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ドラゴンレポート「西方白龍録」
21
:
パイロン
:2022/04/12(火) 00:21:02 ID:r.kW3dVw0
十:「蝸旋」
「あ!アイツ舌切ってしぬってさ!」
「バカなんじゃねえの?舌切ったってスゲー痛いだけでしねないぜ?」
「って言うかアイツ、ここに花も恥らう乙女が二人居るのにも関わらず、さっきサラッと下ネタ言ってなかった?」
「言ってた言ってた!キャー!エッチ!スケベ!サイテー!女の敵!」
「お前ら!!いつまでも寝そべってないで、喋る元気があるんなら早よワシに加勢せんかボケが!!」
「へいへーい…」
「ちぇっ…」
先程、ムカデに向けて啖呵を切ったパイロンに向けて、先程の攻撃を同じく受けつつも外野となっていた兄妹からのヤジが飛ぶ。
そんな最中にムカデのオヤジが激昂、半強制的に兄妹四人を呼びつけた。
兄妹達は先程の攻撃によるダメージが未だに癒えていなかったため、今まで伸びてはいたが…オヤジに怒鳴られて無理矢理身体を起こしてこちらへとやって来た。
四人は分身だが、本体である百足妖怪と同様に飛行能力があるようで、すぐにパイロンの元に飛んでやってきた。
改めて、ムカデの兄妹とパイロンは対峙する事になる。
「…アンタ、龍だったんだな。
人間をこの鉱山跡に呼び寄せるため、ウメとムカゴが人間の依頼者のフリをしてギルドに依頼を出して助けを求めたわけなんだが…まさかアンタみたいなのが来るとはな。」
「そんな中、俺が来たって事か。…お前らが依頼を出してたんだな。人間を任務と称して自らここへと赴かせるために。」
「そういうこった。正義感振りかざしてやってくる人間が追い詰められて命乞いする様は見ていて笑いが止まらなかったぜ。
…まさか、アンタみたいなヤツが来るとは思いもしなかったけどな。」
「…ああ、そうだよ、龍だ。まあ、人との混血だから1割弱の人間の血が流れている。
だから完全な龍ではないけどな。でも限りなく完全な純血の龍と言っていい。
龍の証である紋章も身体に刻まれているから、始祖の龍からも、「私と同じかそれ以上の強大な力を持っている」、ってお墨付きを貰っているぜ。
俺が来たのはある意味、お前らの因果応報ゆえ、か?お前らのせいだ。」
「へえ、言うねえアンタ。気に入ったわ。名前、なんて言うの?冥土の土産に私達に教えなさいよ。」
「俺は……白龍(パイロン)だ。」
「へえ、パイロンって言うのか。という事は、同じ東の人間であっても俺たちのいた東の国とは違う、隣の東の大国出身ってやつか?」
「ああ、そうだよ。」
父親に加勢しにやってきたムカデの兄妹。
ユウタロウ、ウメ、ルイの話によると、やはりギルドへ出されていた依頼は罠だったようで、ウメとムカゴの二人が依頼人を装ってギルドに相談しに行き、冒険者を募ることで獲物である人間を自らこの鉱山跡に赴かせる目的があったようだ。
さらに続けて、ムカゴがニヤニヤしながら手にした短刀をちらつかせる。
「ねえ、パイロンさん。刃物をあんな舐め方したら舌を切るのは当然じゃん。
刃物の刃ってさ、こうやって舐めるんだよ?…私が実演してあげる。
まずはこうやって刃物の峰を下、刃を上にして、下から上に向かって刃を舐める。…これなら舌を切らないでしょ?」
「なるほどな、たしかにそうだ。覚えておくよ。」
「えー、別に覚えなくてもいいよー。だって、パイロンさんはここでしぬんだもん。」
「そうね、ここでしぬ。」
「オヤジが出るまでもないな。」
「今度は俺達、正々堂々と戦えるもんな。」
「あっはっはっは……」
覚えておくと答えたパイロンに兄妹揃ってそう捲し立てると、四人揃って短刀の刃を舐めて不敵な笑みを浮かべる兄妹。
その顔はムカデの正体を現した顔になっていた。不意打ちをしてきた先程と同様、こちらをころしにかかってくるという事なのだろう。
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