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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part3

1名無しリゾナント:2012/11/24(土) 11:55:51
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第3弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

965名無しリゾナント:2013/06/26(水) 01:57:33
腕が疼く。目尻からじわりと黒い"血"が滲み出ているような気がして。
田中れいなは包帯の上から押さえる。
表面は乾いていた。
だが瞼の下で何かが蠢いている様な気がした。

抉りだしたい衝動に冒されながらも、それが出来ないことを悟る。

 「田中っち!」

新垣里沙の言葉でハッと顔を上げる。
大通りの車道にまで歩みを進めていた田中を、新垣が制したのだ。
隣に居た佐藤が服を引っ張ってくれなければ、そのまま突っ込んでいた。

 「ご、ごめん。ちょっとどっか行ってたけん」
 「…田中っち、身体、大丈夫なの?」

新垣の言葉に、田中の表情が固まる。
佐藤にはそれが先ほどの戦闘によるものだと思っていただろう。
だが新垣は、確信を持ってしまった。
田中の身体が今にも"崩れてしまう"寸前だということに。

緊迫した空気の中、佐藤の腹から小さな音が発せられた。
二人の視線が彼女に注がれ、しまった、という表情を浮かべる佐藤。
そういえば、夕食を食べていなかったことを思い出す。

 「あ、あの、おなかすいたんですけど、おなかすいてないんです」
 「こんなときだけそんな下手な言い訳せんでいいけん。
 れなもお腹に入れときたいっちゃけど」
 「そうだね…多分まだ時間はあるから、佐藤、なにが食べたい?」
 「いいと?そんなにのんびりしとって」
 「大丈夫だよ、ほら、なんでも言ってみな。好きな食べ物とか」

966名無しリゾナント:2013/06/26(水) 01:58:21
 「えと、ラーメン以外のめん類、です」
 「あはは、なにその言いまわしー。ラーメン以外って、うどんとかそばとか?」
 「う…はいっ」
 「そっかそっか、田中っちも良い?」
 「…しょうがないっちゃね」

田中が折れた。
彼女は佐藤にとってはどこか甘くもあり、厳しい。
年下の子との壁が厚かった田中だが、これまで出逢ってきた中で
今の『リゾナンター』に参加する佐藤達とは気が合うのかもしれない。

新垣自身との関係は、正直良くは無かった。
今も共同戦線を張っているだけで、心を通わすことは無いのだろう。
そんな人間と食を囲むというのだから、佐藤が空気を緩和してくれているような気もした。

 彼女がいなければきっと、こうして落ち着けることもなかった。

田中の話では、後藤真希の【空間支配】に"隔離"されたとあった。
自分達へ全てを預けているのだとすれば、あの亜空間から
出るにはまだ時間がかかるはずだ。
気まぐれな人ではあるが、自分達が不利になるようなことはしないだろう。

喫茶『リゾナント』でご飯を食べていたあの頃を思い出す。
生涯最後の食事になるかもしれないということは、考えないようにした。

967名無しリゾナント:2013/06/26(水) 02:01:23
『異能力 -Restart each-』
以上です。

前回の冒頭は特に人物は決めてなくて、仲間の
誰かってことだったんですけど、小さい人のイメージ恐るべし。

968名無しリゾナント:2013/06/26(水) 02:02:33
---------------------------ここまで。
また長くなった…いつも代理投稿ありがとうございます。
いつでも構わないのでよろしくお願いします(平伏

969名無しリゾナント:2013/06/27(木) 05:59:35
>>968
行ってまいりました

>特に人物は決めてなくて、仲間の
誰かってことだったんですけど、小さい人のイメージ恐るべし。

そら矮躯とか矮躯とかあんなに強調してたら

970名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:26:39
>>960
代理投稿ありがとうございます
死亡フラグとは、へし折るためにあるものと思ってますがこの二人はどうなんでしょう

というわけで続きを投下します

971名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:30:04
>>869-873 の続きです

香音のうめき声が、広いスタジオに絶望を彩る。
壁に侵入した時点で異変に気づき、優樹を先に出し、自身も最低限の接触で壁の中で凍結は免れたのは不幸中の
幸いか。しかし、ディフェンスの上での貴重な戦力を失ってしまったのは間違いない。

「敵前逃亡しなきゃ、あたしは手を出さないから」

スタジオの入口に立ち、面倒そうに言う「魔女」。
ひとまずは二人がかりで攻撃、ということはなさそうだった。

「やっぱ持つべきものは友達だよねえ」
「は?ビジネスでしょ。これも大事なお仕事の一つだから」
「仕事熱心じゃないあんたが言っても説得力ないから。ま、好意はありがたく受け取っておきますか」

終始、リラックスした魔女と粛清人のやり取り。
里保は、入口を塞いでいる女もまた「赤の粛清」と似たような地位にいる人物という事を見抜く。それだけに、とりあえ
ずの不参加表明は額面通りに受け取ればありがたいことだった。

「戦えば、あなたは満足するんですか」
「とりあえずはね。言ったでしょ、この機会を作るだけのためにあの爆破事故を起こしたって」

亜佑美は、喫茶店で見た凄惨な事故現場を思い出し、頭に血が上りそうになる。
あれを、あんなことを、私たちをおびき出すだけのためにやったなんて…許せない。
だが、「赤の粛清」に問いかけた里保は至って冷静だった。このことのために数々の策を弄したということは、それだ
け強いこだわりがあることの、裏返し。そう判断した。

972名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:31:05
「みんな、よく聞いて。今、私たちに残されている選択肢は。目の前の相手と戦うだけ。そのことだけに、集中して」

里保の一言が、全員の空気を変える。
怒りに震える衣梨奈、春菜、遥、亜佑美も。後悔の念に駆られている聖も。今やれること、やらなければならないこと
に目を向ける。

「赤の粛清」を、打ち倒す。

もちろん、相手は組織の幹部だ。生易しい相手ではない。
だが、ダークネスと全面対決する時にはそういった部類の人間ともやり合うだろう。幹部たちの相手を、全てさゆみや
れいなが引き受けなければならないのか。否。今いる若いリゾナンターたちが、倒さなければならない。

六人の能力者たちが、一斉に駆け出した。
目標はただひとり、朱き凶刃を手にした粛清人。
真っ先に飛び出した里保が、間合いを一気に詰めて斬りかかる。
クローンとは言え、一度「赤の粛清」とは手合せ済み。他の仲間たちと比べて有利に相手と対峙できるはず。

「クローンって言ってもさ、オリジナルと同じ動きができるとは限らないんだなあ」

里保の思考を読んだが如く、大鎌の柄で器用に斬撃を弾く「赤の粛清」。
疾さも、力強さも、クローンとは比べものにならない。
その一瞬の戸惑いが、隙を生んだ。軸回転させた鎌の切っ先が、無防備な里保に襲い掛かる。

973名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:32:27
「しまっ…!!」

しかし赤い刃は里保の体には届かない。
大鎌が掬い取る前に、亜佑美が里保を確保しその場を離脱したのだ。

「大丈夫ですか鞘師さん」
「あ、ありがとう亜佑美ちゃん」

里保の戸惑いは。
亜佑美が見せた、圧倒的な迅さ。確かに、これまでも彼女は「高速移動」能力で常人の域を遥かに超えたスピードを見
せていた。が、今のは。

「亜佑美のやつ、やるじゃん」
「私の視覚強化でも、捉えられませんでした…」

同期の二人も亜佑美の成長に舌を巻く。
今までよりも、ワンランク上の高速移動。そして遥は、千里眼の能力で、その能力の根源を垣間見ていた。

なんか今、青いライオンみたいのが見えた気がしたんだけど…

遥の直感は正しく、そして。
亜佑美はふとした偶然から出会ったリゾナンターの先輩・ジュンジュンの言葉を思い出していた。

― お前の力、ジュンジュンの力に少シ似テいル ―

974名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:33:29
最初は意味がわからなかった。
もしかしたら自分も獣化できるのかと思い、どや顔で鏡の前で練習したが何の変化もなかった。
しかし、ジュンジュンの言葉は日に日に亜佑美の中で具現化してゆく。自らの心の裡に棲む、一匹の獣。

その獣のことを意識しはじめてから、亜佑美の能力は向上した。
と言っても、実際に行動に移したのは先ほどが初めてではあったけれど。

「へえ、だーいしちゃんそんなことできるんだ」

「赤の粛清」が言うより早く、亜佑美が行動する。
鎌の内側に入り込み、そこからの攻撃ラッシュ。鎌の柄でそれを受ける粛清人の前に、再び里保が急襲する。

「行くよ、亜佑美ちゃん!」
「はいっ鞘師さん!!」

体捌きの得意な二人による、コンビネーション。
里保が足元を刀で掬えば、亜佑美は上段からのハイキックを繰り出す。上段からの袈裟懸けには、下段からの足払いで合わせる。
その動きは、まるで二人でダンスを踊っているかのよう。

「なかなか。じゃああたしももう少し頑張ろっかな」

背後から姿を現す、二本の大鎌。
粛清代行者とも言うべき凶刃が、宙を彷徨いながら里保と亜佑美に狙いを定めた。

975名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:34:32
「そうはいかんったい!!」

鎌の動きが、止まる。
ピアノ線を操りその軌道を止めたのは、衣梨奈だった。

「聖、衣梨奈たちは里保と亜佑美ちゃんのサポートやろ!?」
「そうだね。みんなは二人が戦いやすいように、後方援護をお願い!」

聖の指示で、春菜と遥が後方に下がる。
さらに春菜が付与した五感強化の力で、衣梨奈のピアノ線による攻撃は普段より速度、強度ともに冴え渡る。

「凄い!衣梨、新垣さんになったみたい♪」

彼女のようなタイプは、調子に乗ると手がつけられないほど勢いが増す。
春菜の能力とは相性がいいのは間違いない。

衣梨奈の攻撃が大鎌を凌ぐ一方で、里保と亜佑美による連携攻撃は激しさを増す。
そして互いに目配せをすると、

「じゃんけんぽん!」
「あっち向いてホイ!!」

「赤の粛清」を挟んでの、じゃんけん遊びに見立てた攻撃。
里保が刀を上段から打ち、亜佑美は水平からの手刀。
そして怯んだ所でお互いに肩を組み、体を支えながらの連続蹴り。まともに喰らった粛清人はその場から大き
く後退する。

976名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:35:57
そんな様子を、「氷の魔女」は腕組みをしつつ眺めていた。
一見リゾナンターたちが優位にことを運んでいるように見える。ただ、魔女の目には旧友が追い込まれてい
るとは思えない。

あたしの出番なんてないじゃん。

もともと、この襲撃自体は「赤の粛清」の独断かつ個人的な事情で行われているもの。
勝手にやってろという気持ちもなくもないが。

― 黙認した手前、おおっぴらに手を打つこともできませんから ―

白衣を着た変わり者たってのお願いで、表向きは「赤の粛清」の協力者、真の目的は彼女がリゾナンターた
ちを殺さないよう監視すること、そのためにこの場所にいる。猛獣は戯れているつもりでも、標的の小動物
が死んでしまうというのはない話でもない。

でも。「氷の魔女」は思う。
この程度じゃ、遊びにすらならないと。

それを証明するかのように、攻撃ラッシュを決められたはずの「赤の粛清」は平然とした顔で立っていた。

「やるね。『キッズ』たちとの戦いで成長したって感じか。おかげであたしもようやく、気兼ねなく楽しめる」

そう言いながら、若きリゾナンターたちに視線を送った。
背中に氷板を当てられたような、寒さ。

「忠告してあげる。『全員で』かかっておいで」

勢いでは圧しているはずなのに。
相手が発する異様なプレッシャーを、里保たちは感じずにはいられなかった。

977名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:37:18


「ただいまー」

喫茶店を訪れた田中れいなは、予想外の反応に目を丸くする。
いや、予想外の反応のなさにと言ったところだろうか。

たなさたーん!
ごめんなさい田中さんいつもまーちゃんが鬱陶しくて。
わぁ、田中さん今日もおしゃれですねえ。

これくらいの反応がすぐに返ってくると思ってたっちゃけど。

喫茶店の中は、静まり返っている。
客席にも、カウンターにも、後輩たちの姿は見られない。
不意に今時珍しいブラウン管の小型テレビが、ばらばらに破壊されていることに気づく。

何かがあったのだ。後輩たちの身に。
さゆみからは、今日発生した爆発事故の怪我人救護の応援を頼まれた、との連絡があった。れいなの心を、
不安が過ぎる。

とにかく、今、彼女たちはどこにいるのか。
それを探らなければならない。
れいなは近くの椅子に座り自らの心を鎮め、意識を集中させる。

リゾナンターの特性の一つ、それが互いの心を繋ぐ事による意思疎通。
オリジナルメンバーがいた頃に比べてその力は幾分弱まってはいるものの、相手が今どこにいることくらい
は掴む事ができた。

978名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:39:17
しかし聞こえるはずの心の声は、あちこちから飛び込んでくる雑音に阻まれたのか、まったく届かない。怒
り、悲しみ、嘆き。そんな感情が町のあちこちで生まれては消えてゆく。

あの事件のせいか。
駅前ビルにある大画面のビジョンで報道される、爆発事故。無慈悲、無差別とも言える殺戮は人々の心を大
きく揺さぶる。それが、妨害電波のように立ち塞がるのだ。

ともかく。
れいなは後輩たちを闇雲に探すのはやめようと思った。
先の「キッズ」たちとの一戦で、彼女たちはリゾナンターの名に恥じない戦いぶりを見せた。庇護されるだ
けではない、信頼に値する働きがあった。

今日は久しぶりに店番をするんだった。いろいろ準備せんと。
カウンターに向かうため立ち上がったその時。
吸った息が、出口を求め暴れる。胸の奥が締め付けられるような鋭い痛み。
れいなは数度、激しく咳き込み、そしてこみ上げるものを手で抑える。

「…なんね、これ」

思わず口をついた言葉。
そして掌についた、血。
それはれいなが見慣れたものではなかった。

血。黒い血。
それはれいなに嫌でも過去の出来事を思い起こさせる。

979名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:40:34
― これであんたは、あたしから逃げる事はできない ―

まだ喫茶リゾナントに来る前の出来事。
薄闇に包まれた資材置場に佇むその女が嬉しそうに言った台詞を、れいなは忘れる事ができない。血。黒い
血。呪いの、血。

黒血。
刻が来たのだ。
今更ながらに、自分の期限付きで助けられた命の事を思い出した。
残された時間は、さほど多くない。

980名無しリゾナント:2013/06/29(土) 21:41:33
>>971-979
更新終了
代理投稿をお願いします

981名無しリゾナント:2013/07/02(火) 21:46:17
忍法帳レベル3で代行が出来るのだろうかw
…まあやってみます

982名無しリゾナント:2013/07/02(火) 22:08:45
容量的には問題なかったけどしばらくはリンクを貼れないのが痛手だ

>>980
だーいしの高速移動とリオンを絡ませるとかれいなの黒血とか個性の強い設定を飲み込むあたり過去作品へのリスペクトを感じました
この展開だと後藤さんの参戦も不可避なのか?

983名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:37:39
ナチュラル。
ニュートラル。
本当に孤独な人間というのは、それだけで『完全』な人間だ。
世界と一切関係せずに生きていけるような概念があるとすれば
それほどの角度からどんな具合に観察したところで、やはり『完全』と
表現せざるを得ないと言える。
完全なる孤独。
孤独なる完全。
それは『生死』が無いということ。

 愛し愛され殺し合うことが無いということ。

真の意味で孤独であろうと、完全であろうとすることは全ての連鎖
から解放されようという行為に他ならない。
因果から抜け出そうという行為に他ならない。

つまり殺さず、殺されず。求め合わず、必要とせず。
だから本当に孤独な人間というのは完全であり、そしてあまりにも寂しい。
誰とも、何とも関係しない。

そんな『完全』な人間に対等な人間が存在するだろうか。
誰かが願った『完全』な人間だとしても、何があっても何が起こっても
誰と会っても誰と別れても、運命も必然も因果も因縁も、そんな有象無象が
あろうがあるまいが、そんな魑魅魍魎がいようがいるまいが、物語の
流れになんの関わりもなく、

   ずっと、変わらないのだ

984名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:38:32
それが、きっと、つまり、「死なない」という事。
何のために生まれたのか、どういう意味で生まれてきたのか。
二つの疑問に対する答えに一切の持ち合せがない。

   それが「死なない身体」だ

生死には膨大なエネルギーが必要だ。
保存則にのっとって言えば、エネルギーは総じて「移り変わる」もの。
マクスウェルの悪魔でも無ければ、一定のエネルギーが厳密な意味で
「固定」されたままというのは有り得ない。

だがそれは、人間の常識であり、法則であり、道徳だ。
異能力を保持する人間の常識と、法則と、道徳は違う。

住む世界が、次元が、違う。
種族や種類ではなく、裏や表や逆や対偶ではなく。
違う世界の住人であるという事実があることで、『完全』な人間は
事実上の『完全』と成る。

それは屁理屈だと嘆くか。
解明は出来ずとも、確立をすることが出来なかった真実を。
ならば、傍観者であればいい。

永遠を与えられた人間を、傍観していればいい。
痛みを忘れ、戦いをやめ、他にも様々なものを放棄して
それは終わりがあったときには大事だったはずの思いも平気で捨てればいい。
死んだように時を過ごせばいい。
本当の生も死も知らず、ルールすら無視すればいい。

   それが嫌なら、守れ。

985名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:39:37
死を認識し、獲得し、捕縛し、対峙し、勝負し、対決すればいい。
死ぬのが怖いか。死ぬのは怖いか。
それでも向かい合え、殺しあえ、喰らい合え。

   此処は、そんな世界だ。
   死を覚悟すれば、生きてる間は死なずに済むのだから。

『完全』の外側で、『不完全』の彼女達は生きている。

―― ―― ―

久し振りに食べる蕎麦は、美味しい気がした。
普通の子供はカレーライスや、ハンバーグ辺りを選ぶらしい。
喫茶『リゾナント』に来る親子連れでスパゲッティを不器用に
フォークで取り、啜っているのを何度か見たことがある。

新垣と田中も自分が好きなものをそれぞれ選んで食べていた。
だがどちらとも小食なのか、それとも緊張からなのか、あまり食が進んでいない。
佐藤優樹も緊張はしている。
だが、食べたい物を食べただけで、人は簡単に笑うことができる。
田中や新垣は、ちゃんと笑っているようには見えなかったが。

佐藤が今の状況がそれほど良くない、というのは自覚している。
自分にも危険が及んでいることも。
だが新垣が「大丈夫」だと言った。田中も「良かったね」と言ってくれた。

あの三人が好きな食べ物も覚えてる。
工藤遥は抹茶が好き。 石田亜祐美はスイカが好き。
飯窪春菜はチョコレートが好き。
でもそれ以外にもたくさん好きなものがある。
その数だけ、笑顔があった。

986名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:40:17
たくさんの笑顔が浮かんで、消えていく。
こんな時間が続けば良いのに、と思う。
でも皆が居ないのは嫌だな、と思う。

食べた後、埠頭へ行くために電車を乗り継ぐことを決めた。
その時に佐藤は、田中の隣に居た。降りるまでの間、ずっと、ずっとだ。
彼女の横で手を握り、田中もそれを拒まなかった。

あの時、田中の両目から流れた黒い水。
そして、今佐藤が掴んでいる手が、何か別の生物ような違和感を覚えた、あの時。

本当は聞いてみたい。
様子がおかしいから、本当は具合が悪いのではないかと。
それは自分のせいではないのかと。
自分ができることは何なのか、聞いてみたい。
もしそれが自分のせいだとしたら、このまま自分を捨ててくれても良いとさえ思うほど。
……嘘だ。
本当は捨ててしくない。できればずっと田中の傍に。

 「佐藤、ちょっとの間だけ、寝といてもいいっちゃよ。まだ着かんからね」
 「たなさたん、わたしにできることがあったら、なんでも言ってください。
 どうしていいかわかんないけど、おいてかれるのだけはやだけど。
 それいがいのことはできるから。できるかもしれないから」
 「大丈夫。れなはずっとおるよ。だから寝ときい」
 
電車に揺られながら、佐藤は田中の声と共に瞼を閉じる。
マスクを付けていて苦しいが、寝顔を見られるのはどこか気恥ずかしいので我慢する。

987名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:41:12
佐藤は祈りたくなった。鈴木香音が言っていた『神様』という存在に。
神様は一つ、願いを叶えてくれるという。
たくさん願いを叶えてくれたらいいのに、と思い至った時に、佐藤は祈る対象を変える。
どんなに祈っても助けてはくれない神様ではなく、自分達を救ってくれた
神様のような人達が、これが終わったらいつまでも笑顔で居られますように。

寝息を立て始めた佐藤を見て、田中は呟いた。

 「なあガキさん、佐藤のこと、頼むけんね、こいつ、ガキさんのことも
 好いとぉみたいやし、ま、まだまだ子供やけん、わがままやけど」
 「田中っち、それは卑怯だと、私は思うよ」
 「別にガキさんやなくても誰かに頼んどお、れなにはもう時間が少ないから」
 「…約束はしないよ。私も覚悟してるから」
 「そっか、まあ、こいつらなら大丈夫やね、さゆもおるし。うん、さっきの忘れていいよ」

穏やかな表情でそう言った。見た事のないほど覇気のない、掠れた笑顔。
そして田中れいなは、海に臨む。
傷だらけの身体と魂を抱えて、臨む。
自身の限界を知りながらも、ただひたすらに。

それが自分の在り方だと奮い立たせるように。

988名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:45:00
『異能力 -Blue flames and butterfly-』
以上です。
新スレおめでとうございます。そしてまた巻き添え規制です(涙)

>>34
れいなの設定をリゾナントしてくれたのはスレ内で二度目です(照)

989名無しリゾナント:2013/07/03(水) 20:46:18
-----------------------------ここまで。

避難所を開設して頂きありがとうございます!
どちらに書こうかと思ったんですが、ここを埋めてからの
方がいいんでしょうかね?

いつでも構わないのでよろしくお願いします(平伏

990名無しリゾナント:2013/07/03(水) 22:19:59
>>989
行ってきますた

>どちらに書こうかと思ったんですが

広告のウザささえ気にしなければここも機能してることはしてるんですがね
その辺の合意とかできてないし当面はこちらの方を使います?

991名無しリゾナント:2013/07/03(水) 23:12:31
>>990
わわ、こんなにも早く代理投稿ありがとうございました(土下座
うーん、自分はそれでも構わないと思いますが、何か
重要なことがあれば避難所に、という手も。

992名無しリゾナント:2013/07/04(木) 23:09:41
よく考えたら作品のサイズ次第ではもうこのスレに収まりきらないかもしれないのでpart4を立てておきますか
とりあえず当面は避難所は使わずこちらの方を使用するとしましょう
また広告が酷くなってきたら避難所の使用を検討するという線で

993名無しリゾナント:2013/07/04(木) 23:18:15

つ【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part4 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/22534/1372947232/
長編を投下しようという方はpart4の方へどうぞ

994名無しリゾナント:2013/07/05(金) 18:25:55
>>988
黒血の設定、いつリゾナントするか? 今d(ヤメロ)
きっと元ネタほど魅力的な設定にはできないかと思いますが頑張りますw

995名無しリゾナント:2013/07/05(金) 18:28:56
>>982
代理投稿ありがとうございました。
Gさんについては現実のれいなの憧れの人ですから。取り上げないわけにはいきますまいw

ということでスレを跨いでしまいますが続きを投下いたします。


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