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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part3

1名無しリゾナント:2012/11/24(土) 11:55:51
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第3弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

926名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:31:54
>>588-595  の続きです


一方、ここは爆発のあった都心のオフィスビル。
建物の周囲は関係者以外立ち入り禁止のテープで囲われ、さらにその周りを野次馬やマスコミたちが取り囲
んでいた。
そんな喧騒を余所に、建物内では必死の救助活動が行われる。

警察関係者である「瞬間移動」の能力者の手によって、次々と現場に送り込まれた治癒能力者。
数はさほど多くはないが、すぐに駆けつけることができた人数としては妥当なところ。救急部隊が到着するまで、
数分の時間差がある。さゆみたちの仕事はそのタイムラグの間に落としてしまう命を、救うことだった。

崩れた壁、粉々になった窓ガラス、そして血まみれで倒れている人々。
まだ先代リーダーの愛が在籍していた時。さゆみはニューヨークのとある場所で発生した爆弾テロ事件の負傷
者を治療する機会があった。あの時は異国の地ということもあり、状況をいまいち呑み込むことができなかった。
しかし、いざ自分と同じ日本人が血を流し苦しんでいるのを目の当たりにすると。その凄惨さはよりリアルに、さ
ゆみの心に刻みつけられるのだった。

フクちゃんを連れてこなくてよかった…

さゆみは心からそう思う。
いかにリゾナンターとは言え、彼女はまだ16歳だ。もちろん、さゆみやれいなを含めたかつてのリゾナンターた
ちも同じような年齢でこの世界に飛び込んでいるという事実はある。しかし、その経緯やアフターケアなどは今
とは比べものにならないほど劣悪だったのもまた、事実。免疫の少ない聖、いや今の若いリゾナンターたちを
できればこのような現場には連れて行きたくはない。

さゆみの目の前に倒れている女性の肩口の傷に手をかざしながら、過去のことを思い出す。
運命に導かれ、集うこととなった9人の仲間。それぞれが抱えていた心の傷は、容易には癒せないほど深かっ
た。愛に声をかけられるまで、各々が過酷な道を歩んできた。中には、その手を血に染めたものも。

― リゾナンターは、殺人集団やないんやよ ―

愛がかつて残した言葉が、いつまでもさゆみの胸の奥には残っている。
ダークネスとの争いが激化する中、思いがけず敵の命を奪ってしまうこともあった。若い小春や、秘密組織に身
を置いていたリンリンやジュンジュン、そして甘さが死を招くような環境にいた里沙は「仕方ない」と割り切った。
それを覆したのが、先の愛の言葉だった。

自らの内包する「i914」と戦い、打ち克ったものの、同時に「i914」の犯した過去の罪を共に背負うこととなった愛
だからこそ、その言葉は誰が発するものよりも、重かった。

927名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:33:02
「…あの、大丈夫ですか?」

不意に、声をかけられる。
見ると、自分より5、6歳は年下のように見える少女が傍らに立っていた。
黒髪の、色白な少女。黒目がちな瞳と首のほくろが印象的だ。おそらく警察関係者が招聘した治癒能力者の一人な
のだろう。

「あ、ごめん。考え事してて」

手当していた女性の傷口は既に塞がっていた。過剰な治癒は、肉体を傷つける可能性がある。
さゆみは慌ててその場を離れ、近くに倒れていた人のところへ移動する。

が、間の悪いことにその人間は一目見て死んでいることがわかるくらいに、損傷が激しかった。
爆風で飛び散った瓦礫をまともに受けたのだろう。無事なのはすすけた顔のみで、その下は首や胴体が千切れかけ
ていた。

「…こんな若い子まで」

浅黒い肌に、意志の強そうな顎。
生前はきっと活発な少女だったのだろう。
亡骸に手を合わせていると、

「もう、いい加減にしてよ!」

と、特徴的な声が。
先ほどさゆみに声をかけた少女だった。

「え?どういう…」
「ごめんなさい。この子、うちの子なんです」
「うちの子?」

意味が呑み込めないでいるさゆみを尻目に、少女が遺体に向かって話しかける。

928名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:34:23
「ほら、お姉さんが困ってるでしょ!早く起きて!!」

すると、死んでいたと思っていたその肉体がやおら動き出す。
千切れかけていた首や胴体が、急速に成長する血管や筋組織によって繋がれ、再生してゆく。そして常人と変わら
ぬ状態で、少女がゆっくりと起き上った。

「憂佳は頭固いなぁ。もうちょっと『死んで』たかったのにさ。被害者だったのは事実なんだし」
「だって紗季ちゃんが『死んでる』と紛らわしいでしょ。お仕事の邪魔になるし」

さゆみの頭が混乱する。
あれ?ちょっとこの子さっきまで死んでたよね?何で起き上れるの?ゾンビ?って言うかもう一人の子かわいいな
あ。色も白いしお人形さんみたい。どさくさに紛れて抱きつこうかなでもこんな場所でそんなことしちゃだめ…

「あの、お姉さん?」
「えっあっ別にやましいことなんて全然考えてないよ!!」
「何のことですか?まいいや、自己紹介しますね。この子は、小川紗季。そして私は前田憂佳。警視庁が新設した
能力者部隊の一部署『スマイレージ』のメンバーです」

能力者部隊「スマイレージ」。聞いたことのない名前。
さゆみはしばらく二人の顔を交互に見て、それからまた混乱するのだった。

929名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:35:48



圧倒的な絶望感。
里保自身、ダークネスの手のものと相対することは初めてではない。
しかしながら、「幹部」という肩書きがついただけでこれほどまでに差があるものなのか。

「ごめんね鞘師ちゃん。時間調整が必要だったからさ」

里保の恐れなどどうでもいいとばかりに、そんなことを言う「赤の粛清」。
すると、後ろから複数の足音が押し寄せてきた。

「里保ちゃん!!」

指定されたスタジオへとやって来た聖、衣梨奈、春菜、亜佑美。それに、途中から合流した香音と遥だった。

「予想以上に鞘師ちゃんの動きが早かったからさ。クローン使って時間稼ぎをしてたってわけ。他の子たちが到着
するまでのね」
「何言ってるかわからないけど、まーちゃんをどこへやったんだよ!!」

相手の都合などどうでもいい。
まずは優樹の安否、と遥が大声で叫んだ。

「あの子なら無事だよ、ほら」

「赤の粛清」が頭上を指す。
照明のケーブルに絡め取られているかの如く、優樹が天井から吊るされていた。
そこには、聖たちが喫茶店のテレビで見た、そして里保が「赤の粛清」を追跡している時に見た優樹。ただ。

「まーちゃん…?」

吊るされていた体が、二つ。
まるで双子のような優樹「たち」が、気を失ったまま縛られていた。

930名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:37:53
「どうしてまーちゃんが二人も」
「大丈夫はるなん、片方はきっとクローンだよ」

動揺する春菜を、里保が落ち着かせる。
里保は目の当たりにしていた。さっきまで本人と見分けのつかないくらいに酷似した粛清人のクローンが、自分の
前に立ちはだかっていたのを。だが、その推測を否定するように「赤の粛清」は空っぽの笑みを見せた。

「ちょっと違うんだよね。ま、さっきのを見たらそう思ってもしょうがないかな」

言いながら、手にした大鎌を。
天井の優樹に向けて投げつけた。

誰も、動く事ができなかった。
里保の洞察力でも、春菜の超聴覚を持ってしても、彼女の行動を読むことはできなかった。
結果。鎌の刃が、優樹の胸を刺し貫く。

拘束していたロープごと断ち切られたせいで、ずるりと、落下してゆく優樹。
そこではじめて亜佑美が走り出す。間一髪で床面に墜落するのを防いだものの、傷口から噴き出し、着ていた制服
を染め上げる血の量が命に関わる傷を負っていることを証明していた。

「まーちゃん!!」
「そんな…約束が、ち、が…う…」

腕に抱きかかえられた優樹はそれだけ言うと、糸が断たれたかのように事切れた。

「…嘘でしょ」

悪夢のような出来事。遥は、目の前で展開された事態が呑み込めない。
しかし亜佑美は仲間たちの懸念を払拭する。

931名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:39:15
「この子、まーちゃんじゃないです」

その言葉のとおり、少女は優樹ではない見知らぬ少女だった。
胸に刺さっていた大鎌が独りでに引き抜かれ、再び「赤の粛清」の手に収まる。

「その子は、擬態能力者。さすがにあんたたちのクローンはまだ作れないからね。譜久村ちゃんたちが見たあの映
像あるじゃん。あれ、あたしのクローンとその子だったんだよ」

ダークネス。心を闇に食われたものたち。
さゆみから、そしてれいなから。遡れば、里沙や愛佳、そして愛から。どんな連中かは、聞いてはいた。だが、聞
くのと実際にその所業を間近でみるのとでは、わけが違う。

人が簡単に、死んでゆく。
用済みとあらば、何の躊躇もなくその命を奪う。
春菜と遥は、元々は能力者を教祖とした新興宗教組織に攫われた子供たちだった。後にその組織自体がダークネス
の息がかかった存在だと知るが、その悪辣な教義、行動原理。
今となれば納得できる。

「てめえ、何か昔のことを思い出してムカつくんだよ」
「あなたのしたこと、許すわけにはいきません」

ずっと育ってきた組織の中で日々体を蝕んでいた、不快感。
それは、目の前の女が放つ闇の吐息と寸分違わず重なっていた。

「にゃはは。ボルテージ、上がってきた?いいよ、全員でかかっておいで」

二人が放つ敵意を、そよ風を受けるが如く気持ちよく受け流す「赤の粛清」。
亜佑美が体勢を低く構える。香音と聖が全員のバックアップのために後方に下がる。衣梨奈が両手から伸びるピア
ノ線を靡かせ、里保が愛刀を握り直した。

932名無しリゾナント:2013/06/18(火) 23:40:57
「みんな、優樹ちゃんを確保して、逃げるよ!!」

聖の叫び声。
そう、最初から戦うつもりなどなかった。
まずは、全員無事でリゾナントに帰還すること。聖はそのことを最優先としたのだ。

衣梨奈が、相手の大鎌にピアノ線を巻き付ける。さらに高速移動の亜佑美と素早さを持ち味とする遥が相手の目を
撹乱。その隙に、聖が屈み床に手をつける。床張りのリノリウムが大きく裂け、飛び出してきたのは太く堅い木の
根。聖が自分達を付け狙っていた能力者の一人から複写した植物操作能力だ。

俄かに作られた足場を器用に辿り、里保が天井に吊り下げられている優樹を拘束するロープを一閃のもとに断ち切
る。落下地点には香音が。

「みんなに透過の力をかけたから、壁をすり抜けて脱出して!!」

優樹を抱え、最初に壁をすり抜ける香音。
だが。

勢いよく壁に突入した香音が”何か”に阻まれて、壁から弾き出される。
床に転がり、蹲る香音。その顔には、血の気がまったくない。

「ダメだよ、逃げちゃ。あたしがこの状況をお膳立てするのにどんだけ苦労したと思ってんの。どっかの知らない
オフィスビル爆破までして、あんたたちと先輩二人を引き離したのに。そうだ、ちなみに壁の中は零度以下の超低
温になってるらしいよ」
「入ると、その子みたいに全身凍傷になるから」

その声と共に姿を現す、ゴスロリファッションの女。
「氷の魔女」が、底意地の悪い笑みを浮かべる。

「ここに誘い出された時点で、あんたたちの命運は決まってるの。だったら、精々全力出してさ、あたしを楽しま
せてよ」

血をたっぷりと吸った鎌の刃を、「赤の粛清」が突きつける。
何もかもが、全てが綿密に仕組まれた、策略。
聖は自らの至らなさを、激しく後悔した。


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