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他人が書いた小説の一部を批評するスレ

529イラストで騙す予定の名無しさん:2004/09/14(火) 03:21
 いま書いている作品の冒頭です。
 批評、よろしくお願いします。

 自然と込み上げてくる笑いを、俺は抑えられなかった。そんな場合じゃないことは、十分に承知していたが、それでも気分は高まり笑いへと変わっていく。
 目の前には鎖帷子を着込み、幅広の剣と雫型の盾を構えた四、五十の男。丸い兜からは鼻と眉間を守るためなのか、T字型に短い鉄板が伸びている。その両側にある真っ青な瞳が、俺のことを苛立たしげに睨んでいた。
 ゲーム、漫画、映画。あらゆる娯楽に出てくるまんまの騎士。違うのは、本物ということだけだ。そして向き合っているのは、剣道の防具に木の棒という装備の、一介の高校生。
 こんな馬鹿馬鹿しいシチュエーションで、笑わずにいられるものか。
 ククッと笑い声が漏れる。騎士は顔をしかめ何事か叫ぶと、剣を振り上げ襲ってきた。
 上段からの打ち込みを棒で払う。だが鈍い音がし、刃が棒に食い込んでしまった。予想以上の衝撃に痺れた両腕と、思いがけないことに一瞬、反応が遅れる。騎士の引いた剣に棒を取られそうになり、慌てて手首を返し刃をはずした。棒から削れた木片が飛ぶ。
 騎士の二撃目は大振りの横薙ぎだった。今度は余裕を持ってよけられ、隙の出来た手元を狙って打ち込む。剣は間に合わない。入った、と確信した瞬間、甲高い音が響き棒の切っ先が折れ飛んだ。盾の上から見える青い目が笑っている。
 後ろへ跳ぶ。追うように盾の陰から剣が突き出された。反射的に払おうとしたが、長さが足りず籠手をこすった。
 急いで間合いを取る。
 距離を保ちつつ、左手にチラリと目をやる。甲部分に切れ目が入り、中綿がはみ出していた。盾を持って戦うなんて、戦いにくいんじゃないかと思っていたのだが。なるほど、防御に使うだけではなかったらしい。
 短く息を吐き出し、棒を握り直した。標準的な竹刀の長さに削っていた棒は、あっという間に半分近くなった。RPGの初期装備と言えば、棍棒と相場が決まっているものだが、やっぱり現実は厳しいらしい。硬い素材を選んだつもりでも、たった一撃で役立たずだ。
 自分の思考がおかしく、またも笑いが浮かぶ。それが気に食わなかったのか、騎士の顔が大きく歪んだ。盾を構え跳びかかってくる。
 俺は騎士の左に回り込み、突きをかわした。そのまま背後に回ろうとするが、雫型の盾を横に構え進路を断たれる。とっさに短くなった棒を投げつけると、騎士は顔をかばうのに盾を持ち上げた。チャンスとばかりに無防備になった下半身目がけ、蹴りを放つ。視界を盾で塞いでいた騎士は、呆気なく地面に倒れ込んだ。
 盾を蹴り飛ばし、騎士を跨いで後ろ向きに立つ。両足を取り脇にしっかり挟み込むと、そのまま腰を下ろして胸を思い切り反らした。地面を叩くような音に首だけで振り向くと、騎士が地面を掻いていた。呻き声と、おそらくは罵声を飛ばしながら、必死に逃れようと暴れる。しかし、振るった剣には力がこもっておらず、伸ばした左腕も届かずむなしい抵抗だ。ちょっと力を込めると、剣まで放り出し喘ぐだけになった。
 師範に怒られながらも、遊んでいたかいがあったというものだ。三十秒もかかっていないだろう。騎士が息も絶え絶えに、かすれた声でなにか言うと、それが途切れないうちに周囲で歓声が上がった。ギャラリーがいたことをすっかり忘れていた俺は、驚いた弾みで思い切り騎士の足を捻ってしまった。声にならない悲鳴が上がる。
 さすがに哀れになり、自由にしてやることにした。観客の喜びようから察するに、俺の勝ちで間違いないだろう。足を放し、立ち上がりざま剣を拾い上げる。思いがけない重さに取り落とし、騎士の鎖帷子とぶつかり金属音を立てた。
 とたんにシンと静まり返る。みんな息を呑んで俺のことを見ていた。まだ俺が続けると思っているのだろうか? 今度は力を込めて剣を拾い上げ、辺りをうかがいながら騎士から離れた。するとギャラリーの九割を超える村人たちの間から、ブーイングが起こった。それに対するように、騎士に付いてきていた従者数人が村人に向かって怒鳴り始める。
 ワケが解からず唖然として見ていたら、村人の何人かが物を投げ始めた。石だったり、薪だったり、水汲みの桶にニワトリと思しきものまで。二十歳前後の男が騎士に駆け寄り、飛んできたものから守るように助け起こした。淡い金髪の、見覚えがある男だった。しかし、そんなことなど誰も気付かず争いは続く。




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