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三題話もしくは二題話スレッド

1言理の妖精語りて曰く、:2007/01/17(水) 20:27:12
このスレッドは三題話や二題話をするためのものです。
http://jbbs.livedoor.jp/travel/6744/
上記したアドレスにも同じスレッドがありますが、こちらの場合は、矛盾やゆらぎなどを肯定します。

52ようじょ 沐浴 致命的失態:2008/02/25(月) 01:31:32
セラティスなんていう無闇に古めかしい名前を親が付けてしまったことは、当人にとっては全く消し去りたい過去と言う他は無い、忌々しい事実ではあるものの、その実少女自身の性質はまさしく名は体を現すとの格言の如く質実共に剛健勇壮な溌剌としたものだ。
喩するならば割れた薪か澄み渡った湖か、とかく率直で生真面目な気性のセラティスは控えめに言っても古代のセラティス神の名を背負うに相応しい少女であると言える。
細くか弱い四肢、されど輝くかのような躍動を感じさせずにはいられない美しい肢体である。これより一層の美と健康を兼ね備えつつ成長していくであろう、美しきその年域こそは幼きの女。
齢を、五つと数える。
天より注ぐは絹糸のごとき幾筋もの光芒、楕円で編まれた天蓋の隙間より美しき肢体が照らされる。
木漏れ日の下に露わになる女の身体は、光の糸だけを纏ったあられもなき姿。未だ曲線も描かぬ柔らかな流れ、朝照りに解かされた白雪の絨毯が途方も無く小さな体躯を覆っているかのような錯誤。
セラティスが宙を掬う。 否、それは水である。流れ落ちる水流の透明感は清涼な大気のようでいて、直下に流れる小川に注ぐ音すらその場の雰囲気と一体となっていた。
調和の聖地。静謐な空間の中、無防備な姿を晒す彼女は、掬い取った水をその身にかける。
繊細に織られた水の布を、丁寧に丹念に柔肌にこすり付けていくさまは優美であった。丁度、大人がその手のひらでかかえられる程度の腰からすべらかな腿、踝に伝い落ちる薄い水の筋。
冷たさの感触が吐息をかき乱すのか、薪のごとき鎖骨の線から生じる、幼い喉下から桃色の唇へ通り過ぎていく、艶のある吐息。

刹那。五体が金剛の如く膨れ上がった。
無論のこと、錯覚である。だがその全身を奔る豪気なる空気、露わとなった無駄なき筋肉を見ればその威容が必ずしも間違ったものではない事が知れる。
女体にして幼きは、しかして脆弱を意味せず。
刮と見開かれた目が気合と共に眼前の小滝を貫く。直後である。
硬質の弾音と共に、滝が断裂する。と、川に落ちていくのはふたつに叩き折られた鋭利な刃。
明確な殺意をいとも容易く回避してのけたセラティスは、前も隠さずに頭上高く、樹上の襲撃者に誰何した。
「問う。 うぬは何ゆえにわしを狙ったか」
細い、あまりに細い声であった。幼子のそれと理解してさえあまりに細い。
高く響くその音は、清澄な周辺の空気に同化して溶け消えないかと案じてしまうほど、透明なものだった。
だが、真上からの声が返る。
「答える義理は無い」
「暗殺者か。せめて名を名乗られよ」
鮮やかな光の乱舞に目を細める、しかしその姿は映らず。と、その姿が飛び跳ねる。
幼女の背後に着地し、果たして刺客はその姿を現した。
「我が名は・・・・・・シェロン。 死神シェロンよ」
「笑止。 死神を名乗るか、童」

53ようじょ 沐浴 致命的失態:2008/02/25(月) 01:31:45
焦茶色の半ズボンから覗く膝小僧に、対峙する女のそれと共通する色を見出せた。黒のサスペンダーの留め金は可愛らしい犬のそれ。
敢えて犬を選ぶは男子の矜持か、はたまた嗜好か。丸眼鏡と坊ちゃん刈りの男、彼の背格好は敵対者たる女のものとさほど変わらぬ。
暗殺者は、ショタであった。
振り向くや否や掌底を繰り出したセラティスは瞠目する。
シェロンは、渾身の一撃をいとも容易くいなすと反撃の一手を打ち出したのである。咄嗟の飛び退きにより回避するも。衝撃は覚めやらぬまま、セラティスは低く構える。
(げに恐るべきは、あの足腰よ)
見やれば、細こい膝小僧の下、鋼のように地に楔を打つ皮の靴。まるで大地そのものを味方に回したかのような重々しい体重移動、そして恐るべき一撃。
紛れも無き達人の業である。セラティスとて母の胎の中から拳を打つ鍛錬を欠かした事はなかったが、しかし相対者の構えの磐石振りには迂闊に手が出せぬ。
だがセラティスは相手に間断を与える心算は無かった。躊躇は即ち死へと繋がる。思考は下策である。己が鍛錬をのみなぞり、迷うことなく拳を振るえば良い。それが幼きものの在り方である。
確信を持って放たれた打撃、反じて交差する衝撃が水飛沫を散らし、静謐を引き裂き激突する。
それは美事な舞踏である。武闘とは交錯する業と体躯を運ぶ技の複合であり、完成されたそれは世にも美しい線を大地に描くのだ。
舞姫もかくやという足捌きにて川の中を駆け巡る男と女、両の戦士は牙を向け合い、延々と踊り続けた。
と、シェロンの足並みが乱れる。それは致命的失態であった。周囲の水気の存在すら忘れ、武の交わりに熱を上げすぎた報いであろう。跳ね上がった水の一筋が少年の白いシャツを濡らし、透かした先の肌が露わになったのである。
好機也。セラティスの獣の本能が告げる。
「キェェェェェ」
裂帛の気合。奇声と共に打ち出される拳は猛然と虚空を撃ち抜き、音すら置き去らんほどの勢いで少年の頬を捉える。
野獣の一撃である。たまらずシェロンがのけぞると、木々を打ち鳴らしはたき壊しながら吹き飛んで行った。
「うつけめが」
吐き捨てる声は、どこか苦い。拳を振るう者の宿命か、打ち倒された相手への哀切がその瞳をふと過ぎったのだ。
しかし勝利の感傷に浸る間もなく、セラティスは自分が沐浴の最中であったことに気がついた。
気がついてしまった。
風邪を引いて寝込んだ。
「うー。ずびずび」


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