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【ファンキル】SSスレPart2

819お誕生日出張ブラック版:2020/04/11(土) 17:57:17
布団にくるまって体を隠すロンギヌスをマスターが眺めて10分ほどたったあと、ロンギヌスは口を開いた。

https://i.imgur.com/DkAGCSr.png

「マスターは、私が背負った業を覚えていますか?」
「嫉妬だろ」
「それが誰に向けられてるか・・・知ってますか」
「自惚れでなければ・・・・・・俺か?」
「・・・・・・(こくり)」
「あーそうか、そうか(フォルカスとも考えたが、まあないわな)」

嫉妬とは好意の裏返しで生まれる感情の一つだ。それを向けられていると思うとマスターはむず痒くなって鼻をかく。

「私がマスターを目で追うほどに私の嫉妬の血が私を蝕みました。誰かがマスターと話しているのが嫌でした。誰かがマスターに触れるのも、誰かがマスターの視線を独り占めしてるのも、みんなみんな嫌でした。そして、それに嫉妬する私自身も」
「・・・・・・」
「心がずきずき痛みました。その度に体が渇いて血が疼くんです。嫌なものはみんな壊してしまえばって、そう思う心に呑まれて・・・私ダメですね」

ロンギヌスは脚を抱えて顔を膝に埋める。その体は震えていた。
マスターは彼女の髪に触った。艶のあった髪はなく、指を通してしまえばって絡まってしまいそうだ。

「なあ、ロンギヌス・・・お前との出会い憶えてるか?」
「・・・・・・マスターとの出会い」
「あの時のお前は凄かったよな。幽鬼って表現が似合うほど、鮮烈で、苛烈で、激的だった」
「・・・・・・正直、憶えてません。あの時の私は壊れかけていましたから」

ロンギヌスとマスターとの出会いはけっしていいものではなかった。
遠征を終えて帰還をしようとした時に出会い交戦した。マスターのいなかった彼女は傷だらけで、いったい何故存命ができているか不思議なほどだった。
亡霊。亡者。第一印象はまさにそれだった。それこそ、今日の彼女のように、ただ渇きと呻きを満たすだけの存在のようだったから、マスターは彼女を助けると決めた。
死闘の末に彼女を保護したが、彼女はまるで保護したての猫のように警戒心を剥き出しにし、人語すら交いすることもなかった。
マスターは隊のキル姫に彼女を保護し続けることを何度か反対された。それもそうだ。暴走したキル姫を救う手などないことは彼が一番よく理解している。ただ、ロンギヌスとバイブスが繋がった時に、彼女が手遅れでないと知ってしまったから助けなければいけなくなってしまったのだ。
何故そこまでしてしまったのか、マスターはその胸中を一番古参のグリモワールにすら話していない。グリモワール自身には見透かされているようではあったが。

「マスターと他のキル姫の献身的な介護の結果、私は私を取り戻しました。以前の記憶はなくなってしまいましたが」
「そうだな〜、本当にみんなには苦労をかけたよ」
「そのことについては感謝をしても、したりません。でも、どうして・・・」
「どうして、俺がロンギヌスを助けたか?」
「・・・はい。マスターと出会わなければ、おそらく数刻もしないうちに消滅していました。そうすれば、こんな、嫉妬にまみれた穢らわしい私で苦労することもなかったのに」

ロンギヌスは布団を被さり、さらに体をぎゅっと縮めて丸まった。
布団越しでは表情は見えないし、涙もおそらく流れないだろう。けれど彼女は泣いていた。

「なあ、グリモと話すのは楽しいか?」
「・・・・・・楽しいです」
「俺もだ。特に表情がころころ変わるのが見てて楽しい」

ロンギヌスの胸がちくりと痛む。

「なあ、アスクのお説教は鬱陶しいか?」
「・・・・・・そんなことは、ないです」
「そうだよな、アスクはいっつも人のためにお説教だ。その優しさにいつも助けられてる」

ロンギヌスの胸がズギズギと苦しくなっていく。

「なあ、フォルカスの生真面目なところは苦手か?」
「・・・・・・別に」
「俺は大雑把なところがあるからなぁ、フォルカの生真面目さぐらいが俺には丁度良い」

ロンギヌスの胸の痛みがまして、●が欲しい衝動が抑えられなくなってゆく。

「なあ、ロンギヌス・・・お前は自分のことが好きか?」
「・・・嫌いです」
「そうか、俺は・・・お前のことが好きだぞ」
「・・・・・・・・・・え?」

むかむかして吐きそうになっていた胸の痛みが少しだけ和らぐ。
彼女は僅かに顔を上げてマスターを見上げると、頬を赤くさせて照れくさそうにしてる愛しい人が目に映った。




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