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企画リレー小説スレッド

45 第1回8番(V)デフォン :2008/03/07(金) 03:55:36
 少女の過去についてデフォンはヘリステラに秘匿資料の開示を求め、これはすぐ認可された。研究員一般に開示されているものと比べると、そこにあった資料は驚くほど詳細なものだった。どうやってここまで調べたのかと訝らずにいられないそれは、この調査に多大なコストが割り当てられていたことの証左だった。

 最初からしっかり彼女の過去に注目していたという点で、ヘリステラに抜け目はなったのだろう。だからこそ、デフォンはとても意外に思う。こうまでして入手した情報がまったく活用されず、研究棟の奥深くで埃を被って埋もれているのは、ヘリステラが彼女に対し個人的な情けを掛けたからに違いないのだ。
 
 助手として研究に対する苛烈さばかりを見ていたデフォンは、ヘリステラにこのような一面があったのかと感嘆する。もはや国家的な資産を投入した巨大プロジェクトの長として、ヘリステラのこの判断は甘すぎるくらいのものだった。人類全てを生体実験に捧げてでも研究に明け暮れるマッドサイエンティストだとばかり思っていたが、こういう脆さがあると分かれば、助手としてサポートのし甲斐があるというものだ。そのことについてだけは、デフォンも少し愉快な気分になれた。

 しかし、この件でデフォンが頬を緩められる話題はそれだけだった。少女の過去は、呑気なデフォンが想像していた程度のものを少しだけ上回っていた。一連の事件後まもなく、彼女は市街での戦闘に巻き込まれて重傷を負う。そして巡り巡って難民医療センターに収容され、それを保護したのが、『星見の塔』の出資者マグドールだったということだ。少女の過去を隠そうとするのはヘリステラの甘さだが、これが無闇に公開することのできない情報なのも確かな話ではあった。

 だがやはり、ヘリステラはこの資料をもっとよく見ておくべきだった。少女の夢の核となる登場人物は、確かに示唆されていたのだ。その気になって考えれば、何とでも見つけられる符号だった。あるいは、ああ見えて無駄な思考を排除するヘリステラだからこそ、このお遊び的な符号を見逃したとも考えられる。

 もしやと思い資料を漁ったところ、件の義援隊の人数に四十四人という数字が出てきた。この時点でデフォンの仮説は確信に変わる。後の問題は、少女がどのような夢の結末を望んでいるかという一点だった。ある冬の日の葬列。物語をそこから始めたのは少女の意思だ。ならば、その時点から辿りつくことのできる最善のシナリオを、デフォンは書き出さなければならない。答えは、少しずつ見えつつあった。


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