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TRPS雑談所ブンヒナ出張版

845尾張証明 ◆Ui8SfUmIUc:2010/02/23(火) 22:45:39
「つまりあなたを雇いたい、と言ってるんです」

見た目だけ派手な照明の下、俺が寝ていた椅子に座った女は言った。
俺は左手に持った手錠の鍵の金属的な冷たさを握りしめた。

『文明とやらを 集めるために?』

「文明はついでです。本命はイデア」

部屋にあったノートを使って会話する。

『雇うと言うのなら 報酬はなんだ』

「情報ですよ。知りたいこと、知らなければいけないこと、沢山あるでしょう?」

少し考えてから、ノートに走り書きをする。

『前金は?』

「あなたを呼び寄せた人物の名前と、私の文明の性能」

『その情報が 正しいという保証は?』

くすり、と女は笑った。馬鹿にしたような、軽蔑したような、しかし間違いなく卑下と自己憐憫を含んだ笑いだ
った。

「保証?人権と同じくらい現実的に意味のない言葉ですね」

女は一瞬目を瞑った後、それに、と付け加えた。

「保証って物は、すでに基盤を持ってる人が使う言葉ですよ。あなたには、今はそれすらない。と、言うより私
が今からそれに成ろうと言ってあげているんです」

いちいち試さないでください。と女は続けた。

「喫茶店で事件が起きたときに、あなたと私は同じ判断をした。文明の事を抜きにすれば、あなたは私より格上
です」

『だから仲間に引き入れようと?』

「三浦に変な使われ方をするよりはマシだと判断しただけです」

鎖が擦れる音、女はハッキリこちらに向き直った。

「三浦啓介、あなたをここに呼び寄せた人物です」

「こちら側の誠意は見せました。あなたの立場の低さを鑑みれば破格の誠意のはず」

女は……“兔”、とやらは顎で俺の左手を指した。

「手錠を外せば、契約成立です」

【尾張証明:“兔”に雇われる】




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