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【大正冒険奇譚TRPGその6】
33
:
武者小路 頼光 ◇Z/Qr/03/Jw
:2013/09/02(月) 22:07:50
感じたのは風の来た方角だけでなく、風がどこに向かおうかとしているかもだ。
近い分より細かく頼光には感じられる。
漠然と吹いていた風が一点に集まり、巨大な奔流と化して急降下することが!
それを制御しているのが冬宇子の腰帯にひらひらと揺れる符だという事も。
頼光は全てを悟った。
連絡用の現身の符などと言いながら亭の良い監視の符だったのだ。
一方的に連絡を切り、自分たちを監視し、最後には攻撃中継用の符となるのだと。
「あんのクソヤロォ!王に引き合わせるっていったくせによぉ!助けてやったのにこれかあ!!」
ブルーへの恨みがフーへの恨みにすり替わった瞬間であった。
愚鈍な頼光は同時に二つの事を考えるというような高度な思考機能を持ち合わせていない。
ところてんの様にブルーへの恨みが押し出されてしまったのだ。
歯ぎしりをしながら吼えるが今はそれどころではない。
迫る風の奔流を防ぐにはツァイの結界が有用なのだろう。
だがそのツァイは冬宇子の腕を掴んでいる。
束ねに束ねられた風の本流は恐るべき威力であり、にがさまいと掴んでいるツァイもただではすむはずはない。
ギリギリのところで離れる……頼光ならばそうするし、皆がそうであった。
冒険者になる前の頼光の世界では。
だがそうではない、そうはしない人間もいることを頼光は知ったのだ。
ブルーは先ほどの蹴りの反動で倒れており、間に合いそうもない。
何より、頼光は風の動きを一番最初に察知し初動は既に切っている。
駆けながら頼光は感じていた。
ツァイはここで死ぬ気なのだと。
冬宇子を道連れにしてこのまま風の本流に飲み込まれるのだと。
今の頼光には不可視の風が見えており、このままでは間に合わないことも理解していた。
駆け付けるだけではだめなのだ。
決死の覚悟で腕をつかむツァイを振りほどき、奔流から逃れるなどできるわけはない。
>あのツァイが怖いのか?何が怖いんだ?その力か?
>てめぇの腹の中や魂に巣くうその力が怖いのか!?」
>「クソの役にも立たないならその辺に隠れてろ!この役立たず!」
刹那、頼光の脳裏にブルーの罵詈雑言がよみがえる。
湧きあがる殺意とところてん方式に押し出されて忘れ去られていく畏れ。
「この俺様をぉ!!!武勲を立てて華族になって栄耀栄華を極める予定の頼光様を舐めるなあああ!!!」
口から自然と洩れる咆哮と共に頼光の身体が加速していく。
風の本流が叩きつけられると同時に冬宇子の身体がブルーに叩きつけられた。
ブルーはその動体視力で一部始終を捉えていただろうか?
急加速した頼光は冬宇子を掴んでいる手に狙いを定める。
老いたツァイの腕に振り下ろされる頼光の手刀は人のものではなく鋭利な爪が生えた猛獣のそれであった。
鋭い爪は難なくツァイ右手を切り落とし、そのまま冬宇子をブルーの方向へと突き飛ばしたのだ。
驚くべきは精密な力加減であった。
ツァイの腕を大根でも斬るかのように切り落とした右手と冬宇子を最小限の力で突き飛ばした左手。
それなりの衝撃はあったであろうが、風の奔流に比べれば、という奴だ。
「その腰帯の符だ!フーがよこした奴だ!あれで風を操ってんだ!破っちまえ!」
頼光の叫びが届いた直後、風の奔流は激突し頼光は吹き飛ばされた。
ぎりぎりのタイミングだったが故に風の奔流も冬宇子を追尾することはかなわなかったのだろう。
更にいえば、不可視の風を感覚で【観る】ことのできていたからこそ、身を翻し直撃を免れたのだった。
よろよろと起き上がった頼光の頭の牡丹の蕾の先がほのかに色づいていた。
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