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【大正冒険奇譚TRPGその6】
64
:
武者小路 頼光 ◇Z/Qr/03/Jw
:2013/09/02(月) 22:28:48
>>57
それは壮絶という言葉が当てはまる光景であった。
消耗しつくし、腕を失い全身を焼かれ、強力な打撃を受け、それでも殺すという執念の塊。
意識を失ってなお放たれるがごとき殺気。
冬宇子の結界に半身のめり込ましたまま気絶したツァイの形相が全てを物語っている。
戦いが終わりこと切れる寸前のツァイに幾本もの蔦が伸び絡め取っていく。
「ぶじゅらぁあああああ!!」
蔦の元をたどれはそこには頼光がいた。
倒れたままの姿勢で完全に気となった右手を伸ばし蔦となった指を伸ばしているのだ。
それはもはや頼光と言っていいのだろうか?
七孔から血を吹き白目を剥く形相は人のものを越えている。
口からは血の泡を飛ばしながら意味不明の言葉とも吼え声ともつかぬ声を出している。
頼光が何をしているかはすぐにわかるだろう。
それは【捕食】である。
蔦はツァイの傷口に取りつき血を、命を、吸い取っているのだ。
切り飛ばされた蕾の為に、ダメージを負った苗床の為に、己が生きるために。
剥きだしの本能が、尽きかけたツァイの命を貪っているのだ。
が、それを阻止したのはツァイの命を吸い取り意識を取り戻した【人間頼光】であった。
立ち上がり必死に己の指である蔦を引きちぎり投げ捨てる。
「俺は……!ヒトクイには、ならねえ……」
食い尽くすはずだった命を拒否し、足取りもままならぬままそれでもはっきりと言い切った。
頼光はこの戦いを通じ知ってしまったのだ。
己がもはや人ではなくなった事を。そしてそれが取り返しのつかない事を。
その上で、頼光は生きるための本能を拒絶した。
自分が人足らしめるために不可欠であると感じていたから。
見下ろす先のツァイは頼光の意図とは別にその命を救われていた。
ツァイの命を貪るために取りついた蔦は本体から分離され、生命の危機にさらされていた。
植物の生命力の恐るべきはここにあり。
分離された蔦は新たなる苗床にツァイを選び、寄生したのだ。
貪るために取りついていた場所はそのまま傷口を塞ぐ役割を果たし、宿主を助けるために生命力を分け与える事すらも。
これによりツァイは生命の危機を脱するであろうが、寄生融合されて人と言えるのであろうか?
しかし頼光にとってツァイの行き先などどうでもいい事だった。
破った敵よりも自分自身の行き先の方が不安定であり、重要なのだから。
「くそおぉ、俺河童みたいになってるじゃねえか。どうすんだよこれええ!!」
己の頭頂部が綺麗に刈り取られていることに気づき、愕然としていた。
思い出してほしい、頼光が今回大陸に来た訳を。
鳥居の元でサーカスの猛獣として火の輪くぐりをして髪の毛が燃えたことがそもそもの発端だったのだ。
自慢の長髪が燃え、サーカスに見切りをつけて大陸行を決めたのだ。
そんな頼光が河童状態にされたのであれば、相応の衝撃があると言えるだろう。
意識を取り戻したツァイを冬宇子とブルーに任せ、頼光は休憩室へと消えていってしまった。
ツァイへの報復よりも、尋問よりも重要な事の為に。
尋問が終わったころに頼光は休憩室から戻ってきた。
何処から引きずり出したか、大きな布を頭から被って。
宿直用の布団を切り裂きローブの様に被って河童頭を隠しているのだ。
「おう、終わったか?
もうこんな場所にゃあ用はねえ。
黒幕があのフーのやろうってわかったんだし、早く戻ってぶちのめすぞ。
この俺様に舐めた真似しやがって!!!」
河童になった頭と気になった右手を隠し、被った布から左手をだし握り拳を見せる。
大陸に来てから散々振り回されてきたが、ようやくはっきりとした【敵】が判ったのだ。
怒りと恨みと鬱憤をぶつけるべく頼光は一刻も早く寺院に戻るように二人に促した。
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