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第8回電撃short3

293/3:2003/05/02(金) 20:29
「まー若いうちには色々あるけぇの。何を考えとるのか知らんが、あんた、自殺でもしよ
うとしとるように見えるよ」
 僕はぎくりとした。なぜかは分からない。もしかしたら僕は、それを旅の目的としてい
たのかもしれない。
「夕日の海は不吉に見えるけぇ、今度は日の出の時間に来てみ。いろいろ考えも変わるだ
ろうよ。たいぎぃかもしれんがな」
 老人は去っていった。僕はそのままぼうっとして、冷たい風に吹かれていた。
 その日は宮島で一泊し、翌朝は夜明け前から行動を始めた。老人の言葉が頭に残ってい
た。朝の島は霧に包まれ、厳粛とした雰囲気だった。
 走って身体を温め、神社に行く。神社は六時半から開かれ、日の出にはまだギリギリ間
に合う。入場して朝日の見える方に走ると、老人がいた。
「よく来たね」
 老人は屈託なく笑った。僕を待っていたようだった。
「ほれ」
 老人の指の先で、今まさに太陽が昇ろうとしていた。日の出と共に霧が払われ、言い表
せない美しい光景が広がり、僕の心の闇を払ってくれる。
 僕は思いもかけず、胸を打たれた。
「宮島は島自体が神様じゃけぇな。朝日もそうじゃよ。魂が洗われるじゃろう?」
「え? じゃあこの神社って、もともと平家の為に作られたんじゃないんですか?」
「違う違う。この島全体を、奉っておるんよ」
 僕の安徳帝への妄想も、払われてしまったようだった。
 僕は少し、素直な気持ちで、弟に祈りをささげた。


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