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MMTメモスレ

30引用 ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」:2019/10/11(金) 00:08:21
引用 ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」 P474-476


量的緩和(QE)をこんなふうに要約しよう。
あなたは銀行に当座預金口座と貯蓄預金口座を持っている。
銀行から、貯金の一部を、貯蓄預金から当座預金に移すことを提案されるが、あなたはそれを断れない。
その代わり、あなたは銀行から大好きなトースターをもらえるとしよう。
この預金の移動は、あなたが支出を増やす動機となるだろうか?おそらくならないだろう。
あなたが将来に不安をいだき、配偶者が最近解雇され、住宅ローン残高が住宅の時価を上回っているとすればなおさらである。
当座預金だと、貯蓄預金に比べて利息が減るから、もしろわずかに支出を減らすかもしれない。

同じように、QEとは基本的に、FRBにある銀行の貯蓄預金口座(国債)から、当座預金口座(準備預金)に資金を移動することを意味する。
これによって、銀行の利益は100、あるいは200ベーシスポイント減ることになる。これが景気を刺激するだろうか?
インフレ心配性の人々は、イライラが収まるだろう。QEがインフレを引き起こす可能性はないのだから。
どれだけの準備預金が生み出されても、それは中央銀行のバランスシートに確実に閉じ込められたままである。
そこから脱出してインフレを引き起こす可能性はない。

しかし、QEには負の側面もある。
低金利の環境下で、銀行は預金に対してほとんど利息を払ってこなかったし、一方で預金者に課す手数料を引き上げた。
低い預金利率と高い手数料が、貯蓄という行為を無意味なものしている。貯蓄しても、銀行預金から0.5パーセントの利息すら得られない。
たしかに住宅ローンの金利も低下したが、差し引きすると消費者の所得は吸い取られてしまった。以下は、クレディ・スイス銀行のレポートからの引用である。

FRBによる、''ほぼゼロ金利療法''の副作用、それは、最近数年間の個人利子所得の急減である。
利子所得の減少は、債務返済コストの節約効果を、事実上ちっぽけなものにしてしまう。(中略)
FRBのデータを分析したところ、住宅ローンや消費者ローンの返済コストを含む総返済額は、ピーク時より2000億ドル減っている。
一方、利子所得はピーク時からおよそ4250億ドル減少しており、これは債務返済額減少による恩恵の2倍以上になる。 [引用内引用終わり]

これをマクロな視点から見てみよう。
オバマ大統領の財政刺激策を覚えているだろうか。それは2年間、年に4000億ドルほど(GDPのほぼ3%)だった。
それが、「効果があったか否か」については激しい論争が続いている。
本当にクレイジーな連中だけが、それはまったく効果がなかったと信じている。
FRBのゼロ金利政策は、オバマの刺激策の半分に匹敵する総需要を経済から奪い取っている。
しかも、これは2年間だけではない。FRBがゼロ金利政策を実施する限り、ずっとずっと、何年も続く。

だとすればQEは、毎年、GDPの1.5%を奪い去るのに一役買うことで、景気を刺激するものなのだろうか?

過去20年間にわたってゼロ金利政策を経験した日本のケースから学んだように、極端な低金利は、与える以上に多くの需要を経済から奪ってしまう。
つまり、FRBはブレーキとアクセルを踏み間違えてきたのだ。
QEは経済に急ブレーキをかけるが、FRBは、QEは経済へガソリンを送り込んでいると考えている。
それはQEが間違った政策であることを意味するわけではない、多くのMMT派は常にゼロ金利政策を支持している、が、
QEは景気を刺激しないことを理解しなければならない。

31引用 ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」:2019/10/11(金) 00:19:21
引用 ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」 P480-481

「政府は、インフレを引き起こすことなく完全雇用を追求''すべきだ''」というのがMMTの政策規範であり、そうするのにJGPほど良いプログラムは見つかっていない、というのがケルトンの主張である。
従って、我々はMMTの説明からこの政策提案を切り離すことができない。それどころか、MMTは規範も説明も遥かに超えたものである。
MMTは、経済を全体として理解するための首尾一貫したアプローチを与え、貨幣の「本質」の理解から始まる「世界観」を提示する。

とはいえ、MMTの教義の大部分は誰でも取り入れることができる。
その政策規範に同意することなく、単にMMTの説明的な部分を利用したいならば、それも可能である。
MMTの説明は政策立案のための枠組みを提供するが、''政府が何をすべきか''に関しては意見を異にする余地がある。
主権通貨を発行する政府にとって支出能力は問題とならないことをひとたび理解したならば、今度は、''政府は何をすべきか''という問題が最も重要になる。
我々は、それについて意見を異にすることも可能である。

32引用 ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」:2019/10/11(金) 00:24:18
引用 ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」 P504-506


簡単に言えば、問題は、資本の生産性が高すぎることにある。
投資が生産性を向上させる性質は、総需要に対する投資の乗数効果を上回る。
この問題は徐々に大きくなり、労働者(消費に使われる賃金を稼ぐ)を機械(賃金を稼がない)に置き換える傾向によって、更に悪化する。
これが進むと、やがて、しかし確実に、機械を作り出す機械に辿り着く。この問題は、既に19世紀後半までには顕在化していた。
それは、第二次大戦中および戦後の早い時期に、政府の成長によって解消された。
米国連邦政府は、1960年頃までGDP成長を上回るスピードで成長した(つまり、経済規模に占める割合において、連邦政府は着実に大きくなった)。
次の15年間で、今度は州と地方の政府がGDPよりも速く成長した。
1970年代半ば、州と地方政府の勢いがなくなると、大停滞が始まったのは偶然ではない(なお、レーガンのソ連崩壊を目的とした軍拡により、大停滞はごく一時的に解消された)。
政府の成長の原則が、需要ギャップを拡大させたのだ。

従来の考え方に従えば、低経済成長に対する解決策は、投資支出の刺激である。
ケインズ学派に言わせれば、それが乗数効果によって総需要を増やし、雇用と成長を高める。
新古典派の経済学者に言わせれば、投資の増加は生産能力を増強し、総供給を増やし、直接に経済成長を高める。
では、どうやって投資を刺激するのだろうか?確かに、どちらの学者も企業に対する減税が投資を刺激することに同意する。
しかし、政府が一文無しだとしたら、財政政策を用いることができない。赤字という厄介者を避けようとすれば、金融政策、つまり投資を刺激するための低金利以外に手はない。
しかし、FRBはもう5年を超えて金利をほぼゼロに保っているし、日本の場合は20年を超えている。
それでも投資はほとんど行われず、成長せず、雇用はほとんど創出されず、どちらかと言えば停滞状態にある。低金利は機能していない。

いずれにしても、低金利は必ずしも投資を促進しない。なぜか?ケインズの答えはこうだ。
企業は売れると思うものを生産する。したがって、長期にわたって将来の売上が伸びると思わなければ、生産能力増強のための投資を行わない。
減税は、それが長期にわたって将来の売上を増やすと信じさせる魔法の妖精の粉がない限り、企業の投資を増やさないだろう。
企業に対する金利と税率の引き下げだけで、企業を騙して投資させるためには、妖精の粉を大量に撒く必要がある。

ケインズの継承者たち(ケインズ学派と名乗る人々と混同しないように!)は、金利政策が投資にとって非常に重要だという考え方を常に拒んできた。
長期にわたるゼロ金利政策を約束して銀行を超過準備で満杯にすれば、銀行が貸出を、企業が投資のための借り入れを行うというバーナンキの考え方に、彼らは決して賛成しなかった。
それはうまくいかないと我々は指摘し、今や誰もが知る通り、実際にうまくいかなかった。
投資は金利に対して、下げようが、あげようが、それほど敏感ではない。
その上、ヴァッターとウォーカーが主張したように、投資を増やすことは需要不足の解決策にはなり得ない。
つまり、投資を増やすと、総需要が(乗数によって)増える以上に、総供給(能力)が増える[引補:ためである]。

33名無しさん:2019/10/11(金) 00:26:56
>>5-11にかけて、鍋島直樹「ポストケインズ派経済学」を、
>>12-32にかけて、ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」を、
それぞれ個人的に面白いと感じた記述を引用させてもらいました。
以後、倉山スレを中心にいくつかのスレにおいて、ここからコピペして引用し批評させてもらうこともあるかと思います。

鍋島直樹「ポストケインズ派経済学」は、5400円+木下税、
ランダル・レイ「現代貨幣理論入門」は、3400円+木下税、と、それぞれお求めやすい価格となっております。
共に良著であると断言できますので、ぜひお買い求めください。


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