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タクトの世界

181タクト:2008/04/25(金) 15:23:49
関西こてこて日記   第一夜
    4月16日「ぼくとオカンと玉子焼き」


オカンが緊急手術することになった。
ぼくは15日まで寄席の出番、その夜は上野でオペラ「エフゲニー・オネーギン」を見るので、それが終わって夜行格安バスで大阪まで行って、電車で病院がある明石まで帰ることにした。
オペラを見るまえに、上野の格安チケット屋でその日の大阪行きバスのチケットを六千円で買った。
あとでわかったが、もういまは東京ー大阪間は3,700円ぐらいから独立シートの格安バスがある。
ネットでも買えるし、企画バスも数社ある。
JRのドリーム号や私鉄会社が運営する夜行バスは八千円台だか、この企画バスはとにかく安い。しかもじゅうぶん寝れる。
しかし怪しい。
集合場所が路上で、JRや私鉄バスのような待合室もない。
大阪の集合場所なんか毎日新聞本社西横なんて、夜は殺人事件でも起きそうな妖しい場所だ。
こんな新興勢力が安さを売りにいっきに幅を利かせたから、寝台急行「銀河」が駆逐されてしまったのだろうな。

16日の朝六時に梅田に着き、電車で明石に行き、八時に県立がんセンターに着いた。
ぼく、この辺り、高校通うときにしょっちゅう自転車で通ったはずだけど、こんな立派な病院あったっけ?
オカンは前日に手術をしたので、集中治療室、ICUに放り込まれていた。
面会は十時からだが、東京から来た息子だと受付で言うと、ICUに通してくれた。
え、これが、オカン?
むちゃくちゃ小さいやん。
もう、がい骨みたいになってるやん…。
昨年の二月に滋賀の栗東で秋山和慶さんと一緒に仕事をしたあと、田舎に帰ってオカンと会った時はもっと元気やったのに。
オカンは起きていて、ぼくに気がついて、
「よう来てくれたなあ」
「だいじょうぶなん?」
若くてやさしそうな医者が近づいてきたので、ぼくは頭を下げた。
医者はオカンに、
「好田さん、ようがんばったなあ。なんか気になることはありますか」
「気になることは…、息子が結婚できんでねえ…」
アホか? その天然ボケぶりに、オカンはまだいけると確信した。

いったん外に出て、高校時代の一年先輩で同じチューバを吹いていた藤原さんの建材店に行った。
藤原さんは今も神戸フィルでチューバを吹いていて、全国の鉄道を常に完全制覇をし、種村直樹さんの本にもしばしば登場しているおもしろい人だ。
いつもぼくの顔を見ては、「はよ、売れ〜。出世返しや」と言いながら飯をおごってくれる。
「好田、何日間かおるん? あさって哲ちゃんと安留呼んどくわ」と、讃岐うどんの釜玉三人前をぼく一人のために作りながら言ってくれた。

病院に戻り、相部屋に戻されたオカンと再び面会した。
ぼくの記事のいくつかの新聞のコピーを見せると、
「これ、ほんまかいな。わたしを喜ばそうと細工したんちゃうか?」
そんなめんどくさいことするか! ペール・ギュントやあるまいし。
相部屋のほかの患者さんや看護婦さんがぼくのことを知っていた。
なんでもオカンが、ぼくの本や記事が出ている音楽雑誌をみんなに見せびらかしているらしい。
恥ずかしいこと、やめてくれよ〜。
ま、オカンがそれがうれしいのなら別にええけど。
2時ごろオカンが眠たそうにするので、「また、あす夜来るわ。それまで? 京都行って、お寺や仏像見てくるわ」
「それが目的ちゃうか?」
う〜ん、ちょっと当たっているかも。

「明石で一番うまい玉子焼き屋や。地元はみんなここで食う」という「ふなまち」に行った。
たこ焼きのことを明石では玉子焼きと言って、だし汁で食べる。たこ焼きよりもっとふんわり焼く。
その玉子焼き屋は魚の棚に集中しているのだが、このふなまちはもっと西で港寄り、材木町の岩屋神社の横、長林寺の斜め前にある。
看板もなく、ひっそりとのれんだけがかかっている。
こりゃ、わからんわ。
店内も八人も入ればいっぱいになるぐらい小さい。
しかし焼く方はすごく忙しそう。
電話と通りすがりの地元の人からひっきりなしに注文が殺到し、言われた時間に取りに来る。
店内には「追加注文お断り」。
でも店のおばさんたちは愛想がいい。
二十個で五百円。
安っ!
しかも、むちゃくちゃうまっ!!
いまはたいていの店は、十五個で五、六百円だし、大阪には十個で八百円の店もあった。
「ふなまち」は知る人ぞ知る史上最大の玉子焼き屋だ。

明石公園をぶらついていると、ピッチに妹から電話がかかってきた。
「今、どこにおるん? 三時になったら来てって言うたやん! 祐花が、げんきくんまだ?って五分おきに電話がかかってくるから仕事ができひん! すぐ行って! わたしも五時には仕事終えて会社出るから」
きょうから三日間、妹夫婦の家で泊まる。
オカンの部屋が寝場所だ。
しかし妹の子供二人がぼくを休ませない。
子供二人は「げんきくん」のビデオをずっと見せられて育ったため、げんきくんが来るのを今や遅しと待っているのだ。
神戸の妹夫婦のところに五時についたら、小学三年生になる祐花ちゃんが、思いっきり泣いて怒っていた。
「遅い!」

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