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物語スレッド

301ロズロォの懺悔(17):2008/01/15(火) 01:19:03
「私は、無辜で無抵抗の娘達を切り刻んで悦ぶ悪党だ!、鬼畜だ!、罪深い人間だ!。君が思ってくれるような善良な人間じゃないんだ!。罪人なんだよ!。今や本当の意味で罪深い罪人なんだよ!。だから……」
 ……優しくしないでくれ
 言いたいのはそれだけのことなのに、なのに私にはその言葉が言えない。
 望んでいる、渇望しているのに、喉まで出掛かっているのに私にはその言葉が言えない。
 それを言ってしまったら、何かが本当に終わってしまいそうで、私にはその言葉が言えない。
 ……私は!、私は?、私は!!
「罪深いのはあたしも同じだよ」
 その私に囁くように彼女は言う。私は彼女の言葉にそっと背後を振り向く。間近に彼女の顔があった。
「私ね、お母さんも、お姉ちゃんも弟も、みんな見殺しにしたんだ。あたしが今生きているのはそのおかげ」
「だが……それは戦争で……」
 私が言うと彼女は首を横に振って言った。
「無力な事だって、無知な事だって、運の悪い事だって結局は罪は罪なんだよ」
「でも、それは……」
 私は彼女の言葉を否定しようとする。
 しかし結局そこに続ける言葉を思いつくことが出来ずに言葉に詰まり、結局私は何も言えなかった。
 黙っている私の傍で、彼女は言葉を続ける。
「お母さんは草の民の軍隊があたし達の街を襲った時に、あたし達姉弟を隠していて、自分が隠れる暇が無くて死んだんだ……あたしに出来たのはお母さんが兵隊に嬲られるように切り刻まれるのを物陰に隠れて、怯えながら見ている事だけだった」
「……」
「お父さんはその頃とっくに戦争で死んでいたから、お母さんが死んで、お姉ちゃんとあたし達、戦争から逃げるため、住んでた街から逃げ出したんだ。でも、逃げている間に、飢えで弟は死んじゃって……弟は、ずっと『お腹減った』と言ってたんだけど、結局、あたし何も出来なかった。出来たのは倒れて動けなくなった弟を最期まで見守ってあげることだけだった」
 前線が悲惨なことになっている、というのは街に居た時に私も耳にしていたことだったが、ここまで酷かったというのは初耳だった。
「それで、結局、あの街、フォリカに落ち着いて、あたしを養うために色々と仕事を探してくれたんだけど、結局女手を必要とする仕事ってなかなか無くて……あっても、身元の知れない難民なんて雇ってくれる所なんて無くて……それで、あたし達、その日のパンも買えないぐらいに困窮していって、お姉ちゃん、とうとうその手の元締めに頼み込んで街頭に立つことになったんだ」
 「街頭に立つ」という言葉が街娼、所謂低級娼婦になることだという意味の言葉だということぐらいは世間に疎い私でも知っている。
「『これからはもっと良い暮らしをさせてあげられるかもしれないからね』とお姉ちゃん言ってた。けれど、結局そうはならなかった。お姉ちゃん、翌日の朝に冷たくなって帰って来たんだ」
 そう言った娘の頬を一筋の涙が伝うのを私は見てしまった。努めて明るく振舞っている彼女にとって、それがどれだけ彼女の心の傷になっているかは察して知るべきことだった。
「観てたお姉ちゃんの『同僚』の人が言ってた。沢山の傭兵達が一度にお姉ちゃんのお客になろうとして、お姉ちゃん抵抗したんだけど、変な【草】みたいなもの飲まされてぐったりして、そのまま傭兵達に良いように弄ばれてそのまま動かなくなったって」
 「人形作り」だ、と私は悟る。あの【草】は服用後、全身の神経を一時的に弛緩させるのだ。
 ……それじゃ、彼女のお姉さんは、私が作った「人形作り」で死んだのかもしれないじゃないか……


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