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第8回電撃short3
73
:
つくし誰の子3/3
:2003/05/05(月) 21:19
「つくしは尽くし。知ってるかい?」
母ちゃんはそう言いながら、土の上に字を書いた。
「つくしはね、スギナを増やす胞子を撒くために生えてくるんだよ。そして、スギナが生えて
くる頃にはもう枯れてなくなってしまう。一族が増えるために尽くして尽くして、役目を
終えたら消えてしまう」
母ちゃんが何を言おうとしてるのか分かったけど、僕は分かることが嫌だった。分からない
くらい僕がバカだったら母ちゃんとずっと一緒にここにいられたのに。
「母ちゃんはお前を増やしたからもういいんだ。お前が学校へ行って、病気をなくす研究を
したら、もっともっと増える。いつかみんなが長生きして幸せに暮らせるようになる。母ちゃん
鼻が高いよ、みんなのためにたくさん尽くす子を産みましたって神様に言えるからね」
そしてやっぱり、母ちゃんとつくしを摘んだのはそれが最後だった。
僕が学校へ行って二年目の春、やっぱりつくしの出る時期に、母ちゃんが死んだという
電報が村から届いた。卒業するまで帰れない鉄の掟は、身内が死んでもやっぱり鉄で、
僕は寮でこっそり泣いた。見えない錐に胸を突かれたようだった。その傷は目に見えない
くせに息が詰まるほど鋭く痛んだ。
いつの間にかその痛みをやり過ごす方法を覚え、その事にまた傷つき―――
もうすぐ、母ちゃんと最後につくしを摘んでから、十回目の春が来る。
卒業式が終わったら、その足で村に帰ろう。村の人が立ててくれた母ちゃんの墓を初めて
参ろう。そして自慢してやるんだ―――
あなたの息子はよくやっていますよ。あなたの葬儀にも帰らずに学問を修めて、この春から
は病気退治の研究者です。あなたが神様の前で大いばりできるように、みんなのために
がむしゃらに尽くしていますよ。
墓参りには、菊の代わりにつくしをしこたま摘んで供えてやろう。母ちゃんはきっと向こうで
好きな味に煮るだろう。
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