指揮、オケはかなり気に入りました。あまり重要ではない重唱などでは、少しはしょりすぎかなとも思いますが、それ以外はテンポ設定も僕の好みに近いものでした。オケも良くまとまっていて、4階席で聴いている分には、この作品に必要な覇気も十分感じられました。
歌手では、代役となったレイフェルクスが素晴らしかったです。声も良く飛んできました。次いでルカーチ。マッダレーナという役は、それなりに声力も要求される一方で、お嬢さんらしさもなければならない、なかなかの難役なんですね。少しヒステリックな感もありますが、声が出ていたという面では、十分でしょう。カール・タナーは……声を張り上げるところはそれなりに良いのですが、それ以外はどうでしょう? 他にいなかったのかな?
日本人勢では、坂本朱(ベルシ)と竹本節子(マデロン)の出来が良かったと思います。坂本は、http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/7336/1073887804/17-19でのアズチェーナでも素晴らしい歌でしたね。双方とも、出番は少ないのですが、印象に残りました。その他の歌手、たとえば密偵なんかは、ちょっとこの役の本来の重要性に比して、力量が足りない感があります。
「ある晴れた日に」、「祖国の敵」、「亡くなった母を」のアリアの後も、音は切らずにそのまま譜面通りに続けて演奏していました。第2幕後半、シェニエとマッダレーナの二重唱の「Fino alla morte insiem!」の後と、第3幕シェニエの「私は兵士だった」の詠唱の後は、間をあけていましたが、これは譜面がそうなっているからであって、指揮者や演出家があえてそうしたわけではないですね。あと第3幕、「5月の晴れた日のように」とマテューの「マルセイエーズ」の間も、低音弦のみになりますが、これももともとの譜面通りです。
幕切れの「シャキーン」の効果音、前回はちょっと困惑させられましたが、2回目で慣れたせいか、今回は「なかったこと」として聴くことができました。音が邪魔なことには変わりありませんが、何の前提もなく聴かされるよりは多少、事態は改善しました。気のせいでしょうが、タイミングをちょっと速めて、最後の一音のちょっと手前で鳴らすようにしたようにも聞こえました。
あと、cypress様のブログhttp://blog.livedoor.jp/cypress4560/に、「光りの使い方が出色」と書かれていたので、前回以上に注意するようにして観ていましたが、たしかに美しい。たとえば第1幕、「羊飼い」の小芝居のときは、全体が青い光りに包まれます。第2幕・第3幕は、暗い中に登場人物のみにスポットを当てる場面と、舞台全体を明るくする場面との対比が良かったです。「亡くなった母を」では、舞台サイドからマッダレーナとジェラールに光りが当てられていて、非常に効果的でした。第4幕、「五月の晴れた日のように」では、シェニエとルーシェが壁のすきまからの黄色い光りに照らされます。
最も美しかったのは、シェニエとマッダレーナの再開の場面。「壁のすきまから「/ \」の壁の右側が少し覗く」という仕組みですが、白い壁のほうは、下手にいくほど青が濃くなるグラデーションで、そこから除いている壁はまばゆいばかりに白く光っています。
じつはこの作品、僕の最も好きな場面は、シェニエとマッダレーナが再開する直前の、Maddalena「Benedico il destino! Benedico la morte!」、Gerard「O Maddalena, tu fai della morte la piu invidiata sorte! Salvarli! Da Robespierre Ancora!」というくだりです。上述のような美しい照明の中で、ジェラールが二人を救わんと必死の努力に向かうさまに、前回も今回も、涙を流さずにはいられませんでした。