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【長編SS】鬼子SSスレ@創作こそ至上【短編SS】

1ヤイカガシ:2020/03/17(火) 04:07:20 ID:soZACVY.0
1 : 名無しさん@避難中 sage 2019/12/30(月) 18:53:51
                 ,,,,,A__A、
               r彡リリリリリリリミハ、
              /:::::::::::::ハ::::::::::::::::,ミ!`了
           [ンリリリリHノ ミテ〒テテヲ ノ    ここは創作発表板です!
      _rrrr、_ノlリリリ=   =リハ川} マ    オリジナル・二次創作問わず
      「::/ ゙̄"ヽ::::i!川人''┌┐''ノリミ川!!J    様々なジャンルの作品を好きな方法で自由に創作し、
     |:/ 注  r-、!リl州>ニ-イ彡ハ川|     発表して評価・感想を貰う創作者のための場所です!
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関連スレ【飄々と】萌えキャラ『日本鬼子』製作33 【萌え】
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あとはよしなに

31黒幕 ◆1WsTPNJ.62:2020/06/16(火) 23:17:38 ID:J6aPt7A.0
『鬼子外伝 -ショウキ- 1章 将魔と魔希 』

「本山から招集がかかった。しばらく留守にする。」

張り詰めた空気の堂内に、老人の声が響いた。

小さいながらも歴史を感じさせる寺院の本堂。その中心には大きな篝火……いや、護摩壇の炎が立ち上がっていた。
寺院の山門から本堂へ至る石畳の道も、幾多の篝火が焚き立てられ煌々と輝いている。
祭事でもない今日この日に、この様に篝火が焚かれるというのはとても稀なことであった。

ここは、とある街の片隅。街の中心を見守るかのように鎮座する小さい山の中腹に建立されている寺院である。
特に山深い山中というわけではないが、このあたりは開発があまり進んでいない山らしく幹の太さが何メートルもある様な大木が多くそびえていた。

そしてこの山は参道以外は切り立った崖や浅い谷の様なものが点在していた。
好事家たちにいわせると、これは敵の侵入を防ぐために人の手で作られた堀切や土塁であり、かつてこの寺院は山城跡に建てられたのではないか、と推測する者もいる。
しかし、街の歴史上この場所に城や砦が存在したという記録は一切ない。

さて寺院の本堂の中心、護摩の炎を背にした老人の前には二人の子供がかしこまって座っている。
年の頃は十か十一歳くらいだろうか。ひとりは短髪の少年、もう一人は長い髪を後ろで束ねた少女だった。

老人は子供たちに向かって静かに語りだす。

「まさか、こんな余命幾許も無い老人までも根こそぎ動員とはな……お山の天狗供も相当慌てていると見える」

老人は僅かに天を仰ぐ様なそぶりを見せたが、直ぐにいやいやとかぶりを振る。

「都市封鎖とかいう話もあるが……戒厳令とまではいかんだろう。ただ、今年は三月に雪が降ったでな」

細い目を大きく見開く老人。

「この国は大きな変革がある前には雪が降るという謂れがある。まあ、迷信だろうがな。
 そう、あれは80……いや、もっと前か。ちょうどお前たちと同じくらいの年の頃か。
 二月の東京に雪が降った夜に、初めて鬼を見た。人間の弱い心に巣食う、悪鬼共だ……」

二人の子供は老人の話を真剣に聞いている。

老人の名前は「茅原弐式(ちはらにしき)」、二人の子供は「茅原将魔(しょうま)」と「茅乃芽魔希(ちのめまき)」といった。

「茅原家」と分家の「茅乃芽家」は、この寺院を管理している一族である。
しかしそれは表向きの話、彼らには別の顔があった。
「邪気」を祓い、悪鬼、妖怪や魑魅魍魎といった妖(バケモノ)の類から街を護る退魔師の一族としての顔である。

魔を力で祓う「茅原家」と、それを守護する分家の「茅乃芽家」は200年の長きに渡り、この街を護ってきた。

ここ半世紀、妖(バケモノ)の数は随分と数を減らしているが、この街には時折妖(バケモノ)が姿を現していた。
将魔と魔希はそれぞれの家の跡取りとして、幼少の頃より学校へ通う傍ら寺院の山中で妖怪退治の修業も行っている。

実戦経験こそまだないが、二人とも体内の霊気を高める修業を行い、常人よりも高い霊力を獲得している。
また、宝具による補助が得られれば並の妖怪程度を滅することができる程の力量も身に付けていた。

将魔は霊力による肉体の強化、魔希は呪符を操作して相手を攻撃する術に長けていた。


老人、茅原弐式は言葉を続ける。

「ワシもこれが最後のお役目となるだろう。ただ、これ程の騒ぎ故、いつ帰れるかはわからぬ。そこで……」

二人に対し、三方(さんぼう)という神前に供える儀式用の台を差し出す。
台の上には清められた白い紙、そして手のひら位のサイズの丸い輪の様な何かが二つ載っていた。

32黒幕 ◆1WsTPNJ.62:2020/06/16(火) 23:19:40 ID:J6aPt7A.0

「二人には『茅輪護(ちのわまもり)』と……」

そういうと、飾り物の様な護符の様な物を二人に差し出した。

この輪の様な何かは、直径10cmほどの茅(かや)を編んで輪にした様な飾り物であった。
輪の左右には紙製の、人の形をした形代(かたしろ)が二枚吊り下げてある。
これは神霊が依り憑き易い様に形を整えたものだという。
彼らの家では、これを腰から下げれば災いから逃れられると信じられていた。

茅原老人は更に二つの三方を差し出す。

「将魔には『七星剣』、魔希には『祈祷符』授ける」

そこには30cmくらいの木製の剣と、黒い衣の武将の様な者、鍾馗が描かれている御札があった。

将魔が首をかしげながら『茅輪護』を手にする。

「ひいじいちゃん、この『茅輪護』ってウチの寺務所で売ってるお守りと同じ物?」
「安心せい、これはワシの特別製じゃ」

そういうと老人はニヤリと笑い、懐から牡丹餅のような黒いモノを出した。
一見すると黒い塊の様なものだが、よく見ると生き物のようにモソモソと動いていた。

それは『疫鬼(えきき)』と呼ばれる下級の鬼である。

世の中には時折、瘴気と呼ばれる悪い気が発生する。
通常であれば澱んだ空気のような存在だが、それらの気が濃くなると塊となり、「疫鬼」と呼ばれる生き物のような物になることがある。

「瘴気」の状態であれば、人間の気分や体調を悪くさせたりするだけだが、「疫鬼」は人間を病気にさせ、人に害をなす鬼なのだ。
「疫鬼」が大量に増えると疫病が流行する。疫病の流行らないように「疫鬼」を祓うことが退魔師としての「茅原家」の使命でもあった。

「ひいじいちゃん!それ、鬼じゃ!」

茅原老人は将魔に向けて「疫鬼」を放り投げる。
すると、「疫鬼」は将魔にぶつかることなく、バチンという音と共に見えない力で弾き飛ばされた。

さらに茅原老人は『七星剣』を手に取ると「疫鬼」に突き刺す。
いや、正確には「疫鬼」は『七星剣』の切っ先に触れた途端、霧のように霧散し消滅した。

「この『茅輪護』はワシの特別製でな。ワシの霊気を細く、長くのばして作った霊毛が編み込んである。
 物質化できる程まで凝縮させた霊力の塊だ。これを腰から下げておれば、下級の鬼なんぞは1mも近づくことも難しいじゃろう。
 その『七星剣』は先祖伝来の宝具、切っ先にでも触れたら疫鬼どころか妖怪でも滅するわい。
 そしてその『祈祷符』もただの呪符ではない。これには鍾馗様の絵と術式が書き込まれておる。使い方は……」

おぉっと、驚きの声を上げる将魔と魔希。茅原老人はこれらの宝具を使い、疫鬼退治をする様にと伝えた。
自分たちが街を留守にする間、疫鬼を祓う者がいなくなれば街に疫鬼と疫病があふれてしまうからだ。
幼いひ孫たちだけに疫鬼退治を任せることは心苦しいが、そうも言ってはいられない。

今年は70年ぶりに新しい疫病が流行し、世界的にも猛威を振るっていた。
この街でも日々疫鬼が生まれている状況であり、誰かが疫鬼退治を続ける必要がある。

「茅乃芽の者も、ワシと共に本山に行く。魔希も聞いていると思うが、茅原、茅乃芽の家、共に大人が全員いなくなる。
 しばらく本家の屋敷に住みなさい。身の回りの世話は照道さんにお願いしてある。日中の飯の世話は心配しなくていい」
「ちょっと待って!おじい様!?将魔とアタシが!??ひとつ屋根の下で!!!?」

今まで沈黙を貫いていた茅乃芽魔希が驚愕の叫びを上げた。

「親戚じゃし、別に問題は……」
「男女七歳不同席(男女七歳にして席を同じゅうせず)!」
「いや、お前らの小学校もいま共学じゃろ?5年生までなにやっとった!」
「不潔!おじい様!かわいいひ孫に何かあったらどうしますの!?」

そうした喧々囂々とした議論がひとしきり終わり、魔希も同居を諦めて静かになった後で、茅原老人は思い出したかの様につぶやいた。

「ひとつだけ忠告がある」

茅原老人の真剣な眼差しに、将魔と魔希も茅原老人の言葉を待った。

33黒幕 ◆1WsTPNJ.62:2020/06/16(火) 23:20:37 ID:J6aPt7A.0

「……鬼子の話だ」
「おにこ?」
「鬼の子のことですの?」

将魔と魔希の疑問に、茅原老人が答える。

「もしもお前たちが鬼子に遭遇してしまった場合の話だ。赤い鬼には気をつけろ。戦おうと思うな、すぐ逃げるんだ。
 昭和、平成、令和と妖怪たちは年々数を減らしているが、あの鬼はまだ今でも生き残っているかも知れん」
「……赤い…鬼……?」
「ああ、姿は幼い女の鬼だがな。かなり大昔から生きている」
「その鬼子というのはそんなに強い鬼なのですの?」

魔希の言葉に、茅原老人は即答した。

「強い。ワシよりも強いかも知れんな。アイツは日ノ本いち(ひのもといち)の大妖(たいよう)だ」

ゴクリ、と将魔がツバを飲み込む。

(日ノ本いちの鬼……)

曽祖父より強い人間など見たことがない将魔にとって、曽祖父より強いという赤い鬼の話はとても信じられないものであった。

「もう80年も前……あの時も今の様に市井に疫鬼が増え、疫病が流行した」

茅原老人は滔々と語りだす。

「鉄の棒……いやアレはどちらかというと薙刀だな。
 赤備え、赤く染め上げた甲冑に身を固めた鬼の一団が雪の帝都に現れ……」

そこまで語ったところで、茅原老人は唐突に話を切り上げてしまった。

「将魔、魔希よ、忘れるな。本当に恐ろしいものは、人の恐れる心だ。心の鬼に惑わされてはいかん。疫鬼退治で危ないことなど無いと思うが、危ないと感じたらすぐに逃げるのだぞ」

「「ひいじいちゃん!(おじい様!)」」

「任せて!ボクらもお役目、やり通してみせるよ!」
「ワタシたちの修行の成果、みせて差し上げますわ!」

やれやれ、そう茅原老人はひとりごちると、やや不安そうな顔で将魔と魔希を眺めた。


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