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【場】『私立秋映学園』 三学期

529関東 也哉子/ヤーコ『一般人』【中二】:2015/05/24(日) 18:35:47
>>528

「ど、どうしたの?
 暁利ちゃん、大丈夫!?」

うずくまる嵐ノ宮に駆け寄る。
手を伸ばす。屈んで、背に手を置こうとする。

さっきまで、自分を殺そうとしていた相手なのに。


でも、手を伸ばす。


「あ、あたしだって、わかんないよ!」

怯える嵐ノ宮の言葉に、思わず叫び声が出た。
震えは止まっても、逃げないと決めても、恐れも、怒りも消えてはいない。

「暁利ちゃん、相談に乗ってくれるって、言ってたのに!
 いきなり、あたしのこと殺そうとしたりして!
 かと思ったら、急にこんな感じになっちゃって!」

「暁利ちゃんの方が、ずっと意味わかんないよ!」

珍しく、也哉子は心の底から怒って、叫んだ。
気まぐれで助けてくれたかと思えば、急に殺そうとしてきて、かと思えば怯えだす。
也哉子からしてみれば、嵐ノ宮の方がずっと不可解で、理不尽だ。
この空間に来た時、也哉子は嵐ノ宮を『女王』のようだと、『神』のようだと思った。
でも今は、『王女様』のようだと思う。
気まぐれに善行も悪行も成す、子供みたいに優しくて、残酷で、世間知らずの王女様。

「……でも、全部『暁利ちゃん』なんだもん。
 わかんないって、それで終わらせちゃったら……もう、ずっとさよならになっちゃうよ……」

結局のところ、也哉子はこの期に及んで嵐ノ宮のことを『友達』だと思っていた。
狂ってる。その友達に殺されそうになっているのに、それでもまだ友達でいようとしている。
也哉子自身、立て続けに起こる理不尽によって自棄になっているのかもしれない。
でなければ、その悪性と危険を理解した上でこんなことを言い出すなんてことは普通あり得ない。
その善性も悪性も、不安定さも。全て『嵐ノ宮暁利』として飲み込もうと言う狂気。

それでも、少なくとも、今は。
也哉子が感じる、『友達』とお別れしたくないという気持ちは――――本当に、心の底からの気持ちで。


だから、手を伸ばした。




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