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三題話もしくは二題話スレッド

24そう(1/2):2007/04/22(日) 19:48:06
ことの発端は、今から四時間ほど遡る。

刻は南中夜天の晩、夜空には下弦に垂れ下った月と紅く煌く満天の星。
独りの男がいた。全身を幾重にも隠す厚衣と頭部をすっぽり覆う《フルフェイス》の仮面、表情は分らないが、非常に陰気な氣を発散している。
その男の落ち込んでいる理由は、現在進行形で、竜に追われているからだ。

地を駆けるもの、空を這うもの、魔路を泳ぐもの、有象無象の亜竜の群、群、群、群、群、群、群、群。

その内の一匹の前肢が振り挙げられる。鉤爪を備えた先には呆然と立ち尽くした男の姿。
脆弱な人間の肉に容易く食い込む、と思われたその袈裟斬りは突如その分厚い衣に阻まれる。

いや、正確にはその下に見え隠れする小さな金属片―――尖片の連なった鎧である。
男は静かに呟いた。

「*Lagyun0n*」

腹部を覆っていた尖片がさざめく。無数の虫が擦れ合う様な音をたてながら、手甲に引き寄せられる。
その拳でいぶかしむ竜の鼻面に当てる。瞬間、竜の頭部が爆砕した。

驚異的な加速を持って撃ち出された尖片は小さな死神となり、竜の眼球と口腔と鼻孔と竜鱗を貫通する。
頭蓋前面はすべて削り取られ、現存しているものは小振りな牙の並んだ下顎のみで、そこから暗赤色の舌が力無く垂れ下っている。

屍となった同属の仇を討つべく約20匹の小型の影――――土竜が飛び上がる。

だが、男はこれにも慌てず、ゆっくりと、・・・・・背負っていたラックの蓋を外す。
緩慢な動作で、正確に、慎重に、確実に、円筒形の筒に収まっている物体を取り出す。

それは、それは、丹念に磨かれ、月光を鈍く反射する、直径30〜40リーデほどの《真球》であった。

彼は投擲競技に使用される砲丸に瓜二つのそれを中空に放った。するとどうだろう、真球はふよふよとその場で浮き沈みを繰り返す。
現在浮遊を続ける球体、その数13体。先程からパチパチとする怪音は夜警の神の鞭の音、ではなく、男の握り締められた掌から砲丸までを繋ぐ、細い放電の鎖から響く。
しばらくするとその放電現象も眼に見えて沈静化し、時折手と球の間に光の糸が見える程度になった。それはまるで、不可視の鞭の様であった。

ぶぶぶうぶぶぶぶぶぶぶぶ   蠅の羽撃にも似た爆音は球面から1.00002ナノティリンスの位置で展開される衝撃面結界が原因である。

手を振り上げる。それに釣られて球も跳び上がる。手を振り下ろす。それに釣られて球も振り下がる。

急下降する一三発のまあるい鉄槌はすべて土竜の群に叩き付けられる。その外骨格はまるで鉄甲竜弾が直撃した彼の様に粉砕され、凄惨な死骸に変貌する。

直撃した十三匹と巻き添えを食らった二匹はその場に倒れ伏し、残りは負傷を負いながらも突撃を慣行する。
まるで猪の様な無謀な特攻を仕掛ける土竜達。この間にも鉄球は一三発すべて、空を往く竜の翅を引き千切るのことに使っている。

矮小な捕食対象に反撃され、地に君臨する昆虫類の王たる竜族は圧倒的物量による殺害を敢行する。

一方彼はなにか対抗魔術を汲み上げ、組み上げるでもなく、野畑に佇む案山子のようにただ前方を見据えている。

憎悪に萌え怒れる竜のキチン質の角が男の体表に接触するまで残り70リーデといったところか・・・。だが、それは永遠に叶わぬことだった。


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