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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part3

1名無しリゾナント:2012/11/24(土) 11:55:51
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第3弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

588名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:23:44
文字を追いながら、ぐるぐると思考を展開させる。これを使えば、世界は変わる、かもしれない。
自分の周囲にある「世界」。
信じていたもの、普通にあると思って疑わなかったもの、ずっと変わらない日常だったはずだ。
だが、ある日突然にして地図は変わった。自分の立ち位置を見失い、座標は消えゆく。
さゆみは手を組み、額に持っていく。
じっと目を閉じて深く思考の海に潜りながら、ふと、在りし日のことを思い出していた。


-------

―――「今日の17時、喫茶リゾナントに集合」

絵文字も何もない、たった一文のメールが送られてきたのはその日の昼過ぎのことだった。
何事かと、リゾナンターのメンバーは、高橋愛の指示通り、17時に喫茶リゾナントに集まった。
肝心の呼び出した本人は、16時過ぎからリゾナントの厨房に立って、なにか料理をつくっていた。

「え、なんなの?」

新垣里沙は眉を顰め愛に話しかけたが、彼女は意味深に笑うだけでなにも答えなかった。
呼び出されて集合したは良いものの、待ちぼうけを喰らうことになり、亀井絵里は「ふああ」とあくびをする。
黙々と具材を切っていく愛をさゆみは不思議そうに見つめ、れいなもまた、分からないと言わんばかりに肩を竦めた。

「ヴィジョン視たら?」
「そう易々と能力行使させようとするのやめません?」
「コーシってなに?」
「……もうええです」

久住小春に円らな瞳で覗き込まれ、光井愛佳は逃げるように雑誌を捲った。
手伝った方が良いのかもしれないが、厨房に立った愛は「良いから座っとき」と強く言われたので、我関せずの態度を一貫している。
ジュンジュンはアイスコーヒーを片手に立ち上がり、厨房の愛を覗き込むが、しばらくすると席についた。
落ち着かないのは彼女もいっしょなのだろう。くるくるとストローを意味もなく回している。

589名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:24:31
普段とは少し違った空気が喫茶リゾナントに流れていた。
この店のマスターである愛がキッチンで料理をすることなど珍しくもない。
だが、あれほど大量の具材を買い込み、ひとりで厨房に立つのは珍しい。
しかも営業時間にもかかわらず、リンリンに頼んで「CLOSED」の札を出させてまでのことである。
リンリンは不可解に思いながらも、「OPEN」の札を返した。そして始まったのが彼女の料理ショーだ。
こめかみを掻きながらも「楽しみデスネ〜」と適当なことを言って場を和ませる。
各々がそれぞれの想いを抱えながら、喫茶リゾナントに少しだけ「非日常的な」緩やかな時間が流れていた。


「よーし、かんせいっ!!」

彼女が厨房に立って、何分が経過しただろう。
たまたま時計を見ていたさゆみは、優に1時間半が経過していたことに驚いた。

「ほら、全員集合!」

愛はテーブルにガスコンロをセットし終えるとそう声をかけた。
その場にいた全員が「それ」を予想したが、同時に、「それ」はないだろうと否定もした。
だが、結局彼女が「それ」を厨房から持ってきたせいで、その予想は当たることとなった。

「鍋かよ!」
「そう、鍋やよ、ガキさん」

愛はそうして厨房から鍋を3つほど持ってきた。
里沙の向かって右からキムチ鍋、石狩鍋、もつ鍋が並んでいる。

「あんだけ勿体ぶったのに鍋なの?」
「鍋おいしそ〜!」
「石狩鍋とか、凝ってますやん」
「鍋おいしそうです、ハイハイ」

テーブルを囲うように8人が集まり、愛は嬉しそうにお玉で具材を掬った。

590名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:25:12
「はい、もつ鍋が良い人〜?」
「れいなそれがいい!絶対もつ!」
「モツってナンダ?」
「って人の話を聞けぇ!!」

愛は里沙のツッコミなど聞かずに人数分の鍋を注いでいく。
白い湯気を立てたそれは、実に美味しそうだ。
さゆみも皆に倣ってもつ鍋を受け取る。そういえばもつ鍋って食べたことないかもしれない。

「ねえ愛ちゃん。なんで鍋なの?」
「はい、皆受け取った?受け取った?よし、じゃあ、いただきまぁーす!」
「だから聞けってば!」

とにかく現状を把握したい里沙がどんと机を叩いて立ち上がった。
能天気に箸を持った小春も、さすがにこの空気の中でキムチを食べる勇気はなく、ゆっくりと箸を置く。

「なに考えてんのよ愛ちゃん」
「……だってさ、こうやって9人で揃ってご飯食べるの、久し振りやん」

白菜を口にしながら愛はそうして笑った。
里沙は「はぁ?」と眉間に皺を寄せたが、さゆみはふと、そういえばそうかもしれないと思った。
ここ数ヶ月、全員が顔を揃えて食事をともにすることはなかった。
ダークネスの急襲、不穏な動き、殺伐とした毎日がつづくなかで、のんびりと9人で食事なんて、考えられなかった。

591名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:25:42
「たまにはこういう日も大事やと思って」
「そのために、わざわざ呼び出したの?」
「よく言うやん。何気ない日常がいちばん大切やって」

軽く口にした言葉は、妙に心に刺さった。
いつまでもつづく平和なんてない。リゾナンターである以上、常に死と隣り合わせで、この9人の生命の保障はない。
だからこそ、9人で必死に闘って、前に進んできた。
同じ、共鳴という絆で結ばれた仲間だから。

「今日は9人でさ、ぱーっと盛り上がろうよ!」

不確かな日常。確証のない未来。
だけど、この9人なら進めると思った。
年齢も、境遇も、国籍も、全く違う9人だけど、不思議と自信があった。
絶対に負けないと、胸を張って断言できた。

「じゃあ乾杯デスヨ!」
「絵里オレンジジュースがほしいー」
「あ、冷蔵庫取ってきますよ、田中さんなにがええですか?」
「じゃあグレープジュース」
「小春は麦茶ー」
「あんたは自分で取ってくるの」
「鍋美味しいダ」

凍った空気が再び動き出す。
慌ただしくなったメンバーを尻目に、愛は豚肉を頬張った。
里沙はわざとらしく肩を竦めて椅子に座り、キムチ鍋に手を伸ばした。

592名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:26:17
「きみはよく分からないよ」
「まあ分からないから良いってもんやない?」
「……さあね」

いつの間にか、目の前に紙コップが並べられていた。
愛と里沙は仲良く麦茶を手にし、右手で持つ。

「じゃあ、リゾナンターにかんぱーい!!」

威勢よく発した小春の声とともに、9人での宴が始まった。
だれかの誕生日であるとか、記念日であるとか、そんなことはまるでない。
ただの日常の、ありふれた夜でしかなかった。
だけどそれは、とても特別で、妙に忘れがたい夜となった。


-------

目を開けると、目の前にはディスプレイの暗くなったパソコンが置いてあった。
あの9人で鍋を食べたのはいつのことだっただろう。次に皆で鍋を囲んだのは、高橋愛がリゾナンターを離れる前日のことだった。
思えば、すべては節目の日だった。
大切な想い出。大切な過去。忘れることのできない夜。

さゆみは背もたれに体を預け、ぼんやりと天井を見上げた。ごきっと背骨が鳴る。
右脚が少しだけ軋んだむ。病院にも、行かなくてはならない。そう思うけれど、体が動かない。
勢い良く体を戻し、再びパソコンを見る。
「corrido」の効能の書かれたページを確認しながら、黒い蓋の瓶を手にする。
魔女の言葉、上層部の不穏な動き、薬品、人体実験、行方の知れない里沙。
考えることは山積みで、だけどもうなにも考えたくなかった。
頭の中に浮かぶのは、大切な仲間たちの笑顔。

593名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:26:48

―――「よく言うやん。何気ない日常がいちばん大切やって」


自信があった。
あの9人でなら何処までも走っていけると、そう信じていた。
過去の記憶との邂逅は、心を掻き乱し、捉え、波を起こして襲いかかる。
さゆみは再び、目を閉じる。
信じていた世界。何処までも、永遠につづくと信じていた、日常。あの9人での、記憶。


―――「これでもさぁ、信じてるんだよ、きみのこと?」


唐突に、彼女の言葉が甦った。
舌足らずで、甘ったるくて、へらへらふわふわと、だれにも捕まらない自由な風のような彼女は、文字通り、風のように消えていった。
その割にいつも本質を突いて、ぐさりとさゆみの心を抉る。
力強くて、立派で、そして残酷で、だけどだれよりも暖かな風を吹かせる彼女が、好きだった。


―――「争うことのない、平和な世界。そういうの、見てみたいんだ。きっとね、さゆたちならできると思うの」


あれはいつのことだっただろう。
白くて狭い病室に、彼女の好きな花を持っていった夕方、彼女は病室の窓から空を見ていた。
四角く切り取られた小さな青に向かって、彼女は真っ直ぐに腕を伸ばしていた。
天高く上った太陽を掴まんとするその仕草は、まるで子どもで、どうしようもなく、大人だった。

594名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:27:19

―――「きっと、さゆならだいじょうぶ。だから、だから、諦めないでほしいんだ。絵里のためにも、絶対にさ」


太陽を掴むことなく、腕はだらりと垂れ下がった。
さゆみに向き直った彼女の笑顔は、眩しかった。
あの言葉の意味を、さゆみが問いただすことはなかったし、できなかった。
彼女が一体なにを云いたかったのか、その真意をさゆみが知ることはなかった。
だからさゆみはいまでも、彼女の想いをその両の腕に抱えたままで生きていくしかない。

「なにを、諦めないでいればいいの、絵里……」

ぎゅうと瓶を握りしめて、さゆみは立ち上がった。右脚が軋む。
パソコンを閉じ、右脚を引き摺りながらも部屋をあとにする。
もう、後戻りはできないと、ぼんやり思った。

595名無しリゾナント:2013/04/27(土) 15:29:17
>>583-594 とりあえず此処までです
長くなって申し訳ないですがお気付きになった方は代理投下お願いします
>>592「corrido」→「Corrido」にCを大文字変換に直していただけますと幸いですm(__)m

れいな卒業までに最後の景色…は難しいですが必死に頑張ります


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