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第8回電撃short3

91イラストで騙す予定の名無しさん:2003/05/16(金) 02:32
 柔らかそうな撥ねっ毛に、不健康そうな白い肌。出てきてからずっと微笑みを浮かべている。幼ない印象を受ける中性的な顔だち。
 着ているジャケットは、濃い茶……一瞬、それが血の色に見えて、里美は慌てて頭を振った。よく見ればチョコレート色じゃないか。
「誰が置いていったのか、わからないんですよ。気持ち悪いでしょう?」
 少年は、里美の視線を気にしている様子はない。
「……ううん。でも、これを置いてった人が悪い人だとしても、お花に罪はないでしょう? こんなに一生懸命咲いてるのに、捨てるなんて……」
「この花束が、誰かが怨念をこめたものだったとしても?」
 少年は微笑みを崩すことなく、続ける。
「お花だって、好きで怨念とか、こめられたわけじゃないわ。だから元々の気持ちだって――綺麗に咲きたいって願う気持ちだって、残ってると思うの。だったら、私はその気持ちを信じたい」
「……強いんですね」
 少年は息を漏らすと、笑みを深くした。煙のような息がその笑みを覆う。
 ――何が強いんだろ?
 里美は首を傾げ……そこで、肝心なことを聞き忘れていたことに気づいた。
「あなた……誰? ずっとあそこにいたの?」
「ただの通行人ですよ。お気遣いなく」
 そう言って、少年は里美の脇を通り、階段の方へ行こうとした。
「寒かったでしょ。ウチで温かいものでも飲んでく? すぐ用意するから」
「――いいんですか?」
 初めて、少年の顔が笑みから外れた。口をぽかんと開けている。
「だって、あなた見るからに寒そうなんだもの。顔色悪いし――」
「そうじゃなくて、こんな見ず知らずの男を家に上げていいんですか? 羊に化けた狼かもしれませんよ、僕は。それからこの顔色は地です」
 再び、少年の顔に笑みが戻る。
 里美もつられて、笑った。
「自分からそんなこと言う人は、何もしないわよ。ふふ」


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