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ラジオスレ 23

626青森さん ◆wHsYL8cZCc:2019/05/01(水) 21:33:55 ID:c2xX.uz.0
 彼の所作を見つめていた。
 前足で不器用にそれを削り取って、前足より器用な後ろ足でかき集めて。
 本当なら自分より大きな球になるそれは、まだ小汚いカスの集まりに過ぎなかった。

 顔を近づけてみるが、不思議と異臭はしない。たい肥のような湿った臭いはするが、正体を知らなければ気になるほどでもない。というより、実際にこれはたい肥をそこに置いている。
 臭いというのは様々な意味を持ち、悪臭がするというのなら、それは好ましくないもの、いい匂いならその逆だ。つまりこのたい肥はそんなに悪いものではない。
 余談だが、人間が一番に悪臭と感じるものは人間の死体が腐った臭いらしい。つまり、死ぬような危険を知らせているのだ。

 彼の作るカスの集まりは徐々に整えられ、球に近づいていく。集めているのが隣の農業学科からくすねてきた花子(牛の名前)の糞というのを除けば、もそもそと愛らしい動きとも見て取れる。
 これがあの勇ましいカブトムシの仲間だ、と言われて信じる人がどれだけいるだろうか?
 名前だけ聞けば、昔の映画に出てきたピラニアのように獰猛な肉食昆虫を思い浮かべるか、カードゲームが好きな奴なら太陽神か。
 ほんとは彼らは太陽じゃなくて天の川を目印に活動しているから、どちらかと言えば彦星と織姫様か。糞まみれだけど。

 糞球を整えた彼は、おなじみの逆立ちの姿でそれを押していく。
 安全なところを探しているのだろう。
 ゲージの中なのでどこも安全なのだけど。
 フンコロガシは整えた糞球を丁寧に世話するという。彼はその種類だ。
 ゲージの上から彼をのぞき込んで、私はほのかに香る花子の落とし物の臭いに鼻を引くつかせた。

 部屋の扉が開く。農業学科の学生だ。

「おい、テメェ花子に何をした……?」


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