したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

みんなで世界を作るスレin避難所2つめ

791白狐と青年「話し場の奇襲」 ◆mGG62PYCNk:2012/02/05(日) 23:58:13 ID:gNmsVcHo0


            ●

                
 行政区南側にある高層ビル。以前クズハを取り戻す為に行政区に侵入した時に使った部屋の中、
匠は窓を開け、室内に風を通した。そうしながら室内を見回して、不思議そうに呟く。
「この前クズハを連れて明日名さんと一緒に飛び下りた時はけっこう荒らした状態で部屋を放置してたんだが、誰が部屋をここまできれいに整えたんだ?」
 室内で作業をしていた明日名がクズハとキッコに途中の作業を任せて、別の作業に取り掛かりながら言う。
「平賀博士の手助けをしてくれるような人はいろんな所にいると、そういう事だね」
 匠は微妙に頷きづらいなと思いながら、実は頷きづらいと思わせる所こそがあの人の凄い所なのだろうと思う事にする。そんな平賀も今頃は、
「庁舎内での会議中か」
「そうだな」
 彰彦が応じて、部屋の位置取り的に見る事のできない行政区の北側にある庁舎のある方へと視線をやった。
「今日の会議で、異形に対する対応が変わるかもしれないんですよね」
 クズハが呟く。未だに自分に今の状況の責任の一端があると思っているのか、その表情は深刻なものだ。気にし過ぎもあまり良い傾向ではないと思うが、
 ……クズハの性分か。
 無理に気にするなと言うのも酷な話だ。だから匠はクズハの頭を軽く叩く事であまり深刻になるなという合図にする。それを見たキッコが笑みで言う。
「それもあるが、もう一つ、今回の会議で明らかにされるであろうことがあるの」
 匠は頷きを作った。
 今回の会議ではこれまで得た情報をもって、通光への糾弾が行われるはずだ。
 ……爺さんの予想では、おそらく通光を追いつめる事が出来るが、
一方で向こうもそういう流れになるだろう事は今回の会議が設定された時点で分かってるだろうという話だったな。
 故に匠達が行政区まで来て、平賀の用意した手駒として控えている。
こうして高層ビルに平賀が借りた部屋に居るのは、
他の誰にも邪魔される事のない位置で何かが起きてもすぐに対応できるためであり、
また、この部屋からならば各所への連絡も平賀の用意した魔装のおかげでとりやすいためだ。
それらの用意は敵が大々的に動く事があるかもしれないということを示唆するものであり、
 ……穏やかじゃないな。
 そう思うが、これが終われば様々な懸念に決着がつく事にもなる。ならば多少の荒事も望むところかと匠は物思いに沈み、
「匠さん」
 かけられた声に顔を上げる。
「どうした? クズハ」
 クズハははい、と小さく頷き窓の外に目を向け、普段の生活が営まれている街を見た。
「何も起きずに、穏便に全部が解決すればいいですね」
 その言葉に匠は一瞬動きを止めた。
何も起きない、というのは甘い考えだと思うが、自分自身の考えも荒っぽくなっていた事に思い至る。
「匠は我等向けの派手な考え方でもしていたかの?」
 キッコの茶々にそうかもしれない、と苦笑して、
「そうだな、何も起きなければいい」
 深く頷いて、クズハに笑みを向けた。そうしながら内心で会議の場に思いを馳せる。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板