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【大正冒険奇譚TRPGその6】

72◇u0B9N1GAnE:2013/09/02(月) 22:37:35
>「だけど、これだけは嘘じゃない……私、アナタにも自由になって欲しかった。
  アナタが、そう望むなら。すべてを捨てて。
  あのちっぽけで因循な国からも……固陋な王――私の父からも……辛そうな仕事からも。」
>「なのに………私のせいで、アナタの一生を縛ってしまったんだね。足枷になっているのは私……」

ツァイは無言で、ただ首を横に振る。
彼女を足枷にしたのも、自分自身だ。
彼女を死なせてしまったという重すぎる罪を、彼は償いの枷で打ち消したかった。

>「ちゃんと聞いてたよ……私に、あの山をくれるって約束してくれたよね。
  あの日、一緒に見た国境の山を……私、とてもうれしかった……!
  ……でも、本当は……それよりも……もっと、アナタにして欲しい事があったの。」
>「アナタが生きているうちに伝えたかった―――自由になって……!私からも、後悔からも……!」

その可能性には彼女だって気づいている筈だ。
それでも彼女は、それを嬉しかったと言ってくれた。
自由になれと言ってくれる。

>「言いたいことを言ったら、何だか軽くなっちゃった……
  私、もうすぐ、"あっち側"に行くんだわ……そんな気がする。
  でも、忘れないで……"私の一部"は―――これからも、ずっと、傍にいるよ。
  アナタが生きているうちは、ずっと……!」

それがツァイには、途方もなく嬉しかった。
王女の零した涙が彼の顔を濡らす――そして彼もまた、泣いていた。

>「アナタは、三日後に答えをくれるって約束を守れなかったけど、私だって、アナタを利用していた卑怯者……
  おあいこだよ。
  私に詫びる必要なんてない。アナタの思い通りに生きて。
  そうして、いつか本当に、"来るべきその日"が来たら、私、きっと迎えに来るから……!」

王女の姿が薄らいでいく。
彼女を引き止めたい、引き止めなければ――ツァイは咄嗟にそう思った。
やっと会えた彼女に、もう少しだけ、自分の傍にいて欲しい。
――自分の結界術なら霊体を閉じ込める事だって出来る。

これが気の迷いだとは、分かっている。
彼女がそんな形でこの世に留まる事を望む筈もない。
全て分かっている――

「――待ってくれ」

ツァイが掠れた声で彼女を呼び止めた。
そして結界を創り出し、あちら側へ旅立とうとしている霊魂を引き留める。

「すまないが……君の頼みは、聞けそうにない」

それは、やっと出会えた彼女を、もう二度と手放したくないが故。
――ではなかった。

「初めてなんだ……君の事を、こんなにも穏やかに想う事が出来たのは……。
 王女でもなく……私が死なせてしまった、償うべき人でもなく……
 ただ君を想う事が……やっと、出来たんだ……」

行って欲しくない。傍にいて欲しい。
彼女は優しい。望まなくとも、自分が願えば、きっとそれに応えようとしてくれる。
それでも――駄目だ。彼女はずっと自由を望んでいた。
その彼女を、自分が縛り付ける訳にはいかない。


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