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【大正冒険奇譚TRPGその6】
1
:
名無しさん
:2013/09/02(月) 21:38:31
ジャンル:和風ファンタジー
コンセプト:時代、新旧、東西、科学と魔法の境目を冒険しよう
期間(目安):クエスト制
GM:あり
決定リール:原則なし。話の展開を早めたい時などは相談の上で
○日ルール:あり(4日)
版権・越境:なし
敵役参加:あり(事前に相談して下さったら嬉しいです)
避難所の有無:あり
備考:科学も魔法も、剣も銃も、東洋も西洋も、人も妖魔も、基本なんでもあり
でもあまりに近代的だったりするのは勘弁よ
71
:
◇u0B9N1GAnE
:2013/09/02(月) 22:37:14
>>67-69
>「まァ、そう急くんじゃないよ。
あんたと話がしたいって人間が、ここに、もう一人いるのさ。
今から三十年余前―――あんたはとっても可愛い青年だったって、"彼女"、言ってるよ。
ちょっと煮えきらないところもあったけど、それは優し過ぎるせいだ…ってね。」
倉橋冬宇子が何を言っているのか――ツァイは、すぐに理解する事が出来なかった。
若き頃の己を知る『彼女』――そんな女性は、一人しかいないに決まっているのに。
>「私の母親は死者の口寄せを生業とする梓巫女だった。私も子供の頃は、よく憑巫(よりまし)をしたよ。
要するに、死者と口を利くのは私の職能でね。」
思い込んでいるのだ。
自分は彼女の夢を奪った――そんな自分の傍に、彼女がいてくれる筈がない。
筈がないし、いてもらっていい筈がないと。
>「"彼女"――あんたの"守護霊鑑"だがね……大した霊能だ。
生前の姿情のままに顕れて、私に話し掛けてきてね。
自分は決して、あんたを見捨てちゃいない――って。他にも、いろいろと、あんたのことを教えてくれたよ。
しかし冬宇子の言葉が重なるに連れて、徐々に理解が追いついてくる。
「……まさか……彼女がいるのか……?そこに……?」
力尽きた筈のツァイの上体が微かに起き上がる。
そして冬宇子の視線が向く先を、彼は見た。
――だが、何も見えない。あるのは夜闇に染まった虚空だけだ。
やはり――自分には見えない。見えていい筈がなかったのだ。
落胆と、それよりも遥かに大きな、救いを期待した自分への嫌悪が心に滲む。
何気なく、ツァイは冬宇子へと視線を戻した。
なんの期待もせず、ただ声が聞こえたから、程度の理由で。
> この世ならぬ者の力を借りたからには、願いを聞いてやるのが、梓巫女の流儀ってものだ。
―――"彼女"、あんたと話をしたいんだとさ……しばらくの間、身体を貸してやるよ。」
そして、彼女を見た。
>「ツァイ――わかる?私だよ……私…ずっと傍にいたんだよ。」
言葉が出なかった。呼吸すらも忘れていた。
>「私、アナタの嘆きを見ているのが辛かった……私のせいで後悔するアナタが……」
「っ、違う……!何故君がそんな……全て私のせいじゃないか……私のせいで、君は……!」
>「――――ごめんなさい。アナタを苦しめているのは、私だね。
私が、アナタを選んだ理由はね……
アナタは優しいから、秘密を――いつか国を出て行くって決心を――打ち明けたら、
きっと、私を護ってくれるって、そんな打算があったのも事実。私、ずるいよね……」
「よしてくれ……君は私を信頼してくれていた……私がそれを裏切った……それだけだ……」
彼女は強かであり、弱くもあった。
己の夢を叶える為の打算を立てる賢しさを持っていながら、冷徹になり切れない優しさがあった。
だから分かる。彼女が今紡いだ、己の打算を悔いる言葉――それさえも打算なのだ。
まるきり全てではなくとも、自分の罪悪感を和らげる為の計算がそこにはあるのだと。
72
:
◇u0B9N1GAnE
:2013/09/02(月) 22:37:35
>「だけど、これだけは嘘じゃない……私、アナタにも自由になって欲しかった。
アナタが、そう望むなら。すべてを捨てて。
あのちっぽけで因循な国からも……固陋な王――私の父からも……辛そうな仕事からも。」
>「なのに………私のせいで、アナタの一生を縛ってしまったんだね。足枷になっているのは私……」
ツァイは無言で、ただ首を横に振る。
彼女を足枷にしたのも、自分自身だ。
彼女を死なせてしまったという重すぎる罪を、彼は償いの枷で打ち消したかった。
>「ちゃんと聞いてたよ……私に、あの山をくれるって約束してくれたよね。
あの日、一緒に見た国境の山を……私、とてもうれしかった……!
……でも、本当は……それよりも……もっと、アナタにして欲しい事があったの。」
>「アナタが生きているうちに伝えたかった―――自由になって……!私からも、後悔からも……!」
その可能性には彼女だって気づいている筈だ。
それでも彼女は、それを嬉しかったと言ってくれた。
自由になれと言ってくれる。
>「言いたいことを言ったら、何だか軽くなっちゃった……
私、もうすぐ、"あっち側"に行くんだわ……そんな気がする。
でも、忘れないで……"私の一部"は―――これからも、ずっと、傍にいるよ。
アナタが生きているうちは、ずっと……!」
それがツァイには、途方もなく嬉しかった。
王女の零した涙が彼の顔を濡らす――そして彼もまた、泣いていた。
>「アナタは、三日後に答えをくれるって約束を守れなかったけど、私だって、アナタを利用していた卑怯者……
おあいこだよ。
私に詫びる必要なんてない。アナタの思い通りに生きて。
そうして、いつか本当に、"来るべきその日"が来たら、私、きっと迎えに来るから……!」
王女の姿が薄らいでいく。
彼女を引き止めたい、引き止めなければ――ツァイは咄嗟にそう思った。
やっと会えた彼女に、もう少しだけ、自分の傍にいて欲しい。
――自分の結界術なら霊体を閉じ込める事だって出来る。
これが気の迷いだとは、分かっている。
彼女がそんな形でこの世に留まる事を望む筈もない。
全て分かっている――
「――待ってくれ」
ツァイが掠れた声で彼女を呼び止めた。
そして結界を創り出し、あちら側へ旅立とうとしている霊魂を引き留める。
「すまないが……君の頼みは、聞けそうにない」
それは、やっと出会えた彼女を、もう二度と手放したくないが故。
――ではなかった。
「初めてなんだ……君の事を、こんなにも穏やかに想う事が出来たのは……。
王女でもなく……私が死なせてしまった、償うべき人でもなく……
ただ君を想う事が……やっと、出来たんだ……」
行って欲しくない。傍にいて欲しい。
彼女は優しい。望まなくとも、自分が願えば、きっとそれに応えようとしてくれる。
それでも――駄目だ。彼女はずっと自由を望んでいた。
その彼女を、自分が縛り付ける訳にはいかない。
73
:
◇u0B9N1GAnE
:2013/09/02(月) 22:38:01
「答えは今、ここで返すよ……私はこれからも君の事を想いながら、君の為に、生きていく。
もう償いではなく……そうして生きていたい私の為にね」
――人が為すあらゆる行いは、突き詰めれば全て自分の為だ。
人助けだって自分の欲求を満たす為である事には違いないし、
誰かに屈服する事ですら、逆らう事による不利益よりも屈服を選んだだけに過ぎない。
償いだってそうだ。そこには絶対に自分の望みが付き纏う。
償いたい。償う事で楽になりたい。彼女の為に生きたいと言う願望。
彼女の為に生きる事すら、彼女の望みを奪った自分を満たす事に繋がってしまう。
ツァイをずっと苦しめてきた、その進退両難が、今やっと消え去った。
――結界が消える。今度こそ、彼女は居なくなってしまう。
それでも、もう迷いはなかった。
心穏やかに、ツァイは彼女を見送る事が出来た。
「あの山は……絶対に手に入れてみせる。君が見たかった世界も、見て回る。
いつかまた君に会う時が来たら……それを話すよ。楽しみに……していてくれ」
――ツァイは生きる事を望んだ。
その精神の動きを契機に、体内に侵入した植物は彼に深く寄生するだろう。
もうまともな人間の体ではいられない――だがツァイがその事に狼狽える様子はなかった。
彼にとって、自分の体が人間のそれであるかどうかは、そう重要な事ではないのだろう。
やや複雑な気分になる事はあっても、大切なのは彼女の事を想い、生きていく事。
それさえ出来るのなら、つまり今の所はまだ――彼が己の体のあり方に嘆く事はなかった。
「君達には……本当に迷惑を掛けた。償いは必ずする。
この命ばかりは、渡す訳にはいかなくなったがね……」
「だが、少しだけ時間をくれないか。……今からでも、彼を助けに行きたいんだ。
……もし良ければ、さっきの符を、もう一枚だけ貰えないだろうか」
君達はその頼みを断る事が出来る。
自分達の命を奪おうとした彼に報いを与えようとする事も。
だが彼は植物の寄生によって体力を、完全にではないにしても回復している。
その上、最早君達を殺す必要も、この場に留まる理由もないのだから――
報復がしたければ北京の市街を駆け回る羽目になる。
それはあまり賢い選択ではないだろう。
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