に運んだ。
お、いい反応だねェ。食べても間違いなさそうだよ。
やっぱりさァ、ある程度分かってるほうが覚悟決められるし
丁度いいよね。
「じゃあ僕も。」
モンブランを口に入れるとかぼちゃの持つ独特の甘みが口に広がった。
なるほど。たしかに美味しいねェ。
「そういえばオタク、名前は?」
「僕は加賀。スクールカウンセラー。」
283
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/11/01(日) 01:34:04
>>282
「ああ、だがそんなに気取ったもんじゃあないさ。
君らが思うほどに『花の都』ってほどでもないしね。
ああ、私は『音無ピエール』。
どうだい? 名前くらいはパリジャンっぽいだろう?」
茶目っ気めいた口調で告げる様子は言葉通りだろう。
口角を軽く吊り上げて笑みを向ければ、相手の職業に嘆息を零した。
「ほう、それは随分と大変な、そして立派な仕事じゃあないか。
ああいや、知ったような口を利くようだがね。
とりわけ『教育』というのは何かを『心』を砕く仕事だろう?
そして、重要な立場でもある。この多様化した社会じゃあ、
昔のように『十把一絡げ』の均一化で教えるわけにもいかないからね。
『九』に対して『一』が出るどころか、『一』が『十』並ぶほどに、だ。
それでいてカウンセラーは『一人一人』に向き合う姿勢になる、
長々と語らせてもらったが、ご苦労をなさっているだろうね……」
アンニュイな声色、相手を真摯に憂いているようだ。
284
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/01(日) 01:54:43
>>283
パリジャンっぽい名前ってなんだろうねェ?
ま、ピエールってのはパリジャンっぽい『かも』
「……」
僕はただ音無くんの話を静かに聴いていた。
さてと、どうしたもんかなァ。
「あっはは。」
なんでか笑いが出た。
「僕はさァ。そんな高尚な思いで仕事やってないよ。」
「僕は僕のやりたいようにこの仕事をしてるんだよねェ。」
「のんびりやってるの。だからか『給料泥棒』ってあだ名をつけられたけどね。」
音無くんには申し訳ないけど僕はそういうやり方しか知らない。
これでも生徒から文句をつけられたことはあんまりないよ?
それに、僕が働かないときは生徒の心が平和ってことだろうしねェ。
まぁ、誰が何を悩もうが、僕には関係ないけど。
「ところで、音無くんはなんの仕事をしてるのかなァ?」
285
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/11/01(日) 23:16:06
>>284
「ほう、そうだったか。
……否、君を責めるのは酷と言うものか。
新しい職業には『指針』が存在しない。
人々は『血統』によって『役割』を繋ぎ、それが『生業』となった。
そうだな。インドにおける『システムエンジニア』のように、
カーストから外れることが有益になる場合もあるが、
――――大抵は、『先駆者』というのは困難の中を歩むことになる」
滔々と語り続ける様、常に真剣な態度。
難しいものだ、とケーキを食べる手を止めて頭を振った。
「無論、私とて先人の作った道だけを歩む気はないが。
……ああ、私は『柔道整復師』をしている。
ご老人の身体の歪み、スポーツ少年の捻挫、
そーいうのを『治す』、……というほどではないが、
手を施して、少しでも良くなってくれると、やはり嬉しいよ」
286
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/01(日) 23:27:22
>>285
「あっはは。」
いやァ。なんていうか。
熱血系?熱いねェ。あっついあつい。
暖房にはちょうどいい『かも』
あっはは。ホント、合わなさそうだなァ。
「ふぅん。『ほねつぎ』ってやつ?」
「いいんじゃない?よく知らないけど。」
「オタクは他人の体に触れて、僕は他人の心に触れて食ってるわけだ。」
オタクがその仕事についてどう思ってるか知らないけどねェ。
少なくとも僕とは違う感じはするけェど。
「あっはは。君は『治す』んだねェ。」
「僕はせいぜい『与える』くらいだよ。」
「あっはは。」
287
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/11/01(日) 23:40:36
>>286
「ああ、『骨』や『筋肉』を見る仕事だ。
人を見なければならない。そして、
私は、その仕事も『治す』ものだと思っている。
弱った心には『再起』の機会が必要だから、ね」
ズズズ・・・
モグモグ
成る程。『水』と『油』、確かに合わないかも知れない。
しかし、そうした機会もあって良いだろう。珈琲を口にし、ケーキを食べる。
288
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/01(日) 23:53:37
>>287
弱った心の再起、ねェ。
身につまされるよーでェ、つまされない。
僕は彼じゃないもん。
「あっはは。立派立派。」
「凄いんじゃない?」
なにが凄いのかは知らないけど。
真面目ってのは凄いんじゃない?
世の中、真面目じゃなくても生きていけるのにさ。
「ま、いつかお世話になるかもしれないしィ?」
「そん時はよろしくね。」
出会えたら、だけど。
289
:
音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』
:2015/11/02(月) 00:04:43
>>288
「ああ、腰痛なら是非ともね。
残念ながら、『スクールカウンセラー』のお世話には、
――――ああいや、身につまされることもあってね」
酒に逃げる癖がある『ピエール』にとっては、
心理的なダメージの話はリアリティがあって嫌な話だ。
引きつった笑みを浮かべて、対応する。
「では、これで失礼。
今日は少し、新鮮だったよ」
ハラリと片手を上げ、喫茶店から去っていった。
290
:
加賀『プライベート・ライン』
:2015/11/02(月) 00:12:44
>>289
僕は相談に来る相手を差別しないよ?
だって皆おんなじだもん。
一つのパックに入ってる卵同士を差別するゥ?僕はしない。
「へぇ、身につまされるねェ。」
「そういうのは飲み屋でいいかなァ。」
あっはは。なにかヤなことあるんだろうねェ。
そういう顔で、笑うってことはさ。
あっはははははは。
僕には全然関係なァい。
微塵も毛ほども、ね?
「はァい。ばいばい。」
「また今度。」
お互いに明日があれば、だけど。
291
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/04(月) 01:49:23
「……ふむ」
コートにスカーフ、赤ブチ眼鏡。
茶色いおさげを尻尾のようにふりふり揺らし、ひとけの少ない路地を歩く小柄なジョシコーセー。
どうしてこんなところで少女がひとりで歩いているかと言えば。
「弱りましたね。道がわかりません」
「まさかちょっとテンション上がったせいで生来の冒険好きがスパークするとはこの私の目をもってしても。
というより生まれ育った町で道に迷うとはもはや恥を忍んで腹を切るしかない案件ですね」
「いえ、本当にここは黄金町……?
よもや私はいまだ知らぬ新天地にたどり着いてしまったのでは? ……興奮してきました」
……表情一つ崩さず、道に迷って困っていた。
292
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/04(月) 03:02:45
>>291
「……げっ」
人気の少ない路地に迷い込んでしまったのが運の尽きだったのかもしれない。
というのも、いかにも『初めて染めました』と言わんばかりの痛々しい赤毛を、
ワックスでツンツンに立たせたこれでもかというくらいの不良少年が、
道端にしゃがみ込んで、ちょうど小さな箱を拾い上げたところだったのだ。
箱は白と赤のツートーン。
ポケットにすっぽりと入りそうなサイズのそれは、この国では十八歳未満の購入が禁止されているものだ。
ちょっとした案件である。
「……あー、信じてもらえないかもしれねーんだけど」
「俺のじゃあないんだ……マジで」
不良は『マズった』という顔で、ホールドアップが如く両手を挙げる。
「あ、アンタ、秋映学園の人? そうじゃないなら、助かるんだけど……」
293
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/04(月) 03:18:33
>>292
「………………」
ホールドアップした少年を、ぴくりとも表情を動かさずに少女は見る。
そしてゆっくりと口を開き。
「………………きゃーへんたいよー」
……無表情のまま、棒読み極まるセリフを吐き出した。
「……とは言いませんとも」
「ええ、わかっています。
私が声をあげた瞬間貴方はその獣性を解き放ち、問答無用で私を組み伏せてしまうのでしょう?
そのままウフンアハンオゥイエスオゥイエスで私はお嫁に行けない身体になってしまうのです。
あ、今の『からだ』は『しんたい』って書きますからね。肉体の方がいいかもしれませんが」
「……おほん。ともあれ」
「なんて卑劣なっ」
身を掻き抱いて半歩下がり、顔色一つ変えずに罵倒までした。
294
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/04(月) 12:38:33
>>293
(…………ヤッベェ……!)
思っていた方向とはまったく別のベクトルでピンチだ。
「ええっとな」
箱をその辺りのくずかごに放り込み、少女の近くへ。
出来るだけ視線を合わせないように、少女が歩いてきた方向とは別の道を指し示す。
「この道をまっすぐ行って、国道に出たらひたすら右に、ずっとずっとまっすぐ行くんだ」
「途中でコンビニがあって、その3ブロック先に大きな白い建物がある」
少女の窮状を察してか、道案内を始める……
「そこに入って、受付の人に『頭がおかしいんですが、診てもらえますか?』って言うんだ」
「デッケェー病院だし、たぶんエムアールアイ? とかやってくれるから……な?」
神妙な面持ちで、しかし一度も目を合わせずにアドバイスした。
295
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/04(月) 17:08:02
>>294
ピシッと、時が止まったかのように動きが止まった。
眉だけが僅かにピクリと上がる。
「……ジーザス、まさかノータイムで頭のおかしい人と思われるとは」
ハァ…
ため息一つ、額に手を当てて大仰に天を仰ぐ。
それも明らかに『フリ』で、相変わらずの無表情だったが。
「いえ、しかし私も反省しましょう。
実は私、道に迷ってしまいまして。
寂しいやら情けないやら、人恋しさのあまり少々饒舌になってしまいました」
ぺこぉーっ
「申し訳ありません、Mr.TE○GA」
そして折り目正しく、頭を下げた。
呼称はあまり折り目正しくなかったが。
296
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/04(月) 22:28:11
>>295
「……つまり、冗談だったってことか?」
要約要約ゥ!
「けどよー……真顔でスラスラとああいうこと言ってるのスゲー不気味だったぜ」
「道? アンタ旅行客か何か? なに、どっちに行きたいの?」
どうやら案内を買って出るつもりのようだ。
「……TE○GA? テ○ガってなんだ?」
そして逆襲だ。
297
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/04(月) 22:47:19
>>296
「ええ、年頃の女の子なので冗談がお好きなのです。
箸が転がるだけで七転八倒いたしますとも」
そういうことらしい。
どういうことだろう。
「おかげさまでお友達が少ないのが悩みでして。
小粋なジョークと嫉妬深さがチャームポイントの寂しがりやな16歳」
「秋映学園高等部三年の流星 越(ながれぼし・えつ)と申します。
どうぞお見知りおきを」
ぺこぉーっ
つらつらと淡々と自己紹介を述べ、再び一礼した。
「生まれも育ちも黄金町なのですが、遅めの初詣の帰りでしてね。
とても素敵な初夢を見たもので、童心がむくむくと鎌首をもたげてついつい知らない道を選択。
するとどうしたことでしょう、帰り道がわからなくなってしまったではありませんか」
「……という次第なのです。
が、実は先ほどの病院への道筋でおおよそ現在地は分かりました。
エッちゃん感激です。お礼に今見たものは忘れておいてあげましょう」
「なおTE○GAとは『若さ』なのではないかとする説が学会では有力だそうですよ?」
かくん、と小首を傾げる。
小柄さも相まって小動物的と言えるかもしれない。が、無表情なのでむしろ機械的だ。
298
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/04(月) 23:31:20
>>297
「あー……なんか、大変だったな、そいつは」
独特のテンポに、ゆるく相槌を打ちつつ。
いわゆる『天然』とか『不思議ちゃん』と呼ばれるタイプだろうか。
「しかし知らない道って……そりゃあ気を付けるべきだったぜ。
迷うにしても、この町結構ヤベー場所とか多いからな。
学校とかで耳タコってくらい注意されてるとは思うっけどよ……」
「って、先輩かよ……ますますマズったぜ……」
学年を聞いてから、明らかに態度が変わる。
尖った外見とは裏腹に、気弱そうな草食動物のような目だ。
「ち、違うンスよ? マジで、落ちてたの拾ったってだけで」
「あ、俺、鹿沼ッス。鹿沼 紅太(かぬま こうた)、中三」
299
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/04(月) 23:45:34
>>298
おっと『高三』と言ったがスマンありゃあ嘘だった。
『高一』が正しいな……大人は嘘をつく生き物ではないのです。ただ間違いをするだけなのです。
「『行けよブラザー、知らない世界が広がってるぜ』」
「そう私の心の中で囁くタフな黒人男性の誘惑に勝てなかったのです。不覚」
少し俯いてしゅんとした。
……しゅんとしているのだろうか。
…………しゅんとしたっぽい動きをした。
そして当然の如く次の瞬間にはケロッと顔を上げた。
「ともあれ、ご心配には重ねて感謝を。
見た目の割に『優しい人オーラ』満載で、お姉さんがたのハートを鷲掴みするタイプですね、コータ君は」
「そーいう事ができる人にも見えないので疑いはしませんが……
……でも、たまたま落ちてた大人のおもちゃに興味津々だったんでしょう? んん?」
「…………不潔っ」
300
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/05(火) 00:28:33
>>299
コイツ…己の心の中にタフな黒人男性を買っているのか……
「俺、タバコをそういう表現する人初めて見たぜ」
いや、確かに臭いとかキツイし、不潔か……?
「はー……しかしあの学園、高校の先輩は怖い人ばっかだと思ってたけど。
流星さんってなんか雰囲気違げーな。いや、変な人ではあるけどさぁ」
301
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/05(火) 00:42:31
>>300
「コータ君、そういうコト言っても怒らないかなって……」
軽く握った手を口元に当て、上目遣いで紅太を見る。
上目遣いだ。しかし無表情なのでちょっと不気味だ。
「おや、変な人とは心外な」
「しかしご心配もごもっとも、高等部は魔窟です。
前世が魔王だと言い張る女子、気合を入れるとシャツがはち切れる胸に七つの傷がある男子。
そのような怪物どもが日夜自らのナワバリを広げようと血で血を洗っているのです」
身を掻き抱いてガタガタ震え始める。
顔面も蒼白に……いやそもそも色白なので変わってない。
「まぁ嘘ですが」
ケロッと胸を張った。
「皆さん優しくていい人ですよ。私とお友達にはなってくれませんけど。
でも体育の時間で二人組にはなってくれる程度にはいい人です、うん」
「あ、私のことはエッちゃんで結構ですよ?
誰にでもフレンドリーに振る舞える私です。ぶい」 ダブルピィース
302
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/05(火) 00:54:49
>>301
> 「しかしご心配もごもっとも、高等部は魔窟です。
> 前世が魔王だと言い張る女子、気合を入れるとシャツがはち切れる胸に七つの傷がある男子。
> そのような怪物どもが日夜自らのナワバリを広げようと血で血を洗っているのです」
「うっへェ……」
ありえない、と言い切れないのがあの学園の怖いところだろうか。
つい最近じゃあ、不良のメッカとも名高い別の高校に殴り込みにいったって話もあるくらいだ。
「やっぱりやべェな高等部……最近になって急に『増えた』しよ……」
> 「まぁ嘘ですが」
> 「あ、私のことはエッちゃんで結構ですよ?
> 誰にでもフレンドリーに振る舞える私です。ぶい」 ダブルピィース
「…………」
べちっ
「……、あゴメン」
思いっきりでこピンした。
気づいたら、体が、勝手に……!
303
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/05(火) 01:11:49
>>302
べちっ
「ぁ痛っ」
叩かれた額を抑える。
流石に無表情とは行かず、ちょっと涙目だ。
それでも表情の変化は微々たるものだが。
しかし一応、茫然としてるような表情ではあった。
「………………」
「…………………………………」
「…………………初対面の男の子に暴力を振るわれてしまいました。ショックを隠し切れません」
アッ、結構傷付いている。
「……謝罪、はされたので賠償を請求します。
しかし賠償と言っても何を要求すればいいんでしょうか」
「善良な女子高生なのでいい案が思い浮かびません。弱りました。
魔女狩りの如き公平な裁判によって処罰を決めたいところなのですが……」
……いや、あんまり傷付いていないかもしれない。
「ところで『増えた』ってなんでしょう。ワカメ?
そういえばクラスの草川さんが最近パーマをかけてクラスメイトにイジられてましたね」
304
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/05(火) 22:18:16
>>303
「ウッ……ご、ごめん」
「なんというか……ツッコまなきゃあいけない気がして……」
女子の涙には弱い。
世の中の多くの男子中学生よろしく、上手いかわし方を知らないためだ。
「えぇーっ……俺、金は持ってないしな……」
「お年玉は全部かあちゃんに預かられてるし」
そしていつの間にか家計として消費されるのだ。
> 「ところで『増えた』ってなんでしょう。ワカメ?
「あ、こっちの話だぜ。まあ、ヤバいやつの中でも特にヤバいやつが増えてるからさー」
305
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/05(火) 22:58:01
>>304
「断じて許しません」
「……いえ、お母さん銀行システムの犠牲者には同情する主義ですが、それはそれです」
見えない箱を横に動かす『置いといて』のジェスチャー。
その後、ぷくーっと頬を膨らませた。怒ってますよアピールだ。
「ええ、やはりそうした悪しき風習が現代社会の闇を生み出すのかな、と思ったりもしますが。
それとも私はてっきり『超能力者』でも増えているのかと。
キミと私でボーイミーツガールでも始めてみます? なんて。うふふ」
今度は口元に手を当ててクスクス笑う。が、目は笑ってなかった。
表情(?)がコロコロ変わる少女だ。全て演技というか、ポーズなので当然だが。
いやそもそも表情自体は常に無表情なのだが。
「まぁそれはさておきですね」
再び『置いといて』のジェスチャー。
「では恵まれないコータ君でも支払える賠償を提案しましょう」
「そのですね」
「……………」
「おほん」
「そのですね」
…………言葉に詰まっている。
心なしか俯いて、もじもじしている……気もする。
「……そのですね」
「その……おはなし……いえ、その……」
「えっと……や、やっぱり道がわからないので駅前辺りまで案内してくれませんか?」
どことなく不安げに、上目遣いでそう訊ねた。
306
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 00:05:21
>>305
「超能力者ネェー……まあ、そんなもんが増えたらフツー嫌だよな」
「とにかく、そういうわけで払えるモンはないんだけど……」
言葉に詰まる流星を、じっと待っている。
せわしなく変わる仕草から一転、大人しくなった年上(のはず)の少女を。
「……………」
「…………」
「……、ボーイミーツガールは平気なのに、おはなしは恥ずかしいのか……」
そして、感想一言。
あきれたような、おかしいような、まるで年下の子どもの無邪気さに向ける視線。
「まー、いいけど。駅まで歩きながらダベるってことだろ? 行こーぜ」
「仏頂面だと思ってたけど、カワイイとこあんだなー」
どうせ暇を持て余していたところだ。
相手の暇を潰す手伝いで、でこピンをチャラにしてくれるのなら安いもの。
307
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/06(水) 00:37:03
>>306
ぱ ぁ ぁ ぁ ぁ
「……エッちゃんは恥ずかしがりやさんなのです。うふふ」
顔を上げる。
少しだけ……本当に少しだけだが、にこりと口角を上げて微笑んでいた。
「ささっ、では行きましょうコータ君。
可及的すみやかに、かつゆっくり焦らず行きましょう」
「いざゆかんカワイイの向こう側、なのです」
そうして僅かに微笑みながら、喜びに体を揺らして鹿沼を急かす。
彼女なりに、とても喜んでいるのだ。
308
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 00:46:35
>>307
「ど、どっちだよ……まあ、急がなくてもダベってるウチに着くと思うけど」
微笑に面食らいながらも、促されるままに駅へと向かう。
喜び動く彼女の足元を、転ばないように見守りながら。
正月だ。道も滑りやすい。
初詣の帰りに転ぶ、なんて縁起の悪いことは、よくない。
「つっても、ここに住んでるんだろ?
駅なんて、何しに行くんだ? 誰かと待ち合わせてるとか……」
「……まあ、用事なんていくらでもあるか。 あの辺、何でもあるからなぁ〜〜〜」
309
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/06(水) 01:07:55
>>308
「実は彼氏と待ち合わせているのです」
「なんて言えたら素敵だったのですが。ははは」
今度は完全に冷めた表情だった。
無表情と言うか、表情が死んでいた。
「何を隠そう、単に私のおうちが駅の近くなのです。
調子に乗って隣町から歩いて帰ろうとしていたのですが、失敗でしたね」
とはいえすぐにまたケロッとする。
……これが平常運転なのだろう。それでも幾ばくか、心持ち嬉しそうではあったが。
「しかし黄金町には辿り着いている辺り、私の方向感覚も捨てたものではないのでは?
いやですね、サインは一人一枚までですよコータ君ふふーん」
……いや、実は結構テンションが上がっている。
元々こういった言動の人間ではあるが、普段よりそれが加速している。結構嬉しいのだ。
「……ところで、コータ君は黄金町から出たことはありますか?
隣町程度ではなく、県外とか、国外とかで」
310
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 01:16:39
>>309
> 「実は彼氏と待ち合わせているのです」
> 「なんて言えたら素敵だったのですが。ははは」
「あっ……」 スッ
再び指がでこピンの形を作っていたが、顔色を見て察したので手を下ろした。
「あー、なるほどね。駅の近くってこたぁ、なんかのお店とか?」
さもなくば、賃貸マンション辺りになるのだろう。
一軒家、というのは駅近くでは珍しい。
「……いや、まともな方向感覚なら、迷わないと思う……
つっても、俺も町から出たことあんまないから、偉そうなことは言えねーけど……」
「親戚の家に行くとか、学校の行事で出ることはあるけどさ……
自分で町の外に出よう、と思って出たことはねーかも……でも、なんで?」
何で、そんなことを尋ねたのか、という意味だ。
311
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/06(水) 01:36:29
>>310
「いえ、マンションです。
毎朝会社に出かける父と母を見送っては家で待つ、気ままな鍵っ子生活ですよ。
現代社会的に言えば、ごく普通のご家庭ですとも」
案の定と言うか、賃貸マンション住まいのようだ。
彼女の言う通り、現代社会ではさして珍しくも無い家庭と言えるだろう。
「彼氏の袖を引いて『今日はウチに誰もいないの』と言うのが密かな夢なのですけどね。
彼氏どころか友達にも言えませんはははだって友達がいないんだもんははは」
「ははは」
顔が死んでいる。
「ふむ。まぁそんなものですよね」
さておき、急にちょっとだけ、少女は真面目な顔をした。
「いえ、私……『海外』に行ってみたいのです。
どこに行きたいか、というのはまだどこも魅力的過ぎて決まっていないのですが」
「例えばアメリカや、あるいはブラジルや、それともスペインとか、インドもいいかもしれません」
「どこか遠くの国で、『旅』がしてみたいのです」
一切の冗談っ気なしに、そう零す。
「それで、コータ君に旅行経験があるのならお話を聞いてみたいな、と。
もちろん、あわよくばという程度でしたけれど」
312
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 21:50:35
>>310
「は、はははっ!!」
「…………」 「……」
頑張って笑う……いたたまれなさを声量で誤魔化す策だ。
「『海外』ネェー。そりゃあ大変だろうな」
「だって、英語喋れなきゃあいけないだろ。
言葉だけじゃなくて、食いモンも、天気も、ルールも、考え方も違う」
「そんな場所に行くために頑張って稼いで、勉強して、結局戻ってくる。
俺にはワカンネェなぁ……。なんだって、海外なんかに行きたいって思ったんだ?」
流星の話に、多少否定的ではあるが、それでも真面目な顔で乗っかる。
疑問を投げかける。自分と違う考え方に触れ合う機会というのは貴重なものだ。
「俺は旅をするなら『国内』だなぁ〜〜っ。『海外』よりずっと楽だ」
313
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/06(水) 22:20:14
>>312
「……ふむ。なんで、ですか」
問われて、一拍。
口元に手を当てて少し考えてから、また口を開く。
「……コータ君。
勉強してる時とか、あるいはテレビを見ている時や、マンガやアニメを見ている時でも構いません。
そういう時に、自分の知らなかったことを知って『面白い』と思ったことは?」
「あるいはスポーツで、今までできなかったテクニックができるようになって楽しかったことは?
初めて自転車に乗れるようになった時、嬉しいとは思いませんでしたか?」
小首を傾げながら、問うというよりは説くように。
「自分の知らないこと、できないこと。
そういった『自分が持っていない物』にこそ、大きな価値があると私は思うのです」
「なので私は、自分の知らない世界を旅してみたいのですよ。
言葉も、文化も、なにもかもがまったく異なる別の世界を」
314
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 23:36:24
>>313
「う〜〜〜ん……勉強はさっぱり苦手だからなぁ。
だけど、漫画やスポーツなら分かるぜ。
がんばった達成感だったり、好奇心っていうことか?」
流星の言葉を自分なりに咀嚼し、けれどもまた首を捻る。
喉の奥、何か引っかかる感じがするのだ。
「ただ、けれど、それってどうしても『海外』で、『旅行』じゃあないとダメなのか?ってことなんだよ」
「アンタが今言ったみたいに、漫画やアニメじゃあダメなのか?」
「英国本場のスコーンを午後のティータイムに味わうのに、
どうしてもイギリスまで旅行しなくっちゃあいけないか?
ネットで調べりゃあ、作り方も、食える店も探せるんだぜ」
「見れるかどうか分からないオーロラを寒空の下で待つよりも、
その辺の科学博物館なんて行きゃあ、写真や、オーロラを作る機械がある」
「……って、別にアンタの楽しみを否定したいワケじゃあなくってさ。
アンタの言う『自分が持ってないもの』は、もっと楽に手に入れられる」
「わざわざその場所まで行かなくても」
「苦労して『知らない世界』に跳び込まなくても、だ」
つまり、結果に共感はすれど、そのための手段を問うている。
知らないもの、知らなかったものを経る喜びは分かる。
しかし、自ら足を運ばなくとも、未知のものを得る手段は、今の世では幾らもあるのだ。
「日本にだって、まだ俺たちの知らねースゲエもん、いっぱいあると思うぜ」
315
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/07(木) 00:07:15
>>314
「もちろん、それがダメなことだとは思いませんし。
この国にも、私の知らない物がたくさんあるとも、思います」
「ですがやはり、自分の目と耳と体で確かめたいとも思いますし……」
胸に手を当てる。
そして、自分の胸を見下ろすように見てから、また紅太の顔を覗きこむ。
「あるいは、そうですね」
「私は自分の価値を試してみたいのかも、しれません。
たくさん苦労して、それを乗り越えることができたら、私はとってもタフな女、ということでしょう?」
「いえ、試したいというより、価値を得たい?
自分でも少し言語化しにくいですね。というか、率直に言うと少し気恥ずかしいです。いやん」
316
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/07(木) 00:23:04
>>315
「おお……マラソンランナーとか登山家みてーなこと言うね」
素直に感心した。
楽な道を示されて、それでも躊躇なしに苦労する道を選べる人は、尊敬する。
「いやん、て」
「でもちょっと意外だぜ。イメージと違う? つーかさー。
不思議な人だと思ってたけど、そういうカッコたる信念?みたいな」
「俺そういうのないから。尊敬する」
317
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/07(木) 00:55:19
>>316
「…………」
「ふふーん。エッちゃんはコータ君より少し大人のお姉さんですから。
タフでミステリアスなエツおねーちゃんを存分に尊敬するといいでしょう。えへん」
ちょっと誇らしげに胸を張る。
無表情だが、雰囲気は明るい。
「でも、コータ君は見るからにいい子ですから
私のようにわざわざ試すまでもなく、そのままのコータ君でいればいいのではないでしょうか。
むしろ私があなたを尊敬するべきところですとも」
「普通であることは立派なことで、尊いことです。
髪型とか、ちょっと普通から脱却しようとしているところも含めてね。
変な子ぶりに定評のあるこの私が言うのですから間違いありません」
「あ、ここ笑うところですよ」
少女は別に笑っていなかった。
「…………あ」
ところで急に声を漏らす。
視線は前に。路地を抜けた先に、人通りが見えた。
視線を下に。しゅんとする。
「……ああ、そろそろ駅についてしまいますね。
残念です。とても残念です。ぐぎぎ」
318
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/07(木) 01:17:53
>>317
「……うん」
普通ってのはありふれていて、それでも大切なことだ。
旅行というのも結局そこで、最後に日常に戻って来られる安心があるから、外側の非日常に踏み出せる。
「ま、同じ町に住んでりゃあ、いつでも会えるし」
「ましてや一個上だぜ? 学園で嫌ってほど見かけるだろ」
「この町は広いけど、狭いからなぁ」
尊敬しあえる友人というのは得がたいものだ。
それだけに、望めばきっと会えるだろう。
「ぐぎぎ、て」
「まあ、また、な」
なので、そっけなく別れる。
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