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【ファンキル】SSスレPart2

926ロスラグIFストーリー:2020/05/23(土) 14:14:15
>>925
「遅いのです。何もかも」
「遅くなんてありません。全てはあなた次第でいくらだって変わります」
「変わりませんよ。・・・でも、もし、変わるきっかけがあるとするなら!」

神令ミネルヴァは持てる渾身の膂力で、大地を蹴った。

「私に勝ってみせてください!」
「勝ちますよ。ーー私たちの繋がりで!!」

刹那、漆黒の矢が飛来する。
それは神令ミネルヴァの槍を直撃し、彼女の手から槍を離させる。
しかし、神令ミネルヴァは止まらない。この展開は読めていたからこそ、次の手段をうつ。
神令ミネルヴァのローブのなかに隠された『退化のリリボン』の力が発動する。
これはキル姫の力を例外なくリセットしてしまう強力なアイテムだ。本来なら、相手のキル姫に使い力を奪うために開発されたものだが、彼女は奥の手を自分自身に使った。
一見、愚かな行動に思えるこの行為は彼女にとって必殺の秘術へと変わる。
力も防御力も運も全てが初期化された彼女の反射は、いまこそ最大の凶器となって擬装ミネルヴァを襲うだろう。
そして、いまの擬装ミネルヴァはヘラクレスを装備している。キル姫は共通して、自分を害する攻撃にたいして咄嗟に反撃をしてしまう性質を持つが故の必勝の戦法。
痛々しく、まるで自らを傷つけて壊さんとする行動により、この戦いの終止符が打たれる。彼女はそう確信していた。確信したのだ。だからこそ、彼女の敗北は決した。

「なん・・・だと・・・!?」

神令ミネルヴァは驚く。擬装ミネルヴァはヘラクレスを手放した。それどころか、両手を広げて自身が突っ込んでくるのを待っている。
当然、全力をもってした疾走を自ら止める術などなく、神令ミネルヴァは『反撃ができなくなった』擬装ミネルヴァに捕まった。

「く・・・こんな手が・・・」
「あなたのスキルは確かに厄介です。でもこうなってしまえばあなたはなにもできませんよ」

神令ミネルヴァは逃げ出そうともがくが、既にキル姫の力がリセットされてしまってる彼女を振り払ことなどできなかった。

「・・・私の感情を逆撫でしたのは、この状況を作るためでしたか」
「ええ、そうです。退化のリリボンは想定外でしたが、それを使われなくても、あなたを抑え込むことはできていましたよ」

擬装ミネルヴァは既に、スキル『勝利の先へ導く者』を発動させていた。たとえ、神令ミネルヴァがリリボンを使わなかったとしても、擬装ミネルヴァの拘束を振り切ることはできなかっただろう。

「まだ隠し球を持っていたとは、完敗・・・ですね」
「切り札は最後にとっておくといい、私たちのマスターだった人が教えてくれた知恵です」
「そう、ですか。私は・・・遥か昔に負けていたんですね」

神令ミネルヴァはもう抵抗しようとはしない。
敗北により完全に戦意を喪失している。だが、彼女の仮面は砕けない。
アルマスと神令エルキュールの戦いは、彼女の共鳴する力を引き上げる能力があったからこそ仮面を砕くことができた。この仮面を擬装ミネルヴァでは外すことかなわないのか、そう考えていたとき、黒ニケが神令ミネルヴァの頭の上に乗った。

「・・・ニ・・・ケ・・・」

神令ミネルヴァが、神令を受けて共鳴を失っても一緒にいた愛する家族の名を呼ぶ。
その瞬間、黒ニケの眼帯の紋章から目映い光が雷のように迸った。
目映く眩むほどの雷光が神令ミネルヴァの仮面を照らすと、仮面は塵となって消えていった。

「ぁ・・・ぁぁ・・・」

仮面が消えた神令ミネルヴァは、心が解放されたことで内に巣くっていた感情が爆発する。
言葉にならない、感情の濁流が彼女に大粒の涙を流させる。

「・・・ニケ・・・ごめんね・・・ニケ・・・ごめんね。・・・・ごめんね」

彼女は最愛の家族に謝った。
こんなことをし続けてもずっと一緒にいてくれた存在に、感謝と申し訳なさでいっぱいなりながら。
黒ニケは抱き締めて泣く彼女の力に少し苦しさを感じてながらも、頬から涙を流して喜ぶ。
そんな一人と一匹の絆を見て、ぼろぼろになった二人と一匹が慈しむような頬笑みを浮かべた。




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