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1名無しさん:2018/08/25(土) 02:16:55
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2名無しさん:2018/08/25(土) 02:17:10
――水都、“ウェストボートブリッジ” 北東区画・海神Ⅵ 中央病院

本塔401号室、マルマルの体は静かにベッドの上に横たわっていた。

「田丸君…ごめん僕のせいで…」

吠與は呟く。そこには戦闘中の鬼気迫るホリキシカルな姿ではなく、容易く毟り取られてしまう雑草のようにくたびれた少年がいた。

不意に扉が開き、閉じた部屋に空気が入る。

「回々(もど)ったぞ、吠」

「あっ…」

739(ナサク)がするりと病室に入ってくる。

3名無しさん:2018/08/25(土) 02:17:34
「医者は…なんて、マルマルは助かるの!?」

「光風霽月(おちつ)け。まずはそれでも足食(くっ)ていろ」

鮸膠(にべ)も無く言い、739は売店で買ったであろう焼き菓子の入った袋を吠與へ押し付けた。

「で、だ マルマルの状態についてだが、医者に任せておけば間違いなく救世闡提(たす)かる。
 そんなに心配するな、マルマルは渇しても盗泉の水を飲まず(きじょう)だ。常人とはくぐった修羅場の数が違う」

739は自信があるようだ。確信を含めた表情で吠與に語る。

「是个(それにしても)…」

「この程度で済んで幸いだった、最近敵方の襲撃続きで空空漠漠(いそが)しかったとはいえ変わらず静功の鍛錬は万古不易(つづ)けているようだな」

4名無しさん:2018/08/25(土) 02:18:16

「この程度って…」

吠與は驚きだろうか、焦燥だろうか、はたまたあきらめだろうか、複雑な表情を浮かべ739の方を見た

「この程度だろうとも。もしお前に打(あ)たっていたら臓腑がジュースになった後全身が弾け飛んでいたぞ」

「吠、確かにお前は先の修行で以前とは比べ物にならないくらい強くなった。
私窩子乍(しかしながら)、だ あくまでこの修行は初歩に過ぎない
一字不説(ほんのさわり)だ。己のために四書五経(まな)ぶこと連なる山の如くに有る」

吠與は自らの苦艱ゲージが高まる様を口内の苦虫と共に眺めていた。
と同時にマルマルの打たれ強さについては気になっていた。常人が弾け飛ぶ一撃、一体どのように耐えて見せたのだろうか。

5名無しさん:2018/08/25(土) 02:18:45
そんな吠與の様子を見て739が口を開く

「『獅子転球』、静功における奇経八脈の一つ、衝脈。それを利用した防御技術らしい。
仔細はアイツが元気になったら提耳(き)くといい、流星光底長蛇(いいきかい)だ」

「…そうしてみる」

沈黙が流れる。吠與はこの間にでもマルマルが起き上がりいつものやかましい声を聞かせてくれはしないだろうかと思っていた。

「こうしていても夜に影を探すようなもの(きがめいる)だけだ。マルマルは俺が見ている、外に出て気分転換でもしてこい」

739に促されるままにフラフラと立ち上がり吠與は病室の外に出る。ここにいると罪悪感で押しつぶされるような感覚に陥るからであろうか。

6名無しさん:2018/08/25(土) 02:19:00
水都、“ウェストボートブリッジ”

水の都と言う名の通り海沿いに位置しておりまた河川も多く存在する。豊かな海の幸と河川を利用した水上庭園、

それらの活躍により国内有数の観光都市として人々に記憶されている。

ウェストボートブリッジ内でも最大の規模である中央病院では患者の精神的健康の向上のため敷地中に大規模な水上庭園を有していた。

吠與の足も多くの人と同様に壮麗な水上庭園へと自然に引き寄せられていた。

吠與は芝生に座り込みそれを眺める。噴水がおこすキラキラとしたしぶきと植えられている花々の芳香が吠與を迎えていた。

7名無しさん:2018/08/25(土) 02:19:53
「やぁまた会いましたね」

ふと声を掛けられる。視線を向けると杖をついた白髪の老人がそこに佇んでいた。

まるで見たことのない顔、聞いたことのない声だった。

「失礼ですが人違いではないですか…?」

誰だ?吠與は困惑しつつ老人の顔を見ながらもう一度自分の記憶の中で探していた。老人は見事な白髪、眉やひげまで真っ白だった。

「人違い?いやはやお恥ずかしい…年は取りたくないものですな。ところで吠與さん 此処、水都に来るのは初めてですかな?」

「え、ええ…まぁ」

8名無しさん:2018/08/25(土) 02:20:37
「ウェストボートブリッジにようこそチョップ」

「は?」

馬鹿轟音(バゴオォン)!

噴水が真っ二つに両断された音だ!周りに大理石の破片と目的を失った哀れな水流が飛び散る。

かろうじて横跳びで良反応(ダッジ)していた吠與は唖然とした表情で老人を見る。

目が合った。

このとき吠與は老人の目に尋常ではない情が込められていることに今更ながら気が付いた。


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