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(#´▽`)´〜`0 )<Let's レスぽんど!
171
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:24
ウチは激しくそのドアをノックした。
「石川さん!石川さん居るんでしょ!?」
何がなんだか分からない。
心臓の鼓動が耳にまで聞こえてきそうだった。
ドクドク。
わき腹の古傷がパックリと開き、真っ赤な血液が流れ始める。
172
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:24
ドアノブに手を掛ける。
ガチャリと古めかしい音をたててドアが開く。
173
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:25
そこには石川さんが居た。
台所にもたれたように寄りかかっている。
その瞳は閉じられている。
「石川・・・さん?」
ゆっくりと近づく。
「石川さん?」
もう一度呼んでみる。
だけどやっぱり返事は無い。
石川さんの前に屈み、その額に手をあてた。
「熱い・・。」
ウチは急いでその体を抱えた。
174
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:25
取り合えず敷きっぱなしになっていた布団の中に
彼女を押し込む。
ウチはオロオロと部屋の中を荒らし始めた。
薬や氷枕は見当たらない。
今迄病気になった時は一体どうしていたのだろうか。
仕様が無く、冷凍庫を開けて、ビニール袋に氷を詰め、
それをタオルで巻いて石川さんの額に当てた。
「よ、し・・・。」
彼女がうなされながら何かを言っている。
「何?どうしたの?石川さん?」
175
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:26
石川さんは泣いていた。
嫌な夢を見ているんだろうか。
恐い夢を見ているんだろうか。
ウチは空いている方の手で石川さんの手を握る。
「大丈夫。大丈夫だから。」
知らぬ間にそう呟いていた。
「どうし・・・て・・。」
石川さんはずっとうなされている。
だからウチはずっと手を握って、
大丈夫。大丈夫。
と耳元で囁き続けた。
176
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:27
その吐息が落ち着くまで。
石川さんが泣き止むまで。
いつまでも。いつまでも。
此処に来た、理由も忘れて。
石川さんのその姿が、昔のウチと重なって。
いつまでも。いつまでも。
側に居た。
177
:
I’m With You
:2003/06/06(金) 23:28
レスありがとうございます。
初心に戻って頑張ります。
178
:
名無し( `.∀´)
:2003/06/08(日) 03:26
うわ〜〜〜〜〜!!すっごい続きが気になります。
今、一番に楽しみにしています。
179
:
オガマー
:2003/06/08(日) 20:43
うお〜〜。
よっちぃの過去のことも気になるけど、
石川さんとの今後にも大期待!!
180
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:34
自分がこの世で一番愛している人。
自分をこの世で一番愛している人。
181
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:35
光の眩しさに目を開けると、
開けっ放しのカーテンから、燦々と太陽の光
がウチに降り注いでいた。
(此処何処?何だか体が痛い・・。)
朦朧とする意識の中、自分の置かれている状況を
必死で考える。
「吉澤さん。」
頭の上から誰かの声がする。
これは誰の声だっただろうか・・。
「吉澤さん。おはよう。」
182
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:35
軋む体を無理矢理起こす。
目と鼻の先に、石川さんの顔があった。
その右手は繋がれたまま。
183
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:38
やっと思い出した。昨日石川さんの家に駆け込んだ事。
石川さんが台所で倒れていた事。
石川さんがとても熱かった事。
「石川さ・・ん。熱、下がっ・・たの?}
寝不足の所為でろれつが回らない。
石川さんはいつものようにうっすらと笑った。
その表情は、何か、誰かを連想させる。
「吉澤さんずっと此処にいてくれたの?」
ウチは黙って頷く。
184
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:39
「私、私。吉澤さんの事がどうしようも無い位好き。」
ウチが始めて石川さんにキスした時のように、
石川さんが噛み付くようなキスをウチにした。
185
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:39
ウチはその時初めて彼女を。
石川梨華を意識した。
186
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:42
心は、心は体の何処にあるんだろう。
その場所さえ分かっていれば、
引き千切って新しい『モノ』に取り替える事が出来るのに。
あの温もりを、
体中で感じた安心感を、
幸せを。
もう取り戻せない時間を。
187
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:42
この腕の中の人とすり替える事が出来るのに。
188
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:43
「石川さんさっ。保田主任に言った?」
本当は詰問するつもりだった。
襟首を掴んで、怒りをぶつけるつもりだった。
だけど出来ない。自分と一度重ねてしまったから。
「保田さんに?え?何を?・・・あっ。」
どうやら心当たりがあるようだ。
「もしかして何か言われた?ごめんなさい!違うの!」
何やら顔を赤らめたり青褪めたり。
それが可笑しくてつい笑ってしまった。
189
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:43
「あのね、あのね。見られちゃったの・・。」
「見られた?何を?」
「吉澤さんと私の写真・・・。」
写真?二人の?ああそういえば前に一度頼まれて
嫌々ながらも撮った事はある。
「持ち歩いてたの?」
「う・・ん。ごめんなさい。」
そういえばウチも前はいつも持ち歩いていた、
あの人との写真を。
ウチは石川さんを強く抱きしめた。
「そっか。」
「ごめんなさい。」
謝ってばかりいる彼女が可笑しくて、
ウチは又笑った。
190
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:46
「吉澤さんがそんなに笑うの初めて見た。」
そうかもしれない。
ここ最近は滅多に笑う事も無くなっていた。
「だって石川さん可笑しいんだもん。」
そして又ギュッと抱きしめた。
191
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:47
もう一度毎日が幸せな日々が来るだろうか。
こんな風に笑って送れる日々が来るだろうか。
ウチはそれを望んでいるのだろうか。
この人と二人で。
幸せに。
いつまでも幸せに。
192
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:53
あの頃みたいに。
五年前みたいに。
もう一度誰かを、心から愛する事が出来るだろうか。
でも確かに。
確かにウチの心は揺れていた。
石川さんを好きになりかけていた。
石川さんはウチの事を愛してくれていた。
193
:
I’m With You
:2003/06/08(日) 21:54
だけど残酷で。
現実は残酷で。
やっぱりウチに救いは無かったんだ。
助けてって、心の中で叫び続けたんだけど。
その声は届かなかった。
誰にも。
何処ニモ。
194
:
jack
:2003/06/08(日) 21:58
続く。
管理人様。10万ヒットおめでとうございます(w
いつも生暖かい目で見て頂いてありがとうございます。
この作品は管理人様に愛と共に捧げます(イラナッ
195
:
名無し( `.∀´)
:2003/06/08(日) 23:22
やばいくらい面白いっす!超期待!!
でも他のスレをageるのはどうかと・・・。
196
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:17
生涯を二人で過ごす。
どうして出来ないのかな。
197
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:19
あの後ウチと石川さんは親密になった。
石川さんからも連絡を寄越すようになった。
二人で、何処かに出かける事もあった。
ウチは石川さんと体の関係を持つ事を止めた。
手を繋いで一緒に昼寝をしたり、
笑いながらキスをしたり、
散歩をしながら世間話をしたり、
温かい陽だまりの中にいるような、
くすぐったいような日々。
一般の恋人同士のような、そんな関係。
198
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:19
忘れかけていた、当たり前の幸せ。
もう少し、もう少しで、手が届きそうな気がする。
叶いますように。
叶いますように。
199
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:20
それは、ある日の出来事。
いつものように石川さんの家に寄り、
ソファーに座りテレビを見ていた。
「何か、今日暑いね。」
「うん。」
ジメジメとした暑さが夏の始まりを告げていた。
「石川さん。喉渇かない?」
「少し、乾いたかも。」
「ウチ駅前のコンビ二で何か飲み物買ってくるよ。」
ウチはそう言って立ち上がりかけた。
すると石川さんはウチのシャツの裾を掴んだ。
「いいよ。大丈夫。お水飲も?」
不安気な眼差しでウチを見上げる。
200
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:20
「どうしたの?」
「何だか、今は何処にも行ってほしくないの。」
ウチはソファーに座り直し石川さんの体を硬く抱いた。
「石川さん甘えん坊だね。」
ウチは耳元に甘く囁いた。
「違うの、何か。よく分からないんだけど、何か・・。」
「何か、何?」
石川さんもウチの体を強く抱き返す。
201
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:21
「このまま帰って来ないような気がして・・。」
ウチは笑って体を離した。
そこには今にも泣き出しそうな顔をした石川さん。
「んなわけないっしょ?」
その開きかけた唇に自分の唇を合わせる。
軽く吸って離す。
「それに今、氷切らしてるし。」
それでもまだ不安そうな彼女。
だからつい、思わず言った。
202
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:23
「好きだよ。」
石川さんは一瞬目を大きく開く。
「え・・っ?」
ウチは石川さんの頬を軽く撫でた。
「今更だよ・・ね。」
自分の顔が熱くなっていくのが分かって横を向いた。
「もう一回。もう一回言って?」
「や、嫌だよ。恥ずかしい。」
203
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:23
自分がこんな風になるなんて信じられない。
もう二度と人を好きにならないと決めていたのに。
この世で『特別』は一人だけだと決めていたのに。
石川さんといると優しい気持ちになれる。
石川さんといると笑っていられる。
だからもういいでしょ?
もう忘れてもいいでしょ?
204
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:24
「ほら、離して離して。」
無理矢理石川さんをウチの体から引き離し、
もう一度唇に軽くキスをする。
「雨が降りそうだから早く帰ってくるよ。」
まだ何か言いたげな石川さんを残し、
ウチはその部屋を出た。
205
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:26
外はどんよりと曇っていて、
今にも雨が降りだしそうだ。
でも心は軽いから大丈夫。
やっと開放されたんだ。
もう苦しまなくて良い。
もう、消えて無くなりたいなんて考えなくても大丈夫。
206
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:27
コンビ二で買い物をして、空を見上げると、
いよいよ、雨が降って来そうだった。
目の前の駅は帰宅ラッシュと重なってか、
人でごった返していた。
207
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:28
突っ立ったまま、人ゴミをボーっと眺めた。
この人達は何処から来て、何処へ行くんだろう。
帰る場所があるのかな?
幸せなのかな?
そんな事を考えている暇も無い程忙しいのかな?
待っていてくれる人はいるのかな?
愛シテル人ハ居ルノカナ?
208
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:29
その時。
その中の一人が足を止めた。
ウチは何気無く視線をその人に向ける。
瞬間。体が凍った。
一歩も動く事が出来なかった。
持っていたビニール袋を落として、
中身が往来に転がった。
でも動く事が出来なかった。
209
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:29
あの人だった。
210
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:30
あの時。石川さんが止めた時。
あのまま二人でソファーに座って、
テレビを見ていれば良かった。
でもそんな事を思ったのはもっと、
ずっとずっと後の事だ。
211
:
I’m With You
:2003/06/12(木) 18:30
暗い空から、
冷たい雨が降りだした。
212
:
jack
:2003/06/12(木) 18:31
続く。
213
:
jack
:2003/06/12(木) 18:37
>195さん 他スレをageたのは自分ではありませんが、自分の作品が
age向きじゃない事に配慮してくれたどなたかに感謝しています。
でもそれで気分を害されたのであれば、申し訳ありません。
214
:
名無し( `.∀´)
:2003/06/16(月) 17:05
すごくいいです。
初めて一気に読みました。
続きがすごく②気になります。
作者さんがんばってください!
215
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:02
あなたが好きです。
死ぬほど好きです。
216
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:03
ウチは逃げ出したかった。
だけど、その昔と変わらない瞳に見つめられて。
ウチは動く事が出来なかった。
そんなウチを見て、
相手はゆっくりとウチに近づく。
助けて。
誰か助けて。
ウチを此処から連れ出して。
217
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:03
その時。
何故か石川さんの顔が浮かんだ。
218
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:04
だけど現実はゆっくりと時間を進める。
「久しぶり。」
ウチは言葉を発する事が出来ない。
頭の中は真っ白で。
石川さんの顔がグルグルと回る。
「元気だった?」
助けて。
助けて。
石川さん。
219
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:05
「あ・・やか・・。」
でも、やっと口に出せた言葉は、
五年ぶりの目の前の人間の名前。
「何よ。そんな人を幽霊みたいに。」
彼女はそう言って笑うと、
けだるそうに前髪を掻きあげた。
その左手には指輪が光る。
220
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:07
「あ、結婚・・したんだ。」
自分の声が上ずっているのが分かる。
「そう。五年前に。」
五年前。
ウチの目の前から消えた時。
「だから・・居なくなったの・・?」
彼女は少し考えてから、
「うん。そう。」
ゆっくりと口にした。
221
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:07
海に行きたい。
誰も居ない真っ暗な海に。
222
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:08
彼女は私の耳元にゆっくりと唇を寄せる。
「今でもまだ、私の事が好き?」
223
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:08
五年前。急に居なくなった彼女。
その数日前、駅で昔の好きだった男に会ったと言っていた。
あまりにもその事を嬉しそう話す彼女の目の前で、
包丁をわき腹に当てた。
見せしめように。
ウチにはあなたしか居ないと。
滲む血液。
冷たい手で止める彼女。
224
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:09
「結婚した・・のは。五年前の・・人?」
そうでなければいい。
そうでなければ少しは救われる。
「そうだよ。」
すべては混沌として。
何もかもが灰色がかって見えて。
何処にも救いは無くて、
これは雨なのか、涙なのか。
何も見えない。
何も見えない。
225
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:09
ただ、昔の情景だけがグルグルと頭の中を
回っていた。
「ねぇ。もう一度やり直さない?」
甘く甘美な響き。
「だって、あやか・・結婚して・・。」
手を引っ張られて、無理矢理歩かされて、
気が付くとそこは、ラブホテルだった。
226
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:10
「此処、何処だか分かる?」
ウチは頭を振る。
「私達の初めての場所。」
227
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:13
この人が何を考えているのか、
ウチには理解する事が出来なかった。
ただただ、繋がれた手の、その懐かしい体温と温もり。
あの日々と変わらない気持ちが湧き上がる。
でも。
これじゃいけない。
これじゃいけない。
だけど。
228
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:14
ウチはその時もまだ、石川さんの事を考えていた。
(石川さん待ってるかな?)
あのソファーに、一人で座りながら。
冷たい雨にウチがうたれていないかと、
心配しながら。
229
:
I’m With You
:2003/06/16(月) 21:15
この雨は、いつ止むんだろう。
230
:
jack
:2003/06/16(月) 21:16
続く。
231
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:19
石川さん。
今になって、あなたの気持ちが痛い程分かる。
232
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:21
好きってなんだろう。
誰かを一番好きになった時。
ほんの少し不安な気持ちになる。
会えない時間。
寂しい時間。
ウチは誰が好きなの?
どうしててこんなに心が揺れるの?
233
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:21
大丈夫。
大丈夫。
一人でも大丈夫。
その理由を必死で考えた。
自立した大人だから。
もっと苦しい思いをしている人がこの世の中に
たくさんいる。
ウチはまだ、幸せだ。
又新しい人を探せば良い。
あの時そう考えた。
眼下に広がる、ネオンを眺めながら。
234
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:22
「ひとみ。何考えてるの?」
幸せになろう。
生涯を誓おう。
永遠を誓おう。
だからこの人じゃ無くても大丈夫。
ただ、囚われていた。
思い出と。記憶に。
235
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:23
「ねぇ。」
ウチはあやかの挿す傘から抜けた。
「ねぇ。あの時。あの時思ったんだ。」
ウチは目を瞑る。
「あの時?」
236
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:23
そこは高い高いビルの屋上。
下にはたくさんの光。
あそこに落ちていけば、きっとウチは楽になれると思った。
苦しみから開放されると思った。
だけど出来なかった。
飛び降りなかった自分を、臆病者だと思った。
237
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:24
「ひとみ?ねぇ。もう私の事好きじゃ無いの?
あなたあの時言ったじゃない。私の事いつまでも好きだって。」
ウチはあやかの髪を撫でた。ゆっくりと。
「ウチは、あなたが好き。あなたがどんなに
他の男と付き合っていても。あなたの事を一番愛してた。」
この命をかけて。この心をかけて。
あなたと一緒に。ずっとずっと。
238
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:24
ウチは髪を撫でる手を止めて。
「ねぇ、あやか。何がそんなに悲しいの?」
涙が出た。
石川さんを想った。
あの人は全部知っていたんだ。
ウチが誰かに恋焦がれている事を。
それなのに側に居てくれた。
何も望む事も無く。
239
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:25
「あやか。ウチ、今でも好きだよ。だって決めたんだ。
ウチが心から愛する人はあなただけだって。」
「だったら・・。」
目の前の人が、突然哀れになる。
この人は愛されたいんだ。身も心を委ねられる。
本当に自分を理解してくれる人に。
たとえ誰かと永遠を誓ったとしても。
我侭だね。
240
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:25
ウチも同じだよ?
だから。
だから。
241
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:26
「ウチの事をこの世で一番愛してくれる人がいるんだ。」
ウチもその人の事が中々好きなんだ。
あなたの時程では無いけど。
だけどあなたがくれなかったものを、たくさんたくさんくれるんだ。
「ごめんね。」
そう言ってウチは背を向けた。
うらびれたラブホテルの前で。
びしょびしょに濡れていたけど、
気にはならなかった。
242
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:26
帰ろう。石川さんの所に帰ろう。
そして何もかも話すんだ。
そして、一緒に。
ウチと一緒に居て下さいって言おう。
今迄ごめんね。って。
243
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:27
その時後ろで、水の跳ねる音が聞こえた。
ウチはゆっくりと振り返る。
ああ。そうだ。
そういえば昔。神様にお願いした。
消えて無くなりますように。って。
出来ればあやかの目の前でって。
244
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:27
雨にまじり、赤い液体が道を染める。
245
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:28
「嘘付き。嘘付き。」
あやかが呪文のようにそう呟き続ける。
ウチのわき腹にギラギラ光るものを突き刺しながら。
246
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:29
石川さんが待ってるんだ。
あの部屋で。
ウチの事だけ待っているんだ。
今度一緒に、海を見に行くんだ。
いつも寂しくなると海を見に行くんだよって、
まだ教えていないんだ。
たくさんたくさん、話しをするんだ。
247
:
I’m With You
:2003/06/18(水) 21:29
石川さん。
梨華ちゃん。
ウチと一緒に。
いつまでも・・・
いっ・・しょ・・・に・・・・
ウチの・・事・・
心・・・から
愛シ・・・・テ
248
:
jack
:2003/06/18(水) 21:30
続く。
249
:
名無し(0´〜`0)
:2003/06/19(木) 01:35
連続更新多謝
250
:
オガマー
:2003/06/20(金) 07:51
やべぇ・・
泣けた。
どうなるんだ、よっすぃ〜!!
251
:
名無し(0´〜`0)
:2003/06/20(金) 19:33
いい!
252
:
名無し(0´〜`0)
:2003/06/20(金) 19:46
。・゜・(ノД‘)・゜・。よっちぃ〜〜〜
どうなっちゃうんだろ?(オロオロ
253
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:40
あなたには『特別』な人がいますか?
その人は、あなたの隣で笑っていますか?
254
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:41
色とりどりの花が毎日私を向かえてくれる。
あれから五年。今日も私はあなたを想う。
寂しそうな、それでいて透明な瞳を持った、
この世でたった一人の私の『特別』な人を。
255
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:42
「いらっしゃいませ。あれ?」
「よっ。石川。元気でやってる?」
軽く手を上げて現れたのは、このお店の一番の常連客。
「保田さん。こんにちは。」
「はい。こんにちは。っと。」
私は黄色いヒマワリをたくさん腕に抱える。
「まだあいつの事好きなの?」
私は黙って頷く。
256
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:42
「そう。ねぇあんたもそろそろ」
「保田さん。」
保田さんの言いたい事は痛い程分かる。
『早く新しい人見つけなよ。』
『あんただって幸せにならなくちゃ。』
「私はもういいんです。この世でたった一人の人と
もう出会ったから。もういいんです。」
257
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:43
あの人が私のたった一人。
可笑しいかな?
世界には、たくさんの人がいるのに。
でも私にはあの人だけで。
258
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:43
まだたくさん話したい事があったのに。
たくさん伝えたい事があったのに。
私の中のあの人は、いつも寂しそうだったから、
私が幸せにしてあげたかった。
それとも少しは幸せだったのかな?
こんな私でも、少しは幸せにしてあげる事が出来たのかな?
259
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:44
「ほんとにこのままでいいの?」
私は黙ってうなずく。
腕の中のヒマワリも一緒になって震える。
「そっか。」
それ以上は何も言わず、保田さんはただ少しだけ
寂しそうに笑った。
260
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:45
今日は、あの人が消えてしまった日。
今でもあなたを想う。
永遠にあなただけを想う。
261
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:46
時々、胸が張り裂けそうな程痛いけど。
一人の部屋で、声を殺して泣く日もあるけど。
だけど、あなたを愛してる。
あなただけを愛してる。
私はあなたとずっと一緒に居る。
ずっと。ずっと。ずっと。
262
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:46
「保田さん。お店もう閉めますよ。」
「はいはい。んじゃ、又来る。」
手を振りながら保田さんは帰っていった。
ピンクのチューリップを一本買って。
263
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:47
今もまだ、あの部屋を引っ越せずにいる。
吉澤さんとの思い出がたくさん詰まった部屋。
あれから何も変わっていないような気がする。
変わったような気もする。
264
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:50
ポツポツと雨が降って来た。
「ただいま。」
今はもう誰も尋ねてはこないこの部屋に私の声
だけが虚しげに響く。
私は窓の外の雨を暫く眺める。
優しい雨音が、心地良い子守唄に聞こえる。
ウトウトと意識は遠い遠いまどろみの中へと。
265
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:53
『石川さん、ほら、こんなとこで居眠りしてると、
風邪引いちゃうよ。』
『ごめんね。ウチ道に迷っちゃって。帰ってくるのに
五年もかかっちゃったよ。なぁ〜んて。』
『もう、ほら。早く起きてよ。』
何処か遠くの方で誰かの声が聞こえる。
心地良い。低い声。
私はなんだか、ひどく心地良くて。
266
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:55
『でも、やっぱり待っててくれたんだね。』
ああ、これは吉澤さんの声だ。
夢の中に出てきてくれたんだ。
ありがとう。
アリガトウ。
吉澤さん。大丈夫。大丈夫だから。
私はいつまでも待ってるから。
267
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:57
「石川さ・・梨華ちゃん。愛してる。ただいま。
これからはずっと一緒に。」
頭の上に手が置かれた。
温かい。優しい手。
私はその声と温もりに安心して、深い眠りへと落ちた。
ずっと一緒に。
ずっと・・ずっ・・と、一緒・・に。
268
:
I’m With You
:2003/06/24(火) 19:58
END
269
:
jack
:2003/06/24(火) 19:59
終わりです。読んでくれた皆さん。ありがとうございました(w
270
:
名無し(0´〜`0)
:2003/06/25(水) 19:36
。・゚・(ノД`)・゚・。泣きました。
最高でした。ありがとうございました。
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