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【場】『私立秋映学園』 三学期

842イザベル『アーキペラゴ』【大三】:2015/10/07(水) 22:40:25
>>841

  「おいおい、店に入るのに『お邪魔します』はねーだろ」

からかうように笑う。
……つまりそれは、そんなにも『世間知らず』にならざるを得ない育ち方をしたということだが。
だが、気を回し過ぎるほうが失礼なんだろうとイザベルは思う。
彼女は強い。腫れものに触るような態度は侮辱になる。

     「ヒヒヒ、なんだアタシがイカしてるって今更気づいたか?」

       「まっ、ウチの生徒は常連多いけどな。
        小中高大と一貫のマンモス校だからよォ。
        自然と通学路にある店にゃあ詳しくなるのさ」「アタシは高校からだけどよ」

実際、客はまばらと言ったが……その数少ない客に、大学生と思わしき姿がいくつかある。
イザベルも秋映に通うのは今年で6年目だ。他の連中は倍ほど通っている。
それなら、嫌でも周辺地理には詳しくなるものだろう。
そんな話をしながら、適当に二人掛けのテーブル席に座る。
カウンター席も空いていたが、正面から向かい合って話せるテーブル席がふさわしいだろう。

         「チッ、先輩風吹かすの失敗しちまったぜ」

お代は自分で払うという穂風に、冗談めかして答えてから。
スッと真面目な顔をして、紺色の鋭い瞳を穂風に向けた。

              「…………………んじゃまぁ」

      「――――改めて、聞かせてくれや」

             「おまえが、今までどうやって暮らしてきたのかよ」




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