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妖怪学園の非凡な非日常

34ようこそ妖怪学園へ:2020/06/21(日) 16:23:48
校舎裏にある部室棟、そこの一室である文芸部の部室前に一同は到着した。
「文芸部員といっても、妖怪だったり、妖怪の存在を知ってたりする人ばかりではありません」
蓮崎は改めて清美に釘を刺す。
「あ、そうなんだ」
「ですので、基本的に妖怪の事は秘密ということでお願いします」
「わかったよ。ところで、誰が妖怪で、誰が妖怪を知ってる人とかってのは教えてくれるの?」
「それがですね、誰が妖怪かは本人から許可を得ないと教えられない事になってるんです。
 それから、妖怪を知ってる人間については、ちょっと困った事になってるんですよ」
清美の問に、蓮崎はその美しい顔を困惑で曇らせる。
「正直、ウチの学校の妖怪関係者の取り扱いって、ちょっとイイカゲンなんスよね」
桜がハァッと溜息を吐くと、公平が後を続ける。
「そうそう。妖怪同士は教師も生徒も一度全員集めて面通しするんだけど、妖怪を知ってる人間ってのはねえ……」
公平が歯切れ悪そうに言うと、尚美が眉根を寄せる。
「清ッチのときみたいに、改めてバラすときは一応学校側……妖怪の先生とかに相談したりするから、学校の方は分かってんだけどさ、アタシらにはそういうのあんまり回ってこないんだよね」
「おまけによお、どの人間が誰が妖怪かを知ってるか、てのも殆どわからないんだぜ」
志郎も困り顔だ。
一同の最後尾でついてきた魅子が説明する。
「この学校では、秘密保持の観点から、人間には本人の許可がないと妖怪である事や正体を教えちゃいけないのよ。ほら、秘密を知る人は少ないほうがいいでしょ?
 でもそのせいで、妖怪を知ってる人間が、妖怪相手に妖怪の存在を隠そうとしたり、なんて変な事も起きたりしちゃうんだよね。
 先生なんかとも相談してるんだけど、やっぱり秘密保持優先で、身近な人間以外には正体を明かさないって方針でやるしかないって言われたよ」
そう締め括ってヒョコッと肩を竦めた。

35ようこそ妖怪学園へ:2020/06/21(日) 16:24:21
部室には数名の部員がおり、蓮崎は清美を見学者と紹介する。彼らは部の本来の活動の説明をし、今ここに居ない部員は蓮崎の方の活動をしてるといった。
「ハロウィンでコスプレパレードをするので、今は空き教室を借りてその衣装作りとかやってます」
そう言って今度はそっちに移動し、また清美を紹介した。
本日の蓮崎達は『実践文芸部』の活動には参加せず、そのまま清美と尚美と桜を引き連れて若葉寮へと向かう。
「さて、最後にこの学校のラスボスを紹介するッス」
「え、ラスボス?」
桜に問い返す清美に、蓮崎がニコッと微笑む。
「射干玉八美代さんの事ですよ」
寮生が毎日の点呼だので顔を合わせる、若い美人の管理人のことだ。
「あの人さ、ウチの学校最強の妖怪」
尚美がバラす。
「妖怪の事を知ってる寮生には、必ず正体を明かす事になってます」
「ま、神宮寺センパイとか中沢先生と同じ、妖怪関係の相談窓口ッス。最強なんで、寮生で逆らえる人はいないッスよ」
蓮崎と桜の説明に、清美は納得する。
寮の玄関脇にある窓口に声をかけ、回り込んでその向こうの執務室に入る。管理人は水色の作業着姿で事務机の脇に立って待っていた。
彼女はウェーブのかかったセミロングの髪に、頬のふっくらとした微笑んでいるような優しげな顔で、体つきもややふっくらとした若い女性である。
「宮内さん、改めて自己紹介します。私は射干玉八美代、闇への恐怖が実体化した闇の精です。なお、恐怖が具現化したものですので、すみませんが正体はお見せできません」
そう言ってペコッと一礼する。
清美もつられて「あ、どうも」と一礼する。
「端的に表すと、無数の魔物の蠢く闇の塊といったところでしょうか」
「正体見たら発狂するッスよ」
「面通しのときに見せてもらったけど、妖怪のアタシらから見ても、トラウマモノだよ」
蓮崎の説明では清美には上手く想像できない。桜と尚美の言うことを信じれば、多分考えてはいけない類なのだろう。
「妖怪関連で何かお困りの事があれば、遠慮なく言って下さいね。例えば、蓮崎さんに猥褻な事をされたとか」
射干玉の言葉に、間髪入れず蓮崎が返す。
「酷いです、八美代お姉さま。私はそんなに信用ありませんか?」
悲しみにやや顔を陰らせ、体をギクッと強張らせた射干玉をじっとみつめる。
「ちょ、ちょっとその呼び方は、今ここでは止めてくれないかしら」
「私が同意を得ない相手とは決して性交渉しないのは、お姉さまもよくご存知のはずです」
「えっと……、まさか」
清美が隣室コンビの方を向く。
「そうッス」
「アタシらのお仲間だよ」
桜と尚美の答えに、一瞬こちらを見た射干玉はサッと視線を反らす。その頬は赤い。
「いや、あの、その、例えばの話であって、ほら、万一とか……」
詰め寄る蓮崎に必死に弁解する射干玉の慌てっぷりを見て、清美の中にとある考えが浮かんだ。
――この学校のラスボスって、実は蓮崎さんなんじゃないの――


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