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第8回電撃short3

114513-514改:2004/09/12(日) 20:28
 脇腹が痒い。
 眠い。うるさい。
 頭がイマイチ回っていない。
 最後のを改善するため、俺はタオルケットを蹴り退け、ヘタり気味のクラッチを繋ぐよ
うに思考を開始した。
 この世には望んで手に入るものとそうでないものがあって、容姿を始め身体的な特徴は
後者にカテゴライズされる。当然以前の問題として、たまにしか意識されないけどな。
 人はその中で妥協なり努力なりをして何者かになるんだが、欲を言えば俺はもっとマイ
ルドな外見が欲しかった。
 う〜ん。嫌な思い出が走馬灯のように駆け巡る。
 要求する外見のマイルドさを具体的に言うなら、道路にはみ出し、横一列になって歩い
ている女子高生の集団をちらっと見ただけで『ひっ』とか言われない程度だ。いや違う。
俺は断じて睨んだりしていない。危ないな、と少し思っただけだ。それで『ひっ』はない
だろう? 俺はそこまで目つきが悪いのか? まあいいや、忘れよう。うん。
 その点、目の前にいるこの娘、逆島アヤノは、自分の容姿に対して俺と逆方向の不満を
抱いているのだそうだ。俺から言わせてもらえば贅沢な悩みで、俺もアヤノに『贅沢な悩
みだ』と言われた事があったりするが。
 別に俺もアヤノも自慢で言ってはいない。一九〇以上の背丈がある奴に訊いて回れば、
十人目ぐらいで『別に背が高くたって良い事ない』と苦々しく言う奴が見つかるはずだ。
 そのアヤノの外見だが、なんと言うか、ガムシロップをリッター単位で使ったような、
実に甘ったるいパーツを、気合いの入った表情でまとめた感じか。髪はショートだし、眉
は平素から逆ハの字だ。形自体は良いと思うんだがな。まあ、あれだ。何を隠そうこいつ
は、現代格闘研究会なんていう部活でマネージャーやってるからな。性格も話し方も体育
会系だ。身につけてるものぐらいは周りの影響で洒落てたりするが。
 そのオシャレアイテムであるところのヘアクリップが、俺の視線の先で揺れている。ア
ヤノはなにやら俺の服を拾い集めているようだ。
「なにやってんだよ?」
 俺が訊くと、アヤノが振り返った。動作に恐ろしくメリハリがあるため、制服のスカー
トが振り回されているように見える。そのままスタスタとこちらに歩いて来て、座りなが
ら答えた。
「散らかってるのが気になったんです」
 律儀な奴だ。座り方も正座だしな。
 しかし、こう言ってはなんだが、アヤノには背筋の伸びた正座が似合わない。


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