したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

第五次聖杯戦争 本戦スレ

96飛成/セイバー ◆R7QnFcJZcI:2016/09/18(日) 04:36:26 ID:Onu04ZIk0
>>95
少年は壁に手を付ながら、女性はちらりと地形を一瞥だけして階段を下りてゆく。

(何となく教会の地下には墓地があると思ってた。)

所謂カタコンベ、地下墓地と言う物だ。昔に観光番組で見た教会の地下にはそれがあった気がした。
ゴツゴツとした岩肌に天井から垂れる鍾乳石。
自然の洞窟を使った地下墓地の映像は正にファンタジーの世界と表現するべき光景で、幼心に一抹の恐怖と大いなる高揚感を感じた物だ。
……残念ながらこの教会にあるのはただの地下室であったが。
加えて今更魔術的な封印や施錠を見ても当たり前になってしまって高揚感を感じる事も無い。

そう思って居た。

ふと突然視界が開ける。理由はただ単純に周囲の壁が遠くなっただけである。
廊下を抜けて部屋に入った。漠然とであるが確実にそう感じられた。

同時に―――――――― 

目の前にあった  “  それ  ”  から眼を放す事が出来なくなった。
少年の後ろに居た剣士もまた同じだった。数多の聖遺物を眼にしてきた彼女にとっても、それは過去感じた事も視た事も無い物体であったのだ。
これが “ 器である ” と言うことが信じられない。それだけの力を器だけで持って居た。
これ程の力がある器であれば水を入れただけでも極めて強力な聖水へと変貌するだろう。血を垂らすだけで万能の妙薬となるだろう。

聖杯戦争と言う行為の本質に戦慄すら感じる。
これに魂を、それも莫大なエネルギーを持った英雄の魂を複数収めようと言うのだ。
万能の願望機――――― 少年は信じていると口にしても、内心ではどうしても信じ切れなかった。

現物は圧倒的だ!

出来る。どんな願いでも。
確信させる力がそこにあったのだ。

手に取ろうと飛成が腕を伸ばした時、それを遮る様に別の腕が横から現れ、彼の腕を捉えた。
蒼い衣に白い袖を覗かせるその腕の指はすらりと細く、切りそろえられた爪は艶やかに橙色の証明を照り返している。
セイバーの物だ。

『飛成。私たちは聖杯に触れるべきでは無い。』

窘める彼女の表情は強かで、同時に力強さすら感じ得た。
切れ長の瞳に長い睫毛は憂いを帯びて張って居た。すらりと流れる鼻が荒く動く事も無く落ち着いていた。。
セイバーが聖杯を求める理由を彼は漠然とであるが知って居る。彼女は真剣だ、彼女の願いは彼女だけの物ではないのだから。

「……セイバー、どうかしたのか?」

そんな横顔をじっと見ていたからこそ、そこにある違和感にマスターは気づいた。
投げかけられた疑問符にはっと目を見開いた彼女は一瞬詰まると、言葉を選びながらその奇妙な感覚を口伝えした。

『いえ、何かこう……これで“合っている”のか、と思って……。』

合っている。合っているのだ。間違いなく、理論的には、動作的には極めて正常だろう。
だと言うのに、この聖杯からは自身の手にする一振りとは全く異なる力を感じるのだ。
彼女の佩剣の一つは数多在る聖剣の中でもある一点に於いて頂点に位置する。
王を選定する最強の聖剣であっても、親友が振るった絶世の一振りであっても、その一点に於いては決して敵わない。
それは尤も聖剣らしいと言える一点。彼女の剣は如何なる剣よりも―――――― 聖らか なのだ。

目の前にある杯も聖らかなる一品のはずであり、収まる英雄がどれだけ邪な意志を持って居ようが魂を純粋な力として還元する以上それが影響を及ぼす事はありえない。
ではこの違和感は何だ。

その回答を彼女は見出せない。儀式の影響で仕方なくそうなっている可能性もある。
故に彼女は口を噤むしかなかった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板