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【SS】コスモス文庫&秋桜友達【宮廷社】

1開設者</b><font color=#FF0000>(GCE9hnmM)</font><b>:2003/05/14(水) 11:26 ID:TxRQj2tQ
ごきげんよう、みなさま。
ここは今野作品周辺のSSをまったりと愛でるスレです。SSの投下および感想は
こちらでどうぞ。

・書き手さんに対する感謝とねぎらいの言葉を忘れずに。
・他サイトや他板からの転載、部分改変(盗作)は厳禁です。
・リクエストするだけでなく、みなさまもSSを書いてみましょう。
・エロ作品は自粛を。原作のイメージを壊さないようご配慮願います。

16ショコラとモラトリアム</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/01(日) 01:19 ID:z8jKJjIE
「白ポンチョの買出し?」
中等部時代の同級生からの電話は、なかなか意表を突くお誘いだった。
高等部の入学式も済まないうちに「中等部時代」もないものだが、ほんの
半月足らず前の卒業式から、随分たったような気がしていた。
『ええ、高等部用に新調してみようかと思って。笙子さんもいかが?』
受話器の向こうで敦子さんは屈託無く笑った。
瞳子さんと美幸さんもごいっしょらしい。せっかくだけど今回はパス。
『そう?残念ですわ。ところで笙子さん、もうクラブはお決めになって?』
「まだ、というかクラブに入るかどうかもわからないし・・・」
『まあ、もったいないわ。笙子さん行動力がおありになるのに』
バレンタインデーのことを言っているらしい。
思えば、あの日以来、変に一目置かれているようだった。

17ショコラとモラトリアム</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/01(日) 01:19 ID:z8jKJjIE
「クラブ活動かぁ」
受話器を置いた後も、しばらくぼんやりと考え込んでいた。
中等部ではクラブ活動に参加していなかったけれど、高等部でのことは
まだ決めていなかった。姉のように勉強ひとすじという気は毛頭ないが。
「ただいま」
母校を訪問していた姉の克美が、はかったようなタイミングで帰宅した。
「何ぼうっとしてるの?ほら、あんたが欲しがると思って持ってきたわよ」
姉が差し出したのは、リリアンかわら版の卒業式特集号だった。
首尾よく志望大学に合格して、最近、ミーハーな妹にも寛容な姉である。
『感動の送辞』小笠原祥子さまと支倉令さまのツーショット写真の下に・・
【撮影:写真部武嶋蔦子】
そう。高等部には、あの人がいるのだ。

18ごきげんよう、名無しさん:2003/06/01(日) 01:20 ID:z8jKJjIE
新刊でネタ補充前にチョト慣らし運転。相変わらずの駄作で申し訳ない
ですが、あんまり間をあけると更にレベルが落ちそうで・・・。

19ごきげんよう、名無しさん:2003/06/01(日) 19:27 ID:LapPOFyc
>>16-17
いい。続き読みたい。

笙子の行動は難しいから、敦子さんの側かな?
白ポンチョがなんだかわからないので、自分じゃ書けないよ……。

20ごきげんよう、名無しさん:2003/06/02(月) 01:14 ID:NDfEJis.
>>16-17
ほんわかしていい感じ。駄作だなんてとんでもない。

>>19
>白ポンチョ
機会があればコバルト四月号を読んでみてはいかがだろうか。

21聖書朗読クラブЯ</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/02(月) 23:49 ID:uvtm3YXk
「子供モデルをやってらしただけあって、お綺麗よね」
K駅近くの布屋さんに向かう道すがら、噂話に花が咲く。
「それに、頭もよろしいし、意外に行動力もおありだから・・」
話題となっているのは、今日不参加のとあるクラスメイトだった。
「瞳子さんは、ライバルになるかもって警戒してらっしゃるのよね」
「聞こえよがしの井戸端会議は、いいかげんになさって!」
先を歩いていた瞳子さんが、うんざりしたような顔で振り返った。
「あら、だって瞳子さん、陰でコソコソされるのお嫌いでしょう?」
「それに瞳子さんがおっしゃったのよ?笙子さんも呼ぼうって」
代役としてでなく、自分がいるときにもお誘いしなければ、と。
瞳子さんは、そういうことに結構こだわる。幼稚舎以来の親友の
美点も欠点も、十分にわきまえている敦子と美幸だった。

22聖書朗読クラブЯ</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/02(月) 23:49 ID:uvtm3YXk
「何かどっさり買い込んでしまいましたわね」
買い物を終えた少女たちは、『例の店』で寛いでいた。
「瞳子さん。それ全部、白ポンチョに付けるおつもり?」
「家に帰ってから考えるわ。それより、お気付きになって?」
敦子と美幸は顔を見合わせて笑った。
「もちろん。あの、おかっぱ頭の方でしょう?」
「たぶん外部受験組ね。中等部ではお見かけしたことないもの」
材料を吟味しつつ、三人ともしっかりチェックを入れていたのだ。
「瞳子さんの気の多いこと。笙子さんの次は謎の新入生?」
「まあ大変。新たなライバル出現かしら?」
真っ赤になって抗議する瞳子さんを優しい気持で見つめながら
また同じクラスになれたらいいな、と思う二人だった。

23ごきげんよう、名無しさん:2003/06/02(月) 23:50 ID:uvtm3YXk
すみません。少し悪ノリしてしまったかも・・。次回からは、もう少し
練ってから投下させていただきます。

24ごきげんよう、名無しさん:2003/06/03(火) 00:23 ID:/vvpEY1k
>>23
おもしろい!
>瞳子さんの気の多いこと。
瞳子がタラシみたいでワロタ。

25ごきげんよう、名無しさん:2003/06/05(木) 11:50 ID:tOii23JQ
>23
グッジョブ!
敦子と美幸に注目するとは、さすがサブキャラSS職人。
続きを気長に待ってます。

26巌流島異聞・壱</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/09(月) 23:07 ID:OQNtHQuI
「急いだ方がいいかしらね」
言葉とは裏腹に、ゆったりとした足取りで、歩いていく。
「あまり待たせると、癇癪を起こすかしら」
独り言ちつつ、尚もあせった様子は微塵も見せない。
いずれ、決着をつけねばならない相手ではあったが―
「そもそも決着がつくような話じゃないのよね」
そう、これは儀式のようなものだ。避けて通れない儀式。
その考えは、むしろ少女を面白がらせた。
とはいえ、残された時間はあまり多くはない。
突然、雲間に日が翳り、一陣の旋風が巻き起こった。
「いい雰囲気になってきたじゃない」
額に落ちかかる前髪をかきあげて、少女は不敵に笑った。

27巌流島異聞・弐</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/09(月) 23:07 ID:OQNtHQuI
「遅い!」
風の中に佇みながら、いらいらと足を踏み鳴らす。
「人を呼びつけておいて、いつまで待たすのよ」
約束の時刻まで、まだ間があったが、待つ身に時は長い。
待たせていい相手でもなく、早めに来てしまったが―
「何も先に来て待ってる必要はなかったのよね」
相手に宮本武蔵のポジションを取られたのは癪だった。
剣客小説を愛読する少女は、佐々木小次郎も嫌いでは
なかったが、負けるのは大嫌いだった。
いや、勝つとか負けるとか、そういう問題ではないが。
「ああ、鬱陶しい!」
風に弄られるお下げ髪をかきやって、少女は唇を噛んだ。

28巌流島異聞・参</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/09(月) 23:08 ID:OQNtHQuI
「早かったのね由乃ちゃん。だいぶお待たせしたかしら」
「いいえ、黄薔薇さま。私もさっき来たばかりですから」
「あら、江利子でいいのよ。もう令が黄薔薇さまだもの。
そして、妹のあなたは黄薔薇のつぼみ」
「いいえ、ご卒業なさるまでは江利子さまが黄薔薇さま。
お姉さまは黄薔薇のつぼみですわ」
ばちばちと火花が散る。戦いは既に始まっていた。
「姉と妹と、どちらが優位かは言うまでも無いわよね」
「お隣同士で育った従姉妹に勝る絆がありまして?」
風はいよいよ勢いを増し、互いの声をかき消さんばかり。
雲はさらに厚みを増し、互いの姿さえ覚束ない。
まさに風雲急を告げ、一触即発の状態だった。

29巌流島異聞・余話</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/09(月) 23:08 ID:OQNtHQuI
「で、その後、薔薇の館に移動して、お茶を飲みながら」
「・・何か、緊張感のカケラもないわね」
「しょうがないじゃない。雨が降りそうだったんだもん」
脱力感のあまり、コタツに突っ伏してしまった姉を尻目に
のほほんとお茶をすする由乃。
「ねえ令ちゃん。会わせたいひとがいるんだけど」
くいっとお茶を飲み干して、急に真顔になる。
「中等部の子なんだけど、入学式にロザリオを渡そうかと」
「嘘でしょ?」
狼狽える姉の姿が、微笑ましくて、愛しくて、情けない。
「うん。でも、いつかは本当になるんだよ?」
黄薔薇さまの『遺言』をあらためて噛みしめる由乃だった。

30ごきげんよう、名無しさん:2003/06/09(月) 23:10 ID:OQNtHQuI
言われるほど脇にこだわりがあるわけではないのですが
下手にメインに手を出すと、・・・まあこんなもんです。
あまり分不相応なことはするもんじゃないですね。

31ごきげんよう、名無しさん:2003/06/11(水) 02:12 ID:HnJXxQTU
>>26->>30
乙!
なんか雰囲気でてますね。江利子さまが武蔵か……w
いつも素敵なものを読ませていただいてありがとう!

32開設者</b><font color=#FF0000>(GCE9hnmM)</font><b>:2003/06/19(木) 11:48 ID:9viEQVCc
保守のため空ageします

33離れの住人</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/26(木) 19:47 ID:68ZhY20Q
「あら景さん、おかえりなさい。ちょうど良かったわ」
コンビニに寄って帰宅すると、弓子さんは出掛けるところだった。
「ついさっきまでお友達がいらしてたのよ」
友達?弓子さんの楽しそうな様子からすると祐巳ちゃんかしら。
「はらあの、ギリシャ彫刻みたいに綺麗なお嬢さん」
やれやれ、また彼女か。
「景さんとよく似た名前の、そう聖さんだわ。いやね物忘れがひどくなって」
コロコロと笑う弓子さん。本当に明るくなった。
きっかけはもちろん祐巳ちゃんだけど、彼女の存在も無視できないだろう。
「あら、いけない。もうこんな時間?じゃあ景さん、留守の間よろしくね」
弓子さんの白い日傘を見送っていると、背中に忍び寄る嫌〜な気配。
きわどいタイミングで身をかわすと、抱きつき魔がにま〜と笑っていた。

34離れの住人</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/06/26(木) 19:47 ID:68ZhY20Q
「ホントここ、落ち着くなぁ」
合鍵を寄こせと言われたときは、張ったおしてやろうかと思ったけど。
「そうしないと留守宅にあがり込めないじゃない」
すっかり自分のペースで寛いでいる。猫みたいだ。
「にゃーご」
祐巳ちゃんみたいな可愛い猫だったらいいのに。
「ふー!」
誰もあなたのぬいぐるみを取りやしないわよ。
「にゃおーん」
甘ったれた声出して気持悪いわね。って、何ガサガサやってるのよ!
「おにゃかすいた」
ため息で取り上げた買い物袋には、何故か二人分の材料が入っていた。

35ごきげんよう、名無しさん:2003/06/26(木) 19:50 ID:68ZhY20Q
新刊のフラゲも出そうな時期にあえて投下するような代物でもないんですが。
まあ、ドサクサ紛れということで、お目こぼしいただけないかと・・・。

げっ、誤字(汗)。すみません、次からは気をつけます。

36ごきげんよう、名無しさん:2003/06/26(木) 21:08 ID:qZcQ1R82
>>33->>35
キタキタキタキタキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
「にゃおーん」の聖さま可愛いっ!
いつもいつもいいものを読ませてもらえて幸せですわ…。

37選ばれしもの</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/07/15(火) 20:05 ID:vGIXokRk
「(ごきげんよう)」
押し殺したような低い声に少々ビビリつつ挨拶を返す。
「ご、ごきげんよう」
朝練巡りを終えてマリア像近くの茂みに潜り込むと敏腕記者が待っていた。
予期せぬ先客、というわけでもない。最近よくあるシチュエーションである。
「真美さんもよく続くわね」
「(私みたいなタイプは、こういう地道な取材活動が欠かせないのよ)」
前任者ほどの遭遇運に恵まれないのがコンプレックスらしい新任編集長は
登校する生徒たちに視線を向けつつ、気配を消すことに腐心していた。
「地道ねぇ」
どう見てもスクープ狙いなんだけど・・・ま、いいか。おっ!
カシャッ!蔦子お気に入りの被写体が校門をくぐるのが見えた。

38選ばれしもの</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/07/15(火) 20:05 ID:vGIXokRk
「今年の学園祭も紅薔薇姉妹でいくの?」
机に広げたスナップを築山三奈子さまがのぞき込んでいた。
真美さんは薔薇の館で取材中、というのはご存知らしい。
「まぁ、あの子にはゲリラみたいな真似は向いてないわね」
それが悪いということでもないのだろう。取材対象との間に信頼関係を築き
本人の承諾を得て記事にする、という誠実な報道姿勢は賞賛に値する。
「いずれにしろ祐巳さんを軸にするっていうのは、いい着眼点だわ」
一枚の写真を何気なく摘み上げながら、したり顔でうなずく三奈子さま。
ていうか、妹を探しに来たんじゃないなら、下級生の教室に一体何の用が?
「じゃあね。予備校があるから、失礼するわ」
一線を退いたと言いながら、油断のならない新聞部部長が弄んでいたのは
際立って背が高く髪の長い少女のスナップだった。

39ごきげんよう、名無しさん:2003/07/15(火) 20:07 ID:vGIXokRk
新刊も美味しいネタ満載ですが、自分的にはまだ使えないです。
不確定要素が多すぎて・・。割り切っちゃえばいいんでしょうけど。

40ごきげんよう、名無しさん:2003/07/17(木) 00:48 ID:tvcqsruE
そうか、三奈子さまは遭遇運に恵まれていたのか……。
いつものことながらウマー(゚Д゚)
たしかにさつさつは不確定要素が多いですな。

41ごきげんよう、名無しさん:2003/07/17(木) 08:58 ID:5Y3.7aGE
>39 乙。
まあ、その辺を割り切らない「いかにもありそうな話」へのこだわり
が貴方の持ち味だから…。ト、エラソウナコトヲイッテミル。
一方、原作との整合性なんか無視しちゃって突き抜けた妄想SS
も読んでみたいと思ったり…。ト、サラニカッテナコトヲイッテミル。

42ごきげんよう、名無しさん:2003/07/21(月) 22:59 ID:ozxcSFpY
ごきげんよう。桃の季節ですね。
阿呆なものを投下します・・・ごめんなさい。

43桃の季節:2003/07/21(月) 23:00 ID:ozxcSFpY
店先に並ぶ薄紅の果実
熟れ具合を確かめようと手を伸ばして
そんなルール違反をどうしてするの
桃なんて 触れた場所から腐ってしまうのよと
母にたしなめられた自分を 覚えている。

あの子は桃のようだった いつからそうなったのかは知らないけれど
甘い香りをいつも漂わせて
でも触れてはいけない、何故なら
触れた場所から腐ってしまうから。

誤ってかすめた指先に 涙することもできず

触れた場所から腐っていく
見るのが嫌なら食べてしまわねば
ああほら もう小さく黒ずみ始めてる
食べてしまわねば

いっそ腐って落ちてしまえば種を残すことはできたのかもしれないと
最後にかすめた思いは甘い香りに吹き散らされた

薄紅の 柔らかい果実
夢中になって食べ尽くしたあと目に入った
果芯の痛々しいまでの

赤。

44ごきげんよう、名無しさん:2003/07/21(月) 23:01 ID:ozxcSFpY
最初黄薔薇のつもりで書いたのですが白薔薇だかなんだかわからなくなりました。
お目汚し失礼しました。

45ごきげんよう、名無しさん:2003/07/24(木) 21:34 ID:ozrdswZA
>>44
たまにはこんなのもいいと思うYO。
うん、わかる気がする。

46トップダウン・その1</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/07/30(水) 19:35 ID:/XLKC1mM
「面白そうね」
独特のアンニュイな表情が消え、現金なまでに瞳が爛々と輝きだす。
あまりにも期待通りの反応に、築山三奈子は思わずガッツポーズをした。
「妹さんを説得していただけます?」
幸先よいスタート。やはり、このお方を最初に選んだのは正解だった。
「あら、説得なんてしないわよ。私の考えを伝えるだけ」
さすがだ。妹が自分に逆らうなんて微塵も考えていない。
そう、リリアン女学園の生徒にとって、『お姉さまの命令』は絶対だ。
「ただ、妹さんのそのまた妹さんが頑強に抵抗してまして」
かけらも動じる気配なく、これ以上ないくらいに人の悪い笑顔で
「あら、その方が面白いじゃない」
黄薔薇さまこと鳥居江利子さまとは、そういうお方だった。

47トップダウン・その2</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/07/30(水) 19:35 ID:/XLKC1mM
「面白そうね」
言い終えて何やら想像したらしく、本当に面白そうに「あはは」と笑う。
またもや期待通りの反応に気を良くして、一気にたたみかける。
「妹さんを説得していただけます?」
勢い込む三奈子に、このお方は見事にフェイントをかましてくれる。
「それは約束できないなあ」
「そんな!妹さんが参加してくれなくちゃお話になりません」
「そう、だから自分で決めさせなくちゃ。楽しみだね」
いつのまにやら、すっかり相手のペース。結局、妹に強制する気はないと。
でも、まあ、こんなに乗り気のお姉さまを見たら、彼女が断れるわけないか。
「がんばってねー」
白薔薇さまこと佐藤聖さまは、はかり知れない笑顔を浮かべて手を振った。

48トップダウン・その3</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/07/30(水) 19:36 ID:/XLKC1mM
「面白そうね」
理知的な微笑とともに発せられたお言葉に、作戦の成功を確信する。
勝算はあったが、三人が三人とも期待通りの反応をしてくれるとは!
「妹さんを説得していただけます?」
これでめでたく三色揃い踏み、パーフェクト!だが・・・。
「素直に言うことをきくような妹かしらね?」
確かに、『お姉さまの命令』でカタがつくような生易しい相手ではなかった。
まずい、彼女を落とせなければ企画は失敗だ。いったい、どうすれば・・・。
パニック寸前の後輩に、マリアさまのごとく慈愛に満ちた笑顔を向けて
「説得は無理だけど、『お願い』してみるわ。それでいいでしょう?」
なんて、事も無げにおっしゃるこのお方に敵う人なんているのだろうか?
紅薔薇さまこと水野蓉子さまの元を辞しながら、三奈子は額の汗を拭った。

49トップダウン・おまけ</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/07/30(水) 19:36 ID:/XLKC1mM
「まあ冬枯れのマスコミはネタに飢えてるわけだね」
石膏細工のような唇から、身も蓋もない台詞がこぼれ出る。
「発案者の意図はともかく、企画自体は悪くないわね」
秀でた額の少女の発言も、よく考えると、けっこう容赦がない。
「ふたりとも賛成してくれたようで何よりだわ」
あえて四捨五入した『まとめ』に、特に反対意見はなかった。
お昼前(授業中)の密談タイム。受験期の三年生だけに許された特権。
「で、新聞部をダシに夢を実現させようと?」
かたわらでは、クスクスと忍び笑い。いちおう反論しておこう。
「あら、イベントの主旨に賛同して協力するだけよ」
もちろん彼女たちには、説明なんか要らなかったけれど。
チャイムが鳴る。さて、昼休み妹訪問とまいりましょうか。

50ごきげんよう、名無しさん:2003/07/30(水) 19:38 ID:/XLKC1mM
最初はもっと「整合性無視した妄想」だったんですが、直しちゃいました。
結果、やっぱインパクトないですね。いろんな意味でカラ破れないなあ。

51ごきげんよう、名無しさん:2003/07/31(木) 21:09 ID:wzp5xj2s
乙。こういう雰囲気好きだ。本当にこういうことあったんだろうなぁって思う。

52ごきげんよう、名無しさん:2003/08/02(土) 17:00 ID:zRDVQs..
乙!面白かった!
こうゆう原作補完型SSていいよね。

53本日の景品</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/08/04(月) 21:30 ID:m/EmioN.
「お前、親友を悪魔に売り渡すつもりか!?」
少年は激昂して、坊ちゃん刈りのチンピラの胸倉を掴んだ。
「あれは俺のベスト・バトルだった。お前には悪いが、負けて悔いはないよ」
チンピラが、王座を失ったチャンピオンのように放心した表情でつぶやく。
「そういうわけでユキチは僕のものだ」
背後に回り込んだ悪魔に耳元で囁かれ、少年は思わず大きく仰け反った。
そのままゲーセン前に停めた真っ赤なオープンカーに引きずられていく。
「正月早々、憐れな後輩を拉致して、どこに連れてくつもりですか」
「もちろん、お城にご招待するのさ」
昨日、年賀状を見た時に感じた嫌〜な予感が的中してしまった。
「小林ぃ!おぼえてろよおぉぉぉぉ…」
少年の悲痛な叫び声が、唐辛子色の爆音とともに遠ざかっていった。

54本日の景品</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/08/04(月) 21:30 ID:m/EmioN.
「小笠原?」
冗談抜きでお城の名に恥じない大邸宅の表札は『柏木』ではなかった。
まさか。
「気がついたかい?そう、我が愛しのシンデレラのお城だよ」
先輩が王子の役で客演したリリアンの舞台劇で主役をはったあのひと。
「あけましておめでとうございます。優です」
リリアン女学園の次期生徒会長にして全校生徒あこがれのあのひと。
「義叔母さま。今日は後輩を連れてきましたよ」
少年の実の姉がことあるごとに自慢し、崇拝してやまないあのひと。
「福沢祐麒さん?いらっしゃい。今日は女所帯だったから心強いわ」
上品なご婦人とギクシャクと挨拶を交わし、ついとあげた視線の先に
着物姿のそのひとが微笑んでいた。

55ごきげんよう、名無しさん:2003/08/04(月) 21:32 ID:m/EmioN.
自分にとっては鬼門の花寺キャラに、無謀なる再挑戦です。
…やっぱり玉砕かな。すみません、出直して来ます。

56ごきげんよう、名無しさん:2003/08/05(火) 02:11 ID:RYmZUt8s
いやいや、よく描けてますよ。
「坊ちゃん刈りのチンピラ」にワラタ

57ごきげんよう、名無しさん:2003/08/06(水) 00:17 ID:J33Ho0iI
いつものことながら上手いな。
リアルに想像できてワロタ。

58聖書朗読クラブSs</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/12(金) 22:02 ID:C14QXXco
「松平さん、それは何ですか?」
健康診断には場違いに個性的な“てるてる坊主”を見咎めた担任が言った。
「何って、白ポンチョですわ。先生」
縦ロールの少女が「似合うでしょ?」とばかりに裾をひるがえしてみせる。
おかっぱの少女が深々とため息をつくのを見て、敦子と美幸はクスリと笑った。
「かまいませんでしょ?フリルで縁取りしてもレントゲンには映りませんもの」
そう言えば、スパンコールを断念したのはそんな理由だった。
「チャラチャラした格好、みっともないこと!」
苦笑気味の担任に代わって、ずば抜けて長身の少女が鋭い声を投げつける。
「・・・また始まった」
乃梨子さんが天を仰ぎ、当事者を除く一年椿組の全員が息を飲んだ。
瞳子さんと可南子さん。睨みあう天敵同士の間にバチバチと火花が散っていた。

59聖書朗読クラブSs</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/12(金) 22:03 ID:C14QXXco
「あんたってほんと、馬鹿よね」
言葉は容赦ないが、瞳子さんに向ける乃梨子さんの眼差しは優しかった。
「よろしいじゃありませんの。どなたかに迷惑をかけるわけじゃありませんわ」
来年の白ポンチョ構想に水を刺された瞳子さんも、気分を害した風はなかった。
このお二人の場合には、毒舌の応酬にも暖かいものが通っているように感じる。
「お気を悪くなさる『どなたか』ならいそうだけどね」
あ、言っちゃった。敦子と美幸は思わず顔を見合わせた。
「それは『どなたか』が好きになさったらよろしいんだわ」
さらりと流したものの、やはり平常心でいられない話題ではあるようだった。
「ま、いいか。今日も来るんでしょ?敦子さん美幸さん、ごきげんよう」
残された二人が同級生トリオの話題で大いに盛り上がったのは言うまでもない。

60ごきげんよう、名無しさん:2003/09/12(金) 22:08 ID:C14QXXco
久々のお目汚し何卒ご勘弁を。一ヶ月以上もあけると、元々乏しい文才が底を
ついて目も当てられません。正直、新刊待ちです。似合わぬネタに特攻しても
大けがをするのが目に見えているので・・・。

あれ?一行足りないや。うーん、最後二行の間に
「ごきげんよう」
を補って下さい。なんか、やっぱダメポ。

61サポーターの事情</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/17(水) 22:36 ID:fD6Tgkxg
『やっぱり変だよねー』
電話の声が妙にうきうきして聞こえるのは、気のせいだろうと志摩子は思った。
由乃さんは祐巳さんを心配しているのだ。喜んでいるはずはない。・・・多分。
「もしかして祐巳さんは来て欲しいのではないかしら?」
葉書に書かれた住所のことを言うと、受話器の向こうで大きくうなずく気配。
『行こうよ、志摩子さん!』
「また連絡する」と言う由乃さんとの電話を終え、傍らの妹に話を振ってみる。
「考えすぎかしらね」
「たぶん正解だと思いますけど」
祐巳さんからの葉書に視線を落としながら、乃梨子は言った。
「それに、お姉さまも祐巳さまに会いたいんでしょう?」
本当に、そうだった。自分もうきうきしているのかも知れないと志摩子は思った。

62サポーターの事情</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/17(水) 22:37 ID:fD6Tgkxg
「ねぇ令ちゃん、どうする?」
どうするも何も、この手の『相談』に、令には選択の余地はないのが常だった。
でも、幾多の試練を経た今、成熟したスール関係が築かれている。・・・多分。
「由乃はどうしたいの?」
すっかり前のめりになっている従妹に、言わずもがなのことを聞いてみる。
「下山した後さあ、ちょっと寄り道するだけだよね」
祐巳ちゃんのこととなると、由乃は目の色が違ってくる。
「お邪魔虫じゃないの?」
「志摩子さんも言ってたもん。ぜったいSOSのサインよ!」
二年生トリオの固い絆が微笑ましくもあり、羨ましくもある。
「まあ、友情に敬意を表して、応援団を派遣するとしますか」
無性に祥子の顔が見たくなっているのを自覚しながら、令は受話器を取った。

63ごきげんよう、名無しさん:2003/09/17(水) 22:38 ID:fD6Tgkxg
アニメ化の詳細も発表される中、何か空気読めてない感じですが
駄作はスルーでよろしくお願いします。

64ごきげんよう、名無しさん:2003/09/19(金) 00:46 ID:GRy0Pa9Q
聖書朗読クラブSs、サポーターの事情、ともにうまい!
駄作だなんてとんでもないです。
特にサポーターの事情は白薔薇と黄薔薇、同じ形態にしているところに感服しました。

65ごきげんよう、名無しさん:2003/09/19(金) 00:48 ID:GRy0Pa9Q
あげてしまった。保守ageということで、スマソ。

66ごきげんよう、名無しさん:2003/09/20(土) 12:37 ID:Qwx9nYwU
>サポーターの事情
令ちゃん、かわええなあ・・・w

67報道規制</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/23(火) 01:55 ID:jnTsHX1k
「これは相当にご執心のようね」
一様に呆けていた新聞部員たちは、部長の声に我に返った。
全校の憧れの人と共有した時間の余韻に浸っていたらしい。
「どこがそんなにお気に召したんでしょうね」
かの人の立ち去った扉を見やって、真美さんがため息をつく。
紅薔薇のつぼみをして「彼女には手出し無用」と言わしむとは。
「その辺は祥子さんご本人に存分に語っていただくとして」
先刻までの防戦一方が嘘のように余裕の笑みの三奈子さま。
「シンデレラ当日まで無駄には過ごせないわよ」
就任早々のスクープに有頂天の編集長に、その妹が応じる。
「とりあえず、中等部の卒業アルバムの写真ですけど」
平凡だが、子だぬきのような愛嬌のある顔が微笑んでいた。

68報道規制</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/23(火) 01:55 ID:jnTsHX1k
「蔦子さん、彼女とはお親しいのでしょう?」
放課後の音楽室。噂の少女のクラスメイトに取材を試みる。
だが、写真部のエースはあまり協力的ではなかった。
「ご自分で確かめたら?同じクラスだった方はいないの?」
いないこともないが、記事に出来るほど目立つ記憶がない。
それに、学園祭が終わるまで本人への取材は禁止である。
「ふうん。紅薔薇のつぼみ自ら矢面に立たれたわけか」
合唱部の練習風景を撮り終え、考え込む風情の蔦子さん。
「祥子さまがそこまで入れ込むほどの人なんでしょう?」
食い下がる真美さんを合唱部員が面白そうにみている。
「それは祥子さまにしかわからないわ」
もっと祐巳さんを知りたい。その場の誰もがそう思っていた。

69ごきげんよう、名無しさん:2003/09/23(火) 01:57 ID:jnTsHX1k
アニメでは、かなり細かいところまで設定されるそうで・・・。
「隙間を埋める」タイプの駄作は今年いっぱいの命かも。

70ごきげんよう、名無しさん:2003/09/26(金) 22:30 ID:S8LajXvA
>>69
そんなことないYO!
アニメにはSSの味は出せないんだからがんがってー

71おばあちゃんと一緒?</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/27(土) 22:32 ID:VzwExxsE
「リコもすっかりリリアンに染まっちゃったね」
K駅近くの喫茶店。向かいに座った大叔母が面白そうに笑った。
「労働力、プラスお笑いネタまで提供する気はないんだけどな」
「別に悪いことじゃないさ」
菫子さんのお供は久しぶり。乃梨子もけっこう楽しんでいたのだが。
―あの瞬間、樹の下に佇む「その人」から目が離せなくなっていた。
石膏細工のように整った「その顔」にくぎ付けになってしまったのだ。
『何処かで会った人だったかな?』
あれこれと記憶を辿りながら、ジロジロと見つめていたかもしれない。
乃梨子の視線を拾い上げて、「その人」はニッと笑った。
「ご、ごきげんよう」
頬を赤らめ、頭を下げると同時に、その挨拶が自然に零れていた。

72おばあちゃんと一緒?</b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/09/27(土) 22:32 ID:VzwExxsE
「あー!このあいだ志摩子といっしょにいた子だ」
ようやく思い出してポンと手を叩くと、学友があきれ顔で見ていた。
「…まあ、いいかげん慣れたけどね」
何をため息ついているのかわからないが、加東さんはいい人だ。
こうしてお茶にも誘ってくれるし、時にはご飯も作ってくれる。
「…お茶のお誘いは弓子さんからよ」
そう、今日は母屋をご訪問だ。離れの方にはいつでも来られるし。
「あなたねぇ」
偏頭痛かな、加東さん?しょうがないので代わりにベルを鳴らす。
ご招待いただいたんだから、窓からお邪魔しちゃ失礼だもんね。
「いらっしゃい、聖さん。景さん、お使い立てしてご免なさいね」
弓子さんの可愛らしい笑顔。うーん、母屋の方も落ち着くなあ。

73ごきげんよう、名無しさん:2003/09/27(土) 22:37 ID:VzwExxsE
何か、つぎはぎで申し分けありませんが、一応これで主要キャラ視点は
一部を除き完了です。二順目行くか、さらなる脇キャラを発掘するかは
思案中、というか成り行き次第ですね。

74ごきげんよう、名無しさん:2003/09/27(土) 22:43 ID:gwCTqRDU
聖さま気づくの遅っ!

いつもいつも楽しませてもらってます。ありがとう。

75過密な季節 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/10/07(火) 21:02 ID:e/nyJOho
「じゃあ先輩、お礼はいずれまた」
「楽しみにしてるよ」
不気味なひと言を残して、赤いスポーツカーが遠ざかっていく。
「柏木さんを足に使うなんてユキチくらいだよな」
分厚い筋肉を震わせて、新任の副会長が感心したように言った。
「ユキチはお気に入りだもの。あの人も喜んでるんじゃない?」
意味深な発言だが、新任の書記に他意はないらしい。
新任の会長は、居心地悪そうな表情で軽く肩をすくめた。
「ユキチのお姉さんも、うちの学園祭に呼ぶんだな」「呼ぶんだな」
いつのまにか、双子の生徒会顧問まで巨体を並べていた。
―しっかし、暑っ苦しいメンバーだなあ。
自分のことは棚に上げて、新任の会計こと小林正念は思った。

76過密な季節 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/10/07(火) 21:02 ID:e/nyJOho
「少し温度を下げましょうか?」
唐突な問いかけに腰を折られ、盛り上がっていた話が途切れる。
松平邸のリビングに集った四人組。気持ちは同じと思いきや・・・。
「瞳子さまは、『あの方』に好意的でいらっしゃるのね」
菊代さまの直球ど真ん中発言に、その場の空気が凍りつく。
「ご冗談を。私がお慕いしているのは、祥子お姉さまですわ」
よどみないご返事。あらかじめ用意していた台詞という気もする。
「あら、私だってそうだわ」「私だって」「私もですわ」
心外そうな顔をしてみせると、貴恵子さまと菊代さまもうなずく。
切替えの早さも淑女の嗜み。話題は再び明日のパーティーへ。
「楽しみだわ、『コシヒカリ姫』に大恥をかかせてあげましょうね」
過熱する会話に、当家の令嬢が空調のリモコンを手に取った。

77ごきげんよう、名無しさん:2003/10/07(火) 21:04 ID:e/nyJOho
このスペースに11人も詰め込むとは、正気の沙汰ではないです。
しかも、「これでもか」とばかりに不人気キャラのてんこ盛り。
・・・すみません、どうかしてました、もうしません、ごめんなさい。

78ごきげんよう、名無しさん:2003/10/08(水) 21:58 ID:IPRKCk2Y
すげぇ…。
前半暑苦しくてワロタ。

79ごきげんよう、名無しさん:2003/10/31(金) 01:16 ID:ymHL6AKQ
失礼します。
初めてですが瞳子ネタを投下させて頂きます。

80(1/9):2003/10/31(金) 01:18 ID:ymHL6AKQ
どうしてだろう。瞳子は思い悩んでいた。
昨夜から祥子お姉さまが私と顔を合わせようとしない。
昨夜は単に気が立っているのか、疲れているのだと思っていたけど、
今朝になってもそれが続いていた。
何か粗相があったのではと聞いてみたが、そんなことは無いと言う。
しかし、あの態度は間違いなく私を避けていた。
昨日の帰宅時、祥子お姉さまと挨拶をしたときはいつもと変わりなかった、と思う。
ということは、放課後の薔薇の館かその前後に何かあったのだと推理することができた。
昨夜は両親が小笠原家へ小用があったため私も付いていったのだが、
その時から祥子お姉さまは私を避けていたと思う。

81(2/9):2003/10/31(金) 01:18 ID:ymHL6AKQ
昼休みになっても自分ではどうしてもその原因はわからず、
私は薔薇の館の住人である及梨子に聞いてみることにした。
聞かれると及梨子は答えづらそうに少し顔を歪ませた。
このことから彼女は原因を知っているようだった。
私がより強く問い詰めようとすると、及梨子までもが祥子お姉さまと同じように
私から顔をそむけた。
そのしぐさが私の気に障った。
「もういいっ」私はそのまま勢いよく教室から飛び出していた。
去り際に教室を覗いた時、及梨子は机に伏せたまま頭を抱えていた。
本当は少しだけ追いかけて貰いたかったんだけど、
こうなってしまっては私はすぐには教室に戻ることが出来ない。
私は昼休みぎりぎりまで教室に近づかないようにすることにした。

82(3/9):2003/10/31(金) 01:21 ID:ymHL6AKQ
歩きながら考える。昨日薔薇の館で一体何があったのだろう。
祐巳さまに何か言われでもしたのか、けど、その意見は私の中ですぐに却下された。
祐巳さまに出会ってそれほど経ったわけではないが、そういった誰かを陥れるようなことは
しない人だということはわかっていた。
福沢祐巳さま。
同級生達は、あの方は可愛らしく親しみやすい、
何かと気疲れしそうな薔薇の館の住人の中で、
優しく、楽しく接してくれそうな先輩だと勝手に思っているらしいが、
私にとっては一緒に居るのが一番大変な人だと思う。
マイペースで、一緒にいるだけでいつも自分のペースが狂ってしまう。
祐巳さまは危なっかしいくらい、誰でも疑わず優しく接することが出来てしまう人で、
あまりに素直で、優しくて、私はどうしていいか分からなくなる、そんな自分が情けなくなる、
そしてさらに腹立たしいことに、祐巳さま自身は全くそのことには気づいていないのだった。
でも、そんな人だから、例えば私から祥子お姉さまを遠ざけるような、
悪意のある行動が出来るような人ではないとも思えていた。
例え、どんなに私のことが嫌いであったとしても。

83(4/9):2003/10/31(金) 01:21 ID:ymHL6AKQ
「あ、瞳子ちゃん」
廊下を曲がったところで、後ろから大きな声で私を呼ぶ声がした。
タイミングが良すぎるのか悪いのか、ついさきほどまでの私の頭の中の主役、
祐巳さまが大きく手を振りながら早足で近づいてきた。
周りが私たちに注目する。中には私のクラスメイトまでいる。
「ちょうど言いたいことがあるの。」
「私も、聞きたいことがありました。」
祐巳さまは驚くように私を眺めて、
「そう、ちょうど良かった。うーん。中庭がいいかな。」
そう言って、祐巳さまは私の手を取って歩き出した。
手を繋ぐ私たちに周りの視線が一層強くなっていく。
「1人で歩けます!」そう言って手を離すと、「あ、ごめん」そう言って、
今度は私の手を引かず、私の前をゆっくりと歩いていった。
どうしてこの人は、いつもこうなんだろう。

84(5/9):2003/10/31(金) 01:22 ID:ymHL6AKQ
歩きながら、祐巳さまは他愛の無いことを話しかけてきた。
私は何を話せばよいかもわからず、適当な言葉しか返すことが出来なかった。
中庭にたどり着く。
祐巳さまが振り返り、何でも聞いてと私に言った。
「あの、その前に祐巳さまの用件というのは・・・」
「あぁ、私の方は本当に大したことじゃないから。」
祐巳さまはそう軽く言い放った、本当に大したことでは無さそうだった。
それではと、私は自分の質問を先にぶつける。
「あの、昨日の夜から祥子さまの様子がおかしくて、
・・・どうも私を避けているようなんです。」
「・・・あぁ」
この言葉から、昨日のことは祐巳さまも何かしら知っているようだった。
「・・・あのね、それは私が原因なの。」

85(6/9):2003/10/31(金) 01:23 ID:ymHL6AKQ
「・・・嘘。」思わず会話を遮るように言葉が出た。
「えっ?・・・」
裏切られた。そう感じたのか何だったのか、私はもうその場にいることができなくなっていた。
「し、失礼します。」
「ちょ・・ちょっと、瞳子ちゃん。」
私はどうしていいかわからず、全力で走って逃げ出していた。
これ以上祐巳さまの言葉を聞くことがどうしようもなく怖かった。
ちょうど昼休み終了の予鈴がなった、とりあえず祐巳さまから逃げることは出来そうだった。
午後の授業が始まっても、授業の内容は全く頭に入らなかった。
もう、放課後すぐにでも祥子お姉さまに直接聞くしか方法が残っていなかった。

86(7/9):2003/10/31(金) 01:24 ID:ymHL6AKQ
放課後、薔薇の館に続く道に私は張り込んでいた。
祥子お姉さまに直接問いただすために。
しばらくして、遠くから祥子お姉さまが黄薔薇さまと並んで歩いてくる。
その後ろを祐巳さまと由乃さまが続いていた。
私は勢いよく祥子お姉さまの前に現れる。
祥子お姉さまが今朝と同じく私を避けるように目を背けた。
「祥子お姉さま、昨日から私を避けていますね。」
「・・・え、あの、瞳子、そういう訳では無いの。」
祥子お姉さまが私から距離を取ろうとする、私は逃がすものかと近づいて顔を見上げた。
「どうしてですかっ。」私が声を張り上げる。
しかし次の瞬間、

87(7/9):2003/10/31(金) 01:26 ID:ymHL6AKQ
「・・・ぶはっっ」
何かを吹きだしたような音がした。
その音は、誰であろうか、他ならぬ祥子さま自身からだった。
祥子お姉さまは口とお腹を押さえたまま、うつむいて肩を小刻みに揺らしている。
・・・・・・。
・こ、これは、ひょっとして、笑っているのだろうか?
気づいたら、後ろから祐巳さまが私を羽交い締めにして祥子お姉さまから引き離していた。
私は動くことが出来ずに棒立ちのまま、ずるずると祐巳さまに引きづられていく。
「ゆ、ゆゆ、祐巳さま、こ、ここれは、ど、どどど、どういぅことですかぁ!」
パニックになった私は、しゃべることすらもうままならない。
「と、瞳子ちゃん、全部、ぜ〜んぶ説明してあげるから、ね、ね。」
そのまま私は、ずるずると祐巳さまに薔薇の館までひきづられていったのだった。
一体、何が、何が、何が?

88(9/9):2003/10/31(金) 01:28 ID:ymHL6AKQ
昨日のことだった。
薔薇の館の作業が一段落し、休憩と言う名のお喋りが始まっていた。
そんな中で話題には文化祭の準備の時の瞳子のことが上がっていた。
祐巳が言うには、瞳子はきちんと仕事をこなすしっかりした子だったという。
「そうね、仕事はしっかりとこなす子だったね。」令が肯定し、
「ただ少し小言が多かったけど」と付け足した。
「そうなんです、私よりも、よっぽどしっかりしてて」
祐巳は、令の前半部だけ受け取って話を続ける。
由乃ちゃんも続く。
「・・・髪のセットもしっかりしてるしね、あれは普通じゃできないわ。」
祐巳は黙ってうなずいた。
若干、今の台詞には瞳子への皮肉も混じっていたことに祐巳は気づいただろうか。
「そう、しっかりしてるよね。あの髪型、あの、何と言うか、えーと、縦ドリル」
運悪くちょうど紅茶を口に含んだところだった令は、豪快に紅茶を吹き出してしまった。
由乃ちゃんは右手で激しく机を叩きながら、左手でお腹を押さえ笑いころげている。
乃梨子はうつむいたまま全身が小刻みに揺れていて、殺しきれない笑いがこぼれていた。
志摩子でさえ両手で口を押さえたまま下を向いて笑っていた。
あぁ、あのとき私もいっしょに笑い転げてしまえばよかったんだ。
あの時変に我慢したせいで、瞳子を見るたびに祐巳の言葉が頭の中で繰り返されてしまう。
縦ロールのどこをどうすれば縦ドリルになるのだろう。
ごめんなさいね、瞳子。
全部、全部祐巳のせいなんだから。

8980-88:2003/10/31(金) 01:32 ID:ymHL6AKQ
拙い上に長くなってしまいました。
読みづらい上わかり辛かったりする点については予め謝らせて頂きます。
・・・ごめんなさい。
それでは失礼します。

90ごきげんよう、名無しさん:2003/10/31(金) 02:01 ID:PbqF4h4Y
>>89
乙。
これはエロどころかギャグじゃないかw
しかし81のところ。乃梨子の乃が及になっていたよ。
あと祥子さまは瞳子ちゃん、だと思う。

91ごきげんよう、名無しさん:2003/10/31(金) 02:42 ID:MeO6glsc
>>89
乙ー!本当、エロどころかw
とても楽しく読めました。ありが㌧!

92ごきげんよう、名無しさん:2003/10/31(金) 06:02 ID:9Ap6PjFk
>89
乙。これは確かにエロくしようがないな。
あんまり突っ込むと新刊のネタばれになっちゃうけど、文化祭後も
瞳子が薔薇の館の住人になってない設定なのかな?

練習がてらでもいいので、よかったらまた投下して下さい。

93未来予想図 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/11/03(月) 22:47 ID:qwonjRHQ
「象徴的な光景だったわね」
段ボール箱にカメラを埋めていると、真美さんが話しかけてきた。
「『棒引き』の棒が誰かさんのロザリオとか?」
中指に『花の舞』をセットし、連れ立って入場門へ向かう。
「それもそうだけど、乃梨子ちゃんを含めたトリオがね」
ああ、そういうことか。
「さっきの写真。その時がきたら使わせてくれない?」
どちらにしろ、本人たちの承諾が前提になるけれど。
「その時がくると思ってるわけだ?」
「さあね。何しろ紅薔薇のつぼみ自身がもたもたしてるんだもの」
苦笑する編集長の視線の先に、緑チームの応援席がある。
ああ、あの絵も撮りたかったな、と蔦子は思った。

94未来予想図 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/11/03(月) 22:47 ID:qwonjRHQ
「祥子さん、何であんなに打倒赤チームに燃えてるのかしらね」
臨時編集会議を兼ねた昼食会の席上、前編集長がつぶやいた。
「真美、あなた何かつかんでないの?」
「はあ、その件については特に何も」
早くお昼のネタを拾いにいきたいが、情報交換も大切である。
「だらしないわね。何のために引退した私が出張ってるのよ」
薔薇ファミリーの半数と同チームの真美を極力フリーにする為だ。
その点は抜かりない。さっきも有力な情報をきっちりキャッチしていた。
「薔薇の館と仲良くするのはいいけど、御用記者になっちゃだめよ」
なかなか鋭い。お姉さまはやっぱりあなどれない、と真美は思った。
「それはそうと、あなた、自分の妹はどうなってるの」
興味津々の態で聞き入っていたルーキーが、ついと視線を逸らした。

95ごきげんよう、名無しさん:2003/11/03(月) 22:49 ID:qwonjRHQ
とり急ぎという感じで、いつも以上に原作依存で申し訳ないです。
なんか、前巻からのネタをまだ消化しきれてないみたいで・・・。

96椿事の予兆 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/11/10(月) 22:10 ID:kRunXO/w
「瞳子の様子がおかしい?」
体育の授業前、着替えの最中にそっと耳打ちされた。
お馴染みの聖書朗読部コンビ、敦子さんと美幸さんだった。
「何かね、最近イラついていらっしゃいますのよ」
「乃梨子さん、お心当たりはございませんこと?」
いつも一緒のふたり。普段はもうひとり加わってトリオを組む。
もう着替えたものか、あの独特の髪型は教室になかった。
「薔薇の館に関係のあることではないのかしら?」
第二体育館へと移動しながら、美幸さんがなおも言い募る。
「最近は、瞳子あまり来ないし」
演劇部が忙しいらしい。代わって足繁く通ってくるのは・・・。
つまりは、そういうことなのかな?と、乃梨子は思った。

97椿事の予兆 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/11/10(月) 22:10 ID:kRunXO/w
「今週は、乃梨子さん、外のお掃除でしたわね」
彼女の方から話しかけてくるのは珍しいことだった。
「ええ、何かご用でも?」
笑顔(!)で首を横に振って、機嫌よく去っていく長身の少女。
「???・・・何なんだ」
ふと振り返ると、見るからに不機嫌そうな少女が立っていた。
視線に気付いて、わざとらしく雑巾を取り出す縦ロール。
「瞳子。あんたも素直になった方がいいんじゃない?」
「何のことですの?」
舞台女優の貫禄でお姫様然と問い返す。何やってんだか。
「まあ、いいけどね」
今度はお節介を焼いてあげる番かな?と、乃梨子は思った。

98ごきげんよう、名無しさん:2003/11/10(月) 22:13 ID:kRunXO/w
なんというか、いっつも言い訳ばっかりで見苦しいので
今回は止めておきます。お目汚し失礼しました。

99ごきげんよう、名無しさん:2003/11/16(日) 11:13 ID:ZpBluuLc
お節介を焼いてあげる乃梨子に(;´Д`)ハァハァ

100ある祝祭日 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/11/24(月) 00:03 ID:3XBpV8iM
「あ、紅薔薇さまだ。ごっきげんよー」
こういう脳天気な挨拶をかましてくる知己はひとりしかいない。
こめかみを押えるポーズを取りつつ、どこかホッとしていた。
「つれないなあ。無視しないでよ」
「そのハイテンションに合わせるには心の準備が必要なの」
チェシャ猫みたいにニッと笑うと、ポケットから何やら取り出す。
「じゃーん。すごいだろう、一発合格」
今日交付されたばかりの運転免許証が誇らしげに握られていた。
「ハッピー・バースデー、聖」
胸に去来するものが多すぎて、見当違いの祝辞を口走ってしまう。
「ありがとう、蓉子。助手席第1号の栄誉は君のものだ!」
それは、謹んで辞退した。

101ある祝祭日 </b><font color=#FF0000>(e8uf1.O6)</font><b>:2003/11/24(月) 00:03 ID:3XBpV8iM
「よくお似合いですよ」
いまどき、髪を切るのに理由なんかいらない。
選りにも選ってこの日に、なんて思う人も多分いないのだろう。
「ありがとうございました。お気をつけて」
愛想の良い声で、イルミネーションあふれる街に放り出される。
この日を選んで髪を切った理由は、少女だけのものだった。
「もう一年になるのね」
わざわざ口に出して確認するまでもない。
あの人の髪が一年分伸びるのを見守ってきたのだから。
「今度こそ、あなたは私を見てくれるかしら?」
決意に固く結ばれた歌姫の唇が、いつしか優しくほころぶ。
聖なる歌をそっとハミングしながら、静はゆっくりと家路をたどった。

102ごきげんよう、名無しさん:2003/11/24(月) 00:08 ID:3XBpV8iM
そんなわけで、メリー・クリスマス。って、一ヶ月も早いですが・・・。
また勝手な設定を作ってしまいまって、申し訳ないです。
多分原作では書かれないということで(大丈夫かな?)何卒ご勘弁を。

103ひみつの鍵 その2:2004/02/02(月) 23:30 ID:xpd1navs
「あの。先輩?」
たしかリリアンでは、上級生には名前にさま、同級生には名前にさんづけがルール
だった。でも、名も知らない上級生に声をかけるにはどうしたらいいのだろう? 
とにかく私は先輩と続けた。
「ちょとまって、いまいいところなんだから」
「でも、もう、だれか二階から降りてきますよ」
その人は血相を変えた。静かな足音が二つ聞こえてくる。

「にげるわよ! ついてらっしゃい!」
というがいなや、その人は私の腕をつかんで、疾風のごとく中庭を北に抜け、クラ
ブハウスのあたりへと連れて行った。ーーいや、むりやりに引っ張られてかれたの
だけれど、どうやら、館の住人には気がつかれなかったようだ。

薔薇の館からは、おそらく薔薇さまのおひとりと思われる三年生の方、そして、も
うひとり、一年生の生徒の姿が見えた。清楚な印象の良く残る、緩やかなウェーブ
をかいて落ちる長い髪と、色素のうすい表情。なんだかマリア様そのものを連想さ
せるような・・・なんてこの学園にふさわしい人なんだろう。

三年生の方も優しく、ともに談笑されていた。・・・と、思ったら、一年生の髪を
撫でられて、顔をよせあってるではないか。キャー!!すてき!!

「ロサ・フェティダに、それにもう一人の一年生。あの方はどなたかしら? あな
た一年生でしょ? 彼女のことご存知?」

一瞬、我を忘れた私に、水を差すようにその人は声をかけてくる。そりゃ、二年生
にもなれば見慣れた光景かもしれないけどさ。おちつけおちつけ。これからはこん
なのは日常茶飯事なんだから。

104ひみつの鍵 その3:2004/02/02(月) 23:34 ID:xpd1navs
「さぁ。私のクラスでは、見かけたことはありません。こんなところで何をしてい
るんですか?」

「あの二人は校舎に向かうようね。このまま追いかけてもいいけど。どうも、そん
なムードじゃなさそうねぇ・・・。薔薇の館に残っているのは、ロサ・キネンシス
とロサ・ギガンティアのお二人・・・。どんな話をしているのか、大体の想像はつ
くけどね。」

・・・人の話を聞いてくださいよ、先輩。と思いつつ、私には、なぜだか、この人
の話の続きがもっと聞きたくなったのだ。

「ロサ・ギガンティアも先代が卒業なさってから、さすがに不安を隠せないようね。
一時期に比べればずいぶん、持ち直されたようだけど・・・」
「なにかあったのですか?」
「今ここで話せるのは、ロサ・ギガンティアにはつぼみがいない、ということだけ。
さっきの一年生がその候補かと思ったのだけど・・・あなた、続きをもっと知りた
い?」
・・・ええ。と答えたのが、幸運だったのか、運のつきだったのか、今でもわから
ない。

105ひみつの鍵:2004/02/02(月) 23:45 ID:xpd1navs
その人は、私をクラブハウスまで案内してくれた。校舎裏にある二階建ての建物で、
文化系の部活がここを根城にしている。でも、すべての文化部がそうなのではなく
て、演劇部なんかは体育館を使うし、ここは単に荷物置き場としてつかっているら
しい・・・そんなようなことを、その人は話してくれた。言われてみれば、ここは
リリアンにはめずらしく、雑然としていた。

私は運動はだめだから、部活に入るなら文化系と決めていた。だから、今、クラブ
ハウスを案内してもらうのに異論はない。けれど、いまさら美術の心得もないし、
音楽のたしなみも知らない。リリアンの多くの生徒は、幼い頃から稽古ごとにはげ
んでいるそうで、茶道や華道、書道にいたっては、家元の子女というのもめずらし
くないという。こういうのは除外。

入学案内のパンフレットには、あと弁論部と新聞部というのがあった。私はこのう
ちのどちらかに入るつもりでいた。ただ、新聞部が、ただの学級新聞のレベルで終
わっているのなら、興味はなかった。

「あなた、お姉さまはいるの?」
ふいに、その人が声をかけてきた。
「はい。います」
「あら、そう。最近の子ははやいのねぇ・・・」

「大学生になる姉が一人います」

「まぁいいわ。お入りなさい」
その人は、なにか苦笑というよりは安堵というような顔をされて、私を部屋の中に
案内してくれたのだった。

106ごきげんよう、名無しさん:2004/02/02(月) 23:47 ID:s9TS5gFc
>103-104
乙。過疎スレにようこそw
別に名前出してもイメージ壊れないと思うけど、これはこれで雰囲気が
あってよろしいかと。ぜひ、またいらして下さい。

107ネタスレの160:2004/02/02(月) 23:58 ID:xpd1navs
こんなマリみては嫌だスレの160の続きです。ご笑読ください。
ブラウザから書き込めず、サファリから入力しているとはいえ、いろいろ間違えました。
sageなくてごめんなさい。あと、上のやつは「ひみつの鍵 その4」です。

108ごきげんよう、名無しさん:2004/02/03(火) 22:49 ID:nLqC1onc
続きキボン

109ごきげんよう、名無しさん:2004/02/08(日) 23:08 ID:KEo5oVsE
2chで「びっくりチョコレート」ラストシーンで祥子があたりかはずれを食べたのかって議論になったので、
漏れ的脳内補完で「祥子視点のラストシーン」。

NGワード『choko sage』です。

110祥子視点で:2004/02/08(日) 23:09 ID:KEo5oVsE
私は思わず笑ってしまった。
「・・・これ、何かのパフォーマンス?」
「はい。びっくりチョコレートっていいます」
「びっくりチョコレート?」
「口が曲がるほどすごい味のはずれが混じっています。それでびっくり」
『びっくりチョコレート』そのままのネーミングだな、と思った。即興で思いついたのが祐巳の顔に現われている。
全く、この子は考えている事が直ぐ顔に出るんだから。
「馬鹿ね」
私はテーブルに落ちたチョコレートの一つを拾い上げて口に運んだ。
「あっ!」
「大丈夫よ。テーブルの上だもの」
それに、せっかく祐巳がプレゼントしてくれたものを食べない訳にはいかない。
味はというと――すごく不味かった。
不味い。何の味だ。マヨネーズの味がするのは気のせいだろうか。舌は肥えている方だと思うのだけど。
すごい味のはずれが混じってるのは本当だった。
運がない。昨日祐巳を泣かしたことをマリア様が咎めたのか。
「・・・どうですか」
祐巳が聞いてくる。
「おいしかったわ」
私は答えた。
どうして「おいしい」と答えたのだろう。
自分が天邪鬼だからか。無意識のうちに祐巳を気遣ったのか。意地悪なマリア様への抗いか。
でも、祐巳の安堵した表情を見れば、それは正しい選択だった。
「よかった。じゃ、それはあたりです」
満面の笑みで答える祐巳。この子は私を全く疑っていない。
それから祐巳は机の上に散らばったチョコレート集め出した。
「あたりだと、何かいいことがあるのかしら?」
私はからかいがてら祐巳に尋ねた。『びっくりチョコレート』は祐巳がとっさに思いついたものだから、景品なんてないはず。

111祥子視点で:2004/02/08(日) 23:09 ID:KEo5oVsE
「えっと」
案の定、祐巳は答えられなかった。
でもいいのだ。チョコレートをプレゼントされたこと。それが私にとっての最高の景品だから。
そういえば、蓉子さまには一度もチョコレートを渡さなかったっけ(正確には先ほど渡した新聞部提供一口サイズチョコがあったが)。
渡された方はこんな良い気分になるのに。少し後悔する。
祐巳はテーブルから零れ落ちたチョコレートまで拾い出した。
よく見ると、どうもチョコレートを仕分けしているようだ。
9個のチョコレートが2グループ。計18個のチョコレートがテーブルに置かれる。
そして祐巳は、アイボリーの箱にひっかかった最後のチョコレートを拾い上げた。
ブラウンの箱は私から取り返そうとした箱。アイボリーの箱は後から慌てて出した箱。
ならば――
「お姉さま」
複雑な表情の祐巳が尋ねてくる。
「あたりを引きますと、もれなく私との半日デートがついてくるんですけど――」
最後の方の声が小さくなり、軽くうつむいて紅くなった祐巳は、とても可愛いかった。

※補足:祥子が蓉子にチョコを渡していないというのは「紅薔薇さま、人生最高の日」で蓉子が
マリア像の前でチョコを渡す姉妹を見て、おととし自分がお姉さまに渡した事を思い出した。
逆に去年祥子から貰った事は思い出さなかった。ということから「祥子は渡していない」という推察です。
本編に記述があるわけではないのであしからず。

112ごきげんよう、名無しさん:2004/02/08(日) 23:26 ID:3W7JWu2.
乙。また気軽に投下してくらさい。ここはNGワード要らないと思うな。

113巨頭会談:2004/02/13(金) 01:25 ID:HpUdMaJI
「後悔しないのね」

「後悔は、ずいぶん前に済ませたわ。もう、なにも行動しないで、いなくなりたくないの」


「あの時はごめんなさい。一年生の時といえ・・・あのアンケートの記事を止めることが
できなかたわ。あなたの気持ちを考えずに・・・」


「その時は、あなたは、私の気持ちを、知らなかったのだから、しかたないじゃない」

「・・・でも、あなたにもーー、ロサ・ギガンティアにも深い傷を負わせてしまったわ」


「大丈夫よ。ロサ・ギガンティアは噂の一つや二つで動じられる方ではないわ」

「でも本当に、いいの?」

「ええ。私はね、ごういう普通の学園生活も送ってみたかったのよ。あなたの情報のおか
げ。祐巳ちゃんともお近づきになれたし。私は今、本当に充実しているの」

「新聞部としては、これ以上、特定の候補者に肩入れすることはできないけれど」

「新聞。送ってね。とくにロサギガンティアと志摩子さんのことは」

「またあなたの歌が聴きたいわ」

114ひみつの鍵その5:2004/02/13(金) 02:22 ID:HpUdMaJI
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」

 新聞部部室。この部屋には、意外と多くの方がいらっしゃった。

 新入生説明会もおわり、ヒマな時期なのだろうか、

 クラブハウスに出入りする生徒の、主立ったメンバーは、よくここに集まっては、
お茶を飲みながら談笑されているという。

 新聞部という名前のイメージから、関係者以外出入り禁止かと思っていたが、案
外そうでもないらしい。

 あの人は、この部屋の主だけあって、ここのサロンの中心的な人物のようだった。
ーーロサ・クラブハウス・・・なんちゃって。


「ごきげんよう。私、武嶋蔦子です」

 ちょうど、となりの席に座った方が、話しかけてくれた。ご挨拶しなければ。
 ネガネをかけているのだけれど、本当によく似合っている。知的で聡明って感じ。
 私はコンタクトなんだけど、ネガネの似合う人って、ほんとうらやましい。

「ごきげんよう。蔦子さま?」
「ふふ。あなたと同じ一年生。だから、さまは、奥の席にいらっしゃる方につける
 べきね」
「ああ、そうなんですか。蔦子さん」
「素直な人ね。それに、可愛い。写真を一枚いかが?」

 え? えええ? でもなんて高価そうなカメラを持っているんだ!
 しかも、デジカメじゃない銀塩フィルムのフルマニュアル。通だ・・・。

 私がしどろもどろしていると、蔦子さんはいったものだ。

「・・・写真を撮られるのが。本当に嫌いな人はわかるわ」
「どう意味ですか?」
「カンね。でも、そうなんでしょう?」
「・・・はい」
「あなた、新聞部に向いているわ。一年生同士。仲良くしましょう。言い忘れたけ
 れど、私、写真部に入りました。こんど一枚だけでいいから、撮らしてくれない?
 現像は暗室でして、ネガは差し上げるから。それに、いろいろ、あなたの知りた
 いことを教えてあげるわ」

「交換条件ですか? でも写真を撮られるのは本来イヤなことですから、貸し一つ
 ですね」

 ひゅう! 蔦子さんは口笛を吹いた。

115113と114:2004/02/13(金) 02:30 ID:HpUdMaJI
省略されてしまった・・・精進せねば。。。114は前の三奈子、真美の続きです。
113は最近ロサ・カニーナTV版をみた影響です。
そのうち、ひみつの鍵シリーズの複線になるかも?(裏で糸引いていたんかい!みたいな)
実はなにも後先のことは考えていないんですけどね


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