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第8回電撃short3
47
:
323一訂版1/2
:2003/05/03(土) 23:52
「流したことあるの?」
「無い! 無いが痛そうだ!」
「大丈夫だよー、指の先っちょ切るだけ」
言われて父は固まって、一瞬考え、自分の指から血を流しつつ、「血が止まらん……」
などと言いつつ体が冷たくなっていく様を考えて、ああ、大丈夫が自分、頑張るんだ自分!
などと妄想の中の自分に対してエールを送り、その中で隣に控えた娘は心配そうに、「ごめ
ん、ごめんねお父さん」などと言っており、されど指から流れる血は止まらず、妄想の中の
父は「ああ、すまんなぁ……、お前と一緒に地上に行こうと約束したのに」言いつつ幸せそ
うに「光が……みえる」言ってがくりと力無く倒れ、「お父さーーん!」と娘は涙を流して
叫び、ああお涙頂戴の名シーンなどと父は自分の妄想に浸りつつ、
されど現実の娘はブキミに笑い、
「ね、やっぱやろ?」
父はガキリと固まる。
「だってさ、いま床の草が春だしさ、たぶん外も春なんだよ。あたしは制服着てるしさ、
春ってニュウガクシキシーズンっていうらしくてさ。今学校行かなくていつ行くのよ!」
「だからってそんな急がなくともいいだろが!」
「だから、切ってみれば解るんだって」
言って少女は包丁を持ち、親父の方を見、ギラリと笑う。
「……ね?」
されど父には未知の恐怖に勝てはせず、
「――すまんっ!」
叫んでいきなりにげだした。
「あー! こらまてーーっ!」
狭い部屋に逃げ場所はなく、ぐるぐる二人は回りつづけている。
天井でも、CCDの監視カメラがぐるぐると回りつづけている。
ふいに監視カメラの音が止まる。静かに隠し扉は開いていき、されど二人は気付かない。
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