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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part5

1名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:32:26
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第5弾です。

ここに作品を上げる →本スレに代理投稿可能な人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
① >>1-3に作品を投稿
② >>4で作者がアンカーで範囲を指定した上で代理投稿を依頼する
③ >>5で代理投稿可能な住人が名乗りを上げる
④ 本スレで代理投稿を行なう
その際本スレのレス番に対応したアンカーを付与しとくと後々便利かも
⑤ 無事終了したら>>6で完了通知
なお何らかの理由で代理投稿を中断せざるを得ない場合も出来るだけ報告 

ただ上記の手順は異なる作品の投稿ががっちあったり代理投稿可能な住人が同時に現れたりした頃に考えられたものなので③あたりは別に省略してもおk
なんなら⑤もw
本スレに対応した安価の付与も無くても支障はない
むずかしく考えずこっちに作品が上がっていたらコピペして本スレにうpうp

722名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:52:01

「そうじゃなくて」
「……なんですか?」
「あなた達の仲間になれなくても、能力者同士みんなで助け合う事は出来ると思う! だから、また会えないかな?」

宮本さんが振り返る

「優しいんですね。でも、助け合いは無理ですよ」
「どうして!?」
「私達は、皆さんと一緒には居られない」

ねえ
どうしてそんなに辛そうな顔してるの?
助けて欲しいんじゃないの?

そもそも

「あなた達は一体何者なの?」
「こうなった以上、詳しくは言えません。ただ今は〝J〟とだけ伝えておきます」

そう言って振り返り、宮本さんは去って行った
その背中は、とても淋しそうに見えた

「あの、譜久村さん」

訊かなきゃ
宮本さんとの事

「宮本さんと知り合いみたいでしたけど、どういう関係なんですか?」

723名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:52:54

目が合った譜久村さんは、気まずそうに逸らした

「……ごめん。言えない」
「え、どうしてですか!?」

私を引き込もうとしたのは宮本さん
その為に道重さん達をおかしくしたのも、きっと宮本さんのはず

その宮本さんと知り合いかどうかが言えないって
どうして?

「私はリゾナントを追い出されたんですよ!? それなのに
「今は駄目なの! 聖のワガママだって、勝手な事を言ってるってわかってるけど……いつか言う。だから、待ってて欲しい」

真っ直ぐ私を見る譜久村さん

その瞳から、後ろめたさは感じない
今の言葉が嘘だって思えない

だけど、 簡単に納得なんてできない

ウチはどうしたらいいの?

この瞳、信じていいの?

724名無しリゾナント:2015/03/05(木) 13:02:53
>>720-723
全然生誕祝っていない内容ですが、ひとまずここまでです。
1年以上前の生誕作ですみません。

>>113の書き込みは私です。

>>133
ブラウザはプリインストールのSafariです。

>>137
リゾネイターシリーズの後に投稿する勇気がなく、タイミング待ちでした。

よろしければ、代理をお願いいたします。

725名無しリゾナント:2015/03/05(木) 18:41:39
>>724
行ってきました

726名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:40:47
■ ティンカンドラム -石田亜佑美X石川梨華- ■

「別の【獣】を出してきたときは、ちょっとびっくりしちゃったけども…」

鎧が、軋む。

「結局、それも見かけ倒し…」

見えざる巨人の、見えざる鎧が、聞こえぬ音を立てて軋み、歪み、悲鳴を上げる。
成長している。進化している。
新垣の知る頃とは、比較にならぬ、その破壊力。

もはや、これまでか。

『カムバック!バルク!』

鎧がひしゃげるのと、号令が発せられるのとがほぼ同時。

【空間跳躍】

その身を上空に転じた石田を、見えざる触手が追う。

【跳躍】

捕えられぬ。
触手は石田を捕えられぬ。
次々と【跳躍】し触手を翻弄していく。

再び【跳躍】
距離を取り、石川と対峙する。

727名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:41:22
「おどろいた、今度は【テレポート】?まるで高橋もどきじゃん。」
「まだ、高橋さんには及びません。【読心術】も、ウチには無い、でも」

ざんと一歩前へ。

「ウチにはあなたの【獣】が見える。あなたのきもちわるい触手、一本一本はっきりと!」
「ハァ?いま、なんつったぁ?」
「ウチにはあなたの攻撃は通用しない。そういったんですよ!」
「アタシの…【獣】が、なんつったぁ?」

先端部ですら人の脚ほどの巨大な触手が群れをなして石田に襲い掛かる。
その尋常ならざる圧力を、軽やかにいなし、かわし、翻弄していく。

「無駄です、石川さん。私はまだ『もどき』かもしれない。
でも、あなたに対してならウチは高橋さんと一緒、あなたはウチらには勝てません。」

「へぇ?凄い自信だこと。」
うごめく触手その中央、石川が静かにこちらを睨む。

「そのわりにはアナタ、さっきから逃げ回ってばかりじゃなくて?」

「…」

「それってさぁ、直接アタシに触れる距離に【テレポート】してこれないってことじゃないの?」

「…」

「アタシの【獣】が見えるならわかるもんねぇ…、
アタシの周囲には、誰かが入れる隙間なんかないことが、ねぇ?
この子たちに守られている限り、アンタにはアタシを倒すだけの攻撃手段が、ないんじゃないのぉ?」

728名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:42:13
沈黙が指摘の正しさを裏付ける。
かつて、高橋は田中の【共鳴増幅】により、研ぎ澄まされた【読心術】で、
見えない【念動力】の動きを読み切り、【瞬間移動】によって、石川の周囲に一瞬生まれた隙間を捉え、これを打倒した。
だが、今の石川に、その隙はない。
石川の周囲には、もはや他者が存在できるスペースが、無い。
巨大な触手の群れ、その根元、石川は、その中心にいた。

「だったらさぁ、これって我慢比べってことよねぇ?
アタシって、これでも結構執念深いの。
どうぞ、いつまででも、逃げ回ったらいいんじゃない?
アタシは、いつまででも、追いかけ続けるだけだからさ、ねぇ?」

『結構』執念深い?いやいや、見たまんま執念深そうだっちゃ…
でも、そんなの何にも怖いことないね!

「逃げ回る?とんでもない、そんなお手間は取らせません、石川さん。」

腰に手を当て、仁王立ち。

「攻撃手段なら!あります!」

「へぇあるんだ?だったらさぁ、さっさと、みせてもらおうかなぁ!」

再び、おぞましい圧力がうねり、石田に向かって殺到した。

729名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:42:51
■ ティンカンドラム -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

730名無しリゾナント:2015/03/07(土) 00:57:27
□ ノーアイヴィー -石田亜佑美X石川梨華- □

【IB】、すなわち・・・

石田の目に映るもの。
今、目の前に居る、その凶事。

石川梨華

その女の、その胸囲。

おぞましく、美しく。
うぞめき、のたうち。
うねり、反り返る。

『乳房』

カントリー娘。で育ち、ROMANSで磨かれ、美勇伝で開花した。
それが、石川梨華の、真の、【能力】。

すなわち、

731名無しリゾナント:2015/03/07(土) 00:58:07
【幻想の乳(イリュージョナリーバスト;illusionary bust)】!

732名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:00:11
ぶつかり合う、乳と乳。
しかし圧倒的な質量差からか、石田の見えざる乳は空中に四散し、消滅した。

「あーあー、あっけなかったわね? 
ヘソは出てるのに乳はへこんでるって、どうなの?」

「…ウチからしたらそれだけの巨乳を操るほうが、よっぽど、おかしいんですけど」

「はぁ…まあ、いいわ…まだやる?もっと大きく『出せる』んでしょ?」

「…」

「え?うそでしょ?私なんかあんたくらいの年にはもうC〜Dはあったわよ?」

「出来ないとか、言ってないし。
ウチだって、杜の都の巨峰とか、正宗公が生んだスイカップとか、言われたことはあります。何回かは」

「今時そんな見え透いた嘘、たぐっちでもつかないわよ? 
…で?どうするの? …まだやるの?降参するなら、許してあげるわよ? 
そうね…『愛すクリームとmy プリン』のジャケ写の、恥ずかしいバニー服を着る程度で」

「やれるもんならやってみろ、こんちくしょう!!」

石田が吠える。
すると、地平線の彼方から駆けて来る、一匹の獅子。
その逞しい牙に咥えられた、パック状の物体は…

733名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:01:25
(ナレーション)あなた、最近乳揺らしてますか?

出生率の低下… 少子化問題… 無い袖も無い乳も触れない…

今、日本の女性が危ない…

しかし、そんな洗濯板な女性に救世主が!!

それが今回ご紹介する豆乳飲料、その名も…


「巨乳王」!!!!


日本に残された最後の秘湯と名高いあの「凡奇湯」の源泉で育てた黒大豆のみで作られた豆乳、そのイ
ソフラボン含有率は何と2981(フクパイ)ミリグラム!!

ここで実際にお使いいただいたお客様の声をお聞き下さい。

734名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:03:02
「いやー、最初は半信半疑だったんだけどね。飲んだ翌日からもー、バストがきつくてきつくて、バイ
ンバイン。最近は舞台でも巨乳の役ばっかなのよぉ。ありがたいねー。いくt…じゃなかった、後輩の
Ⅰ田にも勧めて、効果も出てるみたい」(神奈川県:眉毛ビームさん26歳)

「れいな通販の事は大体知っとうけん。こんなんインチキやろ、って。やけん、これもただの豆乳っち
ゃろって飲んでみたら、もうまりんの目つきが昨日と違いよる。これでライブでもお乳ぷるんぷるん揺
らせるっちゃんね。あ、おかまりにはあげんとよ?」(福岡県:ボーボーたい!さん25歳)

735名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:04:50
ともかく、その「巨乳王」を荒獅子から受け取ると、一気に飲み干す。これで石田の乏しい胸も…

「って、ぜんぜん大きくなってないじゃん」

「こ、効果には個人差があるんだから!!」

そう。こういうものは、毎日飲むことではじめて効果が出るのだ。
ローマの道も一歩から、万里は一日にしてならず、しゅごキャラエッグのアミュレットハートはぺったんこ。

しかし石田の攻撃はここで終わりではない。
突然、石田の幻想の乳が天を衝くほど上向き、そしてグランドキャニオンのような峡谷を作る。そこには、
鉄巨人の限界まで寄せて上げる努力と技術が。

「なによ!そんな見せ掛けの技には騙されないんだから!!」

あまりにもお粗末な仕掛けに啖呵を切った石川。
たがその次の瞬間、石川はとんでもないものを目にすることとなる。

「な…なんですってえ!?」

ふわふわと、石田の目の前に降り立った、中空の藁人形。
無数の管が、石田の乳に陰影をつけ、膨らんでいるように手を加える。フォトショップもびっくりの画像
加工に、石川も空いた口が塞がらない。

「どやっ!これがウチの…『Dシステム』だ!!」

736名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:05:29
【IB】たちの活躍によって、貧しい石田の乳は、あたかもグラビアアイドルのそれであるかのように偽装される。

すなわち、

(石田の乳を)D(カップに偽装する)システム

現代科学の粋を集めた技術が今、石川に襲い掛かろうとしていた。

737名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:07:28
      WORNING


この物語のキャラクター設定は、■シリーズにおけるオリジナルの設定とは著しく
異なっております。
作品のイメージは一端捨てて、新たな気持ちでお楽しみ下さい。

738名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:09:33
>>730-737
□ ノーアイヴィー -石田亜佑美X石川梨華- □  でした
…苦情は受け付けます

739名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:02:28
■ ストロウドオル -石田亜佑美X石川梨華- ■

『カムオン!スカークロウ!』

石田の眼前、空気が渦巻く。
ゆっくりと立ち上がる、物言わぬ、大きな案山子。
無数のストローの束が、そのまま人の形を成したかのような、異形。

「へぇ?そのぐにゃぐにゃしたのが『攻撃手段』?
触手には触手ってことかしら?でも全然甘いんじゃない?」

石川梨華は、真っ赤なマニキュアの光る、
その長い指をくるくると回し、石田の案山子を値踏みする。

「その藁人形の手と足、それと、頭も伸びるのかしら?
全部合わせても、たった5本だけじゃない?
それっぽっちで『攻撃』?それ以前の問題よね?
それっぽっちで、どうやって防ぐのかしら?アタシの【獣】をサ!」

石川の正面、触手の群れが立ち上がる。
巨圧がうねり、うち二本の触手が石田めがけて振り下ろされる。

『スカークロウ!アタックモード!』

主の号令に案山子は応える。
その両の腕を、ゆっくりと、上げる。

束ねたストローを、ざっくりと輪切りにしたような断面。
それが案山子の手のひらなのか?
襲いくる触手に、その指なき手のひらを向ける。

740名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:03:22
遅い。

とても間に合わない。

とても、防ぎきれない。


ずぼり。


その時、その断面に、指が、生えた。

指?ちがう。
黒光りする金属質な筒を、深い飴色の、木製品を連想する質感が包む。

これは、銃だ。

片手に5丁、合計10丁の、フリントロック。
かつて大西洋で暴れまわった、海賊たちが手にしていたかのような、単発銃。

『エイミーング!』

銃口が、バラリと向きを変える。
迫りくるその触手、左右からの一本一本へと。

『ファイヤ!』

轟音

741名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:03:59
触手が爆ぜる。
先端が千切れ飛び、一回転して、虚空に消える。
迫りくる脅威は、一瞬で消滅した。

『リロード!』

藁の断面から次々と抜け落ちる単発銃。
地面に跳ね、同じく虚空へと消えていく。

そして、新たな銃が断面に生え変わる。

スカークロウ、姿なき案山子の暗殺者、無言の、銃撃手。

742名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:05:07
■ ストロウドオル -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

743名無しリゾナント:2015/03/07(土) 23:48:29
「だいじょーぶ? 朱音が〝なおして〟あげるー!」

「いたいのいたいのとんでけー!」

「ほら、もういたくないでしょ? おにごっこのつづきしよ!」

──

「なんで? なんで朱音とあそんでくれないの?」

「こっせつってなに? けがは朱音が〝なおした〟でしょ?」

「おれてるのにあそんだからわるくなった?」

「いたくなかったんでしょ? なおったんでしょ?」

「こわいってなによ!」

「朱音は〝なおして〟あげたのに!」

「ひどい!」

「もうあそんであげない!」

──

「朱音が力を使っても、みんなの傷は消せない」

「朱音は、なんで生まれたんだろう──」


なんという保全作だ

744名無しリゾナント:2015/03/08(日) 16:51:13
■ ヘッジホッグ -石田亜佑美X石川梨華- ■

「おどろいた。銃が撃てる【獣】?
アナタすごいの持ってるのねえ。」

石川梨華が芝居がかった態度で大げさに驚いて見せる。

「でも、いまのは、たった2本。
アナタのその豆鉄砲みたいなのは?ああ10丁だけだったわね。
10丁あって、こっちの2本に精一杯って感じじゃない?
じゃあ次、こっちも10本に増やしちゃおうかしら…」

石川の周囲にうねる触手。
立ち上がり、反り返り、その先端を奔らせるべく、力をためる。

『スカークロウ!フォワード!』
案山子は石田を背に、迫る触手を阻まんと一歩前へ。

「さぁ!おてなみぃ!はいけええええええん!」

殺到。

10の触手がうなりをあげ、石田と案山子に殺到する。

完全不利な状況。
だが、ドヤ顔は、崩れない。

『スカークロウ!フルバースト!』

号令に案山子が応える。
無言の了解を、その身に示す。

745名無しリゾナント:2015/03/08(日) 16:51:51
それは正に、針鼠のごとく、
全身から、無数に生え連なる―――

―――フリントロック、フリントロック、フリントロック!

火力を、数で、補う。

『エイミーング!ファイヤ!』

大轟音

10の触手の、その先端が。
爆ぜ、爆ぜ、爆ぜ、四散する、霧散する。
飛び散り、舞い散り、消滅する。

『リロード!』

無数の銃が滝のごとく抜け落ち、瞬時に新たな銃へと生え変わる。

『エイミーング!』

針鼠の、その針が。
無数の、銃口が。
先端を失った、その触手の根元、石川梨華へと。

『ファイヤ!』

746名無しリゾナント:2015/03/08(日) 16:53:10
■ ヘッジホッグ -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

747名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:44:56
■ グレイトブレイド -石田亜佑美X石川梨華- ■

一斉掃射。
その無数の弾丸が、止まる。
虚空に、停止する。
被弾はしている。
いくつかの触手、その先端を、吹き飛ばしは、した。
だが、それでも、届かない。
それは、あまりにも、質量が、違いすぎた。

「うっさ…。音ばっかでかいけどさぁ…で、何が変わるわけ?」

案山子の打ち出す真円の弾丸、最終的に、その全てが阻まれた。

「もう、アナタもわかってるわよね?
そんなちっぽけな火力じゃ、せいぜい触手の先端を吹っ飛ばすことしかできない。」

根元に行くほど太くなる。
直径にしておよそ1m、巨木を思わせるその触手。
その巨塊に、阻まれる。

748名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:45:42
だが、石田の自信は、揺るがない。

「でしょうね。でも、石川さんの触手も素早く動かせるのは先端だけ。
その太い根元は動かせない、ちがいますか?」

ぴくり、石川が眉をしかめる。

「これは我慢比べなんでしょ?
スカークロウの弾が尽きるのが先か、石川さんの触手の再生が追い付かなくなるのが先か、
やってみましょうよ」

ざん、ふたたび仁王立ち、ドヤ顔。

「くくくく…」

石川が、嗤う。

「ばっかねぇアンタ…ねえ?アンタ、アタシがアンタごときにそんな時間使うと思うの?」

圧力、異様な圧力が石川の周囲に充満する。

「我慢比べぇ?やーめ!そんなのやめやめ!」

触手が石川の周囲に引き寄せられる。
殺意、質量をもった殺意が凝縮する。

「根本は動かないぃ?アンタさ、アタシがどうやってアンタらを追いかけてきたか、もう忘れたの?」

ドォオオオオン!

749名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:46:26
地響きとともに跳躍する、殺意の巨塊。

「まどろっこしいこたオシマイ!直接押し潰してやるよぉ!」

襲い来る、その巨塊に。

『ファイヤ!』

無数の銃口が火を噴く。
だが無駄だ。その巨塊は止まらない。
その火力では、阻めない。

一瞬で潰れ、のみこまれ、引きちぎられる、哀れな案山子。
触手が伸びる。
案山子の後ろ、もはや守る者のない、か弱く孤独な少女へと。

750名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:47:04
いやまだだ、少女にはまだ【空間跳躍】がある。
まだ逃げ切れる、そのはずだ。
さあ、はやく逃げろ。
いますぐ【跳】べ!

【跳】べ!



 いやだね!



少女は逃げない。
仁王立ち。
ドヤ顔は、崩れない。

獅子、鎧、案山子、全て阻まれた。
もはや、逃げ回るしか手は残されていない。
それでも、逃げない。
少女の自信は、揺るがない。
勝利への確信は、揺るぐはずがない。

なぜなら、少女は。
石田亜佑美は、一人ではない!

バツン!

破裂音。
広げた濡れタオルをしならせて空気を叩いた時のような。
その音が何倍もの音量で、周囲に鳴り響く。

751名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:47:36
内圧のかかった肉塊が、一気に切断されるときの音。
だがその音を耳にすることができたのは、『その場の3人のうちの2人』だけ。

「おそくなってごめん!亜佑美ちゃん!ウチも、やっと『捉えた』よ。」

直径にして1m、巨木を思わせるその触手、その根元から。

「なっ!なにさこれぇ!」

一刀両断

突然、上空から飛来したそれは、
きらきらと輝く水の太刀。
だが、それは『かたな』と呼んでもいいものなのか?

巨塊を両断した水の刃と、それを駆る小さな少女は、その勢いのままに地面に激突する。
衝撃音はない。
受け身。
音もなく地を転がる。
常人ならざるその技量。
立ち上がったその少女は、鞘師里保、そして…

ズシャン

その落下音の響き。
小柄な鞘師の肩に担がれた、その水の太刀、その切っ先は、はるか後方の地面にめり込んでいた。
人の腕ほどの身幅、人の指ほどの厚み…その刃渡り、ゆうに2mを超える。
巨大で長大な『水の化け物』。

そう、これは『太刀』なのだ。

752名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:48:20
かの時代の大太刀、人の身に余る長さ、人の身に余る重さ。
だが、もし振るうこと叶うなら、それはあらゆる【獣】を両断できよう。

今、まさに、『そうした』ように!

「石川さん、亜佑美ちゃんが、すべてを引き出してくれた。
ウチが、あなたの【獣】を『捉える』ために。
見えなくても、聞こえなくても、その、殺意は『観える』。
あなたの【獣】が、あなたの殺意が、ウチにはもう、はっきりと『観える』。」

「ぐぅ…くっ!」

「もう、あなたに、勝ち目は、無い。」

753名無しリゾナント:2015/03/14(土) 07:48:50
■ グレイトブレイド -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

大事を取り.scのほうへ投稿させていただきます。

754名無しリゾナント:2015/03/14(土) 19:23:41
本スレにて
本スレへの転載を提案してくださる方がコメントを残してくれているようです
書き込めるのに書き込まないというのはさすがに悪いかなと思ったのですが
もし転載していただけるならご厚意に甘えたいと思います

755名無しリゾナント:2015/03/14(土) 20:00:49
転載行ってきます

756名無しリゾナント:2015/03/14(土) 23:43:39
■ バスタアブレイド -鞘師里保・石田亜佑美X石川梨華- ■

『カムオン!リオン!』

再び現れる。
空気が渦巻き、見えざる獅子が、聞こえぬ咆哮を。
だが、鞘師には『観える』。

『リオン!ライディングモード!』

獅子の背に並ぶ鋭利な鬣が前後に分かれ、フラットな背が形成される。
【空間跳躍】、石田がその背に。

この日のために、そう、『あり得る可能性』、この日のために準備をしてきた。

見えざる【獣】を、『観る』ために。
見えざる【獣】を、『駆る』ために。

「鞘師さん!」
「うん!」

鞘師里保は、迷うことなく飛翔する。
巨大な水の太刀担ぎ、石田の後ろ、何もない、その空間へ。

両膝で、石田の背を挟みこむ。
ただそれだけを支えに、何もないその空間、その『気配』の上へと佇立する。

「行こう!亜佑美ちゃん!」
「はいっ!」

757名無しリゾナント:2015/03/14(土) 23:44:21
大太刀は、歩兵の武器である。
腕力では振るえぬその太刀は、脚によって、移動によって、振るわれる。
その身を晒し、その身を切らせる、だが、寸前でかわす、ながす、切らせない。
回避が、そのまま攻撃となる。
刀も、剣も、盾も、槍も、あらゆる得物を、人馬を、薙ぎ払う。

だが、それ以上に

『GO!』

かの太刀は

「おおおおおおおっ!」

馬上において、騎乗時において、絶大なる―――

もはや、そこに会話は無い。
石田は、ただ、突撃する。
左右から襲い来る触手を、『左右には』、かわさない。
ぶつかっても構わない。
だが、その突撃は、必要最小限、斜め前へ、斜め前へ、ゆるやかな弧を描いていく。
触手は触れない。
石田にも獅子にも寸毫とも、触れられない。

758名無しリゾナント:2015/03/14(土) 23:45:25
すべてが、断ち斬られる。
斬り、斬り、斬り伏せられる。
裂かれ、割られ、打ち倒される。

逆らわない。
鞘師の振るう、その太刀に。
石田と獅子、斬撃の度にかかる、その慣性に、逆らわない。
乗る、乗る、どんどん乗る。

鞘師の生む、その『計算されつくした慣性』に、すべてをゆだねる。
ただ、前へ!前へ!前へ!

「くっ!…くっそ!くっそ…」
石川梨華は、狼狽する。
怯えている。
恐怖を知らぬ、己が【獣】が、聞こえぬ悲鳴を上げている。

違う。
さっきまでとは、違う。
迫りくるその獅子は『違う』!

もう、逃げられない。
もう、遮れない。
獅子は!太刀は!もう!眼前に!

「くっそがああああああああ!!!」

759名無しリゾナント:2015/03/14(土) 23:47:03
>>756-758

■ バスタアブレイド -鞘師里保・石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。


以上
代理投稿願います。

760名無しリゾナント:2015/03/15(日) 00:09:45
代理投稿行ってきます

761名無しリゾナント:2015/03/16(月) 22:52:03
■ ワンサイド -石田亜佑美X石川梨華- ■

71

それが激闘の、いや、一方的な暴力の、繰り返された回数。

断ち斬られ、再生し、また断ち斬られ…
追い立てられ、押し込まれ、攻め立てられ…
やがて、再生も滞り、『現象化』を維持することすら、出来なくなるまで、の…

想定内。
全てが、想定内。

荒い息。
黒のエナメル、べっとりと血に染まる。
肩が、ない。
いや、わずかに繋がり、ぶら下がっている。
消えかかる最後の触手は、両断されながらも主を守り、その斬撃を右肩までに、食い留めた。

ごふっ…

吐血。
泥のような血痰が、とめどなくあふれる。
もはや、立ち上がることも、できない。

だが、まだだ。
その眼は、光を失わない。
憎しみの、執念の、その光を。

762名無しリゾナント:2015/03/16(月) 22:52:47
石田亜佑美は、視線を、真っ向から受け止める。

「石川さん、私、嘘をつくのが下手な人間なんです。」

既に言葉も発せぬ、その凶敵に、語り掛ける。

「私たちは本当に、だれも高橋さんの行方を知りません。
でもきっと、あなたは信じない。
いえ、言葉は信じても、それでもきっと、あきらめない。
何が何でも、私たちから情報を引き出そうとする…
…力づくで…」

「……」

「戦ってみてよくわかりました。
あなたはそういう人だ。
一回負けたぐらいのことでは、あなたは決してあきらめない。
死ぬまで…死んでも…あきらめない。
何度でも、私たちを襲う。」

鞘師は、石田に乞われ、二人の会話が聞こえない距離を、取った。
危険は承知、油断ではない。

「ウチ…私は、かつて高橋さんと戦い、負けました。
…完敗でした。
だから、私はもっと強くなって…いつか…
そのつもりで高橋さんの申し出を受けました。
でも正直…もうそれ、どうでもいいんです、私。」

凶敵から、目を離す。
天を見上げる。

763名無しリゾナント:2015/03/16(月) 22:53:39
「みんなのことを守るのは、いつか、高橋さんに勝つためだった。
でも、そんなの、一瞬で忘れちゃった。
だってみんな、みんな大好きだから。」


 石川さん、あなたでは、絶対に、高橋さんには、勝てません。


「それでもあなたはあきらめないでしょうね…
だから、私は、迷うことなく『みんな』をとります。」

石田は懐に手を入れる、小さな『なにか』を…。

「私は高橋さんの行方を知らない。
でも、約束してくれました。」

 いつか再び会ってくれると
 いつか私が強くなって…

「高橋さんは、いずれ自分は共鳴を失うとおっしゃっていました。
それでも会ってくださるとおっしゃった。
これは、そのときに…」

ぽとりと石川の前に落とす。
血濡れのエナメル、その胸元に。

「私は何もしゃべりません。
ただ、大事な頂き物を、どこかで落としてしまっただけ…
それを、誰が拾おうが、どう調べようが、その人の自由。」

764名無しリゾナント:2015/03/16(月) 22:54:37
もはや、再び見ることは無い。
その凶事を。その凶敵を。
踵を返す、背を向ける。

「石川さん、高橋さんに会ったら…いえ、なんでもありません。」

そうだ、謝る必要などない。
何も、伝えることなどない。
飲みこんだ言葉の代わり、白い紙片が、はらりと。
単語帳?
落ちる紙片を目で追いながら、歩み去る。



石田は元気です
石田は、リゾネイターのみんなが、大好きです

765名無しリゾナント:2015/03/16(月) 22:55:47
>>761-764
■ ワンサイド -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

以上
代理投稿願います

766名無しリゾナント:2015/03/17(火) 01:24:39
代理行ってきました

767名無しリゾナント:2015/03/17(火) 19:26:38
>>678-688 の続きです



ダークネスの幹部「煙鏡」が流したアナウンスは、もちろん工事区画内の里保にも届いていた。
それ以前に、激しく舞い上がる炎の柱が鉄板の壁の向こうにはっきりと見ることができる。

「…厄介なことになった」

そう言いつつ、ちっとも困っている様子のない女。
寧ろ、元から困っているような表情をしているので判別が難しい。

「…あなた、リヒトラウムの管理者って言うなら。この状況はまずくないですか」
「確かにね。どうしよう」

里保の心は、「煙鏡」の悪意に満ちた声を聴いた時からすっかり落ち着いていた。
とてもではないが、こんな場所で遊んでいる時間はない。そう言った意味の落ち着きではあるが。

不意に、メロディーが流れる。
女が面倒臭そうに、自分のポケットから携帯を取り出した。

「もしもし…はい。はい…ああ、そうですか。了解」

実に、素っ気ない対応だった。
一体どんなやり取りがあったのか。今日は燃えるごみの日なんで、ごみは分けて出してください。
そんなことを言われていても、おかしくないような態度。

768名無しリゾナント:2015/03/17(火) 19:28:05
「私は、これで帰るから。あとはよろしく」
「えっ…ええーっ!?」
「なんか、『先生』と今放送流してた子との間で話がついてたみたい。堀内のおじさんは、顔真っ赤
にして怒るだろうけど」

呆気に取られる里保を他所に、女は背を向け空を見上げる。
すると、程なくして慌しく風を切る音とともに、一機のヘリコプターが姿を現した。

「そんな!管理者の人がこんな状況で帰るなんて!!」

ゆっくりと高度を下げてゆく、黒い装甲の機体。
落とされた縄梯子に手をかけようとする女に、里保は非難の声をあげた。
しかし、返って来た言葉は。

「所詮、契約に過ぎないから。契約が終われば、何の義理もない。そもそもうちらは、基本的に『外』
の人間。あんたたちの抗争には…関わらない」
「外…? それってどういう」
「そうそう。さっきの話だけど。『本当の実力』、こんなところで出さなくてよかったね。あいつらは多分、
強い」

プロペラが巻き起こす強い風に目を細めながら、そんなことを言う女。
里保の脳裏に甦る、赤い瞳。制御しようのない、狂気。それを振り払うように、慌てて首を振った。

「それじゃ。楽しかったよ」

ちっとも楽しそうな顔ではないが。
それだけ言い残すと、女は左手と左足を梯子に掛けたまま、空に舞い上がった。

769名無しリゾナント:2015/03/17(火) 19:29:40
去り行くものを見送る余裕などない。
それを教えてくれるかのように、遠くの火柱がごうごうと唸りつつもその勢いを増してゆくのが見えた。

…急がないと!!

仲間たちのこともあるが、今のこの状況で最も懸念すべき事態。
リヒトラウムの利用客の安否。
まずはここから出て状況を確認しなければならない。
区画を隔離している鉄板の壁まで走り、扉を開けた里保の前に飛び込んできたものは。

半狂乱になった人たちの、逃げ惑う姿だった。

半径数メートル、天を突く高さの炎の柱。それがいくつも、立ち上っていた。
それがアトラクションの建物を焼き尽くすような光景を見て、正気を保てるような普通の人間はいな
い。それが、如実に現れていた。

我先に、と走り、逃げる人々。
それが、幾重にも連なり、波が押し寄せるように続く。
何だ。何なんだ、これは。しばし思考停止に陥っていた里保の視線は、波に呑まれ、躓き転んでしま
った小さな少女へと向けられた。

「あぶないっ!!!!!」

下手をすると、後続の人間に踏み潰されてしまう。
危険を察知し少女の下へ駆けつけようとする里保。しかし、目の前を横切ろうとした男と衝突し弾き
飛ばしてしまう。

770名無しリゾナント:2015/03/17(火) 19:34:31
「あっ、すいま」
「何やってんだよてめえ、ぶっ殺すぞ!!!!」

謝ろうとした里保に投げつけられる、罵声。
立ち上がった男は、怒りもそのままに振り返ることすらせず再び走り出す。
転んでいたはずの少女は、姿を消していた。彼女もまた、この異常な状況の中で立ち上がり逃げる道を
選んだのだろう。

まるで戦場の真っ只中にいるような、そんな感覚すら覚える。
炎を、消さなければ。
そう思い、炎の燃え盛る場所へと向かった里保は思いがけない事実を知ることになる。

ある一点から、噴水のように吹き続ける炎。
しかしそれを目の前で見た里保は、大きな違和感を覚えた。
よく見ると、その炎は燃え広がるだけで建物をまったく損傷させていなかった。試しに手を翳すと、よ
くわかる。

一種の、攻性幻術。

範囲内の相手に、攻撃性のある幻を見せる。
燃え盛る炎はもちろんのこと、火の爆ぜる音、そして高熱。
そのすべてがまるで現実であるかのように相手に襲い掛かる厄介なものだ。
訓練を受けていない人間がこれを見破ることはほぼ、不可能だろう。

炎の発生点には、チョコレートの箱くらいの大きさの機械が据えつけられていた。
この機械から燃え盛る幻の炎を生み出ているのだろう。
何かを合図に、予め施設各所に仕掛けられていた機械を作動させれば、これだけの広大なテーマパーク
を「あたかも火の海に包まれたように」見せかけるのも容易。

771名無しリゾナント:2015/03/17(火) 19:36:11
ただ、その目的が解せない。
中の客を追い出すのが目的なら、もっと別の簡単な方法があるはず。
放送機器を乗っ取っているのなら、偽の情報を出して退出させればいい。
人々をパニックに陥れるだけの愉快犯なのか。
とにかく、この騒動を引き起こしている人物と対峙しないことには、何もわからない。
かすかに聞こえる心の声は、一箇所に集まっている。そこで、おそらく。

その場で待ち受けている未来を、里保はまだ、知らない。

772名無しリゾナント:2015/03/17(火) 19:38:26
>>767-771
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

773名無しリゾナント:2015/03/18(水) 01:15:58
■ アンチマテリアル -鈴木香音・飯窪春奈・佐藤優樹・工藤遥X石川梨華- ■

「目標、ロスト…ふぅ…石川さん、引き上げたよ。」
塩辛い、工藤遥の声が白い狼の胸腔あたりから聞こえてくる。

「いや、なんにせよ、良かったよ。
こんなところで…『そいつ』をぶっ放さなくて済んで、さ。」

鈴木香音は、足元に目をやる。
空調の室外機と室外機の間、巨大な白い狼が伏している。
その隣には、佐藤優樹。
同じ姿勢のまま、静かに伏している。

静かに…
…静かすぎる。

一言も発しない、身じろぎ一つしない。
あの、佐藤優樹が、『沈黙して』いる。

眠っているのか?
いや、反対だ。
彼女は、覚醒している。
この場のだれよりも、集中している。

沈黙の原因は、彼女に与えられた役割に。
与えられた、その『武器』に。

 『PRCS-MG99RT』対物狙撃銃

装甲車すら貫通する大口径徹甲弾を、2000m先の目標にすら到達させる、死神の鎌。

774名無しリゾナント:2015/03/18(水) 01:16:29
「まーちゃん、終わりだよ。
よく頑張ったね、もう、大丈夫だから。」
飯窪が佐藤のふくらはぎに、ポンポンと軽く触れる。

「……スゥ…ふーーーーーーっ…」
大きく息を吐く。

「ピヒャー!ちょーきんちょうしたー!」
けらけらと笑う。
そのまま、驚くほどの手際、弾倉を外し、照準器を外し…
あっという間、巨大な死神を解体していく。

「くどぅーもスポッター、お疲れ、もう【変身】解いていいんじゃない?」
観測手の役を終えた白狼にも声をかける。
「ああ、そうすっかな。」
のそりと起き上がる。

「いや、それにしても…この距離で、よく細かい位置関係まで把握できるもんだね。」
鈴木香音は額に手をかざし、河川の先、はるか遠方に目を凝らす。

「アタシにゃぜんぜんわかんないけど。」

「ま、ハルも最初はビビったもんすよ。」

冷気が立ち込め、白い霧の中から、びしょ濡れの工藤が現れる。

775名無しリゾナント:2015/03/18(水) 01:18:12
「いちおう、スコープも測距儀も用意してあったんすけどね、裸眼のほうがよくわかるっつう…
ただなんか色の感じ方がいつもと違うのが、ん裸眼?いや『狼』の頭だから…」
「あは、そこどっちでもいいわ」
「まとにかく、『狼』の頭で見るときは、すげー遠くまで、はっきり見えるんす。」
「ほー、犬科ってあんま視力いいイメージないけど、『狼』だからかね?」
「さぁハルも知らないっす。」
「すっごいね!せんびきがんだね!」
「千匹?千里眼でしょ?それ。」
「そう!せんびきがん!」
「いやだから千里…ま、いっか…」

すべては想定されていた。

逃走中の会話、『トラック』という単語。
都内いたるところ、彼女たちは移動可能な『武器庫』を用意していた。
それぞれ、明確な意図をもって厳選され、整備された装備。

「石川さんの【念動力】にも、限界はあるのよ。」

新垣の教え。
石川梨華に通常の小火器は通用しない。
だが、例えばどうだ、重機関銃のような、大口径弾なら。
もっと強力な、徹甲弾なら。

鞘師と石田の連携、大太刀による、白兵。
佐藤と工藤の連携、徹甲弾による、狙撃。

そう、最初から勝敗は決していた。
石川梨華には、万に一つも、勝ち目は無かったのだ。

776名無しリゾナント:2015/03/18(水) 01:19:07
――――

「あーあーあー、ズタボロだったね…」
「あ?ああ…」

「で、どうすんの?」
「なにが?」

「やる?」
「別にいいっしょ。」

「そだね、いいね別に。」
「めんどくせー。」

「オバさんには?」
「知らねー。」

「怒ると思う?」
「…さあね…まあ…出したくて出した命令ってわけじゃねーだろうよ…」

「くくく…優しいんだー。」
「…ばかじゃねーの…」

「ねぇデザートは?」
「あん?」

「けっこう食べ応えありそうだったよ、あの二人。」
「あーパス…めんどくせー…どうせ邪魔が入る。」

777名無しリゾナント:2015/03/18(水) 01:20:32
「あっちの奴ら?じゃああっちから先に?」
「遠いだろ、めんどくせー。」

「そか、じゃあ、やめとく?」
「ああ、引き揚げだ」



―――でも、あたしはチョット、興味、あるかも?

778名無しリゾナント:2015/03/18(水) 01:22:59
>>755>>760>>766
ありがとうございます


>>773-777
■ アンチマテリアル -鈴木香音・飯窪春奈・佐藤優樹・工藤遥X石川梨華- ■
でした。

以上代理投稿願います

779名無しリゾナント:2015/03/18(水) 11:03:52
完了
最後に石川さんと話していたのは(■■においては)新キャラなのか
気になりますね

780名無しリゾナント:2015/03/18(水) 20:14:22
■ ダスヴィーダニィーヤ -石川梨華・吉澤ひとみ- ■

アタシたちは最強

【念動力(サイコキネシス;psycho kinesis)】

アタシたちの能力。
能力の中で最も戦闘に適した、万能の力…
すべてを遮り、すべてを跳ね除け、
ねじ伏せ、叩き伏せ、引き千切り、噛み砕く!

そう、アタシたちは知っている。
互いの本当の姿を。

【幻想の獣(イリュージョナリービースト;illusionary beast)】

美しいわ。
二対の腕と二対の脚、背中から不規則に乱立する長く鋭い棘。
そしてもちろん、その大きなお口も…。
―――アタシだけが知っている、あなたの本当の力。

美しいでしょう。
どこまでも伸びる、アバラの浮き出た無数の触手。
規則的に並んだ吸盤、その中に潜む鉤爪も…。
―――あなただけが知っている、アタシの本当の力。

781名無しリゾナント:2015/03/18(水) 20:15:23
アタシたちは最強
二人なら、怖いものなんてない
アタシたち、二人が最強

ああ…それなのに…なぜ?
アタシたちは最強…なのに、なぜ?
なぜ、高橋に…
高橋なんかに…
なぜ、アタシを残して…
いえ、いいわ、それは、もういいわ…

ええ、必ずアナタを追いつめる。
見つけだして、殺してあげる。
必ず、必ず、殺してあげる。
せいぜいお逃げなさいな、アナタの【テレポート】で。
でも、一瞬でも逃げ遅れれば、アタシの【獣】がアナタを捕らえる。
アナタををねじ伏せる、アナタを引き千切る、ぐちゃぐちゃに…
ぐちゃぐちゃに…ぐちゃぐちゃに…ぐちゃぐちゃに!!!

782名無しリゾナント:2015/03/18(水) 20:16:55
■ リゼントメントアンドリゼントメント -石川梨華・吉澤ひとみ- ■

そうか…そうだったんだ…ごめんね高橋…
アタシ、ずっと、あなたを逆恨みしてた…

逢いに来てくれて、ありがとう…

そう…吉は「一抜け」したのね…

それが"D"を"人類"を、"A"から"人類"から…、そう信じて…

でも…それでも…ごめんね…ごめんね高橋…
アタシは…それでも…あなたを…あんたを…アンタを…





…許せない…





許せない…許せない…許せない…許せない!

…ぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!

ゆるぜるわげねええええだろおおおおおがああああ!!!
あああああごのぉおおおメスザルがあああああああ!!!

783名無しリゾナント:2015/03/18(水) 20:18:02
ぐちゃぐちゃに!
ぐちゃぐちゃに!

ぐっちゃああああぐっちゃああああにぃいいいいい!!!

だあああああがああああああはじいいいいいいいいいっ!!!

784名無しリゾナント:2015/03/18(水) 20:20:09
>>780-781
■ ダスヴィーダニィーヤ -石川梨華・吉澤ひとみ- ■
>>782-783
■ リゼントメントアンドリゼントメント -石川梨華・吉澤ひとみ- ■

でした。


以上代理投稿願います

>>779
ありがとうございます
会話に石川さんは含まれていません

785名無しリゾナント:2015/03/19(木) 00:55:07
いってきましたよー

786名無しリゾナント:2015/03/19(木) 11:56:34
>>767-771 の続きです



「いったい…どういうことなんだ!!!!!!」

会長室から聞こえてくる怒鳴り声。
部屋の主の直属の部下たちが、思わず顔を見合わせる。

ベーヤンホールディングスの総帥にして、関連会社数百社を束ねる会長。
ふてぶてしいまでの貫録を常に崩さない彼が、取り乱しているということは。
社員たちが抱く一抹の不安、それはすでに現実のものとなっていた。

「…もういい!貴様、明日もその椅子に座っていられると思うなよ!?」

不明瞭な相手の返事を遮り、受話器を机に思い切り叩きつけた。
それでも、部屋の主・堀内の怒りは収まりそうに無い。

「何が契約の終了だ…一方的に終了できる契約などあってたまるか!」

堀内の電話の相手は、リヒトラウムの警備部長。
彼の話によると、リヒトラウムの「有事」に備えていたはずの「能力者」が、自らが所属する組織の長の意
向により契約を終了する旨を伝えて立ち去ったのだと言う。それだけならまだいい。
問題は、リヒトラウムに複数の能力者が留まっているにも関わらず、という点だ。

警備部長の話によると、その集団は何らかの目的で敷地内に侵入し、あまつさえ施設の放送設備をジャ
ックしているのだという。まさか「あれ」の存在に気づくことは万に一つもないだろう。それでも、不安の芽
はたとえ小さなものでも摘んでおかなければならないはずだ。

787名無しリゾナント:2015/03/19(木) 11:58:00
何のために大金を叩いて契約したと思ってる?!
全て、大型テーマパークという上物で隠した「あれ」に対する万全の警備のためじゃないか!
それを、こちらの事情などお構いなしに一方的に契約終了だと?冗談じゃない!!

抗議の言葉を募らせながら、堀内と「先生」を繋いでいたエージェントの携帯に繋げようとするも。
オカケニナッタデンワバンゴウハ、ゲンザイツカワレテオリマセン…

最早怒りを通り越して、笑えてくる。
彼らはもう、堀内と話すつもりはないということを、彼は瞬時に理解していた。

「ふ…ふふ…まあよいわ」

気を取り直し、もう一度受話器を取りボタンを押す。
あちらが駄目なら、こちらに頼るまで。
この国を支える「五本の指」の一指を無碍にしたこと、必ず後悔させてくれる。
巧みに言葉を操り、両陣営の抗争を誘うのもいいかもしれない。
逸る嗜虐心を抑え、相手の声を待った。

「…何か、御用でしょうか?」

相変わらずの愛想のない声。
堀内は舌打ちしたい気持ちを我慢し、話を切り出す。

「しばらくぶりだな。私だ。堀内だ」
「ああ、ご無沙汰しております」
「早速だが面倒なことになった。リヒトラウムに、得体の知れない能力者が複数、侵入したらしいんだ。何
とかできないか」

相手の返答は無い。
堀内ははじめ、想定外の出来事で言葉が出ないのだと思っていた。
ところが。

788名無しリゾナント:2015/03/19(木) 11:59:32
「『金鴉』さんと『煙鏡』さんのことですか。それは大変ですね」
「な…」

二の句が継げないのは堀内のほうだった。
まず、電話の相手がリヒトラウムの、いや堀内をはじめとした政財界の大物たちが隠していた「あれ」の危
機に対して何の感慨も抱いていないと言うこと。次に、侵入した能力者が堀内たちが名前すら聞きたくない
二人の札付きだということ。そして何よりも、その事実を相手が既に把握しているということ。
結果、瞬時に堀内の顔が憤怒に歪んでゆく。

「な、な、何を言っている!!」
「どうもすみませんね。彼女たちが少し前からそこのテーマパークに興味を抱いていたのは知ってたんですが」
「しかもよりによって『金鴉』に『煙鏡』だと!?早く何とかしろ!今すぐにだ!お前のところの能力者を
総動員してでも、あいつらを排除するんだ、いいな!?」

喉が裂けんばかりに怒鳴り散らす、堀内。
彼の脳味噌が噴きこぼれるのも無理はない。
彼には、いや、自らをブラザーズ5と称する面々には。過去に、ダークネス、それも「金鴉」と「煙鏡」に
煮え湯を飲まされた過去があったからだ。

789名無しリゾナント:2015/03/19(木) 12:00:50


まだ、二人の能力者が「首領」により謹慎処分を受ける前の話。
堀内たちブラザーズ5はとある大きな案件を抱えていた。紛争により血で血を洗う泥沼状況の、某東欧の小
国。保守派と革命派はともに物資に乏しく、あらゆる武装兵器が飛ぶように売れる有様だった。その保守派
への兵器輸入を、ブラザーズ5の息のかかった総合商社が一手に引き受けることになったのだ。

最後の交渉を、海外の高級リゾート地で行うことになり、その会場の警護ということで例の二人組が派遣さ
れることになった。当時まだ準幹部としての地位しかなかった彼女たちが抜擢されたのは、彼女たちの可能
性、そして何よりも当時は組織に粛清の嵐が吹き荒れていてそれどころではなかったというのが理由だった
のだが。

ところがと言うか、やはりと言うか。
任務は失敗に終わる。革命派の襲撃があったのだ。
二人は、よく戦った。襲撃者は一人残らず、無残な死体となって転がった。
ただ、一つだけ問題があったとすれば。その山のような屍の中に、なぜか保守派の幹部のものが一体、あっ
たということ。
当事者たちはわざとではないと嘯いたが、後に、

「だって自慢するんだもん」
「あのおっさん、口臭いねん」

と漏らしたことから故意に戦闘に巻き込み殺害したことが判明する。

当然堀内たちは激怒した。
儲け話がふいになるどころか、下手をすれば国際問題に発展する可能性すらあった。
結果として彼らの東奔西走ぶりとダークネスのフォローが利いてか、取引が流れることはなかったものの。
「金鴉」「煙鏡」という名前は彼らの中に一種トラウマ的な響きを持つようになった。

790名無しリゾナント:2015/03/19(木) 12:02:01


で、今回の件である。
堀内が猛り狂うのも当然と言ったところなのだが。
それに対する電話越しの彼女の反応は。冷ややかな、ため息。

「申し訳ないのですが、こちらもそれどころではないので。そうだ。あなたたちが我々に内緒で雇っていた
『先生』のところの能力者にでもお願いしたらどうですか?」
「き、貴様!よくもそんなことを!!」
「もしかして、断られたのですか? まあ…彼女たちも多忙でしょうしねえ」
「は、はははははは!!!!!!!!!!」

人間、あまりにも理不尽な怒りに包まれると笑いすらこみ上げてくるという。
堀内の今の状況も、まさにそれだった。

「話にならんな!!!!貴様じゃ埒が開かん、『首領』を出せ!!!!!!」
「生憎、席を外しておりまして。まあ、この件であなたとお話になることはまず、ないでしょうけど」
「なら貴様の発言!『首領』も含めた組織の総意と思っていいんだな!?」
「…構いませんよ」
「そうか!そうか!!貴様らは表面では我々にへこへこしておきながら、裏ではしっかり舌を出してたわけ
だな!!!!いいだろう、我々を甘く見ていると…」
「ご用件はそれだけですか。じゃあ、長話はこれで。私も、そこまで暇ではないので」

まるで次に堀内が何を言うかを予想していたかのように。
絶妙な、堀内からすれば最悪のタイミングで電話は切られてしまった。

791名無しリゾナント:2015/03/19(木) 12:03:58
「…くっ、そがぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ぶつけるはずだった怒りのやり場も見つからないまま、獣のように吠える堀内。
しかし。気を取り直す。気持ちを、切り替える。

あいつは。我々が切り札、「あれ」を使わないと思っている。いや、使えないと思っている。

だからこそ、あのような舐めた口を利けるのだ。
確かに、「あれ」は先程まで話していた女が開発し、そして秘密裏に堀内たち5人の権力者に引き渡された
ものだ。
そこには開発者としての性能の把握、つまりおいそれとは使えないだろうという「常識」が思考の根底にあ
るに違いない。

悪童たちが何を目的にリヒトラウムに乗り込んだのかはわからない。
ただ、たとえ目的があれの掌握だとしても。案ずることはない。あのような連中に、使いこなせるはずがな
いのだから。
むしろ、奴らが妙な真似をする前に、こちらが使ってやる。

ノートPCを起動させ、ボタンを押す。
モニターに現れる、四人の同志たち。

「どうした」
「…使うぞ。『ALICE』を」

堀内が発した言葉に、しばし言葉を失う四人。
しかしその顔は、絶望など微塵もない希望。躊躇のない、好奇心。
そういったものに、溢れていた。

792名無しリゾナント:2015/03/19(木) 12:07:28
「そうか。いよいよか」
「リヒトラウムに緊急事態が発生した。最早一刻の猶予もない」
「まあ、使う時が少しだけ早くなっただけだ」
「幸い、ダークネスの有力者たちは本拠地に固まってる。一掃のチャンスだな」

彼らは、むしろ今が好機だとばかりに、口々にそんなことを言う。
体よく能力者を使っていた彼らの、傲慢のさらに向こう側にある根本的な感情。

恐怖。

自分たちとは、まったく異なる存在。
その異質さに、彼らは恐怖していたのだ。
だからこそ、決断する。やつらを完全に飼い慣らす必要があると。

「…ただ使うだけじゃない。あいつらに最大限の屈辱を与えてから、使ってやるさ」

能力者などというバケモノどもに、教えてやる。この地上に君臨するのは…我々だ。

堀内の暗い情念は既に、闇の底で蠢きはじめていた。

793名無しリゾナント:2015/03/19(木) 12:08:13
>>786-792
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

794名無しリゾナント:2015/03/23(月) 14:05:09
>>786-792 の続きです



施設各所から吹き上げる炎の柱は、光の国の居城前からもはっきりと見ることができた。
炎の根元がどういう状況になっているかは、想像しなくても理解できる。

「どうしよう、このままじゃ遊びに来た人たちが!!」
「とにかく、助けなきゃ!!」
「その必要はないね」

リゾナンターたちの言葉を遮るように、一人の少女が目の前に降り立つ。
へそ出しショートパンツという軽装の、ポニーテール。
その顔には、見覚えがあった。

「こいつ…この前の譜久村さんに擬態してた!」

亜佑美が、思い出す。
確かに少女の顔はあの時の襲撃者のそれによく似ていた。が。

「ざけんな。あんな出来損ないと一緒にすんなって。まいいや、”のん”が面白い場所に、連れてってあげる」

それだけ言うと、右手をリゾナンターの面々に翳す。
何かの攻撃か。身構えた一同だったが、次の瞬間には少女は姿を消していた。

795名無しリゾナント:2015/03/23(月) 14:05:45
「何やったと、今のは…」

衣梨奈がそう言ってしまうほどに。
思わせぶりな登場の仕方にしては、拍子抜けな結末。
姿を消して不意打ちでも食わす、というわけでもなさそうだ。
しかし、傍らにいた優樹は気づいていた。重大なことに。

「生田さん…」
「何、優樹ちゃん」
「みんなが、いなくなっちゃいました」
「え!?」

優樹の言うとおりだった。
姿が、ない。
香音。春菜。遥。さくら。
四人の姿が、一緒に消えていたのだ。

796名無しリゾナント:2015/03/23(月) 14:06:21


視界が、歪んだと思ったら次の瞬間に。
香音は、目と鼻の先に自分によく似た人物が間抜けな顔をして突っ立っていることに気づく。

「ひゃあっ!?」

普段は滅多に出さない、女の子らしい声。
驚き後ろに飛び退くと、正面の相手も同じような格好で後ろへと飛んだ。

「もしかして…鏡?」

言いながら、右手を上げてみる。
やはり同じように、左手を上げるぽっちゃり娘。
間違いない。上げた手を正面につくと、ひんやりとした感触が伝わった。

「みんなは?」

辺りを見回す。
しかし目に映るのは、たくさんの戸惑っている香音だけ。
上下左右、あらゆるところが鏡張りになっているようだ。

― 鈴木さん、大丈夫ですか? ―

心の声が、訴えかけてくる。
この声は。

797名無しリゾナント:2015/03/23(月) 14:07:26
― 小田ちゃん? ―
― はい。今、どこにいますか? ―
― 何だか鏡だらけの場所にいるみたいで ―
― 私もです。どうやらミラーハウスみたいな場所に転送されたみたいで ―

「ちっ、四人しか転送できなかったか。しょぼい能力だししょうがないか」

そこへ割り込んでくる、少女の声。
先ほど香音たちの目の前に現れたあの少女のものだ。

「こんな場所に連れて来たのは、あんただね!」
「そうだよ。お前らが知ってるとおり、のんの能力は『擬態』。お前らの姿になら、いつでも化けられる。
鏡だらけのミラーハウスでそんな力を使われたら、どうなると思う?」

― 鈴木さん! 飯窪です! その人はきっと、私たちに擬態して混乱させるつもりです! ―

横から聞こえる、甲高い心の声。
さくらの他に、春菜も連れて来られたのか。敵の少女は確か四人連れて来たと言っていた。となるともう
一人、ミラーハウスにいるはず。

「鈴木さん!みんな!!ハルのところに合流してくださいっ!!」

鏡の向こうから、大声で叫ぶハスキーボイス。
最後の一人は遥だったか。擬態を得意とする相手、しかし春菜と遥がいればもしかしたら。

798名無しリゾナント:2015/03/23(月) 14:08:24
「わかった!こんな鏡なんてすり抜けて…」

香音の持つ「物質透過」があれば、鏡の障害などものの数ではない。
勢いよく鏡に向かって突っ込んでいった結果。

殴られた。

走りこんだ香音と同じようにこちら側に向かっていく彼女の鏡像は。
途中で動きを止め、それから「鏡」の世界の外側の香音に向かって、綺麗な右ストレートを決めたのだ。ひ
っくり返り倒れる香音。
香音が鏡だと思っていたのは、少女が香音に「擬態」した結果のもの。

「けけけ、騙されてんじゃねーよ。ばーか」

明らかに香音を馬鹿にした言葉を残し、少女は足早に走り去ってしまった。

鏡像と、「擬態」。この組み合わせは。
早く他の三人と合流しないと、まずいことになってしまう。
殴られたダメージはそれほどではない。おそらく途中で「物質透過」を使ったせいだろう。気を取り直し、
立ち上がる。聞こえてくる心の声を頼りに、香音はすぐ側のの鏡を通り抜けていった。

799名無しリゾナント:2015/03/23(月) 14:08:59
>>794-798
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

800名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:36:40
リゾナン史を編むということは砂漠でオアシスを探す行為に似ていると私は思う。
何千何万と残された膨大なリゾナン文書の中からたった一つの真実を見つけたと思った次の瞬間、他の研究者によって新説をぶつけられた経験が何度もある。
その時の私は乾ききった大地の中でようやく見つけた桃源郷が蜃気楼だと知らされた探検家の境地に立っていたことだろう。
だがしかしそれで研究を諦めようと思ったことは不思議と無い。
私にとって人生とは旅のようなもので、終着駅に辿り着くことは最優先される目的ではなく、旅の過程を楽しむことこそ目的だというのが私のモットーだからか。

これから私が紹介するのは、リゾナンターの一人が書き残した手記である。
新垣里沙、共鳴の原点を知る者にしてCカップのボンキュッボンなボディで世の男性を悩殺したと伝えられる女性。
以下の手記がかの新垣里沙の真筆であるかどうか、いまだ確定していない。
真筆だったとしても、手記の内容が新垣里沙の真意であるかどうかも定かでない。
あるいは私がこれからやろうとしている行為は輝かしきリゾナンターの足跡に泥を塗ることかもしれない。
幾千幾万と存在するリゾナン史研究家を蜃気楼で惑わせる行為なのかもしれない。
それがわかっていながら私がこのほど発掘された手記を皆様に公開するのは一重にリゾナン史を編むという行為を楽しみたいからに他ならないことを前もって記しておく。

リゾナン史研究家   エリソン・P・カーメイ

801名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:37:29

2007/5/13

最悪だ
まったくもって最悪だ
最悪なのには慣れっこだけどこんなに最悪なのはあの日以来
天使が翼を失ったあの日あの時以来のことだ  ------------------(注1)

白い家と呼ばれるこの研究施設の外で仕事をしたことは何度かある
慣れ親しんだ自分の部屋のベッドでないと眠れないほどのお子ちゃまってわけでもない
でも今現在この白い家の最深部にはあの人がいる。
傷ついて翼を失ってしまったあの人がいる
この世界にいつまで留まっていられるのかわからない私だけの天使
安倍なつみを残して外に出ていけるはずがない

これがこれまでと同じような仕事
強制的に組織の為に働かせた外部の人間の記憶を改竄したり、正義感から組織を司直に摘発しようとした人間の記憶を書き換えたり
そんな薄汚い洗脳屋の仕事ならどの程度で仕事を終わらせられるかの目途も立つ
何日で戻ってこれるか計算できるが今回仰せつかった仕事は取りとめが無さすぎる

何年も昔に組織から連れ去られた人工能力者製造実験の被検体の捜索なんか私向きの仕事とは思えない
どう考えたって今回の件には何か裏がある

誰かが安倍さんに不埒なことを仕出かさないか
傍らで目を光らせている私のことを遠ざけようとしているとか

802名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:38:03

一縷の望みは下命の場に統括管理官と一緒に居合わせた女帝こと中澤さんが個別に話す席を設けてくれたこと
私から見れば組織の高みにいる人だけれどそれでも中澤さんは私と同じ能力者だ
そんな中澤さんに訴えれば雲を掴むような人探しの仕事からは逃れられるかもしれない
だけど結局説き伏せられたとしたらどうしよう
私みたいな下っ端なんかに拒否権なんか無い
無期限での被検体捜索の仕事の為に安倍さんの傍から離れなければならないとしたらどうしよう
確かに今あの人にはこの白い家の高度な医療機器や能力者の生態に通じた科学者が必要なのは事実だ
だが一番必要なのはあの人のことを何よりも、自分の命よりも大切に思っている人間の筈だ
この私みたいに

とにかく明日だ
明日の中澤さんとの面談に望みをかけよう



2007/5/14

力が欲しい
精神干渉
他人の精神に土足で踏み込む薄汚い力なんかじゃない
あの人を守れる力
あの人に危害を加えようとする全ての者を打ち砕くことができる強い力が欲しい

803名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:38:35

2007/5/16

能力者狩りに駆り出されることが結局決まってしまった
中澤さんに言いくるめられてしまった感があるのは否めない
ただ今あの人をこの世界に繋ぎとめておくには組織が有する科学力や蓄積された知識が必要なのは事実
しかしそれらのものをあの人に無条件で注入する程この組織が甘いものでないことも真実
中澤さんはともかくとして5人の老いぼれども

日本という国を影から動かしていると戯言を吐く五老星とも5ブラザースとも呼ばれる男たちは結果を求めている  ------------------(注2)
奴らにとって今の安倍さんは天使ではない
奴らの濁った眼には傷つき斃れ力を失った能力者のなれの果てにしか映っていないんだろう
かつての力を失てしまった安倍さんに奴らが手を出さないのは安倍さんが力を取り戻すかもしれない可能性を捨てきれないでいるからだ
しかしそんな状況でも奴らは安倍さんの身体を調べ、DNAのサンプルを採取し、何らかの施術によって強制的に力を回復できないか
実験したくてうずうずしている
そんな奴らの関心から安倍さんを逸らすには、奴らの気に入りそうな玩具を差し出してやるしかない。

それがi914
膨大な失敗の果てに生み出された唯一の成功例
能力が本格的に発現する以前にその生理学上の母親によって連れ出された幼児  ------------------(注3)

そんな彼女の生存が確認されたという
組織で人工能力者の製造プロジェクトに関わっていた研究員が成長した彼女と思われる女性を都内の某デパートで目撃したという
同じ能力者を犠牲にすることには気が咎める
しかし安倍さんを助けるためなら仕方がない
私は何としてもi914を見つけ出す

804名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:39:36

2007/5/23
疲れた
足が棒になったみたいだ
首都圏だけで三千万を越える人間の中からたった一人を見つけるのは簡単なことじゃない
でもそんなことは最初からわかっていた
あきらめるわけにはいかない



2007/5/28

報告の為に一度白い家に戻ったら中澤さんの計らいで安倍さんとの対面を許された
今日は調子が良いみたいだった
まるで銀翼の天使と呼ばれていたあの頃と全然変わらない感じ
この状態が続いてくれたらいいのに
位相が違うと中澤さんは言っていた
安倍さんは天使だから私たちと同じ位相には長く留まっていられないと
中澤さんが言っていることは難しすぎて理解できなかったが、状態の悪い時の安倍さんのバイタルの数値は生きていることが不思議なぐらい悪いのは私にでもわかる
そんな安倍さんを守るためなら私は何でもする

805名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:40:12

2007/5/31
こんなに一人の人間の画像を見つめたのは安倍さんのを除けば初めてだ
i914
幼い頃の彼女の画像に彼女の生物学上の母親のデータを加えて20歳の女に修正した画像
先日彼女を目撃した研究員の証言も加えた画像はもう確認する必要が無いぐらい頭の中に焼き付いてしまった
彼女は今何を思っているのだろう
もし彼女が自分の立場を理解しているのなら人目に触れる場所には出向かないだろう
離島とか山村とかに隠れ住むのか
しかしそういった場所は一旦追求の目が入れば逃れにくいという欠点がある
都会で住めば人目に付く危険は多いが、人に紛れやすいという利点もある
明日は研究員が彼女を目撃したというデパートに行ってみようか
そこで彼女が見つかるなんて甘いことはないだろう
しかし彼女が何を思いどう行動しているのか
捜索の手がかりぐらいは掴めるかもしれない



2007/6/1
見つけた  -----------------(注4)
神様ありがとう
あの人のことを救ってくれなかったあんたのことを呪ったこともあるけど今日だけは感謝する
これが全ての問題の解決に繋がるとは思ってもいない
でも安倍さんの為にいくらかの時間は稼げた筈だ
あの女、高橋愛と名乗ったi914には悪いけど安倍さんの為に犠牲になってもらうしかない

806名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:40:49

(注1) 安倍なつみの立ち位置にはいくつかの説がある。 組織の幹部として前面に出て戦っていたという説や、組織の方針に反し幽閉されていたという説。
     今回の手記の中で述べられている安倍なつみは負傷により能力を失ってしまったようであるが、その経緯が触れられているリゾ文書としては(22)432 『堕ちた天使』が挙げられよう

(注2) リゾナンターと敵対した組織、ここではもっとも通りが良いダークネスと称させていただくが、その組織の構造にも諸説がある。
     ダークネスという男を首領に抱くという説。
     中澤裕子こそが絶対無二のボスであったという説。
     中澤など紺野あさ美や飯田佳織一派の傀儡に過ぎないという説も一時期有力であった。
     比較的新しい時代のリゾ文書が集められた『爻(シャオ)』においては、日本の政財界の有力者もダークネスに発言権を有していたという記述が見受けられる
     彼ら有力者とダークネスの力関係については未だ確定していないが、今回の手記によって『爻(シャオ)』の信憑性が高まる可能性がある

(注3) この辺りの記述-高橋愛が幼児期にその母親の手によって組織から連れ出され - はリゾ文書(08)893 『葉を隠すなら森へ、愛を隠すなら名へ』と合致する。
(注4) 新垣里沙が高橋愛をデパートで見つけたという記述はリゾ文書 (03)649 『A Summer Day』で触れられている事象とかなりの部分で合致する。
     とはいえ一部矛盾する事柄もあるため、両者の整合性を検証するに当たりより洗練された翻訳者の協力及び文書の書かれた時期を確定するための最新の技術による炭素測定の実施が必要であろう

807名無しリゾナント:2015/03/24(火) 12:41:43
>>800-806
『新垣里沙の手記・其の一』

808名無しリゾナント:2015/03/24(火) 22:12:18
>>794-798 の続きです



一方、同じミラーハウスの別の場所に転送されていた春菜は。
「擬態」能力の持ち主がこの場所を戦場に選んだ目的を早くも理解していた。
しかし、春菜は心の余裕を保つ事ができる。なぜなら。

「おーい、はるなん!!」

すぐに、遥のものだとわかる塩辛い声。
彼女の「千里眼」と自分の「五感強化」があれば、相手がいかに自分達のうちの誰かに擬態しようとも
見破る事ができるはず。

遥の声のするほうへ駆け寄ると、相手もまた春菜を探していたようで、出会い頭でばったりと出くわした。

「なんだ、こんな近くにいたのかよ。いるんだったら返事くらいしろって」
「えっ、あ、ごめん。ちょっと考え事してて」

相変わらずの年上を敬わない態度、けれど今はそれが頼もしく映る。
能力者の少女の攻略に、遥の能力は不可欠だからだ。

809名無しリゾナント:2015/03/24(火) 22:13:39
「ねえくどぅー、『千里眼』で相手がどこにいるか、視える?」
「さっきからやってる。こっから斜め右方向でちょこまか動いてら」

忌々しげに遥が言うのを聞いたか聞いてないか、ミラーハウスの館内から大きな声が聞こえてくる。例
の少女のものだ。

「改めて自己紹介ね。のんは、『金鴉』。金のカラスって書いて、きんあ。”メインディッシュ”が来
る前にお前らと遊んでやるよ」
「くそ!とっとと出てこいよ!!」
「そうそう。のん、ダークネスの『幹部』って奴だから」

ダークネスの「幹部」。
この二つの言葉は、即座に緊張を齎す。
つまり、7人がかりで挑み、まるで歯が立たなかった赤い死神のことを、どうしても思い出させてしま
うのだ。

「そんな!まさか、あの子道重さんが言ってた…」
「幹部にしちゃ随分しょぼい能力使ってくるじゃん。『擬態』なんてせこい力、見破っちゃえばわけな
いって」

怖気づきかけた春菜の心を、遥の頼もしい言葉が支える。
確かにそうだ。彼女は自分のことを「オリジナル」と称していた。つまり喫茶店に現れたのは彼女のク
ローンなのだろう。しかし、使う能力が変わらず「擬態」ならば。

そこへ、鏡を通り抜けてきた香音が飛び出してくる。
ほぼ、同時に鏡の回廊を潜り抜けてきたさくらもやって来た。
「金鴉」と名乗った少女が連れ出したと思しき全員が、ここに揃ったわけだ。

810名無しリゾナント:2015/03/24(火) 22:14:48
「これで全員っすか?」
「多分…周りに他の子たちの気配もないし」

遥の問いに、香音が頷く。
香音。春菜。遥。そしてさくら。前線でも戦えるさくらを除き、見事に後方支援のメンバーが狙い撃ち
された格好だ。

「これはヤバいですね…」
「でも、逆に言えばチャンスかもしれない。私の『嗅覚強化』とくどぅーの『千里眼』があればね」

春菜の考えはこうだ。
いくら相手が「擬態」して自分達に化けようが、個人特有の匂いだけは誤魔化せないだろう。また、相
手の位置は常に遥の「千里眼」によってマークされている。

「それと、あの時道重さんに教えてもらった…」
「うん。これだね」

さくらと香音が、自らの右手の甲を見せる。
それを見て、他の二人も。甲には大きく「×」の文字が書かれてあった。

擬態能力者の襲撃があった日。
自分達に姿を変えて再襲撃してくるであろう刺客対策として、さゆみから教えてもらった策。

「ははは、あいつ、得意げに何か言ってたけど、うちらがこれだけ対策してるのなんて知らないだろうね」

そんなことを言いながら笑う香音。
しかし、その背後からナイフをかざした遥が。

811名無しリゾナント:2015/03/24(火) 22:16:20
「あぶないっ!!」

その瞬間を目撃したさくらが、時間停止を仕掛ける。
さくらが止められる時間など、瞬きするかしないかくらいの僅かな時間しかない。が、不意を衝いた襲
撃を防ぐには十分だった。

「いって!!」

さくらに突き飛ばされた遥が、後ろの鏡にぶつかり尻餅をつく。
止められた時間の中にいた香音と春菜は一瞬何が起こったのかわからないようだったが、すぐに事の重
大さに気づく。

「え?くどぅー!?」
「どうして!!」
「はるの千里眼舐めんな!お前、鈴木さんに擬態した偽者だろっ!!」

戸惑う三人を他所に、遥は大きくそう叫んだ。

「そんな!だってみんなの手の甲には×印が…」
「あいつの姿がどこにも見当たらないんだよ!!どこに消えたか探したら、見えたんだ!こいつの中に、
『金鴉』とかいうやつの姿があるのを…」
「かのは偽者じゃない!だってさっき、偽者に会ったばかりだし!ほら!『能力』だって使えるから本
物だって!!」

遥に疑われ、近くの鏡に自らの手を出し入れしながら、必死に香音は自分が本物である事を弁明する。
確かに、擬態能力の持ち主ならばそのような芸当はできないはずだが。

812名無しリゾナント:2015/03/24(火) 22:17:27
「いや…でもまさか…もし、『能力』すら擬態できる奴だったら」
「ええっ!そんなことできるんですか!?」
「わかんねえけど、もしそうなら『鈴木さん』のアリバイはあてになんないよ!!」
「そんなこと言ったらどぅーだって!!」
「はるはあいつの声が館内に響いてる時に、はるなんといたし!!」

疑念が疑念を呼び、収拾がつかなくなりつつあるが。
もしも相手が「能力」さえ擬態できるとしたら、四人のうちの全員が怪しいということになってしまう。

「確かにくどぅーの言うとおり、私は『金鴉』が大声で話してる時、一緒にいました」
「だよな。鈴木さんは? 小田ちゃんはどうなんだよ」
「それは…」

彼女たちには自分の身の潔白を証明してくれる人間がいないのは明らかだった。
となると、疑いはいよいよ二人のうちの一人に絞られてくる。

「か、かのはあいつの、『金鴉』の姿を見てるんだから…だとしたら」
「え、わ、わたしですか!?」
「・・・だったら『小田ちゃん』しかいないな。諦めて姿現せよ」

矛先を向けられたその瞬間。
さくらの姿が掻き消えた。

「やっぱりだ!あいつ、正体がばれたから逃げたんだよ!!」

そう。
この瞬間に、擬態していた真犯人は明らかにされた。
そのことを知らないのは、真犯人だけではあったが。

813名無しリゾナント:2015/03/24(火) 22:18:36
>>808-812
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

814名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:09:19
【但し書き】

・↓の話は〜 コールドブラッド〜の二次創作的な何かです
・設定の一部を使わせて頂いてますが完全に踏襲しているわけでもないです
・〜コールドブラッド〜を好きな方は不快に思われるかもしれません
 前もってお断りしておきます
・〜コールドブラッド〜なにそれ?食べたことないけどおいしそうという方は回避されることを一応推奨しておきます


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いたい……くるしいよ
いたい……だれかたすけて

…わたしに手を差し伸べてくれる「人間」なんかこの世界にいやしない
そんなことはわかってる
それがわかったからこんなことをしたんだ

でも…みじめだよ
苦しいよ
だれにも望まれずこの世界に生まれてきた
自分では望んでいない「力」の所為で振り回されて生きてきた
そして最後はこんな暗闇で一人苦しみながら死んでゆくなんて

ねえサブリーダーさん
あなたが自分の命を賭けてまで倒そうとした「吸血鬼」はまだくたばってませんよ
お堅いリーダーさん
どんな任務も完璧に果たしてきたあなたらしくないじゃないですか
「人類」の敵を殲滅するのがあなたのご立派な使命なんでしょう
さあ憎むべき「吸血鬼」にとどめを刺してくださいよ

815名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:09:50


声も出ないや
そうだよね
わかってる
あの二人がミスってわたしが生きているのを見落とすはずがない
情けをかけて見逃してくれたわけでもない
わたしはもう助からない
そんなことわかり過ぎるくらいにわかってるんだ


わたしは「吸血鬼」だ
ノーマルの人間では有り得ない身体能力と超感覚を持っている
物理的なダメージにも強い
ちょっとぐらいの傷なら超速再生していくしほんと
どこの破面(アランカル)だってぐらいのものよ
我が名は第6エスパーダ、コハルーノ・クスミリエなりってなぐらいのものよ

わたしは「吸血鬼」だ
普通の人間では私の肉体は壊せない

でも痛いんだ
この痛みは肉体が感じている痛みなのかそれとも心が感じている痛みなのか

わたしは「不死者」だけど「最強」ってわけでもないし「無敵」の存在なんかでもない
闘争に負けることもあるし、その結果徹底的なダメージを与えられたら死ぬこともあり得る
その相手が脆弱な「人間」などでなく同じ「吸血鬼」だったら

あの人はわたしを斃すために「人間」としての生を捨てた
そして手にした「吸血鬼」の力で抉られた心臓を再生するのはさすがのノーライフキングでも無理みたいだ

816名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:10:24


わたしが意識を保てているのは復活する兆しじゃない
「吸血鬼」の生命力があまりにも強靭すぎるから
即死している筈の傷を負っても惨めったらしく魂だけがこの世界にしがみついてるんだ
身体のそこここに残っている命の絞りかすがわたしに最後の夢を見させてるんだ
最低最悪の悪夢ってやつを


…ふん
それとも
もしかしてこれは仲間を裏切って殺めたわたしへ神さまが与えた罰?
いつ終わるとも知れない痛みの煉獄で苦しめとでも?
もしそうなら神さま
あんたはとことん間違っているよ

確かにわたしは「リゾナンター」のみんなを裏切ったかもしれない
でも、でも、でも、でも最初に裏切られたのはわたしのほうなんだ
わたしは「吸血鬼」として「人間」を狩っていくつもりなんてなかった
「人間」の「血」を欲する本能を抑えて「リゾナンター」として生きていくつもりだった
普通の「人間」に紛れて生きていくことは困難でも「リゾナンター」の「仲間」となら生きていけると思ってた
でもそれは間違っていた

結局、誰かが他の誰かと完全にわかり合えることなんてありえない
それはサイコフォース「リゾナンター」として戦ってきた日々が教えてくれた
「リゾナンター」の目的は普通の「人間」では扱い難い犯罪者を摘発検挙粛清することだった
その対象は普通の「人間」とは異なる能力者であったり、人知を超えた化け物であったわけだけどそれらですべてってわけじゃなかった

817名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:10:59


偏執的な妄想に捉われたシリアルキラー
原理的な教義に殉じたカルト
「リゾナンター」の任務の対象は実のところ、生物学的には普通の「人間」の方が多かった
でも「人間」である彼らに「人間」の言葉は届かなかった
自分の中に築かれた価値観ですべてを判断し、他者の価値観など一瞥だにしない。

同じ「人間」同志であってもそうだった
だから「人間」とは異なる種族の「吸血鬼」のことなんて最初からわかろうともしない
「吸血鬼」が何者を愛し、何者を憎み、何を欲し、何に怯えるのか
そんな考えが頭を過ることもなく平気で駆逐していく

わたしの身体に「吸血鬼」の血が流れていると知ったらあの人たちは平気でわたしのことを駆除しただろう
わたしが笑っていたって怒りを見せたって涙を流したってその意味をわかろうともせず

だからそうなる前にわたしの方から仕掛けたんだ
自分の「生」を全うするために
与えられた「吸血鬼」としての生命を最後の最期まで生き抜くためにわたしは動いたんだ

これまでに「人間」はどれだけの種類の生命を根絶やしにしてきたんだろう
百?千?万?
だったらいいじゃん
万物は流転するんだよ
今度はあんたら「人間」が泣く番だよ
だからわたしは悪くない
悪くないわたしがこんなに苦しむなんて間違ってるよ

818名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:11:42


痛っ

あ痛っ

あー痛っ

あー痛いっ

あ、痛たたたたたたた

誰か助けて! ヘルプミー!!

ホントまじ痛い

指先一本動かないのに痛みだけ増していくって感じ
これはやっぱ助からないかな
痛みで覚めた時は結構期待したんだけどな
一度は諦めたワンピースの最終回を読めるかなと思ったんだけどな
まあどうせこれまでの冒険で出会った仲間たち、経験の全てが一つながりの財宝だ(ドン!!
みたいなオチだとは思うけど
やっぱ想像するのと自分の目で確かめるのとは違うし

痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛っ

ちくしょうっ



ほんとうは居場所が欲しいだけだった
誰かにこんなあたしでも生きていていいって声をかけて欲しかった

819名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:12:15


もっと違うやり方があったんじゃないかな
あの人たちの前から姿を消して
あの人たちの目の届かない場所で生きていくって選択だってあった

でも私は確かめたかった
「吸血鬼」に堕ちた仲間を救う道をあの人たちが選ばないか
もしも選べなくても仲間だった「吸血鬼」の粛清を一瞬でも躊躇わないかってこと

結局わたしの身勝手でみんな死んじゃったんだね
わたしが「人間」を否定するのも「人間」がわたしを否定するのもおんなじだ
わかってたはずなのに

取り返しのつかない過ちを犯してしまった
あやまったって許してもらえるはずもないけど

ご…め・んな…

へぇあなたは生き延びたんですか
どう考えたってろくでもない未来しか待ち受けてるように思えないですけど

・・・一人になったね

820名無しリゾナント:2015/03/26(木) 12:13:11
>>-
『Regret d'agonie』
【但し書き】

・↑の話は〜 コールドブラッド〜の二次創作的な何かの一部です
・設定の一部を使わせて頂いてますが完全に踏襲しているわけでもないです
・〜コールドブラッド〜を好きな方は不快に思われるかもしれません
 前もってお断りしておきます
・〜コールドブラッド〜なにそれ?未読だけど何か面白そうという方は回避されることを一応推奨しておきます

821名無しリゾナント:2015/03/27(金) 18:18:28

リゾナンターは実在したのか。
リゾナン史に興味を持たれている方にとっては愚かな問いかけに聞こえるだろう。
しかしリゾナン史の編纂に関わった初期の研究者の多くはその命題に頭を悩ませたのだ。
たとえば彼女たちの名称として使われる「リゾナンター」「リゾナンダー」「共鳴者」「リゾネイター」
彼女たちの果たすべき使命、「正義の味方として悪の組織ダークネスの野望を阻む」「巨大怪獣による地球の破壊を防ぐ」「日常を侵食する闇から生まれいずる人外の物を駆除する」「毎日を生き延びる」
リゾナン文書に綴られた多様なリゾナンター像に惑わされリゾナンターの実在を疑った者がいた。
他の能力者集団をリゾナンターと誤認しているのではないか懐疑的な考えを抱いた研究者もいた。

連想ゲームをしよう。
次の三つの言葉からあなたは何を思い浮かべるだろう。
動物、灰色、細長い身体器官。

同じ問いかけを私が教える学生達にしてみた結果、実にその九割までが鼠を連想した。
しかしながら私の思い描いた正解は……象である。
ある事象をいくつかの特徴をもって誰かに伝えるとき、特徴の一つ一つを正しく伝えたとしても、その事象そのものを正確に伝えられるとは限らない。
いくつものリゾナンター像という記述のぶれの原因は実のところこんなことではないかと私は考えている。
以下に紹介する「新垣里沙の手記」に綴られているリゾナンターをあなたたちはどう捉えるだろうか。

亀井絵里愛好家 エリソン・P・カーメイ


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