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だれも死なない

1niv:2007/12/30(日) 05:24:22
あらすじ:
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/7039/1198914819/-100
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/7039/1192801775/787-

目標:
bothhandsを倒せ。
記述量で上回ったら勝ち。
bothhands vs ほか全員ですが、bosshandsだと思って全員で挑みましょう。

条件:
 誰かが死ぬ話はカウント外。
 暗示的なものはそのつど考慮。
 時代をまたぐと死が不可欠になる(現代地球の常識で考えれば、100年経ったら人は死ぬ)が、死について触れなければセーフ。
 (死に際のセリフ、遺産、死ぬ直前の描写などはアウト)

2niv:2007/12/30(日) 05:36:53
――2億年の間(x軸方向に√2億年、y軸方向に√2億年、その絶対値として2億年の間)、
形のない混沌とした闇の中で、
記憶も意志も持たない盲目の中で、
あらゆる感覚の領域にも移し変えることのできない魂の希求に引かれながら、
私はあなただけを求めてきたのだ。

――レストロオセよ。

3niv:2007/12/30(日) 06:09:53
むかしむかしという言葉がカテゴリーミステイクになるころ、ないところにキュトスという女の子がひとりぼっちでいませんでした。
キュトスがひとりでいませんでいると、アルセスという男の子がやってきませんでした。
経験が外部から与えられないために10の−33乗cmしかなかったちっぽけなキュトスの心は、アルセスによって熱を帯びて急速に膨れ上がり、豊かで激動に満ちたものになりました。
やがてはじめの熱が冷え始めて落ち着いてくると、爆発して広がったキュトスの心は法則性が生まれ、形が整い始め、見通すことが出来るようになりました。

なにぶん何もないところにいたものですから永遠というものもなく、キュトスの幸せも永遠には続きませんでした。
やがてアルセスは去り、キュトスの心はさらに冷え切っていきました。しかし、それでも心が閉ざされてしまうことはなかったし、原初の衝撃が完全になくなるということも、やはりなかったのでした。

1964年、アメリカのアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンによって宇宙の全方位から観測されるX線が検出されました。
こうして、キュトスの初恋の記憶は宇宙背景放射と名づけられたのでした。

4niv:2007/12/30(日) 06:16:27
神々が著作権を放棄したので、人間は自由意志で行動できるようになった。

5UG774:2007/12/30(日) 06:26:48
後世に人が神格の一柱と誤解されて後世に伝わったり
後付で信仰を得る話と言うのは一杯有る。
……紀神の担当していなかったポジションを埋めてしまうんだって。
例えばリクシャマー地方で信仰される商売の神マグドールやら……
東西南北の四死神シェロンとアダスとレナリアとセロナ。
そういった意味では彼らは未だに生きている。
誰かに忘れ去られてしまわなければ、それは永遠。永遠の生。
永遠に生きていることと同じだと思うから。
――空の迷子・アエル・ウォルンタース

6niv:2007/12/30(日) 06:40:57
セラティスが空間に指先を当てると原子が誕生し、指先を離すと原子が消滅する。
10の80乗本の腕でもって彼女はこの世界を演奏し、こうしてわれわれの時間が進む。

7niv:2007/12/30(日) 11:22:27
 楽譜を書くのはラヴァエヤナだが、セラティスは必ずしも与えられたとおりに演奏するとは限らない。彼女の霊感は、ときに平凡な靴売りに賢帝ミュリエンティウスの生涯を伴奏として響かせたり、平和なシーンに一度倒された魔王のテーマをサンプリングしたり、ドッペルゲンガー和音をだいたんに取り入れたりする。
 ラヴァエヤナが楽譜を書くのは、セラティスの芸術的野心を満たすためだけではない。エネルギーの収支や質量の保存、エントロピーの拡大傾向など、いろんなバランスを考えてつくっている。
 セラティスが破壊的旋律を奏でると、その例外を説明するために、ペレケテンヌルはまた新しい物理法則を考えなくてはならないのだ。

8言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 11:45:06
【人類】が発生する以前、世界には巨人達が住んでいました
巨人といっても現在のちょっとばかし図体の大きな人間ではなく、環淵神ハザーリャより生まれた【始原の巨人】です。
彼らは土と木の根を食らい、槍の世界更新(この頃は槍の脱皮が頻繁に起こって忙しなかった)の間は霜と苔に覆われる。弱い生き物達がこの長い冬を越す為の終の住処となりました。
その死に際には海辺で蹲り、最後は大いなる海に還ります。そして新しい【始原の巨人】が誕生するのです。
他の生き物の様に肉や毛皮、骨や死骸を残せない代わりに、彼らは優れた語り部であり、彼らの語る話はとても壮大で、語り終わるまでに幾星霜の時を重ねます。
彼らの知恵はその生涯を掛けてその語りを記憶する聞き手に記録させます。
そんな彼らの残した伝承に【凧】というものがありました。

「凍ったものを踏み締める」シブニルがふと、夜空を見上げると地上を照らす月明かりと名も無い星々が消えているのです。
しかし夜明けまで共に何事も無かったかのように空は元に戻っていました。
どうしても夜空が消える理由を知りたかった彼は槍を上りました。七日七晩を掛けて空の上に辿り着くと不思議なことが起こりました。
視界にぶ厚い壁のようなものが広がっていたのです。意を決して飛び移るとそれが生き物だということに気付きました。
風に揺れる繊毛、体表から出る分泌液で滑る皮膚、重く湿った綿を殴るような感触、巨大な肉塊が空を遮っていたのです。
結局謎の生き物は朝になると忽然と姿を消しました。大いなる海に落ちながら彼は自分もあれの真似をすれば空を飛べるのではないか、と考えました。

9言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 12:59:38
神様が行ってしまったようで、今年は雪が降らない。
僕らは雪遊びが出来なくてつまらないけど、
大人たちは、これからは雪かきしなくてすむし、タイヤにチェーン巻かなくてもすむし、と喜んでいる。
「大体アルセスって神様、確かそんなのいたよな。俺、あいついけすかねえって思ってたんだよ」
「いけすかねえのはペレなんとかじゃなかったっけか? まあどうでもいいけどよ」
もう神様のやつらは行っちまったんだし、と話す。

僕らは代わりに鈴遊びをする。
鈴を持ち寄って鳴らして、一番高い音のでる鈴を持ってきたやつが悪魔だ。
みんな目隠しをする。悪魔もだ。わーって逃げる。悪魔はそれを追いかけて、捕まえたら鈴を交換する。

ちりんちりんと暗闇の中で、鈴の音が動くのを聞く。
雪は神様の垢だ。

10Co:2007/12/30(日) 13:40:49
全てが終わったとき、ひとりぼっちだけが残っていた。
ひとりぼっち以外の全てのものはそれぞれの手を取り合い、足を取り合い、頭も体も心も取り合って……次の世界へ行ってしまったのだろう。触れ合うことをしなかったひとりぼっちだけが、ただ一人あぶれていた。
他には何も残っていないこの世界で、ひとりぼっちは一人きりで過ごすしかなかった。
遊び相手はいない。話し相手はいない。争う相手はいない眺める相手はいない想える相手はいない。
住むところも無かったが、風雨も存在しなかった。
食べるものも無かったが、空腹も存在しなかった。
死は生と共に次なる世界へと去ってしまった。
ひとりぼっちだけが残っていた。ただ一人であり続けることだけが残されていた。

11言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 14:06:36
北方神話のシブニル、といわれて首をかしげる者も多いだろう。
透徹なる瞳、燃える単眼、灼熱の腕の猿などといった紀元の神々と比して、その伝承のマイナー性は否めない。
地域差ではない。
既にして廃れ消えかけた神話の渦。
渦中にあった時代は疾うに雲散し、その概要も踏みしめる足跡も本来伝わっているはずの北方の地の雪に埋もれてしまっている


その中で、かの地域の神話群を一手に記録し、古き伝承を収集し続ける一族がいる。

アルキトレ、という家系だ。代々神話検証学や蹟碩考古学などの各界に高名な学者を輩出してきた彼らは、
連綿と古来より受け継がれてきた知識や文献をただ集積、管理した。

そして彼らは、それらを解体した。

シブニル、というのは。
彼らによれば、かつての北方で進行されていた唯一絶対の神、即ち極寒の世界を支配する冷気そのものであったという。
そうした自然信仰、唯一神への信仰、伝承の類を彼らは隠蔽し、学会の権威としての立場を利用して別解釈の神話を作りだした。

魔路神群と呼ばれる現代の北方神属が、それに相当する。
単一の神を複数の神々に分割した。
これこそが彼らの為した功罪。

そこに何らかの意図があったことは明白であり、またいかにしてあらゆる残存資料を隠蔽し捏造した証拠を散逸させ続けてきたのかは不明である。
それをなさんとする恐るべき一族の執念、むしろそれ自体が最大の謎として取りざたされつづけるように。

12プロローグめいた独り語り:2007/12/30(日) 14:10:13
時は未来、世は古代。



知性持つ種は栄え、文明は決定的な飽和を迎えた後ありとあらゆる方向へ独自の革新を迎え、退化していった。

ある国家は肉体を鋼と化し、外付けの四肢を拡張することで種族と種族の壁を取り払った。
ある鳥の種族は羽の一枚一枚に神経を行き渡らせ、とるに足らぬ羽自体を通貨にして端末にして衣服にして武装にして性器にして感覚器にして脳にしてしまった。
ある共同体では脳という物理的容量の限界に行き詰まりを感じたがゆえに情報を大気分子に刻み付け周囲の大気そのものを脳にしてコンピュータと化し、巨大な情報機器を共同体の全員が共有した。
またある魔女たちは食事そのものを魔術と規定し、フォークやナイフを手に取り食事をすることで闘争の喜びを見出した。料理人たちは使い魔となり、酵素と蛋白質を有機素子と捉えて調理することによって一方通行の、だが完全に限りなく近い情報伝達を可能とした。

またある地方では宗教を政治やイデオロギーではなく娯楽で捉える風潮が完成した。
異なる宗派が舌戦や非致死性の武装で殴りあう宗教闘技。飽和した快楽に嫌気が差した道楽者が節制と教養を学ぶ新しい先端流行。各宗派ごとに規則の異なる、神への意識の高さや無心である度合いを脳波から正確に測定する「祈り合い」が誕生した。


世界は一方向に向かい邁進することに飽いてしまった。
多岐に渡った侵食はやがて空白を塗り潰し、制覇された地表はやがて腐り落ちていく。
食いつぶすことしか知らない知性は世界という名の白紙に穴を開け、枝分かれした知性の瞳は野獣の本性を露にし、やがて世界を食い尽くす。

多頭の獣はそうして新たなる世界を創造した。
名を、【ヨンダヴァナラウンド】。

それは、【パンゲオン】の後創世界。

13狂信者:2007/12/30(日) 14:45:06
Zelotめが、などと罵倒されてさしものヒルケゲもこめかみをひきつらせる、が、思い出すのは現状と窮状。

即ち、危機である。というのも今現在のヒルケゲはリンチまがいの宗教裁判、ポルポフォン教信徒の中に投げ出されたキュトシストよろしく絶賛で非難弾劾罵倒の嵐の渦の中。
まあつまるとことは信仰性の違いというわりとありきたりで当人たちにとっては重大な行き違いから発生したトラブルである。

ヒルケゲは死者信仰を家庭祭壇に掲げている。
だがしかし、だ。
この街の住人、それどころかこの地域一帯の住民にとって、死という言葉ほど忌むべきものとしてタブー視されているものは他にないという。
見るがいい、見渡す限りの広き土地、その中にひとかけも見当たらぬ弔いの名残、墓所という概念。

葬るという行為、生の終焉を讃えるヒルケゲからしてみれば、その土地の住民たちから欠如(しているとしか見えぬ)した大いなる思考の道筋はおぞましいことこのうえない。
無論それは周囲のものたちにとっても同じこと。見てみろ、あの余所者は忌みゴトを平然と口にしてあまつさえ神聖なもののように扱っているぞ!

理解できない。双方が双方を理解できない

何故、そんなこともわからぬのか。ヒルケゲは人の死とは生と分かち難いものでありすばらしき生の最後を飾る人生最大の栄誉たる一大イベントとして捉えている。
人々は、そんなものは記憶するのも忌まわしい、即座に忘れてしかるべきものだと口を揃えて言い募る。
吊るし上げられて村八分、最終的には追放される。

そんな未来を予感しつつ、ヒルケゲは自らの思想を少しでも噛み砕いて説明せんと言葉を尽くすのだ。

14あおぞら:2007/12/30(日) 15:12:26
メイエル・サイドフィールドの話をしよう。

切り立った崖を見下ろす。えぐりこむような急速下降。
眩暈を誘発するかのごとく鋭き先鋒をあざ笑うように、遥か重力の寄せる先、波打つ荒海へと一直線。
矢か投げ槍か。砲弾とでも形容すべきか。
否、彼女の動きはいずれでもない。
彼女は一枚の羽。滑空する鳥の羽。

それは言葉そのままの意味である。

メイエル・サイドフィールドは比翼鳥の風切り羽の一枚である。
ヨンダヴァナラウンドのセドナという世界で、鳥たちは支配種族の地上の拘束から逃れた自由なる種族として一身に尊敬を集めている。
軽やかなる姿態、美しきその躍動。

蒼穹の色と溶け合う羽毛と瞳はどんな宝石の煌きにも勝るであろうと誉めそやされる。

なかでも風切り羽は特別である。無数の神経線維と生殖細胞、「もうひとつの脳」としての遺伝情報などの記憶保持はもちろんのこと、
飛行中の補助思考や速度計算を一手に請け負う重要な器官なのである。

メイエル・サイドフィールドは己の軸から幾本も縦に連なって垂れ下がる感覚野から一杯の風を受けた。
根元、意識総体が集い「本体」へ情報を送り出すための根幹へ全ての感覚があふれる。
快。
感情は羽から「本体」へ伝わり、比翼鳥は歓喜の歌をうたいだす。
縦長の全身を傾けつつ、メイエル・サイドフィールドは飛行する。滑空から急上昇、海面すれすれまで「本体」をかすめさせ、震える総体の加重バランスと慣性を調整しつつ自らの角度をもたげるのだ。
全身の軸が回る感覚。

人で言えば、腕を動かし歩き出すのと同じく、メイエル・サイドフィールドが最も普遍にして常とする基本動作。
その躍動が、メイエル・サイドフィールドと「本体」を、快へ快へ押し上げる。
満天の青。天地同色の絶景は「本体」経由の認識だ。
視界を持たない風切り羽は、しかし全身で風を感じ熱を察し分子運動の未来すらをも読み取っていく。そうしなければ総体は墜ちるからだ。
今この瞬間を快と思う。「本体」と風切り羽、それらが合わさってこその総体なのであるゆえに。

雲は無い。水分の枯渇した世界で、凝結する水蒸気は変わって熱風を渦巻かせる。

暖かなる空。
「ここ」こそが、メイエル・サイドフィールドの世界である。

15言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 15:50:26
魔王十四歳率いる二月十四日の剣士と三月十四日の盾士を打ち破ることが、果たしてシャーフリートにできるのか。
二十回にも及ぶ思考実験の結果、シャーフリートの勝利というシミュレーション結果を引き出した小さな少女は魔獣の構成素を分解・散逸させ、自らを主役と規定する物語内外での【不在の語り手】と為した。
少女は行動する。
空時的に孤立化した簡素なる無数の記述・描写により少女は神話となった。
赤の魔獣は主体を取り戻し、少女と魔獣は共に記述者となり、ナラティヴストラクチャの破綻を推奨する物語先鋭化組織の一つ、【ヴームアウゼス】の首魁となる。
少女の名を、ハーグナ・プリンスと言う。
これは、ハーグナ・プリンスと彼女が従える魔獣の、哀切と矛盾の記述集である。
空時法を多用した彼女たちの記述は、だがしかし神話内においては普通の「自称」ゆらぎに過ぎず、他の記述に埋もれていった。
おしまい。

16言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 16:11:40
「素敵ね、豚のアヘ顔みたいじゃない?」

豚のいない世界で、女は男を罵った。

男は豚という単語の意味がわからず、しかしアヘ顔という言葉の意味は一般名詞として存在したので、恋人である女の言葉をこう解釈した。
耳慣れない響きの「豚」とは固有名詞であり、さらには特定個人を示す名前であると。

「素敵ね、「豚」(という男)のアヘ顔みたいじゃない?」

男は激昂する。
「おい、一体そいつはどういうことだよ?!」
女は男を踏みつけたまま困惑した。二人は恋人同士であったが、このように男の側から怒鳴り散らすような事態は初めてである。
「何言ってるの。 あなたのそのみじめったらしくて無様な顔が、豚の・・・」
男は話を聞いていなかった。
別の男のアヘ顔みたいね。
比較された、と最初に感じて、次いではその男とは今現在も交流があるというのか、と疑問を得る。
恋人たちはなじりなじられ、風変わりな愛のかたちを確かめ合っている最中だった。
女の手には平べったい形の特殊な鞭。
目隠しをされた男は手足を拘束されて冷たい床に転がっている。
二人はごく純粋に愛し合っていて、そして数ヵ月後には結婚する予定だった。
しかし
(こいつは、この時期に、このタイミングで、よりにもよって俺を別の男と比較しやがった・・・、それも、相手のアヘ顔を思い浮かべながらだ)
今までこのようなことは無かったし、女も男にそういった過去の話をしようとしたことはない。
男としてもその手のことは気にしないようにしていたし、良好な二人の仲をあえて揺らがせるようなことは控えていた。

だが、ここにきて女は別の男の名を呼んだ。
男の思考は不安を抱え込み、恐怖が飛躍を呼んだ。
(浮気相手の名前か?!)
恐るべき想像だった。婚約者の、結婚直前の告白(と思い込んだ)に男は恐慌状態に陥った。
思い描いていた幸せな未来。母と父と娘とで、暗い地下室の中で共に蝋燭やお馬さんごっこをして遊ぶ夢の絵。

「ちくしょう・・・・ちくしょう・・・俺の輝かしい未来を返せよ・・・」
男泣きにむせぶ様子を怪訝そうに見つめる女。
「あのね・・・前から思ってたんだけど、青写真って過大になるといけないって言うじゃない?
もう少し、堅実に未来を見ましょうよ」

青写真、などという言葉は、存在しない世界である。
設計図面の複写、転じて将来の計画。意味合いは文脈から明瞭であるはずが、男には耳慣れぬ言葉を解釈する余裕などない。

(アオジャシン、だって?! また、また別の男の名前を)
(そいつは一体、誰だ? 昔の男なのか、過大で尊大な人物だった為にお前はそいつを振ったのか、そして俺がそいつとだぶって見えたから、もっと堅実になれと言いたいのか?!)

男は混乱している。
狼狽し続ける恋人の姿を見つつ、女は戸惑ったまま、とりあえず腕を振り上げ、

「ああもう、めそめそ汚い鼻をすすってんじゃないわよこの素毛布がっ!」
「スモウフって誰、うぎぃっ!」

しなる革がしたたかに皮を打ち据えた。

17言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 16:31:24
底なし沼という言葉と吸い込むという言葉が同語たる「ゾー」であるという事実はジャッフハリム=ボースト語族の言語では広く共通する事実であり、
人々を引きずりこむ恐るべき沼というイメージが象徴化されて現在では沼の原語たる「ョレ」が廃れてゾーにとって変わられていることは非常に興味深い例としてわれわれ現代人の前に表れている。
これは自論になるが、深淵の魔術王ゾートとは原初より現れ出でた生存の象徴であり、
後世の定説である収奪、略奪を正当化するための代替、身代わりとしての神であるという意見には私としては異を唱えるところだ。
というのも、存在は全て他の物質と置き換わり、新しいものを受け入れ古いものを廃棄することで継続していく。
生物とは、文化とは、またシステムとはこのような循環型を理想として回っている。
ゾートは魔術によってあらゆる吸収の祖にして王とされていたが、それは即ち万物流転の形を古代の人々が「人の頂点」に吸い取っていくモノを思い描いた結果誕生した存在ではないかと思っている。
だが変わりゆくこととは即ち恐怖へと繋がる。
安全は危険へ、危険は安全へ。
世代は連綿と受け継がれ、種は文化はあらゆるものは進化していく。
これらの成長の恐怖、恐れの気持ちをある表象ひとつにおしつけることで古代の人々は安心を得た。
当時、自然が地獄との境界面と接しており荒野が巡り毒々しい底の無い沼地が広がっていた。
そのような恐怖に満ち満ちた世界に、人々は世界と、己らの進化の摂理を仮託した。
摂理とは恐怖であり流転とは置換にして吸収と排泄である。
目に見える最大の恐怖はいつしか大いなる摂理にして神と同化し、ゾートは古き時代に封ぜられたのだ。

18フ言理の妖精:2007/12/30(日) 16:40:41
翼さ。心の翼さ!

僕はそういった。みんなにせいいっぱい強がるために、そう強く言って見せた。
でも、ほんとうは。

とっても、怖かった。
みんなは言理の妖精ってだけ呼ばれるのに、僕はなんでだかフがついてる。
腐、とか、不、とか。
けっこうネガティブになるようなことも言われた。
でもさ、そんな言葉で否定されたくないよ。
僕だって、ちゃんと揺らぎを囁ける、立派な妖精なんだ。

だから僕は、このフをがんばっていいものだと思おうとした。

「これは、心の翼さ!」

そう。
これは、僕の心に宿る翼。
神話の空を羽ばたくために図書館の神様がくれた、僕のたからもの。


「っつーかさ、それ俺のと一緒なんじゃね?」
「え?」

つ言理の妖精がそう言って、僕に向かって示したんだ。

(・ω・)つ「手の絵文字」

Σ(゚д゚;)フ「な、なんだってー!!!」

19言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 17:02:07
ピッピッピッピッ、とタイマーアラーム鳴り響き、わが衣手は雪に濡れつつ。

シャーフリートは詩人だったが、才能が無かった。
英雄とまで呼ばれ、世界を救い出した傑物はしかし致命的にセンスが欠如していた。
でも詩作は好きで好きでしょうがなかった。
読むのも好きだったし、詩そのものが好きだった。詩はいい。人の心を潤してくれる。

潤してくれる。だが腹はみたさない。
世界が平和になったあと、英雄は無職だった。ニートである。
常勝不敗のシャーフリートは働いたら負けという特殊クラスであるニートになり、働くことがけっしてできなくなった。
不敗の祝福を受けたシャーフリートにとって負けることは許されないのだ。

故に、シャーフリートはさっさと結婚でもしてヒモもとい専業主夫にクラスチェンジしようとしたのだが、だがしかし。
彼が歌う恋の詩、愛の詩はみな陳腐でありきたりなものばかり。
つまらない詩を作る男を振り返る女などいなかった。

クスクス、いくら顔がよくっても、詩作が下手なんじゃあねぇ・・・
アハハ、見てみて、あの人ったら英雄のくせに詩作が下手なんですって。 ありえなーいw
いくら偉大な人っていっても、詩作が下手じゃあどうしようもないよねー
キャハハハ、詩作が下手なのが許されるのは小学生までだよねー キモーイ


言われたい放題のシャーフリートは泣いた。
咽び泣き、そして開き直った。

女の子にもてないなら、ホモになればいいじゃない!
シャーフリートはこうして後世に残る同性愛者の英雄となったのだ。

20言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 17:56:41
しんしんと雪が降る。マンサン・アズアルフはひとりごちる。なぜこんなところに来てしまったのか。
灰色の砂漠では隠れるところもなく、アズアルフはフードを口の前で閉じ、それでも染み入る寒さに耐えながら
ただ歩みを進める。

意地を張ってしまったという部分はある。
キンドゥには馬鹿にされたくなかったし、しかし、この薬をどうしても試してみたいという技術屋的欲求には逆らえなかった。
蝿性を持つコノハグサレからその蝿性のみを抽出しギリコエノコエとゴマウジで硫化し
石榴にまとめたこの薬は、理論的にはダリャルを瞬時に無力化できるはずだ。

雪に視界をさえぎられて、彼は自分が、自らの目標のすぐ近くにまで近づいていることに気が付かなかった。
ダグアルの鳴声に驚いたときには、すべての雪片が彼に笑いかけていた。母親と父親が彼とキンドゥの結婚を祝福していた。

数十年に一度という砂漠の降雪が終わり、キンドゥに率いられた捜索隊がアズアルフを見つけたのは
骨の花を咲かせたダリャルの死体の内側だった。
右足に凍傷をおこしていたが、キンドゥと目が合うと、ちょっと笑った。

あんたが花嫁姿だったもんでな、そんなものを見せたダリャルと
そんなものを見ちまった自分に本当むかついたのさ。
30日の営倉暮らしから開放された後、アズアルフはそう語った。

アズアルフはその後、一時故里へ返されたが、アズアルフの開発した例の薬はその後の対ダリャル戦において絶大な効力を発揮したという。

21犬と少女は荒野を歩く 第三十九話 絶体絶命1:2007/12/30(日) 18:37:35
「嫌ぁぁぁぁっ!!」
車椅子の少女が絶叫する。ザリスが放つ反撃の魔法はたやすく吹き散らされ、抵抗は儚く空しく、眼前で飛散するのは絶望の血潮。
灼熱する液体と力なくのしかかる大きな体。ザリスは彼を受け止めると、必死で治癒の魔法を展開する。
「豆腐の、豆腐のおじさんっ!!」
少女をかばって前に立ちふさがった男、豆腐の全身は血まみれだった。
一目見てわかる。致命傷だ。

冥王ジーナスが配下、裏塵四天王が将ザレストゥーラの放った塵の槍の一撃は、豆腐の肉体に潜り込むとその全身を内部から完全に破壊した。
内部から飛び出したおぞましい砂の棘は血を吸って赤く染まっている。
「ダメっ、ダメよっ、死んだらだめぇっ!!」
涙声に混じる鼻をすする音。ザリスは涙と鼻水がごっちゃになって顔が汚れるのも構わずに、一心不乱に回復魔法をかけ続けた。
そして、絶望し続けていた。
自分の技量では、彼を助けられない。
手遅れだ。このままでは間違いなく、豆腐のおじさんは、死ぬ。
「わたし、わたし、貴方が死んだら・・・・」
「ふふ・・・全く、いつもいつも、あなたというひとは人の言うことを聞かない娘だ・・・。
私のことは、豆腐のお兄さんと呼ぶようにと、あれほど・・・・・・ぐふっ」
吐血。その命のともし火が急速に消えつつあることに気づき、更なる絶望が降り注ぐ。
ザリスは目の前が、ともすれば眼前の豆腐よりも先に真っ黒になりそうな現実に震えていた。
「クハハハハハッ 泣け、喚けぇっ! 表四天王を倒したくらいでいい気になりおって、これが現実というものだ!
我ら裏四天王の実力は単純計算で奴らの十倍! 貴様ら選ばれし戦士が束になってもこの塵芥のザレストゥーラにはかなわぬ計算よ!」
敵の勝ち誇った叫びにも、ザリスはただ震えるのみ。
零れ落ちる生命の赤い水。力ない体を地面に横たえ、瞳を凍らせていく豆腐を見つめて、ザリスは歯をきしり、と食いしばる。
「・・・せない」
「何?」
「させないっ! 死なせたりなんて、しないっ!」

何故なら。
「この『スレ』ではっ!! 『誰も死なせてはならない』のだからっ!!」
豆腐の肉体が瞬時に冷凍される。ザリスの圧縮呪文は豆腐の肉体は死の直前で停止させる。

(この場を切り抜けて、豆腐のおじさんをみんなの下に連れて帰るっ!!
 そうすれば、私にはできない死の運命を覆すことができるはず。 そうっ! 仲間たちの力が合わされば!)

「ほざくな小娘っ! 貴様独りでなにができる? この場を脱するには、この俺を倒さねばならない・・・・つまり、俺を殺さなければお前の大事な仲間は死ぬということだ・・・。
誰も死なない、というスレの主旨に沿わなくてはならない「主人公」たるお前は俺を殺せないっ!!
だが! 俺は別にスレの主旨に反しても構わないという「障害」にして「話の山」であるからしてお前を殺すことをためらわないっ!!
今回の『犬荒』がこのスレで記述されている以上、この制約はお前を縛るのだっ!!」

「それでもぉっ! 私は負けないっ、フレイムダストッ!!」

車椅子が高速で突進。舞い踊るのは無数の火球、身に纏うのは炎の鎧。
最大の威力で突き進む彼女の威力。それを敵将ザレストゥーラは片手に展開した魔力防壁で凌ぎ切る。
「愚かな! 貴様の魔力では俺に勝てん! 先ほども足手まといでしかなかったお前が俺に挑もうなどと、片腹痛い! 」
そう、彼女は先刻の戦いで豆腐の足手まといでしかなかった。
少女の魔法はザレストゥーラの絶対障壁の前には児戯同然。豆腐の奮戦によってかろうじて互角に持ち込んだ戦いも、
ザリスが足かせとなって豆腐は敗北を喫してしまったのだ。

その事実が、彼女に重くのしかかる。
(もちけつ、ザリス! このままじゃどうあがいてもこの場は切り抜けられない。今できる最善の手を考えろ!
敵を殺さず、豆腐のおじさんを運んでこの場から逃げ出す方法っ!)

22犬と少女は荒野を歩く 第三十九話 絶体絶命2:2007/12/30(日) 18:38:39

スレのルール上、敵を倒して逃走、というのは危険だ。曖昧な表現は多数の解釈を招く。
倒したという言葉が死と直結してはいけないし、殺さずに気絶させていても放置していたら死ぬかもしれないし、
より強力な敵に役立たずとして始末されるかもしれない。
だとすれば道は一つ。
相手を捕獲し、豆腐と共に仲間の下に運ぶ。
これしかない。常識はずれにもほどがある結論を、優柔不断なザリスにしては珍しく即断できたのは危機的状況のなせる業か。
「フレイム・クラスタッ!」
舞い上がる爆発の連打。煙幕代わりの魔法で敵の視界を防ぎ、自分は即座に後退していく。
交錯する無数の閃光。高度魔法の連打に空間が悲鳴を上げ、ザレストゥーラとザリスは爆炎の中で踊り続ける。
劣勢に立たされるのは無論のこと、ザリスである。
圧倒的な魔力、破壊力に屈しかけ、自分が死ねば全て終わりだと奮起する。
嗜虐的な笑みの敵は余裕綽々と塵の魔力を操り彼女を翻弄する。
遊ばれている、油断されている。その事実を受け止めながらも、ザリスはそれが自分を生かしている事実に感謝した。
「食らえっ!! 煉獄業火弾っ!!」
急に漢字になった必殺技名に戸惑うザレストゥーラ。その隙を狙って相手の唯一の死角に潜り込む。
(このスレは永劫線上のBBSではない、最初のBBSに立てられたもの! 当然犬荒の設定を知らない人も多いはず!
ならば、それを利用してザレストゥーラの意表をつく!)
ザリスは車椅子から全身のばねを使って飛び降りると、太ももごとごっそりと切り落とされた両足、腰しか残っていない下半身で大地に降り立つ。
敵の足元に魔力を集中させ、一気に解き放たんとする!
「食らえっ! 『実は私は自分で足を切り落としているので車椅子から降りると視点がすごく低くなる』(オーヴァードライヴ)!!」
「待つんだ、ザリス」
ザレストゥーラが、唐突に優しげな声色を使い出す。
「俺は、実は、お前の生き別れの兄なんだっ! 俺を攻撃するのはやめてくれっ!!」
これが証拠だっ! と叫び、ザレストゥーラが右目のカラコンをとってその真の虹彩、ザリスの家の男性にのみ伝わる金色のオッドアイを見せ付けた。
「うそっ!」
「本当だともっ! だからもう、俺と争うのはやめておくれっ!」
(こっ、これは・・・・後付の新規設定だとっ!?)
ザリスの背中を戦慄が走る。
普段見知らぬBBSで記述を行うという弊害。旧来の設定が知られていない代わりに、新規の設定が出てきやすいのである。
それはつまり、当初は想像もされていなかった展開や設定がいついかなるタイミングで現れるかわからないということでもある。

23犬と少女は荒野を歩く 第三十九話 絶体絶命3:2007/12/30(日) 18:39:21

「ほら見てくれザリス! 僕の瞳はあらゆる光を飲み込んで自分の魔力にしてしまう無敵のオッドアイで使いすぎると宇宙を飲み込んで滅ぶというそれはそれは厨臭い設定だ!
いかにも君の兄って感じだろう?! その上ザリスとザレス、ほぅら名前までそっくりだ!」
(なんてこと・・・・名前が似ているだとかいかにも便利で安易な後付設定の為に伏線そのものじゃない!!
まずいこの展開は兄妹に分かれて悲しみのバトルでも私は前に進まないといけないのうわーで殺してしまう展開?!
それだけはまずい、なんとかしないと!)
ゴゴゴゴゴ、とザリスは起死回生の一手を打つ。
「違うっ! あなたは、兄さんなんかじゃないわっ!!  兄さんの偽者よっ!!」
「なっ、貴様そんなありがちなっ!?」
解き放たれた魔力がザレストゥーラを吹き飛ばす。宙に浮き、無防備をさらすザレストゥーラ
続けざまにまくし立てるザリスは、魔力の爆発で空高くへと飛翔。
「止めだっ!! 『実はお前は他人の姿を複製できる魔法の鏡、モノだから壊してもおk!』(オーヴァードライヴ)!!」
灼熱の一撃。ザリスはさきほどまでのパワーバランスを無視した破壊力の最大呪文を掌に展開する。
だが、そこでザレストゥーラは不敵に笑う。
「バカめ墓穴を掘ったなっ! 俺が鏡で物であるとしてもっ! 意思がある以上それが壊れることは「死」と定義可能なのではないかなっ!!」

24犬と少女は荒野を歩く 第三十九話 絶体絶命4:2007/12/30(日) 18:39:35

愕然とする。
法的なことばかり考えていたので足元をすくわれた。器物破損で押し通せば全て丸く収まるはずだったのに、何故ッ!
「っ! だがその意思もまた、お前という道具が複写し再現しているだけのまがいものだとしたらっ?!
そんなものはお前自身の意思ではないっ! そもそもが、プログラムによってパターン化された受け答えのバリエーションを再現するだけのトップダウン型のAIのようなものであったらどうする?!」
「高度に構築されたトップダウン型の人工知能に知性は宿らないと? 複写された人格に意思として、存在としての価値はないと? それでは問おうか、ザリス! 今「お前という個」が「俺」に対しての呼びかけに用いた二人称「お前」、
この「お前」を用いていることこそ、「お前」が「俺」を他者、即ち知性として認識していることの証左とは言えないか? 仮に俺がモノだとしてっ!! 
そしてお前がそう認識してるのなら、俺のことを「お前」ではなく「これ」「それ」「あれ」などの代名詞で呼ぶはずではないのかっ!!」
「擬人化しているだけだこのボケッ!」
「その時点で俺を「個」として認識してるっつってんだろてめえがボケだこのメスブタ!!」
「あくまで私の認識と思考を円滑に進めるための便宜的な解釈にすぎねえよハナからてめえに人格なんて認めてねえんだ私はっ!
・・・そうかっ! 私が相手をモノだと割り切っていればそれは私=物語的主観に於ける殺害にはならない。
この世全ての生物をモノだと思っているサイコパスの殺人鬼が自覚的には器物破損の常習犯であるように、生物学的、物理的な事実はどうでもいいんだ!
世界は私を中心に回っていて、私がこの世界の中心なんだ! 私がいるから世界は存在している!! 私が、世界なんだ!!」
「それが中二病だというのだ馬鹿者めがぁっ!!
貴様がそう判断しようがスレを見、この記述を認識したモノたちにその理屈は通用せん!
結果スレの主旨に反したお前は初のスレ違い女として記録に残り続けるのだっ!!」
「だが、だがしかし! 極論すれば、これはただの文字列ではないかっ!!」
「なんだとぅっ!?」
「この延々と続く駄文も、ようくみればゲシュってくる。そう、私たちが日本語と認識するこの記述も、
線の羅列でありより厳密には0と1とかそういうのの組み合わせでしかない! モニタとか最近の液晶の仕組みとか知らんけど!
なら、そこに死など存在しないっ!! 死とか書かれていたとしてもそれは現実の死じゃないもん!」
「詭弁にもほどがあるっ!! つーかいい年した女(23歳独身)がもんとか言うなきしょい!
いいか、そもそもこの規約はスレ内の神話記述内に限定された、物語的な死を指す。
お前の飛躍して破綻して明後日の方向に飛んでいった理屈は理屈にもなっていない戯言未満のくりくりゅぱー! なんだよ!
ばーかばーか! お前のいもうとデーベソ!」
「ばっ、なっ、人の妹ばかにすんな! 私はデベソだけどあのコは細くてきれいなおへそなんですー!
みたことないのにいい加減なこといわないでくださいー!」
「うるせーよ、お前の妹なんだからデベソにきまってんだろこの劣る姉! やーいやーい妹以下〜」
「もういいよお前それ以上喋るなっ! グダグダにもほどがあるっ!!」
「うんそれは俺も思ってた。 ぶっちゃけどうしようもなくね?」
「オチナシヤマナシイミナシとはこれはひどい投げっぱなし」
だが、救世主は意外なところから現れた。
「待ちなさい、地上の子らよ」
「あなたは!」
「ヤマナシイミナシオチナシ略してヤオイ=YAOIの神、アハツィヒアイン様!」
「ふふふ、ザリス。ようやくこの地平までたどり着きましたね。
あなたはこの記述を終わらせるためにオチが必要だと思っていたようですが・・・・
別に無くても終われる」
「な、なんですって?!」
「そして豆腐は死にそうだったので蘇生させておいた。あとは幕を引くだけだなクックック」
「そうか・・・私もこの記述を終わらせる前に一つ言っておくことがある・・・」
「なんだ?」
「実はゆらぎの神話では一切の二次ネタ要素、つまり現在のやりとりのようなソードマスターヤマトの改変パロディは絶対に許されないと思い込んでいたが、
あらかじめ断っておきさえすればという断り付きで別にそんなことはなかったぜ!」
「そうか」
「いくぞ! うおおおおお」

ザリスの勇気がこの記述を終わらせると信じて・・・! ご愛読ありがとうございました!

25言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 21:39:15
「ああ、もう一時はどうなることかと思った。なにはともあれ貴方がたすかってよかった」
「本当に。 退院できるなんて思っても見なかった」
「皮バンクのおかげよね。全国各地から集められた余分な皮や登録していた人の死後保管される皮のおかげで、
あなたみたいに体の大半を大火傷した人も助かるようになったんだもの」
「うん。私のこの全身の皮は21人もの人の皮を継ぎ足したものなんだって。本当に、感謝しなくっちゃ」
「そっか。 ところでさ」
「うん?」
「もうちょっと離れてくれる? あんまり近寄って欲しくないんだ」
「・・・え?」
「うっかり触れたらヤだし。 だって皮バンクの皮の大半って余分な皮だから、大方が男性のアレの手術後の、」
「              あ、」

26言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 22:19:16
パエリア。

というのは別にパエーリャだのパエージャだのとも発音されたりする海鮮物やサフランやオリーブオイルやライスを用いたスペイン料理のことではなく、ある女性の人名としてポピュラーなものである。
パエリアは両親の仇討ちのために旅をする戦士であるわけだが、仇の男はのろわれた剣を持つ恐るべき使い手だった。
自身の実力の不足分を補うため、彼女は同様に魔力を持つ剣を手に入れようとした。
草薙の剣。
紆余曲折あって手に入れた炎断ちの剣だが、この剣にはこのようないわれがある。
*
あるところに草冠(オス)という獣がいて、そいつは同じ群れの草冠(メス)に恋していた。
オスは大変素早く動いた為、群れの中でも一目おかれていた。
メスは狩人であったが、老いた鳥くらいしか射落とせない弓の腕前であったのでみそっかすだった。
実際、メスは何をやっても上手くいかないのであった。
自分に自信がないメスはオスの求婚をなにかの冗談だと思った。
だが真剣に言葉を重ねるオスを見ているうち、きっとこのひとは自分を馬鹿にしてあざ笑っているのだ、自分が喜び勇んで彼に抱きついたら跳ね除けて唾を吐きかけるに違いないと確信した。
メスはオスから逃げ出した。
そのとき、天から稲妻が落ちる。
草原が炎上し、メスは炎に包まれる。
群れはメスを見捨てて逃げ出すが、オスはメスを助け出そうと炎の中に飛び込んだ。
「やめてよ、そんなことをしたって私のこことは動かない。 どうせあなたも、私のことを見下しているんでしょう。
私がなんのとりえも無いくだらない女だから簡単に支配できるとか、そういうことを考えているんでしょう」
オスはメスの言葉など危機もせず、まっすぐに彼女の下へ走った
オスは全身を火につつまれながら、自分の命を焼きながらメスの為に走った
「やめてよ、そんなことをして死なれても迷惑なの。 命をかければ人の心を動かせるとか本気で思ってるの?
そういう安っぽい考え方をする男なんて鬱陶しいだけじゃない。消えてよ。消えて!」
メスが叫ぶと、炎が吹き飛んだ。

草原の中にはオスとメスが残っていた。
「どうして炎が・・・?」オスが訊くと、メスは、
「本当はあなたに消えて欲しかったのに・・・・私ってやっぱり、何をやってもダメね」
「じゃあ、俺が君ができないことまで補ってあげるよ。
君の苦しみも、悲しみも、痛みも。全て半分ずつ引き受けてあげるから」

「は? バカじゃないの? 痛みや苦しみが分かち合えるわけないじゃない。私の苦痛を勝手に想像して解った気になって、くだらない慰めを口にする気?
他人の駄目な所を補う? 補ったところで出された結果は私が出したものじゃなくて貴方が出したものでしょう。 それじゃあ私に価値なんて結局ないってことでしょ。
ちゃんちゃらおかしいわ。 貴方一体なにがしたいの?」
*
その説話を聞いたパエリアは多分に教訓的な話だと感じた。
この雌雄のように好意と思想が噛み合わぬこともある。
善意や思惑が絡み合えば、結果や道筋があるべき場所、収まるべき地点に着地せぬことなどままあるのだ、と。


しかし。
これでどうして「草薙の剣」なんて名前なのだろう?

27言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 23:07:30
レストという少女がいたが、彼女は時の皇帝ビシャマルに見初められ王妃となった。
皇帝の愛を一心に受けたレストは皇族として扱われたため、高貴な女性の名前としてレストアに改名された。

ビシャマルの死後、レストアは自ら政を執り行い、女帝として君臨した。
その死後神格化されたレストアは、最大限の敬意を持ってレストロオセの名を得たという。

28よあけ:2007/12/30(日) 23:33:10
【ナーナー狩りのカラクイ】

 ある年、山奥の村でナーナーが大量発生した。
 そのため、土地の生態系バランスが崩れ、村の田畑はやせ衰えてしまった。
 悩ましきナーナーの大群をなんとかするため、土地の人々は、土地一番の武器職人にナーナーを狩るための武器の製作を依頼した。武器職人は承諾し、まずナーナーのことを知るために自分の息子をナーナーに群れに放り込んだ。その少年の名はカラクイといった。
 カラクレはナーナーの生態を調べたが、決してナーナーたちに危害は加えなかった。それはこの土地の大人しきナーナーたちも同様だった。ともに山の水辺で生活しているうちに、カラクイとナーナーの間には奇妙な連帯感と、友情が育まれた。
 半年後、武器職人が息子の前に現れ、「調査期間は終了だ」と告げた。武器職人とカラクイは村に戻り、カラクイが得た知識をもとに「ナーナー狩りの武具」を完成させた。それは赤い刃紋の鎌だった。土地の人々は、「ナーナー狩りの武具」を手にし、ナーナーの殲滅戦を開始した。
 そのとき、人々の間に立ちふさがったのはカラクイだった。
「ナーナーたちは悪くない! ナーナーはただ、ここで生活しているだけだ。この土地で俺たちと同じように、ただ生きているだけじゃないか!」
 カラクイの前に、彼の父である武器職人が現れ、こう言った。
「お前はナーナーを信頼している。ナーナーもお前を信頼しているだろう。奴らの信頼を得たお前の『魂』こそが、この『ナーナー狩り』を完成させる」
 武器職人は、鎌を振り下ろし、カラクイの心臓をつらぬき、そして村人たちに言った。
「この鎌は、『カラクイ』と名づけよう」
 カラクイの死体を踏み越え、土地の人々はナーナーの群れを襲った。ナーナーたちは一切の抵抗をせずに、ただ鎌によって狩られつづけた。ナーナーには、その鎌を敵として認識することができなかったのだ。
 かくして、ナーナーはその土地から消え、村には平和が戻った。

29言理の妖精語りて曰く、:2007/12/30(日) 23:59:46
>>28
カラクイの踏みつけられた肉体は、十日もするとぐらりと立ち上がった。
カラクイは自らの全細胞を恒常的に対外物質と循環置換させることでエントロピー第二法則を無視してエネルギーを無限に使用可能であり、
そのエネルギーを利用して意図的に癌化させた同質の細胞群で肉体を構成、死と生が同時に進行し続ける、いわば「不死」を体現する存在だった。
彼が肉体に過剰に損壊を受け、体機能を一時的に休眠状態に置いた状態を「死体」と称するが、それは普遍的な意味での死ではなく、
他の生物に当てはめたときの便宜的呼称である。
「死体」となったカラクイは肉体の修復を行い、十日後に休眠状態から脱し「生き返った」が、これも死から甦ったという文字通りの意味ではなく、
あくまで生物としてのカラクイの状態の推移にすぎない。
端的に言えば、カラクイにとって通常の生物における「死」の状態は「死」とは定義できないのである。

カラクイはナーナーの群れが狩られた場所に行った。
ナーナーがいなくなった惨状にカラクイは泣き喚いたが、死んだと思われていたナーナーたちは地面からにょきにょきと生えて来た。

ナーナーの根を引き抜かず、茎から上を刈り取ることしかしていなかったため、ナーナーたちは生きていたのだ。

カラクイはナーナーたちを遠くの場所に移し変え、幸せに暮らしたという。

30よあけ:2007/12/31(月) 00:07:03
【鬼火を見た少年の話】

 キュトスの魔女が出るという噂のある森で、肝試しをやることになった。
 参加者は八名。ルールはこうだ。僕らは順番にくじをひき、四つの二人組みをつくり、その組ごとに森の奥にある『顔岩』へ行き、そこに自分たちの名前を刻んでくるのだ。
 僕らはそれを、僕らが十一歳になるための儀式として行おうとしていた。僕ら八人の少年は、自分たちが十一歳であることを誇るために、この儀式の間、絶対に情けない姿を見せないことをアルセス神に誓った。
 僕とカーンは最後の組だった。カーンは僕らのグループの中で、一番弱気で、情けない奴だった。僕を含めた七人は、カーンはきっとこの儀式をすっぽかすと思っていた。でも、カーンはきた。普段とはちがう、決意を秘めた顔をして。
 魔女は大地から現れ、人の魂のみを飲み込んで去っていく。それがこの土地に古くからある伝承だ。その魔女が出るとされるのが、今ぼくらがいる森なものだから、僕はとにかく、右手にかかげたたいまつの火で足元を照らすことに注意しながら歩いた。たいまつの火は数歩先までの地面しか照らさない。そこより先は真っ暗闇で、地面のいたるところに見えない大穴が口を広げて待っている気がした。僕は、足が震えそうになっているのをカーンに悟られないように必死だった。
 そのとき、後ろにいたカーンがいきなり呟いた。
「なにか、いる」
 そして森に広がる闇のおくを指差した。
 たしかに、なにかがいた。
 ぼんやりと緑色に光りながら、宙をただようなにかが。
(魔女だ!)
 僕は大声で叫ぼうとしたが、喉がしびれたみたいになって声がでなかった。
 僕の隣を、カーンがすうっと横切った。
「あれは魔女じゃないよ」
 カーンの声は震えていなかった。それどころか、僕らのグループの中の誰よりも意志の強い声のように聞こえた。
 僕はその言葉に何も答えられなかったし、一歩を動かすこともできなかった。
 ただ、闇に浮かぶ緑に向かって歩いていくカーンの背中を、じっと見ていた。
 ふうっと、カーンの背中が闇に消え、それと同時に緑色の光もぱっと消えてしまった。
「カーン!」
 叫んだ僕の声は、闇に吸い込まれてただけで、返事は返ってこなかった。

 僕はたいまつで足元を照らすことも忘れて、一目散にその場から逃げ出した。
 何度も木の根につまづき、枝に顔をぶつけながら走り続け、ようやくスタート地点に戻ってみると、僕以外の奴らは全員が集まっていた。
 僕よりも先に出発していた六人と、そして、カーンを含めた七人がそこにいた。
 全員が僕のひどい顔を見て大笑いした。十一歳になれなかったのはお前だけだな、と誰かが言った。カーンだって平気だったってのにさ、と誰かが続けた。
 僕は余裕ある表情を見せているカーンを見て、「大丈夫だったの?」と聞いた。
「べつに」カーンは言った。「なんてことなかったよ」
 そのとき、カーンはその場の誰よりも大人びていた。

31言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 00:10:49
>誰も死なないって言っといて、けっこう死んでるじゃないか!
>いやあのさ、歴史上のアレとか、レストロオセのやつは死後って書きさえしなければセーフだった気がするね。
>ダルヤルとか、あれは? 動物とか狩りとか、そういうのもアウトかね。あれはアリな気がするが。
>物語上の、登場人物の死、って意味合いだと私は解釈するけどね。 まあ主催者さんが裁定することだろそこらへんは。
>ところでこの記述の意味は。
>死の定義について。
>ああ。
>ザリス(笑)も言ってたけどさ、意思を持ってる物とかどうなの? ロボットとかさ。
>微妙。生き返りネタは許容されるのかとかも疑問だよね。
>あるあるw
>死体とか殺されたとか死んだとか死後という言葉の定義が死ぬとイコールでない、とかいう解釈を強引に導き出すのはどうなんだろう。
>しばらく前のゆらぎっぽいね。 けどこれは果たして「ゆらいでる」っていうのかね?
>そこはほら、ゆらぎの定義に話が変わっちゃうから。
>んー、むっずかしいなあ。
>難しいっていうかさ、線引きの問題だよね。死生観なんて人それぞれじゃない。それこそさ。
>そこをどう判断つけるかを読み取らなくちゃだよね。ルールは明記してあるんだし、まあボチボチやってけばいいんじゃないの?
>けっこう自然に使っちゃうんだけどね〜。
>死後、とかナチュラルに使ってしまったww
>その治世の後、とか時代は下り、とかにすればよかったwwww

32ほらよ。:2007/12/31(月) 00:21:31
※このスレにおける記述では死者は出ません。死んだように見えるのはそう記述しているからで、実際には死んでいません。

33言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 00:27:56
ベルンシュタインが人形を作ろう、と決意したのはなにも技術屋的なそれらしい理想やら理念やらがあったわけではない。
彼は放火魔であり、火を芸術と解していた。
人形制作は手段であり方法だ。
自律行動し放火を行い続ける存在。
素晴らしき彼の娘たち。

ベルンシュタインの少女たち(メートヒェン)は彼の類まれなる才能によって世に生れ落ちたわけだが、
しかしなにも彼が0から少女人形たちを生み出したわけではない。


時は外線式人形の時代が終わりつつある頃。
その頃人形とは人形師がその頭上から糸で操るものではなく、内部に仕込んだ糸仕掛けやからくり、
あるいは電流に反応して収縮する形状記憶素材の繊維で擬似的な筋肉を再現した内線式の人形が主流となっていた。
しかしそういった自動人形の製作には途方も無い財力が必要だった。
技術もノウハウも資金も設備も何一つ無かった彼に天恵のごとく舞い降りたその資料がどのような経路で彼の手に渡ったのかは不明であるが、
彼はとある大魔女が記した人形の設計図ひとつからヒントを得て、一切の設備も道具もなしで人形を創造して見せた。
否、材料はあった。
それは木である。
道端に落ちていた木片を刻み、削り、精密に組み合わせて人形を作ったのだ。
世に出たそれを、多くの人々は最初あざ笑った。
だが、見る目をもった人形技師たちは驚愕に打ち震えることとなる。
その木製人形は、材料費ゼロの作品ながら、恐るべき構造的強度を誇る革命的な製図の上に完成されていた。
建築家が、これを真っ先に見出した。
著名な建築士であるその男は、ある富豪からの芸術的邸宅の依頼を受けていた。
だが彼はスランプに陥っており、仕事が完遂できないと頭を悩ませていたのだ。
そこで彼はベルンシュタインに邸宅の設計を依頼した。
ベルンシュタインは画期的なデザインの邸宅を完成させ、建築士からは報酬の半分と自分の工房を貸与された。

ベルンシュタインはそうして、時代に残る人形技師としての道を歩みだしていく。
一枚の設計資料。それが、彼の師であった。

34よあけ:2007/12/31(月) 00:37:12
【鏡の国の災厄】

 鏡のなかには箱がある、と母は言った。
 母はそのことを祖母に聞いたらしい。祖母は曾祖母に。曾祖母は曾々祖母に。わたしの家に代々伝わる不思議な言葉。わたしも母も、祖母も曾祖母も曾々祖母も、その言葉の意味までは知らない。
 ただ、その箱は開けてはいけないらしい。それを開けると、とてもひどいことがおこると母は言っていた。
 でも、わたしは、平凡な生活のなかで悲劇気取りで傷ついて、すごく辛くて、悲しくて、もうなにもやる気がおきなくなって、ぜんぶがぜんぶなくなっちゃえばいいのに、って強く思って。
 そしたら、鏡のなかから声がした。
「わが名前を呼べ」
「…が……を…べ」
 最初、空耳だと思った。神経が疲れちゃったのだと、そう考えた。でも、その言葉はだんだんと力強く、はっきりとした声になって、わたしの耳にとどいた。だんだん、空耳とは思えなくなってきた。
「我が………呼べ」
 部屋の壁にたてかけた姿見を見ると、わたしが一人映っていた。そしてその足元に、バスケットくらいの大きさの木箱が落ちていた。自分の足元を見ても、そんなものはどこにもない。でも、鏡の中のわたしの足元には木箱があった。
 わたしが足元に手を伸ばすと、鏡のなかのわたしも足元に手を伸ばした。わたしは何も無い空間に手をそえて、何かを持ち上げる動作をした。その動きにあわせて、鏡のなかのわたしが足元の木箱を持ち上げた。
「我が名前を呼べ」
 木箱をもつと、鏡のなかからの声ははっきりと聞こえた。
 呼ぶべき名前も、頭のなかに浮かび上がった。
 それは邪悪な星の名前。形なき災厄。降り注ぐ邪悪。触れてはいけない、禁忌の存在。
 口にするだけで、すべての生きとし生ける存在に平等に残酷を与える呪い。
 わたしはたぶん、理解した。
 わたしの母や、祖母や曾祖母や曾々祖母たちはこの名前を封じる者たちだったのだ。
 この名前が誰の口からも漏れ出さないように、鏡のなかの自分に木箱にしまって預けていたのだ。
 でも、生活に疲れきっていたわたしは、そういう難しいことを考えるのが面倒だった。
 だから、深く考えずに、その名前を口にした。
「××××××」
 とても簡単なことだったが、それだけで世界はとても居心地の悪いモノに為ってしまったような気がした。
 鏡のなかに、もう木箱はなかった。声もいつのまにか消えていた。
 特に何が起こったわけでも無かったけれど、それでもわたしは、唐突に、自分のしたことを理解して怖くなった。何がおこるのか、それともおこっているのか、まったく理解していなかったけれど、とにかく、震えがとまらなかった。
 突然あたりが暗くなったような気がして、窓から外を見れば、空の色が腐った肉のような色をしていた。

35言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 00:38:00
>>32
いいえ、このスレにおける記述では死者しか出ません。
というのも、このスレで記述されたことは全て地獄の出来事なので、全員死人なのです。死んでないように見えても実際は死んでます。
死んだように見えるのは地獄の中でまた死んだからであり、そこから生き返っても地獄にいる死人なのでやっぱり死んでます。

36言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 00:41:17
この世の彼方で、ワールドイーターは世界を食らい続けている。

私たちはワールドイーターが切り開いた『世界=有』の空白に降り立ち、有限の無に記述という有を残し続けている。


世界にははじめ、有があった。有とjは世界である。
ワールドイーターは無だったので有を侵食した。

溢れる有を押しのけて、我々は安住の地である無の中で細々と有をつむいでいるのだ。

37よあけ:2007/12/31(月) 00:50:19
【鏡宇宙】

 空にきらめく星々こそが、神々の住まう土地だと信じた男の一族がいた。
 彼らは神々の土地にたどりつくことを一族の宿願とし、代々、星を冒険するための乗り物の研究を続けていた。
 七十七代目の男にいたり、ついに星の海を渡る船が完成した。男は船にのり、空を駆け、夜の闇に消えていった。
 宇宙空間に出た彼は、順調にすすむ船旅をよろこんだが、しかし、すぐに障害にぶつかることとなった。
 星々の世界が広がっているとばかり思っていた空間は、巨大な鏡でしかなく、そこに映る瞬きは、地上で行われている人々の営みの灯りなのだった。星々の世界に、神々の住まう土地はなかったのだ。
 彼はひどく落胆して船の針路を地上へともどした。
 そして、気づいてしまった。
 星の瞬きは、一方向にだけあるのではなく、彼が住む丸い大地を包むように広がっているのであり、つまり、丸い大地はその周囲全てを鏡に覆われていたのだ。
 彼は地上に帰り、このことを本にまとめて出版した。しかしその本の内容を信じる者はほとんどいなかった。ただ、彼の息子だけはこの本に書かれた世界を信じ続け、いつの日か必ず、鏡の向こう側へとたどりつくことを決意したのだった。たとえ、自分の代でそれが成し遂げられなくとも、いつか自分の子孫がたどりつくことを信じて。
 鏡の向こうに、自分たちの到着を待つ神々がいることを夢見ながら。

38言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 00:50:21
猫の王が八匹。

竜の王はなんでも区別して管理しないと気がすまなかったから、猫の王なんていないにもかかわらず勝手に決めてしまった。
猫の王は別に気にしなかったが、竜の臣下は大いに怒った。

「王よ、猫の王が八匹もいるなど、多すぎます」
「では減らそう」
竜の王は猫の王が一匹ということにした。
すると、今度は竜の王が唸った。

「相手がたくさんいたから私の方がえらい気がしたけど、これじゃああいつとわたしは対等じゃないか」
これでは困る、とつぶやいた竜の王は、猫の王が八匹ということにしました。

竜の王は仕切り屋でなんでもかんでも区分しないと気がすまないタイプでしたが、あまり頭はよくありませんでした。

39言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 00:54:37
ウェバラナイエは去った。

敗北し、失意の内に逃走してしまったのだ。

だが、彼の記録はネット上に残っている。


このWEBに、確かに彼の生命は息衝いている。
ウェブランナー・ヤー!

そのノリと勢いは、確かにこのWEBを駆け抜けているのだ。

40よあけ:2007/12/31(月) 01:08:23
【世界の殻と、喰らう獣】

神は困っていた。
なにしろ、世界を作っても作っても、どれだけ人と神と星の歴史をやりなおしても、かならず最後には多頭の獣パンゲオンに喰らい尽くされてしまうから。
神々の力をもってしても、この獣を完全に撃ち滅ぼすことはできない。もちろん、人間たちにそれがかなうわけもない。
ある世界では【星喰い】とまで呼ばれた獣、パンゲオン。
それに対抗するための一つの策として、丸い神ドルネスタンルフは大地の球化のさいに、大地のまわりをかこむように巨大な球状の鏡をつくった。その鏡の外には、パンゲオンに喰い散らかされた星々の姿があったが、パンゲオンは鏡の内部へと入り込むことはできなかった。
ドルネスタンルフは、人間がパンゲオンを倒す可能性を作りうるのではないかと考えたのだった。
そのための時間を、ドルネスタンルフは大地と人々に与えた。
いつしか人が、パンゲオンを滅ぼす可能性を作りえたとき、丸い大地をつつむ鏡宇宙は砕け散り、本当の暗黒宇宙と、そして世界を滅ぼさんとする恐るべき獣が人々の前に現れるだろう。

41UG774:2007/12/31(月) 01:19:05
【告死蝶のしくじり】
昔々。リクシャマー帝国に美と芸術をこよなく愛する暗殺者が居ました。
後に皇太子リクシャマーⅢ世の長男すら弑い奉ったと
裏の世界で噂される事になるほど凄腕の。
そんな彼女が、何時ものように夜闇に紛れて標的の屋敷に忍び込みます。
愛用の鉤爪を撫でながら、どのような暗殺(カットスロート)を行うか考えながら。
一瞬の静と動、暗と明、闇に引かれた銀の弧が、相手の喉から血の桜を咲かせる光景を思い描きながら。
標的の、金と権力と政治と裏切りと……それらで彩られた彼女の美意識には耐えがたき醜き生。
それを最後はせめて血の華で絢爛に美しく飾ってやろう……と、思っていたのに。
とりあえず様子を伺おうと鍵穴から標的の部屋を覗くと・・・・・・…
そこはギシギシアンアンの世界。桃色18禁の世界。
唖然。
「………これはひどい」
やっと出てきた言葉がそれだった。
「……?」
どうにも標的の上に居る娼婦に見覚えがある気がした。
……キュトスの姉妹には一人だけ各国家の面子に関わるため表だって抹殺対象にできない「裏」がいる。
それは告死蝶レナリアも知っていた。
その裏抹殺指定の掛かった彼女には各国家の要人が何人も暗殺されているのだが……
死因と暗殺された場所があまりにいかがわしいので表沙汰にできないのである。
その名は【売女】ムランカ
「なるほどこういうわけか………」
真相を知って激しくげんなりした告死蝶であった。
「帰ろう……」
後日。
告死蝶は行きつけのバーで飲んだくれていた。
依頼主が報酬を持ってやってきた。
「ご苦労……だがあの……仕事のやり方はどうかと」
「私じゃない!私じゃねえよ!納得いかねえ!!!」
どっかのツンデレ娘のような吐く告死蝶であった。

42言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 01:22:47
アルセスに飽きた。

いい加減多過ぎるんだと言う。妖精たちは記述するたびにアルセスアルセスアルセス、
なにが起きてもアルセスのせい。

これじゃあ神話がアルセスだらけになったアルセスになってしまう。

これもみんなアルセスのせいだ! とか責任転嫁しては山のようにいるアルセサーどもと一緒だ。
ええい、いっそアルセスなどいないことにして、新しい主神を作ってやる。

やっぱりアルセス以上のインパクトがほしいから、ここは絶世の美少年とかがいいよな。
あと最強最強言ってたらありきたりだし、意表をついて最弱の神とかどうだろう。
ついでに、じつはホモとか言い出したら意外性抜群だな。
あとは最近流行の腹黒キャラが一般ウケ狙えるかもしれない。
実は策謀をめぐらせているキャラクターにしよう。
人畜無害そうな外見の裏で色々と暗躍しているんだ。
あとラブストーリーも欲しい。永遠を誓い合った恋人の為に悠久の苦難を乗り越えようとしている。
うん、これはかなりかっこいいぞ。

あれ、ところでアルセスってどんな神様だっけ?

43リジェネレイトスライム:2007/12/31(月) 01:26:34
世界が色あせて見えたら、その世界を疑いなさい。

そこはきっと、偽りの世界、擬態した腹の中。

街一つを飲み込む絶望の世界。
人々の絶望を吸い取って成長する巨大なドーム状のセピアスライムは、世界を覆い絶望を糧とする。
絶望を全て吸い尽くされた街は、一切の絶望が失われたやたらアッパーでハッピーな街になるそうな。

44言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 01:35:42
【パン泥棒】

ある町で大量のパンが盗まれる事件が多発していた。
犯人は若い男というところまでは判明していたのだが、逮捕へとつながる重要な証拠や証言はなかなか発見されなかった。
かくして、この事件は迷宮入りし、そしてその犯人である某博士は今日も大量のパンを盗み続けていた。
「いま、かえったよ」
ぼろ小屋同然の隠れ家に帰ると、彼は部屋の奥に向かってそう言った。
そこには、ボディの中央に扇風機のようなものがついた、もう動かないロボットの姿があった。
某博士は、すでに自立駆動をやめてしまったロボットのボディに、盗んできたパンをおしこもうとする。
「いっぱい食べて、はやくよくなるんだよ……」
疲れきった顔で、しかしとても優しげな表情で某博士はパンをおしこんでいる。
彼は、ロボットが再び動き出すその日まで、パンを盗み続けるだろう。

45言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 01:57:29
パイスラッシュ。

π/とは、女性が肩掛けカバンを斜めにかけたときに胸の間に生まれる間隙とその空間に生じるギャップ萌え的なエロスのゆらぎ内部での名称である。

本来横長の膨らみとして外的認識を強制するその女性のあれというかあれとあれは、内側への直線的なバイアスをかけることによってその曲線の浮き沈みを一層激しいものにする。
つまり、おっぱいの形がよりはっきりしてえろい。

だが、なぜおっぱいの形がはっきりとしているとえろいのか?
そもそも、何故おっぱいに対して欲情するのだろうか。

これは、実はおっぱいの形状が原因である。
これは元々、乙胚という字を当てられていた。胚、つまり生命の元となる部位である。
古い時代、人間の栄養や知性は全てこの中から生じると考えられており、そして母乳と精子はその色から同一のものであると考えられていた。
人々は男性にあって女性にない突起物が、単に位置が異なるだけで女性の胸にも同じものがついているのだと考えた。
つまり、女性の乳房ふたつは男性器に相当すると考えられていた。

ここから、人々の深層心理に両者が等号で結び付けられるようになった。
そして、人間の脳深くに遺伝的に刻み込まれた条件反射によって、女性の乳房を見ると自然に勃起してしまうようになったのである。

46言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 02:11:22
岩穿ちの剣。



あるところに、けっして壊れない岩があった。
戦士は岩に剣で斬りつけたが傷一つつく様子が無い。
戦士はその場で何年も何年もかけて岩を砕こうとし続けた。

岩を砕く。岩砕きの剣を完成させるのだ。

戦士は、ある日雨樋から滴り落ちた水滴を見た。
数年が経って、その水滴の真下にあった岩がすこし凹んでいることに気がついた。

戦士はひらめいて、手を打った。

そうだ。力任せに剣を振り回しているからいけない。
同じ場所を、正確に、より小さい面積で何度も何度も突けばいいのだ。

戦士は、それからまた何年もかけて岩を突き続けた。

そして、岩を突き続けて三十年。
戦士の剣は、岩を穿ち貫いた。

岩を砕くことはなかったが、けっして壊れぬはずの岩を、戦士の剣は穿ったのである。

戦士の剣は岩穿ちの剣と呼ばれ、戦士たちの奥義のひとつとして語られるようになった。

47歌わない船:2007/12/31(月) 02:48:23
【クラニス病とゾーイ病 1】
思春期特有の精神疾患に、
<クラニス病>、<ゾーイ病>と呼ばれるものがあります。

<クラニス病>とは、
「今の自分や取り巻く境遇は偽者で、
本当の自分はもっと価値のある何かである」
というせん妄に取り付かれている心理状態です。
病名がずばり示すとおり、
患者はしばしば神話の女神、クラニスを自称します。
(余談ですが、そう言った『自称クラニス』は少なく見積もっても毎年数十人は表れます)
精神病質の患者としては概ね無害と考えられがちですが、
せん妄状態に従った、突飛な行動を取りがちな事には留意すべきでしょう。
特に『姉妹』であると思い込んだ女性の家へ押しかけ、
しつこく付きまとう事例が数多く報告されています。

『少女の可愛らしい空想を病気呼ばわりするのは大袈裟だ、
そっとしておいてあげるのが正しい大人の振舞いだ』
という当時多かった上記のような世間の声に対して
児童心理学の権威、S・テイナー博士が著書の中で反論た言葉は有名です。

「ですが考えて見てください。
彼女が本当に神話の女神その人だったとしてもです。
彼女は女神ゆえ人の社会に馴染めず、
なのに彼女の姉たちは誰も迎えに来てはくれない、
これは彼女にとって十分に辛く、悲劇的な境遇です」

48歌わない船:2007/12/31(月) 02:49:16
【クラニス病とゾーイ病 2】
「自分は気が付かないうちに
得体の知れない怪物に作り変えられているのではないか」
という強迫観念に取り付かれているのを<ゾーイ病>と呼びます。
患者は自身の精神、身体への執着が限りなく希薄になり、
しばしば摂食障害や自傷行為の下地となります。

患者の心身が著しく損なわれる(少なくともその遠因になり得る)
ために、クラニス病と違って速やかな入院措置を取ることも多いのが特徴です。
早期発見の場合は1週間前後の入院で症状は大分改善される事がわかっており、
その為に各学習機関では13歳以上の児童を対象に
定期的な心理テストを実施する事が国で義務付けられています。

重大犯罪を起こした犯人がゾーイ病の患者、
もしくは治療暦がある事がまれに取り沙汰される事が有ります。
が、ゾーイ病の患者はしばしば家庭に問題を抱えているケースが見られる為に
犯罪の原因が病気にあるのか?
それとも犯罪をする事と病気になる事が、共に同じ原因で引き起こされているのか?
という論争が一時活発になった事が有りました。

49言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 03:06:36
国土管理局のエージェント(自称エリート)カガチは事実、優秀な女性であった。
しかし酷く男運に恵まれない事でもその名は知られていたのであった。

ある時彼女を指して「スィーリア」と揶揄した嫌味な上司は
その日の帰り道『何者か』に夜襲に遭い、
3日後に頚椎と脊椎を除いた関節が一つ残らず
キレイに脱臼させられた状態で転がっている所を発見されたという。

動機十分な上にそんなワザを持ってるのはカガチくらいの物だったが、
本人の前ではそんな事誰も指摘出来なかった。おっかなくて。

50言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 09:25:34
【ミュリエンティの沈黙】

何もせず、ただそこにいるだけの様子を指して『ミュリエンティの沈黙』という。
また、そこから派生した意味として、何もしていないのに他の人よりもいい成績をとることの意味にも使われる。
「今回のバトロワは、霧の防壁三重重ねでミュリエンティの沈黙をねらってみようかな。」
ほかに『動かざることミュリエンティの如し』という格言もある。

51言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 09:33:01
【逃走の獣をつかまえ損ねた男の話】

山奥に一人きりで生活する男は、ある日、木々の間を走り抜ける逃走の獣の姿を見た。
「今晩のメシはあれにしよう」
男は山のなかを全力で疾走。しかし逃走の獣の逃げ足は尋常ではなく、五つの山と三つの川と一つの国境を越えたところまで男は追い続けたが、けっきょく獣には逃げ切られてしまった。
「しかたない。兎でもとって帰るか」
男はぼやいて、森の上空を飛んでいた一羽の兎に向かって石を投げました。男の意志は見事に命中し、獲物は森のなかに落ちてきました。しかし、兎だと思っていた獲物は一匹の烏でした。
「しかたない。今晩は烏鍋にするか」
男は自分の背丈よりも大きな一匹の烏を、ずるずるとひきずりながら家へと引き返していきました。

52言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 11:43:07
炸撃


作劇。一発変換でこれが出た。
炸裂撃。さくれつげき、と打って、裂を消す。

これでようやく、炸撃。

辞書登録すればいいのでは? と思ったが、辞書登録する手間もさくれつげきと打つ手間も大して変わらないだろうと思い、しなかった。
しかし不便である。爆撃ならば一発変換だというのに、この炸撃はどうにもやり辛い。ファイアクラッカーとルビも長い。
シャルマキヒュの凍結視線(結と線を消す)といい勝負である。

ステータスカード作ったりメール送ったりする度に思うのだが、もうこれはスキル名ではなくて消費パネル名で統一したほうがいいのではないだろうか。
つまり、スキル毎に名前の長さが違うとどうにもプランの文字数を食ってしまう。
イア=テムの呪いの剣とか、まあ強力な分それがハンデだとか、逆に対抗してプラン組むときは厄介だとか、
名前の長さ的な特性もアリかもしれないが、それよりレベル的に統一して、

スキル火を〜(炸撃)
とか
スキル火火を〜(爆撃)
とか
スキル火火火を〜(大炎上)
とかにしたら文字数が全スキル統一できないだろうか。

ちょっと待てそしたら二文字のスキルは4文字とか5文字に増えてるじゃないか、といいたくなる気持ちもまあわかる。
だがな、元々5文字以上のスキルとかあるんだし、これで統一できて公平にならないか?

53言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 12:00:00
【紅白烏兎合戦のはじまり】

昔、逃走の獣は今のような名前ではなく、足の速い獣と呼ばれていました。
風のように早く走る獣に、他の獣たちは誰も追いつけなかったからです。
その頃、獣と鳥は仲が悪く、毎日のように小競り合いを繰り返していました。
個々の戦闘では効率が悪いため、やがて獣は獣同士、鳥は鳥同士で団結するようになっていきます。
足の速い獣は開戦当時こそ皆に活躍を期待されていましたが、実はたいへん小心な生き物であったので闘争のたびに逃走し、次第に仲間から疎まれるようになりました。

獣と鳥の戦いが最も激化したとき、獣の総大将である兎は号令を発しました。戦況が拮抗している今こそ、物資に優る獣軍が総攻撃をかける好機である、と。
兎は最後の闘争を前に、集まった獣たちの名を1匹ずつ呼び、配属と任務を言い渡しました。
足の速い獣は、危険な任務にまわされないことを祈りながら名前を呼ばれるのを待っていましたが、一向に呼ばれる気配がありません。
ついに最後まで、足の速い獣の名前だけが呼ばれることはありませんでした。
そうです。たび重なる敵前逃亡に呆れられ、のけ者にされたのです。

この時の獣と鳥の総力戦は熾烈を極め、お互い疲れ果てた総大将たちは休戦協定を結ぶことになります。頻繁に戦うのはお互い不毛なので、戦うのは年に一度だけにする取り決めをしたのです。
これが、紅白烏兎合戦のはじまりになったと言います。

また、総力戦でのけ者にされた足の早い獣は、それ以来「闘争のけ者」の謗りを受けるようになりました。

54無駄毛処理の魔女:2007/12/31(月) 12:14:41
ミミドという魔女は他人の鼻毛を痛み無しで全て抜いてやることができる。
鼻毛の長いやつらはこぞってミミドに抜いてもらおうとするのだが、その為には彼女に貢物をしなくてはならない。
もしかりに綺麗に鼻毛を抜いてもらったとしても、数ヵ月後にはもっと激しく長く生えてきてボーボーになっている。
なので、また貢物を持ってミミドに鼻毛を抜いてもらわなくてはならなくなる。

ミミド無しでは生きられなくなってしまう恐るべき搾取のシステムだが、この状況を打開するため、独りの剛鼻毛の男が叛旗を翻した。

これが後の世に言う「鼻毛革命」である。
鼻毛革命の戦士たちは痛みをこらえつつ自力で鼻毛をぶちぶちとちぎってはなげちぎってはなげ、ミミドに投げつけた。
「鼻毛税反対!」「鼻毛人からの搾取をやめさせろ!」
ミミドはたまらず、貢物はいいから今度は腋毛も抜かせてくれと頼みました。
人々はこの回答に破顔し、以来ミミドは鼻毛と腋毛を抜いてくれる優しい魔女になったといいます。

55言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 12:45:30
往道竜啓社の祭司は、自力で動ける間の人生を巡礼の旅に費やす。
社をも共に移動させるが為、
外壁から中の祭壇に至るまで全てのパーツが
分解可能な移動式社を作り上げた彼らは優れた設計技師であり、
巡礼中に見た物事をまた別の土地で広めるという、語り部でもあった。

教派としての往道竜啓社が消滅した今日でも、
ある地方では街道沿いの村の祭が
丁度人の足で南下するのと同程度の日程のずれを有している事が知られているが、
これは、それらの祭が竜啓社の祭司が到着したのを受けて催されていた事の名残だと言われている。

56言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 12:52:48
山にすんでいる梯子が大挙しておしよせてきたのです。僕はまだ畑を守らない。雲です。
姑息なこと、と罵られても人の猥談を盗み聞きするのです。

3段梯子は4段梯子と相談して、大根は3段梯子、牛蒡は4段梯子というように分けることに。
根菜に穴を開けて、人が人であるように梯子も梯子であると宣言します。
仲間はずれにされた5段梯子は怒りました。人参はもう人が取ってしまっていたし。
そこで5段梯子は新たな根菜を作ることを神様に申し出ました。そして生まれたのがきゅうりです。

きゅうりは生まれたとき、とてもとまどいました。だってきゅうりは根っこではなかったからです。
根っこ的なものを何も持たず、土の中にいるのはとても窮屈で退屈でした。
そこできゅうりは旅に出ました。途中で鎌と豆腐と軌道に会い、世界に平和が訪れました。
魔王は謝りました。

魔王のお姫様は五人いて、1番目はきゅうりと、2番目は鎌と、3番目は豆腐と、4番目は意志と、
それぞれ結婚しました。

5番目はやっぱり旅にでました。途中の川で水浴びをしているとき、少し泣きました。

57niv:2007/12/31(月) 17:20:22
 むかしむかし、世界にはスキルとスキルパターンと能力値だけがあり、力がすべてを支配していました。
 そんな中、アケルという変わり者が、プランという遊びをはじめました。プランは世界の様相を一変させました。プランをうまく使えば、自分より遥かに能力値の高い相手にも勝つことができるようになったのです。プランを手に入れた人間は瞬く間に生態系での地位を向上させ、さらなる力を求めてプランの研究をはじめたのでした。
 しかし、アケルの127人のこどもたちは、それで満足しませんでした。彼らはさらに精密で応用の利くプランのために、新しい言語をつくりはじめました。
 数多の天使、精霊、竜、魔物が彼らの前に破れて行きました。しかし、彼らにもどうしても倒せない敵がいました。
 紀元の神々です。
 何しろ神々と来たら、世界そのものであり、世界に存在する要素の集合なものですから、アケルの子らがいっしょうけんめい新しいプランや言語を考えても、誕生した瞬間に神々にも分かち合われてしまうのです。
 不可能を承知で、それでも彼らは探求します。というのは、いつか言語が特異点に到達し、要素を包む定義を食い破り集合を超越する日が訪れないとは、理性に反して彼らの魂が納得していないからです。

58niv:2007/12/31(月) 17:44:31
それで神々は「たがいに矛盾してもよいから」と、自由に世界をつくりはじめたのですが、虫や植物はあるし人間は二本足だしと、あんがいどれも似たり寄ったりの出来でした。 これに腹を立てたエーラマーンは、ほかの神々を批判することを目的とした創作をはじめました。たとえば、パンゲオンという世界では猫が空想上の生き物で、ファンタジアという世界では、なんと魔法と科学がおおっぴらに共存していました。
 わずがなりとも現実に根差した世界があれば、エーラマーンはすぐさまそれに反例をつきつけました。そしてとうとう、エーラマーンが参加当初から構想していた、排泄器を汚らわしく醜いものとする常識的な世界観への挑戦に踏み切ったのです。

「この世界では、排泄器は生殖器が兼ねる。排泄器としてしかるべき軽蔑を受けながらも、生命の根源であるがゆえにこの排泄器は美と愛着を人々に感じさせ、しばしば熱烈な執着の対象とさえなる。文化も文学も、排泄器を中心に回ると言って差し支えない。この世界において、紀元槍とは排泄器のことである」


 こうしてできたのがこの世界です。

59niv:2007/12/31(月) 18:25:41
【鯨】
 会意文字。海の旧体字。
 魚の京(みやこ)から。

60niv:2007/12/31(月) 18:36:36
【鯨】
 会意文字。
 くじらは中国の伝承に現れる極めて巨大な魚であり、姿はいるかに似て、時折背中から水柱を吹いて雨を降らせるという。
 京は兆の一万倍の単位。極めて巨大であることを、巨大な数字と魚の字を合わせることで表している。
 ユダヤ・キリスト教の聖書にはベヒモスという極めて巨大な獣が登場し、あまりに巨大であるために一頭でも複数形で呼ばれている。中国の鯨が紀元前8世紀ごろに伝わったものと考えられている。

61言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 20:16:08
明日の記憶が明後日になり、明々後日の記憶が昨日になります。
そして今日が訪れます。
今日のことを僕らは何も知りません。今日がいつの記憶なのか、それともそもそも今日は本当にいつかの記憶なのか。
たとえば今日は貝殻だと言う人もいます。
たとえば今日ははんぶんこのおやつだと言う人もいます。
きっと、どちらも正しくて、どちらも間違っているのでしょう。

62言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 20:55:06
【デューク・レメゲトン】
『ゆらぎ魔法マジカルプリティ』の登場人物。
開拓時代にアメリカの錬金術師キムボールによって造られたホムンクルス。
ヌアランダーラを培養したもので『ヌアランダーラの株』と呼ばれる。
「放っておいても成長するように」キムボールから
魔的なるものへの尽きることのない探究心を植えつけられており、
魔術書の名を冠するにふさわしく『歩く魔術書』と呼べる練達者へと成長している。
体質的に野菜や果物を受け付けないため、肉しか食べられない。
このため知り合いができるとよく心配される。正体を隠しながら
いろいろと理由をつけて完全肉食を貫く日々である。

歩く『幸せの魔法』たるマジカルプリティを手中に収めようと来訪、
幾重にも設けられた霊的・魔術的防衛を突破しゆらぎ市へと進入した。

63言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 21:33:22
体が痛くて起き上がれない。
それはそう、だって昨日はあの古竜と一日中じゃんけんをしていたのだから。
何でそんなことをしていたのかと言うと、暇だったから。
23日の夜一緒に寝た友達は、24日にはFカップの彼女さんの故郷に行ってしまったし。
まあそれはしょうがないんだけど、というか上がるか上がらないか、ウチの前で一時間も迷ってるなという話。
その友達があっちに行ってしまったんで、急に暇になって大掃除したり本棚の整理をしたりしたんだけど
まあ、一人暮らしじゃそんなのすぐ終わる。暇になるようにしか行動してなかった自分を呪う。
それで、ネットを介してオルゴーを呼び出した。
「暇なのでじゃんけんをしましょう。」
「いいですよ、瀬良さん。」

で、私が2144勝、オルゴーが1982勝。
手加減してくれたの、オルゴーとからかうと
もう少し自分を大事にしたほうがいいですよとか諭されたのでぶん殴った。

64言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 22:23:11
ハイデルヒンメルの王、ジョヤは低血圧で朝が弱いので、新年の日の出がどうしても見られなかった。
彼は日の出が見たかったので、目覚ましの鐘を造らせた。

ジョヤの鐘と、それは呼ばれた。

65言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 22:38:39
豆腐の星に春が来た。冬の間は灰色ばんでた豆腐の大地は明るい白色に萌え、
豆腐の芽はその生命を空に延ばしていく。ほろほろと朧豆腐は大気に溶け行き、視界を霞ませる。
川には湯葉が張り始め、それを隠れ家にする豆腐魚の稚魚たちがちまちまとした魚影を廻らす。
春分の日、高原から三人の賢者が里に降りてくる。
冬の間、吹きすさぶ風にさらされながら祈りを唱え続ける凍み行を続けていた彼らの身体は
かさかさになって、ちょっと力を加えるとポキンと折れてしまいそうだ。
里の者は彼らのために出汁風呂を沸かし、ゆっくりと身体を休めてもらえるよう用意する。
三人の賢者はそこでしばらく静養した後、ドゥブの三神聖堂会の主教としての勤めを果たすため、一路南に向かう。
十日間の行程の後、彼らがドゥブに入る頃、冷奴始めましたの貼り紙が街の市場をにぎやかしはじめる。

66言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 22:49:28
爆ぜる涙。ゆめる華びら。絢爛豪華な裏の風。

竜王が問う。オルゴーよ、オルゴーよ、汝の愛のいかほどが、鉄の神に捧ぐものか?
白く、白く、灰にまで染まる目を焼く光。

オルゴーよ、オルゴーよ、お前の愛はセルラを染めるか?

見るがいい、鉄に願う乙女の姿を。
全てを鉄に捧げんとする、あの献身を。

お前の為そうとしていることは、あの矮小な生命の万分の一にも満たぬ

それでも
為さねばならぬと思うのならば

その牙が折れようとも羽ばたくがいい。

その羽が千切れようとも足掻くがいい。

前を向け、竜の子よ。

オルゴーよ。

オルゴーよ。

67言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 23:42:54
敗北の実感より速く。
神速を持って突き穿たれた魔女の剛剣は魔力によって硬質化したデスキャベツの肉を刺し抉り、蹂躙した。
速力で下回ったその時点で彼の敗北は確定し、長い戦いの果て、デスキャベツはその膝を着くことになる。

慰めの言葉をかけてきたのはアンヘリカだ。馴染みのあの茶化すような態度はどこへ消えたのか、珍しくいたわるかのように眉を弓にして慰めの言葉を口にしていた。
悪いものでも食べたのか、と問えば嘆息されて気づけばどこかに消えていた。
いつもながらに意味の解らない女だった。
気遣いの視線が、今は痛い。
デスキャベツは独り割り当てられた自室に篭り、寝台に寄りかかって顔を伏せる。
酒でもかっ食らいたい気分だと思ったが、魔女に取り上げられていたことを思い出して舌打つ。
暗鬱になりがちな思考を切り替えようと努め、無為に終わる徒労の跡に彼の顔は曇り続ける。
ノックの音がした。
誰かと顔を会わせたい気分ではない。 居留守を決め込もうとして、鍵を閉め忘れたことに気づく。
「入るよ? 居るのは貴方の仲介者に聞いたから」
女の声。聞き覚えのある、男にとっては特別な意味を持つ響きが扉を伝う。
止める間もなく扉が開く。現れた姿に瞬間、息を飲む。
「あんたは・・・」
「お疲れ様、敗者。 完敗した後の気分はどう?」
「そんなもの、」
いいわけないだろう、と言い掛けて、止める。
そんなものは、一回戦でメテオラに敗北したこの女こそが一番かみ締めてきた筈なのだ。
「フィアマ・・・・・・」
「だから気安く名前を呼ばないで・・・・・・って・・・まあ、いいか」
女、フィアマは寝台の側面に座り込んだデスキャベツのすぐ隣に腰掛けると、手に持っていたグラスとビンを持ち上げて示す。
からん、と振れば涼やかな音がする。
わずかに、女のきつめの表情が解けるように緩んだ。
「どう? 祝いの酒でも」
「・・・この状況で、俺に何を祝えというんだ」
「貴方が負けると、私が、嬉しい」
様を見なさい、せせら笑ってみせる女を怒る気にもなれない。
試合前に手ほどきを受けた束縛の魔術。魔術の奥義『静謐』完成のヒントを与えたのは彼女だった。
「悪い・・・、無駄になっちまったな、折角教えてもらったのに」
「いいわよ別に。あんなものでしょう」
事も無げに言う様子は言葉の通り気にしていないことの表われだろう。
肩にかかる長さの



というところでエターなった
ごめんなさい。

68言理の妖精語りて曰く、:2007/12/31(月) 23:48:48
子宮=シキュウ=キュウシ=Quthi=Quths=キュトス


殺すとキュトスがびくびくするよ!!

69言理の妖精語りて曰く、:2008/01/01(火) 00:01:05
しんしんと雪が降る。私は、歩く。……歩く。
まだ除夜の鐘は鳴らない。
「オルゴー、私はもう疲れたよ」
「パトラッシュごっこですか。というかそんな台詞でしたか?」
「うるせー。いいからつきあいなさいよ」
「てかパトラッシュ側に台詞無いじゃないですか」
「じゃ歌えー」

実家の近くのお寺は神社と一緒になっていて、小さいところだけど、行くと鐘を搗かせてくれる。
神社のほうではお神酒とみかんを振舞っている。お神酒のコップをお代わりと突き出して、氏子さんたちにびっくりされる。
「マロゾロンド?」
そういえばじっくりと見たことはなかったけど、絵馬とかに書いてある神様の名前は面白いのが多い。
カタカナで書いてあって、どこか外国の神様のようだ。
あとこっちには「アルセスのバカヤロー」とか書いてある。いいのか、神様にバカヤローなんて書いちゃってて。
「いいんですよ、みんな、悪いのはアルセスのせいです」
オルゴーはそんな悟ったようなこと言って、私はそれはつまらないと言い返す。
悪いことも全部私のせいなほうが絶対楽しい、と。
大きな体のせいでオルゴーは鳥居からこっちには入れないから、私が今年のおみくじを買ってきてあげる。
吉だった。

70言理の妖精語りて曰く、:2008/01/01(火) 22:35:33
いいよそんなすみわけなんか適当で

71言理の妖精語りて曰く、:2008/01/01(火) 22:35:58
グラナリア語の特徴として挙げられるのが単語の連結である。
基本とされる一音節、二音節の単純な単語以外を表す時、
それら基本単語を繋げ、一つの単語として扱う事が多い。
これはグラナリア言語圏に多く見られる文化で、
名前や姓も無尽蔵に繋げていくことが良く知られている。
メリットとしては基本的な単語を覚えておけばある程度難解な文でも意味が推察できるということである。
ただし、一つの単語が異常に長いという弊害を生み出してもいる。
例を上げてみよう。

Ic wisenreitewinalstannenritt hu rula

単純な文で、「私は今彼と旧交を温めている」という意味だが、
この、wisenreitewinalstannenrittという単語は

wisen 会う
reite 古い、昔の
winalst 好意を示す
annen  接終詞
ritt  〜する

という単語に分ける事ができる。このような事例はグラナリア語では珍しくなく、時間の経過と共に廃れていった原因の一つとも言える。

リーデ・アルティ=ヘルサル著 よくわかる はじめてのグラナリア語より抜粋

72言理の妖精語りて曰く、:2008/01/01(火) 22:37:09
【封魔研究所・女性調査員の陰謀】
ワアワナは優秀な女性調査員だ。
ある日、封魔研究所所長イルガメルのセクハラにストレスが爆発したワアワナは、研究所を破壊することに決めた。
その為には封魔研究所の圧倒的な対魔対策に勝る攻撃力が必要だ。対魔対策とはいえその大半は物理的なモノで、要塞じみた研究所は手持ちの榴弾砲程度では傷1つ付かない。セラミック爆薬による内部からの破壊もその警備システムを誤魔化す手段が無く断念した。
しかし彼女に好機が訪れる。この近くを【メテオラ】が通るというのだ。
近隣区域にはメテオラ注意報が発令され、皆外出を控えるよう通達が着たが彼女は無視した。
メテオラの前に立ちはだかるワアワナ。このままでは一殴りで肉片となるか踏みつぶされてペースト状になる運命であったが、彼女は罠を用意していた。
「スイッチオン!」
轟音と共にメテオラの踏みしめていた大地が九〇度回転した!
メテオラは横に流れる気景色も何も気にする事無く、そのまま研究所に向かって進んでいった。
数時間と立たないうちに研究所は大破したが、ワアワナはその所行が彼女にこっぴどく振られた男性調査員によって目撃されており、研究所とメテオラの進路になってしまった国や都市から賞金を賭けられまくってしまった。

3・1【隠し階段】
隠された階段を発見したスネーク。これより下降する。
階段には青白い炎を浮かべた燭台が等間隔に並んでいる。
足元は水で濡れ、息を吐けば白く凍りつく。
つまり、
「うう〜、寒い。超寒い。寒すぎなんですけど」
幾らなんでもおかしい、これではまるで永久凍土だ。
速く、速く、速く、悴んだ手を擦り合わせながら歩を進める。
???「見つけたぞミッタケー!」
突然の闖入者の声に驚き足を止める。本来なら致命的な失態だが、今回はそれが功を奏した。
弾丸は彼女の身体をかすめながらも当たらずに通過。だが、その跳弾は階段内を縦横無尽に飛び跳ね、老朽化か、それとも悪意ある第三者の仕業か、衝撃に耐えかねた階段は崩壊を始める。
「あばばばばばば、あばばばばば!」
尻に槍が刺さったかの様に、紀人イーリィをも上回る速さで駆け抜けるtallisちゃん。天井から降る瓦礫、罅割れる階段を回避し、ようやく扉にたどり着く。
疾走の勢いも殺さずそのまま扉に突っ込んだ。ガン、と乱暴な音を立ててはじける扉。
衝突しても勢いは止まらず数フィーテ先までごろごろと転がる。
ようやく止まり、頭を抱えながら起き上がると、そこは・・・

1、【かっぱえびせんの山】
2、【花園】
3、【果樹園】

【元封魔研究所女性調査員ワアワナの逃亡】
賞金稼ぎ達の生死を問わぬ追撃を知謀策謀で振り切った賞金首ワアワナ。
彼女は逃走術に関して神懸かり的なほどに優れていた。
しかし逃走の成功と同時に自分の限界を感じたワアワナ。
彼女は逃走神ウエイラナの庇護を授かるべく旅に出た。
常に逃走するラナ神を見つけるのは自らが逃げ切ることよりも困難な道であった。
1年後。
逃走神の足取りを追うことで逃走の極意を得たワアワナは、自分を密告したあの男を抹殺する為始まりの地へと還るのだった。

73言理の妖精語りて曰く、:2008/01/01(火) 22:40:05
大人って汚い。

74言理の妖精語りて曰く、:2008/01/01(火) 22:40:33
私見だが、記述に効果を見出すのは個人によりけりだろう。
無価値と思うならそれは正しい。
価値ある記述などいったいこの中にどれだけあろうか。

75言理の妖精語りて曰く、:2008/01/03(木) 13:07:41
これを読んだ貴方はゆらぎ中毒になってしまいました。治療法はありません。

これからもゆらぎの神話をよろしくお願いします。

76<<妖精は口を噤んだ>>:<<妖精は口を噤んだ>>
<<妖精は口を噤んだ>>

77言理の妖精語りて曰く、:2008/02/03(日) 02:06:12
「あとは、とりあえずこれ予約お願い」
「恋空ね……」
「何? 何か文句でも?」
「べーつに。ただこれ待ち人数多いから、大分先になるんじゃないかと思うけど。借りれるの」
「どれくらい?」
「いま541人だから……」
「多!?」
「いくらかはキャンセルしてくるにしても、瀬良の番が回ってくるのは半年ぐらい先だと思うわよ。
 買った方が早いと思うけど?」
「うーん、今ちょっと先立つものが……」

 まあ、一応予約手続きしとくわ。と苗野は言ってキーボードをカタカタと打ちはじめる。
 区の図書館に来るのは久しぶりだ。ちょっと駅から離れたところにあるから、なかなか足が向かない。

「でさ、またこれさ、ちょっと読んでもら……」
 あぁ?? と露骨にいやそうな顔をされた。私もしかめ面を返す。
 そういう顔は読んでからにしろよー、この野郎。いや違うそうじゃないな。
 読んだあともそんな顔できると思ったら大間違いだぜ? この野郎。
「3点」
「読むの早!!」
「てか文字数少ないのよ瀬良の小説ってか、ポエムってか。……これさー、本当に応募する気なの? 絶対あなたあとで死にたくなるよ?」
 そこまで言うか、と言った私の声がかなり大きかったようで、館内の人がざっとこっちのカウンターの方を見るのが分かった。
 苗野に小声で、出てけ。と言われた。


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