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他人が書いた小説の一部を批評するスレ

1629イラストで騙す予定の名無しさん:2006/08/28(月) 08:00:33
 時計の針はすでに午前一時を回っていた。
「そろそろ行くか。月の見える晩は、やけに気持ちが高揚するぜ」
 今夜は曇りである。月など見えるはずがない。
 バカである。
 夜道の散歩は毎日の日課と化していた。『夜は俺の縄張り』たる所以である。ただ、今回の事件が起こってからは、当然であるが夜道の独り歩きは禁止されていた。
 少年は眠っている両親に気づかれないよう、そっと家を出た。もちろん木刀持参である。
 そうして、少年は自転車に跨り、夜の街の散策に出かけた。
 自転車を漕ぎつつ、木刀を背負った少年は怪しい人物がいないか周囲の様子に気を配る。少年自身が一番怪しい。
 一つだけ色の違う街灯。どこかで響く銃声のようなもの。知らずに聞こえ出した奇妙な音。いつもは気に留めないような場所にまで意識を割いていた少年はそんなものを発見した。
 もしここが現実ではなくて、小説や漫画の世界だったのなら。
 色の違う街灯は異世界への招待状であり、銃声は謎の組織による強襲の合図、意味不明な音は超常現象の予兆であっただろう。
 しかし現実は、ただの整備不足だったり、どこかの不良達が爆竹で遊んでいるだけだったり、大型の排気口から漏れる音が聞こえただけだったり。そんなものだ。
 現実は現実で、空想は空想。現実は空想ではなく、現実世界に空想世界の出来事は起こらないのだ。
 現実は現実的である。そこに存在する登場人物に一切の情けや援助を与えることはない。
 つまり。
 木刀一本で猟奇殺人犯と渡り合おうと思っても、返り討ちにあうのがオチなのだ。
 それでも少年は自分になら、現実が空想のように味方をしてくれると思っている。故に自分が失敗することはないと思っている。
 だったら、今頃大学生だろうに。
 全く、少年はバカである。
 幸か不幸か、一時間ほど辺りを散策したが、少年は犯人を見つけることが出来なかった。
 当然といえば当然である。もしその程度の探索で犯人が見つかれば警察も苦労はしまい。




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