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【場】砂浜

335鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/06/15(月) 00:21:53
>>334

「……なんや、事情でもあるんかな。」

鈴元の顔から笑みが消えた。
怒ったわけではない。

「笑ってするお話、って感じやなさそうやねぇ。」

「目ぇ真剣やし。や、学校のことで悩んでるんかもしれんけど……」

沈黙。
まっすぐ葉鳥の目を見つめる。
烏の濡れ羽のような黒髪とよく似た黒い瞳が、相手を見つめる。

「前はたのしなかったよ。前は、ね。」

「毎日ガッコと店の往復。つまらん。作業感すらある日常やったわ。」

酷評である。

「でもな。」      
             「――――――今は楽しい。」

いつものように優しく笑った。

「今は『やりたいこと』があるし、『エエ友達』もおる。」

部活も、そこにいる人間も彼にとっては大切な存在だ。
機械的な日常をほんの少し変える、そんな機会を渡してくれたのだ。
自分が仲間なら楽しそうだと言った女性がいた。
お世辞でもなんでも、鈴元にとってはそれが嬉しかったのだ。

「つまらんことも、ツラいこともあるわ。
 でも人間生きとったらもっと酷いモンを見るし聞く」

「それにくらべたら、『たのしゅうてしょうがない』そんなとこやで。」

胸を張っていえる。鈴元は心からそう思っているのだから。


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