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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part29

1■■■■:2015/12/07(月) 21:01:15 ID:WEwdZ/zM
上条さんと美琴のSSをじゃんじゃん投下していくスレです!
別に上条さんと美琴だけが出てくるスレじゃありません。
上条さんと美琴が最終的にいちゃいちゃしていればいいので、
ほかのキャラを出してもいいです。そこを勘違いしないようにお願いします!

◇このスレの心得
・原作の話は有りなのでアニメ組の人はネタバレに注意してください。
・美琴×俺の考えの人は戻るを押してください。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・レスする前に一度スレを更新してみましょう。誰かが投下中だったりすると被ります。
・次スレは>>970ぐらいの人にお願いします。

◇投稿時の注意
・フラゲネタはもちろんNG。
・キャラを必要以上に貶めるなど、あからさまに不快な表現は自重しましょう。
・自分が知らないキャラは出さないように(原作読んでないのに五和を出す等)。
・明らかにR-18なものは専用スレがあるみたいなのでそちらにどうぞ。
・流れが速い時は宣言してから書き込むと被ったりしないです。投稿終了の目印もあるとさらに◎。
・創作しながらの投稿はスレを独占することになりますので、書き溜めてから投稿することをお勧めします。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・以前に投稿したことがある人は、その旨記述してあるとまとめの人が喜びます。
・ちなみに1レスの制限は約4096byte(全角約2000文字)、行数制限は無い模様。

◇その他の注意・参考
・基本マターリ進行で。特に作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・クレクレ(こうゆうのを書いてください)等はやりすぎに注意。
・読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。
・誰か投下した直後の投下はできれば控えめに。
・倫理的にグレーな動画サイト、共有関係の話題はもちろんNG。
・書きたいけど文才無いから書けないよ!
  →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。

◇初心者(書き手)大歓迎!◇

前スレ
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part28
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1415780549/

まとめページ
とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 / 上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/81.html

まとめページの編集方針
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/213.html

スレ立て用テンプレ
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/82.html

706ただいま 前篇3:2016/10/10(月) 23:03:50 ID:RGpGu30g
「なら、いいなさい」

小さな声だった。

耳に入った音に少年が戸惑った瞬間、目の前の美琴が消えた。
違う。
いつのまにか飛来した鉄の塊に吹き飛ばされていた。

「美琴っ!!」

慌てて視線で追うが、美琴は無傷だった。
磁力でも使ったのだろう。

「そこまでいうなら、言ってみなさいよ!!!!」

空中の美琴は紫電を放ち、
再び襲い来る猛威に対抗しながら、

叫ぶ。

「そこまで言うなら、あの娘たちにお前たちは御坂美琴のクローンでしかないって、言えるもんなら言ってみなさい!!!!」

少年の肩が震えた。
なにもできず、攻撃を懸命に防ぐ美琴の背をただ視線で追う。

「あの女【ヒト】に、世界中で犠牲になった人のために死んで詫びろと言ってみなさい!!」

二人の脳裏には、隻眼の少女の後ろ姿が浮かんでいる。
美琴はようやく橋に降り立った。

「いってみなさいよ」

少年は、まだ、動けない。

「その子に、お前はオレの子供なんかじゃないって、言えるもんなら言ってみなさいよ!!!!」

ようやく少年に、
その赤子の声が届いた。

707ただいま 前篇3:2016/10/10(月) 23:05:18 ID:RGpGu30g
「うっ……ぐしゅっ…………ぱぁぱぁ、だーじょぶ?」

恐怖に震えながらも、その赤子は必死に少年を救おうとする。

「イン……デックス……」

少年の様子を視界の端にいれつつ、
魔女、ローラ=スチュアートはさらに熾烈な攻撃を繰り出す。

「さて、よくここまで耐えしよ」

鉄橋の中心には、一人の少女。
すり傷だらけ、息も絶え絶えな御坂美琴だ。
彼女の目はいまだ鋭く光り、敵を捉えたまま逃さない。
ヤツもまた余裕な表情を崩さず、鉄橋の中央にそびえ立つ。

「でも、そろそろチェックメイトにするとせし」

さらに遥か後方の大地がめくれる。
地面から伸びるは巨大な土の腕。
美琴の口が乾いた。
魔女は、残忍に微笑む。

「電気タイプには土タイプ。ジャパンが生みし固定観念に則ってみにけらんよ」

激流のように土の腕が美琴に襲いかかった。
が、

(…………ほぅ)

衝突の直前でピタリと止まった。

(土中の金属を使って止めた、では足りない…………鉄橋丸ごとを磁石にしたか)

歯を食い縛る美琴。
その耳に魔女の嘲笑が届く。

「ざぁ〜んねん☆ 別に1つだけなんて言った覚えはなしにつき」

目を見開く美琴の右斜め後方。
土の腕が壁となってとなって美琴に突進する。
美琴は目をつぶった。

708ただいま 前篇3:2016/10/10(月) 23:06:51 ID:RGpGu30g
その後、
なすすべもなく美琴は吹き飛ぶ。
含まれた息は全て吐き出され、
骨は悲鳴をあげながら粉々になり、
内臓がいくつか潰れる。










はずだった。

衝突の直前。
腕は軌道を変えた。
磁力で止められていた腕の半分以上をえぐる形で、ローラの方に進む。

「ほぅ?」

ローラは魔力を解く。
腕が魔力を失い、粉々に砕けた。





しかし、この世には慣性の法則が存在する。

止まんねぇ。

「え? あれ?……ちょ、まっ、とうっ!!」

橋の手摺りまでジャンプ!!
ローラがさっきまでいた場所を、土砂が駆け抜けた。
代償にデコを手摺にぶつける。
ごーん、なんてギャグっぽかったらよかったが、ゴッ、というマジな音だった。
痛い、涙が出ちゃう。

「だって、女の子でありけりもの!!」

デコをさすりながら再び正面を見る。
そして、ニヤリと笑った。

709ただいま 前篇3:2016/10/10(月) 23:07:52 ID:RGpGu30g
ようやく美琴は瞳を開ける。
そこには

「ありがとな、美琴」

いつも追いかけていた背中があった。

「たしかにオレはあの男のクローンなのかもしれない。記憶をなくす前は美琴の人生を狂わせた大罪人だったのかもしれない。でもなぁ……」

上条は叫ぶ

「オレは上条刀夜と上条詩菜のバカ息子だ!! そしてインデックスの父親だ!!オレはアレイスターなんかじゃない。オレの名前は上条当麻だ!!」

立ち上がった魔女の視線を受けても怯まない。
そして、少年の横に少女が並んだ。
上条当麻は御坂美琴と一瞬視線を交え、宣言する。

「もしオレにアイツの計画を助けた過去があるなら、オレは一生をかけて償わなきゃならねぇ。だが、頭を下げるのはテメェなんかじゃねぇ!!」

夜空を埋め尽くす星空を背に、

「ぱぁぱ!! まぁま!! いーめ、めっ!!」

「この戦場から、生きて帰るわよ!!」

「なにがなんでも戻ってやる!! オレ達の家に!!」

ようやく、家族が揃った。

710ただいま 前篇3:2016/10/10(月) 23:08:29 ID:RGpGu30g
ローラは冷たい目を向ける。
挫けるどころか、再び立ち上がった敵を見つめ、
















魔女は、内心暗く笑った。

711ただいま 前篇3:2016/10/10(月) 23:18:14 ID:RGpGu30g
以上です。

上条≒アレイスターの構想は前半の「公園デビュー」で一時ストップしていた時期に考え付きました。
ウィキ様の「セレマ」の項目を読んで思いついたものです。
ぜひ鼻で笑ってください。

では、また明後日お会いしましょう。

712■■■■:2016/10/12(水) 23:23:45 ID:2AXy7V96
乙!!

713・・・:2016/10/12(水) 23:37:19 ID:cVUvia56
ども、・・・です。
最近急に寒くなりましたね。
上琴は温泉旅行にでも行けばいいよ。

後篇です。
ではでは。

714ただいま 後篇1:2016/10/12(水) 23:39:38 ID:cVUvia56
アレイスターの分身と呼ばれた上条は、
絶望の縁に立った。
しかし、美琴の言葉に立ち上がる。
そして、家族で最凶に挑む。

だが、状況が変わった訳ではない。

「飛べ!! 美琴!!」

先ほどまで立っていた場所で、
天使が振るうべき青き極炎が踊る。

炎を放ったローラは空を見上げた。
視線の先には標的。
御坂美琴は空を舞う。
鉄橋という戦場は、電撃使いの活動範囲を大幅に広げた。
彼女の右手に抱かれるのは、
上条に渡されたインデックス。

「インデックス!! 花火できる!!?」

「あぃっ!! どー!!」

母の言葉を受け、赤子の人指し指が降り下ろされる。
それを視認したローラは、ひらり、と跳んだ。
足元で光が弾ける。

(よしっ……)

美琴は知っている。
その花火はしょせん見かけ倒しだ。
花火に感動したインデックスが、自宅のリビングで見せてくれた。
もちろん、家具は全て無事だし、誰もケガなぞしていない。
攻撃になりはしないのだ。
しかし、ローラにはその判断ができないのか、花火は防がずに躱す。
そんなローラの耳に声が届いた。

「そんでもって!!」

迫り来る電撃。
それを追うように襲い来る超電磁砲。
しかし、魔女の余裕は崩れない。
紫電は霧散し、
コインも軽々と躱す。
それどころか、手に白い槍を生み出し、美琴達に投げる。
赤子にボールを投げる程度の力だったが、新幹線よりも速く美琴に届く。
が、彼女は生きていた。

「…………させるかよ」

幻想殺し。
上条は、左手で美琴の腰を抱き、美琴やインデックスと共に滑空する。

715ただいま 後篇1:2016/10/12(水) 23:40:43 ID:cVUvia56
「いっけーーーー!!」

「だぁ!! だぶっ!!」

超電磁砲と花火を軽やかによけるローラ。
だが、美琴は笑みを浮かべた。

(やっぱり、きちんと対処させてる!!)

直撃する前に霧散する電撃と違い、コインは何らかの対処が必要なようだ。
つまりは当たれば有効打となりうる。
迫り来る猛獣を電撃でいなしながら、美琴達は飛ぶ。

「よく耐えにしな」

クスリと笑うローラ。
しかし、すぐに表情が消える。
疑問に彩られた美琴の顔は、次の瞬間ひきつった。

視界の端、現れては消える人影。
自身より一回り小さく、
同じ常盤台の制服を着ている。
桃色に流れる髪。
美琴は叫んだ。

「ダメッ!! 黒子!!」

愛しき美琴の声を聞きつつも、
白井は脅威から視線を外さない。

(あれが、お姉様が相手にするような敵!!)

冷汗は、止まる気配がない。
口が渇く。

(ここが!! あの方達の戦場!!)

鉄矢を取り出し、必死の一撃を放とうとした。
が、
視線の先、敵の口が動く。
ゆっくりと、ゆっくりと、まるで走馬灯のように。
音は聞こえない。
しかし、内容は受け取れた。

716ただいま 後篇1:2016/10/12(水) 23:41:23 ID:cVUvia56
邪魔だ、消えろ。

瞬間、
全ての鉄矢が焔で溶けた。
あ、なんて間抜けな声が自身の口から出たときには、
眼前に広がる太陽。
しかし、白井が炭になることはなかった。

「うおぉぉぉおおおらあああああああ!!」

上条が白井を突き飛ばしながら、
右手を掲げる。
しかし、打ち消せない。
焔はそのまま破裂。
上条は爆風にうち上がり、
7メートル上空から地面に叩きつけられる。
一方の白井は上条の助けで無事だ。
彼女にインデックスを抱えた美琴が駆け寄る。

「大丈夫!?」

「す、すみません!! 上条さんが!!」

「そんなことより…………!!」

言葉の途中で、美琴はインデックスを白井に押し付け突き飛ばす。
次の瞬間、横薙ぎの一閃が美琴を吹き飛ばした。
支柱に激突し、肺の空気が全て吐き出される。

「お姉様!!!!」

叫んだ白井の視界の端で、
再び空気が蠢いた。
正面から襲い来るは、数千もの刃。

だが、彼らが駆けつける。

打ち消され、弾かれ、剃らされ、防がれ、砕かれた。
白井、そしてインデックスまでの壁は厚い。

717ただいま 後篇1:2016/10/12(水) 23:42:05 ID:cVUvia56
「助かった」「ありがとう、黒子」

2つの巨壁から、声が発せられる。
視線を向けられることはない。
しかし、白井にはわかった。
その言葉は見栄やその場しのぎのものではない。
きっと、彼らは笑っている。
だが、

「実際、どうにかしたかったんだ」

宿敵の腕の火傷は、先程自分を助けるために負ったはずだ。

「お願い、その子を守って!!」

愛しの目標は、自分が駆けつけたせいで頭部に傷を受けて出血している。

「お前だけが頼りだ」
「黒子にしか頼めないの」

「…………わかりましたの。どうかご無事で!!」

インデックスの驚きの表情とともに、
白井は消えた。
最後まで、上条と美琴は振り返らなかった。
いや、視線をそらすことはできなかった。
一挙手一投足も見逃せない。
脅威は再び笑い、その右手から閃光を放った。

718ただいま 後篇1:2016/10/12(水) 23:42:39 ID:cVUvia56
車よりも速く移動する少女。
しかし、彼女は風を感じない。
瞬間移動。

電灯から看板へ、
看板から屋上へ、
少女は翔ぶ。

腕に抱かれた赤子は、
必死に何かを抗議していた。
が、
止まる。
額に落ちた雫の正体を確かめようと上を向いた。
月明かりの影となり、白井の表情は伺えない。
だから、必死で手を伸ばした。

「くおこ、だーじょぶ??」

インデックスの頬に、雫が落ちる。

「大丈夫、ですの」

再び、少女は消えた。

719・・・:2016/10/13(木) 00:12:22 ID:4DifOwPM
以上です。

白井にとっては、美琴も遠いと思うんですよー。

720■■■■:2016/10/13(木) 09:40:21 ID:R1GEJ1dA
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 5話:1章―⑤

9月5日(土) 夕刻 16時

母美鈴は、爆発がショックだったのだろうか?
朝マンションへ立ち寄り、当麻や私と一緒に雑談を交わしたのち、昼飯を
食べてそそくさと横浜へ帰った。
「AI捜査支援システムコナン君」の演算結果では問題ないとの判断だったが、とは
いえ暗殺未遂という事実もあり一応町田周辺にある南ゲートまで送った。

研究所や学園都市のランドマークを案内し、夕方まで付き合うつもりが14時で
終わりまるまる時間が空いてしまったので、久々に自宅のそばのカラオケ・ボックスで
2時間ほど歌いまくった。

通常J-POPの楽曲は4分前後なので2人で30曲ほど歌ったことになり、結構
いい塩梅につかれた。最後は定番の結婚式ソングを歌い締めた。
最初は、打算で始めた恋。だけど・・もう・・私の心は当麻への思いではちきれ
んばかりだ・。

私はある意味、単純なのかな・・ようするに何で彼に引かれたか?
自分を崇拝や、化け物扱いする学園都市にあって、一人の女として扱ってくれた。
それにつきる。彼に基準点たる右手があるから?それは小さくない要素だが、それは
一部にすぎない。彼の心音に本質がある。どんな人物も、肩書ではなく本質を見てく
れる。そんな彼に心惹かれた。

まあいいわ。そんなこと結局は大した問題ではないのだから。
今、自分がこうして生きていて、上条当麻を愛しているということ自体が
大事なんだから。

なんか・・母親を暗殺されかけて少し感傷的になっていたのかしら。
さあ、前を向いて歩こう。当麻と一緒に

カラオケ・ボックスを出て手をつないで、目的地へ向かう。
ゆっくりと話しをしたいので磁気による高速移動はやめ、あえて配車サービスで
手配したタクシーを拾う。

暗部の悩める少女たちの救済も風紀委員特別部の大事な仕事なのだから。

「当麻、今日はママのことありがとう」
「お義母さん少し元気なかったな。無理にいつも通りにふるまっていたけど」
「そうね。あんなことが会った後ではね。ただけどママも当麻に勇気づけられ
ていたと思うわ」
「美琴あんまり思い悩む必要はないぞ」
当麻は私の腕をとり、体を密着させる。当麻の底がない優しさにどれだけ助けられた
か。私も当麻も半袖の薄着、薄着ごしに温もりと心音が伝わる。外はいまだ残暑は
厳しいが、キンキンにエアコンの効いたレクサスの車内で、当麻の温もりが心地よさと
安心感を私に与える。

「当麻大丈夫よ。とはいえ母が暗殺対象になるほど、私の存在が憎悪の対象になるのが
ショックだったのは事実。でも・・いまさら私の立場を放棄するわけにもいかないわ」
当麻は、私の上半身を引き寄せ、私は当麻の胸に自分を預ける。
「何があろうと、俺は美琴の味方になる。」

私が当麻以外の誰にも見せない、涙を流す。これほどの地位も、能力も母ひとり
安泰にできない。だけど。いやだからこそ必死に守りぬかなければならない。
それに、今の私は一人じゃない。部員が、なにより当麻が支えてくれる。
私は、涙を手で拭い、笑顔に表情を作り変える。なにより当麻は言ってくれた
(美琴は笑顔がとてもかわいいぞ)
「当麻は本当優しいのね。ありがとう。らしくもなく悩んじゃった」
「そろそろ目的地ね」
「ある意味休日出勤だな」
「まあ風紀委員なんてやり始めたからある程度覚悟はしたけどね。」

レクサスは、目的地へ到着し、私はカードで支払いをすます。
「で、先方の要望は?」
「副委員長の座を賭けて私と勝負してほしいと言っていたわ」
私は、押しつられたただ面倒くさいと思っていたこのポジションが、たった
1週間で暗部の関係者にとって魅力的なそれに代わったのだろう。

「ある意味無謀だな」
「先方には先方なりの勝算はあるでしょ。たぶん。結局無駄なんだろうけど」
「で・・どうする?」

721■■■■:2016/10/13(木) 09:43:39 ID:R1GEJ1dA
「さあてどうしょうか?」
能力開発を謳う学園都市でも、原則能力を使って他人を襲うことは禁止されている。
だが、実際にはそんなのは日常茶飯事で少々の喧嘩は大目に見られる。
そんな学園都市で唯一の例外が、アンチスキルや風紀委員への暴力の行使。
これだけは厳禁で、重く罰せられる。
「まあ、最悪は公務執行妨害で留置するだけよ。遺恨を残さずさっさと
終わらせましょう」
「ああ」

私達は目的地の廃墟へ到着する。絶対能力者進化実験の頓挫により放棄された
施設。広大な施設だが生気はまったくない。

「アイテムだったよな」
「ええ、統括理事会直轄の暗部組織の一つよ」
「本当は、昨日夜会う予定だったけどあの騒ぎで延びてしまったわ」
「そうか」
「悪いけどしばらく、私に会話させて、一応副委員長の業務だから」
「ああ」

私達は、施設の中へ入る。
ほどなく、エントランスをすぎホールのような空間で4名の美少女を発見する。
私はリーダらしき人物へ声をかける。
身目麗しい、しかもスタイル抜群な麦野。その周りに3名の構成員が取り囲む。

「麦野沈利さんですね、御坂美琴です」
「まさか・・本当に本人が来るとはね。一方通行でもよこしてさっさと終わらせる
と思ったのに」
「そんな失礼なことはしませんよ。麦野さんは、私のような電子操作系の能力者
にとっては大先輩ですから。」
「大先輩ね。・・」
私は、形式的な美辞麗句でその場を取り繕う。スマイルとお世辞はただという
古来からの社交術だ。

「で・・さっそくですが、メールの件、返事をいただきたいのですが?」
「答えはわかってるだろう?時間の無駄だ」
「ええ。ですが組織と法律は形式で動いています。少し付き合ってください。」

「麦野さん、あなたには2つの選択肢があります。ひとつは、私の提案を受諾すること。
この場合には、あなたの奨学金は保証され、また今までの功績に対して相当の報奨金を
支給します。また志願するなら風紀委員会特別部員に任命します。」
「もうひとつの選択肢は、・・」
私の言葉は麦野の言葉でさえぎられた。
「御坂美琴をぶち殺し、実力で風紀委員副委員長になる。」
(勝手に自滅してくれたわね。録音も証言もとれた)
私は口調をため口モードにシフトさせ戦闘モードへ突入する。

「タダではすまないわよ。殺人未遂で放り込むわよ。それでもやる?」
「正義の味方気取りが余裕かましちゃってさこれを見て同じことが言えるか?」
麦野が、スマホの映像を私に見せる。
「てめえが大事にしている、クローンを一人確保してる」
そこには、男が拳銃を突き付け、私と同じ顔のクローンを拘束している映像が
映っていた。
(私は麦野のらしくない行動に愕然とする。たかがリストラでここまで落ちるの?)
「それで。それがハンデてわけ?」
「テメエみたいな化け物相手に手段を選んでられネエんだよ」
「ふーん。そう。監禁の現行犯も追加ね」
「そんなことをテメエにできるわけが・・」
私は、能力でスマホを操作し、気がつかれないようにメールを送信する。
「ふーん?その程度でハンデになるんだ?なめられたものね」
「はったりか?余裕かまして・・」
(もう証拠もそろったしさっさと終わらせるか。)
私は、敵の自信の根拠をひとつ一つつぶしていく事とする。
( 私に盾突くとどうなるか見せしめが必要かもね)

「そろそろ到着時間かな」
「へ?」
私はわざとらしく独り言をしゃべる。
「浜面さんだっけ?もういいわよ」
麦野が突然動揺しだす。
「はあ?」
クローンを監禁していた男は拘束をとき、到着した結標へ引き渡す。
結標は現場にいた数人のほかの男達をコルクで無力化する。

722■■■■:2016/10/13(木) 09:47:49 ID:R1GEJ1dA
「さあて、麦野さんハンデはもうないの?」
「なんで、居場所が」
「さあね。」
「くそ・・浜面の奴最初からだましていたのか」
(いまごろ気がついたの?もう遅いわ)
「で・・もうネタはないの?いい加減投降したら?」
「へ・・テメエと一戦交えるんだ、これからだよ」
だが、
爆発音の轟音が響きわたると血相を変える。

「なんか小細工をしていたようだけど、破壊させてもらったわよ」
「テメエ・・」
「だから・・キャパシティダウンとかAIMジャマ―を使うなんて想定済みなのよ」
「くそ忌々しい能力だな?電磁波で破壊しやがったか?ガンマ線とかか」
私は、腕組をして嘲笑うように言葉をつなぐ。

「そんなことわかりきったことじゃない。もう1度言ういまなら見逃してもいいわよ」
「いまさら・・できるわけないだろう」
「説得に応じないわけね。あなたは私の大事な物をまるでモノでも扱うかのように
踏みにじった。それ相応の罰は受けもらうわよ。」
その言葉がきっかけになったのだろうか?麦野は全身に高エネルギー化した電子を
纏い武装を始める。

「くらいやがれ、原子崩し」
まばゆいばかりの光に発する高エネルギー電子が大気を貫通し、轟音があたりに
響き渡る。私は、あらかじめ展開したプラズマシートで吸収し、周囲の被害を
回避する。
「危ないわね。私が阻止しなければ、建物を貫通して周囲へ被害が出たわよ」
「くそ・・これでもダメか」
麦野は最後の切り札を阻止され、悪態をつく。
(ああ・・せっかく見逃すつもりだったのに風紀副委員長への公然な殺人未遂・・
 処罰するしかないわね。正当防衛で腕の一本くらい、蒸発させようか?)

麦野には、かすかな勝算があった。滝壺が、御坂のAIMへ干渉できれば原子崩しが
あたる可能性がある。そして体晶で強化された原子崩しなら御坂の吸収を突破できる
可能性がある。

だが・・麦野の希望はもろくも崩れ去る。滝壺がうめき声をあげ苦しみはじめ、頭
を抱え始める。私は、アイテムのデータと照合し、体晶の過剰使用という言葉を導き
出す。
(私の能力を妨害しようとしたのかしら。でも・・私がレベル6になっていたのを知らなかったのが運の尽きね。結局彼女のほうが暴発したようね。)
私は、両手でやれやれと表現し、抗戦をやめるように促す。

「ああ・・いわんこっちゃない。副作用でしょ。体晶のそれも過剰使用じゃない?」
滝壺がたった1回で副作用を起こし、麦野は動揺を隠せない。
「テメエなんで・・それを」
「滝壺理后、AIMストーカ、さらに体晶を過剰投与すれば、能力者の演算を妨害
する能力を持つ。そのくらい私が知らないとでも思っていた?私は、書庫へのフルアクセス権限があるのよ。」
麦野は、肩を落とし溜息をつく。ただ目の憎悪は消えことはない。

「気に食わねえな。なんでテメエだけ学園都市で優遇される?レベル5のくせに
暗部にも落ちず、表の世界でのうのうと、しかもお嬢様学校を優等な成績で飛び級
卒業。不公平じゃねえか」
「さあ・・心がけの問題じゃない?」
「くそ・・テメエだけは許せねえ。体晶を使えばテメエなんて1発で消し炭に
できる」
「そう・・」
麦野は、全身にエネルギーを纏い、原子崩しの発射準備をする。遮蔽物という
概念さえ無用にするそれが。だが・・

ドガ^ン まるでマンション解体で使用される鉄球がぶち当たったような轟音が
響く。麦野は前にぶっ飛ばされ壁にぶち当たり、昏倒してぶっ倒れる。
頑丈な、抜群の体力を誇る麦野が一発で気絶する。

「絹旗さん、フレンダさん もういいですね。勝負はつきました。無駄な抵抗は
やめてください」
だが絹旗は、麦野の敵を取ろうとでも言うのだろうか?突進を始める。
ひょい・・と。私は右手を伸ばし絹旗の脚周りの窒素の分子運動エネルギーを急速に
奪い、瞬間凍結させる。急速に増大した摩擦エネルギーで脚をとられ、絹旗は転倒する。
私は転倒した絹旗に軽く、電撃を食らわせ気絶させる。

723■■■■:2016/10/13(木) 09:53:20 ID:R1GEJ1dA

フレンダは両手をあげ降参スタイルをするが、

「フレンダさん陶器爆弾ならもう無害化してますよ」
「え?」
「私はね電子を自在に操作できるのよ」
「へ・・?」
「理解できないならいいわ。試してごらんなさい」
フレンダは慌てて試すが、爆弾はうんともすんとも言わない。
爆発物とは究極的には分子間の電子結合の過剰エネルギーを瞬間的に開放できる
物質だ。分子間の電子配列が変わることで爆発物は無効になる。

「チェックメイトね。うるさいから寝ててくれる?」
・・バチ・・
私は、電撃の槍でフレンダを眠らせる。

「当麻、いつも悪いけどケアお願いね」
「美琴そばにいてもいいぞ。」
「雑事が結構あるのよ」
「え?」
「殺人未遂犯を救済するのはそれなりに手間なのよ」
「そうか分かった」
「じゃお願いね」
私は、当麻を残しホールを離れる。
・・・・・・・
約1時間後  18時

俺はホールで麦野が起きるのを待つ。壁にめり込むほどの衝撃で壁に衝突したにも
かかわらず、麦野は起き上がる。ただ骨が折れたのだろうか?苦痛に顔をしかめて
いる。フレンダと滝壺、絹旗は美琴が呼んだ特別部員が拘束し連行された。

「麦野、起きたか?それより肋骨おれてねえか?」
「ああ・・効いたな・・。ずきずき痛みやがる」
「で・・お忙しい1位様は?」
「美琴は風紀委員の雑用で本部へ帰った」
「ほう・・でテメエは御坂美琴の婚約者 上条か?」
「有名人と婚約すると、俺も有名人になるんだな」
「けえ・・言ってろ。学園都市で御坂美琴を知らねえ奴なんていねえ
だろう、テメエはその婚約者、テメエを知らねえ奴もいねえよ」

「なあ麦野なんで人質なんてとった?」
「あの化け物に勝つ方法なんて他にあるのか?破壊力は馬鹿デカい、たいがいの攻撃は吸収する。手数は多い、頭は回る」
「じゃ・・なおさら」
「こっちは今まで何年も、くそたれな学園都市のために体を張っていたんだ」
俺は嘆息して麦野の表情を観察する。目に憎悪が浮かびまだまだ心の災を静まって
いない。

「そうか 悔しかったんだな」
「悔しい?そんな生易しい言葉で済むか。血反吐を吐く思いで、切り刻んでそれで
やっと任務を達成したんだ」
「俺は暗部の事はよく知らねえ。だけど美琴は、テメエのことを尊敬していたそうだぞ。
さっきまではな」
「尊敬?は〜あ1位の余裕て奴か・・。へえへえ心高潔な1位様はおっしゃることが違いますねえ・・ふざけんじゃねえ。上条・・アイツは甘やかされているんだよ」
俺は美琴が侮辱され怒りを顔ににじませる。

「テメエは性根が曲がっているようだな。アイツはテメエも知っている通り最初は
レベル1だった、何度も挫折をしたが・・」
「はあ?御坂美琴サクセスストーリか・・下らねえ。アイツは学園都市が莫大な金を
つぎ込んで作り上げた偶像なんだよ」
「いいか上条・・御坂美琴はな、小1のころから、特別のカラキュラム、養成プログラムで純粋培養されたいわば学園都市の顔、アイドルとして作られた偶像。それが
実際の話だ」
「つまねえ話だな。ようは学園都市はその顔として美琴を選び、テメエを捨てただけだろう。能力・学力・識見すべてテメエが美琴以下だった話じゃねえか」
「素直に負けを認めたらどうだ?そうすれば楽になるぞ」

麦野にとって、年下で「同性」の美琴に序列が抜かれたことは、・・言われたく
ない、触れられたくない事実だった。麦野は怒りで顔を紅潮させる。
「ぐちゃぐちゃうるせえなあ、上条、テメエだって所詮は虎の威を借りるなんとか
じゃねえのか?」

724■■■■:2016/10/13(木) 09:59:29 ID:R1GEJ1dA
「テメエの幻想殺しとやら見せてくれよ」
麦野は、怒りを電子のエネルギーに変え、原子崩しの発射準備を整える。
「受け取れるものなら受けとってみな」

「しょうがねえ、テメエが現実を目を背けるというならその幻想をぶち殺してやる」
だが・・麦野の原子崩しが発射されることはなかった。

発射直前に、上条が麦野を右手でつかみ、その発射エネルギーを打ち消す。
「くそ・・忌々しい右手だな・・だけど体晶と滝壺さえいればテメエなんて
どうでもなる」
「そうかもな。」
「だけど・・それは体晶による暴発だろう?結局」
「そ・・それは」
「なあ、もう体晶だよりはやめねえか?」
「麦野と滝壺、両方不幸になる。それより・・もっと違う道を選択しねえか?」
「え・・それは」
麦野は俺の思わぬ言葉に動揺を始める。

「美琴は、テメエの体の事を心配していたぞ。私のせいで麦野さんが体晶だよりに
なってしまって申し訳ないてな」
「くそ・・あの女は、自分だけいい子で・・」
「美琴は結構リスクはとっているんだ。あれだけ憎んでた、木原幻生も一方通行
とも手を組んで、より大きな敵と対峙しようとしているんだ」
「それは・・」
「アイツはそんなことを言わない。だけど、アイツだって相当のリスクを取って
行動しているんだ」
「アイツは言っていたぞ、「自分の思いを果たすためなら悪魔でも手を結ぶ」」
「だから・・正直どうなるか俺にもわからない、だけど今のアイツはお前たちが
より良い方法になるように手を尽くしているはずだ」
「なあ、俺たちと手を組まねえか?」
「え?」
「まあ、今日は留置所へ入ってもらうけどな。」

そこへ美琴が現れ、麦野の怒りが収まったことを確認し、一言告げる。
「麦野さん、公務執行妨害の現行犯で拘束します」
「え?いいのか?」
「麦野さん。おとなしく出頭してください」
より重い罪を覚悟していた麦野は唖然として美琴を顔を見つめる。
「ああ・・わかった」
状況を察したのか、麦野はおとなしく身をかがめ出頭する。
俺は、美琴が安堵の表情を浮かべているのも見て、安堵する。
・・・・・・・・
20時 とあるイタリアン・レストラン

「当麻いつも済まないわね、面倒なこと頼んで」
美琴は、いつも以上に顔を紅潮させ俺に腕を絡ませてくる。
「ああ・・。でどうする気だ?」
「公務執行妨害で1週間拘留、その後は・・社会奉仕活動かな」
「結構厳しいな」
美琴の目にいたずらっ子のような茶目気を確認し、俺は安堵する。
美琴はその堂々とした見栄えにも関わらず、意外にナイーブで純情な
性格な持ち主で、今回の麦野の件で相当傷ついているはずなのだ。

「当麻は、私がいくらでも犯罪をもみ消せるとか思っていない?」
「ええ・・それは・・いつも・・」
「それは幻想というのよ。ちゃんと責任はとってもらう」
「それは本心か?」
「本心を言うなら八つ裂きにしたいくらいよ。」
俺は、美琴の表情に苦笑いのような微妙な感覚を読み取り、軽口をたたく。

「ツンデレのくせは直したほうがいいぞ」
美琴はほとんど笑いそうになりながら、口だけはつーんと済ますという
器用な表情を作り、しゃべり続ける。
「わかっているわよ。自分が素直な性格でないことぐらい。でも」
俺は美琴へ抱き寄せ、頭をなでる。美琴は気持ちよさそうに撫でられるままに
している。そんな美琴が今はただ愛おしい。

「美琴つらいんだろう。敬愛していた先輩の首切りは誰だって気分のよいもん
じゃない」
「そうね。後味悪いわ。でも・・卑劣な手段で抵抗した麦野を憎むことができない。
法の執行者として殺人未遂として処理すべきなのに胡麻かした。私は、ダメな女だわ。
法律家としても、捜査関係者としても」

725■■■■:2016/10/13(木) 10:02:45 ID:R1GEJ1dA
「だけど・・。殺人の構成要件を満たさないだろう?そもそも」
「え?」
「殺人未遂たってさ・・現実的には不可能じゃない?所詮小細工を弄しても4位が
1位を殺すことは不可能。だろう?」
美琴は目を見開き、顔色に喜色を浮かべる。

「当麻。それは屁理屈と言うのよ。だけど、私の考えとまったく同じでうれしいわ」
美琴はよほどうれしかったのだろうか、いきなり抱きつき始める。
「美琴・・今日は変だぞ」
「なによ・・こんな可愛い女の子が甘えてくるのが嫌なの?」
俺は周囲がざわざわ騒ぎ始めるのが気になる。明らかに周囲が俺たちを注目し
始めているのがわかる。
「いや・・だけど、周りが・・」
「へ?」
美琴は周囲の視線に気がついたのか、顔を赤らめる。
「え?・・。」
恥ずかしいのだろうか、美琴の顔がみるみる真っ赤になり、俺の手を掴む。
「しょうがないわね。じゃ・・続きは内でね」
「ああ、いいぞ。その前に会計済ませよ」
美琴は、機嫌よさそうに、会計をいつもにようにブラック・カードで
済ます。
「さあ、帰ろう当麻、続きはうちでね」
美琴は俺の手をひっぱるように外へ駆け出す。
「さあさっさと走る。急いでいくわよ。」

俺はそんな美琴が誰よりも好きだったんだ。
生気に溢れた、見目麗しい御坂美琴。とても強く、凛々しく、
だが本質は傷つきやすい、夢見がちなただの少女。
だけど・・この平和な日々もそう長くはないだろう。
そんな気がした。

続く

726■■■■:2016/10/13(木) 10:08:05 ID:R1GEJ1dA
以上 とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 5話:1章―⑤
の投稿を終わります。

727■■■■:2016/10/13(木) 15:05:01 ID:QMbHGAQo
>>719
更新乙です。

728・・・:2016/10/15(土) 01:46:29 ID:n9VXur7w
ども、・・・です。

読んでくれて感謝です。

佳境です。
ではでは

729ただいま 後篇2:2016/10/15(土) 01:47:16 ID:n9VXur7w
木の根を打ち消した。
電撃が煙を霧散させる。
上条と美琴は互いの腰を抱き、
空を駆ける。
即席の二人三脚。
2人の意思疏通に言葉は不要。
だが、

「さてさて、足掻きにけるな」

届かない。

(このままじゃ、ジリ貧だ)

電撃は霧散して効かない。
近づこうとしたら隙をつかれるだろう。
有効打は超電磁砲だが、

(あと、コインは……6枚……)

手数が限られた中で、
直線的な攻撃はかすりもしない。
必死に打開策を練っていた時だった。

「さて、幕引きにせん」

その言葉が耳に入った瞬間、
自分も含めた全ての動きが遅くなったように錯覚した。
ゆっくりと上条は振り向く。
磁力を使い飛んでいる上条と美琴。
彼らの背後に浮いていたのは、
イギリス清教最大主教。



間違いなく、その瞬間ローラ=スチュアートはこの世に2人存在した。

730ただいま 後篇2:2016/10/15(土) 01:48:00 ID:n9VXur7w
攻撃を受け、上条と美琴は離れてしまう。
2、3地面を転がった美琴は手摺に激突。

「かっ!!……くっ……」

衝撃を受け、6枚のコイン全てが橋から落ち、闇へと消えた。

「美琴!!…………ごがっ!!」

地面に倒れ、叫ぶ上条の脇が蹴られた。
支柱にぶつかり、崩れ落ちる上条。
一瞬意識を飛ばしていた美琴は、うっすらと瞼を開ける。
息を、飲んだ。

「さてさて、時間切れ。チェックメイトでありけりよ」

上条の首を掴み、持ち上げて支柱に押し付ける。

この景色には見覚えがあった。
ミイラに追われた数日後、
美琴が力を得たいと願ったあの日。
リクルートスーツの上をはためく、絶望の白。

(…………コインが無い!!!)

慌てて電撃を放つが、先程と変わらず霧散する。
泣きながら2、3回放つが無駄だ。

「待って…………まってよぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!」

ここにきて、美琴はスカートのポケットに何かが入っているのに気づいた。

731ただいま 後篇2:2016/10/15(土) 01:48:34 ID:n9VXur7w
薄れ行く意識の中、
上条は美琴の絶叫を聞く。
記憶の中では、彼女とあの少女は笑顔だというのに。

「…………た、の……む…………」

ローラは頭を傾げた。
目の前の男は、息をするのもやっとのはずだ。

「あの……2人……に、は、手を…………出さ、ないで、く……れ…………」

少しずつ白くなる上条の視界。
その中央には自身の首を絞めるローラ。
彼女は自分の言葉を聞き、笑う。
まるで、









あの日のインデックスのように。

732ただいま 後篇2:2016/10/15(土) 01:49:09 ID:n9VXur7w



ローラの胸を閃光が貫いたのはその刹那だった。

733・・・:2016/10/15(土) 01:50:08 ID:n9VXur7w
以上。

短い、短いけど、
ここしか切れるとこ無いんでさぁ

734■■■■:2016/10/15(土) 03:47:55 ID:0ygEUom2
投稿文の名前欄もコテで統一してくれ

735・・・:2016/10/17(月) 00:45:33 ID:oLT6W.jQ
ども、・・・です。

名前欄は、1スレ目から振り返ると、
名前欄はコテの人と、長いものは名前欄をタイトルにする人がいました。
私が入ったpart22のころは、投下宣言時は名前欄にコテを入れ、
作品部分は名前欄にタイトル、
終了宣言時はコテに戻る、というパターンが一般的でした。

大切なのは内容だとは思うので、強制するつもりは一切ないのですが、
私は慣れたやり方でやりたいです。

できればお許しください。

と、いうことで投下します。
ではでは

736ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 00:54:57 ID:oLT6W.jQ

美琴はポケットの中にそれを見つけた。
自分と彼の縁を繋いだままにしておきたくて、
ハワイで手に入れて浮かれていたのに、
勇気が無く、渡せていなくて、
いつもポケットにしのばせていた、それ。
自分の能力で仕上げた貴金属。

思考の暇などなかった。

美琴の周囲に、この世ならざる物質が産み出される。
それは、手放したはずの力。
それは、禁忌の手段。

美琴の影が徐々に悪魔に近づき、

「うわああああああああああああああ!!」

2つのリングは閃光となり、ローラの心臓を射抜く。


さらに光は進み、学園都市の外れ、
風力発電のプロペラに記されたルーンを破壊し、ようやく、
消えた。

737ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 00:55:48 ID:oLT6W.jQ
光が産んだ爆音が、少しして学園都市中に響き渡る。

まさにその時、炎剣が浜面の首を飛ばすか銃弾がステイルの眉間に穴を開けようとするところだった。

まさにその時、反射のタイミングに合わせて刀が引かれるか、ベクトル操作で血流が逆流するところだった。

光と音に気づいた4人の口は、無意識にあの少年の名を発する。
ここにきて、ようやく互いが敵でないことに気づいた。

738ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 00:56:23 ID:oLT6W.jQ
「ゴホッゴホッ……かはっ、がっ!!」

閉ざされていた喉に空気が通る。
かすれていた視界に色が戻っていく。
まず、視界に入ったのは、倒れて動けなくなったローラ。

そして、視線を移し、上条は絶句した。

「ぁぁぁああああああ!! ぅぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

美琴が泣いていた。
それだけではない。
顔を除いた全身が、黒い何かに包まれている。
禍々しさを覚えるそれは、
大覇星祭のとき、美琴を覆っていたそれに近い。

「美琴っ!!」

立ちあがり、駆けつけようとする、

が、

「来ないで!!」

上条の前を幾万もの雷が阻む。
一瞬怯んだ上条の耳に入るは、
血を吐きながら、赤い涙を流しながら漏れる殺人者の懺悔。

「こ、ろし、ちゃった……ごめん、なさい……。ころ、しちゃった、もうこの力は使わないと約束したのに…………」

数多の紫電が鉄橋を駆け抜ける。

「どう、しよう…………。こんな汚れた、手じゃ、アンタの隣に立てない!! 当麻と一緒にいられない!!」

一際大きな電流が流れた。

「こんな手じゃ、インデックスに触れられない!!」

舞い踊る雷光は、まるで雄叫びをあげる龍。

739ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 00:57:15 ID:oLT6W.jQ
鉄橋の上は、一歩でも踏み間違えたら稲妻により絶命する、神の処刑場と化していた。
まさに地獄とも呼べる場で、美琴の絶叫を聞いた上条は、笑っていた。
笑っていたのだ。
柔らかく、温かく。
ゆっくりと、近づいた。

「!!!?…………だ、め…………来ないで!!」

紫電が走るが、当たらない。
何度も、上条に向かって雷撃が飛ぶ。
しかし、全てが逸れる。

「……あぁ……」

ここにきて、ようやく美琴は上条が何かをした訳ではないと悟った。

「お前が、本気でオレを傷つけるわけないだろ?」

周囲の景色は電撃の雨で見えないぐらいだが、
上条には1つも届かない。

「頼むよ、そんなこと言わないでくれ。お前以外に、誰がインデックスを泣き止ますんだよ?」

少しずつ顔を黒に浸食されながら、
美琴はそれでも頭を振る。
しかし、上条は受け入れない。

「お前が隣にいないのは、オレもイヤだ。そんなことになったら、上条さん、泣いちゃいますよ」

いつのまにか上条は美琴の前に立っていた。
そのまま美琴を抱き締める。
黒い異物にヒビが入り、
ピシピシと音をたてて崩れはじめた。

「お願いだ、オレ達から離れないでくれ」

しかし、

「だ、め…………こんな、人殺しのわたしに、当麻達の横に立つ資格なんて無い!!」

さらに、美琴は声をあげようとした、
しかし、上条はそれをさせない。

740ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 00:59:27 ID:oLT6W.jQ
彼女の口を己のそれで塞いだのだ。

長い時間がたった。
いや、もしかしたら一瞬の出来事だったのかもしれない。
ゆっくりと2人の顔が離れる。

「オレの横に美琴がいるのに、理由なんていらない。オレの横に立つのに、資格なんていらない」

美琴は、ふさがれていた息を必死に吸う。
表情は、戸惑ったままだ。

「もし、美琴がオレの横にいるのを否定するヤツがいたら、オレはそいつをぶっ飛ばす」

ようやく、美琴の目から、透明な液体が流れはじめた。

「もし、美琴やインデックスの命を狙って、オレと2人が一緒にいられなくするヤツがいて、そいつがそれを諦めないなら…………」

上条は笑う。

「きっと、オレはそいつを許せない。何がなんでも絶対に許さない。絶対だ」

上条は美琴に制服の上着を着せた。
美琴は当然の疑問を持つ。
違う、確信が得られないのだ。

「な、んで…………」

力が足りない。
知識が足りない。
経験が足りない。
約束も守れない。
かろうじて保っていた穢れていない手も、今日血で染まった。

自分は彼の隣に立つに、相応しくない。

そう思っていた。
しかし、上条はその幻想を粉砕する。

「お前のことを、愛してるんだ」

目を見開く美琴に上条は再び唇を落とす。
先程のような、息が詰まるほどの力強くはない。
なだめるような、泣く子をあやすような、心の温もりを伝えるような口付けだ。

741ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 01:00:34 ID:oLT6W.jQ
上条は、再びゆっくりと距離を置く。

「お前が超能力者だろうが魔術師だろうが、人殺しだろうが聖女だろうが、天使だろうが悪魔だろうが関係ない」

視線はピクリとも動かず、美琴の瞳孔を捕らえて放さない。

「お前じゃなきゃ、ダメなんだ」

ようやく、美琴の表情が戻った。
そして感情が爆発する。

742ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 01:01:23 ID:oLT6W.jQ
その時だった。

「その言、確かに聞きしよ」

戦慄。
慌てて上条は美琴を背に匿う。
歯が震える。
口が渇く。

そんな、そんな……。

「あら、あれしきで倒される訳なきにしよ、ラスボスは復活してなんぼのもんでありしな」

糸で引き上げられた人形のように、
ローラは再び立ち上がる。
傷ひとつ無い。
表情は全く変化の無い余裕。

汗が頬を伝い、
再び上条は拳を握った。
しかし、

「まぁ待ちにしよ、上条当麻。もう疲れたし、私は帰ることにせしよ」

提案されたのは、制止。
もちろん、警戒は解けない。

「あらら、まぁ当然でありしか」

じわり、と後退する上条。
しかし、無駄だった。

「だが、もう目的がなきよ」

彼女には、本当に敵意がない。

「あの言葉を、絶対にアレイスターは口にしない」

ようやく、波の音と風の音が聞こえはじめた。
少しずつ、上条達の警戒が解かれる。
ローラは、友人と話すかのように軽やかだ。

「当初は禁書目録をアレイスターにむざむざ渡してしまったと、焦りに焦っていたにしが、どうもこちらの見当はずれでありしな」

まるで先ほどまでの戦闘がなかったかのように、ここは平和だ。

「上条当麻とあの男がイコールでないならば、お前達には感謝こそあれ、敵対する道理はない」

学園都市にいるはずなのに、
星々の光が目映い。

「魔術業界には、私からいっておきし。これからも、インデックスのこと、頼みしよー」

瞬きしたときには、
ローラの姿は消えていた。
力が、視界が、ゆっくりと消えていく。
緊張が解かれた。

すでに、上条達に、意識を保つ体力は残っていなかった。

743ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 01:02:01 ID:oLT6W.jQ
目が覚めたときに視界に入ったのは、
とっくに見慣れてしまった天上。
上条は瞬きする。
ゆっくり、明るくなる室内。
どうやら窓からの明り。
夜明けだ。

「目を覚ましたようだね?」

窓の方に視線を向ける。
立っていたのは、あの医者。
さらにその奥にはベッドが1つ。
横たわるのは…………。

「!!! 美こt……っ!!」

「動いたらいけないよ。普通なら全治4ヵ月だ」

上条がドタバタしたことで、美琴も目を覚ました。
同様に視線を隣に向け、
当麻、と叫ぼうとして痛みに顔を歪める。
んでもって、まったく同じセリフを医者は言うのだった。

「ほんとうに騒がしい患者さん達だね?」

悶絶する2人をしばらく見つめた後、医者は患者に問いかけた。

「何か、質問はあるかい?」

少しずつ明るくなる病室の中に、静寂が広がる。
医師にとってははあらゆる覚悟を込めた問いだった。
しかし、

「あのー、入院費、まけてもらえませんかね?」

少年は、困ったように笑う。
医者は丸い目を何回か瞬きさせた。
相変わらず意表をつかれる。
頭をかく上条を見て、医師は目を細めた。

「うん、免除しよう。君達なら大歓迎だね」

ぜひまた来てくれと言う医者に、アンタは言っちゃダメだろと2人してツッコむ。
医師は無視して出口に向かった。
そして、告げる。

「さて、上条くん、面会だ」

ドアが開かれた。
そこには、今まさにこの部屋にたどり着いた、上条詩菜と上条刀夜。
刀夜が押す車イスに座る詩菜。
彼女は暗い表情をしていたが、
ベッドの上の上条を見て、目を見開く。

「……!! 当麻さん!!!」

彼女は立ち上がり、上条に駆け寄った。
足はまだ治っていない。
相当な激痛だったはずだが、それを感じる余裕が詩菜にない。

「大丈夫なんですか当麻さん!!? 」

焦り、しかしそっと肩を掴み、子に問いかける母親。
医師が「普通は全治4ヵ月だが、彼らの体力なら2週間で退院できるね」と説明する。
しかし、詩菜の表情から不安は消えない。
苦笑し、本人から伝える。

「大丈夫だって、母さん。オレが丈夫なの知ってるだろ?」

ようやく、安心した表情になる母。
上条が安堵した瞬間だった。

「なにバカなこといってるんです!!!!」

激怒。
あの詩菜が感情を表したのだ。
驚き、目をキツく閉じる上条。
だが、予想外の衝撃は続く。
目を開いた。
体を包む、温もりを感じて。

「バカなことを、言わないで、ください。…………知らせを聞いて、どれ程私達が心配したと思っているんですか……」

無事で、よかった。
その言葉は、嗚咽に近かった。
何が起こったのか、理解するのに少し時間を要した上条。
すぐ変化が現れた。
涙。
最初は、何故泣いているのかもわからなかった。
いや、わかる必要などなかったのかもしれない。

「……ごめん、なざぃ…………ごめ゛ん、なざゃぃぃ…………」

上条は、顔をくしゃくしゃに歪めて泣いた。
むせび泣く親子の包容を見て、
ようやく美琴は心から笑みを浮かべた。
ベッドの奥にある窓から、
日光は降り注ぎ、病室を光で満たした。

744ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 01:02:28 ID:oLT6W.jQ
ガタコンッ、と自販機の音がなる。
飛行船が今日の天気予報を映し出す空に、日が少しずつ昇っていく。

「ようやく来にけりか。遅きにつきよ」

飲み物を取り出しながら笑いかけるローラ。
視線の先に立つのは土御門である。
すさまじい表情の土御門だが、ローラの余裕は崩れない。
ほほ笑みを浮かべたまま、ゴクリと喉に飲み物を流し込む。

「……っまっずい!! なんでありけるのこれ!!? イチゴってストロベリーではなきにしか!!? うえっ、ぐふぅ、は、吐き気が…………」

七転八倒である。
が、土御門には関係ない。

「なにが目的だったんだ?」

「何って…………喉を潤そうとしにしよ〜」

「……今回の件、お前はどこまで関与してるんだ?」

「私も情報に踊らされた身でありしよ。もう少しで超電磁砲に殺されるところであったりし」

「貴様の『上条当麻はアレイスターでない』という発表は線引きだ」

「わざわざここまで来て、骨折り損のくたびれ儲けどころの騒ぎじゃなきたれよ」

「上条はアレイスターだといえば、否定する連中と敵対することになる。要はお前の一言で、世界は上条当麻の敵と味方に2分されたんだ」

「そんな、大袈裟でありし〜」

「お前は何を企んでる?」

「世界平和。そんなことより、後始末で手いっぱいなところ悪けれども、飛行機の手配をはやくしてくれなけれんか?」

あの超速旅客機は勘弁してほしきによ。
と、続ける黒幕。
チッ、と舌打ちしつつ、
土御門は病院へ足を進めた。
余裕の表情で手を振る最大主教。
彼の姿はもちろん足音まできえたとき、飛行船が日光を遮って影になった。
突然、飲み物の缶が地面を転がる。

「ガハッ、ゴホッガハッ」

地面が、瞬く間に染まる。
いや、彼女の服も内側から赤く滲んでいった。

「まったく、あそこまでお膳立てせねばあれを放てぬとは、仕方のないこと」

鉄の味を噛み締めた。
一人では立てず、自販機に手を添える。
それでも、彼女の笑みは崩れない。

「さて、こちらの準備は整いたりよ……」

ほんとうに楽しそうに笑うのだった。

「…………パーパ」

飛行船が動き、影がなくなる。
公園には、地面のシミも人影も存在していない。
ただ、飲みかけの缶が転がるだけだった。

745ただいま 後篇3:2016/10/17(月) 01:03:01 ID:oLT6W.jQ
刀夜と詩菜は、知らせを受けて飛んできたそうで、
まだ泊まるところの手配すらされていなかったという。
刀夜は一旦ホテルを探しに部屋を出た。
詩菜も、安堵したからか足が痛みだし、別の部屋に移動。
一度検査して様子を見ることになった。

そんなとき、
息つく暇なく、次の来客だ。
ドアがノックされ、彼女達が入ってきた。

彼女は、真剣な表情で待っていた。
必死に、その小さな体で不安と戦っていた。
そして、ようやく会えたのだ。

「「インデックス」」

白井に抱きついていた彼女は、
目を見開き、視線を動かす。
そこには、包帯だらけの両親がいた。
クリクリとした瞳が、揺れた。
そして、決壊。

「まぁま゛っ!! ぱぁぱぁ゛〜!!」

泣きながら宙に浮き、
必死に母のもとに向かう。
美琴が広げた両手のなかに飛び込むと、
両親を呼び、泣き続ける。

上条は、体を軋めながら立ち上がった。
全身を走る痛みに顔を歪めるも、
笑みを浮かべて2人のもとに向かう。
一瞬、美琴と視線を交わした。
彼女は再びインデックスに視線を落とす。
母の隣に父は座り、娘の頭を撫で、
両親は、どちらともなく囁いた。


「「ただいま、インデックス」」

746・・・:2016/10/17(月) 01:06:16 ID:oLT6W.jQ
以上です。

すみません、投稿宣言時に自分のいいたいことは全く言えてない上に、
なんかすんごく生意気なこといってました。
謝罪いたします。
深夜はいかんですね、やはり。

単純に、慣れたやり方でやらせていただければ幸いですってだけです。
ごめんなさいでした。

747・・・:2016/10/17(月) 01:08:16 ID:oLT6W.jQ
ってことで、シリアスパート隔日投下はこれにて終了。
育児日記は次からまた日常に戻る予定です。

また不定期に戻りますね。

ではでは

748■■■■:2016/10/17(月) 01:10:42 ID:Gg2hQzCQ
乙ぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううッ!!

749■■■■:2016/10/17(月) 05:40:50 ID:7cbcL.qA
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 6話 :2章_1話

9月6日 (日)7時

日課の散歩も、朝食も作り終え、洗濯機を回したが、婚約者はいまだに起きない。
今日は、日曜日なのであえて起こさず、彼氏のなすが儘に任せたものの、起きる気配
もなくやむなく起こす事とする。

だけど・・いくらなんでも気が緩みすぎでしょ。
一切の金の管理と掃除・洗濯・食事の手配を私がするようになってから、明らかに
だらけている。夏休み中は、結構マメに朝食や昼食を作っていたというのに、私が
家事一切をするようになってから信じがたいほど、家事に非協力的になったことに
ショックを隠し切れない。

そもそも、仕事だって圧倒的に私のほうが多忙なはずだ。

しかも・・いくら休みだから散歩の約束も破り、7時になっても起きないとは、
(まったく・・先が思いやられるわ・・)
この調子じゃ・・いちいち爪切りひとつどこにあるかわからずメールをよこすダメ
亭主へ一直線だろう?

そりゃ当麻は普段ダメ男でも、非常時はかっこいいとは言え、ヒーロさんが
ダメ男では私の婚約者としては困る。留年なぞされたら恥としか言いようがない。

さあ 起こそう。休みだからと言ってごろごろさせるのはやめよう。
それにどさくさ紛れにいろいろしてやろう。
私は、いたずらを思いついた子供のような、表情を浮かべ当麻のベッドへ向かう。
・・ふふ・・当麻の寝顔て可愛いわね・・
無性にいたずらしたくなる。それにたまには制裁してやらないとなめられる。
・・よし・・
私はマジックでこめかみに「肉」か「幻想殺し」と書いてやろうか思い立つがやめる。
「まあ・・せいぜいキスマークかな」

よし・・私は、唇へ濃いめのルージュを塗りたくり、準備を整える。
私は耳元で囁くようにつぶやく。
「当麻おきて」
(ふふ・・よしよし起きないわね)
私は、唇をおでこへ音もなく接近させ、いっきに着地させる。
・・ぶっちゅ・・
(へへ・・約束を守らない罰よ)
さすがに気がついたのだろうか、約5秒ほどして、当麻がもぞもどと起きる。
・・目をこすりながら私の存在にギョとしたのだろうか・・
半分寝ぼけまなこでしゃべりはじめる。

「美琴か・・あ・・ごめん寝坊したか・・」
枕元の電波時計のAM7:11の表示に気がついたのか「寝坊」の事実にようやく気がつく。
私は、当麻のおびえた表情に追い打ちをかけるように、残酷なセリフを言い放つ。
「ね・・当麻・・約束違反にはそれなりの罰が必要よね」
「え?」
「左手で1Aの電撃を受けるのと、心臓に0.1Aの電撃どちらがいい?」
致死量の電流を流されることの予告に、当麻は真っ青に青ざめ諤々震え始める。
「まあ一般人なら昇天するレベルだけど、当麻なら1時間気絶で終わりかな」
「いえいえ・・上条さんは右手以外は一般人です」
よほど慌てのだろうか、ベットから飛び起き、潔い土下座を始める。
(まあこころらが潮時かな・・それに制裁済みだし)

「もう・・明日からちゃんと守るのよ。さあ朝食だからさっさと起きて」
「いつも悪いな・・」

・・・・・・・
「ご馳走様」
「お粗末さまでした」
食事を終え、食器を洗浄機にいれる。当麻は、机の上に宿題を広げ始める。
(自発的に課題をするのはいい傾向だわ。だけど・・ただ復習の宿題をするだけでは
 当麻の学力は上がらない)
「当麻・・宿題をするのはいいことだけど、まずは小テストの予習が先よ」
「へ?」
「正直な話、今の当麻は点を取って小さな成功を重ねるのが先よ」
当麻は、私の話の意図が分からないのか怪訝な顔をする。

「当麻・・自分の今の位置がわかっているわよね」
「へ?」

750■■■■:2016/10/17(月) 05:41:49 ID:7cbcL.qA
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 6話 :2章_1話

9月6日 (日)7時

日課の散歩も、朝食も作り終え、洗濯機を回したが、婚約者はいまだに起きない。
今日は、日曜日なのであえて起こさず、彼氏のなすが儘に任せたものの、起きる気配
もなくやむなく起こす事とする。

だけど・・いくらなんでも気が緩みすぎでしょ。
一切の金の管理と掃除・洗濯・食事の手配を私がするようになってから、明らかに
だらけている。夏休み中は、結構マメに朝食や昼食を作っていたというのに、私が
家事一切をするようになってから信じがたいほど、家事に非協力的になったことに
ショックを隠し切れない。

そもそも、仕事だって圧倒的に私のほうが多忙なはずだ。

しかも・・いくら休みだから散歩の約束も破り、7時になっても起きないとは、
(まったく・・先が思いやられるわ・・)
この調子じゃ・・いちいち爪切りひとつどこにあるかわからずメールをよこすダメ
亭主へ一直線だろう?

そりゃ当麻は普段ダメ男でも、非常時はかっこいいとは言え、ヒーロさんが
ダメ男では私の婚約者としては困る。留年なぞされたら恥としか言いようがない。

さあ 起こそう。休みだからと言ってごろごろさせるのはやめよう。
それにどさくさ紛れにいろいろしてやろう。
私は、いたずらを思いついた子供のような、表情を浮かべ当麻のベッドへ向かう。
・・ふふ・・当麻の寝顔て可愛いわね・・
無性にいたずらしたくなる。それにたまには制裁してやらないとなめられる。
・・よし・・
私はマジックでこめかみに「肉」か「幻想殺し」と書いてやろうか思い立つがやめる。
「まあ・・せいぜいキスマークかな」

よし・・私は、唇へ濃いめのルージュを塗りたくり、準備を整える。
私は耳元で囁くようにつぶやく。
「当麻おきて」
(ふふ・・よしよし起きないわね)
私は、唇をおでこへ音もなく接近させ、いっきに着地させる。
・・ぶっちゅ・・
(へへ・・約束を守らない罰よ)
さすがに気がついたのだろうか、約5秒ほどして、当麻がもぞもどと起きる。
・・目をこすりながら私の存在にギョとしたのだろうか・・
半分寝ぼけまなこでしゃべりはじめる。

「美琴か・・あ・・ごめん寝坊したか・・」
枕元の電波時計のAM7:11の表示に気がついたのか「寝坊」の事実にようやく気がつく。
私は、当麻のおびえた表情に追い打ちをかけるように、残酷なセリフを言い放つ。
「ね・・当麻・・約束違反にはそれなりの罰が必要よね」
「え?」
「左手で1Aの電撃を受けるのと、心臓に0.1Aの電撃どちらがいい?」
致死量の電流を流されることの予告に、当麻は真っ青に青ざめ諤々震え始める。
「まあ一般人なら昇天するレベルだけど、当麻なら1時間気絶で終わりかな」
「いえいえ・・上条さんは右手以外は一般人です」
よほど慌てのだろうか、ベットから飛び起き、潔い土下座を始める。
(まあこころらが潮時かな・・それに制裁済みだし)

「もう・・明日からちゃんと守るのよ。さあ朝食だからさっさと起きて」
「いつも悪いな・・」

・・・・・・・
「ご馳走様」
「お粗末さまでした」
食事を終え、食器を洗浄機にいれる。当麻は、机の上に宿題を広げ始める。
(自発的に課題をするのはいい傾向だわ。だけど・・ただ復習の宿題をするだけでは
 当麻の学力は上がらない)
「当麻・・宿題をするのはいいことだけど、まずは小テストの予習が先よ」
「へ?」
「正直な話、今の当麻は点を取って小さな成功を重ねるのが先よ」
当麻は、私の話の意図が分からないのか怪訝な顔をする。

「当麻・・自分の今の位置がわかっているわよね」
「へ?」

751■■■■:2016/10/17(月) 05:46:42 ID:7cbcL.qA
「テストは赤点すれすれの低空飛行、人助けに終われ課題は時間切れで提出せず
その穴埋めで土日は補習。でテスト勉強はできずまた赤点だったわよね」
「ああ・・美琴に会うまではそうだ」 
「その不幸の連鎖を私が打ち切ったわけだけど、まだ当麻の学力はいつ墜落してもおかしくない」
「悔しいけどそうだな。」
「だから。課題なんて後でいいわ。今は小テスト対策をしよう」
「課題は・・?」
「私が代わりにやるから、その空いた時間で、当麻はAIソフトと一緒に小テスト
対策をして」
「いやそこまでは・・美琴に悪いよ」
「まあまあ・・学習支援AIソフトの再現実験だと思ってくれればいいわよ」
「ねえ、そもそも今まで当麻てまともに課題をやっていた?」

基本、はったりはかますが、根は正直な当麻は見るからに狼狽し始める。
「う・・それは」
「できずに補習三昧だったわよね。」
「ハイ・・お嬢様のおっしゃる通りです。」
「まあ私にまかせなさい。絶対当麻のためになる」
私は当麻から課題を奪い、さっさと解答を記入し始める。当麻が驚愕の目を私に向ける。
(何驚いているの?こんな簡単な問題日本語が読めば解けるじゃない・・)
10分ほどで記入し終え、当麻へ渡す。
当麻は、能力を見た時以上に私を化け物でも見る目で見る。
「なんでこんなに早いの?」
「こんな問題読めば即回答できるわよ。基本事項ばっかりじゃない。英語の文法とか
発音記号とか・。中学生レベルよ。数学のN次関数なんて公式表の転記レベルよ」
「はっきり言ってこんな問題をいくら解いても時間のむだよ」

「これが・・格差か・・。」
「だから当麻は現時点では勉強なんて飾りでいいわよ。今は点数だけとって辻褄
あわせればそれでいい」
「斬新な考えだな・・。」
「まあそれより面白いのを見せてあげる」
私は、自分の解いた解答用紙をスキャナーに読み込ませる。
「さあPC画面をご覧あれ・・」
画面に正答と回答、解説まで表示される。
「でプリント・アウトと・・」
ウイン・・プリンターから、採点結果が出力される。ご丁寧に解答集と解説までつきで。
「はいこれが解答集になるわね」
「へ・・?PCのAIが採点したのか・・」
「現在開発中の学習支援ソフトよ。」
「はあ・・もうAIに凡人は太刀打ちできねえな」

「ええ。でも時代の趨勢だからしょうがないわよ」
「それでね、まだ続きがあるのよ。当麻の授業をね、全部ある方法で入力しているのよ」
「へ?・・まさか・・ナノデバイス?」
「ええ。そのまさか。だから当麻と一緒に授業を受けていることになる」
「はあ?」
「そうすると・・小テストも想定問題集まで作成してくれるのよ」
「そりゃすごいな・・。まさか授業のテキストデータとか解説集まで作成するのか?」
「ええ。これを、AIの自動音声システムで読み上げてもくれる」
「至れり尽くせりだな。販売できるレベルじゃない・・」
「ええ・・だから被験者になってくれる?言われたとおりやれば満点とれるから」
「わかった。」
「じゃ・・悪い今日は、野暮用があるから外出するわ。帰りは18時ね。昼は、勝手にたべて」
「そうか・・」
「あ・・そうそう、当麻の行動は全部監視しているからちゃんと勉強するのよ。」
「へーい」
私はそそくさと、外出準備を整え、あまり会いたくもないが、最近は日常的に
会合しているある人物の元へテレポートで向かう。

・・・・・・・
10時 窓のないビル

私は持参した椅子に座り、水槽の男が口を開くのを待つ。アレイスターの前に
椅子を持参して座ったのは私くらいだろう。対等になりたければ姿勢から私は
そう理解する。

「おはよう、御坂君」
「前置きはいいわ。要件」
「は・・君くらいだよ。私の前で日常のようにタメ口言うのは。」

752■■■■:2016/10/17(月) 05:49:46 ID:7cbcL.qA
「要件」
「まったく常盤台首席卒業のくせに・・とんだお嬢様だな」
「要件は?」
そろそろ飽きてきたのだろか、アレイスターがおもむろにしゃべり始める。
「例の件、そろそろ準備ができたかと思うが?」

私は出来るだけ表情を隠し、心の中で毒つく。
(やっぱりそうか・・さっさと言え)
「まだ試運転中よ。契約では実施は9月中だったわよ」
「事情が変わった。明後日までに準備してほしい」
私は少々声を荒げるふりをする。ただ・・不良品と言われ責任だけを押しつけられる
のはごめんだ。契約は契約。できないものはできない。はっきり言わないと部下へ
責任だけ押し付けるのが欧米流である以上なおさらだ。
「成果は保証できない。仮に所定の性能が出せない場合でも責任は負わない」

何か思いついたのだろうか急にアレイスターが表情を変える。

「君の先延ばしに付き合うつもりはない。それに・・」
「これは君にとってチャンスではないかね」

(なるほど、こう兎は死して、走兎は煮られるか)
私は、いたずらっ子のような表情を作る。

「なるほど、取引というわけね。」
私は、脳裏に目的の為に手段を択ばない科学者を浮かべる。
「さすがに理解が早くて助かる。」
「気が変わったわ。今日中に所定の座標へ送るわよ。準備はできているわ」
私は、事態が激変したことを悟り、そそくさとその場を立ち去る。
・・・・・・・・・・・
12時

常盤台中学
談話室 (食蜂派閥の本拠)

「食蜂久しぶり」
「御坂さん、もう・・ぼけたア?先週の婚約式で会ったじゃない」
「わかっているわよ。ごめん司会は食蜂しか頼れる人がいなかった」
私は、付き合いはさほど長くないが、食蜂が本質的におだてに弱い性格なのは知って
いたので頼って見せる。
「まあいいわ。上条さんにも会えたし。で今日は何の用?」
「木原唯一を知っている?」
「知っているも何も、アレイスターの番犬のお弟子さんでしょ」
「ちょっとアイツとやばいことになりそうなのよ」

私はカバンからUBSメモリーを差出し、ある研究者の悪行一式を
食蜂に渡す。この科学者を破滅にさせるに足る証拠の数々、アレイスターの
側近で暗部を裏で操っていたから見逃されていた悪行。

アレイスターはどこかで本質的に危険人物と木原唯一を認識していたかもしれない。
だが、ここ数年学園都市の危険極まらない実験を主導し、暗部を操り、兵器開発を
牛耳っていた彼女。だが代わりがないという理由ですべて多めに見られてきた。
が、私の成長で状況が変わり、不要になった彼女を切り捨てる。そんなありふれた話。
だが、また私はリストラ役として、木原唯一およびその一派を訴追し、学園都市から
追放しなければならない。

「この証拠一式で唯一を追い込んで」

私の意図とアレイスターの本心を察知したのか食蜂が笑い始める。
「なるほどオ。こう兎死して良狗煮られるわけエ?」
私は、木原唯一のマル秘計画を食蜂へ見せる。

「アイツは、危険な妄想狂だと思うわ。こんなことを企んでいるんだから」
私は木原唯一のマル秘の計画書を食蜂へ見せる。
「エレメント?」
「タイミングはわからないけど、この喜色悪い生物のような奴で一気に学園都市を
制圧するつもりのようよ」
「なる〜ほど、だけど、これは計画にすぎないじゃない。計画を着手しなきゃ逮捕は
できないでしょ風紀副委員長殿?」
食蜂は、性格もあわず、友人になるつもりもないが、ビジネスパートナーとしては
信用に足るやつだと思っている。友人の少ない私にとっては対等な立場で会話の
できる貴重な存在。そのアドバイスに耳は傾ける。

753■■■■:2016/10/17(月) 06:08:09 ID:7cbcL.qA
「その妄想を膨らまして行使の瞬間に刈り取るのが私の責務よ。こんな
つまんない計画で犠牲者を出すわけにいかないわ」
「御坂さん、変わったわね。」
「守るものができると人は変わるのよ。後は工作頼むわ」

食蜂は私の帰り支度に気が付いたのだろうか
「御坂さん、上条さんを大事にしてね、万が一貴方が上条さんを、見捨てたら私は
貴方を絶対許さない」
「ええ。この命にかえて」

・・・・・・・・・・
16時 研究所

「浜面さん、準備できた?」
「OKです。」
私は、スキルアウト壊滅作戦時に回収した、浜面に木原印でない御坂美琴Version
のA.A.Aのパイロットをお願いしている。
自分がテストパイロットをやらなかった理由は、彼がメカの達人であることと、無
能力者である彼のほうが「魔術」の副作用が少ないだろうという私の判断だ。

「起動開始A.Iオートモード」
最高の電撃使いの自分なら脳波ですべて制御可能だが、無能力者浜面にそこまでは
無理だ。私の思考をコピーしたAIがナビと演算補助をする。

私の声に似せたアルトボイスの機械音声が試験場に響きわたる。
「極微小特異点超荷電粒子砲チャージ完了1分前」

A.A.Aの砲門が、レベル6になった私のAIM拡散力場が生成した電力が、アレイ
スターの術式により練り上げられ莫大なエネルギーがチャージされる。

それはさらにテレズマと呼ばれる天使の力へ、練りこまれ恒星系を丸々破壊
できるほどの力に錬成される。

「座標指定完了、照準10ナノ秒訂正」
「発射10秒前」
「5.4.3.2.1 ファイヤー」

莫大な電力とA.A.Aがかき集めたAIM拡散力場により発生した1000京電子ボルト
に加速された無数の陽子と陽子が1点で衝突し、超ひも理論による
マイクロ・ブラックホールが生成される。

原子核を結合し、あらゆる力で最強の核力さえ無視し、未元物質を含むあらゆる
物質を貫通するそれは、地球でさえやすやす貫通し、魔神の世界へ突き刺さる。

結界を構成する力場が粉砕され、通常世界と反応を起こし、崩壊が始まる。
一定時間後、魔神は弱体化され、そのうち無力化される。

人類を隠然と裏から支配した魔神は永住の地を失い、この世に突き落とされた。
ある意味私は歴史の証言者になったのかもしれない。A.Iオートモードの無能力者
が操縦するただの機械が、いくらOSにアレイスターの術式により私の能力を増幅
したものとは言え、魔術の最高峰、魔神を地上へ引き釣り下したのだから。

その最終的な戦果の確認は数日かかるが、私は少なくともアレイスターの契約は
履行し、A.A.Aプロジェクトは木原印ではなく、私の謹製品が正式採用となる。

木原唯一が私に敵対するかどうか不明だが、その覚悟はする必要はあるだろう。
アレイスターは露骨に、私と木原唯一を敵対させようとしている。
A.A.Aとファイブオーバーが完成しプラン遂行に不要になった、木原唯一を私に
切り捨てさせ、木原の憎悪を私に集中させ私を葬るつもりかもしれない。
(さあて どうする?)
先延ばしも終わり、いよいよアレイスターのプランと対峙する日も遠くなさそうだ。
(休暇は終わりか・・)
私は、気を引き締め、任務を遂行した浜面へ視線へ移す。

「浜面さん。お疲れ様。異常はない?」

私は、浜面の肢体を見るが、鼻血以外の異常は発見できない。
どうやらアレイスターの術式使用による弊害も生体電流操作による防壁でほぼカット
できたようだ。
「問題なし。OKです」
「しばらくメディカル・チェックのために検査入院して」
「ラジャー」

754■■■■:2016/10/17(月) 06:10:46 ID:7cbcL.qA
私は、不具合が発生せず、胸をなでおろす。後は地上へ墜落した魔神達の動向
と、木原唯一が問題だが、そんなものはA.A.Aが完成した今はささいな問題
だろう。と言い聞かせる。それに地上へ落ちた彼らの動向ならAIで予測がつく。
・・・・・・・・
18 時 自宅

私は、充実感と若干の疲労感に包まれて自宅へ到着する。

研究者的に自分のプランが採用されるのはそもそもうれしいものだ。
たとえそれが他の研究者の嫉妬と羨望を受けるものでも。

「ただいま」
「お帰り。今日はどちらへ?」
「窓のないビルと常盤台と研究所よ」

私は、食卓から、デミグラスソースの香りを確認し、食欲が刺激される。
肉の焼けたにおいと玉ねぎの匂いからハンバーグステーキだろうと
当たりをつける。
(へ・・手間かけたじゃん)
食卓へ座り、当麻が手際よく配膳してくれるのを待つ。
準備が終わり、食べ始める。甘味と酸味の絶妙なブレンドでさらに
食欲が刺激される。
付け合わせのポテトと人参、クラムチャウダーとコーヒーを飲み終え、食事を
食べ終える。当麻が学習支援ソフトの出来に感嘆した話を終え、おもむろに
アレイスターの話を始める。

「でアレイスターは何を言った?」
「新規プロジェクトで私のプランを採用したわ」
「それはよかったじゃん」
だが、私はこれから切り捨てられるであろう木原唯一の顔を思い浮かべ
表情を変える。

「まあね。だけど・・落選した研究者は私を恨むでしょうね」
「それに、そのプロジェックトで力を失うものもでるでしょうね」
「へ?」
「私の本業は兵器開発、高性能兵器は不幸も作り出すわよ。だけど・・」

私の言葉は当麻の言葉で遮られる。
「私がしなくてもどうせほかのだれかが開発する。そして学園都市が優位性を
失えば魔術に攻撃される」

「さすが分かっているじゃない。そう。そのとおりよ」
「だけど・・もういいんじゃないか?」
「え?」
「美琴の考え方は、リアリストだと思うよ。人類の歴史とは、戦争の歴史だと
確かに教科書は書いている。」
「だから兵器の開発競争に終わりはない。そして・・その先に学園都市もある」
「ええそうね。」
「だけど、それを突き詰めていけば、何が残るんだろうな?」
私は、いつにもなくまじめな当麻の表情に見惚れる。
そして当麻が何を言いたいのか大凡は理解する。

「いや・・一遍に変えるなんてそんなことはできない」
「だけど、美琴が言ったとおり、AIをただ兵器として使うのは、もったいない」
「美琴なら、今の学園都市のやり方だけでない、よりましな方法を、提示できる
力があると俺は思う。」
「・・当麻・・」
私は表情を切り替え、満面の笑みを浮かべる。普段は鈍感なくせに、私が甘えたい時
に適切なアドバイスができるのが彼のすごいところだ。
「らしくもなく、ちょっと沈み込んでいた。でも当麻心の枷が取れた。ありがとう」
「これからいろいろ起こると思う。」
「だけど、私は当麻と一緒ならどんな苦労も耐えていける。だから・・」
私は、当麻を見つめ、顔を赤らめる。
「死ぬときは一緒、だけど共に生きましょう。」
・・ぶちゅ・・・
「当麻、今日はとてもさみしいわ。だから慰めてね」
「ああ、今までで一番な」
「ふふ・・寝させないわよ」

続く

755■■■■:2016/10/17(月) 06:18:32 ID:7cbcL.qA
以上 とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 6話 :2章_1話
の投稿を終わります。

756■■■■:2016/10/17(月) 06:53:48 ID:7cbcL.qA
749と750が連投になっていました。
すいません。

757■■■■:2016/10/18(火) 22:42:25 ID:HIGWI6TM
乙ですぞ

758■■■■:2016/10/22(土) 13:03:21 ID:ZYdgaXbU
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 7話: 2章―②

9月7日(月)16時  風紀委員本部 副委員長室
本来なら下校デートの時間だが、今日珍客がいるので、お湯を沸かしながら待つ。
外に出るのが、大好きな性分だが、一応は管理職なので、莫大な事務処理
をこなす必要もある。ほぼすべては電子決済だが、一部事件調書などの紙書類が
あり、サインを記入する。

事務作業は、退屈極まりないと思っていたが、不謹慎ながら、各学校の恥部にあたる
事件調書を見るのはなかなか興味深く、読み漁ってしまう。刑事捜査や探偵物が外の
テレビドラマで人気を集める理由の一旦がよくわかる。私は、訪問者のベルの音に現
実へ戻され、慌てて意識を取り戻す。モニターで確認し、入室を許可する。

「大脳生理学者 木山先生ですね久しぶりですね」
「釈放の件、ありがとう。」
私は、木山春生を、来客用ソファーへ案内する。紅茶を来客用のマイセンに
入れテーブルにおく。

「早速ですが、情報提供ありがとうございます」
私は提供を受けたUSBメモリーをPCで再生させながら、謝意を伝える。
「あの子たちの無念が晴らせるのなら、なんでもする」
私は、暴走能力実験と体晶を悪用したポルタガイスト事件を思い出し、木山先生の
無念を思い起こす。実際には難しい話なのだ。極限まで、先端研究を追求するこの
街では成果さえ上がれば少々の無理は許容される。

そんなこの街で、極限まで先端を追求し、外部の基準では違法な実験を繰り返した
木原唯一を犯罪者として拘束するのは、困難な仕事だ。
・・だが・・不可能ではない。・・
「方法を今は言えませんが、かなり状況は変わりつつあります」
「私は、君にぶちのめされ、救われた。だから・・君を信じるよ」

私は、熱い紅茶を一気に飲み干し、立ち上がって握手を求める。
「先生の無念もそう遠くなく晴れる日が来ますよ」
私は、木山先生の手を握り握手をする。
(さあ・・行動開始よ)
私が、学園都市の表の顔とするならば、裏で実験を差配し、学園都市の闇を操って
きた木原唯一は、ある意味裏の顔といえる。彼女の存在はある意味学園都市の必要悪
という存在だった、今までは。

だが、庇護者を失った彼女はどうなるのだろう?他人事ながら心配になる。
正直な話、向こうがちょっかいを出さなければ、私は共存するのは全然構わない。
現状公表していないがレベル6になり、アレイスターとの直接交渉権を確保して
いる私。別に焦る必要もない。それに私は無駄な争いはしたくない。

だが、人間正気を失うと、枯れ尾花が幽霊に見えるのだろうか?
彼女は勝手に自滅の道を選んでいる。
(同情なんかするのは失礼よね。研究者としては大先輩にあたる彼女へ)
だから私は彼女を全力で叩き潰す。
・・・・・・・・・・・

19時 自宅
天気予報で19時ちょうどから雷雨の予定だったので、急いで自宅へもどる。
エントランスで指紋認証と暗証番号を押し終えたころ、滝のような豪雨が降り始め
危うく難を逃れる。日中36度まで上がっていた気温も急降下し、涼気が辺りをつつ
む。窓を雨が打ち付ける音が結構激しい。

「美琴 おかえり 濡れなかったか?」
「ふふ・・危なかったわ。なんとかね無事よ」
「それはよかった」
「今日風紀委員は非番だったのよね。小テストどうだった?」
当麻が誇らしげに、英語と数学の小テストを見せびらかす。
「へへ。聞いて驚くな、満点だよ・・」
私は、不幸がさく裂しなかったことに胸をなでおろす。あのソフトのガイダンスどおり
問題をこなせば確実に満点がとれるはずなのだから。
「すごいじゃない。おめでとう」
「まあ・・とはいえ、たかだか小テストだけど、先生にびっくりされた
それと、課題を提出したことも驚かれた。」
「ふふ・・小さな成功を積み重ねるには良いことだわ。だけど慢心はしないでね」
「ああ・・まだ離陸したばかりなのは良くわかっている 」

食卓から漂ってくる匂いが食欲を誘う。
「あらニンニクのいい匂いね。へえ・・生姜焼きね・・」

759■■■■:2016/10/22(土) 13:06:25 ID:ZYdgaXbU
「今日も暑かったからな。まあ古典的なスタミナ料理ですよ」

食卓の上に、ご飯とネギと豆腐の入った味噌汁、生姜焼きと付け合わせのキャベツと
人参、キムチと、オニオンスープ
(美味しそう・・)
「悪いわね、こんなに手間かけさせちゃって」
「満点なんて久しぶりなんで、感謝してますよ」
「ありがとう。じゃ・・早速」
「いただきます」
私は着席して、食べ始める。生姜焼きね・・何年振りだろう。
(B級グルメの定番みたいなものね。)
・・だけど、食べ始めるとやみつきになるのよね・・
私はいつの間にかバクついて、10分少々で食べ終えた。

「お肉が美味しかったわ?ブランド豚?」
「お粗末様、普通のイベリコ豚だけどな、近くのスーパで特売だった」
「へえ・・ブランド豚と区別がつかなかったわ」

私は、手早く食器を洗浄機に入れ、マイセンを食器棚から出し、紅茶を入れる。
「じゃ・・飲んで」
「ああ」
私は、一仕事を成し遂げ誇らしげな当麻を、見つめる。
「AIはすごいわね。私が教えるより全然いいじゃない」
「ああ、でも開発者の美琴はすごいと思うよ。本当、勉強しないダメな奴の
心理をよく読んで作っている」
「まあ・・当麻を見ていれば、ね・・」
「はあ?まあそれもそうだな」

美琴は、いつものように手を握り、体を寄せて甘えてくる。外では頼れるお姉さまを
意識的に演じているせいもあるのだろうか、素顔の美琴はその反動もあり、甘えん坊
ぶりを隠さない。
「ねえ、今日は久々に早く帰ったしいろいろしたいなあ」
「いろいろ?」
今日は何か嫌な事で会ったのだろう。いつにもなく甘えてくる。スカートをまくり
太ももを見せつけ触るように、妙なテンションで燥ぎまくる。付き合いは短いが
素顔の美琴は、自省的で、人の痛みを自分の事として感じる感性の持ち主でもある。
その一方で、職場ではリストラ役を顔色一つ変えず、完璧に演じ切るんだから。
そのプレッシャーは小さくはないだろう。
(そうか・・慰めてもらいたいんだな)
(美琴の悩みは・・木原唯一か・・だったら)

「なあ・・木原唯一と仲良くなる方法はねえのか?」
私は、苦笑いを浮かべ当麻の顔をまじまじと見る
「美琴と利害が衝突しているのは確かにわかるし」
「それに、先方が美琴を敵視とか嫉妬しているのも分かる」
「だけど・・それをなんとかできるのが美琴のよさじゃないか?」
美琴は急に表情が引き締まり、外向きの顔に代わる。器用にも微笑みまで
浮かべて。

「そうしたいけど、先方が私を抹殺したいと思っている以上なかなか難しいわ」
「現実的に可能性はないだろう?」
「いや・・アイツは私の弱みを知っているから侮れないわ」
「弱み?」

「アイツはね、私と違って、任務の遂行にためらいがない、ねじが吹っ飛んだ
人間よ。手段を択ばない。それに周りの人間に手を出すのよ。しかもアイツは
光学迷彩や心理を操るすべを持っている。ある意味最強の敵よ。私が人を殺せない
性格であることを明確についてくる。」

美琴は、右手を突き出し、能力を使いたい雰囲気を醸し出し始める。
「まあ・・正直な話・・アイツを今この瞬間に殺すことはできるけどね」
「居場所はわかっているし、テレポートはミリ単位でできる。マイクロ波を
ミリ単位で飛ばす事もできる。携帯電話を使用中に爆発させることもできる。」
「でもそれを私がやっちゃおしまいじゃない」
美琴は、一瞬苦々しい表情を浮かべるが、すぐに表情を隠し笑顔に変える。

「まあ、正攻法で行きましょう。暗部も潰したことだし」
「ああそうだな」
「アイツが、私の大事な人に手を出そうとするならその時には叩きつぶすだけよ」

「ごめん、じゃお風呂入ろう」
「ああ」

760■■■■:2016/10/22(土) 13:10:10 ID:ZYdgaXbU
俺は美琴と手をつなぎ浴室へ向かう。この年で誰もが羨む婚約者を持ち、高級
マンションでのカップル生活。低空飛行だった、学力は離陸に成功し、風紀委員活動の
おかげで無意味な能力開発から解放された。間違いなく俺の人生は、転機を迎えた。
俺は今の状況を幸福だと捉えている。
(先の事は考えても仕方ないか)
浴室で、お互いの体の隅々まで洗う。浴室でお互いの温もりを感じ、お互いの
呼吸を感じる。美琴の華奢な体に負わされた重すぎるほど重い荷物。
そのギャップの大きさに、俺は切なさと愛しさを感じる。

日常的に荒事をこなしているとは思えない、シミ一つない、無垢な体。
唯一少し割れた腹筋と、弾力のある太ももに荒事の片鱗を見せるだけだ。
その弾力がある太ももを触るのが心地よく、美琴もなすがままにされている。

30分ほどの濃密な肉体接触で、身も心も十分にスタンバイが完了し、ベッドへ
向かう。その前に、スポーツドリンク500cc缶を2つ冷蔵庫から取り出し、2人で
飲み干す。美琴がLEDライトを消し、暖色系の淡い間接照明に切り替える。
柔らかな照明が、多少幼さは残すものの、端正で整った水準を遥かに上回る美琴の
容姿を照らす。
「じゃ・・そろそろいい?」
「ああ」
「今日は、ゆっくりしようね。」
「え。。。」
「こうゆうことは、自分だけ楽しんだじゃダメ。そのたどり着く過程と、終わった後が
大事よ。」
「ええ善処いたしますが、もう・・パンパンです」
「2分じゃだめよ。ちゃんともたせてね」
・・・・・・・・・・・・
9月8日(火) 午前5時

昨晩の寒冷前線による雷雨が嘘のように、晴れ上がり、初秋の冷気が辺りをつつ
む。昨日は忙しくてサボった登下校デートの代償のように、私は当麻と手を繋ぎ
肩を寄せ合い歩く。
(今度こそ3日坊主にはさせないわ)
私は、微笑みながら当麻へ謝意を伝える。

「約束を守ってくれてありがとう」
当麻は私の表情から私が何を伝えたいのか理解したのか、私の聴きたい言葉を発する。
「ああ。今度は3日坊主にしない」
「嬉しいわね。だけど5時が明るいのもせいぜい今月いっぱいね」
「そうだな。そしてすぐに冬が来るか」
「私がオバサンになっても愛してくれる?」
「森高千里か・・まだ早いよ。それに美鈴さんを見る限り、美琴がオバさんになって
も全然問題ないぞ」

私は、婚約式の4次会で歌った歌の歌詞を思い出し、あるいやな想像をする。今後
結婚してもこの旗男に振り回される危惧を。
「ありがとう。でも何かそれ胸小さいて暗に言われているみたいね」
「なわけねえだろう。美琴。美琴はすべてが特別だよ。だけどデリカシーなくて御免
な。でも・・まだ胸の事を気にしていたのか?」
「気にしていないといえば嘘になる。」
「だけど、それで私の価値が損なわれると思うほど愚かではないわよ」

「そうか・・美琴らしいな」
「まあ少しやせ我慢もあるけど、矜持て大事でしょ。私のイメージも大事にしたいの
よ。外ではね」

約20分ほどの散策を終え、自宅マンション前に到着する。

私はエプロンを装備し、朝食の支度を始め、当麻は教材を薄いカバンへ詰める。
2人で手際よく一連の作業を終え、私はフランス・パンにローストビーフと程よい
サイズに切り分けられたトマトをスライスチーズとレタスで巻いたサンドを食卓へ
飾る。そしてコーンスープの甘い香りと、サイフォンから漂うコーヒーの香りが
食欲をそそる。
(やっぱり朝はしっかり食べないとね)
当麻が目を輝かせて着席、私にねぎらいの言葉をかけてくる

「悪いね。美琴手間かけちゃって」
「ありがとう。」
「美琴は、手際いいな。短時間にこんな美味しそうなものを作ってくれて」
「ある程度前の晩に軽く準備するからね。でもちゃんと手間をかけないでいるわよ」
「いやいや立派なものです。」
「ありがとう。でも・冷めるから早く食べて」

761■■■■:2016/10/22(土) 13:14:05 ID:ZYdgaXbU
当麻は5分ほどで食べ終え、食器を洗浄機へ運ぶ。

朝の支度を終え、今日の日程を確認する。私は、寝る前に当麻に話した今日の
メインイベントを説明する。正直自分が何とかしたいが、その同時刻に風紀委員会の
幹部会ではどうもならない。
(まあ・・しょうがないわ。でも・・やきもきしそうだわ)
正直、会議なんて形式だが、自分が副委員長では抜けようもない。

「昨日話した件、よろしくお願いね」
「ああ・・」
「正直もどかしいのよね。AI捜査支援ソフトで何が起こるかだいたい分かって
いるのに、それが発生する直後にならないと動けない」
「そうだな」
「それに、今回は私が不在」
「ああ、風紀委員会本部で会議だったな」

「欠席するわけにもいかないし」
「大丈夫なんとかするよ」
「頼もしいわ。5分なんとかして。かならず応援を手配するから」
「ああわかった」
「さ・・そろそろ時間よ。行きましょ」
私と当麻は、オートロックのマンションを出て学校へ向かう。
・・・・・・・・・
9月8日 午後4時
自宅マンション前 90m地点 歩道上

そろそろ時間だな。
俺は時計を確認する。き美琴になるべく時計は見るなと言われたが気なってしょう
がない。そもそも自分が襲われると分かっていて、無心でいるなんて俺には
できない。襲撃予定時刻5秒前に俺はなるべく不自然にならないように深呼吸をする。

(さあ そろそろ)
5、4、3,2,1
時間に合わせ咄嗟に身をかわす、さっきまでに俺がいた場所に、銃弾のようなものが
突き刺さる。
(アブねえなあ)
攻撃されることがなければ絶対に避けることなんてできなかった。隣の屋上から
銃で攻撃されると分かっていなければ絶対避けれるはずもない。

俺は、美琴との打ち合わせどおり、全速力で現場を回避する。引き続いて催涙弾もま
き散らされるがそれも回避する。
(はあ・・美琴がいれば即座になぎ倒すんだけどな・・)

俺の右手は異能には絶対的な効力を有するが、ライフル銃や拳銃には対抗力を有し
ない。ライフル銃と催涙ガスの攻勢の前には逃げ回る以外に、道がない。
約束の5分が何十分にも感じる。広い道では追いつかれるので、路地を駆け抜け、ご
み箱を倒し、自転車をひっくり返し、走り抜ける。だが・・逃走から3分ついに前後
を囲まれ、万事急す。

男達が俺に狙いをつけ腹に複数照準があたる。もう逃げたところで回避不能だ。
(くそ・・もうダメか・・)
・・後1分30秒逃げ切れば・・
だけど、結局逃げ切れなかった。俺は時間稼ぎを試みる。本当に狙いは美琴のはず
なのだ。俺は美琴を釣る餌のはず。ならばすぐに殺しはしないはず。
「な・・どうせ、すぐ美琴にばれる。・・なら無駄じゃねえか・・」
男達が、囲む中つかつかと、女が無言で突進してくる。女は、冷酷に俺に死刑宣告
を発する。
「時間がない、撃て」
俺はそれでも諦めきれず、言葉による無駄な抵抗を続ける。
「オイ」
だが、女は俺の時間稼ぎには何らの反応を示さず、作業のように命令する。
「問答無用、発砲」
だが、その命令は実施されることはなかった。突然催涙ガスがまかれ、同時に男達
は、頭を抱えて苦しみはじめる。十数人の黒ずくめの男達は全員うずくまる。
(間に合ったのか・・?)
俺もばらまかれた大量の催涙ガスで目がくらむ。
少し遅れて数十人のアンチスキルが乱入し、黒づくめの男達が一挙に検挙される。
そして、美琴の言うとおりちょうど5分ですべてが完了し、事態は収束を始める。
(はあこれで終わりか・・)
だが科学の尖った先兵は、美琴の予想どおり簡単にはくたばらない。

リクルートスーツの女はなりふり構わず、突進する。複数のアンチスキルを強引に

762■■■■:2016/10/22(土) 13:18:57 ID:ZYdgaXbU
なぎ倒し、アンチスキルもその突進力を抑えることができない。まるで数十トンの
モンスタートラックが突っ込んだような圧迫感を感じる。俺は尋常ならざるパワー
を感じ、バックステップでかわすが、ぐんぐん距離を詰める。俺は、なんとか躱し
続けるが、執拗な攻勢でついに態勢を崩され、つまずいてしまう。

そのすきに、リクルートスーツの女は、いっきに間合いを詰め、俺を追い詰める。

ついに腕を掴まれ、羽交い絞めにされる。ただの女性とは思えない、まるでレベル
4の肉体強化系の尋常ならざるパワーで俺を締め上げる。おそらく高度な、駆動鎧の
駆動機構を人体へ応用し、圧倒的なパワーを可能にしているのだろう。
駒場利徳も使っていたが、其練度精度は遥かに上だ。科学を極めた女は、そんじょ
そこらの能力者では太刀打ちできない力を発揮する。
(くっそ・・なんてパワーだ。このままでは背骨を折られる)
「さあ・・上条・・御坂美琴を葬る前にテメエの首をもぐ」
「ぐ・・テメエが美琴を葬る?」
「はあ・・それは無理だろうな」

女は、無関心を決め込むが、少し動揺し始める。その瞬間女の駆動部分の関節が軋み
はじめ、女は、苦痛に顔をしかめる。

俺を締め上げる力が弱まったのを確認し態勢をよじり、なんとか拘束を逃れる。
・・ハア・・ハア・・
「ハア・・バーカ・・木原唯一・・テメエの行動は全部読まれているだよ」
「くそ・・関節がいうことを気かねえ・・テメエ何をした?」
木原唯一は、激痛に顔を顰め、もんどりうつ。

俺は学生服から、小型の装置を取り出す。発信機のようなマイクロ波発射装置
皮膚を貫通しある特定の物質のみを効率的に加熱する装置。
「テメエがやりそうな事はバレバレなんだよ。だから・・対抗措置を確保している
んだよ」

「くそ・・・。特定物質を効率的に加熱するマイクロ波か・・どうせテメエの知恵じゃねえだろう」
「ああ・・こんな知識があるのは、学園都市でも美琴かテメエくらいだろう」
「けえ・・御坂美琴・・忌々しいクソガキが。正義の味方面で世間知らずのふりを
しながら、アレイスターに取り入る、計算高い女か・・」
「だがな・・上条・・私が負けたわけじゃねえ。まだ・・」
俺は、唯一へ聞こえるように大きな声で溜息をつく。

「A.A.Aならもうテメエは使えねえよ」
「はあ?・・」
「A.A.Aは脳波制御だろう?やってみ」
「え・・」
「テメエのA.A.Aはもう全部美琴にハッキングされているんだよ。もう手遅れだ」
俺は、スマホの美琴からのメールを確認し、言葉を続ける。
「うそ・・そんな・・」
「テメエが手配した猟犬部隊も全部拘束済みだ」
「諦めろ。もうテメエは終わりだ」

「テメエが、学園都市のために、危ない事に手を染め、人間を捨て、暗部や
キタネエ実験を主導したことは全部美琴から聞いている。糞たれな実験で
置き去りや、犯罪者を使い、非道な実験を行ったことも、ただ尊敬する
脳幹先生のためだったことも」
「だが・・今のテメエはなんだ、ただの逆恨みじゃねえか」
発条包帯の異常加熱で関節が焼かれ激痛に打ちひしがれていた木原唯一の
顔が激情でゆがむ。

「くそ・・、上条・・いままで散々利用されて捨てられる気持ちがわかるか・・」
「知らねえうちに、糞みたいな力を偶然得た女に、全部奪われる理不尽がテメエに
わかるか」
木原唯一は、うめきような 不気味な声で意味不明な言葉をつぶやき始める。
「オイ・・それ以上美琴を侮辱するな。テメエが何を奪われたて言うんだ」
「そもそもテメエが何を奪われたんだ?テメエは同じ顔のクローンを殺された
のか?テメエは自分の力が世界をいつぶっ壊すかおびえながら暮らしたのか?
テメエの悩みなんぞくだらねえだよ。そんなテメエが美琴を逆恨みするのなら
テメエの逆恨みごと全部ぶっ飛ばしてやる。ハア食いしばれ糞女・・」
‥バッキ・・
木原唯一は数メートル吹っ飛び、気絶する。
「なんとか終わったようだな」
だが、俺もすでに限界だった、限界を超えた筋肉の過剰使用がたたり
俺もその場に倒れこむ。

763■■■■:2016/10/22(土) 13:20:48 ID:ZYdgaXbU
・・・・・・
19時 カエル顔の医師の病院

「当麻起きた?」
「ああ美琴か、俺は気絶したのか?」
「ええ、2時間30分ほどね。発条包帯の駆動鎧のパワーで肉離れと脚が剥離骨折、目に見えないけど結構ダメージを受けたみたい。骨折の縫合は終わったから、今日
1晩入院すれば退院できるわよ。」
「ごめんね。アンチスキルの手配が遅くなって」

「いや・・5分が長かった。逃げ切れなかった俺の方がすまん」
「で・木原唯一はどうした?」
「とりあえず、仲良く同じ病院よ。隣の病室にいるわ。あっちは結構かかると思うわ。
マイクロ波で発条包帯が約1000度に加熱したんだもん、脚はボロボロだわ」
美琴は、少々疲れたような表情を見せる。俺が寝ている間に、俺には理解できない
交渉事でもしていたのだろうか。だがその表情はいつも快活な表情に置き換わる。

「今日は本当、迷惑かけたわね」
「気にしなくてもいいよ。美琴がいろいろ手配してくれなければ、俺は死んでいた。」
「当麻・・だけど私のせいよ。アイツがアンタをついでに殺そうとしたのは」

俺は、美琴をみつめ正面から美琴の悩みに向き合う。
「美琴、結局この右手がある限り俺は、普通には生きられない。」
「だったら、同じ悩みを持つ美琴とともに手を携えておれは生きる。」
美琴は俺の顔を食い入るようにみつめる。
「当麻、ありがとう。元気でたわ。そうね。」
「木原唯一の問題なんか氷山の一角だわ。彼女は私を目の敵にしてぶつかってきた。
だけど、研究者は多かれ少なかれ私や能力者に実験動物という感覚を持っている。
だから、ことあるごとにその負の感情と戦わなければ、先へ進むことができない」

「美琴・・・」
「だから、当麻に一緒に壁にぶつかりながら、挫折しながらでも一歩一歩生きていこう」
「ああそうだな」
私は、当麻の口をふさぎ、軽く接吻をする。
(きっと忙しくなるだから当麻・・助けてね。お願いよ)

続く

764■■■■:2016/10/22(土) 13:22:57 ID:ZYdgaXbU
以上とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 7話: 2章―②
を投稿します。

765・・・:2016/10/22(土) 14:21:23 ID:.Pn1vsh6
ども、・・・です。

上条さん、サポートガンガレ

では、投下
育児日記でなく小ネタです。

ミジカミコト2

ではでは

766ミジカミコト2:2016/10/22(土) 14:25:27 ID:.Pn1vsh6
――傷でドキッ――


「さーて、今日も疲れましたね、お疲れ様です上条さんいいこいいこ」

悲しいひとり言を垂れ流すのは上条。
補習帰りのようである。
そんなとき、聞き覚えのある声が聞こえた。

「あちゃー、唇痛そうですね」

佐天の声だ。
目の前を4人の女子が歩いている。

「うん、噛んじゃってさ、痛くて食欲もあんまり湧かないのよね」

美琴が唇を切ったようだ。
彼女たちは上条に気付いていない。

「食欲も無くなるのは大変ですね、パフェの幸せも半分ですよ」

会話しながら歩く4人との距離は、少しずつなくなっていく。

「あぁ、不憫なお姉様。代われるものなら代わって差し上げたい!!」

ここにきて、彼女たちに追い付いた上条は、傷の程度に興味を持った。
だから、

「どれどれ?」

急に声をかけられ驚く4人をほっといて、
上条は美琴の顎に手を添えて、
クイッと上を向かせた上で、
唇を凝視したのだった。

767ミジカミコト2:2016/10/22(土) 14:28:44 ID:.Pn1vsh6
――糸でドキッ――


「なにこれ?」

美琴は、木に引っ掛かっている糸を見つけた。
糸は少し先の曲り角を左に曲がった先まで続いている。

「…………」

何気なく手に取り、何とはなしに曲がり角に向かう。
曲がろうとした瞬間に声が聞こえた。

「カミやん、左手左手」

「左手……? ぎゃー!! 袖がほつれていらっしゃるぅぅぅぅううう!!」

――赤い糸の先にはアイツがいた。

768ミジカミコト2:2016/10/22(土) 14:33:03 ID:.Pn1vsh6
――メールでドキッ――

to 青髪ピアス 21:26

おい、まさか本当に小萌先生の補習をうけるために、わざと課題を忘れる気か?

〉答えどころか問題がわからんわ。全部学校に置いてきたんや






to 美琴 21:28

なんだ? この前から毎日メールしてるけど、また用事ないの?

〉なんか話題ない?





to 姫神 21:31

明日もおかず交換するか?

〉今日はありがとう。
美味しかった。





to 青髪ピアス 21:31

小萌先生泣くぞ!!(`Δ´)


当然やろ? なにいっとるん?





to 美琴 21:32

いや、大好きですよ♪(´ε`*)


なによ、わたしが鬱陶しいとでもいうの!!?














to 姫神 22:35

え? だから好きですよ?


返事がないから。もう一度。
梅干しは。嫌い?

769・・・:2016/10/22(土) 14:35:32 ID:.Pn1vsh6
以上。

まー、毎日がドキドキなんでしょーけどね

770■■■■:2016/10/22(土) 14:56:42 ID:ZYdgaXbU
更新お疲れ様です。

771■■■■:2016/10/29(土) 17:41:39 ID:w8U5B8bM
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 8話 2章―③

9月9日(水)午後4時 とある高校 校門前

なんかただ待つだけなのに、なんでこんなに楽しいんだろう。
接吻だって、アレだって毎日やっているのに、もう婚約式だってやったのに、それ
でもこの下校デートにそわそわする自分。
ふふ・・もう恋人じゃないのにね。だけど、・・私は風紀委員の業務を思い出し、顔
を引き締める。

・・そろそろ時間かな・・

校門から少し離れた、コンビニでコーヒーを飲んでいた私は、スマホの着信を
確認し、校門へ向かう。想い人を発見し、私は、駆け足で駆け寄る。
木原唯一を殺人未遂の現行犯で捕まえるためとは言え、当麻を守れなかった
事で胸がづきづき痛む。正直、木原唯一に殺されかけた当麻には、お詫びの
しようもない。

「お疲れ様」
「お迎え、ありがとう」
「脚の負傷は大丈夫そうね。さすが・・あのリアルゲコ太ね」
「リアル・・ああ・・あの先生ね」
私は、当麻の足さばきの違和感から当麻の脚がまだ完治していない事を悟る。

「まあ・・今日は待機でいいわよ。公傷だし」
「え・・それは寂しいな。脚ならもう治っているぞ」
当麻は私とよっぽど一緒に捜査がしたいのか健在ぶりをアピールする。
(そりゃ 私もしたいけどさ・・まだ無理よ)
「当麻・・今日はペーパワークだから内勤でいいわよ」
「大覇星祭の警備計画の会議資料も作成し終えないといけないし」
当麻はしばらくは残念そうにしていたが、状況を理解したのか渋々納得した。

「そうか・・わかった。」
私は、自分の勤務する研究所が試験的に運行を開始した無人タクシーが到着して
いることを確認し、当麻と一緒に後部座席に座る。

「じゃ・・行きましょ」

私は、いつもように当麻の腕を組み、体を密着させる。
磁力と活用すれば1〜2分で移動できるのにわざわざ20分もかけて不便
な無人タクシーを利用するのは、体を密着させてゆっくりと話したいからだ。
他にすることもなく、ある意味密室空間のタクシーは、当麻に癒してもらう
恰好の場所だ。それに周りを気にせずいちゃいちゃできる。
密着させた太ももと、絡み合った腕の滑らかな感触が、ともに生きている満足感
を感じさせる。
しばらく私と当麻はその感触を楽しんでいたが、やがて何かを思い出したのか当麻
が口を開き始める。

「なあ、美琴・・木原唯一はどうなるんだ?」
「そうね。・・普通なら殺人未遂で5年は刑務所ね」
「そうか・・」
当麻は、自分を殺そうとした相手に、憎しみではなく、救えなかったことに
後悔の念を見せる。私は溜息をつきつつ当麻の底抜けに善良なある意味お人
よしすぎるポジティブな発想に、苦笑いを浮かべる。

「救うのは困難よ」
「え?」
「私はね、彼女を支持する統括理事や、脳幹先生と交渉ずるつもりだったのよ」
「は?そうだったのか」

「お互いに、研究内容が被らないように、相互に利益があるように、共存をするつもり
だった」
「だけど、彼女が全部ぶち壊してくれた」
「どうかしているわよ。当麻と私を殺そうとするなんて」
私は、眉間にしわを寄せ、当麻の楽観論にくぎを刺す。私が、調書を書き換え、犯罪
者を免責するのは、私にもリスクがある。それに、私はどうにもあの女を許す気には
なれない。人を小娘扱いし、何かあるたびに私に敵意をむき出しにするあの女。

私の心のどこかに、あの尊大な女が失脚したのを喜んでいる小さな自分がいる。
だけど・・当麻の前では隠してしまう。
(本音と建て前か・・まあいいや。アイツを釈放するくらいなら)

772■■■■:2016/10/29(土) 17:44:08 ID:w8U5B8bM
「ああそうだな。」
「美琴が、怒るのも当然だし、風紀委員が捜査を捻じ曲げることができない。」
「だけど・・それで本当にいいのか?」
「え?」
私は、当麻が何か予想もつかないとんでもない事をいいだす予感に心を震わせる。
「木原唯一は、ある意味美琴をライバル視していた」
「まあそうかもね」

「それはたぶん周りも同じだ」
私は、だんだん当麻の言わんとしていることを理解する。
「まさか・・」
「勝ちすぎはよくないことだよな」
私は、普段は鈍い時わりに本質的には鋭い当麻の頭脳に改めて驚かされる。
私は、あの女の失脚を喜ぶ一方、その危惧が片隅にはあった。その事
を一発で言い当てられて、驚くとともに惚れ直す。
(さすがね・・)
「ええ・・そうね。今はまだ私が勝ちすぎるのはよくないことぐらいは理解する。
でもいくら私でもあれだけ多くの証人がいる事件をなかったことにするのは難し
いわ、なんか理由を見つけないと。それに」
「分かっている。俺も木原唯一が何をしでかしたか理解はしている。だから・・
正当な償いと、謝罪なしには無理だということは理解する」

「理屈ではわかるけど、ちょっと考えさせて。」
「そうか・・どうゆう結論でも美琴の判断を俺は尊重するよ」
「ありがとう」
当麻が私の悩みと立場をちゃんと考えて同じ目線で、最善解を導き
導き出してくれたことに感謝する。相性だろうか。まるで神様が、くれた
出会い。

つきあいは短いのに、当麻と私の関係はまるで、何年を連れ添った夫婦
のように、お互いを労わり合い、励まし合う関係になれた。ストレスの
多い私にとって、何にも変えようがない時間。だが無人タクシーというある意味
密室の楽しい時間は、あっという間に終わり、私は現実へ引き戻される。

激しいほどの触れ合いで乱れた、黒のタイトミニスカートのもつれを直し、着衣
を整える。意識を現実へ切り替え、いつも御坂美琴へ表情を切り替える。

・・・・・・・・・
午後 6時 風紀委員会本部 副委員長室

私は、机の上に山積された書類を1時間少々で決裁を行い、処理済みポストへ
移し終える。脳構造が、電子情報解析に特化しつつある私にとって、高速処理が
可能な電子情報に比べて紙媒体の処理は面倒くさい。

当麻はまだ脚が完治していないので、早めに帰宅させた。それに・・
(当麻は・・荒事はできるけど、書類仕事は・・無能だしな)

それでも、能力開発の一環で身に着けた速読法を駆使し、常人よりは高速で会計書類
や調書・報告書の類にサインを押印する。基本学生能力者で構成される風紀委員の中
で、私のような実際の管理職はほぼ皆無なので、風紀委員会ではデスクワークでも
相当重宝され、書記長のような仕事までさせられている。大覇星祭の警備計画の原案
とか、予算編成とか装備計画立案とか。
まあ、喜んでもらえる分には、いいんだけど、・・ね。

基本お人よしの性格な私は頼ってもらえるのは嫌いではなく、仕事自体は大好きな
のでついつい引き受けてしまう。なまじ尋常ならざるポテンシャルがあるので
莫大な作業を涼しい顔で回し、周囲が感嘆しますます仕事が集中してしまう。
(そろそろ応援を呼ばないとな・・過労で倒れてしまいそう)

まあいいや。しばらく雑事をこなして、風紀委員会の実態を知るのも悪くないし。
書類を通じて各委員の個性を採点するのも悪くないし・・どうせ人事評価だの
支部長人事案を作成させられるのだから。今のうちに書類で各委員の能力・適性
を把握するのも悪くない。

本当なら私の権限で、支部の有能な風紀委員を本部へ吸いあげて自分の秘書でも
させればいいのに自分が平秘書の真似事をして、書類作成だの計画立案という雑用
をするのも、使える風紀委員を選別するためなんだからさ・・

ひととおりの決裁業務終え、翌日の警備計画・アンチスキルとの連携計画を担当
の親船統括理事の提出を終え、私は、今日のメインイベントへ関心を移す。

絶滅犯 サロメ か・・

773■■■■:2016/10/29(土) 17:47:53 ID:w8U5B8bM
今日は久々に骨のありそうな奴に出会えそうでわくわくする。
・・・・・・・・・・・・・
午後 7時 国際空港 保税貨物地区

私はサロメから指定された場所へ5分前に到着し、相手の到着を待つ。
国際刑事機構(ICPO)のデータベースによると、某所で歩兵1師団を捻りつぶし、
某国陸軍特殊部隊が、なんとか取り押さえたサロメ。

その表向きは陸軍特殊部隊が、聖人を中心とする魔術側の最精鋭部隊であり
政府の最高機密であることは、統括理事会のマル秘ファイルに記載されていた。

(なんでこんな奴が表に出てきたのやら)
夏なのにレインコート姿の少女をみつけ、声をかける。
化学的な手法で体をサイボーグ化した異形の存在サロメ
私は、学園都市でもなかなかいない、ケルト神話で、異能を積み上げた存在に
声をかける。

「サロメさんですか」
残暑厳しい中、なぜかこだわりでもあるのか裸にレインコートを羽織る
少女は薄ら笑いを浮かべ、熱帯夜の闇の中私へ対峙する。

「わざわざどうもでしょ」
「で・・今日はわざわざ学園都市の治安機関の幹部でかつ能力者1位をこんな
場所へ呼んで何用ですか?」
「私のメールアドレスをご存じなら御用件をメールでも送ればいいでしょうに」

「へ・・そうね まあ挨拶させてもらいましょ」
サロメは私を値踏みするかのように視線でなめ尽くす。
「アンタがカタログどおりの性能かどうか確認しましょ」

(これは有名税かしら。わざわざ私を呼び出して、何を頼みたいのかしら)
最近、なぜか突然力をつけたらしくあまり詳細な情報がない、あるいみ未知の存在
絶滅犯サロメ・・何を私に頼みたいのやら。

私は、久々に意図のよくわからない相手に、多少身構える。
同時に、学園都市の暗部を掌握し、新たな刺激を求め始めた私はある意味
好奇心で彼女の奇怪な姿を凝視する。
ザワ・・ザワ
(背中をなめるような感覚が走る)
(・・なるほど・・電撃使いの感性に悪感情を与える電磁波攻撃か)
(まあ・・面白いからしばらくお付き合いしましょう)
「さすがに・・吸収できるからこのくらいじゃ驚きもしないか」
サロメは、想定通りの結果にたいして驚くこともなかった。

「ええまあ・・。で攻撃はしないのですか?」
「じゃ・・これならどうよ?」

サロメは、生体パーツの内的御供で積み上げた圧倒的な身体能力で私に迫る。
投石器のような圧倒的な拳で意識を刈りに来る。
(だけど・・それだけなら・・ぎりぎりレベル5の肉体強化系・・削板以下だな)
私は機械的に攻撃を分析し対応する演算をミリ秒の単位で組み立てる。

ひょい・・。私は保護膜で運動エネルギーを吸収しただの熱へ変える。
「それが運動エネルギーならいくら攻撃しても無駄だと思うけど」

「チ・・さすがに「吸収」?・・」
「さ・・まだないの?」

「じゃ・・これならどうよ」
サロメは本来の日本刀をベースにした能力を某国歩兵師団を喰った能力
で外的御供攻撃を始める。数万もの日本刀のようなものから放出される約30
00度の火炎。

だが・・それはすべて超高温・高密度プラズマの保護膜で吸収されなんら影響を与え
ない。そして・・所詮は熱。熱とはつまり分子の運動にすぎない。結局分子の運動エ
ネルギーを吸収すれば・・火炎はただの30度の常温大気に戻るだけだ。

彼女はさらにガトリング砲のようなものや、戦車の滑空法のようなものを
それこそ数限りなく日本刀に上乗せして攻撃する。

私は機械的に、感情を消して事実だけを指摘する。
「だから・・ただのエネルギーの放出なんてきかないのよ・」

774■■■■:2016/10/29(土) 17:54:02 ID:w8U5B8bM
「実弾の運動エネルギーも火薬の分子結合エネルギーも結局はただの
エネルギー・・全部熱に変えてプラズマ保護膜が吸収するわよ」
運動エネルギーも実態弾もすべてプラズマに変換され、保護膜に吸収され
雲散霧消する。

だから、もうやめましょ。いまならまだ話し合いで済みますよ」

さすがにそれまで余裕をかましていたサロメの顔色が変わり始める。
「くそ忌々しい程下種な能力しょ。」
サロメは、背中のバッグから何やら取り出し、組み立て始める。
「これは、使いたくないんだが」
(とうとう小型戦術核爆弾か・・そろそろ本気だそうかな)
私は、一応最後に一線を超えそうな女に最後通告をする。

「もういいでしょ。そろそろ目的を教えてくれませんか?あなたの手持ちの札は
もう時間切れではないですか?後10秒で3分ですよ」

「ケ・・やっぱ、そこまでわかってるかあ?しょうがねえこれで最後だ」
サロメは、両手で、巨大な刀のようなものを生成し、火の玉のようなものを
こね始める。
「御坂美琴・・これが吸収できるわけないしょ・・」
私は、多少焦ったふりをしながらそれでも、話を続ける。

だが、手段をえらばない、サロメはついに一線を越え、
最後の切り札を投入する。

・・ピカ・・
サロメが外的御供で積み上げた虎の子の戦術核兵器、都市を破壊し、一瞬に
して軍隊を、地上から消滅させることを当然のこととする、究極兵器。
だが、それは一瞬閃光を発したが、爆風も熱風もx線もγ線もα線も
1ベクレルも放出することはなく避雷針のように、突き出された私の
右手に吸収されつくす。

「はあ・・噂以上の化け物じゃん・・」
(どうやらカードはもうないようね)
私は、右腕を伸ばし吸収を強化する。その結果サロメの周囲からエアコンのように
分子の運動エネルギーを吸収しつくし、瞬間的に絶対0度(▼273.15度)まで
凍結させる。

それまで動き回っていたサロメが突然活動を止める。まるで、氷の彫像にように
全く動けなくなり、唐突に活動を止める。
「え・・」
「何が起きたかわからない?」
「あなたのサイボーグ体から熱を吸収させてもらった」
「摩擦もない、電気抵抗もない、あらゆる分子が活動を止める、絶対0度の世界」
「もう動くことも、攻撃することもできない、この状態で電気流せばどうなるかしらね。
超電導状態でね:数十億アンペアの電流なんて流れたらどうなるんだろうね」
「脳なんか、吹っ飛ぶんじゃないの。超電導が終わった瞬間のジュール熱で」

恐怖を感じたのか、それとも自分以上の狂人を発見したのか、サロメは、呆けた
ような視線を私に向ける。
(まだ・こんなもんじゃ足りないわね・・)
私は、この危険人物を法的に処分する方法を考えながら、恐怖を与える方法を
いくつか試案する。

まあインパクトがでかいのは、単純な方法よね。
この状態なら、生体電流で強化した拳でぶっ壊すか・・

・どうせ3分経過しもう普通の子になったころだし
・どうせ体は、飾りらしいし・・あとは1Aを頭に流して半殺しにするか。
こんな奴は、1回痛い目に合わないと世の中を舐めきってろくな奴にならない。

私は、拳に規格外の力をこめ、前にパンチングマシンを一撃でぶち壊した
それを食らわせようとする。

サロメは、目をつぶり半ばレイプ目で、衝撃に備える。

・・だが・・

私が拳でぶちのめそうとしたとき、聞き覚えのありすぎる、声を聴き、私は
それを止める。
「と・・当麻?」
どこで聞きつけたのか、突然現れた当麻の姿を視認し、私は狼狽える。

775■■■■:2016/10/29(土) 17:59:28 ID:w8U5B8bM
「美琴・・殺す気か・・らしくないぞ」
私は、当麻の指摘に、我に返る。私は手を震わせ、久々に骨のある相手に出会い
興奮し我を忘れ殺しかけたことに赤面する。

「御免、つい頭に血が上って」
当麻は私を抱きしめ、頭を撫で始める。あれほど、心の中を渦まいていた
まがまがしい迄の興奮は一気に覚め、いつも、御坂美琴へ戻る。
ああ結局私は当麻にまた救われるのか・・当麻自身は気がついていないが
この夏以来私は何度も当麻に救われている。当麻の底知れないやさしさに。
代償を求めない純粋な心に。

「美琴・・ストレス貯めすぎだぞ」
「ありがとう」
「で、サロメはどうする」
「そうね・・」

私はあたりを見渡す。私がサロメの完全武装の核弾頭を含む1師団クラスの
攻撃をすべて吸収したこともあり、特段の被害は見当たらない。
私は、当麻に抱擁され緩み切った容姿をいつもの峻厳公正な風紀委員のそれに
変え、いつもの職場の御坂美琴へ切り替える。

「まずは、特別部で事情を聴くわ」
「ただ司法職員である私の職務質問に答えないから、公務執行妨害で1晩留置ね。」
私はサロメの処理を終えていないことに気がつき当麻に了解をもとめる。
・・御免・・ちょっと面倒くさいやつだから眠らせる。

私は、落ち着きを取り戻し、溜息をついているサロメに、頭部に軽く電撃をくらわし、
気絶させる。ナノマシンを注入し、神経を遮断ののち、すぐに冷凍を解除する。

「そうか」
「ところで木原唯一はどうする?」
私は、サロメのおそらく目的を考慮し決断をする。
「本来なら、私と彼女とはライバルであり敵同士」
「だけど・・サロメの目的の為には手を結ぶ必要があるかもしれない」
「それはどうゆうことだ?」
「サロメの目的はおそらくは兄の救済だわ」
「兄?」
「私はね、微細な生体電流を通じて意識を読み取ることができる」

私は、読み取った内容を仔細もらさず当麻へ伝える。
「そうか、で・・兄を助けたいと・・」
「ええ。・・サロメは私が兄の敵と思ったみたいね」

「逆恨みもいいとこだな」
「でもあながち間違いでもないかも。魔神を成仏させたのは私だし、魔神の願いであるこの世の基準点の右手の所有者を独占したのも私。」
「サロメの兄と慕う、上里翔流は私が、魔神を成仏させた日に、忽然とこの世から姿
を消した」
「サロメは、その原因が私のせいだと疑っている」
「なぜ・・そんな」
「サロメが言うには、上里翔流は、ある日・・正確には私が婚約式を上げた日に
謎の力を突然手に入れその日から運命が狂いだした。」
「周りに謎の不幸な女達が集まりはじめ、その女達を魔神がくれた、謎の力で救い
出してきた。でも・・彼は突然・・忽然とこの世から消えた。右手だけを残して」
「彼女は上里の知り合いの不幸だった女達の知恵をかき集め、その謎の消滅
が魔神とそれを消滅させた私が原因らしいと突き止めた」

「そしてそれを知ったサロメは私に上里を助け出してほしいらしいわ」

「へ・・?」
「あの子も大概よね。口で一言助けてくれと言えばいいのに」
「まあ、それだけ人を信用できない不器用な子なんでしょうね」

「ふふ・・なんか・・昔の美琴みたいだな」
「そうかしら・・でも・・当麻も私と付き合う前には似たようなもんじゃない」
お互いに へ・・という顔で見つめ合う。
当麻は不幸な昔を思い出したのか、苦笑いで答える。少しわざとらしく咳払いをし
無理やり話を切り替える、
「で・・具体的にはどうする?」
「魂や魔術に詳しい木原脳幹先生の力を借りるわ」

「まあただではとはいかないわね。たぶん・・木原唯一の釈放と

776■■■■:2016/10/29(土) 18:02:04 ID:w8U5B8bM
引き換えになるだろうね」

基本、自分の命よりも人の不幸を気に回す当麻が顔色を変える。
「そうか・・。それはよかった」
「本当にいいの?唯一はアンタを絞め殺そうとしたのよ?」
「いいさ・・それで美琴の悩みが解決するなら」
私は、自分のこと以上に私の悩みで胸を痛める当麻に心が締め付けられる。
「ありがとう。そうね・・私のせいで不幸になるなんてそんな幻想は
私がぶち壊さなきゃね」

私は、電極でサロメの脳の活動状況がほぼ停止状態であることを確認し、
能力者用拘置所の手配を終える。さらにあらかじめ起案済みの調書を
回付する手続きをオンラインで開始する。

「まあ、不法入国と公務執行妨害にしましょ。事件が解決したら強制送還よ
サロメは」
「そうか・・」

「木原唯一は、罪状を公務執行妨害と傷害罪にする。傷害罪は、本人と
と示談が成立し、不起訴処分で退院しだい保釈にするわ」

「美琴ありがとう。美琴はちゃんと考えていたんだな」

「当麻ありがとう。私は婚約式以来、うまく行き過ぎて浮かれていたわ」
「でも・・やっぱりそう簡単にはいかない。一人が幸せになればかならず何か
反動が発生する。だけど・・それをまとめて全部、不幸から救済しなければ私の
幸せは完結しない」
「だから・・上里、木原唯一まとめて糞たれな神と運命から解放しましょう。
そしてみんなで幸せをつかみましょう
私は連絡した風紀特別部員がサロメを回収したことを確認し、当麻に告げる。
「じゃ・・そろそろ帰りましょう」

私は当麻と手を繋ぎ、帰り支度を始める。私も、そしてアレイスターも含め
古来より人間の運命をもてあそんできた魔神・・その清算をすべきときは迫っている
そんな気がした。

続く

777■■■■:2016/10/29(土) 18:07:39 ID:w8U5B8bM
以上 とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 8話 2章―③
の投稿を終わります。

778■■■■:2016/11/06(日) 18:04:14 ID:8bsF7Zcc
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 9話:2章―4

9月10日 (木) 午後2時
風紀委員会本部 副委員長室

今日は研究所の仕事は休みにし、朝から各所を周り、木原唯一の保釈の手続を進めた。
明らかな犯罪行為を強引なロジックで減刑する以上、反対派は少なくないが、無理や
り説得して押し切った。錦の御旗ではないが、この街の独裁者との直接交渉権の威力
は絶大で、調整はあっさり終わり午後一にはケリがついた。

私は、保釈の手続をする間ずっと消えた上里の復活手段についてある程度推論は
立てていた。要するに上里の右手(理想送り)が原因なら右手の性質を
調べるしかない。

そうゆう結論になる。木原唯一の保釈手続を進めると同時に右手の入手方法の
詳細を詰めていた。サロメの記憶から、保管場所を読み取り、それを地図情報に
落とし込む。私は、右手のテレポートを短時間で完了し、手早く右手を回収する。
が、ここでただ回収するだけでなく細工を加える。わずか数分で細工を加える作業を
完了する。これははっきり言って小細工だ。

それも後で種を聞かされたら、金返せよと言いたくなるほどの。

だけど・・やらないで後悔するよりもやって後悔するのが私の性格。後で必ず
役に立つとちょっとした布石を行う。

(こんなのは単なる保険だけど・・)
私は、あのいけ好かない女の顔を思い浮かべながら、笑みを浮かべる。
多分‥アイツは・・木原唯一は私の撒いた餌に引っかかる。
もう当麻に文句は言わさない、今度こそアイツとそのバックの統括理事達
ごと全部ぶっ飛ばす。私は消化不良に終わった今回の出来事の轍はもう踏まない。

だけど・・惚れた弱みか・・私は、底抜けに優しくお人よしの婚約者の顔
を思い浮かべにやけ顔になる。木原唯一という自分を殺しに来た刺客を許し
寛大すぎるほど寛大な条件で示談した私の婚約者・・上条当麻・・
人間の本質を善ととらえ、右腕ひとつで説教により矯正する男。

でもな・・あの手段を択ばない女にアイツに優しさ(説教)は通用するのか・・?
私には今一つ確信がない。はっきりして信じられない。だから保険をかける。
所詮アイツは、アイツ、私は私。目指す方向は同じでも、私は自分が今まで
築き上げた方法論で、解決する。

(アイツも ある意味能天気だから。・・足らざるを補うのは私の使命)
さあ・・手は打った。・・あとは・・・なるようにしかならないでしょ。
人事を尽くして天命を待つんだから。

・・・・・・・・

午後4時 とある校門前

私はいつものように、とある高校の校門の近くのコンビニで、クリームのたっぷり
アイス・コーヒー・ラテと飲みながら、ドーナツを食べる。私はメールで遅延が
ないことを確認し、容器をごみ箱へ放り込み、校門へ向かう。
校門から吐き出される、クラブ活動のない帰宅部の生徒たちの中に、婚約者を確認
し、私は表情を満面の笑みへ作り変える。

あらかじめ停車させた無人タクシーの後部座席に当麻をのせ、私も同乗する。

「お疲れ様」
「ああ、あのAI教育ソフトのせいかな・・」
当麻はよほどうれしかったのだろうか、満面の笑みで語り始める。
「え?」
「いや成績がうなぎのぼりでさ・・」
私は、当麻の以外に調子に乗りやすい気質を思い出し、少し火消に回る。

「ふふ・・ブラシーボ効果じゃないの?」
「いやいや・・、本当効果てきめんで感謝しています」
「ありがとう」
ふいに任務を思い出したのか当麻は表情を変え、懸案事項を確認し始める。

「ところで・・上里を戻す方策はわかったか?」
「まあ・・・いろいろ調べているんだけど、まだ有効な情報はないわ」
「そうか・・美琴でもすぐにはわからないか・・」
「まあ・・理想送り自体が魔術でも解析不能な力だから・・ね」

私は、当麻にある事実を告げる。

779■■■■:2016/11/06(日) 18:08:54 ID:8bsF7Zcc
「ただある程度心当たりはあるわよ」
「それはなんだ?」
「上里の右手」
「なるほど・・でどうする?」
私は、当麻に簡単に小細工と、大凡の方法を伝える。
「そんな簡単に済むのか?」
「確証はないけどたぶん大丈夫。それにもしこの方法でだめならどの方法でも
ダメだわ」
「そうか・・」

私は、実はその方法よりもより確実な方法があることをあえて言わない。
(たぶん、理想送りで送られた先は、現実世界のごく近くにある。)

そして、その方法は正確な居場所さえわかれば、多分座標移動で取り戻す事ができる。
だが、その方法がもしも失敗し取り戻せない場合には。私は当麻を失う可能
性がある。そんな致命的なリスクを冒してまで、正直な私には上里を取り戻すメリ
ットがない。

それよりは、理想送り自体をマイクロ超荷電粒子砲で破壊し、理想送りが生成して
いる位相そのものを壊したほうが簡単でリスクが少ない。

だが。・・この方法には明らかな欠点がある。上里自体の居場所がわからないので
位相崩壊時に上里を殺すリスクがある。

私は、確実な方法は伏せ、最悪上里は死んでも構わない方法を提案する。
私は上里とそのハーレムに対してどうも好意的になれない。
そもそもサロメなんて私を殺そうとした奴、なんでそんな奴の願いを聞く必要が
あるのだ。

「当麻、一つ聞くけど、上里を取り戻した場合に、それが原因で大きな騒乱が起こる
かもしれない。それでもいい?正直このまま放置したほうが問題とないと私は思う」
「それでも取り戻していい?」

「美琴・・確かに俺たちには上里もそのハーレムもどうでもいい話だと俺も思う」
「だけど、上里の友人に核兵器を使って自爆覚悟で救出を頼まれた」
「だとしたら俺一人でも、おれは上里を助けたい」
当麻の表情はいつにもなく真剣な表情に変わり、私はその決意の固さを
思い知らされる。

私は、苦笑いを浮かべ、溜息して当麻に自分の意思を伝える。
くどいと言われるだろうが、リスクはちゃんと認識してほしい。
私は何秒か沈黙したのちに、淡々と私の気持ちを伝える。

「そう・・私は当麻が望むならあえて異議は唱えない。だけどリスクがある
事はきちっと認識してね。」
私は、頭の中で情勢を客観的に分析する。
(まあ・・どうせ上里は助からないだろう。厄介な理想送りも破壊すれば、危機を
先送りできる。今はまだアレイスターと戦うには力が足りない)

だが、当麻の返答は予想を超える意外なものだった。
「なあ美琴は、嘘をつくとき、口元をゆがめる癖があるよな・・」
「え?」

「いや・・正直な話、俺の知人で美琴以上の解答をひねり出せる奴なんていない」
「多分魔術に詳しい土御門や2位の一方通行でも無理だろう」

「いや・・世界中を探しても、レベル6になった美琴以上の知恵なんかないだろう」
「だから俺はどうあがいても、美琴の提案を飲むしかない」

「だが・・俺は今の美琴が嘘をついている以上、その提案は飲めない」

当麻の表情が決然と、私の対して戯言を許さない、普段見せたことがない、シリアスな
ものへ変わる。

「なあ・・美琴。俺は学園都市における美琴の立場も地位も、上里の関係者に襲われ
上里へなんの好意も持っていないことは、おれにもわかる。だけど、上里を救えるの
は、世界でただ一人、御坂美琴しかいない。」
当麻は、突然私の手を掴み、腕を回して抱擁を始める。
(チイ//甘いわよ。当麻・・アンタを守るためには敢えて悪者になるわよ)

私は、車を緊急停止させ、当麻を幻想殺しの全く効かない、単純な力で
絡んだ腕を外し、片腕の力だけで外へ放り出す。

780■■■■:2016/11/06(日) 18:11:31 ID:8bsF7Zcc
当麻は数メートルほど飛ばされ、街路樹にぶつかりようやく止まる。
ぶつかった街路樹が根本から折れ曲がる。

私は、レベル4相当の肉体強化系に匹敵する素の力を誇示するように
当麻に見せつける。

「当麻、分かっていると思うけど、私が協力しなければ何もできないわよ」
私は、当麻に言い聞かせる。
「そう・・理想送りなんて、誰も・・その中身を知らない。私だって確信が
あるわけじゃない」
「だから・・もし失敗したところで、私をだれが批判できるの?」

街路樹にたたきつけられ、常人なら耐えがたい痛みを耐え、当麻が立ち上がる。
こんな痛みくらいで俺は何も諦めはしないという鉄壁の意思を私に見せつける
かのように。だが。当麻は突然私の予期しない行動を行い、わたしを驚かせる。

突然、歩道に跪いて私の許しを請うかのように土下座を始める。
「美琴・・俺は美琴に許しを請うことしかできない」
「だけど、救える方法があるならどんな手段を使っても俺は助ける」
当麻はひたすら私に許しを請い始める。
正直、公道でこんな真似をされた私は恥ずかしくしょうがない。

私は当麻に聞こえないように、心の中で溜息をつく。
(週囲の目線がはずい・・)
「ちょ・・もういいわよ。頭を上げてくれる」
それでも当麻は頭をあげず、地に頭を伏したまま、必死に私に許しを請う。
(もう・・どうしたの当麻・・こんなのわけわからないわよ)

「美琴・・御免。」
「え?」
「俺は、美琴は当然俺に無条件で力を貸してくれると思い込んでいた」
「だけど、美琴にも感情があり、当然許せない相手がいることにあまりに
俺は無頓着だった。まずだから無神経だったことを詫びる」

「いや・・そこまで私は・・」
当麻は私の顔を凝視し始める。
「いや・・まだ足りない。美琴にとって俺がいかに大事か俺は全然考えていなかった」

「と・・当麻・・今なんて言った?」
「美琴がなにより俺を第一に考えているか、俺はあまりに無頓着だった。」
私は、一番聞きたかった一言を言われ、舞い上がる。そう・・謝罪なんてほしく
いらない。私はその一言が知りたくてこんなことをしたのだから。

「ありがとう。でも・・やっぱり私は当麻を犠牲にはできないわ」

「そうか・・そうだよな。美琴が嘘をつくなんてそんな理由しかないもんな」
私は、当麻の表情が悲しみに打ちひしがれるのを感じる。
自分の信念を貫くことが結果として私を傷つけることを、悟ったように。
だが、すぐに表情が変わり、決然とした表情へ帰る。

「やっぱり当麻に嘘はつけないか・・でも・・なんでわかったの?私は生体
電気で脈拍も呼吸も表情さえ操れるのよ。ホログラフにかけても見抜けないはず」

「そうだろうな・・だけどなんとなく違和感を感じた。それだけだよ」

「そうか・・私もまだまだ甘いわね。」
「だけど、これを教えるつもりはないわ。当麻が死ぬかもしれないなんて選択
はできない。」
私は溜息をつき、この救いようがないお人よしをどう説得するか思考を巡らす。
当麻がなんと言おうと、私は当麻を失うかもしれない選択を絶対したくない
からだ。

だが、救いようのないお人よしは、自分の命をなげだし、そして私の心を
へし折るかもしれないことになんの躊躇もなく、ひたすら縁もゆかりもない
はずの上里を救出だけに全精力を捧げている。
(いつかはこうゆう日が来るとは思っていた。・・だけど早すぎるわ)

「なあ・・美琴時間がないんだろう。本当の正しいやり方を教えてくれねえか」
(こいつは、・・本当は私のことなんてどうでもいいの?)
「当麻の気持ちはよく分かった。私への気持ちが本物であることもわかった。
それでも私は当麻に負けるわけにはいかない。それに・・当麻には私が提示する
手段以外に何もできないはずよ」

781■■■■:2016/11/06(日) 18:16:10 ID:8bsF7Zcc
「もう私が提示した方法で終わらせましょ。半分程度の確率でなんとかなるはずよ」
私は、この諦めの悪い男の説得を諦め、事実を淡々と告げる。最高の魔術師アレイス
ターやその忠犬木原脳幹でさえこれ以上の方法は思いつかないはずだ。
(だからこの件は終わり)
が、一度ギアの入った当麻はこんなことでは諦めるはずもない。
当麻は私を半ば脅すように一言を放つ。

「なあ・・俺は・・絶対美琴だけにはこれをやりたくなかった」
「へ?」
私には、見える。上条当麻の右腕に莫大な・・数値では表現しがたいエネルギー
が集中するのを。
(あれは・・前に一度見たドラゴン・ストライク・・?)
(いや・・そんなもんじゃないわ。八匹の龍・・そうか当麻は本気で私を打ちのめす
つもりなのね。だけど・・いくらなんでもただごとじゃないわ。こんな場所でこんな
もの使ったら、学園都市なんて終わりだわ。)
私は、保護膜を最強にし、防御を固め、当麻のドラゴン・ストライクに備える。

それを表現にするのは、どんな言葉でも足りない、どんな形容詞で規模と
威力を表示できない。恐らく45億年前の古の日に、火星サイズの天体が衝突し、月
を形成したジャイアント・インパクトでさえ、ちんけな現象に思えるほどのそれが
さく裂してしまう

まともに地球に衝突すれば、それは、たちまち地球を粉々にプラズマに粉砕し、
70億人類を一瞬に消滅させてしまうほどの。

(まあ・・考えるまでもない)
私は一気に当麻との間合いを詰め、右腕を掴み、唇をふさぐ。
当麻が放出しようとした莫大な・・形容する言葉のないそれは、私の体へすべて吸収
され雲散霧消する。
「当麻・・ごめん・・ちょっと休んで」

そのせつな、私は天空から巨大という言葉では形容できない、まばゆい光を放つ
それを・・雷という言葉ではなんら事実を示さない、電流が作り出したプラズマ
それを当麻に浴びせ、気絶させる。衣服と肉の焦げた匂いが辺りを漂っていた。
・・・・・・・・・
風紀委員副委員長室 18時

私は電撃を食らった当麻を寝かし、クラウドの予定表に会議のフラグをたて邪魔を
防ぐ。
それにしても・・いつかはこんな日が来るとは思っていたけど、ついに
来てしまったか。私は、学び舎の園の専門店で購入したダージリン紅茶を溜息をつき
ながら飲む。少々小腹が減ったので、軽くビスケット2つをつまむ。

(それにしても・・困ったわ)
もともと、何があろうとも目の前の誰かを救うことをためらわない当麻。
風紀副委員長として、司法取引や、組織の都合や全体の利益を考えすべては
救わない私・・これを続けている限り、私と当麻の利害が衝突し、どこかでぶつかる
ことはあると思っていた。

けどさ・・あんなに思いつめるなんて・・らしくないわよ。(上条当麻)
そんなに私が嘘をついたのが許せないの?・・だったらごめんなさいだけど・・

私もそろそろ守るべきものをはっきりさせるときか・・
ぐたぐた考えても仕方ない。上条当麻が目の前のすべての不幸な人を助けようと
するなら、私はその不幸なすべての人ごと上条当麻を愛する。それでいいのだ。

私は、紅茶を飲み干し、考え事をやめ意識を当麻に向ける。
当麻は、いつも違い史上最大級の・・雷の匹敵する電撃をもろに食らったせいかいまだ
ぴくりともしない。
(まあこれで死ぬほどやわじゃないでしょ・・私の愛した上条当麻は・・)

2時間たったしそろそろ起こすか・・。
私は、軽く電撃を頭部に流し強制的に起こす。これで起きないやつは死者じゃないか
ぎりいないはずだ。
電気ショックを感じたのだろうか、それまでぴっくりともしなかった当麻が全身で
ショックを示す。

(ふふ・起きたようね)
「目が覚めた?」
「ああ・・久々に食らうときついな・・」
「あの電撃で死なないのはアンタくらいのものよ」
当麻が思い出したのか、がたがた震えはじめ乾いた笑いで恐怖を示す。

782■■■■:2016/11/06(日) 18:19:08 ID:8bsF7Zcc
はは・・は」
「でもさ・当麻・・使えこなせない能力を妻に向けるのはよくないわよ」
「私だから受け止めることができるけどあんな力を見境なくふるえば大惨事よ」
「へ?」
「へ・・て当麻忘れたの・・8匹龍だしたでしょ・・」
「いや悪い記憶にない・・」
「はあ・・これだから・・ちょっと確認させて・・」

私は、右手を当麻の首筋にあて、生体電流と脈拍を確認する。
「まあ嘘はついていないようね」
「ああ・・龍なんて記憶ねえぞ・・」
私は当麻に聞こえるように大きく溜息をする。

「まったく・・記憶にないんじゃ説教のしようもないわ・・」
(ああ・・思いっきり説教するつもりだったのにな・・)
「当麻の主観では切れた私が・・致死量の特大の電撃を食らわせたことになるわね」

「いいわ・・当麻・・私は、これからどんな願いでも全部当麻の言うことを聞く」
「え・・?」
「私は、幸か不幸か大概の事は能力と金と権勢で実現できる」
「その力、全部当麻に捧げる」

「ええ・・いいのか」
「当麻・・・当然じゃない・・目の前の不幸な男一人幸福にできないで何が絶対
能力者よ」
「美琴・・ありがとう」
「だから・・本当の上里救出方法を教えるわね」

「いいのか」
「もう決めたわよ・・だけど・・・これは危険があることは理解してね」
「ああ・・わかった」
私は当麻へ作戦を告げる。この方法こそが樹形図の設計者の演算の結果で一番確率
が高いのだから

・・・・・・・・・・・・
研究所 19時

私は、自分の右手を溶接ブレードで切断し、上里の右手に置き換える。
そして、あらかじめ解析した、理想送りの認証SYSTEMで認証を奪い、その
力を自分のものへ置き換える。
「じゃ。当麻、一方通行始めるわよ。」
「ああ」

「当麻、この方法は、確実に、理想送りの位相先を特定し、上里だけを吊り上げる
ことはできる」
「だけど、送り先は確実に弱体化したとは言え魔神がいる。」
「だから当麻、一方通行、魔神は無視して、素早く、私に通信して帰還して」
「それから、・・無理はしないで。上里より自分の命を優先して。これは絶対守って」

「ああ・・わかった」
「じゃ・・」
私は理想送りの「願望の重複」というよくわからない発動条件をクリアするために
2人の脳へ「自分の生存」と「上里の確保」という相容れない願望を植え込み
確実に理想送りが発動できるように設定する。

「じゃ・・いいわね」
私は右手を伸ばし、KYE WORDを唱和する。
「新たな天地を望むか」

その瞬間2人は、忽然と姿を消し、新たな天地へ送られる。
(よくわからないけど、すごい力ね。制約が大きすぎて使いにくいけど)
「当麻・・、一方通行絶対無事に帰るのよ・・」
「まあ、わたしをのぞけば最強のドリームコンビ・・そう簡単に死にはしないでしょ」
私は、どうにもなじめない右手を切り離し、自分の右手に付け替える。
そして上里の右手を培養液に入れる。

さあ、小細工も含めていろいろ布石を打った。
私には確信がある。今回の事態が収まれば、きっと学園都市だけでなく、世界が
変わる。その中で私は当麻と共に生きる。
当麻、死ぬときは一緒よ
忘れないでね。

続く

783■■■■:2016/11/06(日) 18:23:04 ID:8bsF7Zcc
以上とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 9話 2章-4の投稿
を終わります。

784・・・:2016/11/12(土) 21:00:28 ID:UXOb12Mk
ども、・・・です。
最新刊の上琴の絆はすごかったっすね〜
あと、副会長=土御門の予想は外れたよくそう

1日遅れのポッキーゲームです

ではでは

785罰ゲーム:2016/11/12(土) 21:04:02 ID:UXOb12Mk
ポキンッ

その音を聞いた時、
御坂美琴は目を見開いた。

御坂美琴は俗に言うツンデレである。
それは上条と付き合いはじめて3ヵ月経ったいまも変わらない。
昨日など、「別にアンタのことなんか好きでもなんでもないんだからね!!」と大声を放った。
まさか最大の壁が白井でもあの子でもなく、自分だったなんて美琴的には笑えない。
悩んでいた美琴の耳に、悪魔(黒髪ロングの後輩)が囁いた。

「今日は11月11日ですよ?」

そんなこんなで、御坂美琴は彼氏の自宅で仁王立ちしていた。

「……今日はどうした?」

見下ろされている上条は慣れたもの。

「ふっふっふっ…ポッキーゲームよ!!」

悪魔さんのアドバイスはこうだ。

『今日の日付を口実にポッキーゲームをして、負けたら罰ゲームと称してイチャイチャしちゃいましょう!!』

穴だらけな作戦である。
しかし、美琴は気づかない。
恋は盲目なのだ。
美琴はさてn……悪魔の囁きをそのまま彼氏に伝えた。

「……えー?」

「なによ? 逃げる気?」

「いや、そうじゃないんだが、まぁいっか」

「じゃ、いくわよ!!」

ようやく彼氏の隣に座り、ポッキーを咥える美琴。
上条の方を向き、彼の顔が少しずつ近づいてきたのを見て、ようやくこの作戦のミスに気づいた。

ポキンッ

全力で右を向く美琴を見ながら、上条はモシャモシャと残りを咀嚼する。
美琴が一方を食べきったのを確認して、ようやく口を開いた。

「はいっ、罰ゲームです。ギュッとさせていただきます」

「ちょ、ちょっと待って!!」

「いまはミコったんに拒否権はありませんーぎゅむー」

「たんいうなぷふぁああああああああああああああああ!!」

美琴が暴れながら叫ぶのを無視して、
上条は問答無用でギュッとする。

786罰ゲーム:2016/11/12(土) 21:04:50 ID:UXOb12Mk
2ヵ月前、
当初「告白されたから付き合い始めた」状態の上条は、鈍感故にこの反応を拒絶と受け取っていた。
そこで、

『そんなに無理すんなよ。なにがあったか知らないが、嫌々付き合う必要はないし、もうやめようぜ?』

と、提案した。
すると、

『待って、グスッ、ごめんなさい。 素直になれないのは謝るから、だから、ヒグッ嫌いに、エグッならないで…』

とボロボロ泣かれた。
慌てて抱き締めると、さらに号泣された。
そのときにはじめて上条は本当の意味で墜ちた。

現在、上条は美琴のことをよく理解している。
彼女は案の定くたぁ〜となっていた。

さて、

「じゃ、2回戦」

「ふぇ? ひょ、ひょっとまって!! 」

「負けるのが嫌なんです?」

「な!! んなわけないでしょ!!」

「じゃ、ほい、ふぁやく」

ポッキーをくわえた上条。
いつも通りのぼやーっとした顔だ。
美琴の顔は、しまったーー、という表情。
ものっすごく困った顔で、ものっすごく真っ赤である。
助けを求めるように上条を見るが、今回彼は救世主ではない。

少しして、キッと目を瞑った美琴は、飛び付くようにポッキーをくわえた。
が、1回ポリッと音がした直後にパキンッと音がしてポッキーは折れる。

美琴が全力で左に首を振っていた。
顔は真っ赤どころではない。
赤すぎて、目や鼻の輪郭もつかめない。
美琴の顔を見ながら、上条はモソモソ残りのポッキーを咀嚼する。

「はいっ!! 罰ゲーム!! 猫耳つけて、語尾はにゃん!!」

「待って!!」

「どうした!! 愛しのミコったん!!」

「ミコったんはうれしいけど愛しのいうな!!」

「逆だ」

「と、とりあえず猫耳とか無いし、無効よ無効!!」

「ここに取り出したるは猫耳」

「なんであるのよ!!」

「オレの親友二人が置いてった。ほい、装着」

「ふにゃぁぁあああああ!!」

787罰ゲーム:2016/11/12(土) 21:05:31 ID:UXOb12Mk
猫耳を着けたまま右手は離さない。
上条だって自宅をコンガリトーストにしたくない。
さらに、声が大きいので、

「ほいっ、3回戦」

ポッキーを美琴の口に放り込む。
若干涙目になっている美琴に苦笑しながらもう一方をくわえる。
美琴が大きく震えたが、右手で顔を固定。
もう折らせるもんか。
左手は背中に回す。

ポッキーが少しずつ砕かれる音と美琴がんーんー唸る音が部屋に響く。

暫くして、両方の音が消えた。

「……ぷふぁ」

上条が離れると、美琴はへにょへにょと上条の腕の中で崩れ落ちた。
そのまま支えるように抱き締める。

「そういえば、折れなかったらどうすんだ?」

見下ろすと、ちょうど美琴が伏せていた顔を上げたところだった。
涙目だったのが、今はもう完全に泣いている。
彼女はその表情で、やりすぎたかな?と反省中の上条の服をキュッと握った。

「……も、もっとぉ〜」//////////

再び上条は苦笑しながら唇を落とした。

788・・・:2016/11/12(土) 21:07:54 ID:UXOb12Mk
以上です。

ついにヤツが動きましたなぁ、急ごう

789■■■■:2016/11/15(火) 19:33:27 ID:QpcHdOwo
とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 10話 ;2章-5

9月11日 午前0時
<美琴サイド>

研究所内 副所長室

私は、当麻と一方通行を「送った」後、モニターから片時も目を離さず、情勢を
見守っている。超短時間だったが理想送りの解析結果はおおむね正確だったのだ
ろう。2人の位置は確実に追跡できている。
(まあなんとかなりそうだな)

私は胸をなでおろしながら、あくまで慎重に情勢を見守る。
(あの2人なら・・少々のことならぶちのめす・・はず)
だけど、もしも当麻は失えば私はこれから生きていけるのだろうか・・正直
不安はつきない。事前の情報では1体の劣化したとはいえ魔神がいる。
AAAの砲撃により劣化、弱体化術式を撃ち込まれ全部死ぬはずだったのが、計算誤り
で1体がまだ死んでいない。

(まあ、アレイスターが納期前に実証試験もやらずに無理やり実行させるから失敗
しても当然よね。)
それでも、もう・劣化したから、位相を操る能力は・・たぶんほとんど残っていない
だろう。

大丈夫・大丈夫・・それに、最悪無理やり回収すればいい。
それより問題は一番の危険人物木原唯一をどうするか。
力技で殺すのは簡単。証拠なんて何にも残さずに、だが、アレイスターに
くだらない借りは作りたくない。

一応、これでも風紀副委員長・・ある意味正義の味方だ。殺すのではなく、法律で彼女
を裁く。
(まあこの小細工が役立つだろうかしら・・)
上里の右手の詳細情報と・・その嘘の保管場所を上里勢力と、木原唯一に送り付けた。

私は、能力で再度取り付けた自分の腕を伸ばし、自分の士気を鼓舞するように
一言を放つ。
「全員まとめて器物損壊の現行犯で一網打尽にしましょう」
「そのほうがあとくされなくていいでしょ。」

私は、モニターを確認し、お客様が周囲に散開していることを確認する。
「さあてそろそろ始めましょうか・・」

私は、私の小細工にはめられた木原唯一とそそのかされた少女達に
憐憫の情をこめながら、警備ロボットを稼働させる。
「ふふ・・ついにこの日が来たのね・・人はいつまで戦うのかしら」
「ロールアウトしたファイブオーバーその威力見せてもらうわよ」

//////////

私は、木原唯一に、上里の右手の情報をインプットし、上里ハーレムには右手が
上里を取り戻す鍵という情報をインプットした。

双方に、反面の事実だけを伝えることで、木原唯一に、上里ハーレムに接触させ、
ただ上里の帰還を願う上里ハーレムは、唯一を受け入れその指示に従っている。

もしも、上里ハーレムがクールボックスに保存する右手が本物なら唯一は上里
ハーレムを使い世界をも制覇出来たかもしれない。

だが・・
あの右手は模造品デコイ・・私が再現した、ただの模造品。

(まあDNAレベルまで一緒だから判定しようもないけどね)

疑うこともなく単なる偶像に振り回されるのは、迂闊としか言いようがないが、私の
研究所を破壊し、私の暗殺を企てる以上、犯罪者は犯罪者として糾弾させてもらう。

私は、網にかかった侵入者の末路に想いを馳せながら、思考を切り替える。
「結標、木原唯一を指定の座標まで転移させてくれない。」
こちらがせっかく和解の機会を提供したのに、それを無視したやつにはそれなりの
罰を与えよう。

<上条サイド>

790■■■■:2016/11/15(火) 19:35:51 ID:QpcHdOwo
俺は美琴に送られた、異世界で目を覚ます。
隣にどうやら一方通行も送られているようで、まずは一安心。
(だけど・・異世界ね・・確かに美琴の言う通り現実世界の延長にしか見えないな)
(どうやら・・。しかも学園都市の廃棄物処理場か)

俺は意識を、周辺に移し、状況を確認する。
(どうやらここに上里はいないか)
俺は、美琴にもらった計測装置を確認する。上里の生体反応を確認し、その位置を
表示する装置だ。その表示だと、約5kmほど離れた地点で、上里と魔神1体が同じ
位置にとどまっている。
俺はその情報を一方通行へ伝える。

「で・・上条・・どうする気だァ」
「どうせ、魔神はすぐに俺たちがここに来たことに気が付く」
「待ちかァ」

「いや・・1分以内だろう。今移動している」
俺は、腕時計のような計測装置で、魔神と上里の到着を確認する。

「どうやらおいでなさったようだ」

木乃伊のような奇怪な骨と皮だらけのケッタイナ存在・・
魔神 僧正 計測器のモニターにはそう表示されていた。
隣に上里?という一見普通の高校生を連れている。

「でエ?」
「とりあえず話好きだから話は聴けとさ、美琴は」

「ほオ・・」

俺と一方通行は、顔を見合わせて僧正が何を言い出すのか身構える。
が、実際には想像以上にぶっ飛んだジイさんだった。

「ほう・・?上条当麻・別名幻想殺しだったかのう」
僧正は、隣の学園都市2位など存在しないように俺だけに話かける。
「で、上里なるものを回収しに来たと・・そうゆう話かのう」

一方通行が、存在を無視されて不服そうに、僧正を睨みつける。
俺は、話をぶち壊されると困るので、一方通行を目で黙らせる。そもそも
圧倒的に戦闘力が上の存在に、できるだけつまらない戦いなど避けたほうがいい。
一方通行は俺の意思を察知したのか、不服そうだが発言を抑える。

「上条とやら、おぬしは御坂美琴がおぬしと婚約する前は、我らグレムリンの魔神
の合意で採点者になる予定じゃった。」
「だが、おぬしにその話をする前に、御坂美琴は我らからお主を取り上げ、我らを
人間アレイスターと結託し、おぬしらの世界から追放した」
「なんて御坂美琴に聞かされていたかのう?」
俺は正誤の判定しようもない話を聞かされ、ただ話を聴き続ける。

「まあ、アレは、御坂美琴は、自分が魔神に相当する存在になりつつあることに気
が付いておらんようじゃがのう・・」
「で・・まあそれは前置きじゃが・・正直な話・・ここは退屈でな・・上里が
きたおかげでなんとか飽きずにすんでおるのじゃ」

俺は僧正のなぞかけに意味をやっと理解する。
「で・・上里を譲るわけにはいかない?」

「うほほほ・・それでは高い点はやれんのを・・」

それまで口を噤んでいた一方通行が、たまらずに口を開く。
「おイ・・俺がテメエを愉快なオブジェに変えてしまえば終わりだよなア」

僧正は、相変わらず一方通行などそこにいないかのように反応しない。
一方通行はたまらずに攻撃を始める。
バン・・轟音を立て、ほとんど瞬間的に近隣のビル傍へ移動する。
地面に手を合わせ、地球の自転エネルギーの一部を運動エネルギーに変換し、
目の前にビルにたたきつける。数十万トンはありそうな高層ビルが、超音速に
加速され、僧正へぶつけられる。

「はァ・・これで・・?」

791■■■■:2016/11/15(火) 19:37:44 ID:QpcHdOwo
一方通行は今の現象が信じられないのか、目を丸くする。
「ほほ・・なんかぶつかったのかの・・」
僧正は片手、ぶつけられたビルを垂直にはねのける。

「はァ・・一方通行だったかの・・ベクトル操作かの・・」
「なかなか面白い見ものじゃが・・・魔神になりつつある御坂美琴の超荷電粒子砲
とやらに比べてささやかじゃのう・・」

一方通行は自分の渾身の攻撃がまるで通用しないことに衝撃を覚えたのか一言も
発しない。

「つまらんのオ・・上条」
「おぬしの婚約者でも一緒なら、楽しませてくれそうじゃが」

僧正は、片手を振り上げ、持ち上げる動作を始める、たちまち僧正の後ろに
山のような巨大な土塊が形成される。それが、僧正からあふれ出す熱のようなもので
沸騰し、酸化ケイ素の融点約1000度に達し、にぶい光を放出し始める。

ポイ・・
僧正はためらうこともなく俺たちに投げつける。余りに高速なのか、音すらすぐには
到達しない。
(オイオイ・・まったく話が通用しないぞ。このままじゃ・・一方通行はともかく
俺は死ぬ)
だが俺は死ぬことはなく、一方通行が事情を察知し、瞬間的に黒々とした数百枚の羽
根を広げ、土塊を跳ね返す。莫大な小山に匹敵する土塊はすべて散らされる。

僧正は、初めて敵として一方通行を見つめる。
「ほほほ・・一応天使の力の片鱗を使えるか」
「ならば少々遊ばしてもらおうかのオ・・」

僧正は手を大地につけ、なにやら始める。
「ほほほ・・まあどうせおぬしら以外は住民もおらんしのう・・」

「オイ・・何をする気だ・・」

「わからんかの・・」
ドオ・ドオ・ドオ・・
耳をつんざく重低音のまるで地球が割れるような、轟音とカタカタと震度4くらいの
細かな揺れが次第に強さを増しながら響きわたる。
「マグマ・オーシャンて言葉を知っているかの?」

俺はそれほど成績のよくない高校生当然知らない、が・・隣の一方通行は違う。
学園都市で2番目に優秀な学生。即答する。
「46億年前の地球草創期に地球の表面が微惑星の衝突で溶けていたて話かァ・・?」

「ほお・・さすがに知っておるか・・」
「それをじゃ・・再現させてもらおうかのう・・」

僧正は、軽くまるで電子レンジで米を炊くような口調で、さらっととんでもないことを
言い始める。1兆分の一の力に弱体化されようが魔神は魔神、小さな惑星の表面をす
べて溶解するなど些細な事だと。

あっという間に、僧正と俺たちの周辺を除く見渡す限りのすべての大地が、溶岩の
ように煮えたぎり、莫大な赤外線を放出し始める。

温度計がないので測定しようもないが、おそらくは、2000度はありそうな灼熱
空間で意識が飛びそうになる。一方通行は赤外線を反射できそうだが、右手だけでは
全身から照射される溶鉱炉のような赤外線を防ぐすべもない。

「もう・・あきらめてもらおうかのう」
「できるか・俺は美琴に約束した上里を連れ帰ると・・」

「ほほほ・・その状態でどうする気やら・・」
一方通行は、手を地につけ、溶岩全体の熱を奪うように演算を開始するが、あまりの
質量の地球全体に広がる、深さ10kmのマグマ全体の冷却はさすがにできないの
か、状況は一切変わらない。
「楽には死んでもらわんよ」
「はあ?」

「この空間は24時間ですべてがリセットさせるようじゃ」
「テメエ・・」
「何度でも安心して殺せる・・とまあそんな話だろうて」

792■■■■:2016/11/15(火) 19:39:13 ID:QpcHdOwo
「テメエ・・それだけの力がありながらツマンネエ野郎だな」
強がりは吐くが正直しゃべるのもつらい。

俺は、溶岩に熱せれたサウナという表現すら生ぬるい刺すような熱気で肌を焦がされ
フライパンの焼き魚になった気分だ。所詮は右手で触れたものしか打ち消すことが
できない中途半端な能力。神様に太刀打ちなどできるはずもない。
(くそ・・このままじゃ・・)
もう限界だ。後30秒で俺の肺は焦がされ、死ぬだけだ。一方通行も莫大な赤外線を
無力化するのに力を喰われ、そう遠くないうち意識が飛ぶだろう。

薄れゆく意識の中で必死に婚約者を呼び続ける。
(美琴・・すまん。お前の言う通りにしておけばよ・・)
もう終わり・・だ・・そう思った瞬間・・異変は起こった。

あれほど、地平線の果てまでおそらくこの小さな惑星一杯まで広がった猖獗を極め
たマグマが急速に冷却され、普通の土くれに変わっていく。余りに突然の変化で俺は
頭が切り替わらないが、こんな惑星規模でエネルギーを操作できる存在は、おれは
一人しか知らない。御坂美琴、俺の配偶者だ。

姿は見せないが、天上から突然声が響き渡る。
「当麻、おそくなってごめん」
「ああ、何とか死なずにすんだよ」
俺は、かろうじて命が救われたことに胸をなでおろす。
いくら何度でもやり直せるにしても単純に死の恐怖は怖い。
俺は美琴の介入によって、どうやら命だけは助かり安堵の溜息をつく。

美琴の声は突然、僧正に語り始める。

「私には貴方を糾弾する資格なんてない」
「だけど、今の貴方のやり方には賛成できない」

僧正は、美琴の青臭い言葉に軽く反応する。
「ほお・・ひよっこが言うの・・」

「ええ・・アンタの言うとおり私に人生経験なんかしれてるのは事実」
「だけど、聡明なアンタなら弱いもの虐めのくだらなさくらいわかるでしょ」

「弱いもの虐めだと?」

「ええ。今の当麻や一方通行じゃどう逆立ちしてもアンタに太刀打ちできないくらい
わかっているでしょ」
「それを自分の思いのままにならないから、問答無用に地球ごと壊すなんて間違っ
ているわ」

魔神僧正は骨だらけの体をかさこそと音を立て笑い始める。
うほほほ・・

いかにも馬鹿にしたような驕りが滲み出た笑い。
「つまらないの・・破壊力こそ突出しているだけで後はお子様か・・」

冷ややかさなアルトボイスが俺の胸に響き渡る。
「アンタも長く生きた割には随分三下なセリフね・・結局仏教界で現実的な
方法ではなんら力を得ることができず、しかも即身仏として認めさせる
ことに失敗したただの失敗者じゃないの・・」

僧正の顔に、はっきりと動揺が広がる。ただの小娘が、自分の過去をズバリ指摘
されたのか、自分の黒歴史を思い出したくないのか明らかに震え始める。

「なぜ・・それを・・知っている?」

「さあね。私はアンタ達と違ってもともと才能のない劣等生なのよ、それを自覚し、
必死で巨大な障害を何度も乗り越えた。だから・・当然ライバルとか敵のことは隅々
まで調べるわ」

「ほほほ・・これは少し舐めていたかの」

「アンタの能力は土を扱う能力よね・・ベースは。だったら河川の改修工事や
田畑を造成して貧しかった中世農民をいくらでも豊かにできたでしょう」

「空海や行基のことを言っているのかの・・そんなもの脚色である事を
知らん御坂美琴ではあるまい」
空間のどこからか大きなため息が響く、

793■■■■:2016/11/15(火) 19:40:32 ID:QpcHdOwo
「これだから・・神様風情は困ったものよね・・ひねくれすぎよ」

「アンタには力があるじゃない。でも現実に何かしたの?」
「アンタが偽善者と言うアンタから見ればささいな空海なんて誰でも知っているわ」
「どんな小さくても一歩を踏み出した空海のほうが、文句だけぶーたれるアンタより
何倍もましよ」

「ははは・・はおぬしに何がわかる」
「儂を勝手にこの世から奪おうとしたお主に・・」

「勝手・・ね。アレイスターの運命を狂わし、全人類に2度の大戦を起こし
おもちゃのように運命を操ってきた貴方達にそんな事を言う資格なんてないわ・・」

「余計なお世話じゃ。70億人を一度殺したお主にも儂を裁く資格なぞないのでは
ないか」

「ええ・・だから・・私ではなく当麻に判断してもらうわ・・」

美琴のアルトボイスが空間に響き渡る。その刹那無数の光の柱が僧正の体に
突き刺さる。あれだけ飄々とした僧正がうめき苦しみ始める。
「何を・・」
「これはね・・呪詛・・よ。貴方達の不作為や思いつきで命を奪われた無辜の民の
慟哭よ」

「当麻・・今なら幻想殺しで僧正を倒せる。当麻がどうするか決めて」
「ああわかった」

正直言ってどっちが正しいのか俺にはよくわからない。だが、常に少しでも前進して
前向きに事を運ぼうとする僧正、あり余る力をただ自分の思い付きのまま行使する
僧正に率直に言ってひとつも同情する気にならない。

まあ考えるまでもないか・・

「僧正、俺はお前の信念や気持ち、歴史は知らない。だが、いきなり話もせず、力
のないものを嬲り殺すようなやり方にちっとも賛成できない。お前が、力で脅せば
すべて済むなんてそんな幻想を抱いているなら、幻想ごとお前をぶち殺す」
俺はただの右手を、突き出し僧正の骨だらけの体をぶっ飛ばす。

魔力をほとんど失ったほとんど質量のない体は、一撃で9割以上崩れ去った。
・・その瞬間俺の意識は飛んだ・・

///////////
11日 午前4時

私は、回収した当麻と一方通行をベッドの上に寝せている。

木原唯一と上里ハーレムを全員拘束し、研究所の地下倉庫に人の脳を昏睡させる
低周波音波攻撃で黙らせている。

まあ無事終わったわね・・・・
(正直・・ヒヤッとしたわ・・僧正に当麻を殺されるかと思ったわ・・間一髪ね)
一方通行はまだ昏睡しているが、当麻は瞼をもぞもぞ動かし、目を覚ます。
私は、頑張ってくれた当麻に軽く接吻を交わす。
(本当に帰ってきてくれてよかったわ・・)

私は、ミルクティーとバームクーヘンを接客テーブルに準備し、当麻を
進める。
「当麻お疲れ様」
「美琴・・終わったぞ」
「ありがとう」

私は冗談半分で当麻へ苦言を言う。

「だから・・言ったじゃない。本人が直接行くなんて」
「悪い、本当美琴言う通りだったすまん」
当麻は、
「で・・僧正はどうなる」

「死なせないわ・・ふふ・・・死なしてなるもんですか・・」
「美琴ならそう言うと思っていたよ」
「私はね・・あんな奴を簡単に殺したくないのよ。」

794■■■■:2016/11/15(火) 19:41:17 ID:QpcHdOwo
「そうだな・・。」
「私はね、少なくとも力を持つものにはそれなりの責任と矜持がいると思うのよ」
当麻が私の事を真剣に見つめる。普段はどことなく、チャラ男的なとこもなくはない
上条当麻が私と真剣に心のやり取りをするときの、鋭いまなざし。
(・これがあるからころ私は当麻を愛したのだから・・)

「ああそうだな」

「彼は、挫折の末に、魔神になった」
「だけど、その得た力を何ら有効に活用しなかった」

「正直・・・私にはわからない。ただこの世界を滅ぼす力を得ただけであれほど
狂う理由がね」

「彼は・・仏教界に絶望し、即身仏になることさえ否定され、その恨みで魔神
なった。その絶望を私は理解できない」
「それでもやっぱり・・彼を肯定できない」

私は当麻の傍へ体を預け、当麻は私の頭を撫で始める。
私は、当麻が撫でるままに任せる。
「やっぱり当麻の体は暖かい、そばにいてくれるだけで心が休まるわ」
「ああ、俺もだ」

「ね・・当麻は今日は休もう?」
「え?学校が・・」

「いいわよ、どうせ授業なんて聞かないでしょ。大丈夫、風紀委員の特別任務で
公休を申請するわ。だから・・美琴様に感謝して・・ね・いいでしょ」

「俺に拒否権はなさそうだな・・」
「ふふ ありがとう・・」
「じゃ・・まずお風呂に入ろう」
「ああ・・」
「楽しませてね」
続く

795■■■■:2016/11/15(火) 19:43:19 ID:QpcHdOwo
以上とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 10話 ;2章-5
の投稿を終わります。

796■■■■:2016/11/15(火) 19:47:58 ID:QpcHdOwo
すいません上げてしまいました。

797■■■■:2016/11/22(火) 23:12:23 ID:EKVDtXrc
保守

798・・・:2016/11/23(水) 18:59:10 ID:AB8LutN2
ども、・・・です。
勤労感謝の日なのです。
まずは鎌池センセーサンキュー

では、昨日のいい夫婦の日です
ではは〜

799日常3:2016/11/23(水) 19:01:14 ID:AB8LutN2


AM8:30

燦々と日光が照らす寝室。
起き上がったのは、新婚生活満喫中の上条当麻だ。
2週間前に式を挙げたばかりの嫁は上条美琴。
今はキッチンにいるのだろう。

「ん〜、ふぁ〜〜」

ぐぐっと背伸び。
ベッドはシングルベッドだ。
原因は予定より多いクローゼット、
もとい中のゲコ太グッズである。
ベッドの大きさに最初は反対した美琴だが、2人一緒にシングルベッドで寝ると狭くて窮屈だ、と聞いた瞬間賛成しおった。
わかりやすい子である。

「さてと」

立ちあがり、リビングに向かう上条。
パジャマは美琴とおそろいのモフモフゲコ太である。当初は大反対した上条だが、「着てくれなきゃ一緒に寝てあげない!!」という言葉に折れた。
今なら絶対にないな、と思うのだが、若干悔しいことに着心地のよさは折り紙つきなのだった。

「おはよう、美琴」

リビングに入ると、トテトテと新妻が台所から出てきた。
さらに、赤面してもじもじしているのだった。
彼女は「あ、あのね」を数回口にして、ようやく本題に入る。

「あの……その…………ご、ご飯にする? それとも、わ、わたしにしゅる? それとも、わ・た・し?」

瞬き数回、美琴の虜となっている上条は、すぐに答えを出すのだった。

「えーと、新聞新聞…………どれどれ? ふむ、あの自動車メーカーの株上がってるじゃん、今度の取り引きも有利に「無視すんなやゴラァァァアアアアアア!!」ぬおっ!!」

ソファに押し倒される上条。
セクシーな感じでない。
どちらかというと、はっけよーい、のこった!!である。

「ア!ン!タ!は、結婚しても相変わらずスルーすんのか!! やんのかコラ!!」
「うっせぇ!! 朝一からアホなこと言われりゃスルーもしたくなるわ!!」

ドタバタとソファの上でじゃれる2人。
5分後、勝者は美琴に決まった。
拳を掲げ立つ美琴の背を見ながら、
ソファに寝そべる上条さんである。

「……もう、お嫁に、いけない」
「もう嫁になってるでしょ」
「なったのは旦那だっつの」
「……誰の?」
「美琴さんの」
「……えへ〜」

ニマニマ〜と幸せを噛み締める嫁。
ふわふわしている。地に足がついていない。
実際、ちょっと浮いてる。
あまりの可愛さに、旦那はついついギュムーっと抱き締めた。

「ふぁ?」
「いやー、その、先ほどの質問にまだ答えていないなと思いまして」
「あ、あの……」

両者真っ赤である。

「…………本番は夜だけど」
「ふにゃー」

ふにゃー、まで1秒もなかった。
しかし、手慣れた動作でゲンコロする当麻。
気絶した嫁を抱き締めて、ソファでゆっくりするのだった。

800日常3:2016/11/23(水) 19:02:52 ID:AB8LutN2
AM9:00

気絶から復帰した美琴は台所にいる。
冷めた朝食を温めなおしているのだ。
食器を早々に準備した上条は新聞を読む。

仕事のために。

(あの自動車メーカーには浜面が入り込んでる、さすがだな。西の紛争に関わってるのはあの武器商社か? 魔術業界の臭いがすんな、インデックスに聞いとこう。あの国の和平は……一方通行が関わってたな。今後の流れは打ち合わせとこう)

とはいえ、規模が変わっただけで、
やっていることは高校の頃から変わっていなかったりする。
ちょうど読み終わった時に、美琴の呼ぶ声が聞こえた。

テーブルの上に並ぶのは、
ごはん、味噌汁、おひたし、焼き魚、煮込み料理、漬物。
完璧な朝食だった。
同棲初期はこうはいかない。
イベリコ豚と若鶏とチョリソーのパエリア、佛跳牆、ウォルドルフサラダ、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナが食卓に並んだ。
朝食に。
夕食は推して知るべし、である。
当初は喜んでいた上条だったが、
数週間後に胃が悲鳴を挙げた。
頑張ったと思う。

「「いただきます」」

美琴は上条の向かいではなく、右隣に座っている。
遠いのはイヤなのだった。
しばらく黙々と食べる上条に、少ししておずおずと尋ねた。

「どう、かな……?」
「メチャクチャウメェ!!」

即答。
小さく息を吐く美琴を見て、上条は考え込む。
そして、幸せそうに微笑んだ。
再びふにゃーしそうになるのを我慢し、
美琴はとりあえず話を続ける。

「な、なによ、ニヤニヤして、どうせ、昔は世間ずれしてたわよ」

パチクリと瞬きする上条。
そして、笑いながら否定した。

「違う違う、この味、母さんから習ったんだろ?」
「うん、そうだけど?」
「オレには子供の頃の記憶がないはずだ」
「え? うん」
「でもさ、最近美琴の料理を懐かしく感じるんだ。きっと、頭じゃなくて心が覚えてるんだよ」
「…………きっと……ううん、絶対そうよ」
「そこまで考えて、いずれはこの味がさ、オレ達の子供の母の味になるんだなぁって「ふにゃー」はいはいゲンコロ」

美琴は気絶し、当麻の肩に倒れてきた。
能力を右手で打ち消す。
夫は妻の背中を撫でながら、自分の頭を彼女の頭に重ねた。

(なんかさ、そう考えると幸せだなって、思ったんだ)


AM10:00

「デートしましょう」

美琴は不思議な言葉を聞き、コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置く。

「え? なに当麻死ぬの?」
「生きたい!! すぐ殺すな!!」
「だって、当麻がデートなんて、なにかあるとしか…………」
「え? 不幸がってこと? じゃあ見せてやろう、幸せなデートってやつを!!」
「……………………まぁ、いっか。で、最初の予定は?」

上条が、固まる。

「…………へ?」
「だから、予定」

唸り始める旦那。
コイツ、予定もなく誘ったのかよ。

「じゃ…………映画」
「……アンタにしては及第点ね」
「映画レベルで!!?」

落ち込む旦那を無視して準備開始。
心のなかでは嬉しすぎてゲコ太たちがパレードしてることは秘密である。

801日常3:2016/11/23(水) 19:04:17 ID:AB8LutN2


AM:11:00

外は快晴。
風が冷たい。
しかし、心はポカポカなのである。

「で、旦那様、なに見るんでせう?」
「ちゃかすなよ。そうですねぇ……」

ついでに腕もぬっくぬくだ。
腕組みしながら歩く2人に、
周囲にいる隣が涼しい方々は極寒の視線を送る。
しかし、人生の春を満喫中の上条夫妻には、効果はないようだ。

「アクション映画は、さんざん見たしな」
「恋愛ものは、我慢できなくなるので却下」
「ん? なんか我慢してんの?」
「なに聞いてるのよスケベ!!!!」
「……どう考えても我慢できない嫁さんの方がスケベだろ」
「…………ホームドラマ?」
「それは間違いなく寝る」
「アンタねぇ…………ま、ムリか」
「ってことで、コメディ」
「昨日テレビで見たじゃん」
「ほかに何があるよ」
「ん? ……アニメ!!」
「!!!! や、やだーー!! ゲコ太地獄はもうやだーー!!」
「さあ、いっこう♪ すっぐいっこう♪」

腕組むんじゃなかったと、ちょっと後悔した当麻さんである。


PM03:25

今日の戦績。
・近年新しく登場した魔神(♀)の撃破
・同上に当麻がフラグを立てる
・木原唯一の影響を受けた新level5(♂)の撃破
・同上に美琴がフラグを立てる
・助けた男女10名前後にフラグを立てる
・昼食を戦闘の途中でいただく

「あぁ、もう、やってらんねー」
「疲れたー、さすがハプニング遭遇率100%ね」
「やめて、落ち込む」

事件現場からなにくわぬ顔で出てきた夫婦。
世界崩壊レベルの戦闘だったのだが、
当麻も美琴もピンピンしていた。
服がちょっと汚れた程度である。
いや、戦闘中では夫は血も吐いたし、いくつか骨から変な音が聞こえていた。
しかし、病院に行くほどではないそうだ。
高校の、正確には新約12巻からである。
あまりの回復ぶりなので、後になにかの伏線になるかもしれない。

「とはいえ、すまんな美琴。オレの不幸のせいで…………」
「…………映画に興味があまりわかない理由がわかったわ」
「???」
「私たち、日常生活がアクションじゃない、新鮮味ないわよ」
「いや、まぁ、そうかもしれないけど」
「ファンタジーものも、SFものも取り揃えております」
「まぁ、そうだけどさぁ」
「それに…………」
「それに、なんだむぐっ!!!?」
「…………ぷふぅ、ラブロマンスも扱いがあ、あり、ましゅぅ…………」
「…………なに無理してんだよ」
「無理してにゃい」

嫁は旦那の胸に顔を埋めた。
こんなの抱き締めるしかない。

「無理なんて、してない」
「わかったわかった」
「…………私は、こんな、ドタバタも含めて、アンタとの生活が、好き……」
「…………」
「アンタは、わたしといて、不幸…………?」
「そんな訳ないだろ? 幸せですよ、最高にさ」
「…………よかった」

抱き締めるふりして、美琴の頭を押さえつける当麻。
いま、上を向いてもらうわけにはいかない。

「…………いいかもしれないな」
「なにが?」
「美琴とみるなら、ホームドラマもいいかもと思ったんだよ」
「…………見るのはゲコ太だからね」
「くそぅ、うまくいかないもんだ」

口ではそういうものの、旦那の顔はいろいろとぐしゃぐしゃだったりする。

802日常3:2016/11/23(水) 19:05:47 ID:AB8LutN2
PM3:40

『どうしたの? ぴょんぴょん?』
『ぴょんぴょんじゃなくて、ぴょん子!! 名前は覚えてよー』

スクリーンに映る、かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ、あわせてぴょみょみょ…………。
しかし、

「すこー、すかー、みこ……むにゃー」
「すぴー、とぅ、ま、すー、すー」

彼らの意識は、夢の中である。
健やかな寝息をたてる2人だが、

「……と、うま……すやゃ」
「……みこ、と……ぐこー」

寝言で互いの名を呼び、安堵の笑みを浮かべている。
さらに、恋人繋ぎをしているそれは、いっさい解かれることはないようだった。






PM:5:00

「不覚!! ……寝てしまうなんて」

映画館からの帰り道、
心底悔しそうにする美琴さんである。
しかし腕は組んだままだ。

「確かに、金払って寝たようなもんだもんな」

現在、映画の料金くらいなんてことはないはずなのだが、
高校時代【生まれたとき】からの考え方は容易には変えられないのだった。

「……もう1回見るしかないか」
「ふざけんな、もう3回目だろうが、内容も覚えただろうが」
「むぅ……しょーがない、美琴センセーが折れてあげませう」
「こっちが折れてゲコ太見たのに、なんでまた折れてもらってるのオレ?」
「じゃ、代わりに夕飯お願いね」
「ん〜、ミコッちゃんの料理がいいなー」
「たまにはいいじゃない」
「ま、いっか、任せなさい」

PM6:27

「とはいったものの、ご飯に野菜炒めに、味噌汁とか、料理っていう料理じゃねーよなぁ」

テーブルの上に並んでいるのは、
チンジャオロース、酢豚、中華スープ、チャーハン、杏仁豆腐(市販)。
それなりに作り込んでいるが、
美琴の料理を毎日食べる上条には三流以下にみえる。
箸を動かす手も重い。
やっぱり、美琴の料理の方がよかったよ、と声をかけようとした上条は固まる。

「お、おいびぃ〜、ぐすっ、おいじぃ〜」

号泣されてやがった。

「ど、どないしたん?」

ティッシュを彼女の鼻に持っていく。
チーン、という音が鳴ったあと、ゴミ箱に投げた。

「ご、ごりぇからも、じゅっと、とうまの゛ ごばんをだゃべられるにゃんで……」
「同じようなことを、オレが朝言った気がしますが?」

というか、同棲中もたまには担当していたと思う。

「じあわ゛ぜでずー」

当麻はため息を吐きながら抱き寄せた。

「これくらいで喜ぶなよ、もっといろんな幸せが待ってるんだからさ」
「ほんど……? うれじぃよ〜!! びゃ〜」

抱き締めながら、当麻はテーブルの上を見る。
視線の先には、半分ほど消えているボトル。
苦笑しつつも、胸の中で泣く嫁とともに、彼は幸せを噛み締めた。

803日常3:2016/11/23(水) 19:07:25 ID:AB8LutN2
PM7:46

「酔いはある程度覚めましたか?」
「……はい」

ソファの上、旦那に抱っこされている美琴。
抱きついてはいるが、当麻の顔を見ることはできない。

(にゃにしてんのよ……わたし……)

旦那に
「ア〜ンしなさい!!」
と命令し、
「口移しじゃないとやだー」
と、駄々をこね、
「ねぇ、キス、して……」
と、ねだった。

さらに旦那は全部こなしてくれた。

もうすぐ、ふにゃる。
それが理由なのか、当麻は頭から手を放さない。

「……なぁ、美琴」
「な、なんでしょう? 当麻さん」
「なぜ敬語? まぁ、それはともかく、お風呂沸いてますよ」
「あ、そそう? じゃあ、先に入ってよ」
「やだ」

なぜかの拒否。
断固の拒否だ。

「……? じゃあ、わたしから入ればいいの?」
「いやです、一緒に入りましょう」

かぽーん

「な、なに言ってんのよ!!! スケベ!!」
「いや、オレ達夫婦だし、もっとすごいことをもうやっ「わーわーわー!!!」

美琴の頭から湯気が出ている。
きっと食パンを口にいれたらこんがり焼けるだろう。

「だって、それは、その……でも、お風呂は、明かりが……」

上条夫妻は電気を消して行うことが多いご様子だ。
ナニをかは知らんけど。
とにかく、見られるのはいろいろといっぱいおっぱ……いっぱいいっぱいなのだった。
しかし、

「ダメ。あんなにいうこと聞いてあげたのに、こっちのお願いは聞いてくれないのか?」

旦那は鬼畜で元気だった。
もう、トラブルと遊ぶヤンチャボーイの時間は昼に済ませている。
これからは大人のお時間なのだった。

「ぁう、その、あの……」
「行くぞ」
「ぁぅ……ちーん」

トーストが焼けたらしい。

「美琴」
「あぅ、あ、あ…………むぅ」

口づけ。
へにょへにょと旦那に倒れ込む嫁。
もう、抵抗力0である。
騎士隊長もびっくりの効力なのだった。

「おっと、そうそう」

旦那は、なにかを思い出し、

「悪いな、こっからは見せらんねぇんだ」

おもむろにその右手を掲げた。

804日常3:2016/11/23(水) 19:09:09 ID:AB8LutN2



パキーーーーーン

805・・・:2016/11/23(水) 19:12:01 ID:AB8LutN2
以上でーす




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