[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【大正冒険奇譚TRPGその6】
26
:
◇u0B9N1GAnE
:2013/09/02(月) 22:04:11
>>22
容赦なく手の甲に突き立てられる鉄杭に、ツァイは苦悶の声を漏らす。
>「ツァイ・ジン―――!あんたって、本当に魅力的よ。
あんたが、昔、気の強い恋人に見捨てられたのはね、きっと、あんたが煮え切らなかったせいさ。
今だってそう。殺す気でいながら、私らが死ぬとは思ってない。あんたは迷ってる。
だから真実を話せないんだ。」
「……見捨てられた……か……。もしそうだったら……どれだけ……良かった事だろうな……」
脳震盪と激痛によって白み、混濁する意識の中で、彼は小さく呟いた。
そして目を背けていたかった過去が、君の言葉を切欠に彼の心に蘇る。
――ツァイ・ジンはかつて、とある国で法務官を務めていた。
裁く対象は専ら軍法違反者と――叛逆罪や不敬罪を適用された国民だ。
彼が仕えた王はお世辞にも有能とは言えぬ男で、そのくせ矜持だけは一人前だった。
故にツァイの一族は――殆どの者は表立っては口に出来なかったが、国中の嫌われ者だった。
ツァイ自身も、その事には気付いていた。
暗愚な王に従い、国民を裁き続けるのは、決して正しい事ではない、とも。
なにより自分は人を裁くに相応しい人間ではない、と。
軍民、皆に嫌われながら生きていくのは、辛かった。
だが――だからと言って、どうすればいいのかまでは、分からなかった。
ツァイ一族はずっとそうやって生きてきたのだ。
他の生き方など、分かる筈がなかった。
『――アナタって、いっつも辛そうな顔をしてるわよね』
そしてそれが、彼が初めて彼女――王女から受けた言葉だった。
『……辛そう、ですか?』
『うん、仕事の後は特にね』
『……いえ、そんな事は』
『あーあー、別にお父さんにチクろうとか、そういう訳じゃないから。
ただ……『自分は本当はこう思ってるんだ』って事ってさ。
誰かに知ってもらえると、少し気が楽にならない?』
彼女はツァイの心中を見透かしていた。
その事は確かに彼女の言う通り、彼の心に僅かな穏やかさを齎してくれた。
それから彼は何度も彼女と会って、言葉を交わした。
そうしている間だけは、自分という存在が深く認められたようで、心地良かった。
――身分の違いと言うものをまるで考えてくれないせいで、
いつ王の目に留まって機嫌を損ねないかと、戦々恐々とはさせられたが。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板