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【場】『私立秋映学園』 三学期

531関東 也哉子/ヤーコ『一般人』【中二】:2015/05/24(日) 21:50:42
>>530

掴まれた手を、しっかり握り返す。
離さないように。確かめるように。
瞳をそらさず、じっと見つめ合う少女たち。

「そんなの……あたしにも、わかんないよ。
 ただ逃げたくないって、思っただけだから」

肩で息をする也哉子の表情は、疲れと恐怖で蒼褪めているようでもあり、興奮と夕焼けで紅潮しているようでもあり。
およそ通常とは程遠いコンディションなのは確かで、今にも倒れそうな足取りで。
それでも、今倒れたらいけないと思うから、しっかりと両足で立つ。
倒れないように。『立って』、『向かう』ために。

「あたしは……『逃げない』ことはできても、まだ、前には進めない。
 足元だっておぼつかなくて、見渡す限りはずぅっと暗くて。
 手探りで、どうしたって走れない」

瞬きすらせず、ただの瞳で嵐ノ宮を見る。
そこにはなんの力もない。ただ、『意志』があるだけだ。

「だから、うん
 あたしは暁利ちゃんに、『あかり』になってほしい。
 あたしが逃げたくないって思ったのは、暁利ちゃんのおかげだから。
 『逃げないあたし』でいるために、暁利ちゃんがいてほしい」

『逃げる自分』に、なりたくないから。
そうじゃないと、もう誰にも顔向けできないから。
もし『嵐ノ宮暁利』が『関東也哉子』を必要としていると言うのなら、同じくらいに『関東也哉子』は『嵐ノ宮暁利』を必要としている。
先行きの道連れでありたいと、思っている。




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