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【デルタフォース】クラスの三バカの日常Part5
317
:
☆
:2011/06/08(水) 20:01:54 ID:Fl5OuDYc
元から土御門は彼に莫大な借りがあった。
いくら情報、人心を「ある程度は」操作するプロといっても土御門は所詮個人だ。
様々な組織を裏切りつつある彼は、むしろそういった分野においては並みのプロ以上の苦労を強いられていた。
新坂道男はその地位や権限もさることながら、情報操作の面ではもはや土御門ですら舌を巻くほどの腕前を持っていた。
今まで幾度も起こって来た魔術師の侵攻を始めとする学園都市のトラブルにおいて、土御門が到底カバーしえないどころかどう始末をつけていいか思わず悩むようなところまでをも処理し続けてきた。
「だからこの後、初春飾利とイギリスのシスターが入れ替わりでイギリスと学園都市を出入りすることはもちろん、
そっから先に繋がるであろう『戦争』においてもこいつが間違いなく出しゃばってくるだろうから念を押して打ち合わせでもしておくかと
今こいつと連絡取り合っていたところだったんだ。そうしたら……」
「ああ成程。ふーん、単なる遊び好きの馬鹿じゃなかったんだね。」
「そんな奴だったら数百倍ましだったさ。」
「元春いつだったか言ってたよね、統括理事会は2つのタイプに分かれるって。
真っ先に死ぬべきクソ野郎と善人であるが故に貧乏くじひちゃう人だって。
あの人は?」
「間違いなく前者だな。」
(1秒もかからず即答しちゃったよ。騙し合いや頭脳戦が得意な「背中指す刃」のこいつにも苦手な相手がいるんだ。
元春には悪いけどなんか面白いというか新鮮な気持ちだなあ。)
しかし月夜がそれで納得してしまった分、やはり彼女自身はまだ土御門の術中に嵌っていたといえた。
(さすがに月夜には言えんよな。俺が一度あの悪魔と対決した結果………生涯最大といっていい煮え湯を飲まされたことなんか。)
借りがあるどころではない。
本来裏のかき合いといったものに十分自信があったはずの彼を、その得意分野で圧倒的に上回り、そして………
(未だ疼く。あいつの声を、噂を聞くと耳が……)
今はもう問題がないが、負けの代償としてかつて限界をこえた音を聞かされたことで鼓膜が破られ、
数か月の間難聴と痛みと疼きに苦しんだ両耳を抑えつつ、
土御門は今もときどき考える。
(もし、あの時ほんの紙一重、俺が油断しなかったら。奴のあの策を見破り、逆手にとって打ち勝ったとしたら……ハッ!もう仕方ないか。いまさら考えた所で。)
アレイスターがあらゆる要素を備える『人間』だとしたら、そういったセオリーを覆し得る正に「悪魔」といっていいかもしれない。
その行動原理はあの『人間』と違って分かりにくくなく、単に「面白そうからか」という、単純、且つ最も厄介なもの。
トリックスターと言われながらも自分の世界を守るという、まだ分かりやすい原理の下に行動している土御門とは根本的に格が違う気さえした。
しかし、それでも。
(新坂。もし、お前が俺の仲間を、世界をその興味で弄ぶっていうんだったら。
この「背中刺す刃」は今度こそ、いや、背後といわずどこからでも、お前をめった刺しにする。
例えそれで俺自身が折れることになろうともな。)
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