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【場】砂浜

269鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/05/24(日) 22:46:01
>>268

>「ど、ないって……わ、私、こういうのは……そ、その……」

「苦手、やった?」

バツが悪そうな顔で頭をかく。
そういう反応は予測できなかった、わけではない。
皆が皆ミスコン参加に能動的だとは思っていない。
最近はうまく行き過ぎていたのだ。

(まぁ、そういう時もあるわなぁ。)

「や、別に無理にとは言わんよ。僕にそんな権限ないしねぇ。」

少し沈黙して鈴元は口を開いた。
相手の目を見て、柔らかな表情で話す。
威圧せぬよう、貴重な茶器を扱うように優しく話す。

「あんさんはきれぇやし、エエとこイケるって思ったんよ。」

「ピアノ弾いてる時、ういろう食べてる時の顔も魅力的でエエ顔しとったしねぇ。」

「でも、あんさんがエエっちゅんやったら、エエんよ。」

ゆっくり、一言ずつ、確かめるように言う。
面と向かってこんなことを言っているのが恥ずかしくなってくる。
耳は赤い。じきに顔も赤くなるだろう。

「でも、でもやでぇ?もしほんのちょっとでも出てみたいって思うんやったら僕は嬉しい。」

「もしミスコンでピアノ弾いてる凛々しいあんさんがおったら
 慌ててういろうの弁護するかいらしいあんさんがおったら

 それはエエ事やなって、思ったんよ。」

そういうと、また黙り込んだ。
自分の言いたいことは言い切っただろうか、と自問する。
相手を不快にしてないか、と自問する。
はぁ、と一息ついた。波の音が二人を包んでいた。

「なんか、すんません。無理にとは言わんっちゅうたのに。まぁ、好きにしてくれたらエエよ。」


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