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少女たちの夜

1プルヒッター:2012/08/16(木) 19:36:52
人里はなれた真夏のペンションの物語。
そこで少女たちは様々な恐怖の夜に巻き込まれていく

299プルヒッター:2013/04/20(土) 20:59:00
上の298は間違いでした。
すみません、訂正です。

300プルヒッター:2013/04/21(日) 15:50:58
遅れてきた板野と大島たちも後からやって来た。
濡れた足下の扉は何を意味しているのか?柏木が問いただしてきた。

『私が見つけたんです』
大島と板野もそう頷くだけ。
『濡れた足下の水が気になるよねこの部屋』
『いかにも妖しそうな部屋ね』
大島、板野はそう不可思議そうに見る。
『秘密の研究所とか』
『怖いこと言わないでよさっしー』
指原の悪戯な言葉に高城はちょっと戸惑う。
『・・・ペンションの客室からちょっと離れた場所にこんな部屋があったとはね・・・いかにも私たちを
 どうぞって案内している振りね、どうするのたかみな』
前田もこの妖しげな部屋に興味を持ってしまったようだ、怖いことが嫌いな高橋はちょっと引き気味。

『ここペンションなのかな?本当に。
 いかにも妖怪屋敷に見えるのは私だけかな・・・ちょっとここがペンションだって疑わしくなってきたよ』
板野はそう信じ込むのが精一杯だ。
『前田さん、たかみなさん本当に行くべきでしょうか?
 私もちょっとこのペンションが妖しくなってきたみたいで、不思議なことが起こってばかりですし怖いですよ』
『あの連中の秘密を知るべく行かないわけにはいかないし、ここはたかみなが判断した方がいいんじゃない』
大島はそう言うと高橋は。

『言っておくけども、私怖いのとお化けだけは苦手だからね。
 優子が言うんであれば私は止めはしないけども・・・ちょっと私嫌だな』
ビビり気味の高橋に・・・渡辺が。
『ここの扉の鍵・・・鍵がかかってませんね』
『麻友・・・勝手に扉を開けちゃ』
高橋の言葉を無視し、勝手に扉を開けた渡辺・・・渡辺が部屋の中を覗くと彼女はウッと言った表情を出す。
嫌な部屋の臭いが充満した、カビくさいにおいが鼻にツーンと来る。
『カビくさいよ』
渡辺は一端部屋の外へと出た・・無理もないカビくさい中部屋にいては誰だって出ていってしまうものだ。
『麻友大丈夫?』
柏木はちょっと咳き込んで咽せている渡辺に声を掛ける。
『部屋の中に何かあったの?まゆゆ』
前田は問い掛けるが・・・渡辺が話すまで約1分かかったようだ。
『前田さん、自分の目で確かめてください』
嫌なものを見たのか自分の目で確かめた方がいいと渡辺が前田と高橋に言う。

301プルヒッター:2013/04/21(日) 15:59:08
渡辺に問い掛けてきた前田と高橋が部屋の中を覗いた。
やはり部屋の中はカビ臭さが残る嫌な臭いが鼻の中に残る・・・あまりここには居たくない気分だ。
2人は懐中電灯を部屋の中を舐めるように明かりを照らす。
『何この部屋?』
『カビ臭さだけじゃなく嫌な薬品の臭いも鼻につくよ』
部屋の中を見ると妖しげな人体模型の標本のようなものや・・・ガラス瓶に入っている動物の標本や色々なものが戸棚の中にある。

『秘密の実験室かな?』
高橋が戯けた表情を出す。
『でもここペンションなんでしょ?どうしてこんな部屋がおかしな実験室なのかしら?』
部屋の中を更に調べる2人。
その時だった。

背後のテーブルから見もよだつ大声を上げて来た男のような声が2人を襲った。

302プルヒッター:2013/04/21(日) 16:02:50
テーブルを大きく床に跳ね返す大きな音が2人の耳の中に響く。
『見たなー』
影の正体はペンションの従業員・・・いや狂気クラブのメンバーの一人荒井昭二。
『あなたは』
『荒井さん』
前田と高橋は荒井の狂気に満ちた目を見る・・・まるで何かにとりつかれたかのような動物の目をしている荒井。

303プルヒッター:2013/04/28(日) 16:37:33
よくよく考えてみると声を聞いたときには既に荒井の声ではない。
何かに取り憑かれたかのような悪魔の死霊のうめき声のような声だった。

『僕たちは・・・あなた達を許せません
 だから今ここで・・・・・・やられてください・・・・うおおおおおおお』
声を涸らしてまで荒井は高橋と前田に襲いかかってくる。
だが、相手側の声に圧倒されていて手出しも出来ない。
どうしよう、このままでは私たちが。
と、その時・・・秋元と宮沢が2人の前に立ちはだかった。
秋元が素早く襲いかかってくる荒井の腕を掴み、宮沢が相手の股間の股を蹴り上げる。

『うぐっ』
宮沢に蹴りを食らった荒井は一瞬呻く。

304プルヒッター:2013/04/28(日) 16:51:24
しかし蹴りを受けたままの荒井はまだ平気な顔だ。
急所を受けたにも関わらず彼は次に秋元と宮沢の方に攻撃を向ける。
『くっ、このー』
荒井は宮沢の小さい首に腕を掛けて壁際に追いつめた。
『は、離せ』
『さ、佐江』
秋元は宮沢を助けようとするが、荒井はこう言った』
『動くな、動くとこの人の命はありませんよ』
荒井は淡々と静かに言う。

305プルヒッター:2013/04/29(月) 14:13:40
『卑怯よ!!!!佐江を離せ』
秋元は荒井に荒々しい声を上げる。
しかし、荒井が宮澤を締め付ける腕の力は緩めるどころか腕の力を上げるばかり。
『あんた、それでも人間なの・・・』
『僕は、あなた達を許せない・・・只それだけのことです、ですからあなた達には僕たちの復讐を成し遂げなければならないんだ』

秋元は動けない・・・どうすればいいんだ。
攻撃不能の秋元に荒井は不敵な笑みを浮かべるのみ・・・このままでは佐江が。
と、その時。
部屋の外からパチンコ玉が飛び交わってきた。
柏木の援護射撃によって一瞬ひるみを見せる荒井。

306プルヒッター:2013/05/01(水) 22:51:57
『ゆきりん、ナイスフォロー』
柏木のフォローによって秋元の反撃。
ひるむ荒井は一瞬、宮澤は難なく相手から離れ押し倒す。

荒井の後ろ手に回り襟を掴む。
そして、秋元の背負い投げが巨体の荒井を投げ飛ばした。
宙に舞う荒井は大きな音とともに床に大の字となって倒れた。

307プルヒッター:2013/05/04(土) 12:58:16
皆は大の字に倒れている荒井をチラッと目を向ける。

『さて、相手をどうしようか』
高橋が荒井の後始末をどうするべきか考え込む。
『このまま野放しにするのはいけませんよたかみなさん、いつまた襲ってくると思うと怖いですから』
柏木は冷静にその言葉を発する。

『殺してしまいたいけども、とりあえず』
『そうよね、野放しにするのはいやだから何かで縛っておいてほっといておこう』
秋元と宮澤の言葉に皆は高橋と柏木は頷く。

『ねえ佐江ちゃん、この部屋のロープを使おう・・・そうすれば相手も身動きがとれないようだから』
『ゆきりんナイス』
高橋と秋元は一旦部屋から出て宮澤と柏木の2人で気絶して倒れている荒井の巨体にロープでグルグル巻きにした。
壁際の柱にロープでグルグル巻きにした荒井はまた襲ってくることもなく気絶したまま壁際の柱のところで気絶したまま。

308プルヒッター:2013/05/04(土) 13:04:09
『前田さん、麻友の言葉を覚えていませんか?
 自分の目でこの部屋を確かめてと言ってましたよね・・・前田さん入って調べてみましょう』

『そうだね、ちょっと怖いけども調べてみる価値があるわね』
『敦子、尻込みしている場合じゃないよこの部屋調べてみよう』
部屋を調べる前田と高橋・・・大人数じゃ中に入れないので。
秋元、宮澤、柏木、渡辺の6人で部屋の中を調べる。

309プルヒッター:2013/05/04(土) 13:11:08
2人は中を覗いただけで、部屋の中は全く調べることが出来なかったが。
高橋と前田の先頭で部屋の中を調べた。

カビ臭い匂いが鼻の奥まで付く・・・ここには長くいたくはない。
前田はそう思った。
『ねえたかみなこの部屋をみてなんか思わない』
『どうしたの敦子』
部屋を見ていると昔のことを思い出す前田、たしかにそうだ。
この部屋を見ていると小学校で見たものばかりだったからだ・・・人体模型や骨格の標本
理科の授業で使ったビーカーや試験管、丸形フラスコやいろいろな理科の授業で使った
ものばかり。

『あっちゃん何か見つかった?どうしたの急に立ち止まってさ』
宮澤は立ち止まっている前田を見てきょとんとする。
『あっちゃん、ほらほらボーッとしてないでさ・・・部屋の中探すの手伝ってよ』
せかす宮澤は前田に声を掛ける。
『・・・えっ、あっごめん佐江』

310プルヒッター:2013/05/04(土) 13:17:33
薄暗い部屋の中で探索を始める6人。

『何も無いか・・・もうここまで来て証拠も無く帰るのだけは勘弁してよ』
高橋がちょっと愚痴る、秋元はまだ調べていない真ん中の机を調べてみた。
『たかみな、ここはまだ調べていないないよね・・・この真ん中の机調べてみた?』
秋元は目の前にある机に目を向けた・・・しかし机の引き出しは鍵がかかって居るせいか開かない。

『どうしよう、机の引き出しが開かないんじゃしらべようがないよ』
『お手上げ状態だね・・・全く』
宮澤と秋元は半ば諦めていた時。

311プルヒッター:2013/05/04(土) 13:27:18
『これを使ってみましょうよ』
柏木がどこからか持ってきたのか?さび付いた小さい鍵を皆に見せる。

312プルヒッター:2013/05/04(土) 13:32:34
『ゆきりん、そのさび付いた鍵どこで拾ったの?』
『佐江ちゃん今は詮索よりもこの机の引き出しを探るのが先・・・論より証拠』
宮澤は不思議そうに言う・・・その鍵は一体どこで拾ったのかを問いただそうとしたが。
今はこの机の中身を調べるのが先だった。

『ところでさその小さい鍵どこで拾ったの』
秋元も答えるが柏木は言葉を発しない・・・彼女は全く耳を貸さない。
『ゆきりん』
渡辺も声を掛けづらい状態だ・・・目の前の机の引き出しによほど集中したいのだろうか?
耳も貸さない。

313プルヒッター:2013/05/04(土) 13:38:33
さびた小さい鍵に鍵穴をはめる。
はまった・・・どうやらここの机の引き出しの鍵のようであることは間違いない。

『まあまあここはゆきりんにまかせてみよう・・・新しい発見があるかもしれないし』
『そうね』
高橋の言葉に諭された宮澤はそれに従う。
『ゆきりん、何かあったの?』
引き出しの中を探る柏木。

『前田さん、たかみなさん』
引き出しの中を見ていると柏木はちょっとビクッとした。

314プルヒッター:2013/05/05(日) 13:33:39
柏木は机の引き出しの中からファイルの一冊を前田と高橋に見せた。
『なに、このファイル』
『動物のようなおかしな奇妙な怪物のようなおかしな生物が多いよ』
『不気味』

皆はそれぞれ口を合わせて言い合う。
確かにファイルには見たことのない奇妙な怪物やら生物やら日本では見たこともない
ものばかりだ。

『ねえ、前田さんたかみなさん覚えてますか?』
『何ゆきりん』
高橋が柏木に問い掛けてくる。

315プルヒッター:2013/05/05(日) 13:38:12
『あのピアノホールの地下洞窟の研究所のことを』
そういえば、ピアノホールの地下洞窟の研究室のことを今になって思い出した。
色んな事があって忘れていたからその存在のことをすっかりと消えかかっていた。

そう、全てはあのおかしな地下洞窟の出来事から始まりだったんだ。
私たちあの妙な白い服を着た集団に妙な薬のような霧に包まれて
ペンションの大食堂へ捕らわれてた。


あの日野たちに捕らわれて以来。

316プルヒッター:2013/05/05(日) 13:43:45
日野はきっと私たちに復讐するためにきっとどこかで見ているに違いない。
恐ろしい男だあの日野って男は。
おそらくあのペンションにいた新堂たちも彼の手足となって動いているんだ。


彼は私たちをきっと踏みにじるためにやって来る。
このファイルもきっと何かの役に立ちそうだ持っていった方がいい。
高橋はその机の引き出しのファイルを持っていくと決めた。
もちろん誰も文句は言うメンバーは居なかった・・・同然だろう。


『みなみ、何か見つかったの?』
篠田がしびれを切らし部屋の中へと入る。
『あっ麻里子さま、この部屋の机の中にあったファイルを見つけただけなんだ。
 他にこれ以上のものは何も無かった。』
『そのファイルは一体』
『おそらくあの相手が記したものに違いないわ』

高橋がそう言い終えると篠田は「ふーん」とした表情を浮かべた。

317プルヒッター:2013/05/05(日) 13:50:12
『このカビ臭さにこんな部屋が存在したなんて』
篠田は信じられない表情だ。

『ここってペンションでしょ、なんでこんな場所に小学校のような
 実験室みたいなところが存在するわけ?もう信じられないよ・・・ペンションっていう代物じゃない』
前田と高橋とそれに皆も同じような複雑な気持ちだ。
たしかに麻里子さまのいうのもごもっとも・・・こんな山里離れた場所のペンションに
こんな変な実験室があるのも不気味だ。

幽霊?
いや、お化けか?そんなことはない。
現にペンションなのにそんなものが存在するのだろうか?
高橋は嫌な想像を頭の中から振り切った。

318プルヒッター:2013/05/05(日) 13:55:35
『それにしても呆れるほど恐ろしい場所だ。
 こんなペンション初めて聞いたよ・・・怖いくらいだ』
宮澤はこのペンションに不気味さをますます覚えてしまった。

『とにかくこの部屋から離れよう。
 人質と一緒に居たんじゃたまんないからさ・・いつ襲われるんじゃこっちが怖いよ』
秋元の言葉に皆賛成した。
部屋を出ていこうとした途端、高橋の持っているファイルの間から一枚の写真が
床に落ちた。
高橋は床に落ちた写真を拾い上げる。

319プルヒッター:2013/05/05(日) 14:00:09
その一枚の写真を拾い上げると前田も高橋の隣にたってのぞき見る。

『たかみなこの写真どこから?』
『ファイルの間に挟まっていたんだ』
高橋は写真を見た。
素顔はよく見えないが・・・・女性の後ろ姿があった。
髪はロングヘアーの黒髪で白衣を着ていた少女?
いや・・・もっと大人のような姿をしていたのか?よくわからない。

『このペンションの人かな?』
『解らないよ、素顔がまるでよく見えないから正体がわからない』

320プルヒッター:2013/05/05(日) 14:03:48
『前田さん、この人の写真の姿に何か持っていますよ』
渡辺が写真の姿にある何かに気が付く。
『まゆゆ、何かに気づいたの?』
『この人の持っている花、さっき私たちが見た黄色い花と同じ
 形してませんか?なんとなく私には見えるんですよ』
そう、写真の左手にはしっかりと黄色い花を握っていた・・・これは、弟切草。

『弟切草だ』

321プルヒッター:2013/05/05(日) 14:11:25
『この人、一体誰に復讐するっていうんだ?』
『復讐ってそんなの知らないよ』
秋元と宮澤は口々に揃って言う。

『そんな復讐っていったって誰に復讐するって言うんですか?
 私たち何にもしていないのこわいこと言わないでよ2人とも』
つい弱気な指原の言葉に秋元と宮澤はちょっとムッとした顔をする。
『さっしー、さっきも言ってたけども相手は私たちに復讐するためにきっと
 相手も私たちの事を恐れているんだ、それなのに急に弱気になるような事言うな』
秋元のキツい言葉に指原もちょっと退く

『まだ解らないの?
 さっしーはいつも鈍いんだから、この写真の人はきっとあの日記に書いてあった狂気クラブのメンバーに
 復讐するためにあるものだと思う』
北原が淡々という。

322プルヒッター:2013/05/05(日) 15:50:26
『北原、どうしてそんなことが解るの?』
『ほら私たちがさっき談話室で見つけたあのノートよ
 私たちをどうやら復讐するためにあのノートに記されたものなんだから』

北原は得意げに言う。
指原もようやくその言葉に納得したようだ・・・あのノートの事に気づいたようだ。

323プルヒッター:2013/05/05(日) 15:54:37
『里英ちゃんの言う通りだよ。
 たぶんあのノートはきっと私たちの陥れるためのワナだと思うの』
篠田もどうやら気づいているようだ。
『そんなふうに誰が一体』
峯岸も篠田に問いただす。

『おそらく、あの狂気メンバーって連中は・・・私たちのAKBに関係しているんじゃないかって』
『どうしてなの麻里子?そんなことわかるのよ』
『それは・・・』
峯岸が答えると同時に篠田はちょっと考え込んでしまった。
おそらく言葉に詰まったのだろう、これ以上詮索するのはかえって解らなかったようだ。
峯岸はあえて止めた。

324プルヒッター:2013/05/05(日) 15:57:04
『あの後ろ姿の女の写真の姿も私たちのことに関係しているんだろうか?』
高橋はちょっと解らなかったからだ。

『でもさ、どうして私たちだけじゃなくこの人も復讐を考えているんでしょうか』
いち早く写真の事に気づいた渡辺もまた解らずじまいの顔をしている。

325プルヒッター:2013/05/05(日) 15:59:40
『さあ・・・』
高橋はうーんと唸りながら顔を横にひねる。

他にこのカビ臭い部屋を調べてみたが全くの収穫はなかったようだ。
諦めてこの部屋を一同は後にした。
結局、一同は最初にいた玄関ロビーの談話室へと逆戻りした。

326プルヒッター:2013/05/05(日) 16:03:31
ペンションの外は相変わらず雨や風が強く、止む気配すらない。
外も辺りは全くの闇の中。
ひとまず談話室のソファーに腰を落とす17人。

『あれっ麻里子は』
前田は篠田が居ないことに気が付く。
『自分の部屋に一旦戻るって言ってた』
高橋はそう言った。
『そういえば麻里子、携帯電話のバッテリーが無くなったって一旦部屋に戻ったけど』
秋元もそう問い出す。

327プルヒッター:2013/05/05(日) 16:09:46
『そろそろ戻ってくる頃だと思うけど』
『そうね、部屋に戻って行ったきりにしては随分遅いよね』
小嶋と大島も篠田が部屋に戻っていったきりにしては随分遅いと思ったからだ。
そういえば、篠田と共に部屋に泊まった小嶋もちょっとソワソワしていたのが気になる。

『どうしたんですか小嶋さん、ついさっきからずっとソワソワしてて落ち着かんとですか』
心配をよそに横山が小嶋のそばに声を掛ける。
『私ちょっと見てくる、麻里ちゃんきっと怖くて迷っているんだわ』
『そうね、いくらなんでも部屋に行って帰ってきてもいいんだけどもいくら何でも遅すぎるよね』


小嶋と大島は何だか胸騒ぎがしたからだ。

328プルヒッター:2013/05/05(日) 16:24:45
小嶋と大島が篠田の居た部屋に行こうとしたとき突然。

『ちょっと待って』
前田が突然声を上げた。
『あのさ、さっきあの荒井ってひと死んでたハズじゃなかったっけ』
『それがどうしたのあっちゃん』
『あーっそういえば、あの荒井という人物はさ調理場で誰かに殺されたんじゃ』

秋元はふと思い出した。
『そういえば、私たちがさっき見たあの荒井は誰なの?』
『麻里子とみいちゃんと私で調理室で発見されたとこまでは覚えているんだ』
確かにペンションにいたあの荒井は死んだハズ。
なのに・・・どうして生きているんだ?

329プルヒッター:2013/05/08(水) 16:35:47
静かな談話室がまたしても大きな沈黙を包む。
そう、確かにあの荒井は何者によって殺害されたはずだ。

なのになんであの場所で生きていたんだろうか?謎が謎を呼ぶ少女たちの頭の中は
グチャグチャ状態。
あの調理場で殺害された荒井は一体何者なのか?
それとも初めから人間ではなかったのか?

秋元と峯岸はまったく雲をつかめない状態になっている。
そういえば、荒井の死体を見たのは篠田も目撃者の一人だ。
ひょっとしたら。

330プルヒッター:2013/05/08(水) 16:52:12
『にゃんにゃん、優子、私も連れてってほしい
 みいちゃんと私と・・・それに麻里子もあの荒井を見たんだから、麻里子にもし何かあったら』
秋元は小嶋と大島にそう直訴する。

『・・・・・わかったよ、才加
 私も麻里ちゃんが急に心配で・・・もしかしたらもう。』
小嶋も一刻も早く篠田のいた部屋に戻ると決心したからだ、妙な胸騒ぎを覚えたからなのだろう。

『あっちゃん、たかみな、ともちん・・・それにみんなここを動かないで。
 今一人で行動したら危険だからさ・・・・それに麻里ちゃんも身の危険が迫っている
 って事を私もびんびん感じるんだ』
大島の言葉に前田と高橋と板野は大きく頷いた。

『私も、麻里子はああいって強がっているんだけども、本当は人一倍恐がりな子だって』
峯岸もその言葉に一同はそう頷いた。

『みいちゃん、麻里子の事頼むね』
『うんっあっちゃん』
前田は峯岸にお願いを託した。
こうして小嶋、大島、秋元、峯岸の4人で篠田が戻った部屋へ2階の階段を上った。

階段を一段一段上がるたびに嫌な音が足下に響くのが解る。
嫌な音だ・・・この音を聞くたびに大島たちは嫌な気分を覚える。
階段を上り2階の客室の廊下の前に立つ4人。
2階は1階と違って薄暗いままだ。
何度この嫌な薄暗い廊下の先を歩いてきたんだろうと4人はそんな嫌気を覚える。
こうなったら篠田を捜すまで私たち諦めない、4人はそう誓ったからだ。

何度も歩いていって皆が泊まった客室のドアがある。
『ここね』
篠田の部屋の前にたどり着く4人。
ドンドンと客室のドアの扉を叩く秋元。
・・・しかし部屋からは何の反応も無い、嫌に静かだ。

331プルヒッター:2013/05/08(水) 16:59:20
まさか!!
この部屋で何か起こったのでは?急いでドアのノブを回す秋元。
しかし。

『駄目だ・・・ドアが開かない、何でだよ』
秋元の苛立った口調が2階の空間を包んだ。
『まさか、麻里子自信が鍵を掛けたんじゃ』
峯岸は嫌な予感を覚える。

『そんな、絶対にあり得ないよ麻里子に限って・・・携帯電話のバッテリーを取るだけで』
大島は慌てふためくように言う。
『麻里ちゃん、開けて皆が来たよ、ここを開けて』
小嶋も懸命に声を掛けるがやはり反応はまったく返ってこない・・・どうしよう。

『駄目だ、こうなったら皆でドアをぶち破るんだ』
扉が開かないと知った以上、ドアをぶち破るしかないと秋元はそう考えた。
4人の体当たりでドアを、2度、3度。

ようやく扉が開いた。

332プルヒッター:2013/05/09(木) 17:26:41
『麻里子!!!』
秋元が最初に部屋へと踏み込んだ。
篠田は・・・・ベッドの端のところで倒れていた。

『麻里ちゃん』
小嶋は手に唇を当てながらそう叫ぶのがやっとだった。
大島、峯岸も篠田の安否を心配しそうな目をする。

333プルヒッター:2013/05/09(木) 17:30:54
しかし篠田は目を開けない。
以前倒れたままで動かない。もしかしたら?
誰かがこの部屋にやって来て待ち伏せして攻撃をしたのか。

皆の顔が絶望の色へと変わる。
そんな。
麻里子がやられたなんて・・・
と、その時。

『ううっ!!』
倒れている篠田が呻きながら起きあがろうとした。
『麻里子、大丈夫?』
『しっかりして』
秋元と峯岸がしっかりと篠田の体を支えながら抱く。

334プルヒッター:2013/05/09(木) 17:34:26
大島と小嶋は心配そうな目で篠田の顔を見る。

『良かった〜心配してたのよ』
小嶋は心配をよそに泣きそうな顔をしながら言う。
『麻里子、大丈夫?
 怪我とかしてない・・・一体何が起こったって言うの?突然倒れたままだったから私もう駄目かと思って』
大島も篠田の事を心配しそうに言った。

『ごめん皆、心配掛けちゃって。』
篠田は心配していた皆に迷惑を掛けないように皆に謝った。

335プルヒッター:2013/05/09(木) 17:42:10
『私、一人で部屋へ携帯電話のバッテリーが切れたから部屋へと戻ったんだ。
 そして、部屋の中で捜し物をしている途端・・突然』
篠田は淡々と言う。
『誰かに閉じこめられて襲われたの?』
小嶋はそう言うが、篠田は首を横に振ってこういった。

『違うの、突然ペンションの窓から妖しげな人影がでて。
 それを見た途端私は叫びを挙げる暇もなく気絶したのよ、でも』
篠田は更に言う。

336プルヒッター:2013/05/09(木) 17:46:30
『ここってペンションの2階よ。
 だいいち人影が私のことを見て襲いかかってくるなんてあり得ない』
ちょっと取り乱したようにいう篠田。

『そう言えば。』
大島はふと横山の言葉を思い出した。
『横山も2階の窓の外で人影をチラッと見たって昨日言っていたのを覚えている
 確かに横山がそう言っていたんだ、でもさ横山以外にもその妖しい人影を見るなんてさ
 これは、ちょっと異常だよ・・・ましてやさここ2階なのに』


その通りだ
確かにここはペンションの2階、背が高い人間でも2階から見るのは到底不可能な話。
また別の人間がやって来て私たちに復讐をするんじゃないかと。

337プルヒッター:2013/05/09(木) 17:50:26
『ああ怖かった。
 そう言えばゆいはんも言っていたよ、あの妖しい人影を見たときにおかしな匂いを嗅意だ』
『その匂いって・・・まさか』
秋元は戦慄の恐怖を覚えたかのように怯えながら言った。

『うんゆいはんと同じ・・・血の匂いだった』
なんて事だ、ここにも横山と同じ目撃者がいたとは。
あの妙な血の匂いを残していったまま謎の影の正体がまた存在したとは。
これはひょっとして、私たちを教えるための警告の知らせなのか、いや解らない。

338プルヒッター:2013/05/09(木) 17:54:33
『他に襲われた相手は居ないの?』
峯岸は誰かに襲われたのか篠田に言う。
しかし、他に隠れる場所がいそうな人影は誰もいなかった。
どうして鍵がかかっていたのだろうか?
おそらくこの謎の存在がやって来て鍵を掛けたのだろうか?

『襲われた人物は居ないよ。
 とにかく私が部屋から出ようとしたとき鍵がかかっていた、部屋にはいるまでは鍵を開けていたのに』
まだ恐怖から落ち着きを見せていないのだろうか?
ひとまず部屋へと出た5人。
とりあえずここにいては怖さが増すばかりなので、ひとまず前田たちがいる1階の談話室へと戻った。

339プルヒッター:2013/05/09(木) 17:59:41
『ええっ!!!!それ本当の話』
談話室に戻って突然篠田が大声を上げて言う。
皆は口を出さず頷くのが精一杯だったようだ。

『確かにあの荒井って人は何者かによって殺されたところを
 私とみいちゃんと才加の3人で調理場で目撃したのを覚えているわ、でも』
『2階の外れのある部屋ではあの荒井は目撃したんですよね。』
柏木も妖しいとにらんでいるようだ。
どうして昨日までいた従業員が、いや狂気クラブのメンバーが殺されていてあのまま生き返った?
ゾンビでも無い限り、襲っては気はしないからなのだろうか?

340プルヒッター:2013/05/09(木) 18:02:34
『馬鹿な
 死んだはずの相手が私たちを襲って来るなんて、おかしいよ・・・ゲームの話じゃあるまいし』
板野はちょっと混乱気味だ。

『そうよね、ゾンビじゃあるまいし・・・そうなったら私たちもゾンビになっているよ』

341プルヒッター:2013/05/12(日) 15:00:06
『ねえ皆、先ほど例の実験室の部屋に行ったときに妖しげなファイルを持っていったのを覚えてる』
柏木がふと思い出したようにいう、確かに例の部屋に行ったときおかしなファイルを持った。

このファイルには様々な植物やらおかしな人物のような物が記されていた。
あの荒井って人物はもしかしたら。

『なんか不気味ね』
『このペンション自体がまるで生き物のように動いているみたい』
倉持と高城は不気味さを覚えるかのように口々と言った。
そうなんだ、ここは本当にペンションなのだろうか?
なんか誰かに見られていて不思議じゃないと皆そう思ったからだ。

342プルヒッター:2013/05/12(日) 15:04:25
だがペンションには監視カメラすら一つもついてはいない。

『そう、おまえたちは俺たちをつけているんだ』
突如談話室の背後からどす黒い声をした男が現れた。
この声は聞き覚えがある、日野だ。

いや、日野だけじゃない・・・福沢、岩下の姿もそこにあった。
『日野!!!』
前田が唇をふるわせながら言った。
『やっぱりあなたの仕業だったのね』
高橋も続く。

343プルヒッター:2013/05/12(日) 15:07:55
日野は腕を組んだまま立っていた。
大島は日野の顔を目で睨んだ。
板野も負けじと日野たちの方を睨む。

『私たちを復讐するためにここへ連れてきたわけ、そしてここに来て招待状を書いたのはあなたなのね』
大島は淡々に言ったが、日野は全く動じない。
『それに、秋元先生の事も知っていてここに来た訳なの』
板野は強気な口調で日野に言う。

344プルヒッター:2013/05/12(日) 15:10:53
『・・・・・・そうよ、俺たちは秋元康に頼んでおまえたちに招待状を書いた
 まんまと引っかかったのはおまえたちの方さ、おめでたい奴らだぜ』
それだけ言うと日野は口を手で隠しながらククッと小さく笑う。
岩下と福沢もにやりとした表情で不気味な小さい笑みを浮かべ、少女たちに視線を送った。

345プルヒッター:2013/05/12(日) 16:49:22
『やっぱり』
高橋は全てを悟ったかのようにやっと気づいたようだ。
前田、大島、板野もようやくそれに気づくのが精一杯だった

『おまえたちはこれから俺たちの手によって復讐される。
 どうだ、こんな嬉しいサプライズはないだろう、俺はこの日を境にここまで来たって事をね』
嬉しいサプライズだって。
私たちを襲ってのサプライズだと・・・冗談じゃないわ。
こんなサプライズは間違っている、こいつらは私たちの復讐のことで頭がいっぱいなんだ。
だからこんな奴らにサプライズの言葉を使うのは間違っている。

346プルヒッター:2013/05/12(日) 16:55:14
『冗談じゃないわ。
 私たちは今日までここに来たんだ、だからあなた達に復讐されるのは間違っている』
前田は怒りにまかせての大声を上げる。
『そうよ・・・敦子の言うとおりだわ、私たちは仲間よ
 ここまで来て復讐されるのはゴメンだわ、あんたたちのいいなりにはならないわ・・・それにあたしたちは
 絶対諦めないのよ!!!!』
板野も負けじと大声を上げながら日野たちを威嚇する。

『威勢がいいのは解った、しかしなそれだけでは俺たちには勝てないぜ。
 おまえたちがここまで来たのは正直驚いたぜ、新堂、風間、細田がやられたのは以外だがな』
日野は戦慄の言葉を言うように淡々と言ってくる。
一つ一つの言葉が彼女たちの胸の中にズシッと重くのしかかる。

347プルヒッター:2013/05/12(日) 16:57:55
言葉では言い表せない恐怖を覚える17人の少女たち。
だから余計なプレッシャーが少女たちの頭の中のよぎる形だ。
この男は・・・何をしでかすか解らない。
いわばこの男は相手がどうなってもいいとも思えない、なんて性格だ。

348プルヒッター:2013/05/12(日) 19:11:58
『前田、高橋、大島、そして板野。
 おまえたちだけで来い・・・そして他の奴らはここで待機していろ。
 もし変なことがあったらこの4人の命だけは無いと思え』
日野はそう宣言し、皆は福沢と岩下によってロープで手を縛られ身動きが出来ない。
彼女たちもまた身の危険が迫る。
ここから先は4人だけしかいけない秘密の場所なのだろうか?
前田は密かにそう考えたのだ。

あとの皆は残すと言い出した日野。
ああ、麻里子、にゃんにゃん、麻友、ゆきりん・・・私たちのことは大丈夫。
だからきっと帰ってくるから。
4人は日野に着いてこられペンションの奥へと足を向けた。

いよいよ最後の時が来たのか?
少女たちと狂気メンバーの最後の対決の時が来る。

349プルヒッター:2013/05/14(火) 17:40:36
歩き続けて何分かたった頃。
前田、大島、板野、高橋の4人は狂気メンバーのリーダー『日野貞夫』に
連れられてペンションの奥深くの廊下へと連れられた。
一体どこまで歩くつもりなんだ。
一体私たちはどうなるのだろうか?はっきりいってそれはわからない。

ただここまで私たちを連れてくのは相手側はよほどの自信がある。
こんな不毛なことはもう嫌だ、早く終わらせたい。
前田はそう願うのが精一杯だ、ほかの3人も表情がさえないままペンションの暗闇の廊下を歩き続ける。
焦ったらこっちの不利となる。
なんとかしてこっちの機転を利かせる逆転劇はないのか?
まだAKBとしてやることがいっぱいあるんだから。

350プルヒッター:2013/05/14(火) 18:20:12
ようやく日野の足が停まった。
ペンションの談話室から離れて役数分。

『ふっ、おまえたちよくここまでやって来たな褒めてやるぜ』
日野は口を滑らかにするように言う。
日野と一緒に居る岩下と福沢の女2人も不気味な笑みを浮かべる。
『あなた達は私たちの生け贄となるのよ』
岩下の笑みがますます不気味に見えるのが増した、この女はあの篠田と小嶋には無い恐ろしい色気の力があった。
生贄っていったい何のことだ。

私たちが生贄されるなんて、何かの間違いだわ。
『生贄されるってどういう事なの、おしえて日野』
『そうよ、わたしたちはあなたにも会ったことがないし、それに顔も覚えていない』
『顔も見るのも初めてだわ』
『冗談じゃないわ、生贄なんかされたくない、されるのはそっちよ』
4人はそれぞれ間違った事には納得できず口それぞれ言い出す。
4人の言葉を全く微動だにしていないのだろうか、日野貞夫はまったく動じない。
岩下と福沢も同じだ、このメンバーには血も涙も無いのか?
いや、むしろこのメンバーは楽しんでいる、殺戮という言葉に侵されながら楽しんでいるんだ。
我々のことを玩具のようにして。

『まだわからねえのか!!
 おまえたちは俺たちに反して逆らったものなんだ!!!それを間違ったことを
 俺は何一つも言っていない、おまえたちはこれから俺たちの手で生贄の少女となるんだ。
 フフフッこんな凄いサプライズは無いぜ。
 だからおまえたちは俺たちに復讐されるんだ、どうだ楽しいだろう』
『私はあなた達の事なんかこれっぽっちも考えてないのよ
 だから私たちはとばされた、あなた達や秋元康、それに支配人の戸賀崎にも見捨てられた
 それから私たちは世間の目にも冷たかったわ、わかる!!!!』
日野と岩下の喋りの口調が荒々しいように闇の廊下へと響く。
痛々しいくらいの声が耳の中まで大きく響く、悲痛な叫びとは裏腹に何か恨みも混じっていたようだ。

『そうよ、私たちはあなた達に見捨てられた哀れな人なの。
 これから私たちはあなた達にひれ伏すの、敦子ちゃん・・・かわいそうだけども
 ここでやられてちょうだい、我が狂気メンバーのためにも』
幼く見えた福沢も口調の喋りはどこか恐ろしさを感じる。

『・・・・・・そうはさせないわ。
 敦子たちはそう簡単にはやられはしない、あなた達が私たちを恨もうとしてもね。
 こっちはそんな権限はないわ、だいたい私はあなた達のことなんか覚えもない、認識もない。
 だからこっちが復讐されるのはおかしいわ。』
高橋も負けじと狂気メンバーの3人に食ってかかんばかりの口調で言う。
『たかみなの言うとおりだ。
 こっちはねどれだけ多くの人に認められるまでかなりの多くの時間と労力と体力を使った。
 それなのに、こうまで言った以上私は許さない。
 それにあなたたちがどれだけ頑張っても所詮私たちには勝てない、そのことがまだ解らないの』
『勝手なことばかり言って、私も大きな挫折の繰り返した。
 泣きながらも這いつくばってここまで来たんだ、だから私たちは何を言われても怖くないんだ。
 勝手な妄想をふくらませたのはあんたたちじゃない、そんなの横暴だわ』
高橋、大島、板野の3人の容赦ない言葉が日野と2人の胸に大きく突き刺さる。

『言いたいことはそれだけか!!!』
突然日野が静かに言った。
『何よ、まだいい足りないわけ日野』
高橋も負けじと言い出す。

『俺たちはな!!!おまえらが憎かった・・・俺はおまえたちの最初に選ばれるべきの人間だった。
 覚えているだろうか・・・あの組閣の時を』
そのとき前田たちはあの組閣の発表の時を思い出した。
確か、あの時の日本武道館で起きた何年か前に起きた劇場支配人、戸賀崎さんの発表があった。
私たちもその言葉にビクビクしていた。
この時、日野たちの顔はよく見ていなかった、いや見なかったのかもしれない。
そんななか岩下と福沢の顔が異様な引きつった表情を浮かべる。
岩下は声にならないくらいの叫び声を挙げようとするが、怖くて挙げようとしない。
福沢も同じだ。
やがて静かに大きな静寂にまた包まれた。

『おまえたちは覚えていないだろうか。
 俺たちはかつてここのAKBのスタッフだった、いやかつては時期劇場支配人にも選ばれる
 人材だったんだ。
 それをあの男が俺や岩下と福沢の事を』
あの男?
秋元康のことだろう・・・日野は淡々と言った。
そう、あれは4年前の真夏の日本武道館のコンサートが最高潮に達したまでの時間に遡った。

351プルヒッター:2013/05/14(火) 18:26:19
4年前の真夏の暑い都心。
AKB48のコンサートが行われた最中だった。

『ねえ今度のコンサートってさなんか緊張するわよね』
『本当、私たちこのAKBに居られただけでも幸せに思わなくちゃ駄目よ』
この姿は・・・岩下ともう一人は謎の女性?
『ねえ、岩下さん。
 最後の振り付けの動きのターン、教えてくれないかな?』
この福沢ももしや。

352プルヒッター:2013/05/14(火) 22:08:25
『ここはこうして、ああそうそう』
岩下は福沢にターンの練習を教える。
そして、岩下と福沢と一緒にいた謎の少女、他の2人とはうって違って大人の色気のイメージをも感じる人物。

『そうじゃないそうじゃないよ2人とも』
楽屋で見ていた少女は岩下と福沢のところにやって来てレッスンをする。
『ごめんなさい、私ちょっとステップを間違って』
『いいよいいよ、それよりもさ今の切れのターンをさもうちょっとこうして・・・』
少女はそういった。

少女の名は神崎麗未(うるみ)という人物である。
AKBにはいってから当初大きなカリスマ性を持つ少女だったらしい。

353プルヒッター:2013/05/16(木) 16:09:41
『麗未はやっぱり完璧主義者ね』
岩下もフフッと悪戯っぽい笑いを浮かべる。

そんな中彼女たちの当時マネージャーでもあった日野貞夫や新堂 誠たちの顔ぶれもそこにあった。
『日野さん、この子たちがきっとAKBを変えていく逸材になる存在だと思うんっすよ』
新堂は体育会系ばりの声を出すように言う。
『ああそうだな、岩下、福沢・・・それにこの神崎がきっとやってくれるはず』

『あっ前田さん』
岩下と福沢が丁度通りがかった前田の元にやって来る。
『あっあなたたち・・・初めて見る顔だけども』
そっけない前田の返事にちょっと彼女は戸惑う。

『あっそうかチームAにやって来た福沢さんだったけ、覚えているよ
 あなたのターンの切れなかなか良かったよ』
前田は福沢の踊りにベタ褒めした。
『ありがとうございます前田さん』
福沢も笑顔を見せる。

354プルヒッター:2013/05/16(木) 16:15:59
『あっちゃん、ここにいたのね・・・探したんだからもうっ!!』
板野が前田を捜してやって来た・・・板野も4年前まで当時は同じチームAの人物だった
岩下がもっともあこがれていた人物でもある。

『板野さんお疲れさまです』
福沢が板野に小さく挨拶をする
『あ、明美・・・お疲れさま、どうだった今日のライブは疲れたでしょう?』
『私は大丈夫です、それより板野さんとたかみなさんも疲れたでしょう?』
岩下は自分の疲れよりも先輩たちの事を先に優先していた。

『全然よ、私はこう見えてもタフなんだからさ』
『そうっ、たかみなって結構滑るタイプだからね』
高橋は戯けたようにいうと板野が小さくちょっかいを出す。
『ともちん、ひどいよ!!!』
『ごめんごめん、たかみな・・・でもさ無理しちゃいけないよ』
板野は優しく福沢と岩下にそう告げた。

355プルヒッター:2013/05/16(木) 16:25:35
『じゃあまたステージで会いましょう』
前田と高橋と板野はそれぞれ2人を見送ってステージの脇へと消えた。

『いい先輩だわ、決めた私あの3人の内の誰かになるわ
 きっと先輩の力になるって決めたの』
岩下は意気揚々と目標を掲げた・・・きっと先輩に同じような存在になると決めたって
福沢も岩下の後に次ぐために頷いた。

『前田さん・・・はいどうぞ』
当時スタッフで働いていた細田もその一人だった。
風間や荒井もその顔だった。
『ありがとうございます』
前田は細田からもらったタオルをもらい汗を拭く。

『いやあ君が居てくれたからこそ僕たちは幸せ者だよ、今度僕とデートにつきあわないか?』
軽いのりで言った風間がそう言う。
『そうしたいのはいいんですが・・・』
前田はちょっと困惑気味に笑みを浮かべる。

『だめですよ風間さん、前田さんたちは秋元さん言われているんですよ恋愛禁止だって言われているんですから』
『そうか・・・・いやあ残念残念』
荒井がそう言うと風間はちょっとハハハッて笑い飛ばす。

356プルヒッター:2013/05/16(木) 16:31:42
『そろそろアンコールに行きます・・・みなさん』
スタッフの一人が皆に音頭を取った。

『行くか』
前田は椅子からゆっくりと立ち上がりステージの裏へと消える。
『敦子、遅いよ』
高橋がちょっとはっぱを掛けながら前田に声かけた。

『それにしても、今やAKBも大きな存在となってきたよ』
『そうですね、これは僕たちも負けては居られない状況ですね』
『彼女たちは大舞台に強いタイプの子がいっぱいいますから』
風間、細田、荒井も彼女たちを何気に応援する気持ちが伝わったからだ。
だから3人も今は過酷なスタッフの仕事に耐えられるのだ、そんな風にひしひしと感じる今日この頃。

だが・・・そんなふうに言うのもこれが最後だと彼らはまだ知らなかった。
そうあの組閣が起きるまでは。

357プルヒッター:2013/05/16(木) 16:36:07
ライブのアンコールは今や最高潮へと達していた。
大勢の観客たちがペンライトやそれぞれ応援する者も少なくなかった。
彼女たちは全てのアンコールの曲を歌い終えた頃。
突然観客の声が嫌に騒々しくなる。

そう劇場支配人の戸賀崎が現れたからだ。
『ええっ今日は、この会場に足を運びにやって来て本当にありがとうございました。
 実は、今日はみなさんに大切なお知らせがありますので心して聞いてください。』
会場に大きな緊張が走る。
もちろんその場にいた前田たちも緊張の糸が張りつめるのが解る。

358プルヒッター:2013/05/16(木) 16:41:44
『これって組閣?
 もしかして私たちにもチャンスがあるって事か』
岩下の目がギラギラとしている。

『・・・・・チームA岩下明美と福沢玲子
 今日付けでSKEへと移籍します』
えっ!?
岩下と福沢はまだ状況が把握しきれていないようだった。
どうして・・・・なの?

359プルヒッター:2013/05/16(木) 16:44:40
『それにしたがい神崎麗未をチームAへと移籍』
戸賀崎の無情な言葉に岩下と福沢は絶望の淵へ落とされた気分を味わった。

岩下と福沢は落とされ・・・一緒にいた神崎は生き残ったという。
それを見ていたスタッフの新堂たちも驚きの色を隠せなかったようだ、だがもっとショックを受けたのは日野貞夫のほうだった

360プルヒッター:2013/05/16(木) 17:26:27
『そ、そんな』
日野の顔に絶望の色へと変わった。
一緒にやってきた岩下と福沢を名古屋へ移籍するなんて考えられなかった。
日野はまさに崖から突き落とされた気分だ。
発表された岩下と福沢はその言葉を聞いて大声で泣き出す始末・・・まだ信じられないようだった。
こんなつらい現実が彼女たちの胸を大きく突き刺さる。

その後ろにいた神崎もまた涙を大きく流した。
2人が私の前から居なくなる・・・だからその涙は堪えることはなかった。
『どうして岩下さんと福沢さんだけが』
風間もその発表に納得できないようだ・・・細田と荒井も同じ気分だ。

『でもよ・・・・なぜ神崎だけが』
新堂は何が何だか解らないまま神崎の方を見た。

『神崎・・・君が今度チームAの仲間入りだ、出来るか』
戸賀崎の言葉に神崎はただ頷くしかなかった。
涙を流したまま彼女はそうするのが精一杯だった・・・当時前田と高橋と小嶋・・篠田も彼女を迎えた。

『・・・・・そんな』
福沢はその場にヘタリと膝をがっくりついた
岩下はもう涙は無いがその目は真っ赤に染まっていた・・・・いやもう泣き尽くしたのだろうか
もう涙は出なかった。
こうして組閣の発表は終わった。
岩下と福沢はつらい現実を受け止められないままその場を後にする。
やがてライブは終わり観客は帰りの帰路へと付く


皆が楽屋の奥へ戻った頃神崎がチームAの挨拶をする。
『みなさん初めまして、今度チームAに所属する神崎麗未と言います』
新しくチームAへと移籍した神崎が改めて自己紹介をする。
同じくいたチームAの先輩たちに迎えられ大きな拍手がわき起こる

『ようこそチームAへ私が高橋みなみです』
高橋が笑顔で神崎を迎えた。
『わあ麗未ちゃん、かわいい・・・私小嶋陽菜なのよろしくね』
小嶋も同じく笑顔で迎えた・・・ちょっと恥ずかしながら。
『麗未ちゃん、私の後を次いでチームAの事よろしくね、私が違うチームへ行っても
 ともの代わり頼んだから』
『はいっ板野さん』
板野の頼もしい言葉に神崎はしっかりと受け止めた。
『おおっ君が新星の神崎麗未ちゃんだね
 私は篠田麻里子・・・辛い事いっぱいあるけども一緒に頑張ろう』
篠田がしっかりと神崎の手を握った。
握手した篠田の手は温かかった・・・神崎も笑顔で篠田に返す。

『麗未ちゃん、高城亜樹です・・・よろしくね
 私麗未ちゃんが来るって今日予感がしたんだ、一緒に頑張ろうね』
癒し系の高城も神崎を暖かく迎えた。
『あっ、あの・・・・指原です・・・・麗未ちゃん
 指原のこと好きですか?嫌いでしょうか?教えてください』
『ちょっと指原、麗未ちゃんの前で変なこと言わないでよ』
『ええっ麻里子さまひどいですよ』
篠田の妙なムチャぶりのつっこみに指原はちょっとへこむ。
神崎はちょっと大きく笑みを浮かべた・・・さっそく皆の輪に溶け込んだ。

『私は倉持明日香です。
 麗未ちゃん、長いつきあいになるけどよろしくね』
倉持もその後に笑顔を作る。
『私・・・まだみなさんの足を引っ張る可能性があるかもしれませんけども
 これから頑張りますのでよろしくお願いします先輩たち』
神崎はそう宣言した。

神崎はちょっと輪から離れている前田敦子の姿を目で追った。
なんて凄いオーラを感じるんだろう?この人には人を引きつけさせない力があるんだろうか?
神崎は自分の体から電撃が走ったかのようにみえた。
『あっちゃん、そんなところに離れていないでさ
 麗未ちゃんにほら、挨拶くらいの声を掛けてあげなよ』
篠田が前田に声をかけるも高橋がそれを制した。

『麻里子さま、この子はいつもこうなのよ・・・大丈夫
 麗未ちゃんはまだ知らないから無理もないけども紹介するわね一応。
 この子が私たちのチームの第一人者ともいえる人物の一人、前田敦子って言うんだよろしくね』
『・・・・前田さんこちらこそよろしくお願いいたします』

神崎は前田に声を掛けるが彼女は無表情のまま答えない。
『・・・・・・・えっ、ああ・・・・こちらこそよろしく』
なんか前田はちょっとよそよそしいそうに言った
『まあ初めてなんだしさ、でもねあの子は不器用ながらああ見えてもいい子なの
 ちょっと慣れるまでは大変だけども』
前田をよく知っている高橋は彼女のことをよく知っている・・・いわば当時はお互いの
盟友だからだ。
いいなあ、私もこういう盟友が出来たらなあと・・・神崎は思った。

361プルヒッター:2013/05/16(木) 17:37:52
『とにかく今日から新しいチームAの始まりだよ
 皆と共に新しいチームAを作っていきましょう、そしてこれからも』
高橋の音頭に一同は再び輪になって円陣を組んだ。
神崎は今日ほど嬉しい日はなかったとそう願った。


同じ頃
皆が帰ったあとの誰もいない会場のステージ内では、福沢と岩下の2人の姿があった。
もう涙も枯れ果てたのか放心状態のまま座り続けていた。

『どうして・・・・・どうして私たちだけ』
『・・・・・・・・・・・・』
まだ現実を受け止める事が出来ないのか?福沢はまた泣き出す。
岩下はショックを受けたままなのか、声を挙げることが出来ないでいた、あの組閣の発表で彼女たちの人生が変わった。
突きつけられた厳しい現実、それもまた現実だった。

362プルヒッター:2013/05/16(木) 17:43:12
突如SKEの移籍の発表を決められた2人。
それはAKBを離れると言う意味だった。
辛いときもあった、だからこそここに居た意味があったからこそ。

そんな風に彼女はやり場のない悲しみに満ちた。
『岩下・・・・今回は残念だったな。
 でもよ、俺はおまえたちの事をこれからも』
新堂は岩下に慰めの言葉をかけるが。

『慰めなんかいらないわ・・・なんでこうなのよ
 私たちが・・・私たちがこうなるなんて』
岩下はヒステリックに大声を上げる。
誰もいないコンサートの会場が大きく包んだ。

363プルヒッター:2013/05/16(木) 21:05:00
新堂は岩下の迫力のある声に圧倒するだけ。
後から付いてきた荒井、細田、風間もただ圧倒するだけしかない。

『こんなことって・・・私たちは一体何をやっていたの』
悔しさを押し殺しながら福沢は絞るように言う。
『私たち明日からもう・・・このAKB劇場のステージには立てないの
 それってもうAKBの活動が終わったって事なの』
岩下はまた大きなヒステリックな声を挙げる。

364プルヒッター:2013/05/19(日) 16:12:05
『岩下・・・』
風間は心配をよそに岩下に声を掛けるが、逆効果だった。
『私たち・・・・けっきょくAKBでは落ちこぼれの存在だったわけか・・・』
福沢が力無く言った。
今や2人にとっては天国から地獄へと堕ちた存在まで落ちたらしい気分だ。


『・・・・・・・岩下、福沢』
彼女たちのマネージャー的存在であった日野貞夫もその光景を見守ることしか出来なかった。

365プルヒッター:2013/05/19(日) 16:21:32
『・・・・・・・・許さない・・・・絶対に許せないわ』
落ち込んだままの岩下は怒りを大きく膨らませた。
黒い長髪を乱れ回し、メイクはもう完全に無い・・・再び怒りを増大させた

『みんな、みんな・・・・・麗未も・・・・・・・・秋元康も・・・・そして
 なにより私たちの仲間を奪ったAKBの奴らも』
完全に岩下の怒りはピークを超えた
もはやアイドルという肩書きの欠片はもうない・・・これからは全部の恨みをAKBにぶつける
ために。
こうしてかつてAKBにいた岩下明美と福沢玲子は完全に死んだ。

これからは虎視眈々とAKBに復讐の時を迎えながらAKBの元へ離れた。
それから移籍先のSKEになじめずわずか3日程で完全にアイドルも止めた2人。
さらに彼らには悪い現実が突きつけられた。

366プルヒッター:2013/05/19(日) 16:29:33
ある秋の寒いなかただ一人日野が戸賀崎に呼び出された。

『戸賀崎さん話って言うのは?』
日野は戸賀崎の顔を見る。
『日野、いやあこういっても辛いと思うけどな実は・・・・』
日野はとまどいを隠せない。
『おまえに時期支配人の看板を背負ってもらおうと思ったんだけども、運営の方に
 ドタキャンされたって話を聞いてね、残念ながら今回を持ってAKBの運営を離れてもらうって話が付いたんだ
 辛いと思うが、これも話し合いで決めた事だ』
申し訳なさそうにいう戸賀崎の言葉に対し、日野もまた戸賀崎の無情な言葉にショックを受ける。


『そ、そんな・・・・・どうして戸賀崎さん。
 俺を時期支配人候補を選んだ理由は、いままで一体なんだったんですか?』
『・・・・・・いまや岩下と福沢もアイドルを止めて
 自分の道を歩んでいるんだ、だからこれは我々が下した決断だったんだ・・・まあ仕方がないとはいえ
 仕方がなかったんだが、こればかりは』

『・・・・・・・・・・そんな』
『話は付いたようだ・・・・そんなわけで話はここまでだ』
日野は戸賀崎に方を小さく叩かれながら部屋を出てった。
日野にも絶望の漆黒の色が変わった・・・・もうAKBの方にいられないと解った
日野にも復讐の怒りが燃えた。

367プルヒッター:2013/05/19(日) 17:33:02
そうして今までの日野貞夫は全て捨てた
そう、地位も名誉も全て全部・・・AKBの復讐を待ちながらAKBの場所を後にした。
今までの日野貞夫をそこに置き去りにしながら。

日野はそうしてアイドルを止めた岩下と福沢を呼びだし、後に止めたのだろうか?
新堂、風間、細田、荒井の4人も呼び出した。
『俺たちは負け犬じゃない・・・解っているだろうな、俺たちは負け犬じゃないって事を』
他の6人もそう頷く・・・だからこそ1年ぶりに再会した。

こうして狂気メンバーという狂気クラブの活動が始まった。

368プルヒッター:2013/05/19(日) 17:38:07
日野がペンションの外れの部屋の前にたどり着く。
そう、最初訪れた例のあの開かずの間の扉の前だった。
日野がゆっくりとノブを回す。
いままで開かなかった開かずの間の扉が遂に目の前に姿を現す。
4人が日野や岩下、福沢に連れられて開かずの間の部屋へと入る。
そこには異様な光景だった。

369プルヒッター:2013/05/19(日) 17:39:40
日野がペンションの外れの部屋の前にたどり着く。
そう、最初訪れた例のあの開かずの間の扉の前だった。
日野がゆっくりとノブを回す。
いままで開かなかった開かずの間の扉が遂に目の前に姿を現す。
4人が日野や岩下、福沢に連れられて開かずの間の部屋へと入る。
そこには異様な光景だった。

370プルヒッター:2013/05/19(日) 17:42:05
『何ここの部屋は』
むせかえる焦げ臭い部屋の匂いだった。

『ここは・・・あいつの部屋だ』
あいつって一体何者か?
『そうここは麗未の部屋・・・・私たちはずっとここで麗未の帰りを待っていたのよ
 だからこそあいつを許せなかったのよ』
岩下は唇をふるわせながら言った。

371プルヒッター:2013/05/26(日) 19:37:55
『麗未って・・・まさか!!!』
虚をつかれたかのように高橋は驚く。

そう麗未はあの・・・・当時福沢と岩下と一緒にいたかつてのAKB48の
メンバーの一人だったのだ。
ようやく確信をもった高橋と前田。
でもどうしてここの部屋だけがこんなにすすだらけなのか?
疑問にも感じたからだ。

372プルヒッター:2013/05/28(火) 14:21:35
『そう、俺たちはあいつを許さなかった。
 いや許せなかったのさ、みんな奴の言いなりになって働いていたんだ。』
『本当に麗未は幸せ者よね、こんなかわいい女が切り捨てられるとはね』
日野と岩下が声をそろえながら言った。
4人の背筋から妙な寒気を感じた。
こんな風にどうして言えるんだ?神経がおかしいのではないだろうか?

『敦子ちゃん、聞きたい』
福沢は冷淡な言葉に耳を貸そうともしなかったが、それも出来なかった、いや出来なかった訳じゃない
どうしてこんな風になったのか前田は意を決して福沢の言葉を耳に貸した。

373プルヒッター:2013/05/28(火) 14:23:55
高橋は小さく頷いた。

『いいわ、私たちの悲劇の続きを話すわ』
福沢と岩下の悲劇の続きが始まった。
再び時間は4年前の日に遡った。

374プルヒッター:2013/05/28(火) 14:37:23
同じ頃前田たちが例の開かずの部屋に行った後。
篠田たちは一刻も早く前田たちの救出へ向かう。

『才加、このままじゃ身動きがとれないわなんとかしてあっちゃんやみなみ達を救出しに行かないと
 あいつら日野の餌食になるわ』
策もない篠田の絶望の言葉が秋元に突き刺さる。
『・・・・しかし、どうやってさ
 現にこっちは何も武器も残されていないんだ・・助けに行くにしても返って逆効果だ』
他の皆も後ろ手にロープで縛られていて身動きがとれないでいた。

『才加、絶望しちゃ駄目だよ
 私たちはAKBなんだ、こんなところで諦めてたら私たちだけじゃなくあっちゃんたちも助からないよ』
宮澤が秋元にちょっと渇を入れる。
他の皆も頷く。
北原が縛られながら何か言おうとしていた

『佐江ちゃん、私のズボンのポケットにカッターナイフが入っている。
 それをとって縄を解いて』
小さな小声で言っているが、北原は必死だ。
言うまでもなく宮澤は腕に縄を縛られながら北原の方へと向かう。
北原の背後に背を向ける宮澤、他の皆も固唾を飲む。

『佐江、早く・・・時間がないわ、早くしないと敦子達も』
秋元がせかすような言葉で宮澤に言う。
しかし、北原のポケットになかなか手が入らない・・・だが一度深呼吸しながらもう一度北原のズボンの
ポケットに左手に触れた。
・・・堅い物が何か手応えを感じる物を覚える。
そーっと指に入れる宮澤。
カッターだ。

『佐江ちゃん、見つかったのね・・・良かった・・・・それを使って早く皆の縄を解いて』
柏木は安堵の表情を浮かべる、そう頷く宮澤。
まず宮澤が後ろ手にカッターナイフを縄にゆっくりと当て、のこぎりのように縄を切る。

375プルヒッター:2013/05/28(火) 14:49:33
『佐江はやく!!』
河西が心配しそうに言う、宮澤も焦るばかりか縄を切るだけで精一杯だ。
他の皆も心配している。
ようやく縄が切れそうだ・・・そして。
・・・・縄が切れた。

『よしっ!!!!皆待ってて、このカッターで今縄を解くから』
ようやく自分の両手が自由になった宮澤、急いで皆のメンバーの縄を切る。
両手が自由になってホッとする少女達。
秋元の縄をようやくカッターで切った宮澤。

『ありがとう佐江、これで自由になったわ』
『礼ならあとだよ才加・・・そんなことより早くあっちゃんや優子達を助けに行こう』
そう、お礼を言うのは後回しだ。
私はそう才加に言う・・・この後はきっちり佐江のことを守ってほしいんだから。
宮澤は小さく笑みを浮かべる。
皆はすぐさま談話室を後に2階の続く部屋の方を見上げる。

『前田さんはどこに行ったんだろう』
柏木は皆の行きそうな場所を見当が付かないままだった、ちょうどその時渡辺が柏木のTシャツの裾を小さく引っ張る。
『そういえば、私、あそこだと思うんです前田さん達や日野達が行く場所は』
渡辺の頭の中に天明の光が表す。

『麻友、どこだか解るの?解るなら教えてちょうだい』
柏木は渡辺にせかすように言う。
『ゆきりん落ち着いて・・・私このペンションで優子ちゃんと一階のトイレにつきあってほしいと頼んだ日
 ちょうど便所に行き終えた後、ふと例の開かずの間に足を向いたんです』

376プルヒッター:2013/05/28(火) 15:13:47
皆は渡辺の戦慄の言葉に大きく頷く。
『で、麻友も佐江ちゃんと同じようにそのドアを開けようとしたの?』
人一倍心配していた柏木は渡辺にいうが。

『ゆきりん、まだ麻友の気持ちを知らないの?
 彼女はね何かと皆の力になりたかったのよ、だからあんな無茶な行動を起こしたんじゃないの
 私だって麻友と同じだったって事よ』
宮澤の容赦ない言葉に柏木の目から一筋の涙が流れた。

377プルヒッター:2013/05/31(金) 23:41:38
『ごめん麻友・・・・解ってもらえなくて、私、私』
柏木は泣きながら渡辺の小さな体をそっと優しく抱いた・・・渡辺も泣いては居ないが
柏木の体をそーっと優しく抱いた・・・蟠りが解けたのだ。

『いいの・・・・ゆきりん・・・ゆきりんだって辛い思いしてきたんだから
 私も麻友も同じだよ・・・だから一緒に前田さん達を助けに行こう、ゆきりん』
『・・・・・そうね麻友』
2人は決意を新たに前田達の元へとゆく。

『ああっおいっちょっと待ってよ・・・・2人だけで行くなんて危険だぞ』
『いいっていいって、ゆきりんとまゆゆは強くなったんだ・・・こうしちゃいられないよ才加』
おせっかいをやく秋元とは対照的に宮澤は2人をかばった。

『・・・皆、しっかりと立って
 あっちゃんたちの後を追うわよ・・・そして佐江たちや麻友たちをしっかりガードしないと』
篠田の頼もしい言葉に皆は大きく頷いた。
一度絶望し掛けたチームワークがまた再び取り戻そうとしている。
これからが本当の勝負・・・待っていなさい日野。
篠田達は前田達の遅れを取り戻すかのように皆と一緒に談話室を後にする。

378プルヒッター:2013/05/31(金) 23:49:37
少女達は歩いた。
薄暗いペンションの廊下をただひたすら歩いた。
柏木、渡辺、篠田、小嶋、峯岸、秋元、宮澤、河西、北原、指原、高城、倉持、横山
13人はひたすら歩いた。

やがて2階の階段を上がり上り終えた。
もはや日野や前田達の姿はない、先へと進んだのだろうか?しかし迷っている暇はない
今彼女たちに怖い物はないのだから・・・徐々に力強さがひしひしと大きく入る。

相変わらず外は強い雨風の音が大きく聞こえた・・・今にも窓ガラスが割れそうな雰囲気を見せている。
が、そんなことは今は考えている暇はもう無い。
一刻も早く前田達のところに行かないと、日野や岩下、福沢に何をされるか解らない。

しかしどこにいるか解らない・・・だが渡辺の言った言葉に皆は大体行き先の見当はついていた。
そう、私たちがこのペンションを訪れてずっと入れなかったあの開かずの部屋。
足は開かずの間へと向かっている。

379プルヒッター:2013/05/31(金) 23:56:34
皆が歩き続けている中、一人足を止める。
小嶋だ。

『ねえ、あの扉の下にさ何かイニシャルみたいなものが掘られてあるの覚えている?』
イニシャル?
そういえば、あっちゃんたちが先にそのことを話していたのを覚えているのを聞いた。
K,R
開かずの扉の下にはそう彫られていたのだ。
このK,Rは一体誰のことなのだろうか?

『それってたしか?』
倉持は思い出そうとしているがなかなか出来ない。
『私たちがチームAに初めてやって来たあの子のことかな?』
高城も何となく思い出そうとしている。
『指原もですよ・・・K,Rを見た途端だれかの人物だったって事を思い出したんで』
指原もそれに続く。

『それってもしかしたら・・・あのチームAに有望株の一人の』
秋元もだんだんと思いかけてきたようだ。

『・・・・・・・神崎麗未・・・・・・』
皆が大きく声をそろえて言い出す。

380プルヒッター:2013/06/01(土) 15:37:41
皆が虚を付かれたような顔をした。
そうあの・・・・・かつていた神崎がここのペンションの一員だったなんて。

嘘とは言い難かった、皆はそう信じられなかった・・・いや信じようとしないでいた。
『神崎ってチームAに組閣発表の後に入団したあの子』
宮澤はチームは違ったが、何となく見覚えがありそうな顔をする。
『・・・・・そんな』
河西はまだ信じられないようだ、かつてのAKBが狂気クラブのメンバーの一人だったとは。

『そういえば!!!』
北原もふと何か思い出しそうな顔をしている。
『あの時の組閣の発表の時に・・・あの2人の顔を見た覚えがあるよ私・・それに例の神崎も居た』
あの2人とは。
おそらく組閣の発表で一番人生を変えられた岩下明美と福沢玲子。
・・・・だが、2人の顔は全く身に覚えもなく知らない人も多かった・・・ずっとAKBに居続けた前田達さえも知らないと思ったからだ。

『里英ちゃん、あの2人ってもしかしたら』
篠田はようやく2人の顔を認識できた。
『あの・・・・私たちが入ってきた神崎麗未だったの?それじゃああの岩下と福沢もかつては・・・・私たちの仲間だった訳?』
篠田はまだ答えが手探り状態のままだったが・・・徐々に思い出せそう。

『おそらくそうでしょうね』
北原はそう言う。
『あっ、そういえば・・・解らなかったけどもあの神崎って子、よく岩下と福沢の2人に徹底的に教えていたのを
 指原は覚えています、私見たんですから』
どうやら指原はあの岩下と福沢の一部始終を見ていたようだ、それに神崎の事は知らなかったけども思い出す節があった

『そういえば、あの神崎は、よく秋元先生に期待を持っていた人物じゃない
 あの子はきっと大きな存在になると言われていたもん、だから私直接話したことも無いけどもスタイルは良かったよ』
早口で話し出す峯岸。
それぞれ神崎の伏線が一本一本繋がっていった

『でもそれだとしたら岩下と福沢もこのままAKBに残っていたハズなんじゃ』
高城はそう言う。
『・・・ところがさあの2人は戸賀崎さんにSKE移籍を発表させられたんだ
 あの2人にとっては嫌な味わいを受けたんじゃないかな・・・だってあのSKEに移籍させたのは何か意味があるんじゃ』
北原は淡々と言う・・・SKEはあのかつての北原と指原の地方組の同僚、中西優香がいる。

『あの〜今喋っていて申し訳ないんですが・・・私はちょっと』
ひとり引き気味の人物が居た・・・横山由依だ。
『そりゃだってしょうがないよ、あのときまだ横山はAKBに入ってからはまだ
 研究生の一角だったから・・・真実を知ろうにも無理があったよ』
指原は横山に諭されるように言った・・・あの時の組閣発表にはまだ横山由依の顔も無かったからだ。
あの時の横山はまだ研究生の一人だったから、本当の真実を知るのはまだ出来ないで居たからだ。

『皆さん覚えてはりますか?
 あの時前田さんが見つけた例の女性の写真の後ろ姿を・・あの後ろ姿こそ例の皆さんの言っている
 神崎さんじゃなかろうかと思うんですけど』
たしかにあの時、後ろ姿の写真を拾ったのを覚えた形跡がある。
でも、あの時の手に持っている花は・・・・弟切草

381プルヒッター:2013/06/01(土) 15:45:11
『そういえば素顔を知っているのはチームAに居た人だけだった
 でも・・・本当に話したことはあまり無いし・・・練習も一人でずっとやっていた、だから素顔をあんまり
 覚えていないんだ私たち・・・だから私たちの記憶も大きく外れていたんだと思うの』
『よく一人で練習していたし、自主練習もレッスンも一人でよくやっていたんだ
 声を掛けようとしてもなかなか出来なかったんだ』
小嶋と篠田は同じチームAの一員だったけども・・・神崎の素顔はほとんど見て居ないそうだった。
初めて素顔を見たのはあの初顔あわせの時しか覚えていない2人。

『そういえば、あっちゃんやたかみなも神崎のことはあまり多く語らなかったよ
 でもどうして何だろう?ずっとAKBにいるたかみなとあっちゃんがそんなに神崎の
 事を語ろうとしないなんて』
倉持は前田と高橋も知らないエピソードをここで知る事となる。

382プルヒッター:2013/06/01(土) 15:51:31
皆はまたシーンとした
だがそれを打破したのが意外にも横山だった

『おそらく皆さんがきっと神崎さんを知らないのは、秋元先生の意志だと思うんですよ
 だって秋元先生はようやく本当の原石を見つけただと思うんですよ・・・だから
 あえて神崎さんの事はあえて皆さんは知らないで居た、いやむしろ記憶が無かったんじゃないでしょうか?』
どうやら横山が真実を告げたようだ。
なんて事だ・・・本当の原石を見つけるまでにずっと秋元先生は私たちに本当の事を告げなかったんだと思う。
あえてそれを言ってしまえば彼女は大きく伸びない。
だから真実を伝えたらそれこそAKBには居られない。
そう言う選択の余地を与えたからだった。

383プルヒッター:2013/06/01(土) 16:00:59
『由依の言うとおりだったよ
 私たち、何にも知らなかったんだ・・・結局秋元先生が私たちに真相を告げるのを恐れていたんじゃない
 もっともっとAKBを盛り上げていこうと言う意義があってこそ神崎の事を言わなかったんだ』
秋元は横山の言葉に大きく胸を打たれた。
こんな後輩が私たちに真相をいち早く見つけていたなんて。

『・・・・もちろん
 私たちが最初に招待状を記していた18番目の・・・・少女って』
河西は唇を振るわせながら言う・・・今にも泣きそうな河西。

『・・・・・神崎の事だったのね』
宮澤はキッパリ言った・・・そう皆も解っているように18番目の少女は忘れられた少女
神崎麗未だったのだ。

384プルヒッター:2013/06/01(土) 16:10:19
『・・・・可哀想
 神崎さんが私たち18人目の少女だったなんて』
柏木は目にまた涙をためながら言う。
『本当にそうですよね・・・神崎さんが生きていれば・・・私たちの仲間だったのに』
渡辺も柏木の涙を後押ししたのだろうか?
彼女にも目に涙が溢れているのが解る

『ごめん・・・神崎、今になって覚えるのが遅れたよ』
篠田は申し訳なさそうに2階の天井を見上げていた。
小嶋も同じように天を仰ぐ・・・やっと彼女の存在を知った事に後悔を受けながら。

『麻里子、神崎はきっと解ってくれるよ・・・私たちの事を見てくれているんだから』
秋元はそーっと篠田の肩を優しくポンと叩いた。
とその時。

「ミナサン・・・・ヤットオボエテクレタノデスネ」
誰だ・・・一体この声は
皆の頭の中に美しくとても綺麗な声がする女性の声がした。
「ワタシガ・・・・カンザキレミ・・・・・イヤ・・・・ウルミデス」
うるみ?
レミじゃなかったのか?

385プルヒッター:2013/06/01(土) 16:12:42
『その声は・・・・神崎さん』
柏木はそう言い聞かせてた・・・ようやく話が見えた柏木。
『えっ?ゆきりん聞こえるの・・・・・あっ私の頭の中にも響いてくるのが解る』
渡辺はまるで不思議な世界にいるように神崎の声を聞き取った。

386プルヒッター:2013/06/03(月) 17:57:57
「ソウワタシガ・・・・カンザキウルミ・・・
 オヒサシブリデスミナサン・・・ワタシガ・・・カツテチームエー二イタ」
『神崎・・・私を覚えている?
 チームAの篠田麻里子・・・にゃろ・・いや、小嶋陽菜もいる・・・・それにあっちゃんとみなみも皆いる』

篠田の必死の呼びかけに神崎はどう応えるのだろうか?
・・・・しかしなかなか呼びかけようとしない・・・・諦めたその時。

「シノダサン・・・・マエダサン・・・・タカハシサン
 エエ・・・・・・・オボエテイマスヨ・・・・・・アノコロハタノシカッタ」
声だけしかしない神崎の声が薄暗い2階のペンションの廊下に響く。

『ねえ、答えてちょうだい
 あの神崎はさ、どうしてAKBに入ったの?それを私は知りたいんだ』
峯岸は必死に答える。
『あの岩下と福沢はいつも一緒だったの?神崎・・・答えてちょうだい』
宮澤も峯岸と同じように声だけしかしない神崎に必死に問い掛けてくる。

「・・・・・・・・・・・・・」
しかし、神崎は何も答えない。
よほどあの2人の事を恐れているのだろうか?何も答えようとはしない。

387プルヒッター:2013/06/06(木) 14:38:37
『神崎、教えて・・・あの岩下や福沢に何かされたの?』
小嶋は答えた・・・すると。

「ソレヲイワナイトイケナイトンデスカ」
『そうよ、私たちどうしてか知りたいのよ・・・・大丈夫
 もう安心して、だから神崎は何も怖がる事なんて無いんだから』
宮澤は先ほどよりも大きな声で神崎に言う。

「コウカイスルコトニナルカモシレマセンヨ」
『私たち後悔なんてしません・・・それで後悔なんてしたら私たち
 AKBじゃないです、怖い事なんてないですから』
ずっと黙り込んでいた渡辺も意を決したかのように神崎の心の声を辿った
『麻友の言うとおりよ、神崎さん
 私たち後悔するまで驚くなんて言いませんから・・・真実を教えてください』
柏木もその後を続く。

388プルヒッター:2013/06/15(土) 00:33:14
『で、あなたの写真を今拾ったんだ
 そして、その黄色い花は弟切草って言うけど・・・一体誰に復讐するっていうのよ』
混乱気味の秋元は懸命に答える。
『岩下、それとも福沢・・・私たちなの?』
倉持も懸命に答えるが・・・神崎の声はなかなか返ってこない。

「ソウ・・・・ワタシハアノヒトガニクイノ・・・イヤアノヒトタチガニクイノヨ」
また神崎の声が闇の中へと響き出す。
『あの人達って秋元先生達のこと?』
『そんな・・・・』
北原と横山も不安を抱いてまで問い掛ける。

389プルヒッター:2013/06/21(金) 16:40:05
『あの人達って秋元先生のことなの?』
高城もそれに続く。
『そんな・・・秋元先生がそんなことするなんて』
渡辺はまだ信じられないままの様子だ
『神崎さん・・・真実を知っているの?
 それを教えてほしいの、お願い・・・私たちもそれを願っているの』
神崎にお願いする柏木、しかし何も答えない神崎。
空間はエコーのままだ。

390プルヒッター:2013/06/21(金) 16:47:01
しかし答えない。
まるで日野たちの事を恐れているようだ。
・・・・やがて。

「ニクイノハ、アノヒノサダオ・・・ソレトシンドウタチガニクイ」
神崎の声はそうはっきりと言った。
今度は嘘じゃない・・・そう思った皆は納得の表情だ。
『日野が・・全ての元凶だったのね』
『じゃああいつらが神崎を』
『神崎を追いつめたのね』
『酷い・・・・』
篠田、秋元、小嶋は口々と言う。
渡辺はあまりの出来事に涙を浮かべながら言った。
『でも神崎さんは・・・どうして日野達の事を憎んでいるんですか?
 日野達の事を復讐するのを考えていたのですか?それが私たちにはまだ解らないんです』
話を割ってはいる横山も加わった。

『横山・・・』
指原も力無く横山に問い掛ける。

391プルヒッター:2013/06/23(日) 16:04:43
「ワタシハヒノトシンドウタチガユルセナカッタ・・・アノジケンガオコルマデハ」
暗闇の中・・・神崎の告白が始まる。

392プルヒッター:2013/06/23(日) 16:20:02
それは4年前の秋頃に大きく時間が遡る。

神崎がチームAに入ってきて早1ヶ月の頃だ。
いつものように1人自主練習を行っている神崎麗美。
練習の成果を見に来ていたのか・・・戸賀崎と秋元が神崎の姿を見ている。
『秋元先生・・・神崎の動きはどうでしょうか?』
支配人の戸賀崎が神崎の踊りを見て秋元に尋ねる。
『彼女には何か大きな力とオーラが見える・・・それに今後のAKBの未来を背負う
 大きな力となってくれるハズだ』
『は、はあ・・・・そうですね』

秋元と戸賀崎の言葉に全く耳を貸さずに神崎は1人踊りのステップの練習を続けている。
彼女はストイックな部分を大きく見られ・・・時期エース候補の1人と秋元は大きな期待を
寄せていたのだ。
秋元もきっとそんな風に神崎の力を見ていた。

『神崎・・・それくらいにして一休みしたらどうだ
 一日踊ってのレッスンは辛いだろう?』
支配人戸賀崎は神崎にそう言った。
『ありがとうございます・・・戸賀崎さん』
神崎は笑顔を浮かべて戸賀崎に礼の言葉を言う。
彼女の笑顔も支配人にも気持ちが伝わっていたのだ

『俺は劇場に戻るけど・・・練習もいいが少しは体を休めておけ
 お前1人の体じゃないからな』
『はい』
戸賀崎はレッスン場を後にして劇場に戻った。

『神崎・・・・君はこれから
 大きな壁にぶち当たっていく運命となる人物となるだろう・・・しかし案ずることはない
 君には大いなる未来と未知なる力を秘めているだろう、これからもよろしく頼む』
秋元の不思議な言葉に神崎はまた新たな使命を任された。

393プルヒッター:2013/06/30(日) 17:31:46
私が・・・これからのAKBの未来を担う中心人物か。
そう思って聞いた神崎、立ち止まっている場合じゃないんだ。
これは私が秋元先生にくれた最大のチャンスなんだ・・・私がこれから皆の
足を引っ張ったらだれがAKBを守っていくんだろう。

神崎は再び決意を新たに再度1人自主レッスンの練習へと戻った。
秋元は神崎の元へと去ったあと・・・1人劇場に戻っていたはずの戸賀崎が。
廊下の長椅子に座っていたからだ。

『戸賀崎・・・・戻っていたんじゃなかったのか?』
『・・・ちょっと、神崎のことをしんぱいしていたものですから。
 それにあいつは・・・・きっと大きな存在になっていくのですから私も本当に鼻が高いですよ。
 あいつはこの先・・・我々を超える大物になる。
 そう信じてるんですよ』
劇場支配人の戸賀崎は人一倍
神崎麗美の事を期待をしていたからこの場に残ったと言ったのだ。
秋元康もそんな風に寄せていたからだ。
だからこそ彼女は困難にぶつかっていく・・・そんな大きな逸材だったからこそ秋元の目は神崎に停まったのだ。
これから大きくつけていけば
いつかは前田敦子と高橋みなみの3本柱のエースが誕生する。
そんな期待を膨らませていたからなのだ・・・・秋元康はそう断言する。

『彼女は褒められて伸びるタイプではなく
 むしろ、叱られて伸びるタイプでもない・・・ある意味困難を乗り越えてこそ
 伸びるタイプだろう。』
『じゃあ・・・彼女はやがて』
『そう、やがては前田と高橋を超える逸材になると
 信じているんだよ・・・これは私の自己満足でしかないけどね』

394プルヒッター:2013/07/21(日) 15:08:20
『これは楽しみになってきましたね。
 私もあいつの成長を期待して安心してみられますよ』
戸賀崎支配人も絶対の笑みを見せる。
秋元も同じように笑みを見せた。
この子はやがていつかは大きなAKBの未来を変えてきてくれるに違いないとそう思った。
・・・・が、その未来はやがて脆くも崩れるとは2人とも知るよしもなかった。

395プルヒッター:2013/07/21(日) 15:19:25
いつものようにレッスンを終えて帰宅する神崎。
夕闇の夜の町を1人歩く神崎。
いつもなら人の多い住宅街の町並みに人がいるにもかかわらず、今日は妙に寂しい
何者かがそれを拒んでいるかのようにみえた
突然、神崎の足の歩みが停まったからだ。

『そ、そんなあなた達は』
まるで虚をつかれたかのような顔をしたのか?
神崎の目の前には・・・あの福沢と岩下の姿があった。

396プルヒッター:2013/08/11(日) 16:41:43
福沢と岩下の2人は腕組みしながら神崎の方を見た。
彼女たちはあれからすぐにAKBからSKEに移籍した後、3日後に自らすぐに脱退を申し出たのだ。
虚をつかれたように岩下と福沢の顔を見る神崎。

どうしてここに。
『久しぶりだな・・・・・・・・神崎』
そしてまた聞き覚えのある男の声がした。
そう、彼女と一緒にマネージメントをプロデュースした日野貞夫の姿が。
一瞬眼鏡の奥の目が野獣のようにキラリと光るのが見えた気がしたからだ、彼女の目に相当な危険な匂いを感じたからなのである。

『どうだ・・・・相変わらずアイドルに精を出しているそうだな、神崎』
得意げに日野は言う。
『私たちを出しおいて・・いい思いしているご様子ね』
岩下の喋る声が妖しく見えたことを神崎は見逃さなかった。
『麗未ちゃんは・・・幸せ者ね』
福沢はそんな神崎に負け惜しみの言葉を投げかける。
そんな、人がこんなに人格を変わるなんて・・・あり得ないことだわ?あれから何ヶ月が経っているのに。
こんなに人が変わるとは・・・神崎はいつもそこにいる3人の姿を見て思った。
もう昔の3人の姿はどこにも居ない・・・・いや、むしろ何かに取り憑かれて居るかのような物だった。

怖い。
私を待ち伏せていたかのように彼らは私の方を見る。
『ふっ、神崎。
 俺はお前のおかげで全てを失った、あの時のコンサートの後、岩下と福沢はすぐに名古屋へと移籍された。
 それだけでは無かった、その後俺は劇場支配人の戸賀崎に呼ばれ劇場スタッフを解雇されたんだ。』
日野の宣告の言葉は更に続いた。

『わかるか神崎、俺たちはお前に全てを失ったんだ。
 だから俺はお前を許さない、いやAKBだけの奴らではない・・・支配人、そしてあの秋元 康にすべて
 復讐するために俺たちは動き出したんだ。』
『・・・・・そう、日野さんはね私たちの事を救ったのよ
 だから私と福沢さんもその話に乗ったの・・・・それでいま貴方の前に現れたわけ』

397プルヒッター:2013/09/29(日) 17:18:15
話が見えない。
この人達はどうしてこんな風になってしまったのだろうか?
たった1つのことでこんなに人は変わってしまうのか?
もう信じられないくらい、神崎は理解できないままだろうと思ったからだ。

『さあ神崎・・俺たちの道具となって礎になってくれ
 お前は俺たちの道具として手足足取りとして使ってやるぜ』
怖い。
神崎は足がすくんで動けなかった・・・危険な匂いが漂ってくる。
神崎は急いで足早に逃げようとしたところ。

398AKB大好き:2013/12/22(日) 22:48:28
続きがきになります!
頑張ってください!


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