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他人が書いた小説の一部を批評するスレ

1イラストで騙す予定の名無しさん:2004/02/20(金) 16:17
 書いてみたはいいけど、この表現どうなの?会話シーンに自信ないんだけど、ちょっと見てもらいたい・・・。
 そんな悩みを抱えるあなたは、このスレに、書いた作品の一部を載せてみましょう。
 ついでに、執筆上の悩みもガンガンぶちまけましょう。
 
 投稿する際には、あまりに長いのは避けてください。また、このスレはオリジナル限定とします。
 その他は、ライトノベルであれば、ジャンルその他は問いません。

1312ちょっと長いけど、よろしく 1/5:2006/05/04(木) 02:40:17
 夜の街は、喧騒に包まれていた。
 極彩色のネオンの光に浮かび上がる人波は途切れることがなく流れて行く。
 人々は、鬱積したストレスを吐き出す為に、あるいは、退屈な日常を忘れさせてくれる何かを
求めて夜の街を彷徨う。
 通りを飛び交う様々なノイズ、人々の吐き出す熱気に充てられて街は、加熱していた。
 街角を吹き抜ける風は、妙に生暖かい。
 何かが起きる、そんな予感を抱かせる、月の見えない週末の夜。
 だが――
 人々は、知らない。その街の片隅で、人ならざる者と、それを狩る者との戦いが始まろうとし
ている事を……

「ねぇねぇ、何してんの?」
 いきなり背後から声を掛けられて、その背の高い少年は、面倒くさそうに振り向いた。
 そこには小柄な少女が立っていた。
 女子高生だろうか?浅黒い顔に、茶髪、スカート丈の短い制服の上にパーカーを羽織った、
その姿は、まんまコギャルと言った趣だが、その顔は幼く、中学生か、下手をすればその小柄な
体と相俟って小学生に見えた。好奇心を湛えた子猫の様な大きな瞳が印象的な少女だった。
 一方の声を掛けられた少年の方は、少し気の早いタンクトップにGパンといったラフな出で立
ちだが、目を引くのは、タンクトップから伸びたその二の腕の太さだ。
 大げさではなく、声を掛けてきた少女のウエスト程は、ありそうだ。また、タンクトップを押し上
げる、大胸筋や腹筋の発達具合も尋常ではない。
 それだけ、隆々たる肉体を持ってるにも関わらず、ごつく見えず、寧ろスマートに見えるのは
その長身のお陰だろう。180cmを軽く超えて190cmにも届きそうだ。
 成熟した肉体に比べて、顔の方には、まだ少年の面影を色濃く残しており、少年を少年たらし
めていた。
 ボサボサの髪、太い眉毛やまだ若干丸みを帯びた輪郭等は少々野暮ったいが、筋の通った
鼻筋、大きな瞳、そしてその瞳から放たれる強い意思を感じさせる眼光など、近い将来に男前
になるであろう片鱗が見て取れた。
 もっとも、今その顔には、まるで先生から放課後、居残る様に命じられた悪ガキの様な憮然と
した表情が浮かんでいるが――
 そんな、少年にお構い無しに、少女は言葉を続けた。
「ねぇ、暇してるんだったらさ、私に付き合わない?」
「……いや、今取りこみ中だ」
 少年は、憮然とした表情を崩さないまま、素っ気なく言い放った。
「え〜なんでよ、今さっきからずっとその場所に、つっ立ったまんまじゃない」
 少女が指摘した様に、少年は、表通りに面したブティックのショーウインドに持たれ掛かった
まま彼是一時間程、通行人を眺めているだけだった。
「あっ、もしかして誰かまってるの?」
「……まぁ、そんな所だ」
「誰、待ってんの?友達?それとも彼女?」
「誰だっていいだろ、それよりもこんな時間に、女一人でうろついてると、悪い狼に食われちま
うぜ」
「なにそれ、オジサンみたいなこと言わないでヨ、超ダサー、まだ11時ちょい過ぎジャン」
 少年の太い眉毛が、ピクリと動いた。
「兎に角、俺は忙しいんだ、逆ナンパがしたけりゃ、ほか当たれよ」
「バッカじゃないの!折角、この私が声掛けてあげたのに!もしかしてアンタ、ゲイなんじゃない
の?そう言えば服装も、マッチョ系だし、やっぱりゲイなんだ……ウホ!ゲイなんてサイテー、カ
マ掘られてヒイヒイ喘ぐなんてキンモ★〜、近寄らないでよ、この変態!」
 突然、少女は癇癪玉が破裂したかのように、大声で一気に捲くし立てると、唖然とする少年を
尻目に、さっさと行ってしまった。
 すると、何を思ったか少年から5m程離れてから、少女は立ち止まった。そして少年の方を一
瞥すると――
「あっかんべ〜〜」
 ガキかよ!、と少年がツッコミを入れる間もなく、少女の姿は、人波に消えてしまった。
 結局、反論も出来ないまま、一人取り残された格好になった少年は、騒ぎを聞きつけた通行人の
好奇の視線を一身に浴びる。
「バカヤロー、誰がゲイだ。硬派と言えよ硬派と!大体、女が嫌いなんじゃない、お前みたいなチャ
ラついた女が嫌いなんだよ!」
 通行人の痛い視線を無視しながら、少年は口の中で呟いた。

1313ちょっと長いけど、よろしく 2/5:2006/05/04(木) 02:41:39
 あの、少女が立ち去って、どの位の時間が経っただろうか。
 少年は、未だにブティック前にいた。
 ブティックのショーウインドウには、無骨なシャッターが下りていた。流石に、表通りを流れる人波
も、途切れがちになっていた。
「今宵も待ち人は、現れず……か」
 誰に言うでもなく、少年が呟いた。
「それにしても、もう一週間だぜ、人の味を覚えちまったんだ、もうそろそろ血を押さえられなくなる
頃だが……それとも、狩場を変えたの――」
 そこまで言って、不意に少年は、顔を上げた。
 少年の視線の先、行き交う通行人の足元に、一匹の黒猫がいた。
 黒猫は、少年と視線を合わせると、身を翻して駆けて行った。
 弾かれた様に、少年も走り出した。通行人を巧みに躱わしながら、黒猫の後を追う。
 恐ろしく足の速い猫だ。まるで黒い疾風の如く、通行人の間を摺り抜けて行く。少年の足も決して
遅くないのだが、見る間に黒猫との距離が開いていった。
 黒猫は、通りの角で折れてアーケード街に入っていく。数秒遅れて少年もそれに続いた。
 アーケード内の商店は殆どがシャッターを下ろしていた。通行人の姿も見えない。そのお陰で
前方を走る黒猫の姿をはっきりと目視することが出来た。少年と黒猫との距離は三十m程か。
「……フゥ!」
 少年は短く息を吐き出した。次の瞬間、ローギアからいきなりトップギアに入れたかの如く少年
の体は一気に加速した。
 速い!それまでも十分俊足と言えたが、今のスピードは短距離の世界のトップアスリートをも遥か
に凌駕する驚くべきスピードだ。
 ダイナミックなフォームで走る少年の姿は、まるで獲物を狙うしなやかな獣だ。瞬く間に、前方を走
る黒猫との差が縮む。
 少年と黒猫との距離が五m程まで詰まった時、黒猫はアーケード街を抜けて飲食店や居酒屋が
多く立ち並ぶ区画に入った。
 飲食店街には、まだ人通りが残っていたが、少年はスピードを緩めない。
 その時、赤提灯の店から出てきた千鳥足のサラリーマンが少年の行手を遮った。
「…っと!」
 少年はハードルを飛び越える要領でサラリーマンを一跨ぎした。一跨ぎとは言っても、軽々と2
mは飛んでいた。
「おぉ!なんだぁ!……あ痛てぇ」
 いきなり目の前に現れた少年に驚いて、赤ら顔のサラリーマンは尻餅を突いた。
「ゴメンよ!」
 顔だけ向けて謝ると少年はそのまま走り去る。背中越しにサラリーマンの罵声が聞こえたがそ
れを無視した。
 しばらく追跡を続けると、前方を走っていた黒猫が突然止まった。
 少年も急制動を掛けたが、スピードに乗っていた少年の体はすぐには止まることが出来ない。
 ズズズズ――
 スニーカーのソールでブレーキマークを刻みつけながら4メートル程横滑りして、ようやく少年
の体は止まった。ちょうどいい具合に黒猫の傍らだ。
 黒猫は、雑居ビルの間の薄暗い路地の前に、ちょこんと座っていた。
「ここだな、しかし……」
 路地の暗闇の先を見つめる少年の顔が一瞬、強張った。
「ニャ〜ン」
 何時の間にか少年の足元に擦り寄っていた、黒猫が甘えるような鳴き声を上げた。
「ん?そうだな、お前の”使役”は、終わったからな、戻っていいぜ」
「ニャン」
 黒猫は少年の言葉に答える様に鳴いた。すると突然、黒猫の体から青白い炎が噴き上がった。
その青白い炎は、瞬く間に黒猫の全身を包み込む。そして次の瞬間、眩い光を放ちながら爆発
したかの様に四散した。

1314ちょっと長いけど、よろしく 3/5:2006/05/04(木) 02:42:26
 黒猫の姿は、忽然と消えていた。その代わりに一枚の紙切れが黒猫が居た場所に落ちていた。
 少年は、驚いた素振り一つ見せず、然も当たり前のように、その紙切れを拾い上げた。
 縦三十cm横十cm程の短冊状のその紙の表面には、なにやら幾何学模様のような文字がびっし
りと書かれていたが判読不能だった。唯、墨で書かれた「猫」と「探査」の二文字だけは読み取る
事が出来た。
 その紙をGパンの後ろポケットに押し込こみながら、少年はもう一度、路地の方に目を向けた。
 路地に澱む闇が深すぎて、通りからは3m先も見通す事が出来なかった。
 きらびやかな夜の街に、ぽっかりと口を開けた魔窟――。そんな印象だ。
 人間は、本能的に暗闇に恐怖を覚えると言う。路地に澱む闇の深さは、人の侵入を拒むには十分
だった。
 もっとも、この少年は、そんな繊細な神経など持ち合わせていないのか、大胆に、そして無遠慮に
路地の中に足を踏み入れた。
 狭い路地だ。大柄な少年が両手をいっぱいに伸ばすと両サイドの壁に手が付いてしまいそうだ。
 大股で三歩も行くと、もう通りからの光は届かなくなり、墨汁を垂らしたかのような暗黒が少年を包み
込んだ。
 だが、少年は夜目が利くのか、スイスイと路地の中を進んで行く。
 しばらく歩くと、ポリバケツが地面に転がっていた。何処かの不心得者が蹴り倒したのか、蓋が外れ
て中の生ゴミが狭い路地いっぱいにぶち捲けられていた。
 それを無視して更に奥に進むと、不意に少年の足が止まった。
「………やはり、か」
 少年の口から、溜息にも似た呟きが漏れた。
 路地の奥まった場所に何かが横たわっていた。うち捨てられたマネキンか?
 いや、違う。少年の鼻を刺激する臭いがそれを否定していた。狭い路地の中に立ち込めた、吐き気
を催すほど濃密な”血”の臭いが……。
 灰色の壁に彩りを加える飛び散った血痕。地面は、赤い絨毯を敷き詰めたかのように、真紅に染ま
っていた。
 少年は、視線を足元に落とした。そこには切断された右腕が転がっていた。上腕骨が覗く切断面を見
る限り切断したと言うよりも噛み千切ったと言った方が正解だろう。
 少年は、死体の方に近づく。若い女性のようだ。OLだろうか?ブルーのビジネススーツは血が滲んで
黒く見えた。
 最後まで必死に抵抗したのだろう。左手の爪は、小指以外全て剥げていた。その指の間には灰色の
長い毛が挟まっていた。
 視線を死体の上半身に移す。喉笛の辺りにぽっかりと穴が穿っていた。恐らくはこれが致命傷だろう。
そして顔。カッと目を見開き、恐怖と苦痛が綯い合わさったまま凍った表情は、女性の両親が見てもす
ぐには、自分達の娘とは気が付くまい。
 少年は身を屈めて死体に触れた。無論すでに冷たくなっていたが、死後硬直は始まっていなかった。
死体になってそんなに時間は経っていないようだ。
 視線を上げた時、女性の顔が少年の目に入った。死体を見るのは初めてではない。寧ろ商売柄、見
馴れていると言ってもいい。だがそれでもこの女性の顔は当分の間忘れる事は出来ないだろう。
 少年は、そっと女性の顔に手を当てて、見開いたままの目を閉じた。
「……ゴメン。助けられなくて、だが仇は取る……絶対にな」
 搾り出すようにそう言った少年の声は、僅かに震えていた。

1315ちょっと長いけど、よろしく 4/5:2006/05/04(木) 02:43:31
 男は、腹の奥底から突き上げてくる衝動を、必死に押さえ込んでいた。
――食らいたい!食らいたい!食らいたい!!
 先の”食事”から二時間もたっていないのに、激しい飢餓感が男を苛む。だが僅かに残った
男の理性がそれを押し留める。
――今はダメだ、今は……
「ねぇ、どおしたの?顔色悪いよ」
 男と並んで歩いた少女が、男の顔を覗きこんだ。
「いや……なんでもない」
「フ―ン、ならいいけど」
 少女は、興味を失ったかのように男から離れた。
 男は額の汗を拭いながら傍らの少女を見た。つい今先まで見ず知らずだった少女だ。
 街角で二言、三言、言葉を交わしただけで少女は男に付いて来た。名前は確か真理とか言っ
た。だが少女の名前など男には、何の意味も持たない。
 なぜなら少女は男の飢えを、渇きを潤す為の贄にしか過ぎないのだから。この少女の肉を貪り
たい!血を啜りたい!男の本能が、獣としての本能が男の体を駈り立てる。
――だが、ここではダメだ。人目に付くこの場所では……
「なぁ……ちょっと寄って行かないか」
 男が指差したのは市民公園の入り口だった。
「んー、どうしょうかな〜、ちょっとムード有りそうだけど……でも変なのが居たりしない?クスリ
でラリッてるのとか」
「……大丈夫、この公園に人は居ない。」
「なんで分かるの?」
「……臭いだ」
「臭い?なにそれ、あなた犬系の人なんだ」
 そう言うと真理は何が面白いのか、ケタケタと笑いだした。
 男も真理につられて笑顔を浮かべた。その口元には人の歯と言うには余りにも太く鋭い犬歯
が覗いていた。
 そして二人は連れ添って公園の中へ入っていく。その様子を街路樹の上から一匹の白猫が
見つめていた。

 公園の中は、闇と静寂に包まれていた。点在する街灯の周りだけが大海の中の小島のように
浮かんで見える。
 繁華街から近いと言うのに、喧騒から切り離されているのは公園を包む様に植林されている
街路樹が防音壁の役割を果たしているということもあるが、公園自体がかなりの広さ持ってい
る為であろう。
 日中ともなれば、緑を求めて散策する者や近くのオフィス街から昼食をとる為に訪れる者など、
市民の憩いの場所として人通りがあるのだが、日付が替わり、丑みつ時と言ってもいい今の
時間に公園を散歩する物好きの姿は見えなかった。――男と真理以外は。
 二人は、公園の中央にある広場に向かう遊歩道を歩いていた。
「……ねぇ、ちょっとここ、怖くない?」
 真理は、男に寄り添いながら、気味が悪そうに辺りを見渡した。
「………」
 だが男は、真理の問いを無視したまま、どんどんと先に進んで行く。
「蚊や変な虫も多いし」
「………」
「ねぇ、やっぱりここ出ない?私、ここなんかヤだな」
「………」
「ねぇ!聞いてる?」
「………ああ、そうだ、な……出るか」
 それまで無言だった男が漸く答えた。
「じゃあ早く出ようよ!……ホント、ここヤなカンジ!」
 そう言って、背を向けて足早に立ち去ろうとする真理の肩に男が手を掛けた。
「もぅ!ここじゃ嫌だって言ってるでしょ!」
 肩に掛かった男の手を払い除けようと真理は、男の手に自分の手を重ねた。
「!?」
 これが……これが、人の手なのか?剛毛に覆われたこの獣のような手が。
 沈黙の中、息を呑む真理の喉の音と男の荒い息遣いだけが聞こえた。
 真理は、ゆっくりとゆっくりと振り向いた。
 男の顔は、闇に隠れてよく見えなかった。だが男の目が、……禍禍しく、赤く光る目だけが、
闇の中に浮いていた。
 公園に、女の悲鳴がこだました。

1316ちょっと長いけど、よろしく 4/5:2006/05/04(木) 02:51:31
 真理は、走っていた。ただひたすらに走っていた。だが、いくら走っても公園の
出口が見つからない。まるでゴールのない迷路に迷いこんだようだった。
 街灯の下まで辿り着いた所で、真理は、力尽きたかのように座り込んでしまった。
 必死に息を整えようとする真理の耳にあの音が、男の荒い息遣いが聞こえたきた。
 真理は、恐る恐る音の聞こえる方向に顔を向けた。
 男の姿は、見えなかった。だが闇に浮かぶ二つの赤い目だけは、はっきりと見え
た。
 真理は、有らん限りの大声で悲鳴を上げた、喉が焼ける様に痛い。だがそれでも
真理は、悲鳴を上げ続けた。しかし真理の悲鳴は、誰の耳にも届くことはなかった。
 闇の中に浮かぶ二つの赤い目は、ゆっくりと、しかし確実に真理に近づいて来る。
 ようやく街灯の光に照らし出された男の顔は人としての特徴を残していなかった。
 長く尖った耳、前に突きだし大きく切れ上がった口、そして裂けた口から覗く鋭い
歯、いや牙と言うべきか。その顔は、狼そのものだった。
「ね、ねぇ、ジョウダンは、やめようよ……ハロウィンは、まだずっと先なんだから
さぁ」
 震える声で真理は、男に問いかける。だが男からの返事は無い。
 返事の替わりに男が真理の方に右手を伸ばした。剛毛で覆われた指先には黒々と
した鋭い爪が生えていた。
 真理には既に逃げる気力は残っていなかった。ただボンヤリと男の動きを眺めていた。
「……そうよ!これって夢なんだ!夢じゃなきゃこんなこと有る訳ないよ!、目を
覚ますときっとベットの中に居るだ……だったら……だったら、早く私を起こしてよ
ぉ!……ママぁ!」
 真理の願いとは裏腹に男の右手が真理の首筋に近づく。これは紛れも無い現実なの
だ。
 その時――
 唐突に風が鳴った。その唸りは獣の咆哮にも似ていた。
 ヒョオォオオォオオ――
 次の瞬間、男と真理の間に風が…疾風が駆け抜けた。
 男は、風が鳴るのとほぼ同時に後方に仰け反るように跳ね飛んだ。5メートル後方
に男が着地するのと同時に、真理の足元に何かが落ちた。
「キャアァ!」
 真理の眼前に転がった物、それは切断された男の右腕だった。
 男の右腕から流れ出た夥しい鮮血が地面を朱に染める。だがなんとう生命力か、男の右
腕は血に染まりながらも、まだ獲物を求めてワナワナと動いていた。

1317ちょっと長いけど、よろしく 追加:2006/05/04(木) 02:56:39
「フン、大した生命力だな、さすがは人狼だ」
 突然、真理と男、いや人狼以外の第三の人物の声がその場に響いた。真理と人狼
は同時に声がした方向に顔を向けた。
 何時の間に現れたのだろうか、その背の高い人物は、真理のすぐ後ろに立ってい
た。
 真理は、這いつくばって、その人物の足に縋りついた。
「お、お願い!助けてぇ………て、アンタはさっきのマッチョゲイ!?」
「誰がマッチョゲイだ!………て、そう言うお前は、さっきのバカ女か!?」
 真理とその少年は、顔を見合すなり声を上げた。無理もない、つい今先、一悶
着起こした相手とこんな所で顔を合わせる事になろうとは
「だから言わんこっちゃねぇ!、言っただろうが、女がこんな時間に一人歩きする
なってな!」
 少年は、拳を振るわせながら怒鳴るよう言った。
「……アハハ、やっぱり怒ってる?」
 愛想笑いを浮かべながら真理は、首を竦める。
 少年は、無言のまま、座り込んでいた真理の制服の襟首の部分を左手で掴むと、
そのまま持ち上げた。
「うにゃん!」
 真理は、首根っこを摘まれて持ち上がられた子猫のように空中で手足をぷらんぷ
らんとさせた。
 その姿勢のまま少年は、左腕を回して真理を人狼の目から隠すように自分の背後に
下ろした
「八時の方向に……お前から見て左斜め後ろに道があるはずだ、その道を真っ直ぐ
行けば公園を出られる」
 少年は、肩越しに真理を見ながら言った。
「あの……助けてくれるの?」
 真理は少年の顔を見上ながら遠慮がちに言った。この娘にしては珍しく、しおらし
物言いだ。
「男てのは女を守るもんだ、例えそれがどんな性悪女でもな、ホレ、早く行けよ」
 そう言うと少年は、悪ガキのように鼻の頭を指で擦った。
「あ、ありがと!……そんな奴ケッチョンケッチョンのギッタンギッタンにやっつけ
ゃってよ!」
「ヘイヘイ」
 真理が去って行くのを確認してから少年は、人狼の方に顔を向けた。
「よう……ようやく会えたな」
 まるで古い友人に話しかえけるような気安さで少年は人狼に声を掛けた。が、
無論と言うべきか人狼からの返事はない。
 二人は、――と言ってもいいのものか?――7mの距離を置いて対峙していた。
 人狼は、今先から一歩も動いてはいなかった。右腕の傷口からは止めど無く鮮血
が流れ落ちていた異形の顔は、苦痛と憤怒に歪み、剥き出しにした牙の隙間からは
呪詛の言葉にも似た唸り声が漏れていた。そして赤い凶眼から放たれる光には狂気と
殺意を孕んでいた。
 その凶眼を真っ直ぐ正面から見据えながら少年は……笑っていた。
 真理に見せていた悪ガキ然とした表情とは、根本的に違う凄みのある笑みだ。
 その笑みを形容するとすれば、不敵でも、大胆でも、剛毅でもなく、それは”獰猛
な笑み”だった。
「痛いかい?……そりゃ痛いよなぁ、腕が千切れてるだから……だが!テメェに食われた人達の痛
みや苦しみはそんなモンじゃなかったぜ!」
 そこで言葉を一区切りすると、少年は自分の右の拳を左の掌に打ち据えた。
 パン!
「テメェを殺るには、法術も符術も要らん。体術で……俺の拳でぶっとばす!!」

 すみません、長い上に読み難くなってますがよろしくお願いします。




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