[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
| |
第五次聖杯戦争 本戦スレ
1
:
名無しさん
:2016/08/05(金) 21:38:34 ID:IzYCzDoE0
――――――――――――第五次聖杯戦争。正史より外れた、大幅なイフの聖杯戦争。
舞台は冬木。嘗て一人の少年が、ひっそりとその運命を踏破したその街では、予定されたとおりに聖杯戦争が行われる。
監督役は急遽用意され、如何にかして聖杯戦争の形は保たれることになった――――――少なくとも、その形式上は。
「セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー。此処までは良い」
「アヴェンジャー、ビースト、モンスター、だと……聞いていない、聞いていないぞ……」
聖杯戦争監督役、丁嵐兎角は頭を抱えていた。
聖杯戦争とは、七騎の英霊を侍らせたマスターによる聖杯の奪い合い。七騎の基本クラスはセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー。
但し、状況によって三騎士以外のクラスは入れ替わる事がある。酷い時には三騎士以外が基本クラスにかすりもしていない、と言う事もあり得るのだ……だが。
「何故、既定の英霊より三騎も多いんだ……!!」
そう、その前提が覆ったことは無かった。少なくとも、聖杯戦争というルールが制定されてからは。
規格外の英霊が、三騎も多く召喚される……異常と言うに他ならない状況であった。
無論、丁嵐兎角はそのことを知らされていなかった。正確な引き継ぎも何もなく、本来の監督役である人間は……理由は知らされていないが、『死亡』していたのだから。
「……言峰綺礼。一体、聖杯に何があったというんですか」
如何に悔もうと、如何に悩もうと、然し兎角には聖杯戦争を止める権限も力も無い。
全ての英霊は召喚を終えて、聖杯戦争は最早滑り落ちるように紡がれていく。かくして――――――聖杯を求める、魔術師達の血宴が始まった。
――――――――――――第五次聖杯戦争、開幕。
47
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/22(月) 11:39:13 ID:UnsCIJRQ0
朝焼けの白さと対を成す様な特有の薄光に染まったアスファルトを何者かが打ち鳴らす様に踏みしめる。
他に雑踏や話し声は無く、この時間特有の虚無感が路面の一角を包んでいた。
滑らかな曲面を描く一足は鮮やかに輝きを反し、元の黒々とした合皮の色に一線指す橙色が今の時間が日沈む黄昏であると昂然と語っていた。
その靴と言えば合皮であるが元来靴の羽根を締め上げるべき紐が非ず、そもそも羽根すらも無い合皮のバンドが上から抑えるかのような独特なデザインである。
とは言え珍しいものでは無い。むしろ至極一般的なローファーのあるべき形状であり、男が好み以外でローファーを履く機会等非常に限られているだろう。
例えば “学生” であるとか。
男……いや、男と言うには些か若い少年が纏う衣服は上下共に枯葉か枯木か、ベージュと言うには色味が強く、土色と言うには少し赤みが強い。
一度見れば忘れる事も無い非常に珍しい色のその制服は私立穂群原学園の物に他ならず、冬木市に住めばこの制服を来た子供たちを否応にも見る事だろう。
少年の左手に握られているのは一般的な学生鞄だけで如何にも帰宅中の高校生と言った様で特に変わった様子はない。
尤もそれは傍から見た場合の話であって、ほんの少し近づけば彼が小さく独り言を話している事が伝わるだろう。
「ほら、特になんも起こらなかったじゃないか。」
少年の言葉は虚空に消えた。と思える。だが実際は彼の言葉は彼が伝えたかった相手に確かに、はっきりと伝わっていた。
『その考えが不用心過ぎると言ってるんだ。今日は良かったかも知れない。だがこんな事を毎日繰り返していたら間違いなく狙われる。
暴れ牛の前の丸腰で飛び出すか、生肉を持って獣の巣に赴くか、どっちにしろ唯の命知らずか死にたがりなのか君は。』
彼の耳には確かに女の声が聞こえてくる。姿は見えずともその声色は怒っているか呆れているか、もしくはその両方を含んでいると簡単に感じ得た。
その言葉に少年の表情も曇る、如何にもバツが悪そうに眉を顰める様から何故か母親に説教でもされた時を思い浮かべる。
「はいはい。それは何度も聞いたから。
大体どうしろってんだよ。冬木から出る訳でも無い、しかも出歩かなきゃいけないのに長期の休みなんて取れる訳ないだろ。
学校辞めろとか言うつもりかよ。」
少年は歩みを止める事無く、呼吸を整える物とは明らかに異なる様相で、呆れた様に腹の底から大きく弛んだ空気を吐き出してみせる。
尤も少年とは異なり“彼女”はその言葉に聞き捨てならない単語が含まれている事に目敏く気が付いて見せた。
『……なんだ。学校とは辞められる物なのか。』
ピタリと少年の足が止まる。
しまった。
とその表情にありありと描かれている。「絶対に言わないようにと気を付けていたのに。」と。
さてこの少年の一連の奇行。一般人から見れば正しく奇行その物で、少年の将来を危ぶむ者も居るかも知れない。
だが彼を取り巻く数奇なる状況を視認できる者からすれば話は別だ。
如何にも隙だらけなこの少年を捕捉したものが居れば――――の話であるが。
48
:
比奈 椿/アサシン
◆FaqptSLluw
:2016/08/22(月) 18:27:52 ID:eRYHSFOw0
>>46
雄叫びと爆音、激しく鼓膜を震わせ脳液を揺らす轟音が爆ぜた後には、引き返す波の如く静寂が押し寄せる。
安寧な闇と無音、バーサーカー達を包むのはただそれだけだった。
突如としてバーサーカーとエイヴィンドは他者の気配を感じるだろう、それも徐々に近づいて来るようなそれではなく、正しく『急に現れた』ような感覚を。
続け様に彼等は鉄が擦れ合うような音を聞く事になる、それと同時に闇の中からバーサーカーの額目掛けて飛来するのは鎖に繋がれた鉛の塊。
それを防ぐにしろ、当たったにしろ、すぐにその『鎖分銅』は引き寄せられ、その引き寄せた先に彼の姿を見る事が叶うだろう。
「───面妖な、人ならざる声が聞こえたので来てみれば……」
「お前〝達〟、聖杯戦争の参加者だろう?」
ジャリ、ジャリ、と鳴る金属音は、彼───アサシンが手に持つ鎖鎌から鳴る音、草履履きの脚で河原を歩きながら、ある程度の距離を保って彼は立ち止まった。
甚平を着た彫りの深い顔の男、着てる服装も合わせて日本の人間のように見える。
「主人の願いの為だ、我が魔鎌にて、その命刈り取らせて貰う」
会話も早々に、アサシンは鎖鎌の鎌をヒュンヒュンと振り回し遠心力を貯め、サイドスローでバーサーカーに投げ付けた。
大きく迂回するように、しかし正確にバーサーカーの首を狙うその鎌は、その速さもあって空気を斬り裂く風切り音を唸らせながらバーサーカーに襲い掛かる。
とはいえ動きはまだ単調、いくら速いとはいえどこの距離であるなら回避はそう難しくはない。
49
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/22(月) 23:41:05 ID:jowl7WGA0
>>47
「はっ…はっ……ふぅ。やっぱり楽しいね!走るのは!」
おそらく涼しいであろう時間帯…もう夜に近くであろう時間帯…如何にもスポーツします!といった感じの服装を身に纏いそこそこ長い距離を走ったのであろうか息を切らしながらも笑顔でランニングする女性がそこにいた。スタイルは人並み以上に良く顔も人並み以上に良い。しかし他の追随を許さないほどかというとそうでもない。街中を探せば1人や2人はいるだろうといった見た目だ。
そんな女性が奇妙な高校生を見つける。見た事のある制服。近くの高校生であろうか。普通の高校生なら目に留める事はなかったであろうがその高校生は違った。はたから見れば奇妙で珍しい光景ではあるがその女性にとっては見た事があるいやむしろ自分もやった事がある行動だった。
ーーー虚空に向かいそれに話しかけるーーー
少し離れた距離そこで身に覚えのある行動を目にした。あぁ…この子もか。なぜこの子が…なぜこの高校生がこんな目に?しかもこんな身近に…
聖杯戦争に参加しているのかと。少し悲しく思えた。いざという時も考えて戦うための準備もしているがまさかこんな早くに戦う事になるとは…
念の為を思って彼女と虚空に話しかける。
そうサーヴァントに向かって。
「どうするの?モンスター?」
『さぁ…とりあえずは魔力をちらつかせ様子を見れば良いだろう仕掛けられたらやり返せばいい。』
『マスターお前は奇襲などするような姑息な真似は好かんだろう。気にくわんだろう。それは私も同じだ。』
「よし分かった!あなたの意見を汲むわ。」
やる事は決まった…少し休憩をしていたが再度走り始める。目標の彼に向かって。彼と虚空にいるもう1人は離れていても感じるだろうか?膨大な魔力の奔流を…しかしそれは魔術師や普通の『枠』にあるサーヴァントとは少し違う質のものであると。
そして彼に近づいたのなら彼女は微笑みこう言うだろう。
「こんばんは。1人で誰に向かって話してるのかな?私はおかしいとは思わないけど『普通』の人から見れば少しおかしく見えると思うよ?』
『良かったら私と『オハナシ』…しませんか?」
少しばかり意味深な言葉…
彼はこの提案をどう取るのだろうか…それは誰にもわからない
50
:
エイヴィンド/バーサーカー
◆uHIlZU.osM
:2016/08/23(火) 02:01:36 ID:wMyYTv8o0
>>48
『……Ghh』
「───────………!」
突如として、彼"ら"は歩みを止める。
それは寒空の中に、突如として現れた"異物感"への困惑と警戒であり。
波動のごとき力の波が、気配であるという事に気付くより前に───その存在感は、先に行動を起こしていた。
『!』
次の瞬間。バーサーカーはマスク越しの瞳に、眼前より飛来する、鈍く輝く塊を捉えた。
『……hhUghaaaaa!』
それと同時に、バーサーカーはすかさず左方へ飛び退き、それを避けた。
眼前のモノが異質な存在という事は、狂った頭でも考え付いたらしく。闇の中へ飛び込むことなく、その場でジッと闇の向こうを見据えていた。
間も無く、"それ"は正体を、徐々に虚空の内より露わにして行く。
そこで漸く、姿を隠したマスターは気付いた。バーサーカーに投げられたのは、鎖のついた─────分銅か。
それをジャラジャラと手繰り寄せながら、まるで風の如く。亡霊のように姿を見せる者の姿が、闇の向こうから現れ出でた。
その気迫と存在感は、姿から判断するまでもない。それは、間違いなく───
「……私に気付くか。"サーヴァント"……!」
姿そのものは消したままに、彼は突然の来訪者を睨みつける。感じ取っているのは人の気配のみであろうが、個人情報まで知られる覚えはない。
『Urghh……』
バーサーカーもその姿の前に一層に身構え、その殺気と魔力を充満させる。
いかにも日本人然とした姿の相手に比べて、こちらのサーヴァントは────洋服(スーツ)にガスマスクと言った、近代的な西洋英霊である事を想起させるようであり。
人種を超えた殺意の応酬に、この場は一瞬で、はち切れんばかりの緊張に覆われていた。
「(……どういう事だ。先程まで、それらしい気配など……)」
マスターが思考を完了させるよりも前に。先に動いたのは、アサシンの方であった。
『!』
回転する鎖、そして側面より迫り来る鎌。
高速で迫るそれは、確実にバーサーカーの首を捉えんと、一直線に走って行く。
だがバーサーカーも、狂っているとて間抜けではない。迫り来る刃の軌道を確りと視認し───獣のように姿勢を低くして、それを回避する。─────そして。
それは相手に叩き込む、次なる攻撃への起点となる。
『UGHHHOHHHH!!!!!!』
声ならぬ叫びを上げ、頭上に鎖が通過するのを確認した直後に……前のめりの姿勢を利用して、そのままアサシンへと突っ込んでゆく。
彼は狂えど、かつて科学者であった恩恵か─────発明や知識への低下はない。
だからこそ、"遠心力"といった力の特徴に関しても。
如何に速かろうが、どうしてもそれは「大きな隙を生むものだ」と知り、彼は一気に距離を詰めに行く。
だが、その速度はサーヴァントにしては大したものではない。相手が相当な使い手であれば、ギリギリ対応できるか、という程度の距離で─────
『Ohhhrahhhhhh!!!!』
雄叫びを上げ、バーサーカーは不意に空へと飛び上がる。そこに構えるは────"握り拳"。
そう。バーサーカーは単なる徒手空拳で、眼前の敵に挑もうとしているのだ。────だが、アサシンは気付くだろうか。その腕の周囲に、"黒い粉末"が舞っている事に。
先程彼らが行っていた"実験"をもし視認していたのなら、その正体は分かるだろうが─────
よしんば分からずとも、その拳は"妙な気配"も同時に含有している事は、理解できるだろう。
51
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/23(火) 03:41:38 ID:UnsCIJRQ0
>>49
「だ〜か〜ら〜、辞めたら最後取り返しが付かないんだよ。退学だけは絶対にダメだ。」
少年の声がほんの少しだけ大きくなる。尤もそれは今駆け寄ってくる女性に対してのものでは無く、先程同様虚空へ向かっての物だろう。
その言動から小さな口論をしていると見て間違いない、内容からその前後にどの様な問答が行われていたかを察するのは難しくはない。
「……ん?」
浮かぶ何かを見据える様に虚空に泳いでいた少年の視線が、ふと横に滑る。
それはただ自らの歩行速度とは違う物が視界の端に入り込んだが故の反射的な行動であった。
思い返せばその様な経験が多々ある事だろう、動物の本能とも言うべき仕草と言っても過言ではない。
そう、あくまで有り触れた仕草でしかなかった。何時もであれば。日常であれば。
そこに人がいて、ぶつからない様にほんの少し立ち位置をずらす程度で終わっていた。
だが視界に捉えたそれが――――――― 彼の“眼”には宛ら清水に浮かび上がる泥か。景色と決して交わる事の無いドス黒い油か。
どの様な例え方をしてもそれは心地の良い物に例える事は難しく。
明らかに日常から逸した、日常を破壊しうる何かである事を直感させることは容易かった。
「ッ、何だ!?」
近づいてくる女性に対して少年は咄嗟に後方へと飛び退く、近づいて来た女性とは一定の距離が開く事になるだろう。
女性も少年が溢れ出る魔力に気付いたとすぐに理解できるはずだ。尤もその気付き方が一般的な魔術師のそれとは異なる事に気付けるかは別の話である。
【魔力を感じ、そちらを見て、気づく】と言う女性が想定した本来在るべき一連の流れではなく。
【そちらを見て、魔力を感じ、気づく】と言う途中の工程が明らかに前後しているその挙動に。
「……こんばんは。見ず知らずのおねーさん。
ご心配をかけたようで申し訳ないです。脳内のお友達とのお話が楽しくってつい口から洩れてたみたいッス。」
近づいて来た女性の問い掛けに対し少年は明らかに警戒している。
黄昏の朱色の中にあって尚仄薄く緑々と輝いて見えるその両眼が女性から視線を外す事は無い。
視界の中央に完全に捉えその一挙手一投足すら決して逃す事は無い、ある意味では熱烈とも言える視線である。
「おねーさんもかなり“変わって”ますよね。変わった香水でも付けてるんッスか?」
ランニングをしていた人間が香水を付けている等普通の人間はまず考えないし普通は付けない。
となれば少年が香水と例えたのは女性から溢れ出ている魔力と見て間違いないだろう。
『……どうやら何か起こってしまったようだな。』
この状況では彼の側に居るそれが呟いた嫌味に答える事も難しい。
突発的に起こり得る物であるとは重々承知していたが、この状況は正に青天の霹靂である。
今となっては後の祭りであるが、この様な結果になるのであれば“彼女”が言っていたように自衛の為の武器でも仕込んで来れば良かった。
「それで、なんかごよーッスか?」
やせ我慢か、若干自棄になったかのように口端を吊り上げる程度の反応だけを見せた。
52
:
比奈 椿/アサシン
◆FaqptSLluw
:2016/08/23(火) 20:57:23 ID:bcAZ9TjM0
>>50
アサシンのクラススキル、気配遮断───これがある故にアサシンは初手においてのみ圧倒的な有利さを誇る。
彼の持つそれのランクはCという決して高くは無いものなれど不意打ちには十分な効果が期待出来た、それ故に初手を回避されたのは痛い。
否、それは断じて否である、何故ならば彼にとっては初手の行動こそが今後のすべての行動の布石に繋がる、正に変幻自在な攻めを展開するサーヴァント、『鎌を投げる』という行動自体が妨害されなかった事は彼の有利に働く。
「正しく悪鬼の雄叫び、人の言葉を忘れたか?」
「その眼で俺の鎌をどこまで見切れるかな?」
鎌を掻い潜り迫り来るバーサーカーの拳を、背後に下がりギリギリで回避する、敏捷の値だけで言えばアサシンは遥かに上を行っている。
ギリギリで回避したのもそれが間に合わなかったからではない、頬に飛び散り付着した黒い粉末にも目もくれず素早い動作でアサシンが屈むと、今の今までアサシンの頭で陰になっていた方向から鎌が飛来してバーサーカーにを狙う。
アサシンは回避された鎌を最小限な動きで、手元で鎖に指を絡ませる程度のごく小さな動作で操作し、二人を大きく回りこむような軌道で鎌を自分の背後から向かわせていた。
(……この臭い…火薬か?)
ここでようやく、バーサーカーの撒き散らした粉末の臭いを嗅ぎ、その正体を考察する。
それが事実であるなら相手の攻撃の破壊力は計り知れない物だと考え、殊更このような接近戦は避けるべきだろう。
「足元ッ!!」
鎌での不意打ちを行いながら、屈んだ片足を伸ばしバーサーカーの脚を同時に狙う、足払いでの転倒を避ければ鎌が、鎌を避ければ脚が払われるという算段だ。
53
:
沙霧文香/ビースト
◆urfQ7AEfjs
:2016/08/23(火) 22:22:23 ID:k401n/oE0
>>45
─────この男はある意味"純粋"と呼べるのだろう。
ただ戦うことしかできない、それしか知らない。このサーヴァントはそういう在り方を生前に示したのだろう。
しかしそれは果たして本人にとっての幸福だったのか。戦に生きるということはそれ以外を捨てるということ、そんな彼は人並みの幸福を、幸せをつかめたのだろうか。
それを知るのは本人のみで他に知る手段はない。いずれ語られるのならば彼はどのような語り部となるのだろうか──────
『ふっ、どうやら貴様は根っからの狂犬のようだ』
『だがそれでいい、貴様のその在り方は私の好みだ。敵が何であっても容赦なく喰い掛かる、あぁ実に良い』
『────貴様は私と同類だ、有り様は違ってもその在り方、それは私と同質のものだ』
誰であろうと関係無い、例えそれが"神"であったとしても喰らい尽くす。
たとえ生き様は違えど誰もを平等に喰らってきたビーストは、確かにアーチャーと同質の存在なのだろう。そういうところから見れば手を組むことを提案したのは正解だったのかもしれない。
「ど、どうです…?」
殺し合いと言っても手を組んではならないというルールは無い。一人でも殺さなくて済む相手が増えるのならばそれに越したことはない。
文香はこの聖杯戦争を勝ち抜く気など全くない、だがサーヴァントとの契約、これを解く勇気も無い。
一度殺されかけてしまったのだ、そんなことをすればきっと今度こそ私はこいつに殺されることになる。それはダメだ、まだ私は死にたくない、こんなところで死ねない。
それはきっと我が儘とも言えるのだろう。だがこちらは命が懸かっているのだ、我が儘くらい言ってもバチは当たらないはず。
『ほう、"誠意"と来たか』
「ど、どうしよう…何すれば良いのかな……」
誠意…そんなものどうやって示せば……
そう悩む文香を見て、ビーストをクスリと笑う。どうやらビーストには何か考えがあるようだ。
暫く悩む文香を眺めて満足したのかビーストは文香へと"答え"を示す。ただその答えが本当に最善で最良なのかは分からないが。
『前に話しただろう?手にある"それ"を使えば誠意としては十分だ』
「あ、なるほど…"令呪"を使えば……」
──────それはあまりにも普通は考えつかないことだろう。
確かに手を組むことができれば聖杯戦争を有利に進めることができる。だがしかしそれ以上に"令呪"というのは聖杯戦争での重要なものだ。
3回きりの絶対命令権、それを今使うというのはあまりにもリスキー過ぎる────そう、普通のサーヴァントを従えるマスターならば。
「そうだね、なら…!」
「令呪を以て命ずる─────えぇと…"今私の目の前に居る人達は決して傷つけないで────!"」
その手に宿る令呪が光を放ち消費される。そして文香が持つ令呪の使用回数は残り2回、これで聖杯戦争では周りに比べて不利になったというわけだ。
だが文香は何も知らされていないがビーストにとってビーストの行動を縛るような令呪は"意味を成さない"のだがそのことを知るのは本人であるビーストのみだ。
「…………うん、死にたくない。私はまだ死ねないの」
「─────でも、誰も殺したくもない。これが綺麗事だということは分かってるけど……」
「それでも、これが私の"本心"だから」
偽ることはしない、偽っても仕方がない。
死にたくないし殺したくもない。聖杯になんて興味はない、でも戦うしかない。なら私は戦ってその綺麗事を実行してみせる。
お母さんとお父さんは私をここまで育ててくれた、きっと両親は私を危険から遠ざけたかったのだ。両親のその願いを叶えることはできなかったけれど、せめてこれくらいは守りたい。でなければ私何も両親に報えない。
「………そういえばあんなところで寝てたけど…もしかして家とか無いの…?」
そう、こんなことになった全てのきっかけ。元はこの少女が何故か水浸しで寝ていてそれを人の良さから助けてしまったことが原因だ。
どうしてそんなことになっていたのかはやはり気になるところ、普通はあんなことをしたりはしない。
首を傾げ、あのときのことを思い出すとそう質問してみるのだった。
54
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/23(火) 22:51:00 ID:jowl7WGA0
>>51
「何だってちょっと怖い言い方だなぁ。私…そんな怖いことしましたか?」
明らかにわかりきっていた。自分から明らかにその場にそぐわない魔力を放っているのにあえてとぼけた答えを出す。
この行動には特に意味はない。
しかしニコニコ笑顔を浮かべながら悍ましい魔力を放っている様はどう考えても異質だ。
しかしどこか少年の行動に違和感を覚えた。
普通の魔術師とは違う反応…あまり魔術に携わっていないのだろうか。という考えがよぎった。
「そりゃあ声かけちゃうよ…私にもこわ〜い脳内のお友達がいるから気持ちはわかるんだけど…わからない人から見ればちょっと心配に見えちゃうから気をつけてね?」
少年の警戒する反応を見て、よしきた!と思い心の中でガッツポーズをする。やはりドス黒い魔力を見て少し違和感を覚えたはずだ。
「あはは…そんなに見られると恥ずかしいなぁ…そんな〜香水なんてつけてませんよ。
でも君が感じているモノは厳密に言うと私のものじゃないんだ。
それは君にもわかるんじゃないかな?」
やはりまじまじと体を見つめられると恥ずかしいものであるなと思いながらも聞きたいことを聞こうと率直に述べてみようと行動に移す。
「すこーしだけ用があってね…じゃあ率直に…あなたは聖杯戦争って知ってますか?」
55
:
アーチャー&ミリヤ
:2016/08/23(火) 23:52:48 ID:IzYCzDoE0
>>53
その意味を知るのは、暫し先の事になるだろうか。
目前のそれが何なのか、理解していなかった以上、その言葉がどういうことなのか、理解していなかった。然し、それが振るう力を見た時、それを理解するだろう。
それは"獣"だった。その象徴に当てはめられた、恐らくその神話に於いて、"獣"という概念の頂点に立つ存在ですらあった。
『俺とお前が――――――同類だと?』
疑問を口は出したが、それ以上を追求する気はなかった独り言にすら近かった。
現状のアーチャーにとっては、それは唯々不可思議な一言であった。だが、それは間違いなく――――――"同様の性質を持った狂犬"だと言っても良いのだろう。
令呪の使用による絶対命令権――――――三画の令呪による三度の奇跡の行使。これはこの聖杯戦争に於いて、当然ながら"要"だ。
戦術における無理を通す場合にしろ。また言う事を聞かないサーヴァントに命令を強制する場合にしろ。それを扱う場面は、慎重に見定めなければならない。
はっきり言って、アーチャーという低級のサーヴァントに対して使うのは余りにも釣り合っていない。そして、だからこそ。
『――――――――――――良いな』
「……うん、いいね」
それはビーストのスキルの性質上、全く意味をなしていない。この場合に限り、令呪の価値というものは全くの零になっている、が。
仮にそれを後に知ったとしても、アーチャーはそれを無為にはしなかっただろう。アーチャーが示したのは、令呪の使用では無い。
"誠意"だ。自分達に対する"誠意"。それが起こす結果は重要ではない。その"心"こそが重要なのであり――――――それ故に。アーチャーの呟きに、ミリヤが小さくそう返した。
『俺はアーチャー。真名を――――――種子島左近太夫久時』
「ミリヤ・"ザカリアス"・コスケンニエミだよ……よろしくね」
突き付けた短筒を、人差し指を軸に回転させる――――――銃口を下にして、陣羽織の内側へとそれを納めた。
そして、その短い一言を納得と承諾の証明とした。"種子島久時"――――――その名を知らずとも、"鉄砲伝来"における"種子島家"の存在は知っているだろうか。
それがその、提示された『令呪の使用』という者に対する返礼だった……知名度が低い故に真名を悟られにくい。そのメリットを、手離す事によって。
ミリヤに関しては、アーチャーの後を追ったばかりであったが……突き付けていた刃を手離して、そう言った。
「家……?」
実はいうと、ミリヤには確りと拠点が与えられていた……正確には、拠点を得られるだけの資金は与えられていた。とは言ってもただのホテルではあったのだが。
然し少なくとも聖杯戦争中は何とかできる程度の物は"用意されるはずだった"。
根本の原因はこの未熟なマスターにあった。ホテル、しかも日本のそれになど泊まったことなど無いそれは、泊まるべきホテルと滞在日数を"間違えていた"。
超高額なホテルに、一週間ほど泊まる程度の契約となっていた。勿論、予算は総てそれに注ぎこんだものだから、持っている日本円は残り数千円程度。
フィンランドからの送金は依頼済みだが、届くまではしばらく時間がかかる……つまりは。
「今は無い……かな」
腕を組み、俯くアーチャーがあきれ顔で頭を左右に振っていた。当の本人は、何でもないかのように彼女へとそう言った。
56
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/24(水) 02:07:38 ID:UnsCIJRQ0
>>54
『飛成。お前が視ている魔力は竜のそれだ。』
少年の耳へと会話に割り込む一言が囁かれる。それは紛れもなく彼のパートナーの物である。
彼の眼には何か強大な力が揺蕩う事こそ解れど、それを理解しうる知識が彼には無く。
「竜の魔力……?」
聞き慣れぬ単語に、目の前に居る女性への返答を他所にそちらへと意識が向かい、思わず尋ねる様に声に出して繰り返してしまう。
竜と言うとあのドラゴンの事か。
帯の如く伸びる鱗を纏った巨躯に四肢を持ち、空を飛び火を吐く最強の幻想種と評されるあのドラゴンであろうか。
『それも大層邪(よこしま)な物だ。君が分からなくても無理はない。』
だが彼が従える(?)英霊はそれが何であるかを語り得るだけの知識があった。
それが人の身から溢れる事は決してない事を彼女は知って居たのである。
彼女の今尚語り継がれる武勇による物か、それとも彼女が持つ聖剣の加護よるものか。
『話をするにも、まずは姿を現して貰う必要がありそうだ。』
飛成が何か動く前に彼のサーヴァントがまずアクションを起こした。
先程会話に割り込んできた時と同じように、彼と女性との間に霊体であったその身を現世へと実体として降臨させたのである。
黄昏にあって尚、赫々たる金色の御髪を結い上げ
夕焼けの赤に容易く染まる白雲の如き無垢なる純白と、その中に在りながらも決して染まる事の無い蒼穹の青の二面を携えた外套でその左腕を覆い
その瞳は広大にして清麗な湖を思わせる深い深い青を持つ、麗人か貴人かと見まごう男装の“女”騎士であった
実体となった彼女のクラスが何であるかを尋ねる必要はない。何故ならば佩剣していたからだ。
それも左右の腰にそれぞれ一本ずつ、即ち二振りの剣を携えた双剣の騎士だったのである。
剣を用いるだけではそのクラスを特定する事は難しいが、二振りもの剣を用い、それを見える形で佩剣しているのであれば疑う余地も無いだろう。
“セイバー”
最優のサーヴァント。
女が尋ねた「聖杯戦争について知って居るか」と言う問いに図らずも答える結果となった。
だが同時にこれ以上の会話を続けたいのであればセイバーの一言を受け入れる必要があるのは間違いないだろう
57
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/24(水) 02:49:04 ID:jowl7WGA0
>>56
「あら…もうバレちゃった?あなたのサーヴァント凄いのね!」
少年の呟く竜の魔力という言葉に反応し思わず賞賛の声を上げる。
一瞬でバレてしまった…まあそれはしょうがない。相手方のサーヴァントは聡明であるのだろう。
「うわぁ…凄い綺麗!貴女が…彼のサーヴァント?
見たところ…セイバーかな?」
眉目秀麗な少年のサーヴァントに思わず声を上げる。その姿は美しく同時に神秘的であり騎士であろう格好はその容姿にとても似合っている。
「出て来い!だってさ。貴方も出てきたら?」
『ふん…言われなくてもそうする。二度聞きは好みではない。』
そう気怠げに言い放つと彼女の従えるサーヴァントが少年とそのサーヴァントの前に現れた。
褐色の肌で肩まで伸びる黒曜石のような色の手入れされた髪を持つ。しかしどこかその姿は人間離れしておりその皮膚は鱗で覆われていた。
皮膚は鱗で覆われているがかなりの美男子全てを吸い込むような漆黒の瞳を持つ。
外装は何千年も前の王族といった格好で古びた様子である。しかし肩のあたりが不自然に尖っている。
『全く…初めて出会うのがこう最優のサーヴァントになるとは予想もしていなかったなぁ…全くやり合うにも骨が折れる。』
『クラスは予想もせんだろうから言っておこう。モンスターだ。この我を形容するのがこのクラスしかなかった訳だ。全く有り様を変えられ人でもなくなったとは…現代の人間はまあ我のことを嫌っているのだな。』
人ではない龍人のサーヴァントはそう語る。まあ彼自身このような姿になるとは思いも寄らなかったし
規格外のクラスに当てはめられることも予想していなかった。
『おおっとこちらばかり話してすまないな…貴殿も言いたいことがあるであろう美しき騎士よ。』
フェアなことを望む彼はセイバーに事を述べる順番を譲る。
58
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/24(水) 07:31:18 ID:UnsCIJRQ0
>>57
「モンスター?サーヴァントはセイバー・アーチャー・ランサー・ライダー・キャスター・バーサーカー・アサシンの7クラスじゃないのか?」
自らを“化物”と称したサーヴァント――――皮膚ではなく鱗で体表が覆われたその姿は正しく化物であり。
その鱗と言えば魚のそれや蛇のそれとはまた異なる、一枚一枚が持つ甲羅の様な独特な凹凸は生活の為に進化した物とは明らかに違っていた。
そう、言うならば戦闘用と言うべきか。
先程の情報も合わせれば恐らく“竜鱗”と称するべき物なのだろう。
彼の知識内に収めるならば目の前のサーヴァントはバーサーカーに相当するだろう。
『なるほど、“エクストラクラス”か。』
尤もマスターとは異なりサーヴァントの方は基本となる7クラスとは異なるクラスの存在を理解しているようだった。
「エクストラ……特別なクラス……。」
『その通り。察しは良いな。』
この様子から見ても、セイバーのマスターである少年は聖杯戦争について基本的な概要のみしか知らないのだろう。
だがサーヴァントが言った通りに察しは良い。
言葉の綴りと意味から特別なクラス、即ち基本クラスとは根本から異なるクラスであると説明されるまでも無く理解は及んだらしい。
「それで【モンスター】のクラスは何が出来るんだ?」
少年は己のサーヴァントへと問いかける。知らぬのであれば、該当しうる知識が無いのであれば次にこの質問が出てくるのも当然であろう。
『流石に分からない。エクストラクラスのクラススキルなんて幾ら私でも知る良しも無い。』
しかし当然と言うべきか。
同じサーヴァントとは言えエクストラクラスの持ちうるクラス特性・スキル等尋ねられた彼女も知って居るはずがない。
バーサーカーに近しい性質であろうとは考えられる故、精神汚染もしくは精神異常のスキルは保有している可能性は高いだろうと考える。
だが他に思い当たる節は無く、しいてあると言えばまず間違いなく“竜の因子”を持って居ると言う事のみ。
然し、このたった一つの情報こそがセイバーからしてみればそれだけで自らが有利であると確信しうる情報であった。
『言いたい事が無い訳ではないが、私の口から語る事は無い。
仮に私の一言がマスターの意志に揺らぎを与えてしまっては、それは騎士の主従に反する。』
許可なくして語る口は持たない、公平さを求めた“化物”に対し“騎士”は忠義を貫いた。
対し、ある意味では丸投げにされてしまった彼女の主人はと言えば、突発的なこの状況に対しそこまで頭も回る筈も無く。
「突然話しかけてきて、なんの用ですか?」
幼稚で、根本的な、然しある意味では的を得た事しか尋ねる事が出来なかった。
59
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/24(水) 12:52:47 ID:jowl7WGA0
>>58
「ええ…そうなの。私も初めて聞いたときはおったまげたんだよね〜」
『我自身でもビックリだ。まあ該当するようなクラスは少なかったからしょうがないものではあるが…
現界して初めて姿を見たときは驚いたものだ。
力自体もどうなってるかわからぬものでな。』
クラス:モンスター。それはこれまでの聖杯戦争には該当する訳でもなく非常に特異な例だろう。ゆえにどのサーヴァントもそして彼自身も力に対してわからないことだらけだ。
『何ができるか我自身もわからぬものでなぁ…全く困ったものだ。まあ1つ言えることは生前と違っているということだな心も体も何もかもがだ。
我をどう捉えるか…その全てが混じり合ってこの姿になったとみている』
何もかもが異なった此度の現界。しかしそれはとても胸の高ぶることだった。二度目の生を謳歌するにはちょうどいい。生まれ変わった新しい自分を体験できる。生前は退屈が過ぎた。しかしまあ今回は楽しめそうだ。
『そうか…ならばしょうがないな。騎士というものが存在しない時代から来たものであるが故…主の主義を理解出来ずにいたようだすまないな』
「用事っていうのはまぁ…あれなの。モンスターさんなんか戦いたくてウズウズしてるらしいの。もしあなた達が先に襲いかかってくるようだったら彼殺しにかかるつもりだったらしいけど…そうじゃなかったからとりあえず…」
『手合わせ願おうか。この身で戦うのは初めてなのだ…どういう戦い方をすればいいのかまあ全く分からないわけだ。そこで主に相手をしてもらいたい。
まあ殺し合いとは言わぬちょっとした小手調だ。』
『主も初めて戦うエクストラクラスのサーヴァントがどういうものが掴めると思う。悪い話ではないと思うが?』
ニヤリと笑い提案をしてみる。
60
:
エイヴィンド/バーサーカー
◆uHIlZU.osM
:2016/08/25(木) 00:42:47 ID:Csh1OD6w0
>>52
バーサーカーの強襲に対し、アサシンは一歩引く事でそれを回避する。……この場合、彼の"回避"という判断は正しかった。
何故なら。─────バーサーカーの拳は空を掠め、完全に体重を乗せた一撃は、そのまま地へと激突する。
瞬間。拳が地に着くと同時に、アサシンの眼の前にて、破裂するような燐光が瞬時に閃き、大気の裂ける轟音が轟いた。
地面を抉るその正体は、正しく"爆発"であり───このサーヴァントは"火薬を操る"という点を発見するのに、そう時間は要しまい。
だが、その急襲は避けられるに止まった。
瞬間にバーサーカーの視界に飛び込んできたのは───的確に足を狙う、アサシンの脚の動きである。
当然としてそれを回避しようと、右側面へ飛び退こうと姿勢を上げた。その瞬間────
バーサーカーの瞳には、眼前よりいつの間にか迫る"鎌"が映っていた。
『!』
地面を注視していたのと、鎖鎌という武器の性質。そして相手がいかなる使い手かという事を知らなかった故に、気付かなかったのだ。
出来る限り身体を捻り回避を試みようとも、もう遅い。その刃は彼のあばら肉を裂き、黒スーツから紅き鮮血を覗かせた。
『HolloooOAAAAA!!!!』
その痛みと怒りに人ならざる雄叫びを上げつつ、バーサーカーは傷を負いつつも、辛うじてアサシンの側面へと飛び込む。
左腕は万全に動かせなくとも、右腕は右足は左足は未だ、存分に動く。故にこそ彼は、殺す為に力を使い続ける。────その身が、たとえ滅ぼうとも。
バーサーカーとして召喚されるというのは────すなわち、そういう事なのだから。
『Ooooooarrrghhhhhhh!!!!!』
声ならぬ聲と共に、バーサーカーは火薬を纏わせた爆発の右拳を放つ。
続いてリーチの長い右脚からの回し蹴り、さらに後退されようとも対応できるよう、踏み込んでの飛び込み蹴りを放つだろう。
何れの攻撃も爆薬を纏い、また怒りからかその量は多くなりつつある。
ただし攻撃のスピードはやはり高速でもなく、また特殊な技量があるわけでもない。
確かに一撃は痛い。だがこれを全ていなすのは、場数を踏んだ"エキスパート"であればたやすい事だろう。
しかしアサシンは気付くだろうか。こうしている間にも辺り一帯には、彼の攻撃に合わせて"爆薬"が撒かれている事に。
あの攻撃は、本能に従ってただ殴る蹴るの行動をしていると見せかけるかのような、ある種の計画性を持っているという事に。
それが狂化を受けてなお、意図した物かは不明である。……だがこの場には確かに、ただの殴り合いを超えた、高度な駆け引きが存在しているという事は感じ取れるだろうか。
それはバーサーカーがたとえ人の意思を、言葉を失おうとも────単なる狂った獣とは一概に言い切れぬ事を、暗示するようでもある物であった。
61
:
比奈 椿/アサシン
◆FaqptSLluw
:2016/08/25(木) 22:07:00 ID:D6HruP0U0
>>60
飛び散る土塊、爆ぜる音、それらが目の前で起きた時、単なる膂力によっての物ではないと判断するのにそう時間はいらなかった。
鼓膜を劈くような音がして耳が遠くなる、一瞬の強い瞬きは爆発の炎による物、それが拳の爆発によって引き起こされ、回避した筈のアサシンの感覚器を一時的に麻痺させる。
アサシンはしかし戸惑う様子を見せず、鎌をすぐに手元に引き寄せるとバーサーカーの反撃に備える体制を取った。
当然ながら、あのような爆発をまともに受ければ立ってはいられまい、アサシンの耐久は低いと言うほどでもないが、流石にあれを耐え切る事は不可能、運良く生きていても戦闘を続ける事は出来ないだろう。
それどころか逃げる事すら出来なくなる可能性がある、そうなってしまえば詰みだ、後はあの爆発で粉微塵になる他に未来は無い。
「くっ…!」
右拳を躱す、軽々と回避したようでかなりギリギリだ、立ち上がりながらの回避行動は体制を崩す。
続く回し蹴りを背後に飛びスレスレで回避、少し遅れていれば、僅かにでも擦ればその瞬間に爆発していた。
だが───更に続け様に放たれた踏み込みがアサシンを追い、捕らえた。
爆発、アサシンを覆う炎と煙の中でバーサーカーに見えるのは人一人が吹き飛び地面を転がる姿だろう。
収まっていく硝煙、地面に仰向けに転がっているアサシンは、どうやらこの一撃でダウンした訳ではなさそうだ。
「……まだ…まだだ……!」
煙が上がる元、爆発をまともに受けたのは、アサシン自身の体ではなく、両腕に厚く巻き付けた鎖。
咄嗟に防御体制を取って蹴りを受け止めたアサシンは、その衝撃に吹き飛ばされはしたものの、ダメージをかなり軽減する事が出来た。
とはいえ、バーサーカーの強力な一撃をこんな防御で防ぎ切る事は出来ない、体への、特に両腕へのダメージはかなり大きい。
「まだ負けぬぞ……この程度、あの男の一撃に比べれば…!」
それでも立ち上がり、鎖鎌を構えたアサシンは、バーサーカーの出方を見るようにその場で鎖を回す。
ダメージはあったが距離を離せたのは此方に有利だ、下手に隙を晒さず相手の動きに対応する行動をすれば、此方が優位である筈。
62
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/26(金) 10:51:09 ID:UnsCIJRQ0
>>59
『決闘を申し込むと言う事ですか。
前言を撤回するようですが……決闘を受けぬは騎士の恥。その申し出、受けましょう。』
真正面から叩きつけられた挑戦状が騎士の琴線に触れたか。
先の様子とは異なりマスターの承認を受ける前にほぼ独断に近い形でサーヴァントである彼女が了承する。
「ちょ…!!」
『但し!』
当然少年が黙っているはずも無い。
「先ほど語った騎士の矜持とは何なのか。」そう思わせる様なサーヴァントの勝手な行動に口を挟もうと一歩踏み出した少年の声を遮る様に彼女は声を荒げた。
そしてセイバーの言葉はこう続く。
『打ち合いは一合のみ、互いに一撃を打ち合う……それでも良ければ。』
受ける代わりに提示した条件は非常にシンプルな物だった。
一撃を放ち合う、一見すると宝具の真名を解放した一撃であればただ正面から戦うよりも容易く決着を付けられる可能性もある。
然し態々この様な内容にしてきたと言う事はそれを想定していない筈も無い。
何せ相手の戦闘力は互いに未知数、仮に真名を解放して倒しきれなければ相手に一方的に情報を与える事になってしまう。
聖杯戦争に於いて相手のサーヴァントの情報は極めて貴重な情報であり、それ一つで他の陣営と共闘する事も不可能ではない。
起こり得る結果を想定すれば想定する程、この場で決着を付ける事は極めて難しい条件である。
成るほど確かにモンスターの注文である『殺し合いとは言わぬ小手調べ』には丁度良い。
互いに条件が適応されるのであれば手に入る情報量はイーブン、後の事を熟考する必要も後腐れもなく互いのサーヴァントの力量を拝見できる。
だがそれ以上の思惑が、彼女には、セイバーにはあった。
『トビナリ、しっかりと見ておくと良い。サーヴァント同士の戦い……【聖杯戦争】と言う物を。』
聖杯戦争に対し疎い己のマスターに対し、自らが置かれている状況とは如何なる物か。
――― 現実を突きつける為に。
―――――― 聖杯戦争に対する認識の甘さをを正す為に。
それは彼女自らがこの戦争の勝利に必要なプロセスであると感じたから、それとも騎士としての主に対する献身であるのか。
恐らく彼女の口からその真意が語られることは無いであろう。
そして少年が如何に考えようとも答えを導き出す事は不可能であろう。
「……分かった。」
だからこそ少年はただ短く、己のパートナーの言葉を信じ、心を信じ、力を信じた。
『……どうだ、モンスター。この条件を受けるか?』
63
:
沙霧文香/ビースト
◆urfQ7AEfjs
:2016/08/26(金) 22:01:47 ID:k401n/oE0
>>55
神代の獣、神をも喰らいし神話の怪物。
その正体を知ることとなれば、それはつまり"一つの神話"に、"最高神"に終わりを告げたそのものを理解するということだ。
通常であればこのような"反英霊"が召喚されることはない。このビーストの存在こそが此度の聖杯戦争が通常のものでは無いということを証明付けているのだがそれをビーストが教えることはない。それを知ることになるのだとしたらそれはきっと自分の力で解き明かす時だろう。
『いずれ分かることだ、そう"いずれ"な』
ビーストも同様にそれ以上はなにも口にしなかった。
確かに二人は狂犬だろう。その違いがあるとすれば"人の心"が分かるかどうか。
元々人でないのならそんなものは分かるはずがないのだから。
「種子島……え…!?た、確かその…サーヴァントの名前って……」
『みなまで言うな、つまりは"そういうこと"だ』
『種子島左近太夫々時─────いや、この場ではアーチャーと呼んだ方がいいだろう』
『そちらがそれを明かすのならば我らも明かすのが筋というもの───────が、私は真名は明かさぬ』
「……まだ私にも真名を明かしてない、なら今ここで明かしてもいいんじゃ?」
『なに、こちらは令呪を使ったのだ。それに主人よ、勘違いをしているぞ』
『これは協定とは言っても一時限りのもの。お互い"敵同士"になることに変わりはない』
『忘れるな、主人は一度"殺された"のだぞ?』
「それ、は……」
そうだ。あのとき彼らには文香を殺すことが出来た。そんな相手にそこまで尽くす必要など普通は無い。
確かにそれは正しいことで何も間違えていない、この聖杯戦争で令呪を使い更に真名まで告げるなどそんな馬鹿な話は無い。
それは文香にも理解は出来ていた、ただ納得は出来ていない。だがここは素直に引き下がるしか方法はなく、渋々文香は自分の名前だけを告げることにした。
「えっと…私は沙霧文香、うんミリヤちゃん、よろしくね」
『で、私はサーヴァントだ』
『クラスは───────"ビースト"』
それはどのクラスにも属さない、つまりは"エクストラクラス"であった。それをさも当然のようにビーストは口にした、まるでそれが当たり前かのように。
実際、このサーヴァントに"ビースト"というクラスはあまりにも当てはまっているのだから。
「……それなら私の家に泊まる?前まではお母さんとお父さんと暮らしてたから部屋の空きはあるよ」
ミリヤの返答を聞き文香はそんな提案をする。手を組んだのだからこれくらいは許されても良いだろう。
だがミリヤやアーチャー自身がどう思っているのかは分からない。いずれは敵同士になるのだから遠慮して受け入れないかもしれない。だがまぁそのときはそのとき、無理に強制する必要も無いだろう。
64
:
モンスター
◆CZECmLez0I
:2016/08/26(金) 22:18:08 ID:jowl7WGA0
>>62
『よし来た…!』
「やったじゃない!モンスター!」
真っ向からの挑戦状。素直に騎士は受け取ってくれたようだ。これでやっと己の力が図れる。
『但し?』
『そうか…一撃か。それも良い、喜んで受けよう。』
一撃…そうは言ってもどのような一撃を繰り出そうか。宝具の真名解放…それは絶対にないだろう。彼の宝具は周りを滅ぼす。そうやすやすと使えるものではない。ならばスキルを完全に解放した攻撃になるのだろうか。何れにしても殺しはしない範疇での全力を繰り出す心算でいる。
さてあと気になるのは相手の力量だ。どれほどの力を有しどれほどの宝具を持っているのか…果たしてどんな固有スキルを持っているのか…一撃でそう全てがわかるわけではないが一撃を見てみて真名が少しでもわかる確率があるかもしれない。
『おいマスター。少し離れていてはどうだ?死んでも責任はとらんぞ?』
「嘘!そんな本気で撃ち合うの?周りのことだけは考えてね?ね?」
この撃ち合いにおいてこのマスターも聖杯戦争ということの大きさをことさら認識させられるだろう。
『その条件喜んで受けよう。セイバーよ準備は良いか?』
モンスターはまるで子供のように喜んだ顔をしながらセイバーに言うだろう。
65
:
アーチャー&ミリヤ
:2016/08/26(金) 23:16:01 ID:IzYCzDoE0
>>63
『承諾しよう。其方は令呪を使い、此方は真名を明かす。天秤はそれで釣り合う筈だ』
『我等は味方に非ず。何れそっ首を毟らんと殺し合う身に在り。過度の共有は不要』
自身のサーヴァントが真名を明かさ名に事に納得していない……そんな風に見えた彼女に対して、アーチャーは助け舟を出すわけではないが、そう言った。
天秤は釣り合って然るべし。ただ利害関係だけで手を組みだけの相手に対して、それ以上の物は必要ない……それに。
『そう、そして、何れ"分かる事"だ』
勝ち残ったならば、ここにいる者達は必ず相対する事になる。
その時に、その名は必然的に分かる筈だ。そしてその時、同時に絶望する事になるだろう。一つの神話体系の、一つの終焉の名を。
そしてその時、種子島久時は、血を沸かせ、肉を躍らせるだろう。絶望の唯中を駆け抜ける――――――たった一人の"退き口"、"捨てがまり"。
「……いいの……!?」
「あ……でも……アーチャー……?」
声を張り上げた筈なのに、なぜか小さいという器用な声の出し方であったが。兎も角、彼女のその提案にミリヤは肯定の反応を見せた。
無理はない。寒さには強い北欧の人間とはいえ、屋根のない中過ごすのは余りにも辛い。その上今は腕に怪我まで追っている……身を落ち着ける場所が必要だ。
アーチャーはこれに関しては酷く否定的だった。曲がりなりにも敵の陣地の唯中で過ごす事の危険性、語らずともそれは分かるだろう。
だが、療養が必要なのも事実だった。元々特殊な体質をしている上に、魔術回路への過剰な負荷、体力の大幅な使用、そして大きな怪我。
これが"無痛"でなかったらとっくに死んでいたとしても不思議ではない。自身の回復もしなければならない……それ故に。向けられた視線に対して、小さく頷いた。
「……やったやった……! Ei kesta(ありがとー)……!!!」
その無言の了承を受けると、ミリヤは彼女への感謝の感情を、身体で表した。先の機械的な殺害の為の物とは違う、両腕で彼女の事を抱き締めてそう喜んだ。
表情は確かに嬉しそうに見えて、確かにミリヤはその通りに"喜んでいた"。"喜んでいたが、然し"――――――その両の瞳に光が灯る事は、依然としてなかった。
そして、その腕には確かに"穴が空いている"。それだというのに、ミリヤはそういうそぶりを一切見せることは無かった。
「これからよろしくね、フミカぁ……!」
取り繕っても、取り繕っても、必ずどこかで露呈する。ミリヤ・コスケンニエミは、やはり何処までも、嘘をつくのが"下手"だった。
『ビースト、か。そうか。七騎の英霊は、確かに召喚されていたな、主君?』
「……? うん、そうだと思うけど……」
『……ふん、そうか』
ビースト。エクストラクラスのサーヴァント……基本の七つに該当しない、例外。
聖杯戦争に於いて、エクストラクラスが存在するのは珍しくない……だが、それは"七騎の内に納まっているなら"の話だ。
七騎の英霊が存在しているというのに、エクストラクラスのサーヴァントが存在する――――――ミリヤは、そのことに疑問を持つ事はしなかったが。
アーチャーは、確かにそれを喉元にひっかけて。
66
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/27(土) 00:21:27 ID:UnsCIJRQ0
>>64
『提案を受けてくれた事、感謝する。』
セイバーは流れる様な仕草で己の左半身を半歩前に踏み込むと、そのまま右の腰に佩刀した剣へと手を掛けて制止する。
―――― 剣士、騎士、戦士。
争いの場に身を置く者であればその力量を推し量るに足る要素は一挙手一投足に存在する。
それは技の冴えであるとか、足や体の運びの洗練であるとか、戦況を見る慧眼であるとか。
その一つに構えも存在する。
偏に構えと言っても技術を学ぶ上で幾多も繰り返され洗練されて行く物から、死地に於ける実践にて的確に征する為に昇華された物の二種類が在ろう。
それぞれに優劣を付けるのは非常に難しいが、確実に言える事が在るとすれば、そのどちらもが十分すぎる程に担い手の技量を表してくれる。
彼女のこの構え、右の剣を引き抜かんとする形だ。
だが左の剣を引き抜かずに左半身を前に出しては右手でその剣を握る事も難しい、この語りではただ不利な要素しかない様に感じられる。
しかしその立ち姿を見ればその様な感想は一切湧いて来ない筈だ。
何せ剣に掛けられた手も、そして肝心の剣でさえも、正面に立つモンスターからでは一切視認する事が出来ないのだから。
セイバーの左肩に止められた白の外套が前面に出され、彼女の半身を覆い隠して居るのだ。
剣が横を向いて居るのか。
それとも縦を向いて居るのか。
実は右の剣ではなく左の剣を逆手で握って居るのではないか。
一見して邪道。しかし決闘に於いては王道。
形骸的な訓練や指導ではこの様な構えを教わる筈も無く、実戦に於ける一騎打ちを以ってしてのみ得られるであろう技術。
更にこの構えからでも決して打ち負けぬ初速を持つと言う力量をも予感させる。
『―――― 来い!』
セイバー、最優のサーヴァント。そのクラスを考えれば彼女の剣は間違いなく宝具。
得物は考慮する余地も無く伝承に記され伝説で謳われる超一級品。
それでも尚、踏み込めるか否か。
――――― 騎士と化物
果たして、どちらが先に動くのか ―――――――――――――――
67
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/27(土) 01:02:49 ID:jowl7WGA0
>>66
『なに…こちらこそ感謝が尽きん。』
『まあ貴様には悪いとは思っているが…生憎我…いやもうそんな堅苦しい言い方などやめるか。俺は得物がないものでな…貴様の想定しているモノとは違う一撃になることを覚悟していただきたい。』
モンスターは笑う。相手は相当の手練れ。見ればわかる。彼は戦士ではないが戦士をよく見てきた。己に挑む戦士に…
その経験からこの者の強さが理解できた。
『得物が視認出来んな…これでは避けようがないものをまあ良い近づく気はさらさら無いのでな。』
そう言うとモンスターはセイバーから距離をとる。
もちろん肉弾戦では勝ち目がない。いくら竜の鱗を持とうが手練れの剣士にとっては的にしか過ぎない。彼女の一撃に応えるために彼も至上の一撃を浴びせようと適切な位置につく。
『さあ相棒よ。久しき闘いの時だ…その姿を現せ。
…無辜の怪物。』
そう言うとモンスターの方から黒く太い二頭の蛇が姿を表す。ただの蛇とは思えない尋常では無い魔力。宝具にも引けを取らないその魔力は彼の真の姿に近づける。
『一撃…先に俺が撃たせてもらおう!…高速神言。』
そう言うと彼は誰もが聞いたことの無い言葉を高速で詠唱する。肩にいる蛇に魔力が集中する。その魔力は片方は膨大な熱量。もう片方は紫のドロドロとした固体へと変貌していく。蛇を螺旋階段のように絡ませ彼の胴体の目の前に持ってくるとその魔力の塊は合わさりその照準はセイバーに向けられる。
その塊をレーザーのように高速に
発射する。繰り出される魔力のレーザーは3つ…1つは赤く1つは紫もう1つは混合した黒のような色。色を見ればわかるかもしれないが毒と炎のレーザーだ。
相当な手練れの戦士であるセイバーにとっては避けることも可能なはずだ。
68
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/27(土) 02:58:41 ID:UnsCIJRQ0
>>67
「蛇ッ……!?」
少年は思わず声を荒げる。ただ蛇を使役するだけならば驚く事は無い。
しかし肉体を突き破り蛇が現れるとなれば話は別だ。それは普通の人間には、魔術師には出来る芸当ではない。
吸血鬼であるとか、霊体であるとか、そう言った完全な“化物”で無ければまず不可能な業だ。
「……じゃ、ない!」
だがその感想も更なる驚愕によって上書きされた。
一見して蛇のように見えたそれが行おうとして居る事は蛇が出来る芸当ではない。
仮にその開口から他を破壊する程の圧倒的な力を打ち出す事が出来るのであれば、それは最早“力を持った蛇”の範疇を超えている。
それは正に“蛇竜”と称するに相応しい存在では無いか。
放たれた三色の光束は大気を震わせ、夜風を薙ぎ払い、視界を焼く様な電光の如き。
「セイ ―――――!!」
小手調べや手加減とは言っていたが当たれば唯で済む訳が無い。
迫る蛇竜の一撃が差し向けられた先に立つ己のパートナーの名を叫ぼうとしたその刹那。
少年が視たのは彼女の眼前にて弾け拡がる三色の輝きであった。
――――― その光景は先程の邪悪な力が嘘の様で。
まるで線香花火か。流星雨の様に広がって。彼女の周囲に落ちて消えた ―――――
セイバーが己が右から引き抜いた旋る様な一振りが蛇竜の光熱を薙ぎ払ったのだ。
確かに高い対魔力を持ち、また宝具足る剣を持つセイバーであれば魔術を打ち払う事は可能であろう。
だがそれを竜の一撃に対しても、竜の魔力に対しても行えるのであろうか。
恐らくその真相を誰よりも素早く察知し、そして直感したのは少年ではなく。
竜の因子を持ち、彼のセイバーと対面しているモンスター自身だろう。
―――― 彼女が振り抜いたその剣は。
ほこさき しのぎ
―――― 白銀の鋒に金色の鎬を持ち。
あお
―――― 鍔に拵える蒼で切られた装飾は剣に与えられる最高の名誉。
名剣では無い。宝剣でも無い。
―――― それは数多在る剣に於いて最上の一振り。
“ 聖剣 ”
湖の如く揺らめく輝きに幾多の騎士が憧憬を持っただろうか。
高らかなる煌きを幾多の英傑が求めたで在ろうか。
その剣の瞬きに幾多の戦士が散り夢か露の如く消えて行った。
その剣は伝説の象徴たる竜をも降し、最強の聖剣を振るう騎士の王すら打ち取った。
嗚呼。一目見ただけでその名が脳裏に浮かび上がる。
彼女が。セイバーが振るうその“貴はか”こそ。
見紛う事無き “ 湖の聖剣 ” である。
『―――――――!』
剣に見とれる暇も無く、振り抜いたその勢いのままに騎士はその身を転身させる。
流れる刃は水面の如く情景を映し取り、彼女が踏み込むその一歩は宛ら疾風の如し。
聖剣を抜き放ってからは見違えるほどに疾い。
真にセイバーの剣が“湖の聖剣”であるとするならば、竜を撃ち滅ぼした伝説を持って相違無い。
どれだけ強大で在れ。最強の幻想種で在れ。“竜殺し”から逃れる術は存在しない。
『ハアアァァァァ――――――――――!!!』
偶然にもアスファルトに触れた聖剣の切先が火花を上げて戦場を駆けた蒼き華を彩った。
『騎士』は対面する『化物』へと迫り、薙ぎ払われたその一撃は――――――――
その眼前を霞め取る様に、空間を、大気を、互いの間合いだけを切り裂いて。
赤色が舞う事も無く。誰もその刃に触れる事は無く。それだけで虚空へ消えた。
69
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/27(土) 03:50:26 ID:jowl7WGA0
>>68
『クッハッハッハ!想像以上だ!その聖剣!素晴らしい!最高だ!』
おおよそ何千年ぶりに身震いする。驚愕のその聖剣。剣というその概念に置いて至上の一振り。数多の魔を滅ぼし数多の人を斬ったその聖剣は持ち手の清さも相まってより一層美しく見える。これほど美しい聖剣を見たことがなかった彼は心の底から嬉しかった。
『この程度の一撃防いで当然ということか…これが龍殺しの聖剣…初めて見るな。』
己の出した光線を弾き霧散させさらに己に近づき今まさに己の振るわれようとしている。しかし彼もその聖剣の輝きに目を離せずにいた。避けることなど考えずその聖剣を見つめていた。
流れるような動き素疾く卓越した技術と身体能力から織りなされる技にも見惚れていた。
『見事なり!セイバー!その素晴らしき剣技、美しい身のこなし、そして何より煌びやかに光る聖剣…どれを取っても最高だ!感謝…その一言に尽きる。
今まで見た中で最高の剣士だ。』
『これほどの剣技を見せてもらえたのだ。俺もそれ相応の礼をせねばならぬな…真名でも教えようか…』
「す…すごい!これがセイバー!最優のサーヴァント!はぁ〜憧れる!って貴方!真名は隠すんじゃなかったの!」
『いやはやこれほどの絶技を見せられたのだ…真名程度は述べねばならぬだろう。』
「う〜…まぁ貴方がそう言うならしょうがないけど…」
この上なく嬉しい表情を見せ素直に拍手を送るモンスター一行。まあこの主従はなかなかに仲が良いのだろう。タイミングも何もかもが一緒だ。
少しの口論はあるが気にしなくていいだろう。
『良し!セイバーよ…俺の真名を貴様…いや君に教えてもいいだろうか?』
『それとも他の謝礼が欲しいのか?ならばそれにしようとは思うが…』
おそらくセイバーにとってはこの上無い情報を得られるチャンス…活かすかどうかはセイバーに委ねられた。
70
:
沙霧文香/ビースト
◆urfQ7AEfjs
:2016/08/27(土) 21:16:12 ID:k401n/oE0
>>65
これで双方が納得いく結果となった。
ビースト陣営は令呪の消費、アーチャー陣営は真名の開示。それは協定を組むのには十分と言っていいほどの交換条件であり、これならば蟠りなくこれから行動することができるだろう。
それはこの協定が必要なくなったときにも有効なはずで、しかしそのことに対して文香は目を背けていた。
文香は今も逃避している。この聖杯戦争という殺し合いから、誰かを殺さなければならないかもしれないという事実から──────
『まったく、我が主人はお人好しだな』
「協力することになったんだからこれくらいは別にいいと思って」
「それにこの方が情報の交換とかはやりやすいでしょう?」
『まぁ私は主人に従おう、たとえそれがどんなことであっても"今のところ"はな』
先ほど殺されかけた相手だ、それと一つ屋根の下というものは協定を組んだとしても危険には変わりない。
しかしそれは相手も同じことだ。本来は敵同士、お互いにそれは変わらないからこそ逆にその場での殺し合いには発展しないだろう。
それを思えば案外これは理想的なことなのかもしれない。
「う、うん。私からも、これからよろしくねミリヤちゃん」
「でもまずはその腕を治療しなくちゃ……ね?包帯が確かあったはずだから」
アーチャーのマスター、ミリヤの腕には確かに銃で射抜かれたような穴が空いている。
だというのにここまで痛みを隠せるものなのか。ここまでの怪我をしたことがない文香にはそれは分からずとりあえずはこのことに関しては保留しておくことにした。
──────ただ、一瞬ミリヤの瞳の奥底に真っ暗な"闇"が見えたような気がした。
とても、とても深い深淵。まるでどこまでも続く穴を見ているかのような"闇"だった。しかしそれも一瞬で文香にはそれがどのようなものなのか知る由も無かった。
こうして奇妙な共同生活が始まった、その先にあるのは希望か絶望か。誰もが救われる物語、そんなものは存在しない。
物語には悪役が必要であり、その悪役までもを救おうなどとはただの綺麗事だ。それはこの聖杯戦争でも同じである。
誰もが誰かにとっての悪役であり、きっと誰も救われない。この聖杯戦争はきっと誰も救えず救われない。それを覆すことができるのだとしたら、それは───────
71
:
エイヴィンド/バーサーカー
◆uHIlZU.osM
:2016/08/28(日) 06:17:19 ID:wMyYTv8o0
>>61
最後に放った、リーチを伸ばした跳び蹴り。その脚に確かな手応えを感じると共に、バーサーカーは地面に着地する。
舞い上がる土煙と硝煙に巻かれつつ、敵はその向こうへと吹き飛んで行く。
……だが、あの程度で死んだとは思えない。
土煙の向こうを見据えるように、バーサーカーはただ立ち尽くし、変わらぬ無表情のマスクで以って、ただ不気味な戦闘兵器のように其処に在った。
煙から再び姿を現すアサシンには、見えるだろうか。立ち尽くすバーサーカーに与えた先程のダメージ……左脇腹の傷。
其処から、得体の知れぬ煙が立っているように思える。……良く見ればその傷は幾分か塞がっているように見え、出血はもはや止まっている。
バーサーカーの第二の宝具『人理織り成す生命の業』による効果は、今まさに発揮されているのだ。
「Ohhhhhhaaaaaaaarrrrrrrgh!!!!!!!!!」
土煙の向こうから出てきたアサシンの姿に、バーサーカーは激昂したような雄叫びを上げる。
「何故まだ生きている」「早く死ね」そんな、殺意に満ちた聲を上げれば。
「────Ugh」
バーサーカーが前傾姿勢をとる。
ゆっくりと黒い爆薬が生成され、あたり全方位に流れ出る水のように舞ってゆく。
右腕に特に重点的に火薬を纏わせたのち、彼は前傾姿勢を解除し、不意にその右腕で前方にパンチを行う。
纏わせた火薬は、ただ起爆させるだけではない。
そのストレートの方向は、アサシンの方をこそ向いている。……彼は、アサシンへ火薬を飛ばしたのだ。
それを回避されようがされまいが、バーサーカーは間髪入れず、地面を思い切り蹴り踏んで、火薬へと衝撃を与える。
─────次の瞬間。彼が飛ばした火薬の軌跡に沿って、爆発の波が蛇のように、アサシンへと襲いかかるだろう。
72
:
比奈 椿/アサシン
◆FaqptSLluw
:2016/08/28(日) 18:47:51 ID:bcAZ9TjM0
>>71
気丈に振る舞ってはみたものの、ふぅふぅと肩で息をするアサシン、じっくりとバーサーカーを観察し、初動を何としても見切らんとする。
その内で、バーサーカーの傷が塞がりつつあるのが見えた、あれだけの力を持っていながら回復も出来るとは、何とも戦いとは不公平な物だ。
「俺が生きているのが気に食わんか」
理性を喪いその力を振り回すだけの狂気者、彼が元々どの様な人間であったのかはわからないが、その眼と叫びがそう言っているのは何となく理解出来た。
嘗ては自分もそう、生きる為、殺す為、略奪(うば)う為だけに磨いた武芸とは言えぬこの腕、殺せなければそれは気に食わない。
その気持ちは分かる、不愉快であろう、ならば何としても殺しに来い。
火薬が舞う、周囲を覆う暗雲の様に黒い粉末が月の光を遮り、これから来る破壊の嵐を予兆させた。
風を斬る魔鎌、その刃は空気を斬り裂き音と共に敵を引き裂く、風切り音を聞いた時にはもう遅い。
風を斬り裂く事が出来るなら、風に混ざる物もまた同じく。
バーサーカーが拳を突き出し飛ばした火薬に対し、アサシンは分銅を回転させながら投げ付けた。
無論、それで爆発を不発に出来る訳でもない、バーサーカーを始点にした爆発の連鎖はアサシンへと真っ直ぐに向かい、そして───到達する事なく、途中で連鎖が途切れた。
爆発の終着点から、上空へと跳ね上げられる分銅が見える、何が起きたかの理論は簡単だ。
鎌が風を斬るなら、分銅は風を巻き起こす、回転を伴った分銅は周囲の空気を巻き込みながら対流を作り、飛ばされた火薬がアサシンの方に来るのを妨害した。
結果、火薬と言う道を失った爆発はアサシンまで到達する事なく、巻き上がった爆煙がバーサーカーとアサシンの間を塞ぐ。
爆発の轟音が鳴り響いた後で正常に聴きわける耳があるなら、微かに風を斬る音をバーサーカーは聞くことになる。
爆煙の向こう、視界を塞いだ所で、アサシンはついぞ奥義を使った、それは宝具を持たない彼が宝具に対する武芸の極み、その攻撃には殺気も、気配すらも無い。
「───風切魔鎌・変幻自在」
それは地面を這う蛇の様に、擦れ擦れを滑りながらバーサーカーを狙う鎌。
爆煙の中から投げられたそれは、バーサーカーの足元に到達した瞬間に唐突に振り上がり、正中線を真っ二つにせんとする斬り上げとなる。
無窮の武練、例え腕が傷付いていようと、砕けていようと、彼の身に染み付いた技術が衰えることは無い。
73
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/28(日) 19:09:42 ID:UnsCIJRQ0
>>69
『我が御剣と精錬の末の技、賞賛の砌光栄の到り。』
『ですが私はその懇意を正面から受け取れる程の豪傑では無い。折角の言葉の裏を考え、悪意を想像せずに居られない賤しき身。
故に真名を賜ったとしても、それに答え自らの名を告げる事は出来ない。』
抜き放たれた聖剣が彼女が持つ鞘へと収まって行く度、その輝きもまた少しずつ黄昏の茜の中で薄まり溶けあって消えて行く。
彼女の弁は尤もだ。突如敵だと思って居た相手が自らの力量を賞賛し、ましてや極めて重要な機密をただの無償で授けようと言うのだから謀略や調略を考えてしまっても仕方が無い。
それでも仮に騎士道と言う物が在るのであれば、その想いに報いようと考えないはずも無い。
『……騎士である私には、“王の気概”と言う物が分からない事を許して欲しい。』
息を押し殺し続けられたこの言葉にこそセイバーの本心が詰まっていたのかもしれない。
彼女は王ではない、然しながら敵味方問わず多くの王と言う物を見てきた。
恐らく彼女は、目の前に立つ英霊から王の何たるかを自らの経験と直感によって感じ取ったのだろう。
―――――そう、王を視、王族を誰よりも近くで視てきた。
あの男と言えば王の血を引いておきながらそれはそれは賊成らず野生の獣でさえも逃げる程の荒くれ者だった。
多くの面倒事を押し付けられたし、あいつの為に態々骨を折った事もあった。
厄介者ではあったが――――― 時折見せるその表情は瞼を閉じれば思い出す事が出来る。それは自らには無い“王足る者”のそれだった。
もしかしたら、騎士として、友として、あの横顔と共にある事を誇りに思って居たのかもしれない。
『そして、名を聞いても友ではなく再び刃を向け合う敵となって仕舞うかも知れない事も許して頂きたい。』
それは彼女が信ずる騎士の矜持が故に。名を知り、言葉を交わそうとも巨悪と共に立つ事は出来ない。
一途と取るか頑固と取るかは受け手次第であるが、彼女は決して曲げる事は無いだろう。
同時に相手が巨悪で在れ賜った真名を他者に告げる事も無い。之もまたセイバーの信ずる騎士の矜持が故に。
74
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/29(月) 00:58:41 ID:jowl7WGA0
>>73
『そうか…研ぎ澄まされたその剣技を見れたことを誇りに思うとしよう』
『何きみが名乗る必要は毛頭ない。これは俺が俺のために言い始めたことだ。俺が名乗りたいから名乗るそれまでよ。それをどう受け取るかは君次第だ。俺がどうこう言えるものではない。』
『聖杯戦争とはそういうものだ。常に疑い、言葉1つ1つの悪意を汲み取らねばならぬ。
俺が楽観視しすぎているだけだ。
こんな馬鹿なことを言うのは俺くらいだろう。』
彼女の言うことはもっともだ。疑って然るべきもの。彼には特に悪意というものはない。生前が悪意の塊であったゆえ2度目の生くらいは少しは善に傾いてもいいだろう。
『ハッハッハ!構わぬ構わぬ。しかしなぜ俺が王とわかった?この肩の蛇か?全くもって聡明な奴だ。数多の王を見てきた…とかそういうものなのか?』
セイバーに王であったことを見抜かれ少し困ったような表情をするモンスター。彼にとってあまりいい思い出がなかったのであろうか。
『まあ王としては残虐そのもののような男であったがな…1000年ほど統治はしていたがそれは恐怖によって支配していたにすぎない。本物の王とは程遠い。ただの悪王、魔王だ。』
己の過ちを笑って過ごす。これが彼が悪と言われる所以であり決して変えることのできない悪の生き方だ。いくら善に傾こうとしようが己の本質というものはそうそう変わらない。それは彼もセイバーも一緒だろう。
『あぁ構わない。刃を向けられたとしても一度手合わせをした仲だ。名乗った仲だ。勝手に俺は友と呼ばせてもらおう。其方が刃を向けようが俺はそれを笑って受け入れるとしよう。』
『俺という存在は善に倒されるべき悪の王にすぎん。それ以上でもそれ以下でもない。其方のような高潔な騎士、勇猛な戦士、所謂勇者に打ち取られるのが我が定め…それは何度生まれ変わろうが覆ることはないだろうな!ハッハッハ!』
悪である定めをまるで楽しむかのように振る舞う。
そういう定めもアリだ。与えられたものを最大限に楽しむとしよう。死んでから分かった死んでから気付いた彼の答え。
『よし…では高らかに我が名を述べるとしよう。
我が名はザッハーク!アジ・ダハーカの化身にして1000年の蛇王。もとい龍王である。
これから殺し合う定めに会うかもしれないが悔いなく存分に楽しもうではないか!ハッハッハ!』
そう笑顔で、大声で名乗りをあげると聖剣を収めた聖騎士に手を差し伸べるだろう。
75
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/08/30(火) 10:37:22 ID:UnsCIJRQ0
>>74
「“ザッハーク”。……ペルシアの、邪王。」
セイバーには、そして少年にもその名に心当たりがあった。
ザッハーク。彼の征服王より更に以前に存命していたと言われる王。
悪霊に誑かされ、その身を邪竜へと墜としたと言われる悪王である。
彼の王は1000年の王国を築くも、その後英雄によって打ち取られたと言う。
その正体は邪竜アジ・ダハーカと同一であるとされる、竜の因子どころか紛れもなく人の身を持った“竜その者”の王である。
『納得いきました。邪なる竜の魔力を手足の様に扱えるのも頷ける。』
出会い頭に見せたあの魔力も、炎と瘴気によって編み出された先程の閃光も、全て邪竜の魔力に寄る物か。
それを理解すると同時に、決定的な真実もまた導き出された。
『王よ。御身の御手を取る事は私には出来ません。』
“友ではなく敵となる”それはセイバーが先程口にした言葉である。
セイバーはこの一言を伝えた時点で既に予感していたのかもしれない、対面する王と友となる事は出来ないと。
それは王が悪だったからでは無い。竜だったからでもない。
彼の騎士と彼の王が友となる事は事実上不可能であるのだ。
嘗て決闘を以って降し、友となった巨人の様に容易ではない。王は正しく彼女の敵その物を具象化した存在であるのだから。
何故ならば王はムスリムの王であり、騎士はキリシトの騎士であるから。騎士がその剣を振るった相手こそムスリムの戦士達であるから。
王が変わり国が変わろうともそれを違える事は出来ない。
騎士にとってムスリムの王であるザッハークは云わば宿敵であるのだから
『我が怨敵の王よ。御身と友の誓いを立てる事は出来ません。
ですが孰れ相見えるその時、我が剣の全力を以って御頸を打ち取らせて頂く事を誓いましょう。』
彼女が彼に対し出来る最大の敬意。全力を尽くし勝敗を決すると言う敵に対する最大の尊敬。
それこそがこの二騎の英霊が交わす事が出来る唯一の誓約であった。
76
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/08/30(火) 21:58:36 ID:jowl7WGA0
>>75
『ああそうだ、ペルシアの邪王だ。まあその時の俺とはかなり違うがな…心も体も。
まあいくら姿を変えようが倒される定めにあるのが悲しいところだがな』
彼は有名だ。なにせ悪の権化のような男であるからだ。かの有名な悪の化身ほどではないがその悪名は世界に轟いている。
しかし此度の聖杯戦争では彼のあり方は変わり心も変わっている。当時の彼とはかけ離れた存在となっている。
『その言葉褒めていると捉えてもいいのか?まあ良い感謝しよう。』
『ハッハッハ!そうかそうかならばしょうがない。
この手を取らぬ理由となれば考え得る限り原因は一つ。『異教徒』であるからだろうな。そんな丁重に断らなくて良い。首を貰う…そう伝えてくれればそれでいい』
セイバーの発言を聞き敵の正体に僅かながら心当たりが出来た。
『しかしまあそこまで敵対視しているということは思いつく宗教の中では一つだけだな。名前は言わないでおこうか…しかしまあ君の気持ちを俺に理解することは不可能だ。なんせ宗教には身が乗らぬものでな』
セイバーからすればこの男というものは今すぐでも首を奪いたい相手であろう。憎き異教徒。その王たる人物だ。仲間なんぞ死んでも御免彼女はそう思っているであろう。
『しかしまぁ…信じるものの違いで争いが起き、名も知らぬ相手と確執を持つことになるとは…なんともやはり恐ろしいものだ。邪なる龍よりなお恐ろしい。』
あーあという表情で頭を掻く。それもそうだろうこの事においては彼も予想していなかった。しかも相手は相当の手練れだ倒すのも一苦労。もしや倒せぬかもしれぬ相手だ。嫌がるのも無理はない。
『我を倒すのも我の首を取るのも何も文句は言うまい。再会の時を楽しみに待つとしよう。』
『しかし一つだけ忠告させてもらうとしよう。我に恨みを持って対峙はするな。貴様が真の勇者であるなら清き心持ちのみで我に挑むがいい。悪に似た黒き心を持って我に挑んで勝てると思うなよ。』
今までの笑顔とは打って変わって一瞬だけ睨みつける。邪悪で強大な威圧感がセイバーとそのマスターを襲うだろう。そうこれは彼の警告である。悪なる心を持って悪を制すなどということは彼が許さない。それはさらなる悪を生むだけにしかならないからだ。悪魔に誑かされ狂い悪となった彼だからこそ重くのしかかる言葉になる。
『では…そろそろ帰るとするか。もはや双方言うこともないだろう。刃を研ぎ澄まし、いずれ俺の首を取りに来てくれよ。楽しみに待っているとしよう。ハッハッハ。まあそれまでに死んでいなければ良いがな。』
「ちょっと縁起でもないこと言わないでよ!冗談でも言っちゃダメ!それじゃあね高校生!美しい女騎士さん。最後に一つ今度からは独り言しちゃダメだよ!
さっきの邪な雰囲気とはまた打って変わって笑顔に変わる。冗談を言ったつもりではいるが冗談ではない。本当に聖杯戦争というものは恐ろしいものだ。いつ首が飛ぶかもわからない。彼らの再会も叶わぬものになる可能性もある。
呼び止められるか攻撃でもされない限りはそのまま姿を消すだろう。
77
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/09/01(木) 08:13:57 ID:UnsCIJRQ0
>>76
「……行っちまったな。」
『そのようですね。』
黄昏の中に去って行く一人と一騎の背中を見送りながら、少年はふと己の制服のポケットに納められた携帯引っ張り出す。
まだほんの十数分しか経って居ないではないか。てっきり一時間以上は過ぎた物だと思って居た。
五感すら麻痺する程の濃密な時間であったと言う事か。
『トビナリ。』
「……へ、どうしたんだセイバー?」
セイバーの急に畏まった声に少年は思わず聞き返す。
見やれば、剣を納めた彼女は影法師を長くのばしたまま立ちすくみ、ふと再び口を開くと同時にその面をゆっくりと差し向けた。
『これがサーヴァント同士の戦い。
―――――― これが、君が呼び出したサーヴァントだ。』
そう言えばモンスターとの打ち合いが始まる折り、セイバーはこれから起こり得る事象をよく見ておけと口にしていた。
感想を求めていると言う事なのだろうか。
「……そうだな、セイ―――――」
まるで時間が消し飛んだかのような心的疲労と緊張感を感じた事。直接狙われた訳ではないにしろ命のやり取りと言うもに直に触れた事。
そんな思いの丈を伝えようとして物思いにふける様に落としていた視線を再び上げた時。自分が重大な思い違いをしていたことにハッとした。
彼女が聞きたかったのはそんな事では無くて、もっと重要で、もっと必要な事だったのだ。
肩口に少年を見やる彼女の瞳が訴えるものは何か。彼には分かった。それはきっと、“覚悟”なのだろう。
彼女が握る剣の様に鋭く、決して逸れる事も歪む事も無い一路な青の虹彩。
セイバーは自らを騎士と称した。それは他の誰であっても否や等在る筈も無い。マスターである飛成もそれに同意しよう。
しかし彼自身はどうか。マスターである彼は彼女の様な騎士を従えるに値する器であろうか。
騎士とは王に。国に。主に仕える。高潔な精神を持つ騎士が求める物は同様に高潔なる精神を求める主で相違無い。
彼女が求めた“覚悟”とは“運命を共にする“覚悟”。
この先どれだけの時を共にあるかは分からない。一週間か。一ヵ月か。或いは明日には互いの縁は切れているかもしれない。
自らも、そして英霊である彼女にとってもそれは後の人生を考えれば瞬きの様に短い邂逅でしかない。
それでも尚。いや、だからこそ。運命共同体として互いの背中を預け合う《聖杯戦争》の中でその歩調を合わせる必要性が在るのだろう。
セイバーが求める理想は恐らく高い。果たして彼女の力と、信念と、忠義と、理想に付いて行けるだけの覚悟が自分にあるのだろうか。
ある
とは言い切れない。だが彼女の言葉を思い起こせば無い等と言える筈が無い。
セイバーは言った。『サーヴァント同士の戦い』と。
確かに聖杯戦争は代理戦争だ。だが同時にサーヴァントとマスターの一組で戦う物である事は紛れもない事実。
先程の戦いは『ただサーヴァント同士が衝突した』だけ。つまり《聖杯戦争》ではない。
セイバーが語る、求める聖杯戦争とは『主と従が共に戦う』物に違いない。それこそがセイバーの、騎士の理想とする戦いの在り方なのだろう。
――――― なんだ。
そう思って彼女を見てみれば、その瞳に差し込む青は不安の青にも見えるではないか。
臆病……等と言っては後で何をされるか分からないが、今思い返せば彼女が執拗なまでに俺の進退を気に掛けていたのもその不安から来ていたのかもしれない。
こんな事に漸く気付くなんて自らの矮小さに赤恥すら感じる。
ただ日常にしがみ付いてたのもサーヴァントと言う異質を正面から受け止めるだけの器量が自らに無かったからだ。
受け入れよう。
《聖杯戦争》と。
セイバー
彼女 を。
「ああ――――― そうだなセイバー。君は間違いなく、俺のサーヴァントだ。」
だから。これからよろしく頼む。
78
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/06(火) 21:59:36 ID:jowl7WGA0
人気の少ない夜の街。その街角にある公園のベンチに女がいた。聖杯戦争という殺し合いに参加する女。
しかし彼女自体に殺意はなくできれば殺しは行わない。それが甘いということは彼女自身知っている。
無論喧嘩をふっかけられたのなら厭わず殺せる覚悟は持っているものの自発的に殺すことには抵抗があった。
その女は茶色のトレンチコートを身に纏い、かけている眼鏡に夜の街灯が反射し揺れるようにブランコに乗っていた。これだけなら普通の女だ。その身を取り巻いている邪悪な魔力を除けば。
「なんか良いことないかなぁ…誰かと会ったり〜楽しくお話ししたり。まあそんなこと求めてるのが間違ってるのかもしれないけど。聖杯戦争ほんと怖いわね。」
『何を今更なことを言っている。そうはいってももう元の生活には戻れんぞ?お前は死んでも良いのか?俺は許さんぞ』
「わかってます!覚悟を決めて戦わないとダメなのはわかってる!でも殺せって言われてもなかなか辛いものよね。かといってあなたの望みを叶えないわけにもいかない。困るよねホント」
「もういっそ誰か喧嘩ふっかけてこないかな…そうじゃないのやる気になれないよ…イヤイヤダメダメ!そんなこと言ったらホントに殺されかねないわ…」
端から見れば完全に変な人に見えるが心当たりのある人も少なからずはいるだろう
79
:
川澄明見☆ライダー
◆8DhFXRguMA
:2016/09/06(火) 23:19:40 ID:JZ00R4PI0
>>78
「へぇ〜お父さんの車、運転できちゃうんだ!ライダーすごっ!」
『ふっ、当然であろう。余は騎兵。この程度、あの暴れ馬より御しやすい。』
人気の少ない夜の道を征く車一つあり。銀色の、オープンカーだ。
明見の家でほこりをかぶっていた明見の父の車を、ライダーが拝借してドライブへと出かけたのだ。
サーヴァントでも探すということで、だ。
現世に合う服を、ということでライダーは白いワイシャツとズボンを明見の父から拝借して――ただし、無断で。
明見はというといつも通りラフに着こなした学生服で。
一見すれば、ライダーが明らかに東洋人でないこと以外は、親子のようにも見える二人組であった。
『で、明見よ。このような夜道であろうと視えるのか?』
「えっと、うん!バッチシ☆」
『ふむ………そなたの目、やはり超常なる目の可能性が高いな。
遠見、透視、夜目が利きすぎる――となれば』
「ライダー、なんか怪しそうなのがいるっ!」
始まるは明見の目の考察。
常々、明見の目はおかしかった。
見え過ぎる――人間の普通よりは、はるかに。
だが、考察は打ち切られる。
近くに見えた公園にいる、不審なそぶりをする少女を見つけた明見によって。
誰もいないのに、誰かと話しているように見える少女を見たことによって。
『――まだ、奴がマスターとは断定はできん。視ろ。そして明見よ、お前が判断しろ。
奴が、敵かどうか。
皇帝特権――《気配遮断》』
「う、うん!」
車は止まり、運転手だった男は消える――霊体化だ。
気配遮断、一時的に得たアサシンのクラススキルも併用して。
そして、明見は観察する。近くに見えた公園を。
そこにいる――眼鏡の少女を。
まだ、本人は気づいていない千里を見通す瞳を以てして。
80
:
丁嵐兎角&ルーラー
:2016/09/07(水) 00:00:42 ID:IzYCzDoE0
セイバー陣営……彼等に対して、監督役からの至急の招集命令がかけられる。位置は、冬木教会。
理由はその書状には書かれておらず、また誰かと連絡を取って何かあったか、と問いかけても、誰にも納得がいく返答を貰う事は、"恐らくない"だろう。
それも当然の話であり、これは丁嵐兎角――――――聖杯戦争監督役が、独自にセイバー陣営ただ一つに対して行った、"協力の要請"なのであった。
丁嵐兎角という男は、慎重を旨とする男であった。
若い頃は激しい性格をしていたが、加齢と激動の日々の反動からか、大きなことを余り望まないようになっていた。善悪を問わず、だ。
そんな男が、この聖杯戦争における"イレギュラー"に対して、何か物を考えないはずがなかった。
事前情報によれば、参加するサーヴァントの数は七騎。基本の七クラスか、或いはその中から幾つかを入れ替えた姿か……そのどちらか。
だが、発生した"異常事態"については――――――最早語るべくもないだろう。結果として、聖杯戦争は七騎に納まらない規模となってしまった。
それだけでも非常事態だというのに、更に其処から新たに問題が加わった。セイバー陣営を待つ丁嵐兎角には、"二十六のサーヴァント"が侍っているのだ。
否、正確には二十六騎のサーヴァント、ではない。その二十六を合わせて、"一つのサーヴァント"だった。聖杯戦争に発された異常に対して、抑止力が寄越した"機能"。
クラスを、"裁定者"と言った。
だが、それらは意思を持っているようには見えなかった。ただ、手を組んで、只管に主への祈りの言葉を紡ぎ続けていた。途切れることなく、唯々延々と、だ。
丁嵐兎角には、ルーラーという"システム"にすら見えた。それだけの事がこの聖杯戦争に起きている、と思うと、頭痛が止まらなかった。
兎も角、兎角はセイバー達が到着するのを待ち続けた。延々と、機械の様に捧げられ続ける祈りの言葉の中で。
81
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/07(水) 00:44:44 ID:jowl7WGA0
>>79
「よっし!考えても仕方がない!そろそろうちに帰ろう!」
「あ…誰かいる。もしかして年甲斐もなくブランコこいでるのバレちゃった?やばい超恥ずかしい…これめちゃくちゃ恥ずかしいよ…」
誰かを見つけた。人である誰かを…人気のない公園に現れた見知らぬであろう誰かを
『バレたくなければ乗らなければ良いものだろう。
考え事なんざ遊具に乗らずとも考え付くものだろう。』
「そんなこと言わないでよ!人が来るとは思ってなかったよ…これホント予想外…」
つい恥ずかしくいつもより声を荒げてしまう。
ブランコに乗ってるところを見られたにしろ虚空に向けて話しかけたのを見られたにしろどっちにしろ恥ずかしいということを彼女はまだ気付いていなかった。
「まあいっか…一応バレてないか分からないから聞いてみる…絶望的だろうけど」
そういうとこの人気のない公園に来たもう1人の来訪者のもとに向かう。
目が良い来訪者にはわかるだろう…右手に赤く刻まれた刻印があるということが
しかし今彼女にとって重要なことは恥ずかしい行為を見られてるか見られていないかということだ。
すかさず近寄り声をかける。
「あの〜すいません…もしかして『見た』りしてませんよね?…ね?」
見たという言葉を意味深に強調して言う
82
:
川澄明見☆ライダー
◆8DhFXRguMA
:2016/09/07(水) 18:37:07 ID:JZ00R4PI0
>>81
どうやら、気づかれたらしい。
まあ、仕方ない。しっかり見過ぎたって自覚はある。
ブランコに乗ってるのは……まあ、そんなときもあるだろう。
だが、虚空に話しかけるのは、そして右手のそれは。
明見にとっては、望ましくなかったものだった。見つけたくなかったものだった。
(やっぱ――マスターだったかーヤババ………)
視えた。視えてしまった。
右手の甲のそれが、赤い刻印が。
手の位置を調整する。刻印を見られぬように。隠すために。
そして、その手で一瞬丸を作る。――己の従者に、伝えるために。
「えっとー……な、なにを?」
ずかずかと歩み寄られ、いきなり質問を受ける。戸惑い。
いったい、何について見たのか問うているのだろうか――?
明見は、金髪サイドポニーパーマのJKはオープンカーの助手席に腰かけている。
少し考えれば気付くだろう。それはおかしいと。
なぜ、運転席が空席なのか。先ほどここに駐車したはずなのに。彼女は明らかに未成年なのに。
そして、明見はそのことに違和感を覚えていないことに。
83
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/07(水) 21:43:00 ID:jowl7WGA0
>>82
「良かったぁ!見てなかったってことで良いよね!
急に話しかけたりしてごめんね?もし見てたら…ううん何でもない!」
「あ、そうそう1つ気になったんだけど…運転手さんはどこかな?もしかしてあなたが運転してるとか?それともゴーストライダーとか?はたまた…『見えないお友達』とかいたりしちゃう感じ?…まあそれはないよね。でも無免許運転はやっちゃダメだよ!」
もしかしたら…とは思ってみたが自分の周りに彼以外魔力の反応はないと見えた。
しかし一応念には念を…少しサーヴァントという存在を匂わせる発言をしていた。
「あーそうそう!もう1つ。手の甲の赤いのは気にしないで!今流行りのタトゥーって奴?だから!」
『オイオイ…自ら匂わせる発言をしてどうする…もしかするとマスターの可能性もなきにしもあらず
少しばかりは気を付けろ』
(はいはい分かりました!そうします!)
「あなたが普通の人で良かったわ!もし普通じゃなかったら…っていうパターンもあったけどそれはなし。」
少しだけ緩んだ表情を見せる。が、少々発言は怖い。気にするかどうかは目の前の少女次第だろう。
84
:
川澄明見☆ライダー
◆8DhFXRguMA
:2016/09/07(水) 22:01:11 ID:JZ00R4PI0
>>83
「えぇっと………」
目を白黒白。少女の言葉の連撃に押され、戸惑い戸惑う。
見えないお友達。間違いなく、間違いなく彼女は――
「タトゥー?もう流行ってはいないと思うんだけどなぁ………」
におわせるような言葉。反応してはならないと隣のライダーが念話で告げている。
が、表情を抑え切れてる自信はなく―――
『―――ほぉう。』
そんな焦りを抱いていたとき、彼が姿を現した。
限界を、悟られた。だから、隠すことを止めたのだ。
もう気配を遮断することもなく、堂々と運転席に顕現した。
金の炯眼は、少女を射る。
『聞こうか。貴様の作戦を。
さあ、言え。実行に移すことが叶わぬ貴様の計画とやらを。
こいつは、普通ではないぞ?』
現世に適応した服装。だがそんなものは関係ない。
違うのだ、その他有象無象とは決定的に、風格が。
王者?違う、そんな玉座に座すだけの愚者ではない。
魔王?違う、そんな倒される舞台装置などではない。
英雄?悪魔?いいや、違う。もっと相応しい言葉がある――――
それは、“皇帝”であろう
85
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/07(水) 23:01:50 ID:jowl7WGA0
>>83
「いろいろ質問しちゃってごめんね?急にだと答えられないよね。」
いろいろあぶり出してみようとは思ったがさすがにいろいろ聞きすぎたと少々反省している次の瞬間であった。
「やっぱり…やっぱりいた。薄々そんな気がしてた。」
『全く…これだから…戦いたいのかそうじゃ無いのかはっきりしたまえ』
「知ってる…見ればわかる。あなたはサーヴァント。普通じゃない…私の作戦?そんなものは無いよ。
見られたく無いものがあったからそれを見たか聞いただけ。それのついでに貴方の隣にいる女の子が普通の人かマスターなのか…それを見分けたかっただけ。」
今にも破裂しそうな心臓を抑えながら緊張を隠しながら目の前のサーヴァントに接する。
その次の瞬間見てられないと踏んだのだろうが彼女のサーヴァントも姿を表す。
『随分と馴染んでいるようだが貴様…この現世は楽しいか?』
『しかしなかなかの威圧感…本当に普通の人間でも普通の英霊でも無いな。その霊格高いと見た。』
とてつも無い威圧感を放つサーヴァントに負けじと恐怖と邪な瘴気をこれでもかと放つ。
双方マスターには戦意はないだろうが英霊同士ならどうなるかはわからない
86
:
川澄明見☆ライダー
◆8DhFXRguMA
:2016/09/08(木) 00:43:59 ID:JZ00R4PI0
>>85
明見は緊張をしていた。
ひょんなことからこの偉大な皇帝と共に戦わねばならなくなって、実際に一戦して、ちょっとは役に立った。
だが、その矢先にこれだ。
――恐ろしい。
これが、これこそが、人の上に立つ人――――
目の前の少女、否敵マスターを座したまま見据える。
金眼は決して逃しはしない。その緊張を、動揺を。
言葉を、弁明を、ただ座して聞く。
そして、応える。
『ふむ。たったのそれだけか。』
それだけ。たったの、それだけだ。
評価は決定し、興味を完全に喪失し、殲滅を決意し――――
そのとき、気の流れが変わった。
この世に魔王という称号があるのは、きっと彼のためだろう。
いいや、王とは人に贈られる称号だ。彼はきっと、最早人ではなかろう。
異様なのだ。僅かに覗く口には牙。舌も長く見える。
そして、肩だ。明らかに人の隆起ではない。
そして、好みを苛む恐怖と邪気だ。ライダーのそれは相対的な正であろうが、彼のは絶対なる負だ。
おおよそ、真っ当に生きて手に入れられない――明見はここまで考察をし、固唾を飲んだ。
『ああ、楽しい。楽しいぞ。
そして、気に入っている。
我が精神が、時を超えてこの世に広く広がり法とまでなっているのだからな。
我が道の正しきが示されているのだからな。』
故に、この男はこうも自信がある。
自身の行いが、精神が、偉業が、評価されてこの世に息づいている。
だからこそ、彼は現世を好んでいた。あの波乱な世も好みではあったが、この火薬庫の如き現世もまた気に入っていた。
だが、彼は自信に溺れるほど小さな器ではなかった。
『そういう貴様は、王とみた。それもただの王座を継ぐ者ではない。
野心と邪な念に穢れきった邪なる王。
だが、余は貴様のような王こそが、好みだ。』
そして、恐怖にも邪な気にも屈する器でもなかった。
真正面から撥ね退け、車上からこの場に君臨し続ける。
野心、野心だ。
彼らに共通するは野心なのだ。
その根源は何であるかは今は関係などない。しかし、彼らは知ってしまっているのだ。
力で、王座は獲れると。
明見は、身を震わせた。
こんなところで、戦うのか、と。
ライダーの実力は目に焼き付いている。
彼の砲は容易に家を吹き飛ばす。
彼の兵は芝のように人をなぎ倒す。
彼の戦いは、闘いではないのだと――理解しているが故の恐怖。
皇帝は、その恐怖を感じた。
本来ならば、皇帝は何にも拘束はされない。
だが、今は一従者。主人の意向には従うが役目。
故に、皇帝として。一騎のサーヴァントとして。目の前の王へと交渉を持ちかける。
『会い見えたはいい。が、お互い矛を見せ競うは今は止そうではないか。
見えぬか、この家々が。眠りに就く民たちの姿が。
人の上に立ち、統治をする身ならば分かるであろう。その眠りは不可侵だと。
我らの矛は容易に不可侵を侵してしまうと。』
『王同士の戦いは闘いに在らず。
―――即ち“戦争”である。』
87
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/08(木) 01:45:47 ID:jowl7WGA0
>>86
「私は売られた喧嘩しか買わないの!自分から殺しに行くなんて真っ平御免です!まあそれが綺麗事だってわかってる、それが甘さだってわかってるけど最後の最後までその手段は取りたくないの。」
『全く…変に正義感が強いものだ。まあそこが良いのだがな。』
常軌を逸した存在感を放つ敵方のサーヴァント。おそらくサーヴァントの中でも強く清い者なのだろう。数多の勇者と相対したからこそわかる。この者は強いと。
『そうさな…せっかく与えられた二度目の生だ存分に楽しみ存分に暴れ存分に君臨せねばならぬ。そうでもないとつまらない。限られた時間すら有効に使えぬ者に未来はない。』
『法か…人類の元となる法…かくも素晴らしい精神を持っているようだ。という事になると貴様はかなり有名だな。まあ詮索する気はないがな。お互い果たし会う時高らかに名の名乗りその名を聞く。そうでなければつまらない。』
この一騎は聡明であり崇高であるのだろう。言の葉の節々から見える自信。王をも超え得る圧倒的なカリスマ性が見て取れる。
『あぁ…我は王だ。それも普通とは違う…悪に溺れ、非道の限りを尽くし、壮大な野心を抱き、世界を焼き、1000年の統治を行った所謂魔王だ。邪王とも呼ばれていたな…しかし1000年も王と呼ばれると流石に飽きがくるものよ…あの頃ほど尖ってはいまい。
まぁ…根元の部分では全くもって変わらないのだがな。』
『我は望んでいる…世界を救う勇者を!いかなる悪も攘う戦士を…貴様のような崇高な王を。
此度の戦争…幾百幾千の時を超えて至福のひと時となるだろう。』
幾千の時を経て彼自身にも歪みが出始めたのだろうか…悪たる彼は善に討ち滅ぼされることを定めとしそれを受け入れ目を輝かせる。いかなる崇高な者が自分を討ち果たすのかそれが気になって気になってしょうがない。
『当たり前だ。我1人ならこの身の限り破壊を行っていたところではあるが生憎我は王である前に彼女の従者だ。彼女の好まぬものを進んで行うなど従者としても英霊としても失格だ。
王たる者、民の安寧を願うのは民の安息を願うのは必然である。』
『クッハッハ!そうだ!我らの戦いはもはや闘争の枠には収まらぬ。国1つを優位に滅ぼし世界を戦火の渦中に巻き込む。
まさに戦争だ。
兵を束ね大いなる野心を抱き我が道を突き進む。障害となる敵は攘い。屍の山を築き上げる。醜くもあるがそれと同時に夢のある
究極の善であり究極の悪の行為だ。』
『しかし我と戦う時は覚悟せよ。そこいらの兵では話にならぬ。清き心で微塵の悪意もなく善たる勇士を集めることだ。』
88
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/09/08(木) 04:24:57 ID:UnsCIJRQ0
>>80
「どうだ、セイバー。」
時を同じくした丁度教会の外。大扉を眼前に備えて立ち尽くす少年の姿があった。
“先程”とは異なりその出で立ちは明らかに私服と言える物で、上着は強い灰みを帯びその緑色に深みを備えた老緑と言える渋めの色のパーカーを纏い
下は黒色のチノパンで、総じて言うなれば地味。別の言い方をすれば『普通』と言うに正しい姿だった。
取り急ぎ着替えたのか身嗜みを最低限整えたらしく、恐らくは洋服ダンスの一番手前の服を適当に引っこ抜いて来ただけなのだろう。
『複数の気配を感じる……ですが、これは……。』
同じく扉の前に並んで立つ“それ”は扉に触れる寸前の位置に構え、内部の気配を注意深く探っていた。
無論これにも、と言うかこの状況にも理由があった。
先程“聖杯戦争の監督役”と名乗る人物から緊急の連絡があった。その内容は「至急出頭すべし。」の一点のみ。
理由は勿論記されておらず、どれだけのマスターに声を掛けられたのかも分からない。
総括を行う監督役の署名であり一種の中立地帯であるこの教会に呼び出された以上は罠だとは思わないが、他のマスターとの接触はそれだけで一触即発の事態に成り得る。
だからこそ直接邂逅する前に間接的にも内情を把握しようと考えたのであるが……セイバーの表情は険しかった。
複数の気配と言えばマスターとサーヴァントが複数存在しているという事と考えるべき事案だ。
しかしセイバーは言う。
『人間は一人――――― 英霊が二十三……いや、二十三“当分”?』
その聞き慣れない単位に彼女のマスターも眉を顰める。
二十三当分等と、元来一つである物がまるで二十三つに分けられていると言う様な言い方ではないか。
それに人間が一人と言うのも気になる。マスターとサーヴァントは大抵の場合等しい数になる筈だ。
仮に二十三もの英霊と契約等と言う法外な行為の結果だとしても、それだけの数を維持するだけの魔力を人間が発生させるのは不可能のはず。
セイバーの釈然としない反応も全くだ。
「……分かんないなら、開けるしかねぇな。」
どちらにせよ呼び出しを受けた時点で参加する腹積もりで居たのだ。
考えても理解しえぬ状況ならばいっそ清々しく開けてしまえば良い。
蛇が出るか邪が出るかは分からないが、こうすればこの疑問も直に解決する。
セイバーも飛成の意見に同意するようで、彼の行いを止める様子はない。
少年はその手を扉に当てると、そのまま力を込めてゆっくりと扉を押し開いた。
金属が鈍く摩れる様な音と木材が軋む音のデュエットが響き渡り、扉の向こう側の世界が、二人の前に広がった。
そこで待って居たのは―――――――。
89
:
川澄明見☆ライダー
◆8DhFXRguMA
:2016/09/08(木) 21:06:55 ID:JZ00R4PI0
>>87
「あー……それ、分かるかも」
皇帝と少女との問答。それに口をはさんだのは意外にもギャルの少女――明見であった。
「アタシも殺すとか殺されるとかショージキ嫌。
できるんなら避けて通りたいって思うよ。」
ライダーは感心をしていた。
自分と魔王の放つ気に圧倒され、小さくなっているのみだと思っていた。
だが、違った。言葉を、自らの心を述べてみせた。
『時は金なり。東洋の諺だ。
分かっているではないか。それでこそ余と同じく現世に召喚された英雄というものよ』
『であれば余も貴様の素性は探らぬ。
戦争を、一心不乱の大戦争を起こすときまでの楽しみにしようではないか』
敵への称賛。なるほど、この男も流石英霊だ。
そして、果てなく悦を欲する暴君だ。
相手にとって、不足なし。
『千年を統べる魔王か!ますます面白い!
我が一生は短い。あまりに短い!
だが、約束をしよう。我が一生は、余は貴様を打ち倒すに値するものであると!』
良い、好い、よい!
この聖杯戦争とは面白い!
現世には荒ぶる戦士がいる。千年を生きた魔王がいる!
あと四騎、四騎もこのような猛者がいるのだ。
これがどうして、面白くないのか。
笑う。笑う。自然と、口が綻んでしまう。
ああ、余はこの聖杯戦争を、彼の王との戦争を――
楽しんでいる
『よかろう。ならば機を計りて待とう。場を選びて待とう。勝ち残って待とう!
貴様との戦争を、大戦争を!
策を練り、兵を高め、貴様との戦争を待とう!』
『貴様との戦争。この聖杯戦争の最大の山場としてみせよう!』
90
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/08(木) 22:57:48 ID:jowl7WGA0
>>89
「だよね!そうだよね!家のアレで参加はしているけど…私自身はそれは避けたい。」
思わぬ共感を得て嬉しくもあり複雑でもある。
『金では買えぬモノの数少ない一つが時間だ。
英霊とて永遠に居れるわけでもない。生前より限りなく短い時間だ。』
『ハッハッハ!久しいな戦争など!何千年ぶりか…
実に興が乗る!』
『そうさな…それまでの楽しみだ。俄然やる気が出てきた!刹那に終わる戦争であろうがこうも素晴らしいとは…予想をはるかに上回る。』
眼前のサーヴァントとは気が合いそうだ。
嗚呼この者と本気の戦争が出来るとは一生者の思い出であろう
『ハッハッハ!存分に楽しみにしてくれ給え。
貴様の期待に応えるように我もどんと構えるとしよう。我を打倒するか…それでこそ英霊だ!我の求めていたモノ。』
やはり聖杯戦争というモノはいつも彼の予想を上回る。美麗なる双剣士。目の前に居る圧倒的カリスマ性を持つ皇帝。他にも何騎も彼の予想を上回る兵がいると考えると嬉しくて嬉しくてたまらない。
王である前に1人の男。強い者と戦わずにはいられない。
『無論だ。我も尋常に貴様との戦争に臨むとしよう。存分に英気を養い互いの一生に残る世紀の一戦と行こうではないか!嗚呼楽しみだ。これほどまでに昂ぶるとは…聖杯にありつく前にこれ程の…言葉も見つからん。』
91
:
川澄明見☆ライダー
◆8DhFXRguMA
:2016/09/08(木) 23:42:09 ID:JZ00R4PI0
>>90
「実は私も……ってあんまり喋っちゃダメかな、怒られちゃう。
ま!お互いできるだけ死なず殺さずできるようにがんばろうよ☆」
いつものように、ちょっと弾けてみる。
嬉し気で、複雑な表情をみたらちょっとだけ緊張がほどけた。
ライダーは、何も言わない。
戦争!戦争、戦争!
ライダーは皇帝だ。一軍の将だ。戦士ではない。
だが、心が躍る。踊ってしまう。
猛者を計略に嵌め、我が軍勢の機敏なるを以てして攻め落とす。
ああ、軍勢同士のぶつかり合いもよかった。それはすでに生前に味わった。
だが――今は、今は一騎当千の将を計略で攻略できるのだ!
その相手が、このような男なのだ!
心躍らずに、どうしようというのだ。
『フハハハッ!楽しみだ、余も柄にもなく高揚している!
しかし、今夜はここで別れるとしよう。自陣にて互いの矛を磨こうではないか!
機が満ちれば戦えるよう。存分に戦えるように!
では、しばしの別れだ!さらば!』
この逸る気持ちのままこの男と会話を続ければ、開戦しかねない。
そう思った皇帝は車のエンジンを目覚めさせる。
現代の馬は、乗り手とその主人を乗せて動き出す。
言葉を交わせるとしたら、これが最後。
なぜなら、なぜなら―――
次は、互いに開戦を宣言するのだから
92
:
丁嵐兎角&ルーラー
:2016/09/08(木) 23:42:13 ID:IzYCzDoE0
>>88
『――――――――――――天におられる我らの父よ』
扉を開いた先に、広がっているのは。
『御国が聖とされますように』『御国が来ますように』『御心が天に行われるとおり』『地にも行われますように』『私達の日ごとの糧を今日もお与えください』
『私達の罪をお赦しください』『私達も人を赦します』『私達を誘惑に陥らせず』『悪からお救いください』
先ず、其処には"神聖"があった。一切の霞みの無い、純然たる祈りによって満たされていた。
セイバーの観測の通りに、其処には二十六を以て、"一騎"のサーヴァントが教会の中を、まるで取り囲むように立っていた。
『Amen.』 『Amen.』
『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』
『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』
『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』『Amen.』
只管に、それらは祈り続けていた。
その姿形は様々であった。全てが男性である、ということ自体は共通しているのだが。
年齢、人種、性別、身長、体重、体つき。それら全てが千差万別で在り、確かに"別の個体"であることは分かるだろう、が。"その顔は、塗り潰されていた"。
まるで空間に上書きでもされたように。モザイクを掛けられたかのように、それらの"顔"の部分は徹底的に蠢く"ナニカ"によって隠されていた。
それが、"真っ当な英霊では無い"ことはすぐに理解できただろう。それは――――――
「気にするな。そして、よく来てくれた、セイバーと、そのマスター」
中央の通路に、聖杯戦争監督役、丁嵐兎角は立っていた。
カソックを身に纏った、背筋の曲がった隈の濃い中年の男は、ウンザリとした様子を隠そうともせず、彼等を迎え入れた。
後頭部を掻きながら、かつりかつりと歩み寄っていく。視線は二人に定められたまま。一応は、この丁嵐兎角は中の中程度の代行者だが、戦いの構えはしていなかった。
「此奴らは"ルーラー"のサーヴァント。この聖杯戦争を"取り締まる"ために召喚された……システムのようなものだろう」
そして、うんざりした口調でそう言った。
曖昧な言葉だった。何せ、ルーラーが"語らない"以上は、丁嵐兎角も正確な事が分からないのだ。だが、大体の予測は付いている。
そして、それを今から彼等セイバー陣営へと説明しなければならない……考える為の沈黙が、数拍おかれた後。
「……お前達には事前に説明してあるだろうが……いや、したかな……まあいいや。今回の聖杯戦争は、十騎のサーヴァントが召喚されている」
「セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、アヴェンジャー、ビースト、モンスター」
「……これは本来は言ったら不公平になる、ほんとはダメな情報なんだが、まぁいい。このうち、ランサーとアヴェンジャーが現在脱落した」
彼等も知っている通り、聖杯戦争は既に進行している。早くも二騎のサーヴァントが脱落している。
本来、監督役であり、中立でなければならない丁嵐兎角は、このような情報をセイバー陣営に漏らすなど言語道断と言わざるを得ないものである。
だが……これは兎角の独断に近いものであったが、然し仕方のないものでもあった。なぜならば……"それこそがきっかけになるからなのだ"。
「ここからが本番だ。お前達に、聖杯の現状調査への同行を願いたい」
「本来、聖杯戦争というのは七騎のサーヴァントを使って行われる物、の筈だ」
「しかし今回は本来の予定から、三騎もそれらがオーバーしている。これは、"以上"だ。聖杯戦争という形式が存在しなかった、一次以来の」
「だが、事前調査では聖杯に異常は見られなかった……そこで。二つの魂が還ったことで、聖杯に何か変化が起こったか。調査をしたい」
「無論、俺も行く。俺も行くが……俺は不本意に死にたくはない。万が一があったら、"嫌"だ」
丁嵐兎角という男は、酷く慎重な人間だった。
聖杯の調査……それで仮に異常が起こっていた時、自分がどうにかなっては堪らない。それ故に、彼等に対して同行を依頼しようというのだ。
勿論、彼等にとってはたまったことではないだろう。唐突に聖杯戦争を中断させられて、そんなことを提案されるのだから。
だが、兎角にとっても"たまったことでは"なかった。言い方は悪いが、旅は道連れ、という感情もあったかもしれない……兎も角。
「監督役としての命令だ。"従ってくれるな"?」
その立場を利用して、彼等へと命令を下した。
93
:
モンスター
◆06bARKsA0s
:2016/09/09(金) 00:45:49 ID:jowl7WGA0
>>91
「そうだよね…次会うときは敵同士だから…
そうだね!頑張ろう!!」
嬉しそうな顔に少し笑顔に尚且つ元気に応えてみる
仲良く会話をしていてもすぐに敵同士になってしまう…本当に恐ろしい戦争だ。
しかし彼はこれから起こる戦争に胸の高鳴りを抑えられずにいた。相手はどんな手を使ってくるのかそれを自分はどう返すかそれ考えるだけで身体が疼く。
一度は嫌だと思った相棒も疼く。
『そうであるな…素晴らしい胸の高鳴りだ今夜は眠れそうにもないなぁハッハッハ!
あぁ…存分に鉾を磨くとしよう。我が全霊を込めて
貴様と対峙しよう。
別れは惜しいが仕方がないな。さらばだ!』
柄にもなく冷静に居れずにいた。このままではおっぱじめない。彼も身を翻し帰宅の途につこうと試みた。それは相手方も同じだったようだ。
さて今夜は帰るとしよう
次会う時全てをかけて戦うと誓って。
好敵手の背中を見届けた。
「さぁ!そろそろ帰りましょう?」
『あぁ…そうだな。
それはそうと君には本当に感謝している。
此度の戦争呼んでくれてありがとう…君といる時間は一生残り続ける記憶になるだろう…
改めてよろしく頼むぞ…佳奈。』
「あっ!初めて名前で呼んでくれた!こちらこそありがとう!貴方となら素晴らしい時間を過ごせそう!」
これから先何が起こるかはわからない。但し今日の彼らとの出会いが幸か不幸か彼らを強くした。
さぁ…戦争の時間の始まりだ。
94
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/09/09(金) 07:11:37 ID:UnsCIJRQ0
>>92
酷く居辛い空間だった。
元々飛成はとてもじゃないが信心深い方ではない。むしろ神頼みと言う物を忌諱している節すらある。
それは彼の幼少の生活環境もあるし、何よりも彼の“眼”について教えてくれた人物の性格も多大に影響しているのだろう。
“あの人”はむしろそういうのとは対極に居る性格で、神の力よりも人の力を信条にしているように見えた。
少年も同じだ。「祈る時間があるならば行動をすればいいのに。」と。
だが同時にそれが愚か者か力ある者の発想である事も知っている。
自分は年齢的に言っても人生経験で言ってもペーペーだ。こんな発想を持ってしまうなんて自分は愚か者なのだろうと。
現を抜かしていた少年に横から声が掛けられる、見やれば確かこの教会の神父をしている男が立って居た。
同時にセイバーとかなり距離が開いている事に気が付いた。神父もどちらかと言えばセイバーの前に立って居ると言った風だ。
彼女はこの場に“居辛さ”と言う物は感じていないのだろう。セイバーの出自を考えればそれも当然の事か。
『貴方が監督役ですか。私がセイバー、そして彼が私のマスターである飛成です。』
自己紹介の必要は恐らくないであろう、何せ相手はこちらを特定した上で要請を送って来たのだ。
だがセイバーは名乗った。それは『友好的な人物との初対面に対し名乗るべきである』と言う至極当然の帰結による物であった。
『十騎、そんな数の英霊が召喚されていると?』
「もう2人も脱落してるのか。」
パートナーでありながら二人の反応は異なった。
サーヴァントはその数の異常さに驚き、マスターはまだ開始から月日も浅いのに既に2名も脱落者がいる事に驚いた。
だが両者共に共通の見解が二つあった。
“アヴェンジャー” “ビースト” “モンスター”。この内アヴェンジャーは既に脱落し、モンスターとは既に邂逅している。
残る『ビースト』と称されたクラス。これもエクストラクラスの一つなのだろう、“獣”と言う名からして大方の想像は出来る。
そしてもう一つ。上げられたクラスの中に“裁定者”が、ルーラーが存在していなかった事だ。
兎角はルーラーを『システムの様な物』と比喩していた、つまりサーヴァントとしての頭数には数えないと言う事だ。
「聖杯の調査!?調査って……聖杯って調査出来る様な物なのか?」
余りにも突拍子もない申し出に少年はたじろいだ。
それも当たり前だろう、少年達は何の為に戦っているのか。他でもないその聖杯を手に入れる為に命を賭けて戦っているのではないか。
その優勝商品を見て欲しいなんて余りにも不公平で危険だ。
何せ参加者の大半は喉から手が出る程に聖杯を欲している、それを目の前に晒されれば奪うと言う選択肢も十二分にある。
尤もセイバーの真意は不明であるが少年の方は其処まで聖杯を求めている訳では無かった。
だからか、少年の興味は聖杯と言う存在その物に集約していた。
聖杯とは杯と称されては居てもエーテル体の様に不確かで、物質ではなく存在として定義された物と言うイメージがあった。
安直であるが光の塊であるとか、そう言った抽象的な物であると。
だが兎角の言い分では現段階であっても調査出来る、即ち物質として確かに存在している物だと仮設できる。
『確かに。召喚された英霊が多いと言う事はそれだけ器である聖杯を満たすのに必要な魂が多いと言う事。
前例として七騎で十分であったのに突然十騎必要になったとなると妙な話だ。』
物事には理由がある。サーヴァントが多く召喚された事にも何か理由がある。
そしてサーヴァントの魂は聖杯に還る事を考えれば、聖杯に異常が起こっていると言う考察も馬鹿には為らない。
兎角の申し出に対し一騎と一人は顔を見合わせる。
仮にこの戦いに勝利したとしても聖杯が使い物にならない等と言う事になられては完全に無駄になってしまう。
聖杯の安全は何よりも重要な事だ。それこそこの聖杯戦争の根底が破壊されると言っていい。
そして――――― 自分達が求める聖杯と言う存在に対し好奇心とも言える興味がある。
頷きあう彼等は、兎角に向き直ると首を縦に振った。
95
:
丁嵐兎角&ルーラー
:2016/09/17(土) 19:30:35 ID:IzYCzDoE0
>>94
「正確には、聖杯の器、の調査だ。如何な物質であれ、"受け止める器"が必要だ。二騎のサーヴァントが脱落した今、それを確認する」
大凡あらゆる願いをかなえられるだけの魔力が、なみなみと注がれた器―――― それこそが、聖杯だ。
だが、それには形式上とは言え"杯"が必要だ。そして聖杯に"魂"が注がれた今、調査をするのならば少なくとも良い機会のうちの一つであろう。
確かに、聖杯を欲する者に、聖杯の調査を手伝え、というのは、間違いなく"危険"だ。それが、未だ未完成なものであったとしても。
だが、徹底的な素性の調査。そして、"ルーラー"の存在と、自己保身を優先する兎角の性質が、それを決断にまで導くこととなった。
「ついてこい。"聖杯"は―――― "下"にある」
彼らが頷いたのならば、兎角は彼らへと背を向けて、ゆっくりと教会の奥へと向かっていった。
幾つかの扉を開き、それから"下"への階段が見つけられる―――― 以前は孤児院として使われてもいたようだが、兎角が赴任した頃には、そこに面影は一切無かった。
更に幾つかの魔術的な防御が施された扉を解錠して、下へ、下へと進んでいく。
中途から、見るからに壁や階段、照明が、"真新しい"ものに変わっていくことだろう。ここ最近増設されたもの、ということはひと目で分かることだろう。
やがて、なんでもない一つの扉にたどり着く。それに手をかけて、兎角もまた、なんでもないように"扉を開いた"。
其の瞬間に、感じ取ることができるだろう―――― どれほど未熟な魔術師であろうとも、それが通常の"礼装の類"とはあまりにも比べ物にならないほどの。
「―――――――― これが聖杯だ。拍子抜けしたか?」
それは、本当に"黄金の杯"の形をしていた。
静かに、物言わず佇み続けるそれは、だが確かに、未完成とは言え、"大きな魔力を蓄えている"。
「第四次聖杯戦争までは、聖杯はもっと"別の"形をしていたらしい。どんなものかは、まあ、知らないが」
「これをこんな形にしたのはつい最近だ。全く、何の捻りもないし……」
「……心配して拍子抜けした」
少なくとも、"兎角"はそう聞いていた。以前はもっと、聖杯は別の形をしていたと。
それがどんなふうに作られたものなのかも、兎角には知らされていない。ともかく、兎角はそれを見つめていた。
見た目には、何かあるように見えない。以前来たときと、何も変わってはいない。兎角は大きく肩を落として、それから安堵のため息を吐いた。
―――――――――――― 聖杯は汚濁を孕んでいた、一つ目の"復讐者"を喰らったときから、大いに。
―――――――――――― 聖杯は汚濁を孕んでいた。二つの"復讐者"を喰らってから、急速に。
―――――――――――― 聖杯は、息を潜め続ける。静かに、その"泥"を流動させて。
96
:
飛成/セイバー
◆R7QnFcJZcI
:2016/09/18(日) 04:36:26 ID:Onu04ZIk0
>>95
少年は壁に手を付ながら、女性はちらりと地形を一瞥だけして階段を下りてゆく。
(何となく教会の地下には墓地があると思ってた。)
所謂カタコンベ、地下墓地と言う物だ。昔に観光番組で見た教会の地下にはそれがあった気がした。
ゴツゴツとした岩肌に天井から垂れる鍾乳石。
自然の洞窟を使った地下墓地の映像は正にファンタジーの世界と表現するべき光景で、幼心に一抹の恐怖と大いなる高揚感を感じた物だ。
……残念ながらこの教会にあるのはただの地下室であったが。
加えて今更魔術的な封印や施錠を見ても当たり前になってしまって高揚感を感じる事も無い。
そう思って居た。
ふと突然視界が開ける。理由はただ単純に周囲の壁が遠くなっただけである。
廊下を抜けて部屋に入った。漠然とであるが確実にそう感じられた。
同時に――――――――
目の前にあった “ それ ” から眼を放す事が出来なくなった。
少年の後ろに居た剣士もまた同じだった。数多の聖遺物を眼にしてきた彼女にとっても、それは過去感じた事も視た事も無い物体であったのだ。
これが “ 器である ” と言うことが信じられない。それだけの力を器だけで持って居た。
これ程の力がある器であれば水を入れただけでも極めて強力な聖水へと変貌するだろう。血を垂らすだけで万能の妙薬となるだろう。
聖杯戦争と言う行為の本質に戦慄すら感じる。
これに魂を、それも莫大なエネルギーを持った英雄の魂を複数収めようと言うのだ。
万能の願望機――――― 少年は信じていると口にしても、内心ではどうしても信じ切れなかった。
現物は圧倒的だ!
出来る。どんな願いでも。
確信させる力がそこにあったのだ。
手に取ろうと飛成が腕を伸ばした時、それを遮る様に別の腕が横から現れ、彼の腕を捉えた。
蒼い衣に白い袖を覗かせるその腕の指はすらりと細く、切りそろえられた爪は艶やかに橙色の証明を照り返している。
セイバーの物だ。
『飛成。私たちは聖杯に触れるべきでは無い。』
窘める彼女の表情は強かで、同時に力強さすら感じ得た。
切れ長の瞳に長い睫毛は憂いを帯びて張って居た。すらりと流れる鼻が荒く動く事も無く落ち着いていた。。
セイバーが聖杯を求める理由を彼は漠然とであるが知って居る。彼女は真剣だ、彼女の願いは彼女だけの物ではないのだから。
「……セイバー、どうかしたのか?」
そんな横顔をじっと見ていたからこそ、そこにある違和感にマスターは気づいた。
投げかけられた疑問符にはっと目を見開いた彼女は一瞬詰まると、言葉を選びながらその奇妙な感覚を口伝えした。
『いえ、何かこう……これで“合っている”のか、と思って……。』
合っている。合っているのだ。間違いなく、理論的には、動作的には極めて正常だろう。
だと言うのに、この聖杯からは自身の手にする一振りとは全く異なる力を感じるのだ。
彼女の佩剣の一つは数多在る聖剣の中でもある一点に於いて頂点に位置する。
王を選定する最強の聖剣であっても、親友が振るった絶世の一振りであっても、その一点に於いては決して敵わない。
それは尤も聖剣らしいと言える一点。彼女の剣は如何なる剣よりも―――――― 聖らか なのだ。
目の前にある杯も聖らかなる一品のはずであり、収まる英雄がどれだけ邪な意志を持って居ようが魂を純粋な力として還元する以上それが影響を及ぼす事はありえない。
ではこの違和感は何だ。
その回答を彼女は見出せない。儀式の影響で仕方なくそうなっている可能性もある。
故に彼女は口を噤むしかなかった。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板