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虐厨いじめスレ

218恨みと報い 1/2首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/06/20(木) 03:18:08 ID:oKnK7rpI0
虐太には大事なものがいた
ペットのちびギコだ
しかしそれはある日突然いなくなった
殺されたのだ
彼が殺したちびギコの仲間に報復されて
以来彼は、「ちびギコ」に分類されるものすべてを憎み襲った
飼いだろうがレッサー種ではなかろうが構わず襲った
おかげで何度もギコや戦闘型のしぃ等に追い回された
それでも彼はやめなかった

それから、数年後
虐太には仲間ができた
うっかり「飼い」に手を出してしまい
しかも飼い主の目の前でやってしまったため
その場で複数回刺された上に川に蹴落とされたのだ
それでも急所は外れていたのか、彼は死ぬことはなかった
なんとか岸に這い上がったところで
その区画の虐待組織の一人に拾われたのだ

ある日
帽子を目深にかぶり、コートを着た男がパイプ椅子に座って彼を出迎えた
「よお、遅かったな」
広いホールは血まみれだった
あちこちに組織の構成員が倒れている
男はガムを吐き捨てると、虐太へゆっくりと歩いて近づいた
「ずっと探したぜ、娘の仇のてめーをな」
男は帽子を取った
「つー族・・・!?」
赤いAAで「ギコ猫」に分類される種族だ
特に高い攻撃性と戦闘力で知られている反面
喧嘩を売ったりしない限り向こうから手を出してくることはなく
むしろ親切にしてくれる見た目と裏腹な紳士的種族として知られていた
そう、喧嘩を売ったりしなければ・・・
男は一枚の写真を出した
黄色いリボンのちびしぃがそこに映っていた
「見覚えねぇとは言わせねぇ、てめぇが殺したんだからな!」
男は写真を懐へしまうと、ナイフを取り出した
「ま、まてよ・・・」
虐太はつー族の男の説得を試みる事にした
うめき声があちこちからしていた
まだ息のある者が少なくない数いる・・・
虐太はこの組織に並々ならぬ恩義を感じていた
だから、できる限り構成員を多く助ける事を決意した
「お前が手を出したこいつらは復讐と無関係だろ!?」
「・・・・・・・・」
男は止まった
脈ありと見た虐太は言葉をつづけた
「お前は無関係の、ただの殺しをしただけだクソアイゴ!だから・・・」
『おとーさん、お友達と遊んでくるね!』
「おまえには娘の仇討する資格なんざねぇ!」
『警察です、あなたのお子様が事件に巻き込まれまして・・・』
「申し訳ないと思うなら、倒れてる奴を助けろ!」
『残念ながら、現場で死亡が確認されました』
「無関係・・・無関係、か・・・」
ぼそりとつぶやいたその言葉に
「そ、そうだ! 息のある奴の手当てを手伝ってくれ!」
男をもう少しで説得完了できる、と虐太はおもっていたが
あいにくと彼の言葉など耳に入っていない
『おねーちゃんは、むかんけいだっていったのに、さされた』
『あのおじちゃんは、ちびぎこはいきているだけでつみなんだって』
『ぼくたち、なにもしていないのに』

219恨みと報い 2/2首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/06/20(木) 03:19:11 ID:oKnK7rpI0
いつの間にか虐太のすぐそばにまで男は来ていた
「へ?」
手伝ってくれるのか、何か聞きたいことがあるのか?
説得が成功したと思っていた虐太めがけ
振り上げられていた右手が降り下ろされた
右手は虐太の口に突っ込まれ中にあるものをしっかりと掴む
「あの子も・・・テメーが殺したオレの娘も・・・」
『あなたのお子さんは立派です、命の危険に晒されながら
友達をかばっていたそうで・・・』
『あの子がいなかったら、私の子も殺されていました・・・!』
「そう言ったんだろうがよ!!!畜生があああああああ!!!!!」
血を吐くような絶叫と共に右腕を口から一気に引き抜く
「ギョボゴボボボボボボゴオ!!!!」
虐太の口から赤い噴水が噴出した
つーの右手には平たい肉片が握られていた
「安心しろ、オレもつー族だ・・・てめーみたいなゴミクズみたいに
これ以上、理由もない殺しを重ねはしない
だがよ、ケジメは付けてもらうぜ」
つーは引き抜いた舌を床に捨てると、出口のドアへ向かって行った
助かった・・・そう思い虐太は周囲を見回した
「う・・・」
生きている仲間がいる!!
虐太はそれが、川で死にかけた自分を助けてくれた
今や無二の親友だと気づき、必死で這って近寄った
強烈な明るさも床の熱さは気にもならない
早く手当てをして、こいつだけでも・・・
と考えたところで、違和感を覚えて止まった
この暑さと明るさはなんだ?
虐太は周囲を見た
建物は完全に炎に包まれていた
天井も壁も赤い炎が嘗め尽くしている
これが現実なのか死ぬ前の幻想なのか
判断する前に
建物は崩れ落ちた


崩れ落ちる建物を、男は眺めていた
復讐は何も生まない
つー族である彼にはそれは分かっていた
だが、許せなかった
自分の娘の命を奪い
警察の手を逃れて生き続けたことも
自分の娘のような理不尽な理由で死んだ犠牲者を出し続けたことも
自分のような大切なものを突然奪われる遺族を作り続けたことも
だから殺した
十分な下調べを行い綿密に計画を立て
仇敵が一番望まないタイミングを見計らって仕掛けたのだ
警察へ出頭し罪を償えばそれ以上やる気は彼にはなかった
けれど仇はそうはしなかった
それどころか醜い命乞いをし
自分を正当化した
娘を殺した自分の暴言まで棚に上げて・・・
これは、奴が招いた結果なのだ
生存者が皆無なのを確認し、男はその場を後にした

(おわり)

220次の一手 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/06/28(金) 02:42:15 ID:HvH5xs0w0
「やめろ!」「口だけのてめーらなんてこわかねぇwww」
「洗いざらいぶちまけてやる!」「おーおー好き勝手いいなさるwww」
「もうやめてくれ、ここが潰れたら・・・」「いやだねwwwwww」

その状態が定着して、長い月日が流れた後の
ここはとある場所
新しく虐待ジャンルを始めるべく虐待派と虐厨たちがアジトの建設に取りかかっていた
「住民たちへの説明は行うぞ」
虐待派は虐厨たちにこれだけは譲らなかった
虐厨が起こした事件など知った事ではないが
自分たちの方針と住民に危害を加える意思がない事などを説明するのだ
基盤の確保をまず得る事を彼らは最優先とする方針のため虐厨たちも渋々ながら従った
タン!
一発の乾いた音が青空の下の会議を停止させた
頭から血を吹いて虐厨の一人が倒れる
音のした方を見ると、手に銃を構えた住人たちがいた
「お、おい・・・なにをs」
問答無用とばかりに、住民たちは次々と発砲を始めた
逃げ出した虐待派にも容赦なく背中に銃弾が見舞われた
そうして・・・3分ほどで虐待派アジトは全滅した
「クリア!」「よし、駆除は完了した・・・撤収するぞ」
【虐待ジャンルは駆逐すべし】
それが、この場所における暗黙のルールだった
長い月日が流れる間、幾度も繰り返される衰退と滅亡
その発端となる虐待ジャンルへの注意喚起も懇願も功を為さず
管理者ら上への訴えも無意味だった
呵々大笑する虐厨たちに
無責任に虐待を始めては過ちを繰り返す虐待派たち
いつしか煮え湯を飲まされ続けた人々の間には「不倶戴天」の認識が生まれた
比較的新しく生まれたこの場所にもまた、その認識が浸透していた
「どうせ言っても聞かない」「始められたら終わり」「被害を訴えても門前払い」
「だったらもう話はいい、出ていかなくてもいい、代わりに死ね」
議論をやめ、武器を手にし相手を駆逐することを「最善の対応」と住人たちは考えた
短絡思考ではない、これまでの「積み重ね」の末に得た結論だ
「言葉が通じねぇならムシと変わんねーだろ?」
ある住人はそう言った
「アイツらは人を襲うんだ、人食いに落ちたケダモノも同じよ」
猟師をやっていた住人もまたそう答えた
虐待派まで駆逐対象にすることに抵抗を示す者もいたが
「無責任におっぱじめて管理もしねぇ、責任も取らねぇ対応もしねぇ
口約束とはいえ約束すら守らねぇあいつらと虐厨に差があるのか?」
こう言って進んで虐待派の殲滅に参加する者もいた
「オレの故郷はアイツらに滅ぼされたんだ、生きてる限り殺し続けてやる・・・」
そう言った被害者住民は目の奥に憎悪を燃やしていた

人に危害を加え続けてきた一派に対して人々が取るようになった、非情な対応
対話をやめた人々が次に選択したこの一手
短絡的と断じる声は意外と少なかった
「もうどれだけ長い間続いてると思ってんですか
そりゃあ、いつかはこうなりますよ」
人の良さそうな奥方はそう言って「仕方がない」と断じた
そう、「仕方がない」のだ
人々は自分たちの領域を守るため
今日も監視の目を光らせ、虐待組織を狩っている
(おわり)

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223「いない」世界 1/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/08/14(水) 18:41:33 ID:yC7SNOCg0
かつて、「AA」と言う種族が世界中にいた
しかし今やその数は激減し
限られた場所でしか見かける事はない

その原因は
増長しすぎた虐待厨とそれらを危険視しなかった無知にある


ここは、とある掲示板のとあるスレ
「ここは虐殺禁止区域よ!」
「うっせぇ!!」
抗議したちびしぃが蹴飛ばされ壁に叩きつけられる
「ちびちゃん!!」
母しぃが駆け寄るも、少女はすでに息絶えていた
「どうしてこんな・・・あの戦争がやっと終わったのに・・・」
「戦争」と言えば一つしかない
「またーり虐殺抗争」
流血を嫌う「マターリ派」と流血を好む「虐殺派」の激突だ
最初こそ小競り合いでしかなかった争いは次第に激化・大規模化し
気が付けば掲示板の存在自体が危ういものになっていた
双方の話し合いの末に「相互不可侵」を含む不文律が決められた
この勝者なき不毛な争いは「戒め」として語り継がれ今に至る
・・・はずだった、少なくとも戦争の参加者はそう思っていた
しかし、争いの発端であった虐待荒らしを率先していた虐待厨は違った
彼らは争いが終わるのも引き分けの和平も気にくわなかった
だから、暴れ続けた
新しいジャンルでも暴れた
やがて、彼らに追随する者たちが集まり
いつしかジャンルそのものを破壊し灰燼に帰すまでになった
世代交代が起きたのもそれに拍車をかけた
危機の訴えに耳も貸さず知ろうともしない「事なかれ主義者」たちの台頭
ただ危機を訴えた者に「荒らし」のレッテルを張り
また新キャラクターへ「荒らしの手先:のレッテルを張るその行為は
ただ気まぐれに虐殺を行い広めていった虐厨たちにとって
虐待ジャンルを始めてくれる虐待派の次に
心強い味方になることもあった
その結果、援軍を得られなくなったジャンルは次々と滅びていった
そして最初にやり玉に挙がったAA「しぃ」は絶滅寸前だった
「・・・この子は最期の”しぃの子”なのよ、もう次はないわ・・・」
「あふぉしぃがいなくなるんなら良い事だろw」
虐厨はそう言って笑った
「あふぉしぃ」とは、かつての抗争が始まる前に
虐殺の正当化のために作りだされた「しぃもどき」だ
その性格は最悪で愚劣極まり
似た容姿のオリジナル「しぃ」とはかけ離れたものだった
それを広められたことと、虐殺の手を「しぃ」にまで広めた事
「しぃ」と「あふぉしぃ」を同一視した上に保護区まで焼いたことが
より過激な戦争のきっかけなのは言うまでもない
「だったら、望み通りいなくなってやるわ」
しぃは、不敵に笑ってそう言った
次の瞬間、彼女は消えた
虐厨がいくら周囲を見ても
「しぃ」は、そこにいなかった
彼女だけではなく、転がっていたしぃやちびしぃ、べびしぃもいない
まるでそこに最初からいなかったかのように・・・
その掲示板は、「しぃ」の絶滅を宣言した

224「いない」世界 2/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/08/14(水) 18:42:25 ID:yC7SNOCg0
やがて次々と「しぃ」の絶滅を宣言する掲示板は増えていった
「ニラ茶猫」のような亜種も例外ではない
そして・・・
「やった!最後のベビを殺したぞ!」
ついに保護区にまで虐厨の手は伸びた
絶対不可侵のルールは今や瓦解していた
「しぃ」だけではない
「ちびギコ」「おにーに」らも次々消えていった


今度は虐厨が困ることになった
「愛護派」の先鋭化・武装化が始まった
今までただ追い払われるだけだった愛護派は
ルールの形骸化・無意味化を悟ると二つに分裂した
愛するキャラクターと共にネットの奥に避難する者
そして武装し攻撃に躊躇しない者に大別された
前者を追いかけていた虐厨が後者に遭遇し
想定外の猛攻を受けて壊滅したという報告が出るのに時間はかからなかった

それだけではない
牧場まで襲った事で危機的な食糧難に直面した
「あんな奴らにひき肉の一グラムも渡すもんか!」
襲撃を生き延びた牧場主たちは皆、避難所へ行ってしまった
さらに深刻な問題がある
虐待の矛先がいなくなりはけ口がなくなったのだ
無計画に人員数を増やしたのも災いした
どいつもこいつも暴れることが目的の「あふぉしぃ」未満の頭ばかり
リーダーたち古参の言う事や虐待派からの忠告を聞くはずもない
だったら切り捨ててしまえばいいのだが
彼らはそうはせず、下っ端虐厨たちを庇い守った
その姿勢から武装した愛護派から虐待派をも虐厨と同一視する派閥も生まれ始めたが
彼らにとってそれはいつものことだから問題にはしていなかった
後にそのツケを支払う日が来るのだが・・・・・
「被虐生物」の生息地は牧場を含めすべて手を出してしまった
絶滅は当たり前である
「やめろ!オレはモララー族だぞ!!」
「いんや、モララーは俺たちのような”角耳”だ!
お前の耳は丸い!   マルミミは人に非ず!!」
虐待の手先として使っていたAAへ矛先を向けるも
それらももういない
「なんでオレたちを拒絶するんだ? 同じギコ族だろ?」
「はぁ? 同族のはずのしぃたちを殺しといて何言ってやがる?」
「次はオレたち”つー族”をあふぉ化家畜化・・・だろ? 分かるぜそのくらい」
つー族へもオファーしたが完全に見透かされていた
だがこれは失敗してよかっただろう
彼女たちが裏切者へどんな苛烈な制裁を科すか
それは彼女たちの「戦闘種族」としての評判が物語っている

225「いない」世界 3/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/08/14(水) 18:43:01 ID:yC7SNOCg0
「なぁ、”墓所”へ行ってみないか? あそこならしぃがまだいるかもしれねぇ」
彼らが最後に思い付いたのは、「墓所への遠征」だった
しかし、誰もがこれには難色を示した
「墓所」は「マイナーAA」の集う場所である
ただ数が少ないだけではない
怪獣王「グレートカメモナー」や悪食の鬼神「ヴィ」をはじめとした
敵に回すことどころか遭遇自体が「死」を意味する危険生物の坩堝だからだ
足を踏み込むこと自体「自殺」に等しい
同じ危険生物でも「つー族」はまだ話が通じ良心的だからマシだ
だが、あそこにいる連中には「対話」も通じない
そもそも言語を理解できる奴は少ない

最終的に、「墓所への遠征」は決定した
このままでは虐厨同士の殺し合いになりかねない
新しいジャンルへ手を出そうにも
今までの暴虐と約束反故の連発が彼らへの心象をどん底まで落としていた
現在進行形で手を出している連中はすでに交戦を始めていた
もう一方的に潰せるジャンルは皆無だ
それが決定への後押しになった

「ここは、天国か!」
墓所への第一次遠征部隊は目の前の後継に絶句した
「おにーに」をはじめとした数々の被虐生物に加え
カメモナーら絶滅種AAもそこらにいる
周囲にグレートカメモナーの姿はないがいても構わなかった
彼らには最新鋭の兵器があった
グレートカメモナーを撃破した戦果の過去事例も彼らに自信を付けていた
ただし、「ヴィ」は別だ
特に成体にまで成長している個体には絶対に遭遇したくなかった
噂話を含めてソレを倒したという報告はなく
倒すことを試みたところ、後悔する結果に終わった事しか見つからなかったからだ
他にもまだ存在を知られていない奴がいる可能性があった
安全を確保すべく、彼らはてきぱきと前線基地を作成した
「あんたら、何しに来たのかね?」
その作業中に、ここの住人の髭を生やした老人が話しかけてきた
「ここに虐殺スレを建てるのさ!」
「やめなされ」
老人はきっぱりと言った
「ここは忘れ去られた者たち、滅びた者たちの最後の楽園じゃ
そこを荒らすことは許されん!」
「うるせぇ荒らしが!」「そうだそうだ!」「ルールなんざ知った事か!!www」
老人は罵声を受けると首を横に振り、黙ってその場を去っていった
「前祝いと行くか!」
日が暮れて夕飯も済んだところで
虐厨の一人が捕まえていた
周囲にいた「ちびギコ?」を十匹ほど檻ごと持ってくる
「ん? 見た事のない奴だな?」
その「ちびギコ?」は奇妙だった
無表情でじっと虐厨たちを見ている
何より二足歩行だ
「ぃぇぁ・・・」
独特の声で「ちびギコ?」たちは鳴いていた
「雑種だろw」
その一言で皆、安心した
虐厨たちは久しぶりの虐殺を楽しんだ
殺しつくした死骸は外に放り出す
「さぁて、本部へ連絡だ!!」
「ぃ・・・」
「あん?なに・・・」
虐厨の一人の姿が、ふっと消える
「ぎゃあああああああああああ!!!」
外からそいつの悲鳴が聞こえた
「どうし・・・」
門を開けた虐厨の頭を槍のようなものが貫き
外へ引きずり出す

226「いない」世界 4/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/08/14(水) 18:43:55 ID:yC7SNOCg0
うぞうぞぞぞぞぞぞ
先ほどの「ちびギコ?」の死骸が集まって一つになり
二人の虐厨を自分の体に押し込んでいた
嫌な音を立てて虐厨の体は「折り畳まれて」押し込まれていく
悪夢のような光景に一同は戦慄した
「お、おい、さっきのちびギコじゃねぇかこいつら・・・」
その一言に生き残りたちは、はっとした
基地内の檻にはまだ本部へ移送予定の個体が4匹ほどいる
「ぐぼぉ!?」
イヤな予感はすぐに現実化した
「ぃぇぁ」
檻の中から槍のような触手を伸ばし
背中から虐厨の一人を串刺しにする「ちびギコもどき」
檻の格子は他の「ちびギコもどき」が舐めていた
みるみる鉄ごしらえの格子が
まるで飴でできているかのように舐めて溶かされ減っていく・・・
残りの虐厨たちは武器を放り出し悲鳴を上げて逃げ帰るしかなかった

命からがら逃げだした虐厨たちは無事に元居た板へたどり着いた
そして仲間たちにすべてを報告した
「そいつはたぶん、『ぽろろ』だ」
古参の虐厨はそう言った
かつて虐待用生物として作られた生命体
しかし、どん欲な食欲と見た目とは不釣り合いな高い知能
細胞を一片でも残せば再生してしまう脅威の生命力を前に
作成していた研究所は軒並み壊滅
「ぽろろ」の開発は中止され研究所のあった板は「墓所」送りとなった
「まてよ・・・ちびギコたちをそいつらと入れ替えたということか?」
「そうだろう」
「なんのために?」
「ちびギコでは死んでしまうような試しのためだろう」
そこまで意見が出て、何人かの頭へある考えが浮かんだ
「なぁ、お前ら『ぽろろ』にやられた以外には何もないのか?
逃げて来る途中で追撃されたとか、なかったか?」
逃げ帰った虐厨へ思いついた一人が聞く
「ああ、特になかったぜ」
「まずい、お前たちは逃げ切れたんじゃない
わざと逃がされたんだ!!」
どういった意図があってそんなことがされたか
聞き返す奴はもはやいなかった
「他の虐待基地に連絡をしろ!グレートカメモナーが来るかもしれん!」
「はい!」
「オレは近くの基地に行ってきます!」
全ての基地に連絡をして対策を練り
共同戦線を近隣基地同士で作るべく彼らは奔走した
しかし・・・
「すぐ隣の基地が応答しません・・・」
「なんだと?」
「隣の基地に言ったやつから連絡です!」
「つなげ!」
「お、オレです!あいつら、もう基地の近くまで」
どん!どん!というジープを叩く音が通信機越しに伝わる
「落ちつけ!もう帰って来い!」
リーダーは通信機に向かって怒鳴ったが
「・・・く、来るなぁ!!!」
「ヴィィィィィ!!!」ベギィ!「ぎゃああああああ!!!!」
頑丈な4WDジープの装甲がひしゃげるような金属音
聞いたことのない恐ろしい鳴き声と虐厨の断末魔
その後は鳴き声を上げた生物のうなり声と
生肉を食い血をすする音が通信装置から基地内に響く・・・
「ま、間違いない、『ヴィ』だ・・・それも成体が、複数・・・・・」
古参の虐厨はその場にへたり込んだ
AA滅亡の最初の一日は、こうして終わった

227「いない」世界 5/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/08/14(水) 18:44:54 ID:yC7SNOCg0
それから一週間、何もなかったが
それが嵐の前の静けさであることを誰もが予感していた
その悪い予感はこの日、的中した
グレートカメモナーが墓所から出てきたという報告がきたのだ
報告をよこした偵察車両は「ヴィ」の群れに襲われ
報告の途中で永遠に帰る事すらできなくなった
「こちら観測ヘリ!き、来ました!」
「よし!総員戦闘用意!」
しかし、次の報告と映像で全員の戦意は挫かれた
「グレートカメモナー総数は約200!!
しかも、データにある個体よりはるかに巨体です!!」
一体、もしくは数体程度の数の
過去に撃破例があるグレートカメモナーと同一サイズの個体
それが今回の交戦対象の前提である
数が圧倒的なことに加え「データよりもでかい」と言う報告
誰もが目と耳を疑った
嘘であってほしいという願いは偵察機からの映像で挫かれた
「討論中に出たものの特に気にしなかった意見」が全員の頭に浮かんだ
それは「討伐された個体はまだ亜成体もしくはカメモナーから成長したての未熟な者ではないか?」
というものだ
だから、AAたちでも狩ることができたのだ、と
もしアレが成体だったらこんなものでは済まないのでは、と
しかしデータにある個体の圧倒的な大きさと「当時の総力でやっと撃破した」という事実から
最大でもその大きさで実力もその程度だろうと
彼らは勝手に思い込んでいた
いや、頭に浮かんだ希望的観測を真実と自分たちに刷り込んでいた
これ以上の最悪の事態、それから目を逸らすために

次の指示を願う偵察からの声にどうにか返答しようとした時、
画面が光り映像が途切れた
何が起きたのか巻き戻すと
グレートカメモナーの何体かが歩きながら偵察機に頭を向け
口から何かを放ったのだ
「いったい何・・・」
答えは基地への衝撃と言う形で判明した
数キロ先の前線からグレートカメモナーの一体が放った「光線」
基地ではなく目の前の戦闘車両部隊へ放ったそれが勢い余って
たまたま直線上にあった基地の外壁に直撃したのだ
一瞬で「ヴィ」すら防いでいた外壁は蒸発し基地内部に「光線」は入り込んだ
優先的に狙い撃ちされることを想定して頑丈に作った司令室以外は
その一撃と火災、発電施設の連鎖爆発の火炎と熱の地獄の中に消えた
「りー、リーダー・・・ここ以外が消えました」
部屋のすぐ外を見た虐厨はそれを報告するだけで精いっぱいだった
あとはパニックである
部屋から逃げ出す者、必死に他の基地への通信を試みる者
司令室の脱出艇に勝手に乗り込む者などなど
司令室が到達したグレートカメモナーの群れに踏みつぶされるまでそれは続いた
生き延びたのは徒歩で脱出した者だけだった
脱出艇はグレートカメモナーに見つかり、「光線」の餌食となったからだ

228「いない」世界 6/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/08/14(水) 18:45:41 ID:yC7SNOCg0
「火と嵐の3か月」と名付けられることになる
『墓所』の怪異による蹂躙で各地の虐厨や虐待派は攻め滅ぼされた
3か月目の最終日、最後の拠点はグレートカメモナーが手を下すまでもなく
食料の奪い合いで自滅した
敵の全滅を確認すると、怪異たちはゆっくりと『墓所』へ引き上げていった

一方で怪異と鉢合わせたはずの愛護派たちは無事だった
と、いうのは
「見た事ないAAだな、お〜い!」
彼らが怪異たちにした行為は「声をかけて手を振ってみる」などの
「非戦闘的な挨拶」の類のみだったからだ
中には武装した者や戦闘車両に乗る者もいたが
「ぃぇぁ」
「なにこの子すげぇかわいい!!」
と、ひたすら写真を撮る等の行為に留め加害的行動は決してしなかったので
彼らが攻撃されることはなかった
実は徒歩で逃げだした虐厨たちが攻撃されなかったのもこれが原因である
怪異たちは「敵意」を向け「攻撃」を行う者のみを狙っていたのだ
脱出艇などの虐厨の持つ車両は「機銃」などがあり
脱出時に彼らはこれを使って反撃をしてしまった
つまり、威嚇も攻撃もせずただ逃げるだけなら逃げ延びられたのである

「やれやれ、こうなってしまったか」
『墓所』でそうつぶやいたのは、あの老人だった
彼は『墓所』の中からすべてを見ていた
すべてが見えていた
「最初のモナー」と呼ばれる人々の一人、それが彼の正体だった
彼らには特殊な能力と不死性こそあれど
戦闘を行うような力はない
だからマターリと虐殺の大規模戦争の時も参加せず
ただ裏から一刻も早く争いを終わらせるように働きかける事しかできなかった
あの争いはどうにかできた
でも今の争いはどうしようもなかった
「ルールを平気で破る」「人の泣き顔が心地いい」
そんなゲスが増えすぎたためだ
彼らにはいくら理を説いても心に訴えても無意味だった
「今が楽しければそれでいい」「自分の楽しみのために他人がどうなろうと知った事ではない」
かつての抗争の時もこういった輩はいたが周囲の人間が抑えたり諭したりしてくれた
しかし今は違う
押さえてくれる大人がいない今、彼らを止める事ができる人間はいなかった
それどころか彼らに賛同する輩が増殖していった
「非暴力・平和主義」
かつて自分たちが争いを終わらせるために徹底させたそれをも奴らは利用した
無力さを思い知った「最初のモナー」を含む始祖AAたちは
介入の中止を決断
全員が『墓所』へ引きこもった
虐厨たちの全滅を確認したグレートカメモナーたちが帰ってくる
彼らが『墓所』から離れる事はまた同じことが起きない限りはないだろう
いや、もう起きはしまい
「最初のモナー」は廃墟と荒野と化したAA世界を見ながら思った
もう復旧は不可能である
あの愛護派たちに希望の目を向けてみたが
彼らはAAではない全く別の種族だった
恐らくAA種族はかなり遠くへ引きこもったかあるいは死滅したのだろう
あの虐厨たちの手によって
「物にはいつか滅びが来る、とは言うが
我らAAの『終わり』がこんな悲惨なものとはな」
思わず愚痴がこぼれた

あの別種族たちが同じ過ちを繰り返さないように
彼はいるかどうかも定かではない「神」に祈り
庵へ帰った

(おわり)

229願いをかなえてやった 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/09/10(火) 19:26:47 ID:t5SYmMhw0
「ぎゃああああああ!!!」
ここはアローラ地方にほど近い地方
村の一角のブリーダーの家から断末魔が響き渡る
しかしその声に反応する者はこの場にはいない
カチャリ・・・
たった今断末魔を出した家のドアを
そっと開けて外の様子をうかがうのは
口とかぎ爪を血で濡らしたニューラだった
他の家からも同じように体のどこかしらを赤く染めたニューラが顔を出す
彼ら彼女らは互いの無事を確認すると、
村から去っていった
数日後、連絡のないことを不審に思った虐待愛好会会員が村を訪ねた時
村人全員が切り刻まれて殺されているのを発見することになる

ニューラたちの両親は難破船から流れ着いた番のマニューラだった
人に忠実だった両親は子供たちへ
「人に親切にしなさい」と教えていた
ある日、兄弟の一人がその意味を聞いた
母親は少し考えた後でこう伝えた
「人の願いをできる範囲でいいから叶えてあげなさい」

程なくして、両親は死んだ
この地方のブリーダーたちに殺されたのだ
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
彼らが知るはずもない、人間が勝手に作った図鑑の説明文
それが人々の間でマニューラ・ニューラの像を作っていた
人の言葉を覚えていた両親がいくら説得しても
人々は聞く耳を持たなかった

巣穴の奥深くに逃げ込んだため生き残った兄弟は
今後について考えた
特に「両親はどうして人に殺されたのか?」を話し合った
出た結論は「両親は人の願いを叶えなかったから」だった
人々の願いは
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
あの時、人々が口々にがなり立てていた言葉
両親から人の言葉を習っていた兄弟たちはそれを理解していた
結論は出た
「両親の意志を継ぐ事」
「人の願いを今度こそみんなで叶える事」
「子供が生まれたらその子らにもこの生き方を継がせる事」

兄弟たちは行動を起こした
まず、巣穴の一番近くの村に行くことにした
ブリーダーの家の卵を盗んで食らい
怒って出てきたブリーダーを切り刻んで食った
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
この二つが人々が自分たちになってほしい姿だと
その姿になることが「お願い」だと
兄弟たちは確信していた
その次はブリーダーの悲鳴を聞いて駆け付けた男
その次は腰を抜かしていた虐厨
その次は・・・・・・・・
一晩で村は死体だけが転がる凄惨な場と化した
殺した人々の肉を食い兄弟は
両親が死んでから初めて満腹になった
「人の願いをかなえれば、良い事がある」
両親のあの教えは間違いではなかったのだと
両親は最期に「お願いを断った者の末路」を身をもって
教えてくれたのだと
兄弟たちは涙を流しながら心に刻んだ

230願いをかなえてやった 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/09/10(火) 19:28:12 ID:t5SYmMhw0
月日は流れ、兄弟たちの何体かは「お願い」の実現の最中に死んだ
だが生き残った者は子を産み数を減らすことはなかった
中にはマニューラへの進化に成功した者もいた
兄弟たちは「教え」を自分たちだけでなく
他のマニューラやニューラにも教え広めていくことを思いついた
やがてそれは、「虐待」の広まりによって迫害され
人から遠ざかっていたポケモンたちにも伝わった

人々が気付いたとき、「相手」はすでに相当数に膨れ上がっていた
虐待組織は「大義名分を得た」とばかりに狩りに行ったが
程なくして全滅した
戦闘経験の差、地の利が向こうにある事、圧倒的な数
何より各種ごとに持っている特性や技の数々、
勝てる要素がそもそもないのだ
人々は我先にとその地方から逃げ出すことを選んだ
人のいなくなったその地方は立ち入り禁止となった

さらに月日は流れ・・・
別の地方の海岸
ニューラの母子が打ち上げられた海藻や魚を拾い集めていた
その一行にマニューラが接近する
警戒する母子にマニューラは挨拶をし、
自分が丸太に乗って旅をしてきたことを話した
両者が打ち解けたところに・・・
「ミイツケタ!ひゃっはー!!」
虐厨が棍棒で襲い掛かった
ザン!!
「ひゃ・・・?」
虐厨は棍棒を見た、マニューラの爪で鋭く切られている
下半分は虐厨の手に
上半分はマニューラが持っていた
「ヒャッハー!!!」
マニューラは虐厨の声を真似すると
虐厨に棍棒で殴りかかった
マニューラは虐厨が動かなくなるまで殴り続けた
いきなり棍棒で殴るのがこの地方の人間の挨拶なのか
変わった挨拶だな、とマニューラは思った
母ニューラは怯える子を背にマニューラに近づくと・・・
両者は一言二言交わす
やがてニューラ母子が先導する形で歩き出し
マニューラはそれに続いて歩きだした
どこへともなく

しばらくして、この地方には
人々に襲い掛かるポケモンの群れが
現れるようになったという

(おわり)

231願いをかなえてやった おまけ 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/09/10(火) 19:29:41 ID:t5SYmMhw0
虐待組織の組員は呆然としていた
あり得ない光景が目の前にあった
ポケモンブリーダーを切り刻み卵を食らうニューラ
生存者を探し回り切り刻んでいくマニューラ
「ぎゃあああ!」
悲鳴のした方を見ると、ペルシアンが男にのしかかり
その喉を食い破っていた
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
「だから駆除しても良い」
タブンネやイーブイの虐待に飽きた虐待組織が広めた
虐待組織監修のポケモン図鑑の記述の通りの世界が
そこにはあった
「ペルシアンは実はずるがしこく残忍な肉食ポケモン」
それも付け加えた覚えがあった
もちろん、図鑑の説明文はインチキだ
タブンネの時のように相手を貶め虐待しやすくするための
方便、そのはずだった
「嘘も100ぺんつけば真になる」
代々虐待組織で続いて来た教えは裏切ったことがなかった
人々は皆、賛同し
反対者は「アイゴ」のレッテルと共に排斥された
今回も虐待組織は勝利した
新しい虐待が始まり誰もが幸せになった
ほんの数週間前までは
「人を襲うニューラがいる」というデマとしか思えない報告
それが始まりだった
目撃者がいない事から偽情報と断じ気にも留めなかった
だが目の前の光景を見て納得した
目撃者がいないのではない、襲撃の生存者がいないだけなのだ
「メオ」
組員は背後の声に思わず首をすくめた
たまたま足元にあった空のペットボトルに足を取られ転倒する
その直後
ガシャン!!
ちょうどニューラが背後から飛び掛かったところだった
頭を狙ったカギ爪は空ぶってニューラは組員の頭上を越え
窓を壊し外へ転がり出る
組員が数少ない生存者になれたのは、
逃げ回るうちにたまたま川に落ちて
匂いによる追跡をニューラたちが断念したことと
川にいるギャラドスを彼らが恐れたためだった
命からがら地方を離れ彼は今、別の地方にいた
かつての仲間とは連絡は取れていない
しかしここにも虐待組織はあった
ここで一からやり直すことを彼は決意し、
今は新人として頑張っていた
「海岸沿いの村から連絡が途絶えたんだが、おかしいんだ」
「どうした?」
「みんな死んでたんだよ、鋭い刃物・・・いや、ツメであちこち切り裂かれて」
「あのへんのツメがあるポケモンはニューラくらいしかいないぞ、
別の何かが来たのかな?」
「だろうな、『ニューラが本当に人間やポケモンを襲う事はないはず』だ
念のため調査隊を組織しようって話になって・・・」
組員は先輩たちの会話を聞いて
手にしていたコーヒーのカップを落とした

(おわり)

232あいごおに 1/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/10/21(月) 21:58:05 ID:j1vvsT6Q0
とある町の山に祠があった
伝説ではその昔、暴れた鬼「あいごおに」が封じられているという
いつの頃からか、その祠の前でタブンネや実装石、ゆっくりなどの
「被虐生物」を虐待し殺し捧げる祭りが年に一回行われるようになった

「なぁ、やめようぜ」
虐太へ悪友の虐杉は声をかけた
「はwびびったのかよwww」
そんな虐杉へもう一人の友人の虐重は小馬鹿にした声をかける
「ちげぇよ!夜はここに近づいちゃいけねぇって言われてるだろ?」
そう、祠のある場所で「祭り」が行われるのも
何故か真昼間だった
夜は決して行われず
「絶対に近づいちゃならん!」と
町の者は幼いころから厳しく言われて育ってきた
虐太はそれが気に入らなかった
所詮、「アイゴ」は「アイゴ」だ
迫害の対象でこそあれ恐れる対象ではない
それが虐太の考えであり友人たちに言っては
大人に聞かれて叱られていた
「着いたぜ!」
黙っていた虐太は祠の前へ恐れもせず進んだ
慌てて二人もあとに続く
周囲にはタブンネの骨やゆっくりのお飾りなどが散乱していた
つい先月行われた祭りの名残だ
なぜか片づけず放置することが習わしになっていて
それでも来年には綺麗に何もなくなっていたことから
「きっと野生動物が片付けたんだろう」と
誰もが思い気にすることもなかった
「よし、まずは掃除してやろう!」
虐太はそう切り出した
すでに穴は祠の近くに掘られていた
「掃除って、これを片付けるのか?」
「そうだ!片づけちゃいけないなら試しに片づけてやろうぜ!」
妙に思った二人だがしかし
虐太の言い分に納得して骨やお飾りなどを集め
次々と穴へ放り込んだ
「なぁ、これってお前が掘ったのか?」
「そうだ、昨日ここに来たからな」
二人はそれは初耳だった
祭りが終わった後も半年、昼であっても絶対に近づいてはいけないと
釘を刺されていたからだ
「”あいごおに”なんて居やしないのさ!」
片付けが終わり穴を埋めながら
虐太は二人にそう言い放った
「あ、おいおい、見ろよこれ」
虐太は祠の中の注連縄を指さした
そこには祭りの時に付着したのかミニイカ娘の帽子が引っ掛かっている
「オレは穴掘ってるからそれ外しといてくれ
無理なら注連縄を外してきれいにしよう
なぁに、黙ってりゃ動物が勝手にやったと誰もが思うさ!」
虐杉は虐太の言葉に頷くと
注連縄を外してミニイカ娘の帽子を外した
「感謝するぜ坊主、こいつはオレにはどうにもならんからな」
虐太は虐杉にそう声をかけた
虐杉はその声に口調に違和感を覚えた
いつもの虐太はこんな声で口調だっただろうか?

233あいごおに 2/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/10/21(月) 22:03:52 ID:j1vvsT6Q0
「そうだ、ついでにお前たちに真実を話してやる
この町の伝承はゆがめられたものなんだ!」
虐杉も虐重も顔を見合わせた
「そもそも鬼は元は人間だった
虐厨の集落とも知らず迷い込んだタブンネを連れていた旅人
彼は村人にもてなされていたが
寝ている間に縛り上げられタブンネを目の前で殺された
寝る前に食った夕餉は別のタブンネの肉だった
旅人は怒り狂って叫んだ
”お前たちを殺し尽くす!たとえ鬼になってでもな!!”
宣言の通り旅人はその場で鬼になった
縛る縄を引きちぎり自由になると
屋内の虐厨を殺して回り
外へ飛び出して村の虐厨たちを手にかけた!」
「虐太・・・?」
そんな話は聞いたこともない
そして違和感もあった
虐太はまるで見て来たかのように話をつづけている
何より、目がいつもの虐太ではなかった
らんらんと輝きまるで獣のそれのよう
「村を殺しつくした鬼は隣の村にやってきた
そこを殺したら次はその隣
やがてウワサは近隣に広まり
徳の高い修験者が来て鬼を封じた
いや、慰めて眠らせた
この、祠の下にな!」
「お、おい・・・」
友の視線を気にせず虐太は話を続ける
「”決してここで殺生をしてはならぬ”と
修験者は人々に厳命した
そもそも彼は事の次第を聞いて最初こそ
自業自得と断っていたのだ
だが鬼の被害が大きくなりすぎたため
渋々腰を上げた
修験者は親身になって話を聞いてくれたぞ
そして、怒りや憎悪に身を焼かれる苦しみを察してくれた
祠を立て鬼と彼のタブンネたちを供養してくれたのだ!」
虐太は興奮してまくし立てた
「だが時が経ち修験者もいなくなった時
愚か者どもは鬼をただの伝説で迷信だと決めつけた
そして意趣返しのつもりか
ふざけた祭りを毎年するようになった
鬼は怒った、殺される生命を嘆いた
祭りの後で半年間立ち入りが禁止されるのは
鬼が殺された生命を慰め成仏させる時に
修験者から教わった念仏を唱え続けるためだ!
それを聞かぬためだ!」
そして虐太は二人を見回す
「鬼は時々やってくるお前たちのような
ひねくれ者へ語りかけて二度とこんな事をせぬように
言い続けた!
しかしそれは信じられず、時としてそいつらは
己の勇気を示すため逆のことを言い
祭りは終わるどころかどんどん激しくなった!
・・・やがて鬼は決めた
この封印を解いて出てくることを!
またあの時のように暴れる事を!!」
どん!!
その最後のセリフと同時に
祠が倒れた
やがて地揺れと衝撃に
3人の体は吹き飛んだ
意識を失う前に虐杉は
祠のあった跡から樹木ほどある
大きく太い右腕が突き出るのを見た気がした

234あいごおに 3/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/10/21(月) 22:08:00 ID:j1vvsT6Q0
「キミ!大丈夫か!?」
「こっちも生きている!担架を早く!!」
気が付くと3人はレスキュー隊に発見されていた
最初に意識を取り戻した虐杉は周囲を見る
レスキュー隊だけではない
軍隊に警察に消防にマスコミ・・・
慌ただしく色々な人々が彼らの周囲を動き回っている
「あ・・・」
虐杉は何か聞こうと思ったが声が出なかった
何を話せばいい?
そもそも何を話せば信じてもらえる?
「無理しなくていい、水は飲めるかい?」
レスキュー隊員は彼が水を欲しているものと勘違いし
仲間にペットボトルを頼んで持って来させる
やがてヘリが飛んできて3人を乗せ、その場を後にする
どうして町の大人たちでなくレスキュー隊なのか?
なぜ、色々な人々があそこにいたのか?
その疑問は空からの景色で氷解した
虐杉たちのいた山肌は大きく抉られていた
ただし下にではなく上に、だ
間欠泉が噴き出して3人を吹き飛ばしたのだった
祠のあった場所はまだ勢いよく湯の柱が噴き出ている
そこから山のふもとへ、町へと虐杉は目を移した
何もなかった
黒く冷え固まったものとまだ赤く蠢くものがある溶岩の大地
それだけが広がっていた
かろうじて残る家の燃え残りや鉄骨の名残
自動車の残骸などで
そこが生まれ育った町だった場所なのだと分かった

突発的な火山活動による災害
政府はそう結論を付けた
しかしそれまで火山活動の記録もない場所で
どうしてそんなことが起きたのか?
学者たちの議論が進んだがさっぱりだった
そして町の生存者は山へ行っていた彼ら3人だけだった
「あいごおに」は何故か
「掃除をしてくれたお礼に3人の少年を助けた神様」と言う話になり
いつしか「あいごさま」という子供を守る神様の伝説が誕生して
やがて災害の慰霊碑の隣に立派な社が建てられそこで祀られるようになる

「あの夜の事は3人だけの秘密にしよう」
病院の病室にいる時、たぶん誰も信じない事や
自分たちがしたことは犯罪に当たるかもしれないと
悟った虐杉がそう切り出したが・・・
「夜? そういやなんでオレあそこにいたんだっけ?」
2人を先導したはずの虐太は開口一番そう言った
彼は災害の起きた日の先日の夜
祠に出向いて「祠に巻き付いていた」注連縄を外す悪戯をした時から
記憶がないのだという
そういえば、あの時の注連縄は「祠の中」のものだった
祠に巻き付いていたはずのもう一本はあの時にはもうなかった
では、彼らを先導し掃除を切り出した「あの虐太」は
一体誰なのか・・・?
二人は顔を見合わせた
そしてあの時の虐太を思い出した
別人のような、まるで見て来たかのような語り口調に
獣のように光る目・・・
そして、気絶する前に見た大きな腕
虐杉は虐太を見た
「?どうした?」
「いや・・・とにかく今回の事は3人の秘密だ!」
虐杉はそう言うと布団をかぶった

顔を見合わせた二人をあの時と同じ目で
虐太が見ていた事に二人は気づかなかった
そして翌朝
虐太はどこにもいなくなっていた

(おわり)

235続きは地獄で 1/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/12/02(月) 15:52:50 ID:xwxSS.ec0
「た、たすけて・・・」
ボコボコに殴られ息絶えた相棒の死体を横目に
必死で命乞いをする男がいた
しかし見下ろす女性は汚いものでも見る目で見下すと
手にしていた鉄パイプを振り上げる
「・・・行こうか、ゲルゲちゃん」
少し目を離した隙に虐待され息絶えた家族同然の同居人の死骸を抱いて
女性はその場を後にした
ゴミ捨て場には元が人の形をしたものだとは分からないまで
叩き潰された肉塊の詰まったごみ袋が2つ残された

これが今、社会問題となっている「飼い虐待問題」だ
「甘やかされて育った被虐生物を虐めるのが面白い」
「アイゴちゃんが悲鳴を上げ怒り狂う様が楽しい」
「軽い罰で済むのだからやめる理由も恐れる事もない」
「顔真っ赤になって怒るだけの愛護なんて怖くない」
警察で取り調べを受けた加害者は口々にそういった
彼らに反省の弁は一切ない
「目を離した馬鹿が悪い」
彼らの言い分はこうだった
当然ながら飼い主の制裁で負傷、時には命を落とす奴も
時間経過に比例して増えていった
それでも彼らはやめなかった
何故なら「人間」あるいは「虐厨」である以上は
人権を持っているからだ
人に危害を加えれば罰せられるのは被害者たち
つまり、社会を守るルールを奴らは盾にしていたのだ
飼い主の中には「被虐生物」認定された家族の一員を外に出さず
屋内で飼育したり庭を改造して遊ばせたりする者も現れたが
それでも虐待派・虐厨は手出しをやめなかった
堂々と庭の中に入り込み
あるいは窓を壊してでも屋内に入った
「イ、命は助けて・・・」
「やだね、どうせ軽い罰か無罪になって放たれるんだからここで死ね」
当然ながら、怒りが憎悪に変わるのにさして時間はかからない
飼い主たち(虐待勢曰く「愛護派」)の対応もより先鋭化していった
追い返すのではなく殺すことを主眼に置いた対応は増えていった
「なんであいつらがのうのうとしててオレが逮捕されなきゃならんのですか?」
全力で肯定したい意見を取調室で言われる警察官の心理的負担も大きい
しかしそれはまだマシだった
「あの子がいなくなったんです、もう未練はありません」
そう言った少女は翌朝、留置所の中で壁に頭を打ち付けて死んでいた
発見したのは彼女に心底同情し釈放・そして無罪判決に奔走していた刑事だった
その日、少女は釈放されるはずだった
罪も書類送検で済むはずだった
当の虐厨が少女に突き飛ばされて「死んだふり」をしていたことが分かったのは
少女が死んだ後だった
彼女の葬儀の席であらゆる残虐な事件を担当して来た「鬼」は
人目もはばからず号泣し少女の両親に土下座して詫びた

236続きは地獄で 2/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/12/02(月) 15:53:47 ID:xwxSS.ec0
「いいぜ刑事さん!覚悟の上だ!!」
次に彼が担当した事件は
夏祭りで彼女に振られた腹いせに
通りすがりの飼いゆっくりを殺したという事件だった
犯人はすでに死んでいた
目の前で自暴自棄になっている男は犯人をその場で殺した飼い主だった
「どうせ器物破損で安く済むんだからざまぁw」
犯人にぶつけられたその一言がきっかけだったのは言うまでもない
犯人はタックルで転倒して後頭部を打ち付けた挙句
頭蓋骨がぐしゃぐしゃになるまで石で頭を殴られ続けた
「刑事さん、オレで終わりと思わん事だ」
落ち着いた男は裁判で有罪判決を受けた時、
礼を述べながらそう忠告した
刑事は分かっていた
このままではいずれ「破裂」の時を迎えると

ついに大きな事件は起きた
町民の反対を押し切って決定した虐待組織支部の建設
それが完成し虐待組織の支部長や構成員や協力者が
一堂に会してのパーティーの最中
手に松明を持った町民たちが建物へ押し寄せた
「皆殺しだぁ!!!!!」
常々「自分の家族が犠牲になるのは嫌だ」と言い続けた町民たち
危害を加える側に、したり顔で無理解の行政に
自分勝手、根拠がないと切り捨てられたその意見
それは町民たちには「特権階級の支配」「治外法権」と受け取られた
法律も警察も宛てにならない
なら、自分たちで自分たちを守るしかない
準備はひそかに進められた
そしてパーティーの前日
町民の一人の飼いゲルゲが虐待勢に殺されるという事件が発生したことが
町民たちの心のダムを決壊させた
洗面器のプールで庭先で遊ばせていたところを
散々虐待された末に水中に沈められ殺されたのだ
建物が完成すればこれが日常になる
いずれ自分たちも殺される番がくる
なら・・・やられる前にやってしまえ
これ以上犠牲が出る前に潰してしまえ
町の平和を守るのだ、自分たちの手で!!

建物の出入り口は突破され警備は殺された
裏からも表からも怒り狂った町民が押し寄せた
町民の中には、かつての被害者たちも少なくない数いた
虐待組織には、加害者たちが何人か参加していた
両者の邂逅は残虐性に拍車をかけた
「てめぇ!よくもオレの実装石を!!」
「手伝うぜ!どのみちこいつら生かしといちゃならん!!」
窓から逃げ出そうとした虐厨は
外からの手に引きずり出され
殺されてから屋内へ放り込まれた
厨房に逃げた虐厨はオーブンや冷凍庫に叩き込まれ
会場では虐待派が酒瓶を口に突っ込まれ強制的に度数の高い酒を注がれていた
金を出して命乞いをした幹部は札束ごと松明と化した
建物の敷地中が虐殺の地獄絵図と化す
「もういいな!」
灯油のポリタンクから中身が建物のいたるところに注がれ
火がつけられた
翌朝、町民たちが去った時には建物は跡形もなく焼け崩れ
焦げた骨や骸が無残な姿をさらしていた

237続きは地獄で 3/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/12/02(月) 15:54:42 ID:xwxSS.ec0
「もう限界だ・・・」
「鬼」は呟いた
自分たちが法を説いても飼い主たちは利く耳をもう持っていない
「法に従ったのにあの子は殺されてあいつはのうのうと生きてるだろ?」
そう反論されては返す言葉もない
下手をすれば彼らの不満は敵意に変わりこちらへ向く
八方塞がりだった
彼の脳裏には自殺した少女の顔が常にちらついていた
助けられなかった自分を責めた
あの日以来、事件解決だけでなく
未然に防ぐようにも尽力した
しかし、虐待勢の増長はよくなるどころか
日に日に悪化するばかりだ
注意すれば聞く耳持たず、時には逆切れし
事件を起こしても開き直り
被害者に暴言を平気で吐く
今回ついにそれが「破裂」した
町民の誰もがアリバイを持っていて
事件を起こした者は分からずじまい
どこかの推理小説みたいな「全員が犯人」などと言う可能性は
上層部が受け付けるはずもない
第一、刑務所はもうどこもいっぱいだ
「あ、先輩大変です!」
自分の後継にすべく育成している後輩が声をかけてきた
「ニュース見ましたか? 国会で動きがありました!」

政治家のつまらないパフォーマンスなんて見てる暇がないと
言った次の瞬間には無理矢理テレビのある
休憩室まで引きずるように連れてこられた
この強引さは自分にはないものだ
そう感心しつつ一応注意しようと口を開きかけた時・・・
目の前の光景に時間が止まった
昼休みでもないのにかなり人が集まり
誰もがテレビを見ている
『藍悟商会副会長の長女が重症』
藍悟商会、世界で知らない者はいない大企業だ
経済も政治も彼らが仕切っていると言っても過言ではない
「何があったんですか?」
集まりの中に署長を見つけ、刑事は聞いた
「ああ、なんでもゲルゲをプライベートで散歩中に襲撃を受けたらしい」
副会長は会長の息子で、つまり長女は会長の孫にあたる
何年か前に総監の護衛でお供した際に会長が笑みをこぼしながら自慢した
可愛らしい幼い少女が脳裏に浮かんだ
なるほど、猫可愛がりも頷けると初対面の自分でさえ思った
純粋無垢な少女だった
「署長!」
署員の一人が電話を署長に渡した
署員の態度、そして電話に出た署長の態度から
相手が誰なのか刑事は悟った
同時に思った
来るべき時が来た、と

238続きは地獄で 4/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/12/02(月) 15:55:34 ID:xwxSS.ec0
「この馬鹿野郎が!!!」
虐待組織本部ではすぐさま襲撃犯の特定が行われた
頭の軽い虐厨はすぐに見つかった
隠すどころか自慢話を仲間にしていたのだ、簡単である
連れてこられた犯人は総長から鉄拳制裁と怒声を浴びせられた
「なんてことを、なんてことをしてくれた!!!」
「え?たかがアイゴでしょう?何を怒ってんすか?」
意外だという目の前の虐厨を見て
総長は頭を抱えた
いつからこいつらはこうなった?
飼い主持ちの生物の虐待だけでもまずいのに
自分たちを踏みつぶすことがいつでもできる巨象の赤子に手を出す等
ただの自殺だと馬鹿でも分かるはずなのに
「みんなやってることでしょう?」
さらに怒声を上げて反論しようとしたところで
電話が鳴った
電話番号を見て青くなる
藍悟商会の会長、この国を裏から牛耳るドン直々の電話だ
総長は電話に出ることなく
その場にいた構成員へ犯人を警察に突き出すように言うと
行方をくらました
しかし3日後に死体となって発見された
自殺の名所で首を吊った状態で発見されたために自殺と判断されたが
台となるものは周囲にはなく
肉はあちこち削ぎ落されていて
舌も目も歯も抜かれていた
そして判断を下したのは警視庁本部である
反骨者として知られる「鬼」は
本部の判断に従った
いぶかしむ署長に彼は
「もうこれは止められません」と悲し気に言った

ほどなくして「正当防衛強化法案」が成立した
表向きは急増する凶悪犯罪への対策だ
被害者が加害者に対し攻撃を行い
たとえ殺してしまっても減刑あるいは無罪となる
というものだが
賢い人々は何が起きつつあるのか理解した
飼いを殺された報復をしたことで収監されていた人々が
全員「模範囚」の太鼓判を押されて
同時期に釈放されていったことで
頭の鈍い虐厨以外は何が始まったのかを悟った
賢い虐待派はすでに組織から離脱していた
馬鹿を統制できない無能に付き合って心中する義理などない
比較的良心的な虐待派は法案成立を機に離脱、あるいは身を隠した
どれだけ説得を続けても応じないバカに付き合う必要などない
虐厨は単に喜んだ
中には襲われたふりをすればアイゴを殺せると思った者もいた
まだ居残る虐待派は楽観視していた
自分たちには人権がある、アイゴもまたなにもできないだろうと
たかをくくっていた
今の生活をやめたくない、やめられない者もいた
虐待組織には必然的に楽観した者と情勢を読めない者
虐待迫害をやめられない者ばかりが残った
何が起きるかを読んだ上で覆せると考える者もいた
しかし、
彼らは恨みを買いすぎていた

239続きは地獄で 5/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2019/12/02(月) 15:57:42 ID:xwxSS.ec0
「ひゃっは・・・」ザク!!
散歩中の飼いゆっくりと飼い主を襲おうとした虐厨に
通りすがりの女性が頸動脈にナイフを突き立てる
何が起きたか分からぬまま虐厨は血を噴き出して地べたに倒れた
「こんにちは」「あらこんにちは〜、今帰りなの?」
女性は死体へ回収業者の目印になる発信機付きのラベルを張ると
危うく被害者になるところだったご近所さんへ挨拶した
世間話を始める二人を何も映すことはない
虐厨の見開いた目は見ていた

別の場所では虐厨たちが追われていた
相手はスーパーの店員だが、手にしているのは槍だ
すでに3人、彼らによって殺されていた
虐厨たちは虐待する被虐生物の物色に
スーパーのペット待機コーナーへ足を運んだのだが
いつもなら事後対応のはずのスーパーの返答は
武装した店員の出撃だった
「ぐげぇ!」
すぐ隣を走っていた仲間が投げられた槍に胸を貫かれ倒れる
それを見捨てて虐厨は走った
アジトへ逃げ込めば仲間がいる
返り討ちにしても新しい法律が守ってくれる!
彼は確信していた
炎を上げて燃えるアジトと
その周囲で「片づけ」をしている人々を目にするまでは
「あら、スーパーのお兄さんじゃないの〜」
近所のおばちゃんと言った感じの主婦が挨拶をしながら
逃げてきた虐厨の一人の目に催涙スプレーを吹きかける
「これは奥さん、毎度ありがとうございます」
店員たちは挨拶を返しながら追いついた虐厨たちに
止めを刺した

「おが・・・・・・」
庭に掘られた落とし穴で虐厨は串刺しになった
底に竹槍が切っ先を上にして立てられていたのだ
「だ、だずげ、で・・・!」
虐厨は冷たい目で穴から見下ろす
女性に助けを求めた
しかし女性は虐厨が完全に串刺しになり
肛門から口まで竹槍が貫通するのを見届けると
穴を埋めた
かつて被害に遭った彼女の庭には
いくつも同じ仕掛けが用意されている
残った仕掛けの数を数え、
女性は減った数を補うべくスコップを取りに屋内へ戻った

さすがに楽観して残っていた虐待派も
事の重大さを理解し始めていた
報復で殺されても「正当防衛」が成立し無罪
どういうわけか死体すら見つからない構成員も出始めていた
「こいつは犯罪だろ・・・」
「けどよ、法律が守るのは今はアイゴの方だぜ?」
会議は暗い空気の中続いた
結局結論が出ないまま会議は終わり
彼らは行動を変えなかった
そしてまた屍の山が積み上げられる
ここにきて、自分の命惜しさに離脱
あるいは仲間を売って逃げ出す者も出始めた
運悪くかつての被害者、あるいはその関係者と出会った者は
命乞いを聞き入れられずどこかへ引きずって行かれ
二度と顔を見る事はなかった
そして、加害者だった者たちは逃げた先で被害者
あるいは雇われた「駆除業者」によって殺されていった

刑事は今の世の中を複雑な感情で見ていた
あの時、少女を助けられなかった自分は
もしかしたらこうなっていたかもしれない
だから彼は見て見ぬふりをする人々に迎合した
仕方ないのだ
この流れを止めればまたあの少女のような
理不尽な暴力による犠牲者が出る
説得にも応じない害虫は駆除するしかない
人間の味を覚えたケモノを駆除するように

そして
法律施行から半年
虐厨は絶滅した

彼らを見るには地獄を覗く以外に
手段はないだろう

(おわり)

240反暴力不寛容 1/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/01/23(木) 03:26:39 ID:60fnoFpQ0
※虐厨以外も報復を受けます

そこはとある世界
様々なコンテンツがあった
コンテンツを愛する者たちは町を作り
それぞれが好きなコンテンツと共に暮らしていた
平和だった、「虐厨」が現れるまでは
当初こそただの荒らしと見られていた彼らは
次々とコンテンツを破壊し
時には町の住民までも手にかけ略奪を改悪を行っていった
襲われたコンテンツの住民は救援を他の町へ求めたが・・・
「あきらめろ」
「うるさい、これ以上騒ぐならお前らが荒らしだ!」
「いや、こいつらは荒らしだ!!」
虐厨の出身地ですら抗議を門前払いされ
渋々去っていった
その目には憎悪が灯っていたが他の町の者たちの知った事ではない
彼らは自分たちのコンテンツに被害が出ないことが
何より大事だった

その日も救援要請の使者がA町へやってきた
T町というできたばかりの弱小コンテンツは
ひとたまりもなく防戦どころではなかった
「うるさいな!他にも面白いコンテンツはあるだろ!」
繰り返される対応にうんざりしていたA町の町民の一人は
そう口走った
「他にも・・・だと?」
愕然とした顔でT町の使者は問い返す
「そうだ!そんなあっさり潰される弱いジャンルにいたお前らが悪い!
守れなかったお前らが悪い!!」
「ふざけるな!こっちは一方的に襲われ・・・」
「そもそもこっちに関係ない話だろ!持ってくるな気狂い!」
使者はすくっと立ち上がり場を後にした
「悪いことは言わないから、あんなの捨てて他へ移住しろ!」
その背中に別のA町の町民がそう言った
さすがに可哀想に思って声をかけたのだが・・・
その言葉に一瞬だけ振り返った使者の目には
激しい怒りと憎悪があった
町民たちはそれに気づくことなく家に帰った

241反暴力不寛容 2/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/01/23(木) 03:27:16 ID:60fnoFpQ0
「我々は虐待組織へ宣戦を布告する!」
とうとう対虐待厨への戦争が開始された
A町も虐厨の被害を被っていたが
これに参加するかと言うとそうでもない
「参加すべきだ」と言う意見と
「これまで通り無関係を貫くべき」と言う意見
さらに「アイツら全員荒らしだろ?」と言う意見も出て
議論は進まず時間だけが過ぎた
「町長!元T町の使者と言う者が来ました!」
そんなある日の事、来客を町民の一人が報告した
あの後、T町は虐厨に滅ぼされた
町民のどれだけがいま生きているのか、どこに行ったのか
全く把握できていない状態だ
「この町の虐厨を駆除するということです」
町長は慌てて使者がいる場所へ向かった
しかし、町長が報告を受けた頃
別の町民と元T町の使者だった男、そしてその仲間たちが対峙していた
あの時と異なるのは、相手の数は数人どころか百人規模
そして誰もが銃を手にして目には怒りと憎悪を宿していることだ
「何をしに来た? ここには虐待組織なんていないぞ?」
「いや、敵ならいる」
彼らは町民に銃口を向けた
「お、おい、オレを脅したっていないものはいな・・・」
「撃て!」
躊躇なく引き金が引かれ、町民はズタズタになって地面に転がった
それを皮切りに殺戮と破壊は始まった
外を歩いていた町民たちがまず犠牲になった
家には焼夷型の手榴弾が投げ込まれ、逃げ出してきた町民へ
容赦なく鉛玉が浴びせられる

242反暴力不寛容 3/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/01/23(木) 03:28:15 ID:60fnoFpQ0
町長が駆けつけた時には破壊行為はかなり進んでいた
「なんでこんな事をするんだ!?」
町長はリーダー格の元T町の使者だった男へ怒鳴った
「おかしなことを言う奴だな、敵の癖に」
元使者は笑いながら答えた
「我々がいつ敵になったと・・・」
「覚えがないとは言わせねぇ!!あいつらに尻尾振って妨害工作ばかりしやがって!!」
「そうだ!何が非暴力だ!何が相手する奴も悪いだ!!」
「オレのいた町は仲裁を頼んだら武器を取り上げられて一方的に壊されたんだ!死ね!この町は死ね!!」
町長を撃とうとした仲間を手で制し、元使者は言った
「町長さんよ、あのときあんたの仲間は『他所へ行けばいいだろ』って、オレに言ったんだ
ふざけるなよ
それで済むなら救援頼んでまで守ったりしない、
意地や理屈じゃねぇ、大事だから守りたいから戦っていたんだ・・・
なのに、てめぇら・・・」
町長は理解した、自分たちが知らぬうちに相手を卑下し
その心を壊す発言をしていたことを
そして「敵」と認識されるに足る事をしてしまった事を
「・・・こいつはオレが抑える、他をやれ」「分かった」
「ま・・・」
町長を抑え元使者は耳元でささやいた
「見ろよ、オレたちが見たのと同じ光景を
味わえ、オレたちと同じ気持ちを」
命だけは助けてやると言いながら元使者は町長を縄で縛った
耳をふさぐこともできない
破壊音が断末魔が悲鳴が脳に流れ込んでくる
町長は目を閉じようとしたが元使者はそれも許さなかった
無理矢理目を開けさせ瞼をテープで固定した
一時間
たったそれだけの時間で長い年月をかけて作られたA町は壊滅した
コンテンツは無事だったが
また元の町に戻るには相当な年月と費用が掛かるだろう
全てが終わると元使者は町長の縄を解き
仲間を連れて去った
町長は瓦礫と焼け野原、死体しかないA町を呆然と眺めるしかなかった

243反暴力不寛容 4/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/01/23(木) 03:28:52 ID:60fnoFpQ0
それと同時刻
「お前ら、荒らしだぁ!!」
「荒らしの巣を荒らして何が悪い!!」
虐厨の巣となっているY町には
かつてそこから来た虐厨に滅ぼされた町の町民らで構成された部隊が
襲い掛かっていた
「町長がいたぞ!!」「首を撥ねて晒せ!!」
A町の惨劇が「手抜き」と思えるほどの徹底した破壊と殺戮が吹き荒れた
瓦礫すら憎いと言わんばかりに彼らは爆発物を用いてまで徹底的に壊して回る
コンテンツももちろん無事ではない
「これは、オレたちにやらせてくれ!!」
元Y町の町民たちの手でコンテンツは破壊され燃やされた
燃え上がるコンテンツを見て涙を流す彼らを
馬鹿にする者はこの場にはいない
誰もが同じ経験をし同じ気持ちを持ち共有する者たちだった
自らの手で変貌したコンテンツを終わらせるかつてそれを愛した彼らの気持ちは
まるで自分の事であるかのようによくわかった
だから、誰もが涙を流した
自主的に建築材料を探し出して持ってくる者もいた

彼らが去った後、そこはまっさらな地と化していた
そこにコンテンツがあった形跡はない
「コンテンツY、ここに眠る」
という石碑を除いて

(終わり)

244信用と代償 1/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/03/06(金) 02:41:31 ID:ZvzurUQ60
「なんのつも・・・」
「うるせぇ死ね!!」
とある村の近くの山の中
村の依頼を受け派遣された冒険者がいた
村の近辺に出る怪物の退治
というのが依頼内容だ
しかし支払われたのは報酬ではなく刃だった
出没した怪物には「毒」があった
この山に自生するキノコは毒キノコしかない
しかし他に食べる物がないので
怪物はそれを口にする以外なかった
その結果、毒を体内に蓄積していき
今では毒の胞子を放つまでになった
村長たちは勝利したものの毒に犯された冒険者を
見捨てる決断を下したのだ
「怪物と相打ちになった」とギルドに報告した
報酬もそちらへ送り
これでこの件は終わり
と、村人たちは思っていた

「おい、これは明らかに人間の武器の傷だぞ?」
村人たちは知らぬことだが
ギルドの疑心暗鬼は伊達ではなかった
報酬を踏み倒したいがために
冒険者を殺したという事例が相次いだため
犠牲が出た場所には必ず構成員が派遣される習わしができたのだ
村には内緒でひそかに調査隊が結成され
村の近辺に派遣された
万が一見つかっても「別口の依頼」という言い訳も用意してある
調査隊は着いて早速、村人たちが埋めた死体を発見した
「くそ!!!」
調査隊の一人が悔し気に地面に拳を打ち付ける
彼は殺された冒険者を実の妹のように可愛がっていた
戦で家を焼かれ妹を含む家族を殺された過去もあり
その愛情は本当の家族に対するのと大して変わらない
「あいつら、よくも・・・」
「おい、こっち来てくれ!!」
怨嗟を口にしようとした彼は
別の場所に行った仲間の声にすぐさま切り替え
走って向かう
彼らはプロだ
たとえ最愛の人の遺体を前にしても冷静さを失わず
最善手を出すことができる
「うおおおおお!!」
仲間が戦闘中なのを瞬時に判断
敵の数と種類を認識し
弓手である彼は前衛を援護する弓矢を放つ
「ぎゃあああ!!」
一射一殺
長年の経験と鍛錬の為せる業だ
たちまち怪物の群れは全滅した
「助かったぜ、サンキュ」
「気にするな、俺も動いていた方が気が紛れる」
「しかしこいつら、何を目当てに集まっていたんだ?」
「どういうことだ?」
妹分の遺体の見分をしていた彼に
怪物と遭遇戦をした仲間は目にしたことを口にした
怪物たちは一か所に集まっていたのだ
「なにもないぞ?」
「オレが襲われたのはこいつらが振り向いたからだ
ひょっとしたらもう胃袋の中かもしれん」
仲間の魔術師が毒耐性の防御魔術をかけ
怪物の遺体の検分が始まった
「しかし、この怪物もおかしいな・・・見たことがないぞ?」
怪物は目が赤く緑色の植物のようなもので全身を覆われている
人間と似た姿をしているが該当する魔物とはどれも似ても似つかない
考えられる可能性は新種、もしくは・・・・・
「胃袋だけじゃない、臓器も調べるんだ!」

245信用と代償 2/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/03/06(金) 02:42:44 ID:ZvzurUQ60
しばらくして
「村長を出せ」
殺気立った調査隊冒険者一行を前に村人は要求に応じる以外なかった
村は焼け野原だった
不審火ではない
あの一件の後で火事に遭遇したのだ
森から出火し炎は風にあおられて広がった
不運なことに村に到達したときは皆が寝静まった深夜だった
たまたま便所に起きた村人の一人が火を見た時
村の半分の家が炎上していた
生き残ったのは発見者を含め数える程度しかいない
村長はそれをまず口にした
仲間の半数が火事場の片づけに向かう
「あれはボランティアだ、金はいい」
リーダーはそう告げると
その場で本題に入った
「お前ら、これで何人目だ?」
「へ? 何のことで・・・」
「とぼけるな」
リーダーは村長の足元へ袋を投げた
中には「乾燥トウモロコシ」が入っている
あの怪物の胃袋から出てきたものだ
もちろんそれは自然にできた物ではない
人工物だ
さらに言うと、怪物の胃袋からはそれしか見つからなかった
「そ、それが何か?」
「こいつであのバケモノどもを飼っていたんだろう?
それで冒険者や旅人を襲わせて生きていたら自分たちで殺す
ボロい商売だな!」
寝耳に水である
村長は本当に知らない
それもそうだ、これはあの妹分冒険者が携帯していた食料なのだから
あの日、彼女は怪物を見つけられず野宿をした
たまたま用事で森に入った村人の悲鳴を聞いて
慌てて駆けつけたのだ
その時、すぐに戻るつもりで焚火に土をかけ走った
乾燥トウモロコシはその時に落としたのだ
ちなみに火災については、その時の焚火の火が完全に消えておらず
不運にも悪戯好きの小動物がそれをいじったため
酸素を得た火が復活
そこに強風が吹きこんで森に引火したのが真相である
「そ、そんなことは・・・」
「じゃあ、コイツが持ってたこれは何か説明できるか?」
村長の前に一人の縛られた男が転がされる
村の虐待厨の一人だ
そいつが持っていたという袋をリーダーは逆さにして振った
乾燥トウモロコシが落ちる
「わ、ワシは知らな・・・」
「なんだこれは!!!」
否定しようとした村長の声に重なるように
調査隊の仲間の怒声が響く
リーダーともう一人は顔を見合わせると
村長を置いてそこへ向かった

246信用と代償 3/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/03/06(金) 02:44:39 ID:ZvzurUQ60
「なんでこれがここにある!!
これは俺があいつの誕生日に作ってやった金細工だぞ!!」
怒声の主はあの冒険者の兄貴分だった
妹分の遺品が家の焼け跡の金庫から見つかったのだ
怒りも無理はない
「こいつについても説明しろ!!」
もう一人の方は大量の「金バッジ」の入った耐火箱を持ってきた
焼け跡の家は「虐厨」のものだ
村長は「他人の飼いへの手出し」は禁じていたが
そいつらは勝手に外へ出て散歩中の「アイゴ」を襲っていた
彼らが怒って抗議しに来ても
村長は知らぬ存ぜぬ、しまいには村人の数の暴力で押し切った
虐厨たちは村長に都合のいい理由ばかり作るのは得意だったため
村長もそれを疑いもせず鵜呑みにした
ちなみに家の主は火災で死亡しているため、
真相を語る者はこの世にはいない
当たり前だが、ギルドにそれが届かぬはずもない
調査隊はついでだからとその件もギルドから情報として得ていた
「抗議に行った村人が行方不明になった」件も含めて
しかし彼らは当初「どこかを拠点にしている盗賊」の仕業とばかり思っていた
だからいつも通り戦闘主体の冒険者で構成した部隊を派遣した
ところが、すぐ見つかるはずの「盗賊団」は一向に見当たらない
さすがにおかしいと彼らは思った
「探しても見つからないわけだ、村人が犯人ではな」
駆けつけたリーダーたちはそこにある品物を見ながら頷いた
その時、仲間の魔術師が虐厨村人に麻痺の術をかけて転がすと
そいつの家だった炭の山から持ち出した水筒をリーダーに渡した
「こいつは、『薬』だ! こいつらがアレをやったんだ・・・」
「外道が・・・!」
怪物の正体は、人間だった
厳密には「元人間」だ
彼らは元々は抗議に来た人々の成れの果てである
村長のおかげで助かってはいるものの、
中には「王都に行って洗いざらいぶちまけてやる!」と捨て台詞を残した者もいた
村長はともかく真実を知る犯人=虐厨は慌てた
調べればすぐに分かる、王都に行かれて調査隊を派遣されたらまずい
虐厨たちは相談の末、死霊術の知識のある仲間に毒薬を作ってもらった
「毒が検出されない毒」は、しかし素人が作ったこともあり
「飲んだ人間を怪物にする薬」になってしまっていた
抗議集団を襲撃し無理やり飲ませた結果生まれた怪物たち
怪物が澱粉を好むことに気付いた彼らはこっそり餌付けして飼うことにした
もちろん村長はそんなことは知らない
だから討伐依頼を出したのだ
冒険者を殺したのは隠蔽ではなく保身であった
だが、そんなことは調査隊には知る由もない
リーダーは追いついてきた村長を殴り飛ばすと
「ここの連中を全員捕縛だ!!」
仲間へ指示を出した
数の暴力はあの火事のせいでもうできない
ただ、調査隊は誰もがプロである
倍の数の盗賊団や巨竜とも死闘を演じた経験者たちだ
たとえ村人が健在でも結果は同じだっただろう
かくて火災の生存者は全員捕まりギルドのある街に送られた
派遣された冒険者の殺害に盗賊まがいの窃盗と強盗殺人
それに人間を怪物化して森に放った上に
それを餌で飼いならし人を襲わせるというネクロマンサー顔負けの所業
これが調査隊のまとめたレポートだ

247信用と代償 4/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/03/06(金) 02:45:28 ID:ZvzurUQ60
調査隊に捕えられた生き残りたちは「おしまいだ」と思った
しかし本当の地獄はここからだった
「てめぇらか!!あの子をなぶり殺したってのは!!?」
「あんないい子をなんで・・・この人でなし!」
「返せよ!メドおねぇちゃんを返せよ!!」
街にはすでに事の顛末が届いており
村長一行は恨みの声と石をもって歓迎を受けた
彼らが殺した少女冒険者が街で人気の新人だったこともあり
その怒りは彼らの想像を絶した
老若男女問わず、彼らに石を投げ唾を吐かぬ者はいない
取り調べでも人権への配慮は最低限
牢屋での食事は古いパンと井戸の生水のみ
連日の過酷な取り調べとストレス、劣悪な環境で
見せしめの死刑が決定し処刑台が作られる頃には
生き残りは半数に減っていた
生き残りの中には村長もいた

・派遣された冒険者の殺害と遺体損壊
・度重なる盗賊行為
・人間の危険生物化
・その危険生物の飼育
・その危険生物を利用した窃盗及び殺人の数々
・村ぐるみでの隠ぺい工作

王都にこれが届いたときは誰もが目を疑ったが
火災現場から発見された証拠の数々に
報告書は真実であると結論された
後日調査で王都の調査騎士団が
村の周辺で埋められた人骨や
旅人の遺品や金細工、さらに盗品を扱うマーケットの領収書などを
発見したことが決定打となった

村長は処刑台に引っ張ってこられるまで知らぬ存ぜぬを叫んだが
信じる者はいない
それどころか発言を「自己保身」とみなされた
最初こそ「見苦しい」「黙れ」を繰り返したギルドの長だが
いつまでもわめき続ける村長に閉口した
「たかが新米一人殺した程度でこんなのあんまりだ」と口にされた時
長は計画の変更を決めた
「分かった、お前だけ別にしてやる、お前だけ、な」
村長はほっと息を吐いた
「後は予定通りに頼む」
しかし助かったのが自分だけと言う事に気付いて処刑台を振り返った
「クソ村長!」「ひとでなしいいいい!!!」
処刑方法は「石打ち」
村人たちは絶命するまで村長へ怨嗟を浴びせ続けた
「アイツらと引き換えに延命された気分はどうだ、え?」
「延命」と言う言葉に村長はギルドの長を見る
「お前を助けるなどと、一言も言っていない
第一、主犯格の貴様を逃がせばあの子は浮かばれん!」
ギルドのマスコット的な少女を長もまた愛していた
それを殺した者への憎悪、推して知るべしだ
村長が絶望を感じたところで
ギルドの者たちが自分を台に固定し始めたことに村長は気づいた
「な、なにをする気じゃ?」
「お前は言いたいことがあるようだから
みんなに言ってみてもらおうと思ってな、一人ずつだ」

248信用と代償 5/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/03/06(金) 02:46:40 ID:ZvzurUQ60
長が言う間に冒険者たちは刃物を用意し
「人体の急所」という図表を設置し始めた
「みんな〜、一応治癒の魔術師はいるがここは狙わんようにな〜」
良く通る声で解説役の冒険者が呼びかける
村長は彼らが己に何をさせるつもりなのかを悟った
街の住人が冒険者の誘導で一列に並ぶ
最初の一人は、初老の男だ
「あの子の痛み苦しみを味わえ!!」
次は恰幅のいいおかみさん
「地獄へ落ちろ!!」
その次は幼い少女でこれは冒険者が隣から手伝った
「メドおねぇちゃんのかたき!!」
次はスラム街の少年、次は兵士
中には明らかに貴族らしき男もいた
住人一人一人が村長へ憎しみの刃を突き立てていった
村長はもう悲鳴しか出せない
出血量が限界に達すれば魔術で造血され
失神しても電撃で起こされた
傷が致命的になれば即座に治癒の魔術がかけられ
水分や栄養剤まで血管から入れられる
ひたすら「死なせない」ためだけの処置が手間暇かけて施行された
貧民も金持ちも平民も貴族もない
ただただ一人の少女を殺した主犯格への憎悪だけがそこにあった
少女も村長も知らぬことだが
かつて、この地を魔王が襲った
少女の両親はまだ若者だったギルドの長に赤ん坊だった娘を託し
相討ちの形で魔王を仕留めた
この町は少女の両親の犠牲の上にあると言っても過言ではない
しかしそれを幼い彼女に告げるのは酷だ
このことはギルドの長と国王を含むわずかな人々のみに共有され
少女はそれを知らずに育った
彼女が真実を受け入れられるようになったら話すつもりだった
しかしもう、その機会は永遠に来ない
ただ叫ぶだけの、この醜い怪物のために
「!あなたは・・・」「私の分も頼む・・・」
ギルドの長が畏まった初老の男は腰の剣を抜いた
「貴様が我が国の民にいるなど、反吐が出るわ・・・」
初老の男は村長の両手足の健を切断すると剣の血を拭いた布を
村長の口へ詰め込んだ
「なるべく長く生かせ、できるだけ殺すな!」
「はっ!」
列にいた明確に騎士と分かる全身甲冑の人物が初老の男の命令にきびきびと答える
これだけでこの人物が誰なのかはその場にいた人々に知れた
どこからか「王様万歳!」の声が響いた

「皆に愛されし天使、ここに眠る」
街には少女の遺体が納められた棺の上に銅像が建てられた
生前の彼女の肖像画を記憶を頼りに絵画師が描き
それを基に像の職人たちが総出で作った
「報酬はいい、金があるならあの子の供養に使ってくれ」
彼らはそう言ってギルドや国からの報酬を断った

ちなみに村長は7日ほど生き続けたが
8日目に寿命で死んだ
遺体は燃やされ川に流され、その名は「悪魔すら嫌う極悪人」の代名詞として
語り継がれることになったという

(おわり)

249名無しの拷問官:2020/03/31(火) 23:03:08 ID:7HzA6HCY0
みっちんのこと知ってるならみっちんもやっつけて欲しい
あいつまだツルポスレに居るようだし

250名無しの拷問官:2020/04/17(金) 00:50:19 ID:kfjLimsI0
ツルポスレと言えば
対ミチ豚用AA大量に作ったけど
結局使わなかったな

251名無しの拷問官:2020/04/17(金) 20:24:37 ID:vWZv7nd20
>>250
ここで貼るのもいいと思う

252命の許可証 1/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/05/01(金) 00:31:57 ID:VDh4WGBE0
ぼろぼろの布をまとった者たちの列が並ぶ
彼らは人ではない「虐厨」と呼ばれる種族だ
それを見張るのは自動小銃で武装した全身を特殊部隊の装備で固めた人々
ここは、かつて虐厨の暴虐が吹き荒れた場の一つだ
元々は心ある人間たちが居場所を荒らされ生きる余地すらなくなった
キャラクター達を保護するために作った保護区的な場所だった
しかし、今では区画ごとに壁で仕切られ警備兵たちがあちこちを闊歩している
さながら厳戒態勢の戦時下の街の様相になっている
区画の行き来は自由にできる
ただし虐厨を除いて
虐厨の虐平は「虐待許可証」を警備兵に掲示した
「通ってよし!」
虐平は声を出さず会釈だけをしてそこを通り過ぎる
ここで騒ぎを起こす馬鹿は・・・
「ゆっくり発見!ひゃ・・・」ターン・・・
たった今、この「ゆっくり区画」で「ゆっくり虐待」をしようとした虐厨のようになる
あちこちにあるカメラがゆっくりたちを見守っており
トラブルの解決や今のような虐厨の襲撃に対処していた
声を出さなくても武器を持たなくても
ただ一定距離に近づいただけで警告を発する
虐厨にではなく、近辺にいる警備兵に
「てめーのせいでカメラさんに怒られたじゃねーかよ!!」
呼び出された警備兵は頭を砕かれ動かなくなった虐厨へ蹴りを入れた
そこへドローンがやってきて虐厨の死体を回収する
死体は墓には入れられずただゴミとして燃やされ処分される決まりだ

虐平は「AA区画」へとやってきた
知人で友人の虐造に会うためだ
虐造は「虐厨団地」という、虐厨が唯一居住を許される場所にいる
虐厨の行動は制限されていた
公園や民間施設の使用は禁止
公的施設も「虐厨収容所」「虐厨労役施設」等を含むごくわずかしか許されない
目的もなく散歩するような馬鹿はいない
「この野郎!!オレの家の前をうろつくんじゃねぇ!!」
虐平は家から飛び出してきた中年男性に
悲鳴も上げることなく目の前で殴り倒された同胞を助けず
そっと立ち去る
動かなくなった虐厨はドローンがやってきて回収していった
「虐待許可証」の効果である
かつての「虐待委員会の所属」「あらゆる被虐生物とその飼い主の虐待が許される」といった意味合いは
それには今はない
「この者は生存を許された虐厨である」「だが自由にコイツを虐待しても良い」という意味合いが
代わりにあった
隠すことは許されない
衣服の胸に付けるか、紐を付けて首から下げるかして
常に見える場所に掲示しておくことが義務付けられている
逆を言えば、これを持たない虐厨、これを隠している虐厨には生存権はない
即座に警備兵に射殺されるのだ

253命の許可証 2/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/05/01(金) 00:32:51 ID:VDh4WGBE0
虐平は団地を訪ねたものの、知人はいなかった
「虐厨レストランにいる」と団地の住人から聞き
虐平はそこへ向かった
「虐厨レストラン」は唯一と言ってもいい虐厨たちの息抜きの場だ
大画面のテレビもあるしゲームコーナーもある
食事もできるしメニューもかつて虐厨たちの全盛期に人気だったものが
今も維持されていた
ただし食材は被虐生物を虐待して得た素材ではない
食感や味をできるだけ近くしただけのもので素材も科学的に合成された人工物だ
そもそも今は「被虐生物」などいない
彼らはキャラクターとして権利を得て各区画で住人となり平和に暮らしている
絶滅したものはその再生・復興が促進されていた

「虐厨レストラン」のすぐ前に虐平はやってきた
その目の前に数人の人影が現れる
「炊き出しはこっちだよ」
ぼろぼろのAA「でぃ」を優しく警備兵の一隊が案内していた
警備兵の一人は虐平を見つけると即座に駆け寄る
首から下げられた「許可証」を見ると
「あっち行け」と言わんばかりにしっしっと手を振った
虐平は卑屈に頭を下げて一行から離れる
一行が見えなくなるまで頭を下げた後で
レストランの中に入ろうとした、その時
入れ違いに虐厨が中から飛び出した
「よせバカヤロウ!!」「やめてくれえええええええ!!!」
他の虐厨の悲痛な叫びが遅れて飛び出してきた
虐平はレストランに入るのをやめると
今来た道を引き返した
彼に続けとばかりにさらに複数の虐厨が飛び出て走り出す
一刻も早く団地に逃げ込まなければならないからだ

254命の許可証 3/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/05/01(金) 00:35:03 ID:VDh4WGBE0
「おうおう、ボロいでぃのくせに良いもん食ってんじゃねーか!」
警備兵が目に入らないかのように
先ほどレストランから飛び出した虐厨は
炊き出しの場にずかずかと入る
整理用のロープをまたぎ怒鳴る警備兵を無視して
でぃたちへ近づいた
彼の思いはただ一つ
「でぃからメシを奪い自分と仲間で食べること」だった
ついでに、でぃも虐待できればいい
そんなことをすればどうなるか分からない虐厨は賢い部類だった
彼は賢くない
「許可証」の意味も「これを身に着けてる奴は絶対に殺されない」と
勘違いして認識していた
大きな声で計画を話した彼を殴ってでも止めようとした同胞を
彼は軽蔑していた
アイゴが怖くて虐厨が務まるか!
そして、でぃの列まであと一歩のところで
強い力で襟首をつかまれて彼の体は宙を舞った
うつ伏せに地面に落ちたところをさらに上からのしかかられて
完全に動きを封じられる
文句を言おうと顔を上げたところで
硬い何かが後頭部に押し付けられていることに気づいた
それがハンドガンだと認識する事は永遠になかった
「虐厨が暴動を起こしました!実行犯は射殺しましたが・・・」
「でぃさんたちを守れ!!ケガ一つさせるな!!」
たった一人の馬鹿な虐厨が引き起こした騒ぎは
区画中に及んだ
こういう時のマニュアルはすでにできていた
『虐厨は暴力が好きだが基本的に憶病な小心者だ
仲間で固まって動くことはできても
一人で向かってくることはまずない
だから、一人が行動を起こせばその後ろに多数の味方がいる
よって、一網打尽にすべし』
警備兵たちの行動は早かった
区画内の全員をキャラクターの護衛と
虐厨への対応の二つに分ける
「護衛任務」を割り当てられた警備兵はキャラクターたちへ
懇切丁寧に説明し避難所へ行くか
自宅へ戻るかを任意でしてもらう
もちろん行く道は付きっきりで警護に当たり
虐厨に出くわしたら即射殺して身を盾にしてでも「死守」した

255命の許可証 4/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/05/01(金) 00:35:55 ID:VDh4WGBE0
そして、「対応任務」を割り当てられた警備兵は・・・
「やめてくれ!俺たちは関係な・・・」
「やだああああああ!死ぬのはいやだあああああああ!!!」
「虐厨の駆除」が主な仕事になる
文字通りの「駆逐」だ、許可証の有無は関係ない
屋内だろうと屋外だろうと区別はない
たとえ許可された公的施設、例えば「虐厨レストラン」の中だろうと関係ない
「虐厨はすべて駆逐すべし、一匹でも残せばそいつが『指導者』になる」
これは警備兵の学校の教科書に記されている事だ
それもテキストの最初の方にである
駆除の手段は問われない
仲間の警備兵や区画内の住人を巻き込むものでさえなければ
手榴弾などの爆発物や火炎放射器の使用も許された
虐造も死んだ
レストランの中でトイレに行っている間に騒ぎが起き
突入してきた警備兵に射殺されたのだ
彼が自分が殺される理由を知ることは永遠にない

虐平は団地の中に駆け込むと虐造の使っていた部屋に飛び込んだ
虐厨団地に鍵などない
唯一鍵があるのは出入り口の鉄の門のみだ
それも朝7時に開錠され夕方5時には施錠される
人の手によってではなくタイマーで管理されていた
たとえ団地内で虐厨による金の奪い合いが起きたとしても
すべて黙認されている
ただし、部屋の占有が認められているわけではない
決まった部屋を私有するのではなく
団地内にある部屋に勝手に寝泊まりするだけだ
だから一人で同じ部屋をずっと使い続けていた虐造は
レアケースと言える
ここにいる利点はもう一つある
「おい、ここに何匹か逃げ込んだぞ?」
「やめとけ、こんな汚らわしい場所ドローンさんも嫌がるぜ?」
虐厨が「許可証」の有無を問わず唯一その生存を保証された居場所なのだ
風呂場はなくトイレも穴が掘られているだけ、電気ガス水道もないが
「ここなら生きていても許される」というメリットがあった
虐厨を毛嫌いする警備兵は「汚染物質の掃き溜め」には足を踏み込もうとはしない
ただし完全に安全かと言うとそうでもない
「暴動の首謀者」が団地にいると判断されれば
警備兵の基地に連絡が行き、遠隔操作で団地は破壊される仕組みになっている
壊された団地はまた新しく作り直される
利点が多いためそこの虐厨がいなくなったとしても
またどこからか虐厨が来て住み込むから、住人がいなくなることはない
虐平は部屋の中で震えながら祈った
彼を含むこの団地の虐厨が生きる道は
「首謀者は団地には居ない」という判断が為される事だけだ
それも、ほんの少しでも疑いがあれば即座に破壊処分が下る
かといって、今すぐ団地の外に飛び出すのは死を意味した
あちこちにカメラが存在しドローンが飛び交い
警備兵が闊歩する中で見つかることなく済ますのは不可能だ
そして先ほどの騒ぎで命令を受けた警備兵は
虐厨を見つけ次第殺すだろう

256命の許可証 5/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/05/01(金) 00:36:36 ID:VDh4WGBE0
虐平は朝日を顔に浴びて自分が生きていることを知った
どうやら破壊命令は下されなかったらしい
虐平は安堵すると同時に虐造の死を認識した
団地の外にいた虐造が生きているとは思えなかった
彼ら虐厨に定住の場所はない
区画から区画へと移動し続け
労役を得て日々の糧を得るかゴミを漁るかが
唯一の生きる道だった
どうしてこんな時代になってしまったのか
虐造はどうして死ななければならなかったのか
虐平は疑問に思った

その疑問の答えを知る者たちはすでに
この世にはいない

愚かな先達の引き起こした大きな罪を
彼ら虐厨は種族の存続する限り
ずっと背負い続けることになる

(おわり)

257首もぎさん ◆Qxml1xnbnw:2020/05/01(金) 00:38:23 ID:VDh4WGBE0
>>249 >>250 >>251
OKですよ
詳細は「管理スレ」にて

258生きる資格 1/5  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/06/17(水) 00:33:29 ID:bk7JUhXE0
※「命の許可証」と同じ世界です

虐一は「虐厨」である
だから、生きるために「許可証」を貰わなければならない
何故なら、彼の生きる場はこの前の争いで「陥落」したからだ
ここは元々はあまり名の知れないジャンルの場だった
だからこそ目をつけて侵攻した
周囲に工作し助けられないようにした
対話は相手を激怒させることで論破されることをしのぎ
相手こそが悪いという風潮を植えて回った
論破に告ぐ論破、勝利の積み重ねで虐厨は増長していった
しかし、相手が「変貌」して戻ってきた時
状況は一変した
今までの煽りも効かず、脅しも効かず
周囲に触れて回ろうとしたところ、その周囲がすでに壊滅させられていた
「お前らの友達はもういないぞ?」
血まみれのナタを雑巾で拭く
温厚な羊と蔑み無力な兎と鼻で笑ったはずの相手がそこにいた
そしてついに完全に包囲された時、一人も逃がす意思はないと知った時
相手が今までの「アイゴ」ではないことにやっと気づいた
自分たちの作った環境、自分たちが住みやすい相手をいたぶるための環境
それが相手をも例外なく変えてしまったのだと
思い知った時は手遅れだった
降伏した虐厨以外は全員殺された
虐厨への賛同者や騒ぎを嫌い一時的に協力した日和見たちも同様だった
「勝手にレッテルを張るな」という非難は届かず
代わりに銃口が向けられ引き金が引かれた
「敵の味方は敵」
そんなスローガンがあちこちで唱えられ
街には完全武装の警部兵があふれた

259生きる資格 2/5  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/06/17(水) 00:36:26 ID:bk7JUhXE0
「次!」
虐一たちは列に並んで順番を待っていた
「許可証」を配る列だ
「虐待許可証」と「アイゴ」たちは言っていた
「はい、ここまで、キミらはこっちな」
ちょうど虐一の背後で「アイゴ」の警備兵がロープを張り
虐厨の団体を前後二つに分けた
虐一の後ろの団体は別の場所へ誘導されていく
虐一はそっちも気になったが警備兵に小突かれて
誘導されるがまま目の前の施設へと入った

施設の中は廊下がありそこに大きなテレビが置いてあった
「待つ間の退屈しのぎかな?」
誰かがつぶやいた
次の瞬間、暗かった画面が明るくなり映像が映る
そこに先ほどの後続集団が映っていた
音声は届いていないが様子からかなり慌てて奥へ走っていることがわかる
しかしそこは壁で行き止まりだ
何があるのか手前側をひどく気にしている
怯えているようにも見えた
次の瞬間、何におびえていたのかという疑問は氷解した
手前側から巨大な鉄板を装備した重機が奥へ向かって動いてきた
それは地面を削りながら虐厨たちを奥の壁へと押し付ける
やがて、重機は止まった
その時には重機の先端の巨大な鉄板と壁の厚みは
ほぼゼロだ
「うええええええ」
誰かが嘔吐した
虐一は、あと一歩遅ければ自分もああなっていたことを思い知り
呆然とした
「こっちだ、さっさとしろ!」
警備兵の怒鳴り声に我に返った一行は
警備兵の誘導に従って
いつの間にか開いていたドアに入った

260生きる資格 3/5  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/06/17(水) 00:40:00 ID:bk7JUhXE0
「おめでとう!貴様らは第一の試験に合格だ!!」
警備兵の隊長らしき人物は壇上に立ち称賛を述べた
「だがこれで終わりではない!
第二第三の試験を突破し初めて資格を得られる!
その後の最終試験に合格した者のみ許可証を与えられるのだ!!」
パン! 唐突に銃声が室内に響いた
「どうした?」
「すいません、こいつ居眠りしてました」
隊長に理由を説明した兵士は射殺した虐厨を引きずって外へ出て行き
また戻ってきた
「さて、諸君らの立場はこれで分かっただろう?
ここから生きて出るには許可証を手にせねばならん!
だが安心したまえ、許可証は人数分きちんとある!
ようは貴様らが合格すればいいだけの話だ!」
隊長は言い切った後で背を見せた
「これだったか?」
「隊長、それです、そう、そこを押して・・・」
部下らしき兵士が何やら操作説明をしている
スクリーンが下りて来た
「では第二の試験だ!
と言っても映像学習だから簡単だ!赤ん坊でもできる!!
ただこの映像をじっくり見ていればそれでいい!
それだけだ!!」
そう言い終わると隊長は部屋から出て行った
代わりにライフルを持った兵士が入ってくる
「な〜んだ」「簡単だぜ!」「次の試験は難しいかも・・・」
空気は弛緩したが虐一は嫌な予感を覚えていた
代わりに入って来た警備兵の持つライフルには
暗視機能付きのスコープと照準機器が取り付けられている
明らかに夜間対応済みのスナイパーライフルだ
そして銃口にはサイレンサーが取り付けられている
どうしてそんなものが必要なのか・・・?

虐一の予感は的中した
スクリーンの映像タイトルは「悲劇の歴史」
アスキーアートのキャラクター時代から今に至るまでの
数々の虐厨たちやそのシンパによる暴虐や
ジャンルの復興への妨害活動をアニメーションにしたものだ
「嘘っぱちじゃねーか」「アイゴざまぁw」「楽しかったな〜w」
そんな声が聞こえるたびにライフルの兵士は銃を構え
引き金を引く
その動作を繰り返した
サイレンサーがあるから銃声は聞こえない
部屋が暗いから、声を出した奴が黙っても
どうなったか分からない
虐一は声も出さずただただ映像を夢中で見た
この仕草こそが自分がここから生きて出るためのものだと
彼は確信していた
その確信は正しかった
「うわぁ!!?」
映像が終わり部屋の明かりが付けられると
虐厨の半数が頭を吹き飛ばされていた
「ご苦労!ほぉ、半分残ったか・・・今回は多いな?」
入ってきた隊長はライフル兵士を労いながら
虐厨たちを見て感心したようにつぶやいた
「生きている貴様らは合格だ!!
次の試験会場に移動するぞ!!」

261生きる資格 4/5  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/06/17(水) 00:41:21 ID:bk7JUhXE0
虐一たちは青い顔で部屋を出て行った
次の会場はすぐ隣の部屋だった
鉛筆と消しゴムと紙がそこにあった
紙には「テスト」と書かれている
「第三試験は簡単なテストだ!
字が書けない者もいるだろうから選択式にしてある!
内容はきちんと道徳を学んだ者なら
満点も楽勝な程度だ!」

問い:このピンクの猫のキャラクターの名前を答えよ
問い:迷子の飼いゆっくりを見かけたらどうするべきか?
問い:セヤナーとは?

時折「ヒャッハー!」と言う声が聞こえたが
今度は兵士は何も言わない
虐一はその沈黙が不気味に感じた
まるで罠にかかる獲物を見つめる狩人のような
そんな目で見られている
虐一は賢い方だった
だからこれが本当に単純なテストだと分かった
ただし、「悪い虐厨」を炙り出すには効果的な問題ばかりを
羅列したものだとも
「さて、終わった者は手を挙げろ!
その場で兵士が採点する!
指示があるまで決して動くな!」
すると、兵士の一人が空席の机の紙を持って
隊長のところに駆け寄った
「え? 古すぎて知らない? 
そうか、もうそんなに時間が経ったか・・・
仕方ない、この問題とこの問題は全員正解でいいぞ」
虐一も全部を埋め終えて手を挙げた
兵士が来て紙を取り、採点をしていく
「お前はこっちだ」
やがて、兵士に連れられて部屋から連れ出される虐厨が
ちらほらと出始めた
この部屋に入った虐厨の1/3がその場に残った
虐一もその一人だ
「ほぉ、今回は結構残るな・・・?
まぁいいか」
隊長が意味深につぶやいた
「ぎゃあああああああ!!?」
連続する銃声と断末魔が部屋の外から響いてきた
廊下とは反対側の、窓の外からだ
「よし、貴様らは合格だ!!
虐待許可証を得る資格をたった今得たのだ!
誇りに思え!
それでは最終試験会場へ向かうぞ!!」

262生きる資格 5/5  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/06/17(水) 00:42:14 ID:bk7JUhXE0
残った虐厨は完全に合格ムードだった
数多くの虐厨が殺されたのに
弛緩しきっていた
虐一は逆だった
恐らく一番最後に何かあるのではないかと思っていた
「試験会場はあっちだ、さぁもう行け!」
広場の向こうにプレハブ小屋があった
その間にはキャラクターを模したぬいぐるみと
警備兵たちが点在している
「あ〜、終わった終わった!」
隊長は伸びをしてドアを閉めた
鍵がかかる音がする
後ろはそのドア以外に出入り口はない
高い壁だ
つまり前進以外に道はない
「やったぞ!」「オレが先だ!!」
虐一を置いて虐厨たちが走り出す
虐一はゆっくりと歩き始めた
絶対になにかある
彼はそう予感していた
ターン!
銃声がした
虐厨が一人倒れる
「どうした?」「こいつ、しぃを蹴飛ばそうとしてたぞ」
しぃはこの場にいない
倒れた虐厨の傍には「しぃのぬいぐるみ」があった
また銃声がした
ぬいぐるみが一列に並ぶ先の車両
そこで兵士が料理を作っていた
虐厨はその手前の警備の兵士の足元で頭を半分砕かれ事切れている
これが最終試験だと悟り虐一は脇目もふらずに前進した
ぬいぐるみから離れ、警備兵には黙って一礼して道を譲り
あるいは自分から避け
ただ「トラブルを起こさないように」進んだ

「よく来たな!・・・ふむ、今回はずいぶん多いな?」
兵士に案内されて虐一は写真を撮られる
指紋も口の中の細胞も取られて
しばらく待合室で待たされ
許可証を手渡しされた
ここに来た虐厨は、虐一を含めわずか5人だ
虐一は許可証を裏返した
「この許可証を持つ者はその生存を許可された者である」
「ただしその生存権は罪を犯したときに剥奪される」
「また、この者に住民が危害を加える場合はその限りではない」
「分かったな?」
いつの間にか来ていた兵士が背後から虐一へ声をかけた
虐一はコクコクと頷いた
兵士は「よし!」と満足げに頷いて入ってきたのと反対側のドアを開けた

虐一ら5人は外へ出た
つい昨日とは変わってしまったが
見慣れた街並みがそこにあった
「今回は多いな」「ああ、全滅するのも珍しくないのにな」
兵士たちの声が背後から聞こえた
とりあえず寝よう、ひどく疲れた
虐一たちは自宅へ帰ろうとばらばらに散った

彼らが
虐厨の住まいが「虐厨団地」以外にないこと
今まで住んでいた自宅は取り壊され
私財や私物、同居人はすでに処分されていたことを知るのは
自宅の跡地に辿り着いた後の事である
(おわり)

263招かれた「例外」 1/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/08/05(水) 03:13:04 ID:mnK5nZ8Q0
※「命の許可証」「生きる資格」と同じ世界です

虐厨が大暴れした過去がある世界
現在では彼らはあらゆる権利を剥奪され
細々と生きていた
かつて彼らの発行していた「虐待許可証」は
彼らの生存権を唯一証明する証となった
逆に「ヒギャクセイブツ」と認定され迫害された種族は
その保全や復活・再生が推し進められた
その中にAA等の人間と大差ない知能や文明を持つ種族がおり
彼らは「人間とは別の進化をたどった知的生命体」と認定された
同時に虐厨の罪に「理不尽な人種差別迫害、虐殺の罪」が加わることになった
虐厨は大人しく生きる以外にないが、頭のおかしい個体はいつでも存在する
それがいつまでもなくならないのが「虐厨」の「虐厨」たる所以だろう
だから居住地を遠隔操作でも破壊可能な「虐厨団地」にのみ限定するといった
人々とその他の種族との隔離処置が徹底して行われた
逆に言えば
それさえ守れば虐厨たちの生存権は、ほぼ保証されていた
「虐厨団地」に足を踏み入れたい警備兵は皆無で
虐厨の始末にも回収ドローンの出動や書類作成などの手間があった
たかが紙切れ一枚でも手間は手間だと思うのが人間だ
虐待や殺害が市民に許可されてはいても
それを行うのは「手間」を惜しまない者だけだ
だから、大人しくさえしていれば
余程の事さえなければ虐厨は安泰だった
飢えすぎて犯罪に走られないように生ごみなどのゴミ捨て場は
虐厨の出入りは許可されていたし
労働してお金を稼ぐ施設も娯楽施設もあった
「生かさず殺さず飼い殺し」が彼らの扱いに置いて至上とされた

しかし、「例外」はある

「いやあああああああ!!!」
ここは人間が住む町
カフェスペースで処女の悲鳴が響いた
「どうしました!!?」
即座に警備兵が駆けつける
彼らの視界に映ったのは
お店のサービスで用意されていた共存生命体用のプール
その中で力なく浮かぶ「イチゲルゲ」という共存生命体
そして、その前で泣き叫ぶ少女だった
数分しないうち、町の出入り口は閉鎖された
しかしこれを過剰に重大視した虐厨はこの時点で皆無だった
事件を起こした虐厨と運の悪い虐厨たちが
処分されて終わり
だから「虐厨団地」にいる者は外出を控え
外の虐厨は犯人がいないことを祈りながら団地へ急いだ
少なくとも犯人やその一味がいなければ
「団地の爆破処理」はされない
それが知れ渡っているルールであり虐厨たちの命綱だった

この時までは

264招かれた「例外」 2/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/08/05(水) 03:13:42 ID:mnK5nZ8Q0
ここは警備兵の本部
「イチゲルゲが行方不明だと連絡が・・・これで10件目です!」
「こっちは実装石5家族だ!」
「数が多すぎる、それに複数の地区で同時にだと・・・?」
「こいつは組織だった犯行だ・・・」
虐厨のこういった団体行動は初期では珍しくなかった
しかし「皆殺し」という結末に落ち着くことが100%であることを
警備兵たちが行動をもって周知した結果
まったくと言っていいほどなくなった
第一に、虐厨たちには通信手段などない
ネットの利用は制限され区画や町をまたいだ交信も厳しく禁じられていた
だから複数の町で同時になど、まずありえない
「何か抜け道があるはずだ・・・」
「!おい、スマホの落とし物の情報があっただろう」
「ああ・・・!まさか・・・!?」
「いや、それなら辻褄が合うぞ・・・パスワードロックがないスマホなら・・・」
スマホの落し物は珍しくない
見つからないこともあり、それほど気にも留められていない
だがしかし、もしも虐厨たちがスマホを拾って使ったとしたら・・・?
すでにスマホが普及して長い年月が経っていた
虐厨たちの手に渡っていても不思議ではない
電波はあちこちに行き届いている
さらにプライバシーの問題で交信内容はメールを含めて極秘扱いだ
だから警備兵の目の届かないところで使えば
相手もスマホを持っていさえすれば交信は可能である
「・・・あ、隊長これ・・・」
「どうした?・・・・・・・・・は?」
「なになに・・・え?」
隊員の一人が自分のスマホで「調べもの」をしたことで
事件は一気に解決に向かうことになった
「虐待実行隊集会」という名前のSNSの集会があり
それはだれでも閲覧が可能であり
会話内容は完全に筒抜けだった
「・・・あほだな」
その一方で事件が起きた町では虐厨たちがてんやわんやしていた
事件を知って誰もが生き延びる策を模索していた
早く犯人を捕まえなければ
たとえ虐厨団地に逃げ込んだとしても諸共爆破されてしまう
事件の起きた町に加えて隣接する町も閉鎖されたが
こちらでは虐厨たちは団地にこもって震えるしかない
事件が起きた町の同胞を信じて待つしかない
「てめぇかぁ!!」
「こっちこい!!」
しかし虐厨は生来「自己顕示欲」の強い生命体であった
自分の悪事を隠しておく奴などまずいない
だから、集団で行動し悪事を働けば
「秘密にしろ」と言われても従うのはごく少数だ
だから虐厨であっても犯人を捕まえるのは容易だ
ただ・・・
「こいつはオレたちの英雄だぞ!!」
「アイゴに媚びる裏切り者どもめ!!」
それでも犯人を英雄視して匿ったり
確保しようとした虐厨を妨害して助ける虐厨たちも多数いた

むろん、彼らの行動によって事態が悪化してしまったことは
言うまでもない

265招かれた「例外」 3/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/08/05(水) 03:14:30 ID:mnK5nZ8Q0
住人の同居相手のイチゲルゲが殺害された事件が起きた町では
事件から2時間して
テープの張られたカフェスペースで捜査する刑事たちの前に
顔をボコボコに腫らした虐厨と
それを囲う3人の虐厨がやってきた
「すいません、こいつがやりました」
「こいつが犯人です」
「俺たちがシメて白状させました」
3人は「虐待許可証」を示し身元を明かした
即座に警備兵が駆けつけて差し出された虐厨に薬物投与などの処置が施され
彼らの証言が偽りないものだと証明される
「よくやってくれた、『お前たちは』助けてやろう」
『こいつを差し出すからみんなを助けて下さい』と彼らが言う前に
刑事は言って警備兵の本部に連絡を入れる
3人はそれ以上何も言えなかった
許可証の内蔵チップが読み取られて「区別」されるように施された上
虐厨囚人の輸送車に入れられた
少なくとも自分たちの命は助かった
彼らはそれを「よし」として受け入れる以外なかった
「あ、あの、オレは・・・」
「分かったから、もう行け」
一方で、少女の共存生命体を虐待の上で殺害した虐厨は
解毒剤を施された後で釈放された
会釈しつつ離れたそいつは・・・
「てめーのせいかぁ!!」「よくも!!よくもぉ!!!」
怒り心頭の他の虐厨に襲われて嬲り殺された
釈放される前に許可証の中の個人情報が公開されたのだ
「こいつが今回の事件の犯人だ」という情報を添えて

「バカは放っておけ、どうせ勝手に死ぬからな」
誘拐事件の起きた町の一つの虐厨団地の中で
主犯格の虐厨は取り巻きへ言った
彼らは他の虐厨よりは頭が切れるほうだった
今回の「反抗作戦」も彼らが思いついたものだ
さらわれた「ヒギャクセイブツ」はすでに生きていない
死骸は町のあちこちに捨ててある
だからGPSがあったとしても自分たちまでは辿り着けない
それに、わざわざ虐厨団地に行きたい奴など警備兵にもいない
恐れられている「虐厨団地爆破処理」も
滅多にされるものではない
それに犯行を自慢する奴らが勝手に犯人になってくれる
彼らはそう考え確信していた

266招かれた「例外」 4/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/08/05(水) 03:15:37 ID:mnK5nZ8Q0
「全員の死亡が確認されました、隊長」
誘拐被害者の全滅という最悪の結果が隊員たちによって
警備隊支部にもたらされた
それは事件のあった他の町も同様だ
「そうか、最悪の結末だな・・・」
隊長は本部に連絡を入れた
決して泣き寝入りはしない
それは奴らを増長させるだけだ

本部はただちに「例外処置」の発動を決定した

「さて、次の計画だが・・・」
すぐ背後の警報ランプが赤く光ったことに気づかないまま
主犯格の虐厨はアジトで取り巻きへ次の犯行計画を提案した
それは永遠に実行されることはなくなった

「な、なんだ!!?」
虐厨団地の前まで来た虐厨たちは立ち尽くした
目の前で虐厨団地は轟音を上げて爆発し
崩れ落ちたのだ
警備隊本部からの破壊処置が発動されたとしか思えない
しかし、途中で警備兵が銃を向けてくることもなかった
犯人は捕まったものと思っていた
なのに突然、帰る場所が、唯一の安全地帯が消失したのだ
中にいた同胞と共に
それは、閉鎖処置が為された他の町でも同様だった
同時刻に虐厨団地が破壊された
何かを聞こうと外にいた古参の虐厨に話しかけた者もいたが
古参たちは「終わりだ・・・」とブツブツ呟くだけになったり
中には唐突に川へ身を投げるなどの自殺を遂げる者もいた
そして、同胞であるはずの虐厨に襲い掛かる者もいた
「なにすんだじいさん!!狂ったか!!?」
「ワシに殺された方がまだ幸せじゃ!!どうせみんな死ぬんじゃからな!!」
そんな混乱の中でも「準備」は着々と進められた
警備兵は町の境の門前と人々の居住区域を除いて突如いなくなった
虐厨以外の人々も共存生命体も姿を消した
さらに大量の回収ドローンが警備兵に代わって町の中に出現した
何をするでもなく「許可証」のチップを頼りに探索し
虐厨一人一人にくっつくように一体ずつ接近し
無機質なカメラをじ〜っと向ける
虐厨の誰もがそれを不気味に思った
何が起きるのか不安に思った
しかし虐厨たちには唯一の安全地帯だった「虐厨団地」は、もうない
ただこれ以上の悪いことが起きないように祈りながら
嵐が過ぎ去るのを待つしかないのだ
しかし願いもむなしく「終わり」はやってきた

267招かれた「例外」 5/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/08/05(水) 03:16:19 ID:mnK5nZ8Q0
「なんだ?」
回収ドローンとは異なる小型の円盤型ドローンが町に放たれた
見たことがないドローンだが、不気味さを感じた
円盤の縁はギザギザになっている
まるでノコギリのようにそれは見えた
ゆったりした動きの回収ドローンと違い
それはトンボのように素早く飛び回っている
何かを探し回るかのように
そして虐厨をカメラに認めると、その近辺から動かなくなった
「始めろ」「了解!」
警備隊本部でGOサインが発信されると
円盤型ドローンは縁を高速回転させ行動を開始した
それまでただ浮かぶか飛ぶかするだけだったそれは
勢いをつけて虐厨めがけて飛び込んでいく
「ぎゃあああああ!!!?」
円盤型ドローンが横切った直後
横切られた虐厨の片腕が切断され地面に落ちた
もう一回横切り、虐厨の頭も地面に落ちて絶叫は止んだ
「え?」
目撃者の虐厨はそのいきなりの殺害を呆然と見ていた
ゴトン!
また一人、その視界の中で虐厨の上半身が地面に転がる
「う、うわあああああ!!!」
悲鳴を上げて逃げようとした虐厨の背中へ
容赦なく円盤型ドローン=虐厨駆逐ドローンは襲い掛かり
その体を切断した
ようやく何が起きているかを理解した虐厨たちはパニックになった
我先にと逃げ出す彼らを背中から駆逐ドローンが襲う
居住区に逃げ込んだ虐厨は、そこにいた警備兵に射殺され
虐厨施設に逃げ込んでも扉を閉めてもドローンは入り口をAIで操作し
あるいは壁を切断して入ってきた
頑丈な個室に逃げ込んだ虐厨は内臓の火炎放射器で丸焼きにされた
マンホールの中に逃げ込んでも、すでにそこに放たれたドローンが虐厨を殺した
どこにも逃げ場は、安全な場所はなかった

268招かれた「例外」 6/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/08/05(水) 03:17:06 ID:mnK5nZ8Q0
犯人を連行するという殊勝な行いをした「模範的な虐厨」を除き
すべての虐厨が閉鎖された町から駆逐された
これが「例外処置」
すなわち「虐厨のリセット」だ
開始からわずか4時間で、彼らは文字通り消えた
死体は回収ドローンが持っていき後片付けも清掃も済んだ時
彼らがいたという証はどこにもない
「一斉駆除」開始から6時間後、町は元の活気を戻した
少女たち被害者は警備隊本部から職務が行き届かなかった旨の謝罪を知らされ
精神のケアと多額の賠償などを受け取ることになる
これはかつて冷遇された被害者たちが警備隊の創設者であることに起因していた
第二第三の自分たちをこれ以上出さないように
虐厨の被害者に警備隊本部は手厚い補償を自前で用意した
人々や他種族、共存生命体が行きかう町
しかしそこに「虐厨」はもういない
虐厨団地は再建工事がすでに始まっていた
「模範的な虐厨」を生かしておいたのは慈悲ではない
これだけが唯一の生きる道だと学習した彼らを放つことで
他の虐厨にも学習させるためである
今回の件で街の虐厨がいなくなっても
また他の場所から虐厨が入ってくる
彼らはどこかで生まれてどこかから入り込む
キリがないのだ
ならばこちらからコントロールが効くようにすればいい
コントロールできない個体は排除されるようにすればいい
それでもだめなら「リセット」するだけ
虐待施設も同様の理由で修繕され清掃された
生き残った「模範的な虐厨」だけが
このことを記憶している
彼らは町に解き放たれ
事件の生き字引の役割を担うことになる
狂乱した、あの古参たちのように

(おわり)

269おまえか? 1/1 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/09/21(月) 04:31:45 ID:p6Yfn2lU0
「ひ・・・ひぃぃぃ」
男は這いずっていた
男は「虐厨」という生物であったが
すでに手の指の爪がすべて割れ血液が流れ落ちている
しかし足を潰されているため
逃げるにはそれしかない
もちろん
「おまえかぁ?」
後ろから迫る死神から逃げ切れるはずもない
「まてよ、オレは人間には・・・手を出してねぇ
野良か野生しか手を出してねぇよ・・・」
虐厨は片手の平を見せて命乞いをした
その虐厨の言うことは本当だ
今日も仲間2人を連れて町のゆっくりに手を出そうとしたところ
突然現れた男によって仲間は殺され
残る一人の彼はこの有様だった
「おまえかぁ?」
しかし男は同じセリフを繰り返すだけだ
「知らねーよ、他の虐厨がやったことなんて・・・いぎゃ!」
頭にバールのようなものを振り下ろされて
その虐厨も死体の仲間入りを果たした
「次・・・」
男はふらふらと「標的」を求め徘徊を再開した

かつて、男には愛する家族がいた
不治の病で先行き長くないと知りながら結婚した幼馴染
彼女はゆっくりふらんを飼っていた
彼女の死後、男はゆっくりふらんを娘同然に想い
共に生きてきたが・・・
ある日、男の留守中に虐厨が家に侵入した
ゆっくりふらんは家から飛び出して逃げ延びた
運よく野生の同種たちに保護されたが
今度は野生の同種たちとともに別の虐厨に襲われ死んだ
金バッヂはしっかりと付けていたが
虐厨の中には
「飼いは野生よりも動きがにぶいから」「痛みを知らないから」
といった理由でわざわざ「飼い」を襲う者も少なからずいた
男は警察に訴えたが、ゴミ捨て場に捨てられていたのと
遺体の損傷が激しいことから
犯人の特定は不可能になっていた
だから男は考えた
少なくとも犯人は虐厨だと分かっている
なら
虐厨をみんな殺してしまえばいい


男は今日も明日も虐厨を殺し続ける
まだ見ぬ犯人をその犠牲者の中に入れる時を
夢見て

(おわり)

270残り積もった恨みの果て 1/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/10/29(木) 19:04:38 ID:KzpnD6WA0
「ちくしょう・・・」
男は潰れた店の前で床に手をついて項垂れていた
床には彼が可愛がっていた実装石たちが死んでいる
「いつまでいるんだよwとっとと出てけwww」
彼が金を借りた「逆中金融」の社員は
実装石の死体を踏みつぶしながら言うと
男の顔を蹴飛ばしてテナントから叩き出した
ここは借金の抵当にあてがわれたが
借金を利息含めて返してなお余りある高値で売れ
さらに実装虐待動画はDVDとして大ヒットした
もちろん、男が泣き叫ぶ様子も収まっている

男はその日を最後に世間から行方をくらました

「愛護は愛誤」
「愛護は餌食」
「愛護は被虐生物」
これが「逆中金融」を含む数多くの企業を傘下に持つ
巨大グループ「GYAKUTAI」の表には出ない社内の合言葉だ
内に秘めてはいるが、その攻撃性は
ほかの虐待厨企業の比ではない
引っ越しや配送を手掛ける「逆中輸送」においてすら
金バッジゆっくりのすり替えは日常茶飯事だった
最初は行方不明を誤魔化すために替え玉を用意していたが
バレないと分かると利益のためにすり替え
虐待動画を撮って売りに出すことで
粗利を稼ぎまくった

271残り積もった恨みの果て 2/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/10/29(木) 19:06:36 ID:KzpnD6WA0
しかし、これは長くは続かなかった
結論を言うと「バレた」

ペットショップから金バッジゆっくりを浚い
あるいは逃げ出した金バッジゆっくりを強奪し
金バッジを奪ってネットで販売したり
あるいは自分のゆっくりに付けたりといった
犯罪の届け出が多数あった上に
奪った金バッジを捕食種に付けて
他の飼いゆっくりを飼い主の目の前で殺させるなどの
悪質なケースまで生じるに至り
「バッジ」と「ゆっくり」へ「識別チップ」を取り付けることが
義務化された
これにより今まで追跡困難だった誘拐や
バッジの強奪
あるいは散歩中の殺害などの数々の犯罪の
検挙率が一気に跳ね上がった
ただ、犯人を焼却するのに保健所の焼却炉では足りず
民間のごみ処理施設を貸してもらう状態が
しばらく続くことになった

もちろんそんなことを知らない「逆中輸送」は
法律施行後も同じことを続けた
その結果、怒った飼い主が虐待厨専門の駆除業者に依頼して
支社の一つが襲撃を受けて壊滅
駆除業者が提出した情報と証拠が警察に提出された

しかし、警察が動くことになった決定打は・・・
「何を言っているんですか? うちのれいむはここにいますよ?」
業者はいつものように代理のれいむを用意した
しかし、「れいむがいなくなった」のは勘違いで
飼い主が れいむと一緒に仮住まいへ移動していただけだった
そして、社長たちの最大の誤算は
社員として雇った虐待厨のアホさだった
「ヒャッハー!!」
あろうことか、「元のゆっくりは殺して証拠隠滅をしろ」という命令を
その場でそいつは実行した
飼い主の目の前で金バッジのれいむを殺して
持ってきた別の金バッジれいむを置いて帰ろうとした社員は
警察署に連れていかれた
「あれ? 署長、今日は非番では・・・」
「こいつは現行犯よ!!」
運の悪いことに、依頼主の女性は警察官だった
それも警察署の署長である

272残り積もった恨みの果て 3/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/10/29(木) 19:07:33 ID:KzpnD6WA0
一つの警察署が丸ごと敵に回った時
「GYAKUTAI」の命運は尽きた
次から次へと明るみに出る犯罪の数々
隠蔽しきれなかった、ゆっくりや実装ら「被虐生物」の死体の山
そして冒頭のテナントのような例も多数報告されていった
「署長、こいつら・・・見てください」
部下の一人が持ってきたのは虐待DVDとリストだ
テナントにあった実装石カフェについての
インタビューを受けるご近所たちや
苦情を言う住人、実装石の虐待etcが映っている
しかし・・・
「この苦情言ってる・・・こいつとこいつ、見覚えがあります
たしか、GYAKUTAIの傘下企業の社員だったかと」
部下はその別企業の顔写真入りのリストを持ってきていた
取引して手に入れたのではない
その企業のホームページに堂々と掲載されていたものを
プリントアウトしただけである
「・・・!すぐにDVDにある人物を調べなさい!」
この捜査の結果、金を積ませて嫌がらせを行っていたり
あることないこと吹き込まれて不安を煽られたなど
GYAKUTAIのグループぐるみの壮大な犯罪が発覚した
手口はこうだ
まずゆっくりなどの「被虐生物」に該当する生物を扱う店を探し
それが「OOカフェ」「OOマッサージ」「OO喫茶」など
いわゆる「愛護的な店」だったら工作を開始する
周辺住人や商店街の店へ金を握らせたりサービスをしたり
あるいは嘘を吹き込み不安を煽ったりして店を追い詰め
借金の証文も買い取って大義名分を得た上で襲撃を実行
しかもわざわざ「愛護」の目の前でそれを行っていたのだ
「・・・クズね」
ダン!!
部下の一人が机に拳を叩き付けた
「もう許せねぇ!!署長!一網打尽にしてやりましょう!!」
「そうね・・・でも召集の必要はないわ」
署長の言葉に全員が呆気にとられた
「署長、証拠も集まっていますが・・・令状を請求し踏み込むのに十分ですよ?」
「踏み込まないとは言っていないわ
こういうことは専門家に任せるべきと言っているのよ」
署長は自分のスマホを手に取り、事前に調べていた番号を入力した

273残り積もった恨みの果て 4/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/10/29(木) 19:08:37 ID:KzpnD6WA0
「頼む、この捜査を打ち切るように圧力をかけてくれ・・・!」
ここはGYAKUTAI総本社
会長は警視庁に電話をして例の署長の捜査を打ち切るように
頼んでいた
しかし、この一見バカげた「おねがい」を前に
あっさりと署長は捜査を打ち切った
実をいうと連絡が来た時点ですでに捜査は打ち切られていた
証拠も情報も一切合切が処分されていた
もう用がないからだ
なぜなら・・・
「ちーっす!虐待厨駆除業者ギャクチュウコロリで〜す!!」
すべては駆除業者にとっくに送られていたからだ
一つ二つではない
全国各地の駆除業者に諸々の情報証拠や大金と共に依頼が行っていた
結果、企業間の垣根を超えた会議がネット上で行われ
作戦日時などが決定されてもGYAKUTAIはまったく知ることなく
ほぼ同時刻に作戦は実行された
「てめぇらが!!てめぇらがあの子たちを!!」
「死ね!!あの子たちの分、苦しんで死ね!!」
GYAKUTAIは気にも留めなかったことだが
冒頭のテナントの主を含む被害者たちは全員が泣き寝入りしたわけではない
少なくない数が虐待厨駆除業者の門戸を叩き入門していた
「あいつらを一匹でも多く殺したい」
「殺された子たちの仇を討ちたい」
「これ以上、あんな奴らにアリ一匹すら殺されるのが我慢できない」
入社面接で誰もが虐待厨への憎悪を憤怒を吐き出したのは
言うまでもない
そしてこれらの企業には、少なからず同じ境遇の人間がいた
皮肉にもGYAKUTAIの企業活動が活発化したことで
これら駆除業者に入る社員数もまた増大した
当然ながら効率も仕事の速度も増していった

274残り積もった恨みの果て 5/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/10/29(木) 19:09:23 ID:KzpnD6WA0
すべての支部すべての支社、傘下企業までも同時に攻撃されたことで
増援を送る余裕はなかった
そして時間経過とともに一つ、また一つと企業はつぶされていった
総本社も例外ではない
会長を除く全員がすでに殺され
会長は椅子に縛られて固定され、企業壊滅の報告が来る度
それを聞かされていた
「良い様だな、え? ゴキブリどものボスさんよ?」
その拘束には「人権」の配慮などない
その場の全員が会長を人間と見ていないのだから当然だ
「逃げてもいいんだぜ? 
『逃げようとしたからやむなく処分した』って報告できるからな!!」
ただ死なないことだけが配慮された
その場の誰もが会長を殺してやりたいほど憎悪していたからだ
やがて、すべての企業が潰された後
会長は小突かれながら総本社を後にした
そして駆除業者の車に乗せられていずこかへ去っていった
一代で大企業を作り上げた虐待厨の名士
彼は二度と姿を見せることはなかった

巨大企業の突然の倒産と流出し明らかになった数々の犯罪は
世間を騒がせた
また、彼らに協力した人々については駆除屋は口をつぐんだが
SNSで目撃者たちが情報を流したため
GYAKUTAIの壊滅から程なくして住所氏名がネット上で流れた
金を受け取った者以外は罪には問われなかったが
「犯罪者の協力者」のレッテルを張られ
誰もが転職・引っ越しを余儀なくされた

そして虐待厨たちは世間から怒りの対象にされた
今までは野良や野生といった「人間の生活圏とは無縁の存在」だけを
狙っていると思われていたのと事なかれ主義のために
「お目こぼし」されていただけだ
「世間で認められている」と勘違いしていたのは虐待厨たちだけである
だから「組織だって人間に危害を加える害獣」と判明すれば
話は別だ
条例で次々と虐待厨の隔離・追放が制定されていった
また「工作」も明らかになったため
誰もが虐待厨たちの話を信用しなくなった

かつて「悪者」にされた被害者たちの中には過激派転向した者も少なくなかった
だから「虐待厨たちへの暴力行為は無罪」とする法律が制定され
公に復讐は認められたことで、彼らは大っぴらに復讐を慣行した
虐待厨たちの中には人々に助けを求めるのもいたが
「事なかれ主義」の蔓延は今度は虐待厨たちを見捨てる結果になった

その後も自業自得で生まれた地獄で、虐待厨たちは生きることになる
(おわり)

275等しき罰を 1/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/12/24(木) 21:22:25 ID:oSAZ0OlQ0
「見つけたぞ!!」
ここは、とある虐厨のアジトだ
それも「飼い」専門の虐厨である
しかしこいつらは通常の「飼い」専門の虐厨とは違った
こそこそ「飼い」を襲うのが常であり
(それでもバレて飼い主あるいは駆除業者から制裁されるのが常だが)
虐待をしている時以外は注意深い奴らと異なり
そいつらは堂々と「飼い」を誘拐していた
そしてビデオを撮影して売りに出し大金を稼ぐだけでなく
飼い主に「飼い」の遺体とともに送り付けていた
泣き叫び、あるいは死を選ぶ飼い主の様子も隠しカメラで撮影し
これもまた彼らの利益になっていた
あまりにも堂々とした犯行であったため
すぐに足がつき踏み込まれた
しかし・・・
「降伏します逮捕されます抵抗しません」
虐厨たちは両手を地面について降伏した
今までもこういうケースがないわけではなかった
だがそいつらは逃げるか無謀にも向ってくるか
あるいは生き残りの「飼い」を人質に取るかしていた
このように無抵抗でただ逮捕されるのは稀である
踏み込んだ警察は戸惑った

276等しき罰を 2/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/12/24(木) 21:23:05 ID:oSAZ0OlQ0
これもまた、この虐厨グループの作戦だった
「抵抗するから心証が悪くなって厳罰を受けるのだ
なら、無抵抗で捕縛され素直に罪を認めた方がいい」
「人間に直接手出ししなければ器物破損しか適用できないだろう」
そう考えての行動だった
彼らの思い通り、痛めつけることもせず警察は
虐厨たちを捕縛した
ここまでは虐厨ったいの思い描いたとおりだ
しかし、彼らを乗せた車両は警察署へ行かず
そのまま人気の無い山奥へ向かった
虐厨たちは訝しんだ
警察手帳や逮捕令状を持ってきた警察官は本物だ
業者らしいのも一緒にいるが、
彼らは虐厨憎しで凝り固まっているとはいえ警察と仲がいい
相手のメンツを潰すマネは決してしない
そのはずだ
「着いたぞ、降りろ」
虐厨たちは古びた建物の前で降ろされた
「どこだよ、ここ?」
虐厨の一人が質問をした
「悲鳴を上げまくってもだれにも聞こえない場所、でいいか?」
警察官の一人は冷たい目で見ながら答えた
「連絡を受けました撮影班です!」
「お疲れ様です!」
建物から出てきた男が警察官を出迎えた
「資料は読みましたか?」
「はい、酷いものですね・・・許せません!」
その会話は、井戸端会議にも似た平和的なものだった
しかし虐厨たちは出てきた男の服装に
目を丸くしていた

277等しき罰を 3/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/12/24(木) 21:23:48 ID:oSAZ0OlQ0
男の服装は、ゴム製の紺色のエプロン一体化型のつなぎに
防護服のようなビニール製の特殊な衣装をくっつけたようなものだ
そこから顔だけが出て警官と会話している
「たしかに受け取りました」
「では、よろしくお願いします」
男は渡された書類にサインをして返した
お互いに挨拶をして警察官が去ると
「聞いての通りだ、お前たちは今から我々に付き合ってもらう」
男はそう言って顔全体をガスマスクで覆うと
虐厨たちを建物の中に引っ張っていった
虐厨たちは不安になった
男の服装は奇抜だが問題はそれではない
あちこちにこびりついていた、乾いた血液のような汚れが
気になっていたのだ
「みんな、待たせたな」
奥の広い部屋に虐厨たちは連れてこられた
そこは、直感的に言っても「地獄」だ
あちこちに血液や肉片らしいものがこびりつき
数々の鉄製の拷問器具が並べられている
何より、男と同じ格好の人間が10人ほどそこにいた
「話は聞いた、腕が鳴るぜ!!」
「すぐに殺すなよ、売れなくなる」
「分かってるさ、こいつらはできるだけ苦しめにゃならん!」
虐厨たちは不安そうに自分たちを連れてきた男を見た
「安心しろ、ビデオ撮影だ」
それは分かる
撮影担当らしい男が大きなビデオカメラを操作しているのが見えるから
「何を、撮影するんだ?」
それに対して男は答えた
「お前らも散々作って売って金を稼いだだろ?」
虐厨たちは自分たちの運命を悟った
ここは、虐厨たちを虐待するビデオ映像の撮影所だ
そういうものが出回っていることは知っていた
虐厨たちの数は増えたがそれに比例する形で事件も増えた
被害者もうなぎ上りに増えた
怒りが生まれやがて憎悪になるのに時間はかからなかった
誰もが虐厨たちを憎んだ

278等しき罰を 4/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2020/12/24(木) 21:26:44 ID:oSAZ0OlQ0
いつしか虐厨たちを虐待するビデオが出回り始めた
日頃、虐厨たちにひどい目にあわされていた人々に
よく売れた
もちろん虐厨たちもそれを手に入れた
撮影した企業に行って報復するためだ
しかし、住所も名前も仮のもので
いくら調べても途中で途切れてしまう
そんなことが度々あった
しかし今はそれも納得がいく
これは、国が運営する施設で
目の前の男たちは「公務員」だ
企業や個人経営事務所とは全く規模が違う
能力も違う、力量も違う
勝てるはずがない相手だった
「さて、そろそろ始めるか」
「この前はまとめて10匹だったけど、どうする?」
「一人ずつにしようぜ、一番最後はじっくりとな」
即座に虐厨たちは命乞いを始めた
法律を持ち出して違法行為ではないかと非難もした
しかし・・・
「もうカメラは回っているぜ!」
「反省してねぇなこいつら」
「気が変わった、全員じわじわ嬲り殺すぞ!」
状況をより悪化させただけだった

こうして、虐厨のグループが一つ文字通りに消えた
彼らの遺体は見つかっていない
しかし、その最期がどのようなものだったのかは
出回っているスナッフビデオに克明に記録されている
そして今日もまた、虐厨はそこへ送られ続けている

(おわり)

279英雄の影で掃除を 1/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/03/03(水) 04:58:41 ID:HC8aGkuA0
「や、やめろ、オレは怪人じゃない!人間だ!!」
一人の男が路地裏で追い詰められていた
相手は手に鉄パイプを持ちガスマスクに防護服という姿だ
男は命乞いをしているが
相手は聞く耳を持っていないのか
一歩、また一歩と距離を詰めていく
「あの少女を、知っているか?」
相手は手にした鉄パイプを片方の空いてる手で叩きながら
男に問いかけた
「あ、ああ、知っているさ」
相手はその問いに満足そうに頷いた
「なら、お前が手を出そうとした彼女の妖精も何なのか、知っているな?」
男は答えた
「もちろんだ、あの魔法少女のペットだろ?
けどどうせ殺したってあっちの国が生き返らせgyゲケ!!」
男が全部言い終わる前にその口に鉄パイプが突っ込まれる
「なら、貴様が人間だろうと関係ない
駆除対象、それだけだ!!」
歯をへし折りながら乱暴に鉄パイプを引き抜き
相手はそう答えた
「察しの通り、オレはヒーローかヴィランかと言われたら
ヒーロー側だ
ただし、貴様のようなヴィランでないことを逆手に悪さをする
ヒーローには手を出せない害虫を駆除するのが仕事の、な」
言いながら男の懐からスマホをひったくる
「虐待愛好会、ね
こんな組織が出来上がっていたとは・・・」
男はスマホを取り返そうと飛びかかったが
反撃の一撃で垂直に地面に落っこちた
アゴをコンクリートの地面に強打して
残っていた歯が全部地面へ飛び散る
「安心しろ、お仲間もすぐそっちに送るから
すぐに寂しくなくなるさ」
ガスマスクは勢いよく鉄パイプを振り下ろした

280英雄の影で掃除を 2/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/03/03(水) 04:59:24 ID:HC8aGkuA0
「オレです、終わりました
ですが、ヤツは組織の一員で・・・」
ガスマスクは自分のスマホで連絡を入れた
しばらくして、処理班が到着し男の死体を回収し清掃する
男は数日ほど「行方不明」扱いになった後、
「組織」の手によって全ての痕跡を消されることだろう
関係者の記憶も含めて消去される
つまり、最初からいなかったことになる
ガスマスクの所属組織の詳細は一員である当人も知らない
ただ、様々な世界を股にかける
それなりに大きな組織ということだけが分かっていた
だがそれで十分だ
二度と、自分がいた世界のように
馬鹿な一般人のせいで滅びるような事はあってはならないのだ
「きみは、生き延びて・・・私たちの分も・・・」
思い出すのは大好きなヒロインの一人の今際の言葉と笑顔
あんな目に遭いながら事切れる寸前まで
人々と自分を守ってくれた彼女たちを思い出す
自分を庇ったあのヒロインの正体は、近所に住む憧れのお姉ちゃんだった
それを、あいつらは・・・・・・
ガスマスクの奥で、力なき幼女だった戦士は涙を流した
彼女は憎んだ、悪の軍団ではなく
ヒロインの妖精を手にかけヒロインを弱体化させた屑どもを
彼女の願いは、屑どもを殺す異形との出会いで叶えられた
逃げ出した屑に足を引っかけ、首にガラスの破片を突き刺したことで
先輩にスカウトされて組織に入った
力なき幼子は、もういない

281英雄の影で掃除を 3/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/03/03(水) 05:00:23 ID:HC8aGkuA0
「本当に、こういうやつらはどこの世界にもいるもんだね」
死体の山の上で煙草を吸いながら
その異形はひとり呟いた
ここはガスマスクから連絡のあった組織の本拠地の建物
中にいた数百人もの構成員は彼女一人によって全滅した
「誰のおかげで自分たちの今があるのか
明日があるのか、分かんないかねぇ・・・」
死体の山から降り立つと、異形の姿を解除しながら建物の出口へ歩く
まだうめき声が聞こえる
生存者がいるのだろう
しかし彼女は構わず背後へ火のついたままの吸い殻を捨てた
吸い殻は彼女が建物の正面出入り口を閉じた少し後に床に触れる
次の瞬間、オレンジ色の炎が上がる
死体の山も怪我をして動けない生存者も構わず
炎は飲み込んで焼いていった
「数が多い、宗教団体の儀式の失敗による惨事が
落としどころかな?」
もう彼女の頭にはついさっき殺しまくった人間や虐待厨のことなど
なくなっていた
今回の摘発の手柄を立てた後輩へ何をプレゼントしようか
そんなことを考えていた
「そういや、あの子をスカウトしたのって
あたしだったっけ?」
後ろで炎を上げて崩れ落ちる建物を
もう彼女は見ていなかった

「害虫」が出続ける限り、「駆除組織」の仕事は尽きることはない

(おわり)

282あいつ何か言ってるぜ 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/04/08(木) 15:50:25 ID:GWqbbDlI0
「うああああああ!!」
一人の少女の悲鳴が響き渡る
ここは、G町のとある道
潰れた実装石とその前で泣き崩れる少女
それを前にニヤニヤ笑う虐待厨が二匹
「ソウちゃん!ソウちゃんがあああああ!!」
「オラ、そんなゴミ捨ててオレらと遊べよクソアイゴw」
泣き叫ぶ少女から実装石の死体をひったくりごみ箱に捨てると
虐待厨は少女の服をつかんで連れて行こうとしていた
それを止める人間はここにいない
「何しているんだよ!!」
そこへ、一人の女性が割って入った
「なにすんだ!」
「てめーもアイゴか!?」
「やかましい!!
女の子を道端で襲う奴が大手振って歩いている時点で
大間違いだろうが!!」
しかし・・・
「おい、あいつ何か言ってるぜ」
住人の一人がそう言った
「迷惑なんだよ」
「ガキ一匹で平穏が保たれるんだからいいだろ」
「正義のヒーローはとっとと帰りなw」
女性の味方になる者は、そこにいなかった
女性は少女と実装石の入ったごみ箱を抱えると
黙ってそこを去っていった
「おい、あの女すげぇ力だぞ?」
少女は10代前半、確実に35キロ以上はある
実装石が放り込まれたごみ箱に至っては
迷惑行為防止のため50キロ以上の重しが
その底部に施されていた
それを女性は軽々とそれぞれの脇に抱え去って行ったのだ
女性が去って数分後
そこは地獄と化した
女性が去った方角から走りこんだ完全武装の兵士たちが
次々と虐待厨を射殺していく
その銃口は住民たちにも容赦なく向けられた
兵士たちは女性が通報した対虐待厨組織の武装兵だ
女性は一部始終を録画・録音していたため
即座に「駆除対象」の情報は兵士たちに送られた
むろん、それには女性をなじった住民たちも含まれていた
「や、やめろ!こんなこと許されるわけないだろ!?」
「そ、そうだそうだ、犯罪者め!!」
しかし、追い詰められた悪質住人たちに
兵士たちは冷たい視線を向けながら口を開いた
「おい、こいつら何か言ってるぜ」
「あとは殺すだけだってのに、見苦しいな」
「まったくだ」
そして銃口から弾丸が放たれ住人は永遠に沈黙した
「こうなるのが嫌だったなら、最初からクズの肩持つなよな!」
駆除対象の全滅と帰還命令を受け去っていく兵士たち
残ったのは駆除対象の死体だけだった
しかし、住民たちにそれを片付ける者はいない
「触らぬ神に祟りなし」
「事なかれ主義」がその町で横行していたからだ
死体が腐敗し骨になっても誰も手を付けず・・・
「虐厨様の遺体を放置するとは無礼な住民どもめ!」
「分からせてやるぜ!ヒャッハー!!」
今度は虐待組織に襲撃されることになる
町が壊滅した後で虐待組織は先の兵士たちたった一部隊に
壊滅させられるわけだが
それはまた別のお話

(おわり)

283出所後の世界 1/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/05/10(月) 03:27:10 ID:D3AxkoVo0
胴付きゆっくりと女児を間違えて惨殺した罪で服役していた
虐待厨の虐助は刑務所から出た
脱獄ではない、刑期を終え出所したのだ
「もう戻ってくることはないと思うが、悪さするなよ」
刑務官が出口でこんなことを言った
「もう来るんじゃないぞ」ではない
明らかにニュアンスが違った
悪戯を相手に仕掛けた子供みたいな目をしていたのが気になったが
虐助はそれよりも、久しぶりの娑婆に心躍らせていた
「ひゃ・・・!?」
目の前にいた親子ゆっくりに久しぶりの虐待をしようとした時
真横から誰かに殴られた
「馬鹿野郎!あれは地域ゆっくりだぞ!」
そいつは虐待厨だった
「お前、もしかして地域ゆっくりがいない所から来たのか?」
もちろん知らないわけがないし
幾度か手にかけたこともある
もちろん警察に追われる事になったが、どうにかやってきた
だが、いきなり殴られ呆然としていた虐助は
話を合わせることにした
「あいつらは地域の庇護下にある ゆっくりだ
だから”地域ゆっくり”と言うんだ
つまり、あいつらへ手を出せば即射殺される」
虐助は話が呑み込めない
警察に追いかけられたことはあっても、そこまでの仕打ちを受けた覚えはない
「ゆっくりに手を出しただけで殺されるのか?」
相手の虐厨は、その言葉に驚いた表情を見せた
「当たり前だろ、お前、そんなことも知らないのか?」
当たり前だった
ゆっくりを殺しただけでその場で殺されるなら
すでに生きてなどいない
「オレ、刑務所に入っていたから・・・」
その言葉で相手は納得したように頷いた
「そうか、じゃあ法律が変わったのも知らないんだな」

284出所後の世界 2/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/05/10(月) 03:27:50 ID:D3AxkoVo0
『虐待厨特別処置法』
虐助が刑務所に入っている間に激増し凶悪化する虐厨へ
人々が突き付けた「答え」だ
「被虐生物への危害を加えることへの禁止」
「飼いや地域への手出しの禁止」などといった項目が
ずらずら並んでいった先に
「虐待厨及びそのシンパの人権はその場で停止される」
「場合によりその場での処分も許可する」とある
つまり内容はいたってシンプルな
「話が通じないのなら死ね」というものである
ただし、その場の処刑に役人は必要ない
そこにいる人間、例えばペットを傷つけられた飼い主が
独断で処刑したとしても許される
相手は人権がない、つまりゴミも一緒なのだから
無理なら電話一本で即座に「駆除班」が駆けつけてくれる
死体はゴミ捨て場に捨てるだけでOK
その際に「処理班」を呼んで手伝ってもらうこともできるのだ
虐待厨やそのシンパはブーイングを上げたが
これが人々の怒りの火に油を余計に注いだ
「てめーらみんな害虫だ!駆除されろ!!」
人の飼いだろうと構わず殺される
バッジを付けていてもダメ、金でもダメ
地域ゆっくりや名物ゆっくりでさえも炎上のため殺されていく
やめろと言えば笑ってツバを吐き掛け殴りかかり
「被虐生物は虐待されるのが正しい」の一点張り
それを愛するだけで「愛誤」呼ばわりして牙を剥く
「それなら、もうこれまでだ」
と、人々は堪忍袋の緒を切った
かくて、当初こそ虐待厨への厳しい刑罰制定で済んでいた法は
いまでは「虐待厨駆除容認法」と化した
制定後、各地で虐待厨は殺された
焼却場はゴミよりも虐待厨の死体を多く焼くようになった
さらに、虐待厨の手伝いをした人間は墓にすら入れず
虐待厨と一緒に「ごみの燃えカス」として処分される例も
出始めていた

「こいつができたきっかけは、
自分の作った作品の宣伝に地域ゆっくりを利用したバカのせいらしい
そいつが推奨した地域ゆっくり虐待のせいでこうなったんだと」
「はぁ? たかが一匹二匹でか?」
虐助の文句に相手を首を横に振ってこたえた
「地域ゆ全滅、それがあのバカがしたことの結果だ」
虐助は絶句した
つまり、思い付きで地域ゆっくりを全て殺したということだ
虐待厨の虐助でも分かる
地域共同体の財産をそこまで損なえば
行政は本気で怒るということを
今までそれが分かっていたから、1,2匹への手出しで済ませていたのだから
「ヒャッハ・・・」
タン!
乾いた音ともに
近くでゆっくりを殺そうとしたモヒカン虐厨が倒れた
頭は砕け脳が流出している
「お前ら、こいつの仲間か?」
「い、いえ、オレたちは立ち話していただけです!」
「そうか、失せろ」
腕章を付けた作業着の男に追い払われて
虐助たちは速足でその場を離れた

285出所後の世界 3/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/05/10(月) 03:28:37 ID:D3AxkoVo0
「これで分かっただろ、今の状況が?」
虐助は何度も頷いた
出所後の世界は刑務所が天国であるかのような地獄ぶりだった
「や、やめ・・・」
「もう大丈夫だよ」
ケーキのようなクリームのようなポケモンを背後にかばう少女が
虐待厨の頭を踏み潰していた
向こうでは虐待厨が電柱に逆さに吊るされている
表皮をすべて剥がれた肉だけの状態で
しかし、時々動くことと苦痛のうめきを垂れ流し続けていることから
まだ生きていることが分かる
そして・・・・・・・
「てめぇ何してやがる!!!」
「あ、オレは邪魔なゆっくりを殴ってどけただk」
地域ゆっくりと知らずに殴った虐待厨は
駆け付けた男にハチの巣にされた
男の左腕の腕章には「保安員」の文字が刺繍されていた
「地獄か、ここは・・・」
殺しただけどころか殴っただけでその場で殺されていた
「ン、オイそこのお前ら!・・・もうすぐ日が暮れるぜ?」
確かに夕方だ、だが日が暮れたからなんだというのか?
「す、すいやせんした!」
しかし腕章の男に頭を下げ相方は虐助の腕を引っ張って
その場から逃げ出した
いや、明確な目的地を目指して走っている
「どうしたんだよ?」
「日が暮れる前に家にたどり着けたら答えてやる!」
二人は団地に駆けこんだ
いや、そこは団地というよりもコンテナを積んでドアと
廊下と階段を設置しただけの粗末なものだ
相方はドアの一つに駆け込む
その際にカギを開けたり閉めたりした様子はない
「オレの全財産は、これさ」
相方はそう言って背中のズタ袋を下ろした
つまりここは、相方の持ち家ではないのだ
「安心しな、ここに来るみんな家無しさ
ここは家がない虐待厨が唯一生きることを許される場所なんだ」
どういうことかと質問しかけた時
「ぎゃあああああ!!」
銃声と悲鳴が外から響いた
「・・・日が暮れても外にいる虐厨は、殺されるんだ」

286出所後の世界 4/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/05/10(月) 03:29:11 ID:D3AxkoVo0
虐助は家が恋しくなった
翌朝早く相方と別れ家路を急いだ
同居している仲間の顔を思い浮かべながら
「ただいま!」
虐助は玄関のドアを開けた
その向こうには野原が広がっていた
中に転がる朽ちた家具や錆びた家電には
見覚えがあった
そして・・・
あちこちに転がるばらばらの白骨死体
それの着ているボロボロの衣服にも見覚えがあった
虐助は叫ぼうか泣こうか迷っているうちに
後ろから殴り倒された
「よくもオレの娘を!!こいつ!!こいつ!!!」
硬い鉄パイプのようなもので頭を殴られながら
虐助は思い出した
看守の最後の言葉、人を殺したにしては短すぎる刑期
そして自分を殴る人間が
殺した娘の父親だと考えが行き着く前に
虐助の頭は砕けた

ほぼ同時刻、「犯罪者を匿った」と疑われた虐助の相方は
団地ごと爆破処理された
そこにいただけの大勢の虐厨も一緒くたに処理され
新しく建築し直される虐厨団地の素材として
コンクリートと一緒に混ぜられ消えた

虐厨たちの未来永劫続く地獄は
まだ始まったばかりだ

(おわり)

287天秤 1/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:27:54 ID:xZ8awcpY0
ここは、とある町
他の町と違うのは試験的に「市民権導入」が
行われている事だ
もちろん対象は人間ではない
彼らは生まれながら当然として市民権を得ている
かといって虐厨でもない
奴らに市民権を与えたところで増長を促すだけだった
そのため一度試験導入が行われ直後に廃止されて以来
未来永劫それが採決されることは無い
対象となるのは「実装石」「ゆっくり」といった生命体だ
もちろん、全ての個体に配布されるわけではなく
知能が人間と同水準以上であることが条件だった
しかし試験に不合格だからと言ってデメリットは無い
「試験」という概念を理解した証明となり
その場で「準市民権」と言うべきものが付与されるからだ
「気に入らねぇな」
それを羨み電柱の影から見る男がいた
虐待厨の虐蔵だ
かつて「市民権導入」の経験者ではあったが
彼とその仲間が増長し、飼い実装殺害などの
数々の犯罪行為を行ったため計画は中止となり
彼の仲間の多くは捕らえられた
ちなみに虐蔵は仲間は今頃は塀の中と思っているが
すでに殺処分され地獄の中である
「いいなぁいいなぁ」
虐蔵は過去に自分たちの愚行のせいで
それを得る機会を永遠に失ったことなど記憶にはすでにない
かと言って行動を起こすこともできず
ただ羨まし気に見ている事しかでき無い
「市民権を持っている」と、言うことはすなわち「人権所有者」だ
家畜未満の虐待厨が手を出すことは死を意味した
下手をすれば町中で一斉駆除が行われ
虐待厨は町から一時的に姿を消すことになる
それが分からぬほど虐蔵は愚かではなかった
そう、少なくとも彼は・・・・・・・

288天秤 2/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:28:41 ID:xZ8awcpY0
虐蔵は気を付けてはいた
しかし中には分別のつかないバカもいる
虐待厨はコイツが多い
「この二人を殺したのは、誰だ?」
無惨なセヤナーの惨殺死体の写真が
広場の掲示板のディスプレイに映されている
その前に集められた虐待厨に
「虐殺」と書かれたヘルメットをした男たちの隊長が
質問した
「たかがセヤナーごときでおおげさなんだよ」
「ざまぁw」
その場にいた虐待厨の群れの中からそんな声がした
次の瞬間、兵士二人が虐待厨に駆け寄り
そこから一人ずつ腕を掴んで引っ張り出した
声を出した虐待厨ではない、適当に引っ張り出したのだ
兵士が戻る先には、いつの間にか用意された丸太と
良く研がれたナタがあった
「いやだあああああ!いやだあああああ!!」
「やめてくれ!!俺たちは関係ない!言ってないんだぁあああ!!」
その訴えを無視する形でナタが振り下ろされ
二匹の虐待厨は永遠に黙った
「もう一度聞く!!この二人を殺したのは、誰だ?」
今度は皆、黙った
誰もが周囲を伺い目が合うと逸らした
「では、質問を変えよう
先ほど被害者を愚弄する発言をしたのは、誰だ?」
今度は一斉に虐待厨たちは指さした
兵士たちは直ちに向かい、指を指された二人を連れて行った
泣きわめく二人は首を切られ先の二人に仲間入りした
「それでいい、犯罪者を匿う者や
嘘つきには生きる資格など無いのだからな」
満足げに頷く隊長は、現場に残された証拠や
指紋などをディスプレイに映した
「3日だ!3日猶予をやる!
それまでに犯人を見つけられなければ・・・」
「隊長!!」
話の途中で部下が敬礼して隊長に耳打ちをした
「なんだと・・・!本当かそれは!?」
「はい、本部から・・・」
「なんて事だ・・・」
虐待厨たちは虐殺部隊の会話を注意深く聞いていた
どうやらとんでもないことが起きたらしい
彼らには、それがこの場での即刻処刑につながらないことを
祈るしかできなかった
先の「人権」関連のバカの暴走のせいで
今や虐待厨には家畜未満の「生きていてもいい権利」しか
残っていないのだ
「副長、この場は任せた!」
部下に引き継ぎを行い、隊長は慌ただしく去っていった
「助かった・・・」
そう呟いた虐待厨は頭を弾けさせて倒れ伏した
「隊長の言ったことを理解していない者は、こうだ
いいか、3日の猶予をやる
その間に犯人を見つけて来い
でないと・・・」
副長は撃ったばかりで硝煙が昇る銃を別方向に向けて撃った
「ぎゃあ!!」
こっそり逃げようとしていた虐待厨が背中を撃たれ
前から内臓をまき散らして倒れた
「・・・こうなるぞ」
その場に残った虐待厨は頷くしかなかった

289天秤 3/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:29:31 ID:xZ8awcpY0
「対話が中止とはどういうことですか?」
「どういうも何も、そのままの意味だ」
隊長が呼ばれた会議室には
すでに組織の重鎮が揃っていた
議長は隊長の疑問に答える素材を
目の前に出した
それは、無惨に殺された幼い「ゆっくりれいむ」の死体だ
自然死でないとはっきり分かる
明らかに人為的なものである
そして、その死体にあるピンク色のリボンは
隊長も見覚えがあるものだった
「・・・交渉には、私が行きます」
「ああ、そうしてくれ・・・君以外に
彼女たちと会話ができる者は
恐らくいないだろう」

その日、300を超える虐待厨が殺され
その首を持って隊長は謝罪と賠償
対話の継続の話をするために
「ゆっくりの里」へ向かった
この「首」が人類側の「答え」だと
一目で分かるようにするためだ
彼女たちは度重なる約束反故と迫害を受け
人間不信になっていた
そのため親交のある近隣の里とだけ交流があったのだ
それだけではない
彼女たちは「戦力」を有していた
火炎を操る「もこう」、輸送を行う「うーぱっく」は
序の口もいい所だ
光線兵器を能力として有する「おくう」に
あらゆるものを無条件で破壊可能な「ふらん」
空間操作能力を持つ「ゆかりん」といった
現代科学を凌駕し防ぐ手段など皆無な者たち
今までその存在が知られなかったのも
惨事が起きていないのも
彼女たちが必要以上の争いを嫌っただけである
詰まるところ人類側は「運が良かった」だけだ

290天秤 4/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:30:37 ID:xZ8awcpY0
それが、虐厨に人権を与える話のせいで
自体は一変した
彼女たちに手を出した虐厨は
仲間の仇討ちをあちこちに訴えかけたのだ
彼女たちの情報を事前に得ていた高官たちは
絶句した
分別の無い馬鹿どもとは思ってはいたが
ここまでとまでは思っていなかった
追い打ちをかけるように、
彼女らの長であるドスゆかりんが
直接議会にやってきた
彼女はこう告げた
「私たちは争いは好まないけれど
身にかかる火の粉を払う程度の事はしますわよ」
虐厨たちの人権が白紙になったのは
言うまでもない
バカと心中など誰もしたくない
そうでなくても人権を得た虐厨らによる犯罪が
後を絶たないのだ
誰もそれに反対する者はいなかった

291天秤 5/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:31:52 ID:xZ8awcpY0
虐蔵は広場に行った同胞から話を聞いて
青ざめた
飼いセヤナー殺害の犯人こそが
虐蔵だったのだ
もちろん「飼い」と知って襲ったわけではない
昔はともかく今そんな事をするのは
バカのする事だ
「飼い専門の虐待派」を自称していた者たちは
全員が町全体一斉駆除によって
無関係の虐待厨を大勢巻き添えにする形で
あの世に強制送還された
それでも今もいないわけではないが
そういう奴は同胞に自慢したがる
だから、捕まえて突き出すのがルールになっていた
人間は鬼ではない
「分別ある賢い奴」にお目こぼしをくれる慈悲はまだあった
逆に、同胞を売る形になるその習慣をやめれば
その慈悲すらも期待できなくなるだろう
しかし、虐蔵は野良と思ってセヤナーを殺してしまった
ただ汚れていただけの「飼い」だったと
今頃になって知ったのだ
虐蔵は考えた
自首すれば処刑は免れないだろうが
仲間は助かる
などという殊勝な心は彼にも他の虐待厨にも無い
どうすれば自分が助かるかを必死で考えた

292天秤 6/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:32:42 ID:xZ8awcpY0
「オレじゃねえよ!!」
考えた末に「他の奴に罪を擦り付ける」を選んだ
自分よりも弱そうな奴を捕まえて縛り
一緒にあの副長のところに向かった
「黙れ!オレは見たんだ!
お前が殺しているその現場をな!!」
副長たちは黙ってそれを見ていた
「なぁ、一つ聞いていいか?
お前は本当に れいむを殺したのか?」
虐蔵は「え?」と副長を見た
「いいや、ゆっくりなんて知らねーし
オレはここに来たばかりなんだよ!」
虐蔵は思った
この副長はセヤナー殺しの犯人を追いかけているのではないのか、と
副長は満足げに頷くと部下に指示を出した
「こいつはシロだ、事件を全く知らん
賢そうだからこちらで保護し教育しろ」
部下は敬礼すると縛られた虐待厨を抱えて去って行った
虐蔵は副長を見た
冷たい視線が虐蔵に刺さる
「我々は忙しい、それを知らないわけじゃないだろ?」
自然な動きで腰の拳銃を抜くと
虐蔵の頭をそれで撃ち抜いた
「手の空いている者たちを集めろ
一斉駆除を行う!!」

293天秤 77 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/07/27(火) 01:33:12 ID:xZ8awcpY0
一応、三日の猶予は与えられていた
だが、それは「条件付き」だった
例えば証拠隠滅や犯人の擁護
今のように別の奴を仕立て上げて生贄に突き出すといった行為は
「重大な違反」とみなされる
彼らは犯人探しをしてはいるが遊びでやっているわけでも
溜飲を下げるためにやるわけでもない
「犯罪者を取り締まる」というごく当たり前の
治安維持の仕事をしているだけだ
だから捕まえるのは真犯人でなくては意味は無い
事件発生直後から町には封鎖線が敷かれていた
各地に武装兵士が立ち裏道は罠が張られている
無理に行こうとすれば射殺され
裏道に行けば罠で死ぬ
だから、町から犯人が逃げることもできず
逃がされる心配もない
逆に言えば最悪「一斉駆除」で
犯人を殺すこともできるのだ
しかしこれは人間的ではないと彼らも思っていた
虐待厨どもが連中の領域でやる虐殺と大差ない、と
だからそこに「猶予」「慈悲」を加えた
自分たちは奴らとは違う、必要以上の殺戮はしない
そもそも殺戮自体を好まない
犯人が捕まればそれでいい
しかし、こういう「ルール違反」をされた時は
話は全くの別だ

かくて、町からは一時「虐待厨」は姿を消した
猶予を信じ虐蔵の暴挙を知らない虐待厨たちは
突然の処刑に逃げ惑うしかなかった
なお、帰ってきた隊長は副長の行動を称賛した
後日、隊長は昇進し隊を離れる際に
副長を次の隊長に指名したという

(おわり)

294夢の中で 1/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:06:59 ID:Q4MFJucA0
その世界には「虐待厨」は、いない
最初からいなかったわけではない
人間たちによって駆逐されたのだ

もちろん、ここまでやる世界は
滅多にない
たしかに「虐待厨」と言う種族は
その身勝手さと凶暴さ
なによりもたらす被害の甚大なことから
嫌われ駆除される存在ではあるが
極端に嫌われる世界であっても
大抵は目の前にいたら追い払ったり
殺害したり
あるいは「管理」の枠組みに組み込んで
被害を出させないようにする

では、どうしてこんなことになったのか?
話は最後の一体が駆除される
その半年前にまで、さかのぼる

その世界では「野生」「野良」はいない
正確には管理下にない「被虐生物」は、いなかった
生息地は「保護区」に指定され
公園に生息しているのは全てが「地域」の指定生物
飼いもいるが、飼い主が捨てることは固く禁じられていた
代わりにペットショップに行けば
そこで引き取ってもらえる
ただし、生物に虐待などの痕跡が見られれば
ただちに「対虐待企業」に知らせが届き
警察と協力体制の上での捜査が行われた
その結果、虐待厨は存在こそしたものの
彼らが手を出すことができる「被虐生物」は
存在はしなかった
もちろん政府も鬼でもなければ
管理のみ考える機械でもない
ストレス発散のための施設も用意されている
もちろんそこには「被虐生物」などは入っておらず
サンドバックや3DCGゲームなどがあるだけだ
もちろんそれで満足するほど虐待厨は大人しくはない
しかし、我慢のできない虐待厨は
即座に狩られ地獄に送られる
彼らは生き残るためには現状を受け入れるしかなかった

295夢の中で 2/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:07:38 ID:Q4MFJucA0
そんな社会に生まれた虐待厨の一人である虐士は
他の個体より頭が良かった
特にコンピュータをいじることに
彼の技能は発達していた
社会も彼については
「社会貢献になるなら」と大目に見て
研究予算を割いてもくれた
やがて虐士はとある発明をした
それは「自由に夢を見ることができる」という
マシーンだった
「虐夢機」と名付けられたそれは
瞬く間に虐待厨の間で評判になり
売れて行った

しかし、その時から事件が起き始めた
公園のゆっくりたちが突然死しているのが発見されたり
飼い実装石がパキンした状態でこと切れていたり・・・
そのどれもが不可解な死に方だった
共通点は「重度のストレスによる突然死」
しかし、死んだ個体は前日までそんな兆候も無く
また飼いであっても飼い主には虐待の前科も
そのそぶりすら無い
「未知の病気」が疑われ
徹底的な調査が行われた
しかし、原因の特定には至らず
誰もが途方に暮れた

解決の糸口は「虐待厨」だった
そしてそれは
全ての虐待厨が世界から駆逐される
きっかけになった

296夢の中で 3/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:09:06 ID:Q4MFJucA0
虐待厨は自己顕示欲も強い種族だ
それが犯罪であろうとも主張し自慢する奴もいる
また飼いを襲った際に
飼い主が悲しむ様子を眺めるために
わざわざ目立つ場所に死体を放置し
自分は目の届く場所に待機している奴までいる
そういうわけで
「くやしいかヒャハハハハハハ
オレが殺してやったんだよwwwwwww」
と、一人の虐待厨が飼いイチゲルゲの葬式に殴り込み
棺を破壊した上に悲しむ飼い主に
カミングアウトしたことで事態は一気に動いた
すぐさま取り押さえられた虐待厨は
その発言について厳しく問いただされ
拷問の末に「虐夢機」を口にした
もちろんそれは人々も知るものだ
しかしその虐待厨が口にした内容は
誰もが初耳だった
「虐夢機」は、ただ自由に夢を見ることができるだけでなく
特定の対象の夢の中に入り込むこともできるというのだ
そして、そこで殺されれば対象も現実で死に至る
最初は拷問から逃れたい一心のでまかせと思われたが
実証実験でそれが真実であると証明された
捕まえた犯罪者虐待厨を実験台にした殺害実験でも
「夢の中で殺されれば現実で死ぬ」事の正しさが
証明された

しかしこれはすぐには公にはならなかった
「もしも、虐待厨どもがその矛先を
人間へ向けたら・・・どうなる?」
恐怖からの隠蔽では無い
この時すでにほぼ方針は固まっていた
「虐待厨の絶滅」
人類が生きるにはそれしかないと
情報を掴み議論をするメンバーの誰もが思っていた
だが、どうすればいいのか
それが問題だった
虐待厨はその加害行為の歴史から
常に人々から石もて追われてきた
だが、「完全駆除」に成功した例は無い
人里から離れ山に逃げ込んだり
あるいは漂流して無人島に
もしくは地下洞窟に
とにかく奴らのなかにはゴキブリのように
しぶとく「生き延びる」事に長けた個体が
少なからずいるのだ
そして、そいつらが「虐夢機」を手にしたまま
籠城を決め込んでしまえば
打つ手はない
「我々にも虐夢機があれば・・・」
メンバーの一人が悩んだ末に漏らしたこの一言が
一気に解決へ導く「神の一手」となった

297夢の中で 4/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:10:02 ID:Q4MFJucA0
その日、虐士は多くの注文を受けた
「虐待厨だけが使うなんてもったいないから
こっちにも売ってくれ」
そんな内容のメールが数多く届いたのだ
すぐさま「虐夢機」は売り捌かれた
在庫はあっという間になくなったので
半年待ちの状態になった
もちろんこれは「作戦」である
注文した人間は全員が対虐待企業の者だ
供給を上回る買占めを行う事で
虐待厨にこれ以上の「虐夢機」が渡ることを防ぐ
怪しまれてもいけないので
在庫が底をついても注文はそのままにした
少なくとも半年以上は
虐待厨が新たに「虐夢機」を手にすることはできない
だから、この半年以内に決着をつける事が
彼らの目標になった

そして「対虐待」を名乗る企業や組織の内部は
異例の状態になっていった
フカフカの枕、柔らかく軽い羽毛布団
安眠を約束する音楽など
数々の安眠グッズが全員に配られた
もちろんリフレッシュでもサボリでもない
仕事のためだ
構成員はその日から「寝る」ことが
仕事になった
その夜、虐待厨の一人は「虐夢機」を使った
現実世界ではもはや虐待は叶わない
だが夢の中でならいくらでもできる
地域や飼いへの手出しも許される
その結果が現実に反映されるということが
何よりモラルの低い彼には心地よかった
「ヒャ・・・?」
目を付けていた飼いセヤナーの夢に入り込んだ時
そこに戦闘服に身を包んだ兵士らしき人物がいた
「おい、そいつはオレの獲物だぞ
別の夢に行けよ」
他の「虐夢機」を使った虐待厨だと彼は思ったが
兵士は銃を彼に向けて発砲した
「あびぇ!?」
その虐待厨の意識はそこで途絶えた
後日、腐乱した死体が彼の自宅から発見されることになる
そして、これと同じ事が次々と起きた
使用者が全員死亡していたことで
虐待厨側には全く原因が分からない
しかしこれは、彼らの「絶滅」の
ほんの一歩目に過ぎなかった

298夢の中で 5/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:12:35 ID:Q4MFJucA0
「みなさん、『虐夢機』の使用を直ちに中止してください!」
虐夢機を購入し検証したという人間側から
「深刻な不具合が発見された」という公表が行われた
変死が起きて数日後の事だった
「夢の中で死ねば現実でも死ぬ」というのが
その内容だ
嘘は言っていない
そして、さすがに都合の良い事しか信じない虐待厨でも
それが本当だと即座に判断できた
それも皮肉なことに「虐夢機」をよく使えば使う者であるほど
その情報は信頼に値した
彼らは夢の中で「被虐生物」を虐待し死なせた
そしてそれは現実に反映される
ならば「逆もあり得るのではないか?」という事は
容易に想像できた
自由に夢を見ることは可能だ
しかし「事故」は、どの場所でも起きる
例えばスーパーカーを乗り回す夢を見ていたとする
「コントロールしきれずに100キロ以上の速度で壁に激突する」可能性は
当然あるし、さすがの「虐夢機」でも
そこまではカバーできない
普段ならそこで夢が冷めて終わる悪夢でも
「虐夢機」を使えば、そうはいかない
夢の中で死ねば現実の肉体も死ぬのだ
いつもなら「アイゴの戯言」と信じない
頭の軽い奴でも悪夢は見るし夢の中で事故も経験する
だから、虐待厨たちは「虐夢機」を返品し出した
当然、発明し発売した虐士は猛反発したが・・・
返品騒動が起きて1か月後には
空っぽの金庫の中に金銭の代わりに肉塊となって詰め込まれた死体が
発見されることになった
こうして、「虐夢機」を手にしているのは
人間達だけになった
虐待厨から対抗手段を完全に奪う事に成功した彼らは
すぐさま次の策を出した
「この世界から奴らを駆逐するぞ!!」

299夢の中で 6/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:14:49 ID:Q4MFJucA0
「虐夢機」を使えば虐待厨の夢はどれかすぐに分かった
武装した兵士たちが次々と夢に入り込み
虐待厨を血祭りに上げて行った
作戦開始の翌日、虐待厨はその世界で半減していた
知人がいなくなり、さすがにおかしいと思い始めた虐待厨もいた
もちろん、「虐夢機」を使った誰かの仕業と気づく虐待厨も
だが、自分たちの手に「虐夢機」は、もう無い
だから人間に訴えるしかなかった
しかし・・・・・・・・・・・
「いいんじゃねーか、お前らがいなくなっても誰も困らねーし」
返答は絶対零度であった
「何もしてない虐待厨だっているんだぞ!!」
そう訴えた虐待厨は次の瞬間には通りすがりの兵士に殴り飛ばされた
「オレの幼馴染だった ゆっくりれいむは
そう訴えていたよ
けどな、『今はそうでもいつかやるだろ』と虐待厨は言って
オレの目の前で踏み潰しやがった・・・」
殴られた虐待厨はそれを聞くと
走り出した
記憶にある、あの兵士はあの時の人間の子供だと確信した
殺される前に気付く前に逃げるべきだと決断した故の行動だった
この虐待厨は頭が良かった
野生のゆっくりなら潰してもいい
人間の子供も直接手出ししなければ甚振っても
法律で裁かれることは無い
それに気づいての犯行だった
バレたら自分はあの場で殺される
それに気づいたからただ「逃げる」を選ぶことができた
しかしもう訴えに行くことはできない
あの兵士に遭遇する恐れがあったからだ
もし、その時にあの兵士が思い出していたら・・・
一巻の終わりだ
訴えるどころではない、その場で確実に殺される
兵士のゴーグルの向こうの目の憎悪は
それを物語っていた
「子供だからどうせ忘れるだろ」とタカをくくっていたが
実際は真逆だった
憎悪は蓄積していき
あの子供は虐待厨を狩る兵士の一人に成長していた
過去に同じような目に遭わせたのは、あの子供だけではない
自分は一体どれだけの「兵士」を作り出したのか・・・
せめて仲間の虐待厨に知られないよう、リンチに遭わないよう
震えながら夢の中で殺されるまで過ごすことしか
その虐待厨はできなくなった
彼の息の根を止めたのは
先の兵士だった

300夢の中で 7/7 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/09/02(木) 18:16:04 ID:Q4MFJucA0
1年後には、たまたま「善行」を働いたので
保護されていた一匹を除いて
虐待厨は世界からいなくなっていた
世界に張り巡らされたインターネットの網
衛星の監視
それらから逃げられる虐待厨はいなかったのだ
「虐夢機」にそこから夢へのアクセスを可能にした
その高性能さが仇となり
「虐夢機」生みの親である虐待厨は種族ごと駆逐された
そして、虐待ができないストレスから
保護されていた最後の一匹の虐待厨が死んだ時
この世界から虐待厨は絶滅した
これは世界中から歓迎された
虐待厨の存在を見るには
図書館にある「虐待厨」学習コーナーに行けば
容易に見られた
奴らが利用した「忘却」の恐ろしさを知った人類は
「虐待厨」を決して忘れないよう
その恐ろしさを下劣さを子々孫々に伝えられるよう
ありとあらゆる手段を模索し実行した
虐待厨は「人類の敵」として
「絶滅が喜ばれた最悪の敵性生物」として
その世界で永遠に語り継がれていくことになる

(おわり)

301返答1/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/10/20(水) 03:50:46 ID:rG/P.Fqk0
虐広はその地方では一流企業に当たる「ギャクコーポ」の
エリート社員だ(と本人は思っている)
虐待教育が施される(生徒が小動物や幼児の虐殺に走り今は無い)エリート校出身で
その学歴を常に鼻にかけ経歴を自慢してもいた
当然、虐待許可証を持っており「飼い」への手出しも許されている
(そんなわけがないが、当人はそう思い込んでいる)
ある日、別の地方の大企業「アイファンディング」との取引が持ち上がった
彼らが出した条件はただ一つだけだったが
それが虐広ら虐待厨やそのシンパには苦痛を強いるものだった
『被虐生物の定義禁止』
その企業が言うには、そんなものは虐待厨たちの身勝手なレッテルであり
科学的にあり得ない区別である事
また、企業の地方は過去に虐待厨が暴れて荒廃した事があり
社員たちはこういったものへ、とても敏感だった事などが
理由として述べられた
社長はこれを飲むことにした
虐広らもまた渋々受け入れたが・・・・・・
「面白くねぇ!!」
不満たらたらである
虐広はその日、憂さ晴らしをするべく公園に出かけた
ちょうど、ゆっくりまりさが跳ね回っていた
その帽子には金バッジがあったが関係ない
「ひゃっは〜!!」
虐広に蹴飛ばされ、そのまりさは
呆気なく死んだ
虐広はスッキリした顔で家路についた

302返答2/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/10/20(水) 03:51:55 ID:rG/P.Fqk0
次の日、出社すると会社がざわついていた
なんでも、社長と懇意だった警察署長が逮捕され
警察署もまた完全一新されるらしい
「どうも、事件をろくに調べなかったことが原因らしいぜ」
同僚の話によると、事件の顛末はこうだ
トイレに行っている間に引っ越してきた女性の ゆっくりまりさが
何者かによって殺害された
すぐに警察へ通報がされたが
署長からの圧力で捜査は打ち切られた
女性はすぐさま本社に連絡をし、捜査が再開されたが
「金バッジ? そんなものアイゴが勝手に決めた定義だろw」
そう言って署長がまたも捜査を打ち切った挙句に
証拠品や公園の監視カメラの映像まで廃棄した結果
本社の要請で動いた本庁が署長を逮捕
その捜査が昨日のうち行われ、それだけでも署長がやって来た
数々の違法行為が発覚
現在もなお捜査は行われているとの事だった
話はこれで終わらない
目撃者の証言で個人特定にこそ至らないものの
犯人が「ギャクコーポ」の社員であることまで判明したのだ
取引先は激怒した
その被害者は取引先の社員だったのだ
この街に来たのも取引の話し合いのためであって
昨日、本社の命令で引っ越して街の様子を見るべく散歩していたらしい
虐広は蒼くなった
その犯人は、どう考えても虐広だ
覚えもある
近々、取引中止か否か返事を聞くため社員が本社に来るらしいが
この街で虐広が虐待をするのはしばらくは無理だろう
「アイゴめ、金があるからって威張りやがって・・・」
しかし虐広は自分が悪いなどとは微塵も思っていない
取引先が悪いのだと思っていた
しかし、それを口にすることは許されない
それに、ほとぼりが冷めるまで虐待は控えねばならない
虐広はストレスをぐっとこらえた

303返答3/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/10/20(水) 03:52:56 ID:rG/P.Fqk0
数日して
仕事のストレスが発散されること無く虐広はむかむかしていた
お昼を食べようと食堂に行く
こんな状況なのだ、せめて美味しいものを食べなければやってられない
しかし・・・・・・
女子高生らしい少女と母親らしい女性がそこにいた
被虐生物を連れて
「おいアイゴども!!誰に断ってここに居やがる!!」
虐広はつい数日前に起きた事件をすっかり忘れ
目の前にいるのがその取引先の社員だという事を知らぬまま
二人に怒鳴り散らしながら
エビフライを食べていたセヤナーを叩き潰した
「いやあああ!セーちゃん!!」
「!?それが、それがあなた方の返答ですか!!?」
女子高生が悲鳴を上げて女性は抗議の声を上げた
この時、虐広は女性の抗議に疑問を持つべきだった
通常ならこういう時は「何をするんだ」と言うものである
「返答か」などと聞いたりしない
しかし虐待厨である虐広は虐待厨らしく
すでに思考を停止していた
「やかましい!!」
虐広は笑いながらセヤナーを庇う女子高生を蹴飛ばした
「何しやがるテメェ!!」
当たり前だが次の瞬間、女性がキレた
「あ、やんのギャ」
虐広の啖呵は途中で悲鳴に代わった
ものすごい威力の鉄拳が女性から放たれ
虐広の顔面にめり込み、その肉体を廊下まで吹っ飛ばした
「何事だ!!」
「!?これは・・・・・!!」
吹っ飛んだ虐広と入れ違いに、騒ぎを聞きつけたのか男数人が食堂に駆け込む
見たことが無い野戦服らしい服装に銃を肩から下げていた男たちだ
少なくとも、この企業の社員ではないと虐広は分かった
彼らは女子高生とセヤナーを助け
女性から色々と聞いている
いや、指示を受けている
さすがの虐広も、自分が何をしたのかを理解しつつあった
「これが、この会社の返答だそうです」
虐広は嫌な予感を覚えてそっと食堂から遠ざかるべく這って進んだ
「了解しました・・・やるぞお前ら!!」

304返答4/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/10/20(水) 03:53:47 ID:rG/P.Fqk0
虐広が、もう少しでエレベーターに辿り着くかと言う頃に
「ぎゃああああああああ!!」「な、何・・・ぐあああ!!」
銃声と破壊音、断末魔が食堂から響いた
虐広の隣をショットガンで撃たれた虐待厨の肉体の一部がバウンドして通りすぎた
「!!」
咄嗟に虐広は立ち上がり階段へ駆け込む
そのすぐ後から銃弾が走り、虐広のいた廊下の床を抉った
虐広は上に上にと駆け上った
下からは相変わらず悲鳴と銃声が響いてくる
途中ですれ違った社員には何も告げず
一人だけ屋上に逃げ伸びると
そこのカギを閉じた
永遠に続くかと思われた殺戮は、やがて途絶える
そっと耳を澄ますと、真下の社長室の会話が聞こえた
「良かったじゃないですか、被虐生・・・セヤナーは死ななかったんだし
ここは示談で済ませましょう?」
社長の大きな声はよく聞こえた
「ほら、あなたたちだってお金が欲しいでしょう?
よく考えて受け入れ」
銃声が響いて社長の声は途絶えた
「取引相手でなく駆除対象だったようだな、この企業は」
食堂でも聞いた男の怒鳴り声と
何かを蹴飛ばす音が響いた
虐広は涙を流した
まさか、こんなことになるなんて思わなかった
この会社はもう終わりだろう
明日からどうやって生活しようかと虐広は考えたが・・・
それには、まずここから生きて出る必要があった
「社員を調べろ、人間は追って調査すればいいが
虐待厨は生かしておけん!」
虐広は心臓が跳ね上がるのを感じた
出社記録を調べれば自分が出社していることが分かってしまう
人数を調べれば、誰がいないのかを把握されてしまう
「・・・隊長!」
「なに、どこかに隠れている奴がいる可能性があるだと?」
しかしながら、虐広の願いとは裏腹に戦闘員は優秀だった

305返答5/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/10/20(水) 03:55:24 ID:rG/P.Fqk0
『こいつらアイゴだろ、なんでこんなに攻撃的なんだよ?』
虐広は知らなかったが、
虐広らのような虐待厨がすべての原因だった
最初こそ平和的解決を計る者たちが多かったが
結局は虐待厨の増長を招き
また、被害者を黙らせることで問題そのものを無かったことにしようとする
「事なかれ主義者」たちの増加にもつながった
次第に募っていった不満は、武装蜂起と言う形で爆発した
一切の慈悲も無く命乞いも聞かず虐待厨をただただ駆除するだけの攻撃
「事なかれ主義者」たちは非難したが銃弾が彼らに返答として贈られた
血の雨が降り注いで廃墟が生まれた後で
人々はようやく収まりその地方の風土は一新された
今、アイファンディングのある地方に虐待厨は一匹もいない
彼らにもはや生存権は認められず
入ってくる端から駆除されていた
だが、虐広にはそんなことは知った事ではない
自分の存在に気付かれた事が重大だった
先ほど食堂であんなことをしたのだ
生かして帰してもらえるわけがない
虐広は声を潜めながらじっと静かに息をひそめた
「いたぞこいつ!」
下のどこかで声がして銃声が響いた
どうやら、別の誰かが撃たれたようだ
「これで全部か、後は逃げたみたいだな」
社長室から出て行く足音が続き、静かになった
虐広はそっと耳を澄まして音がしなくなったことを確認すると
屋上のドアのカギを開けて中に入った
血の臭いが充満し、動く影は一つも無い
虐広は狂喜乱舞した
生き残ったのだ
自分ほど優秀な社員ならどこでも雇ってくれるだろう
こんな会社ともおさらばだ!
そう思いながら一階まで飛び降りるように進み
少女と出くわした
あの、セヤナーの飼い主の少女だ
「きゃああああああああああ!!!」
その少女は悲鳴を上げて
手にしていたハンドガンを虐広へ向けた
虐広は反応できず少女に弾倉の全弾を叩き込まれて死んだ
これは、別に特殊な行動ではない
人間はゴキブリが目の前に飛び出して来たら
反射的に叩き潰そうとするものだ
今起きたのは彼女の地方におけるそれであり
ごくごく普通の反射であり反応なのだ
「どうしました・・・!これは・・・!」
「すいません、我々のミスです!」
「いいえ、気にしないでください」
そんなやり取りが虐広の死体の前でされていたが
彼はそれを知ることなく地獄へ落ちた

この事件は大々的に取り扱われ
ギャクコーポレーションのあった地方もまた
虐待厨駆除の大嵐が吹き荒れることになるのだが
それはまた別の話である

(おわり)

306えりーとの生キ様 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/11/11(木) 20:19:36 ID:NDlRXfkI0
虐洋はエリートサラリーマンを自負している
彼は虐待厨ではあるが、問題は起こしていない
理解ある上司と部下に恵まれ
不況の中でも悠々自適なプライベートを送ることができる財もあった
もう一度言う、問題は起こしていない
「問題が起きる」とは「騒ぎになる」あるいは「刑事罰を受ける」
もしくは「訴訟を起こされる」事だ
虐洋は例え「飼い」を殺しても
そういったことになったことは一度も無い
金をたたきつければ相手は黙る、
黙らない相手は黙らせる
それでも無駄なら上司が割って入って相手を警察に引き渡すだけだ
こんな生活はこれからも続くだろうと
彼は確信していた
だから、喫茶店で「ゆっくりまりさ」と対話していた少女がいても
「くそごみ連れてくんなよwww」
玩具かサンドバッグとしてしか見なかった
少女はムッとしたが無視を決め込む
「聞こえてねーのか、ここは被虐生物立ち入り禁止なのwww」
聞こえるように大声でわめいていると
店員が少女に出て行くように促した
少女はまりさを抱えると叩きつけるようにトレイに金を置き
店員を睨みながら出口へ向かう
虐洋の隣を通過した時
「おっと、悪いイな」
コーヒーをまりさに浴びせた
「いやああああああああ!!マリちゃん!!」
少女は悲鳴を上げる
こんなこともあろうかと、コーヒーはブラックだった
まりさは即死だ
虐洋は泣きわめく少女を見て笑い転げた
「死ねぇ!!!!!」
「へ?」
だから、席を立っていた少女の姉からの反撃へ反応が遅れた
そもそも、「誰かに反撃される」など思いもしなかった
華奢な少女が持ち上げた喫茶店の椅子は虐洋の頭蓋骨を粉砕し
醜い脳みそを潰しながら床に叩きつけた
「お前も同罪よ糞店員!!」
妹を追い出そうとしていた店員は慌てて止めようとしたが
その姉に殴り倒された挙句に馬乗りになられて幾度も殴られた
店長はと言うと・・・
「てめぇ!オレの娘のどこが悪かったか言ってみろや!!!」
遅れて入ってきたため、タイミング悪く店員が少女妹を追い出そうとしたのを目撃した
少女姉妹の父親に問い詰められていた
「てめぇらのせいでマリが殺されちまったじゃねーか!!
この人でなしが!!!!!」
虐洋がまりさを殺したことで怒りがヒートアップし
店長は父親に何度もテーブルに顔面を叩きつけられる羽目になった

307えりーとの生キ様 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/11/11(木) 20:21:27 ID:NDlRXfkI0
虐洋は喫茶店で死んだ
自分自身の自業自得で招いた死神に殺されたのだ
事件の後、喫茶店は潰れた
店員と店長は負傷で済んだが、警察は父子の正当防衛を認め
逮捕すらしなかった
代わりに店長と店員が逮捕された
今回の父子だけでなく、他にも数多くの苦情が寄せられていた上に
「共犯者」として被害届も多数受理されていたからだ
店員は虐洋の横暴を黙認していた
それが飼い主への加害行為であったとしても
そして店長は・・・
「わ、私は知らない、あの件は客がテーブルを倒して暴れたからつまみ出したと・・・」
「ろくに確認もせずに、か?」
いわゆる「見て見ぬふり」「事なかれ主義」を地で行く男だった
本来止めるべき立場であるところ、それをせず被害を拡大させた責任を問われ
店員ともども牢に入れられることになった
彼の実家の喫茶店の本店は賠償金の支払いで倒産した
店長も店員も知らぬ間に顔写真含む個人情報が出回った
二人とも出所後は地獄だろう

虐洋の事件は、ただちに彼の勤める企業に伝わった
事件が起きたその日のうちに
取引のあった企業がすべて一斉に手を引いた
虐待派に所属する企業すら例外なく手を切った
「飼いに手を出すバカどもと手を組めるか!!」
彼らもまた虐待厨の横暴で辛酸をなめ
人々から石もて追われる過去があったのだ
同じ虐待派だからと安心しきっていた企業は
仕事も来なくなり、間もなく倒産した
社員も社長も名簿が出回ったことで再就職は不可能になり
全員が不幸な末路を辿った

この事件は虐待・非虐待問わず界隈を跨いで知れ渡り
「バカ一匹のために滅んだ企業」ということで
長く語り継がれることになる

(おわり)

308妄想と現実 1/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/12/17(金) 20:32:37 ID:KQMM3FJM0
「アイゴは愚か」「アイゴは身勝手」
「だからアイゴは虐げるべし」
それが虐待組織で誰もが教わる内容だった
もちろん根拠など無い
ずっと以前から伝わってきた伝統だ
そしてそのせいでトラブルが絶えず
そのトラブルを被害者のせいにして・・・
と言う、堂々巡りの果て
今や虐待組織への不満は溜まりに溜まり
『爆発』の時はは刻一刻と迫っていた
しかしそんな状況でも「アイゴごときに何ができるw」と
虐待厨は事態の改善をすることなく
それどころか増長はますます強くなり
相手の導火線をどんどん縮めていた

そんな環境になってしまった世界のとある企業
「アイギャクコンサルタント」は社内の空気が引き締まっていた
と、言うのはカントーの大企業シルフカンパニーとの取引が決まったからだ
ここにこぎつけるまでに長い時間と多くの金銭や人員・物資が動いている
向こうでは当たり前の社内環境は以前までその企業には無かった
まず「ポケモンはものではない」という向こうの常識を叩き込むところから始まり
特別講師を呼んでの講習や実習、ポケモンや社員のための設備などなど
カントーの企業と同じ水準まで持っていくのに四苦八苦した
当然ながら虐待組織とそのシンパの精神が足枷になっていたのは言うまでもない
社内の虐待派や虐待厨からも不満が出たが
相手は天下の大企業である
その取引がもたらす利益は彼らの不満を押さえつけてでも社内刷新を実行するに値するものだった

309妄想と現実 2/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/12/17(金) 20:34:15 ID:KQMM3FJM0
「くそ!面白くねぇ!!」
虐待厨の虐部は椅子に座ってぶつくさ文句を言っていた
彼は虐待厨にしては頭が良かったが
その部長の座は他人の手柄を横取りして得たものだ
当たり前だが刷新が進められている今となってはその手は使えない
それどころか、これまで泣き寝入りしてきた社員や元社員が一丸になり
彼を窓際まで追いつめつつあった
今では碌な仕事も無いお飾り部長が彼の席だ
しかしそれでも部長は部長であり
給料も待遇も良い事から彼はそのうち文句を言うのをやめた
働かなくても金が入る環境が居心地良い事に気付いたのだ
それに部長と言う権力を使う事も出来た
欲しい菓子は部下に買いに行かせることもできたし
仮眠室を占拠して昼寝をすることもできた
ただ最大の不満は「虐待」ができない事だった
シルフカンパニーはかつてロケット団と言うマフィアに占拠された過去があり
そしてイッシュを中心に吹き荒れた「ポケモン虐待」の波を食らった事で
一層その目を強く光らせることになった
「どこのお店にしようかな?」
ふと、うっぷん晴らしの相手を虐部は見つけた
愛護派の合太だ
「アイゴは虐げるべし」とは虐待組織の合言葉である
だから、こいつはサンドバックにしても問題は無い
しかし暴力に訴えることはできない
仮にも部長職がストレス発散で社員を暴行したなど
身を亡ぼす以外の結果は想像できないし
それが分からぬほど彼も愚かではなかった
だから、ちょっとした悪戯を思いついて実行しただけだ
少なくとも本人はそのつもりだった

310妄想と現実 3/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/12/17(金) 20:36:00 ID:KQMM3FJM0
「部長!キャンセルってどういう事ですか!?」
合太が見ていた店の予約を調べた虐部は
それが会社の名前で予約されているのを確認すると
こっそりキャンセルした
それも当日のドタキャンだ
当然、キャンセル料金は派生するし、そうでないと面白くない
「俺に隠れて飲み会しようなんて生意気なんだよwww」
「飲み会じゃないですよ!取引です!!」
「同じことだwww」
すると、電話の向こうで何やら小さな短い会話の声がした
そして電話の主は変わった
「キミかね、合太君の準備した取引の話し合いを勝手にキャンセルしたのは?」
恐らく取引相手だろう、と虐部は見当を付ける
それも声から中年の男性だ
相手企業の重鎮だと分かったものの
しかし虐部は動じず続けた
「退いたら負け」は虐待組織の標語である
自分が悪かろうが加害者と誰が見ても見えようが
自分の非を認めることはすなわち敗北だと彼の組織は教育していた
「おう、残念だったなおっさんwww
ま、あんたのとこの小さい取引なんざウチは必要ねーから他当たれやwww」
「そうさせてもらう」
あっさりと相手は取引中止を了承した
「合太君には申し訳ない事になったが仕方ない
それがそちらの総意なら、な」
「総意」と言う言葉に虐部は気を良くした
自分は会社の代表として見られているのだと
まるで社長になったような気分を味わっていた
「それと、キャンセル料金も全額そちらの会社に負担してもらう
被害に遭ったのはウチの系列の店だ、譲れん」
「おおwけっこうけっこうwww
裁判でもなんでも起こせや糞ジジイwwwwww」

溜息をついて男は電話を切った
合太は真っ青だ
取引が中止になっただけでなく、キャンセル料金も全額負担だ
それも自分のミスで・・・
そんな合太に男は微笑んで言った
「合太君、話があるのだけどいいかな?」
「はい」
男は合太に耳打ちをした
それは合太を卒倒させるのに十分すぎた
「いかん!ショックが大きすぎたか!!」
「何の音ですか!?って何したんですか支部長!?」
「すまん、救急車を呼んでくれ!」

311妄想と現実 4/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/12/17(金) 20:38:27 ID:KQMM3FJM0
社長室で社長ら重役に叱責されながら虐部は事実を知った
「社長、お言葉ですがやったのは合太です、あいつが悪いんです!」
「お前が手出しさえしなければ成功していたんだよ馬鹿野郎!!!」
合太の取引相手は
今この企業が契約取り付けに必死になっている「シルフカンパニー」だったのだ
苦労の末にどうにか契約の予約までこぎつけ
相手の系列の飲食店を合太は予約し
そこで正式な取引が行われるはずだった
それが虐部のストレス発散で白紙になっただけでなく
シルフカンパニーは今後二度と取引をしないと通達してきた
「我々との小さい取引は御社には必要ないそうなので他を当たります」
その上、店が出した損害の賠償請求まで要求されている
「終わりだ・・・もう・・・」
怒鳴る気力も無く部屋の隅で崩れ落ちている重役もいた
「シルフカンパニー」との取引は、企業一丸で強引に刷新をしてでも為すべき
まさに企業の運命を左右する大取引だったのだ
それが、たった一人の身勝手で御破算になった
これから先は強引な刷新が生んだ赤字損益との闘いの日々だ
それに損害への賠償も加算される
取引後の利益はもう望めない、自力で何とかするしかない
一か月後、努力空しく「アイギャクコンサルタント」は経営困難になった
そんな企業に救いの手を差し伸べたのは合太だった
あの場でシルフカンパニーの支部長にスカウトされた合太は
退職後に採用され、支部長の片腕として活躍していた
そして元居た企業の危機を聞いて支部長に相談したのだ
支部長としてもその企業に怨みなど無い
取引白紙は企業間の仕事として仕方なくしたことではあるものの
それが原因で倒産となり罪なき社員が路頭に迷うのは心が痛んだ
そこで、企業を吸収合併する形で取り込み再生させることにしたのだ
ただし・・・・・・・
虐部を含む虐待派や虐待厨は、その恩恵に授かることは無かった
会社を危機に陥れた害虫として排斥される運命が待っていたのだ
当然、虐待組織から抗議は来たが・・・
「あなた方が自分の組織の構成員がしでかした事件の被害者に
まともな対応をしたことが一度たりともあったかね?」
支部長は全く取り合わなかった
そして彼がバックに付いた被害者たちは次々と裁判を始めた
次々と敗訴を重ねて行き構成員の逮捕も相次いだ虐待組織は
半年せずに壊滅した

312妄想と現実 5/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/12/17(金) 20:40:49 ID:KQMM3FJM0
「くそ!面白くねぇ!!」
虐部は空き缶を蹴飛ばして吐き捨てた
今の彼は企業の一員でも無ければ虐待組織の支援も無い
ただの一虐厨だ
彼は一年経たずに文字通り「すべて」を失った
就職先もそこでの地位も、後ろ盾の組織すらも
巻き添えを食う形になった仲間であったはずの虐待厨たちは彼には冷たかった
「お前が余計な事さえしなければ!!」
所詮、暴れる仲間が欲しいだけの慣れ合いグループである
瓦解するのは早かった
しかし虐部はそれを認めない
それどころか、強固な結束の鉄の組織だったと未だに信じて疑わなかった
虐待厨に「反省」の二文字は無い
逆上か、あるいは増長があるだけだ
彼は今度あの合太を見たら殺してやろうと心に誓った
そんな彼にさっそく
綺麗な女性を連れて歩く合太が目の前を横切るのが見えた
次の瞬間には憎悪が燃え上がり彼は走り出していた
「お前さえ、いなければ!!」
まずは連れの女性を虐待してから合太をゆっくり殺そう
目撃者がいようと構うものか
もはや捨て鉢の虐部に怖いものなど無かった
しかし、その腕が女性に届くより早く
「え」
虐部の両腕が切断され宙を舞った
「下郎が・・・」
女性は氷のような冷たい表情で腕を無くした虐部を見る
その右手にはいつの間にか抜かれた日本刀が光っていた

313妄想と現実 6/6 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2021/12/17(金) 20:41:36 ID:KQMM3FJM0
「あ・・・・・・・」
虐部は目の前の女性を見た事があった
半年前に生まれたばかりの虐待厨駆除組織の幹部だ
虐待厨たちの好き放題が自業自得で生み出した
暴力には暴力で応対する
かつて被害者だった者たちが集まった
虐待を憎悪する先鋭組織
何度か彼はその駆除に遭っていたが逃げ出すことには成功していた
しかし、今度ばかりはその幸運は無かった
「まて、あんたに喧嘩売るつもりは・・・」
言い訳を無視し女性は虐部の足・下半身・上半身をなます切りにした
ただし急所は刻まない
散々自分たちと自分たちの愛する存在をいたぶった虐待厨は
只殺すだけでは飽き足らぬ憎い奴
その場で可能な最大の苦痛を与えた上で地獄へ送るべし・・・
女性は虐部が激痛で悲鳴を上げる前に首を跳ねた
「大丈夫かい、久実?」
「ああ、大事ない・・・害虫を一匹駆除しただけだ」
合太は付き合い始めたばかりの婚約者が
斬って捨てた害虫がかつての上司などとは思わなかった
虐太の首は胴体から離れて通りすがりの車に踏み潰されていたため
もはや顔を確認することもできない
合太は気付かないまま清掃業者を呼び、「害虫」を片づけてもらった
虐太の行方はその日を境に不明のままになり
「逃亡した」彼の未払い分の借金は彼の仲間が背負う羽目になった
怒り心頭の虐待厨たちは賞金を懸けて虐太を全国指名手配したが
当然ながら虐太を捕まえることはできなかった

(おわり)

314一人のせいで 1/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/01/31(月) 12:07:23 ID:xV9ZbzNs0
ここは、虐待厨と人間が暮らす街
「すいませんしたぁ!!!!!」
虐壱はいきなり長に頭を鷲掴みにされ地面へ叩きつけられた
「いぎ、な、なにぼ・・・」
「コイツはこの通り馬鹿ですアホです!!!!
どうしようもねぇヤツなんです!!!!!
知らなかったんです!!!!!
堪忍してください!!!!」
必至で自らの頭を地面に叩きつけ血の染みを作る長を
汚物を見るかのような目で少女は見下していた
その腕の中には、虐壱が蹴飛ばした ゆっくりれいむ
「・・・・・・・」
少女は何も言わずに場を去って行った
「このバカ野郎が!!!!!
殺されてぇのか死にてぇのか!!!!!」
しかし虐壱の地獄は終わらない
少女が居なくなった後で長からの叱責と折檻が待っていた
「”飼い”に手ぇ出すなんざ心中と一緒なんだぞ!!!
テメェ一人の首で償いきれる罪じゃねぇぞ!!!
分かってんのか!!!!ああ!!!?」
殴られ蹴られながら、虐壱は思った
『たかが ゆっくりを蹴飛ばしただけなのに』
そして彼は意識を手放した

次に虐壱が目を覚ましたのは、虐待厨たちが住む団地の前だった
『この者は違反者につき、3日間の団地出入りを禁ず』
虐壱の顔写真と一緒に貼り紙が掲示板へ張られていた
無理矢理入ろうとしても虐壱は他の虐待厨に叩き出されてしまう
「3日我慢すればいいだけだから、な?」
この団地以外に虐待厨の住む場所は許されていない
しかし頭に血が上った虐壱は叫んだ
「二度と来るかよこんなクソ団地!!」
叫びながら虐待用に用意していた花火に火を付け団地へ放り込んだ
騒ぎを背に虐壱は走り出した
これでもう、あの団地には二度とは入れないだろう
他の街に行って受け入れてもらうしかない
さらばだ故郷よ!
「ぎゃあああああ!」「誰か、火を消して・・・ぐぎゃあああ!」
被虐生物じゃないんだから死ぬことは無いだろ
ただの花火に何を大げさな
そんな事を思いながら虐壱は団地の敷地を振り返ることなく後にした
窓の全てから炎と煙を吐き出し崩れていく団地に気付くことの無いまま

飛び出したはいいものの、虐壱にはアテなどない
全財産は団地の中だ
しかし取りに戻るなど虐壱のプライドが許さない
仕方なく考えた末に『町を出て行く前に手柄を立てる』事を思いついた
どうせ立ち去る町だ
だったら禁止されていた事をしても大丈夫だろう
虐壱はそう考えると
「ゆぎゃああああああああ!!」
すぐ近くを散歩していた 金バッジのゆっくりまりさを蹴り殺した
「へ、最初の一歩にしちゃ悪くねぇな!」

315一人のせいで 2/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/01/31(月) 12:08:18 ID:xV9ZbzNs0
虐壱は『飼い』ばかりを狙って虐待を続け、
満足してから町の外に出た
そして日が暮れる前に次の街へ駆け込んだ
「お、いたいた!」
そこでも虐待厨は生息していた
さっそく彼らの一人を捕まえ拠点を聞くと
そこに向かった
公園の隣に作られた木造のハウスがそれだった
虐壱は長へ挨拶もそこそこに武勇伝を語った
「こういう訳ですので、オレをここに入れて下さい
給与は要りません、雨風凌ぐ寝床で十分です」
さらに謙虚に出る
これで好印象は間違いないだろう
そう思ってお辞儀をした姿勢から長の顔を伺うと・・・
彼の顔は恐ろしく青ざめていた
そして震えている
その手から杖が落ちた
「な・・・・・な・・・・・・・・
何て事をしてきたのだお前は!!!!!」
長の大音声の怒声がハウスを揺らす
「何をしている皆!早くこいつを追い出せ!!
いや、突き出せ!!」
虐壱は訳が分からないという顔をした
「どうしたんですか、糞袋は糞袋
潰しても何の問題も無いでしょう?」
「何を言ってるんだ貴様ぁ!!!!」
長は杖を拾い上げると虐壱の頭にそれを叩きつけた
「この!この!疫病神め!!
さっさと出て行け!!でないと・・・!」
パアン!!
唐突に長の頭がはじけて消えた

「お、長・・・?」
頭が消失した長は後ろに倒れる
よく見ると部屋中に長の頭の破片が飛び散っていた
「突入!!」
ドアを破って特殊部隊がなだれ込んだ
「こ、公安・・・ぎゃあ!」
「よせ、オレたちは関係な・・・・・・ひぎぃ!」
次々と虐壱の仲間になるはずだった虐待厨は殺されて行く
「やめろ!!やめろおおおおおお!!!!」
虐壱は特殊部隊の一人に掴みかかると
次の瞬間には床に組み伏せられた
「確保しました!!」
「よし!!」
他の虐待厨は殺されるか足を撃たれ移動不能にされて転がっている
「頼む、助けてくれ、そいつはくれてやるから・・・・・・!」
特殊部隊はそれに答えず縛った虐壱を引きずって外に出た
「消毒を頼む」
「了解」
外に居た別の部隊が火炎放射器でハウスを燃やす
炎は木造の小屋を舐め尽くし中でまだ生きている虐待厨たちを
その命乞いの声もろとも生きたまま灰にしていった

316一人のせいで 3/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/01/31(月) 12:09:51 ID:xV9ZbzNs0
どうしてこうなったのか
応えは明白、『凶悪犯を匿ったから』だ
虐壱の犯行はすぐに元の街中に知れ渡り
即座に町に住む全ての虐待厨の駆除が行われた
虐壱が無事に街を出る事が出来たのは
たまたま彼の運が良かっただけであり
道を一つ間違えればすぐそこには駆除業者と保健所職員がいた
虐壱の放火で団地の虐待厨は外に出ていた1/5を除き死滅していたため
駆除は短時間で終わった
しかし「実行犯」である虐壱は見つからなかったため作戦は継続された
被害者やそのパートナーの証言、監視カメラの映像などから
虐壱の向かった方角は即座に特定された
街を跨げば無罪になるなど、虐待厨の妄想でしかない
行った先で騒ぎを起こし元居た町からの刺客の手にかかるケースが少ないだけで
やらかした虐待厨は、その瞬間からこの世での居場所を失うのだ
虐壱が隣町に入った時には『結末』はすでに決まっていた
彼が虐待組織へ加入しようなどと考えなければ
ついでに、この街の組織は駆除対象にならずに済んでいたことも付け加えよう
「貴様には地獄を用意してある、来い」
虐壱はすぐ殺されること無く、ある施設の中に入れられた
そこの厳重なセキュリティの向こうには『地獄』が待っていた
熱湯で煮られる者、死なない程度に殴られる者、あるいは焼かれる者
切り刻まれながらそれでも致命傷に至らず苦しむ者など・・・
阿鼻叫喚がその中に満ちていた
誰もが痛めつけられているが致命傷にならぬよう
なるべく長く生きるように最大限の配慮がされた施設である
「ここは、お前のような外道が収監される地獄だ!
お前らのために国が税金を投げ打って作ってくれたんだ!
ありがたく頂戴しろ!」
「やべろおおおおおおおおおおお!!!!!」
虐壱は叫んで施設の外に逃げようとしたが
縄は彼の体にきつく巻き付けられており
その端は兵士の手の中だ
逃げることなどできるはずもない

虐壱が外に出る事は二度となかった
『被検体989-TA1、死亡』
5年後、たった一行だけ管理記録に付け加えられたが
それが虐壱を示すものだと知る者はいない

(おわり)

317一斉駆除の理由1 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/02/17(木) 19:26:09 ID:AWDETpo20
「ひでぇことしやがる・・・」
ベテラン刑事のポリス警部は被害者の亡骸に縋り付いて泣く幼女たちを見て首を振った
事件が起きたのは昨晩、ドアの新聞受けから催眠ガスを注入され
被害者の老婆は強制的に眠らされた
その後、犯人はドアを開けて侵入、飼われていたミニイカ娘と屋内の金品を奪って逃走
その際、被害者は睡眠ガスに耐えられずそのまま永遠の眠りについた
老婆の死体を見つけたのは、休日を利用して遊びに来た娘夫婦の家族だった
ミニイカ娘の死骸は現場から数十m離れた路上で発見された
似たような手口の事件はこの町で多発していた
飼いゆっくりやミニイカ娘、チュンチュンやゲルゲといった同居人を誘拐された上に
金品を奪われた被害者たち
誘拐された彼女たちはその後の行方が知れないか、
今回のように無残な死体となって発見されることがほとんどだった
そして今回、ついに犠牲者が出てしまった
こうなっては一刻も早く犯人を逮捕し、次の犠牲者が出る前に犯行を防ぐしかない
「恐らく、虐待厨の仕業だな」
それは分かっていた、と言うか唯一分かっているのがソレだけだ
この犯人は虐待厨にしては頭が良いらしく証拠を残さない
いつもは自己顕示欲が強い奴らの側から仲間に自慢したりしてボロを出すのだが
こいつに関してはそれが全くなかった
「虐待厨め、いっそいなくなってくれたら・・・・・・」
会議室で重い空気の中、刑事の一人がそう呟いた
全員が発言した刑事に視線を集中する
「・・・え?」
それは、その一言への非難ではない、
起死回生の一手という希望を見つめる目だった

一斉駆除
この連続誘拐事件並びに強盗殺人事件は
そうして終結した
虐待厨たちは真犯人以外は訳の分からないまま
ただ駆逐されていった
途中で事件を知る虐待厨たちが真犯人を捕まえて差し出したが
「なんでもっと早く出さなかったんだ!!」
と、当たり前の怒号を食らいその場で射殺された

真犯人は被害者遺族たちからノコギリ引きに処され
30日以上苦しみぬいて死んだ上、
遺体はゴミとして処理された

(つぎ)

318一斉駆除の理由2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/02/17(木) 19:28:47 ID:AWDETpo20
「ったく、あいつらやりすぎやがって」
公園のベンチで虐待厨の虐起は酒を飲んでいた
不満の理由は簡単である
この街から「被虐生物」がいなくなったのだ
彼の所属する虐待組織が「一斉駆除」と称し
町中に散らばって「被虐生物」を虐待して回った
中には散歩中だった飼いや地域も含まれていたが
彼らには関係ない
「被虐生物は須らく虐待対象であり
害していけないなどと言うルールはアイゴの妄言である!」
と、駆除の開始前に組織の長は演説した
その結果、次の日から「被虐生物」は外にはいなくなった
野生や野良、地域の管理個体は全滅し
飼い主たちも自分のペットを外に出さなくなった
なら、今度から家に押し入ってやろう
少なくともそこには「被虐生物」がいる
アイゴの目の前で甚振って
怒り狂い泣きわめく様子をじっくり眺めてやろう
そこまで考えたところで
虐起の頭は突然破裂した
「こちらK班、目標クリア!他に標的は確認されず!」
サイレンサーを装備した拳銃を持った兵士たちが
虐起の後ろから現れた
虐起は自分がいつ死んだのかもわからないまま
地獄へ叩き込まれることになったが
理由は簡単である
これは「一斉駆除」なのだ
端的に言うと、虐起の言う通り虐待厨は「やり過ぎた」
彼らの行いはその街の住人から「敵」と認識されるに十分な暴挙であり
それまでの積み重ねから、人間サイドから引き金が引かれるのは
すでに時間の問題だったのだ
「アイゴどもに何ができるwwwww」
そう強がっていた虐待厨も醜悪な命乞いをしながら
特殊警棒で頭を叩き潰された
街の虐待組織は駆除され、建屋は逃げ隠れして生存している虐待厨を入れたまま
火をかけられた

こうして街から虐待厨は駆除された
なお、虐待厨に協力していた人間は命は奪われなかったものの
全員が極刑を言い渡され、生涯娑婆に出ることは無かったという

(つぎ)

319一斉駆除の理由3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/02/17(木) 19:45:29 ID:AWDETpo20
「被告を懲役3年に処す!!」
虐待厨の虐信に司法は判決を下した
虐信は原告の席を睨みつけ
「クソアイゴが覚えてろよ!!」
一切の反省も無く被害者遺族へ罵声を浴びせて法廷を後にした

それから、3年の月日が流れ
虐信は出所した
「あのアイゴども、どこへ行った?」
彼がまず真っ先にやろうとしたのは
被害者遺族への報復だった
5年前、彼は一人の少女を殺めた
「胴付きみたいなあいつが悪いに決まってるだろ!!」
虐信は少女を胴付きゆっくりと間違えて殺したと主張した
そしてそれは虚偽ではなかった
しかし、法律がそんな事で殺人を許すはずもない
まして、虐信はこの時点で不法侵入、器物破損、
窃盗(後に強盗殺人へと罪状を切り替え)の罪を犯していた
虐信は罪を軽くしようと虐待許可証を啓示してわめいた
命乞いをした
虐待愛好会にも助けを求めた
それらが功を奏して事件から二年後に異例の軽い判決が出たのだ
もちろん反省などしておらず
被害者への報復を彼は考えていた
だがその前に・・・
「ヒャッハー!!」
3年間できなかった虐待をすべく
彼は公園へ殴り込んだ
目の前にいたセヤナー目掛け足を振り上げた瞬間
タン!
乾いた音が公園に響いた
「へ?」
赤く染まる自分の胸と
背後を交互に見ながら虐信は倒れた
「ったく、今日はこれで6匹目だぜ」
悪態をつきながら虐信を撃った男は
保健所への連絡を始めた

虐信が収監されている3年の間に
虐待厨の立場は「一応人間」から「要駆除必須の害虫」へ
悪化していた
それまで暴虐に我慢に我慢を重ねていた人々は、
とうとう堪忍袋の緒を切ったのだ
ただ我慢しているだけの人々を「何もできない無力なアイゴ」と
小バカにし続け迷惑行為をエスカレートさせていた虐待厨たちは
怒りと憎悪を物理的な鉄槌としてその身に受けることになった
一気に解き放たれた鬱憤はすさまじく
「ひ、ひぎ・・・ゆるし・・・」
「てめぇらの改心猶予の期間はとっくに終わってんだよボケが!!!」
武器を捨て無抵抗を示し命乞いをする虐待厨すらも
次々と殺されていった
「ま、待ってくれ、オレは人間・・・」
「敵の味方は敵に決まってんだろが!!!」
そして矛先は、虐待厨の協力者たちにも向いた
テロリストに人権など無い
そもそも自分たちの人権を先に踏みにじったのは向こうの方だ
彼らを狩る人々の考えは、それで一致していた
もちろん虐信の所属していた虐待愛好会も例外ではない
虐信が軽い刑罰で済んだことで、怒りの矛先はそちらへ向けられた
被害者遺族に元自衛隊員だけでなく
大戦を生き抜いた元現役兵士までも居たことで
虐待愛好会はものの数時間で構成員もろとも灰になった
人々の怒りはそれでも収まらず長い間燃え続けた
1年以上にもわたって燃え盛った炎が終息した時
虐待厨の存在はどこにもなくなっていた
しかし人々は武器を捨てず、次に出る虐待厨を確実に息の根を止めるため
むしろ警備をより強化していった
虐待厨が暴れ回った地獄のような期間は
歴史の教科書に記され、今では小さな子供であっても
「虐待厨は害虫」と認識している
そんな事とは知らずにのこのこ出所した虐信は
人前に出たゴキブリのように駆除されたのだった

虐信の死は被害者遺族に届けられ、
彼を退治した勇気ある市民は表彰されたという

(これで終わり)

320G未満の存在ども 1/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/05/10(火) 12:36:33 ID:EAbYZjRE0
「きゃあ!」
街角で少女の悲鳴が響いた
「どうした?」
友人らしい別の少女が駆け寄る
恐る恐る最初の少女は「ソレ」を指さした
「なんだ、ゴキブリじゃないの」
駆けつけた少女は笑って殺虫剤をGへかけた
その場に一人の虐待厨がやって来た
そいつはここに来るまでは物陰に隠れながらゴミを漁り
また別の物陰へ・・・・・という動きを繰り返していた
明らかに人目を避けて行動している
しかし、この場には二人の少女がいた
当然ながら、両者は出会う
「ひぃ!?」
悲鳴を上げたのは虐厨だった
慌てて来た道を引き返すが・・・
その背に猛毒「ギャクチュウコロリ」が塗られたダーツが刺さる
虐厨はその場でもだえ苦しみながら息絶えた
「ったく、まだいたのかよ」
「迷惑よね〜」
虐厨はすでに人権をはく奪されていた
どうしてこうなったのか?
話は半年前まで遡る

世界を滅ぼす巨悪と変身ヒロインの戦いが、かつてあった
激闘の末にヒロインのチームは巨悪の副官を滅ぼし
世界を救った
降伏あるいは和解した巨悪の手下たち
改心したかつての巨悪のボスは
ある者は新しい生き方を見つけ、ある者は守るべき者たちを守ることにし
ある者は罪を償いべく、それぞれの道へ旅立った
さらに、かつて巨悪と争い変身ヒロインたちへ力を与えていた世界から
住人である妖精たちが移り住んできた
彼ら彼女らは特殊な能力で己のパートナーとなる子供を見つけて共に生きたり
あるいはグループ単位で独立し人々の手助けをしたりして
地球社会へ浸透していった
地域の紛争や貧富が解消していき
人類は、共に手を取り合い発展していくはずだった
「やつら」さえ、いなければ・・・・・・

321G未満の存在ども 2/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/05/10(火) 12:37:29 ID:EAbYZjRE0
「一緒にいた妖精がいなくなった」
子供たちから、こんな相談や通報が相次ぐようになった
当初こそ迷子、あるいは妖精自身が何らかの考えで身を隠しただけと思われていたが
傷つきボロボロになった妖精が発見され保護されたことで
事態は発覚し状況は一変した
「に、人間は危険だ・・・・・私たちをオモチャとしか思っていないのもいる・・・」
それは『虐待厨』と呼ばれる者たちの仕業だった
自らが『被虐生物』と勝手に判断した生命体を手前勝手な理由で襲い
その命を奪うことさえする彼らは人々から煙たがられていた
もちろん、人権はあったので犯罪に走ったり人の飼いに手を出すようなバカ以外に関しては
冷たい目で見られる以外の扱いを受けることはなかった
彼らはその欲望のはけ口として妖精に目を付けたのだ
だが、おいそれと手を出せるものではない
まず、きちんと向こうの世界で住民登録がされ戸籍がある「異世界の隣人」扱いであり
また、こちらの世界においては各々がパートナーに
あるいは直接政府機関に雇用されており
いわゆる「野生」などという個体は一切存在しなかった
つまり、手を出す事は『飼い虐待』という最大の禁忌を犯すことになる
それをした虐待厨は人権をはく奪され、危険動物として扱われ殺処分されるのが一般的だ
しかし彼らは一枚岩ではない
法律を無視する者もいれば人を好んで襲うバカもいる
どういうわけか、この手の連中は消されても消されても次々と湧いて出た
何より人権があるため、犯行前まで一般市民として社会へ溶け込んでいる
犯罪の対応は容易にできても未然に防ぐことは困難だった
そう、この時までは

322G未満の存在ども 3/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/05/10(火) 12:39:52 ID:EAbYZjRE0
事件を起こした虐待厨はすぐに見つかり捕まった上で裁きを受けた
しかし、事はそれでは終わらない
妖精たちの国との国際問題にまで発展したためだ
特に『虐待厨』を事件が発覚するまで保護するような姿勢が
妖精たちの国から問題視される
妖精の派遣や、交渉中の技術供与、さらに研究が解決まで中止されるという話になり
人間社会は腰を上げた
むろん、腰を上げるに至った最大の原因は『虐待厨』による被害を受けた人々が
先頭に立って怒りの声を上げたことであるが
妖精の国からの要請だけでなく、
現実的に『虐待厨』どもが社会に人間に与えてきた被害の数々
改善の見込みが無くエスカレートするばかりの凶悪さ
そして、今回は『飼い虐待』『誘拐』といった禁忌のオンパレードをしてくれたのだ
堪忍袋の緒を切った政治家や財界の著名人、大企業会長がいたとしても不思議ではない

かくて、事件へ関与していない虐待厨には理不尽なことだが
密かに法整備は進められた
大きな災害や事件の裏で着々と法律は制定されて行き
虐待厨が気づいたときは、遅かった
かつてあった人権は同胞の暴走への人々の怒りが爆発する形で
総数の半分と引き換えに失われたのだ
それでも暴走を無法をやめない虐厨は後を絶たず
当然の帰結で虐厨の地位もどんどん下がって行った
今や、G未満の汚物種族として確立している
「早く絶滅しないかしらね〜」
「生きているだけで人類を脅かすからな」
種族全体を駆逐するまでの人々の危機意識を買うには
理由として十分すぎることをしでかしてしまった
その結末が今のこの惨状だ
「虐厨は人類の敵と組んでいる」
そんなウワサも広まっていき憤激と憎悪は
楽観視して様子見をしていた虐厨たちの想像をはるかに超えるものへと発展した
「虐待厨は抹消すべし」
人々は虐待厨をすでに人間とは見なしていなかった
だから、扱いのシフトは容易に成された
かつての天然痘のように、研究に必要な個体のみ施設へ送られ
残り全ては駆除する事が決まった
文字通りの「全て」だ、例外は無い
山奥に居ても登山客に見つかれば通報された
隠れ家になっていた下水道はコロリの散布で全滅した

323G未満の存在ども 4/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/05/10(火) 12:41:30 ID:EAbYZjRE0
「お、オレが何したっていうんだよ!?」
声を上げて抗議する虐待厨もいたが
すでに耳を貸す人間は皆無だった
虐待厨が暴れていた時に抗議の声を上げた人々が有無を言わさず攻撃されたように
事なかれ主義者が被害者を黙らせ時に強制排除してまで
その場の平穏を保ったように
虐げられた人々と被害者、そしてその仲間は
今までされてきた事を扱いを丁寧に返した
彼らにとっては、それだけのお話だ
まだ改心したり贖罪したりの余地があるなら、ここまではしない
それが無いのが虐待厨であり、彼らに与した者らもまた同様である
それこそが長い年月をかけて虐待厨たちが作り上げた
ある意味における「信頼」だった
今も虐待厨はどこかで生きている
彼らは生命力としぶとさだけには定評があるからだ
しかし・・・・・
「よい虐待厨とは、人前に出ない虐待厨ではない
そんなもの、いない!!」
彼らがそれまで積み上げてきた悪行からの恨みの数々は
その生存を決して許さないまでに高まっていた
要望を送った妖精の国が驚くまでの過剰な駆除により
虐待厨は人前で見ることは全くといっていいほどんなくなった
しかし、絶滅はしていない
ゆえに
「あ、虐待厨」パーン!
「ぎゃあああああああああああ!!」
今日もどこかで発見者によって駆除されている

(おわり)

324抹殺理由1  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/06/06(月) 12:28:01 ID:e3n6DYGk0
ケース1:イキリすぎ

ここは、とある町
虐待厨も住んでいる、ありふれた住宅街だ
当然、そいつらの行動を目にする機会もある
「ああん、何見てんだコラ?」
今、一人の虐待厨が野生のゆっくりを虐めていた
それを見ていた一般人へ因縁をつけてきた時だった
タン!
その瞬間、乾いた音がして虐待厨の胸から鮮血が飛び散った
「あ、え・・・、なん」
タタタタタタタタ!
軽快な音と共に虐待厨はハチの巣と化した
「クリア!!」
そう叫んだのは銃を持った若い男だ
通信機でどこかと連絡を取っている
彼の仲間と思しきもう一人の男は、一般人を保護していた
「な、何するんだよ!こいつは野生しか虐待してねーだろ!!」
抗議の声を上げた虐待厨に、男は銃を向ける
「住民へ手を出そうとした時点で貴様らの人権は失われてんだよ」
抗議した虐待厨は額に穴を開けて中身を後頭部からぶちまけながら倒れた
そう、虐待厨らは一般人へ因縁をつけた時点で
『攻撃を行った』とみなされる
どっちに非があるかなど関係ない
虐待厨などという害虫によって一般人が害されるという
あってはならない事案が発生してしまうことこそが問題なのだ
虐待厨の命で事案発生を防ぐことができるのなら
安いものである
しかし、一般人をアイゴと呼び敵視して駆除される虐待厨は後を絶たたないのが現実だ
むろん、手を出さなくとも因縁をつけたり暴言を吐いたり
半径5m以内に近づけばその場で駆除されるルールだが
まだ自分たちを人間と同じと思っている虐待厨どもは
それを知らない者は少なくない

325抹殺理由2  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/06/06(月) 12:29:43 ID:e3n6DYGk0
ケース2:誤認

「許してください!し、知らなかったん・・・・・」
虐待厨の弁明は一発の銃声で永遠に途切れた
「こちらアルファチーム、クリア!」
武装した隊員たちの周囲には、虐待厨の死骸があちこちに転がっていた
ここは虐待厨のアジト
飼い実装石が襲われた事で通報を受けた部隊による襲撃を受けたのだ
虐待厨は知らなかったといっていたが、どうでもいい
『飼いを襲った』その事実だけで一味を一斉駆除するには十分すぎる理由と言えた
何よりも過去には『飼い専門』の虐待厨も存在していたのだ
言っていることの真偽などよりさらなる被害を防ぐための駆除が優先されるのは
当然といえよう

「ま、待ってくれ、知らなかったんだよ
地域ゆっくりだなんて・・・」
「そうだな!
そいつに加えてテメーは虐待禁止区域内で息をした挙句に
虐待を行った!
よって、死刑だ!!」
こちらの虐待厨はまだ運が良いと言えた
仲間や家族が自分のせいで駆除されるのを目にしなくて済むからだ
虐待厨の死骸は徹底的に調べられ
その所属グループと巣のある場所が特定される
この後、当然ながらこの虐待厨の仲間の拠点は一斉駆除を受け
全員が連帯責任で地獄へ送られた

326抹殺理由3  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/06/06(月) 12:31:46 ID:e3n6DYGk0
ケース3:無理解

「なんだよ、飼いか・・・・・・」
野生のタブンネの前に立つ小綺麗なリボン付きのタブンネを見て
虐待厨は言った
「けどな、邪魔するなら容赦しねぇよ!」
「こっちのセリフだゴルァ!!!!」
飼いタブンネを殴ろうと虐待厨が腕を振り上げた瞬間
真横から駆け付けた空手トレーナーのとび膝蹴りが
その頭蓋を砕いた
「大丈夫か! えらいぞ、よくがんばった!」
ご主人に抱きしめられタブンネは涙を流す
庇われていた野生のタブンネたちも礼を言いながら貰い泣きしていた
「人質は奪還した! 奴らの仲間を片付けるぞ!!」
しかし駆除作業はまだ始まったばかりだ
なお、彼らは駆除屋ではない
たまたまその場に居合わせただけのトレーナーたちだ
しかし、だからこそ
目の前で起きた凶悪犯罪を見過ごすことはできなかった
困ったときはお互い様である
「なんだお前・・・・・・ぎゃあ!?」
この日、一般住民の活躍で『飼い専門の凶悪な虐待厨一派』は駆除された
かかわった人々は後に警察から表彰され、
その名声を世に知らしめた

また別の場所では
「こいつ、さ、金さえ払えば飼いを殺しても許される、とか
そんな事ほざきながら暴れていたのよ」
そう言って駆除部隊の隊長は頭の砕けた虐待厨の死体を蹴飛ばし
目の前にいる虐待厨の長老に渡した
その後ろには虐待厨たちが控えている
「撃たないでくれ」「死にたくない!」
彼らは口々に命乞いをした
「いいだろう、撃つのはやめにしてやる」
隊長はそう言って部下の一人を手招きした
「待っていやしたぜ!」
そいつが手にしているものを見て、虐待厨たちは青ざめた
「燃やせ」
隊長が命令した次の瞬間、火炎放射器が文字通り火を噴き
虐待厨たちを断末魔と悲鳴を上げながら踊る虐待厨松明に変えていった

確かに一時期は虐待厨の言うように
誤認でも賠償で解決するケースもあった
しかし、虐待厨のおつむは彼らの都合が良い方向にしか考えなかった
金さえ払えば許されると勘違いした馬鹿どもによる
飼い虐待が相次いだため、即駆除が推奨されるようになるのは
大して時間はかからなかった
ようするに虐待厨どもは自らの手で人々の慈悲も仏心も剥ぎ取ってしまったのだ
今のこの扱いは彼らが望み人々がそれに応じて与えたものであるとも言えた

327抹殺理由4  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/06/06(月) 12:32:31 ID:e3n6DYGk0
ケース4:誘拐

近年増えているのが、虐待目的での誘拐である
秘かに行われるためにあまり表面化しないケースではあるが
それと罪の重さと苛烈な断罪とは話は別である
「ほ、ほら無事だから見逃して・・・・・・」
もちろん命乞いなどこの期に及んで愚の骨頂だ
この虐待厨どもの運命はソレに手を染めたその瞬間に既に決まっている
「ハナっから『ぶっ殺す』以外の対応ねーに決まってんだろがゴルアアアア!!」
「誘拐の時点で重犯罪だろーがドアホ!!!」
「殺せ!!一匹も生かすな!!捕虜を捕る必要は無い!!」
「言い訳なら地獄の鬼どもにでもたっぷりしろやぁ!!!」
その通り、もはや言うまでも無い
そもそも先の比較的軽い事例だけでも即刻駆除が決定するのだ
誘拐などという重大事案をすればどうなるかなど、
火を見るより明らかである
しかし、今殺されている虐待厨どものように
それを理解できない奴は後を絶たない
おそらくそれは生存者がいないため認知があまりされていないのも
原因ではないかと最近は思われている
「死んだか、次行くぞ!」
こんな重犯罪をしでかせば、実行犯だけで責任を取れるはずもないのだ
先の事例ですら所属グループが駆除されている
しかもこれはグループ一つで負えるような軽い罪ではない
町全体の虐待厨の命をもってしてやっとギリギリ贖うことができる
「な、なんだよ、オレらは何もして・・・・・あgy!?」
バレなければいい、などと虐待厨どもは言うが
バレないことはない
警察の捜査は甘くないのだ
それに、被害に遭った生物が脱走するなどして
割と早くバレるものである
バレてしまえば後は保健所と駆除チームの仕事だ
実行犯はもちろん、町の中にいる虐待厨そのすべてを駆除するだけ
だが残念ながら、近年の虐待厨はこの重犯罪を犯す傾向が強い

「もういっそ、奴らを皆殺しにしたほうは早くないか?」
「そうだな」
虐待厨から生存権そのものをはく奪すべし
全てを駆除すべしという意見が出るのは
そう遅くはなかった
それが実行される未来は遠くはないだろう

(おわり)

328絶滅種救済委員会 1/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/07/16(土) 20:04:52 ID:eOliB7XE0
「種の絶滅」、それは常に地球上で起きる事象である
気候変動、自然淘汰など原因は様々である
もちろん人類による過剰な狩猟あるいは生息域の破壊も例外ではない
そして・・・・・・
「次のニュースです、OO保護園で保護されていた
原種しぃ最後の一人が、園内に侵入した何者かにより惨殺されました
これにより、原種しぃ族は絶滅が確定しました」
ラーメン屋で勝利のラーメンを食らいながら
虐待厨の厨治はニュースを見ていた
これは彼の犯行である
今、問題になっているのは彼のような虐待厨による「被虐生物」の絶滅だった
血で血を洗う戦争の発端となったのもしぃ族をはじめとしたAA種族が
絶滅の危機に瀕したからだと言い伝えられている
しかし、激しい戦争は双方を荒廃させ
焼け野原で行われた「盟約」の調停によって終結した時には
AA種族はその維持すら困難な打撃を受けていた
だが、これでもう悲劇は起きないだろう
虐待派も分ってくれた
誰もがそう思った
しかし、歴史は繰り返された
実装石、ゆっくり、タブンネetc・・・
ヤツラは次から次へと手を出しては絶滅に追いやっていった
最初こそ対話路線でいた保護派も
幾度も繰り返された挙句に一切の反省もなく挑発的な虐待厨
そして、被害を受けた側をたたいて黙らせる事なかれ主義者と
虐待厨をかばう虐待派らへの怒りと憎悪で
散発的な抗争を起こすようになった
そしてとうとう、虐待側による一方的なテロリスト指定と
宣戦布告なしの攻撃により
戦争の火蓋は再び切って落とされた
前の争いと異なるのは、保護派が優勢で推し進め勝利したことだろう
虐待側は数はこちらが上とタカをくくっていた
だが、虐待厨は使えなさ過ぎた
味方をかまわず攻撃に巻き込む、勝手に逃げ出す
命令も聞かずに暴走するetc・・・
拠点は次々と陥落し戦える兵士の数も減っていき
気が付けば虐待派は矢面に立っていた
当然ながら、その時には相手の怒りは頂点だ
謝罪で許されるはずもなく、降伏か死かを突き付けられた
そうして、虐待派は敗者の立場へ追い込まれていった
虐待厨は最初こそ慈悲は示されたものの
その悪質さによって自業自得で温情は取り消され駆除一択へ変わった

その場の平穏のために虐待厨に味方した事なかれ主義者は、より悲惨な末路が待っていた
最大の利敵行為を働いた罪により、虐待に直接関与していなくても
虐待派と同様の扱いを受ける羽目になったのだ

329絶滅種救済委員会 2/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/07/16(土) 20:05:36 ID:eOliB7XE0
だがそれも今日で終わりだ、これは反撃の狼煙なのだ
厨治はラーメンを食べ終えると店を出た
次は『飼い』を狙うつもりでいた
愛護どもは無力なのだと思い知らせ現実を分からせる
それを続けることで徐々に虐待厨に昔の権威を取り戻してやろうと
厨治は思っていた
「こんにちは、厨治さんですね?」
そんな彼の前に中学生くらいの少女が笑顔でやってきた
「絶滅種救済委員会」という腕章を左腕の袖につけている
「私は絶滅種救済委員会の藍奈です!
ニュースで見たでしょう、あなたが殺したので原種しぃは絶滅しました!」
少女は言いながら、厨治にバスケットボール大のものを手渡した
「う・・・・うわぁ!?」
厨治は渡されたものを地面へ落した
それは、彼のグループのリーダーの生首だった
「あなたのお友達は先に地獄で待っていますよ
あなたも行きましょう!
生き残ってるあなたの仲間も送ってあげますから寂しくないですよ!
さぁさぁさぁ!」
いつの間にか少女は両手にナイフを持ち
二刀流で襲い掛かってきた
厨治は両腕で顔をかばったが左腕を切断され
悲鳴を上げて逃げ出した
ざっくりと左足の腱を切られる
転倒したところで右足の腱
這って逃げようとしたら右手をナイフで刺され地面に縫い付けられた

330絶滅種救済委員会 3/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/07/16(土) 20:06:27 ID:eOliB7XE0
激痛と絶叫の中で厨治は自分のされていることと同じことを
あの原種しぃ族にした事を思い出した
と、いうことは・・・・・・
藍奈が巨大な浣腸器を持ち出したので彼は青ざめた
「い、いやだあああああああああああ!!」
スカトロジェット
かつて「ちびギコ狩り」で流行し戦争の火種の一つにもなった
(戦争に発展したのは『飼い』にまで手出ししたからであるが)ものだ
いたってシンプル、劇物を「注入」し「ぶっ飛ぶ」様子を見るだけである
「あなたは、そう言って命乞いしたあの子を助けましたか?
今まで助けを求めた子を見逃しましか?
飼い主さんやパートナーの頼みを聞きましたか?」
藍奈の言葉に厨治は黙って震えるしかなくなる
この娘は自分の行動を知り尽くしている・・・・・・・
その事実を突きつけられた
下半身の衣類を剥がされ右腕を容赦なく切断される
「ま・・・・・・・・!!!?」
肛門へぶち込まれる浣腸器
一切の躊躇なく体内へ送られる大量の劇物・刺激物
「お、ご、ぎゃああああああああ!!」
ドバアアアアアアアアアアアアアアン!!
「・・・・・根性なしが!」
藍奈は下半身を破裂させ汚物と肉片と内臓と血液をまき散らした
厨治の傷口を蹴飛ばした
丸見えの脊椎を刺激されビクリと厨治は痙攣する
「もしも〜しリーダー?
破裂しちゃったんだけど・・・そう、破裂よ!
ジェットができる耐久性持ってなかったってことね
・・・ええ、そっちはあるから・・・了解」

331絶滅種救済委員会 4/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/07/16(土) 20:07:25 ID:eOliB7XE0
どこかへ電話を終えて少女はカバンからダイナマイト取り出した
「しっかし、こんなになってもまだ生きてるのね
しぶっといわ汚物のくせに」
厨治はダイナマイトを傷口に容赦なくねじ込まれた
さらに、無事だった臓器へ燃料系の液体を注入される
「こいつはサービスよ」
藍奈は厨治にジェットパック型の花火を付けた
「3、2、1・・・・・ごー!!」
厨治は地面に赤い道を作りながらものすごい速度で内臓を引きずりながら飛んでいく
味わったことのない激痛と臓器不全が引き起こす苦痛などの
地獄の苦しみの中で意識ははっきりしていた
その眼には徐々に接近していく仲間たちとの憩いの場が映る
ガシャン!
廃墟の動かない自動ドアを顔面で突き破り
驚く仲間たちの間を通過し時に跳ね飛ばし時に真っ二つに折りちぎり
最終的にリーダーの行方を捜しまわって疲れ
奥のソファに寝ていた副長の
太った横腹にめり込んで厨治は止まった
口から噴水のように内臓を吐き出しおかしなダンスを踊る副長は
厨治を中心にさく裂した花火の最初の犠牲となり
脂肪を部屋中にばらまいた
「ありゃ〜・・・燃料の加減を間違えちゃったかな?」
藍奈はものすごい勢いで炎上する虐厨の巣窟を見てつぶやいたが
真相はそうではない
厨治に注入された燃料の量ならば彼女の想定内の炎上で済んでいた
しかし、そこに副長の脂肪が加わったため
さらに燃焼が拡大したのだ
「ま、いっか」
とろ火でじわじわなぶり焼くつもりだったが仕方ない
あの炎の勢いでは、たぶん即死だろう・・・
「あづいあづいあづいいいいいい!」
と、思っていたら燃える巣から虐厨が飛び出してきた
「・・・ま、結果オーライね」
目の前でごろごろ転がり苦しみのたうちながら
骨も残さず灰になる虐厨たち
「だ、だずげろ、水、よこせ・・・・・・・!」
虐厨の中には助けを求めて彼女へ手を伸ばす者もいたが
「それが人に助けを求める態度だとしたら
コレしかあげらんないわ!」
藍奈は延ばされた手を蹴飛ばした
「ぎゃああああああああ!!」
半ば炭化しかけた腕はすぐに折れてよく飛んだ

332絶滅種救済委員会 5/5 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/07/16(土) 20:08:14 ID:eOliB7XE0
「次のニュースです、原種しぃを絶滅させた虐待厨のグループが壊滅しました」
翌日には、出来事はニュースとして放映された
「警察は汚物の駆除に貢献した委員会に、感謝状を・・・」
もうこの世界では虐待厨は生きる場所などない
大人しくちぢこまり、ただ息をするしか無いのだ
それができないのなら駆除される
彼らの先代や昔の行いが招いた自業自得の結果だった
「また、グループの行いを重く見た駆除委員会は
大々的な一斉駆除を行うことを決定しました
場所は・・・」
ここまでを見た虐待厨は、慌てて身を隠そうと
あるいは駆除が行われる地域から逃れようと走り出した
しかし・・・
「いたぞ!」「撃て!!」
その目立つ行動は狩人に獲物を教えるも同じだった
一斉駆除はニュースで報道された時、すでに開始している最中だったのだ
こうして、今日も虐待厨は殺された
多くの数を失った
しかし、それはもはやこの世界において
天気が変わる程度の当たり前の日常だ
おかげで人々は虐待厨のいない日々を謳歌し平和に生きている
虐待厨が暴れていた時には
あり得なかった光景だ

(おわり)

333栄枯盛衰転落人生 1/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/09/17(土) 16:59:20 ID:6bViF/1Y0
虐待厨の虐助はエリートを自負している
地方で一の企業に就職し
出世街道を歩んでいるからだ
もちろん、ここが最初の就職先ではない
豪華客船の船員もしていたし
(客のタブンネを海に放り捨てて
飼い主に海へ蹴落とされた挙句に射殺されかけて逃げた)
農業をしていた時期もあった
(いたずら目的で近所の実装石愛好家のところに野菜を投げ入れ
そいつに盗難の疑いをかけた結果
引っ越し前の駄賃として畑に毒を撒かれて全損)
今は一番うまくいっている
そう思っていた、担当しているコンピュータが不具合を起こすまでは

「なんとかしたまえ!」
虐助の上司に掛け合ったところ、この一点張りだ
そもそもこのコンピュータのプログラムは虐助のチームの産物である
当然の返答と言えた
真相を言うなら、虐助のチームにいた会田の作品だ
しかし虐助はこの手柄を独り占めして会田を上司に掛け合い追放した
だから会田は今この会社にはいない
しかし虐助には彼女のスマホの番号がある
「会田!オレだ!お前の上司の虐助だ!
いいから今すぐ来い!分かったな!?」
会田はすでに再就職していた
他企業の社員へアポなしで電話した上に
仕事中に呼びつけるなど言語道断の行いだが
虐助にはそんなことを考える頭などない

334栄枯盛衰転落人生 2/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/09/17(土) 17:00:42 ID:6bViF/1Y0
しばらくして、会田が来た
彼女の今の上司らしい中年の女性も一緒だ
「初めまして、私は会田の上司でデボ・・・」
「てめぇは及びじゃねぇんだよババァ!
帰れ帰れ!!」
虐助は会田の今の上司を会社の外に追い出した
「なんてことを!!」
会田は青ざめて抗議したが虐助はせせら笑って受け流した
「てめぇの弱小企業の扱いなんざこれでいいんだよw
さっさと直して帰れwww」
会田はプログラムを直して帰った
帰り際、「この企業はもうおしまいですよ」と言ったが
負け惜しみだと虐助は取り合わなかった

翌日、デボンコーポレーションとの契約がすべて白紙になり
さらに企業の株が根こそぎ買い叩かれていることが発覚した
「お前、何かしたのか!?」
社長らは虐助に詰め寄った
虐助には身に覚えがない
「知りませんよ、オレとデボンに何の関係があるんですか?」
「しらばっくれるな!
うちの元社員の会田君が昨日来たと受付から聞いたぞ!
彼女の今の会社の部長と一緒にな!!」
「ああ、あのババァですか」
次の瞬間、虐助は顔面を殴り飛ばされ壁に激突した
「この馬鹿野郎が!!!!!!
デボンコーポレーションの支部長殿になんてことを!!!」
虐助はそう言われて、ようやく自分がしたことを悟った

335栄枯盛衰転落人生 3/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/09/17(土) 17:01:32 ID:6bViF/1Y0
「あんなのが上司だったなんて、大変でしたね」
溜息交じりに支部長は会田に言った
「あの、大丈夫ですか?」
「凶暴なポケモンの相手もしているから平気です
それにしても、契約の話し合いに来た私を
話も聞かずに追い出すなんて・・・」
それは、虐助の企業とデボンの間の契約についての
重要な話し合いだった
しかし相手企業は支部長を追い出したのだ
当然の帰結で契約は白紙撤回され
今後一切の取引をしないという決定がその日のうちに決まった
「はい、もしもし」
そんな話をしていた時にスマホが鳴った
会田はそれに出た
「会田、オレだ!
くそばば・・・支部長殿はいるか!?」
虐助の声は大きい
そこにいる支部長の耳に思いきり発言は入っている
「ひぃ!?」
会田の世話役の先輩社員は支部長の顔を見て思わず悲鳴を上げた
「・・・いいえ、ご用件をどうぞ」
会田は空気を読んだ
「お前の会社との契約をもう一度結びたいんだ!」
「あ〜、無理です
私は一平社員にすぎませんし
役員会で決まったことなんで・・・・・・
これは、本社の社長からの決定でもありますから」
「嘘つけ!
なんで平社員があのババァと話しできるんだよ!?」
会田はこの期に及んで暴言を吐き続ける虐助に辟易しつつ答えた
「今の会社は人数が少ないんですよ
だから、上司と部下の距離が近いんです
それに、将来の幹部の育成もしていまして
理由はそれだけです」
そこまで話したところで、「失礼します」と
支部長が断りを入れつつスマホを代わった
「こんにちは、虐助さんでしたっけ?
あのクソババァです」
一瞬で虐助は無言になった
青ざめて凍り付いているのがわかる
「近々、おたくの企業はうちの会社に吸収されるでしょう
準備だけはしておいてください
では失礼します」
支部長はスマホを切った
「あなたの企業の社員を何人かチームに加えたいのだけと
いいかしら?」
支部長は会田に聞いた
それは、これから潰れる前の職場の社員の救済策だ
確かに前の職場は最悪だった
それでも、会田と同じ境遇の社員や良い社員はいる
彼ら彼女らまで一蓮托生させるのは確かに忍びない
「はい、ありがとうございます!」
会田は深々と支部長にお辞儀して礼を述べた

336栄枯盛衰転落人生 4/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/09/17(土) 17:02:32 ID:6bViF/1Y0
一か月しないうちに虐助の企業はデボンの支部に吸収された
その際に社員たちも移行することになったのだが
虐助ら虐待厨や見て見ぬふりをしてきた上司・役員らには
席は用意されていなかった
「・・・もう結構!
それが御社の答えですね、分かりました」
当初は虐助ら問題のある社員のみ切り捨てるつもりだったが
社長に対し虐助らの解雇を要求した支部長は
それに難色を示されたために方針を変えた
かくて社長を含む社員の半数以上が路頭に迷うことになった

「久しぶりだな、お前のおかげでこのありさまだ」
会田と虐助は一月後に再会した
虐助は今はその日暮らしにまで困窮していた
対して会田は平から出世し、今では一部門を任されている
そして、彼氏とデート中だった
「しかしお前にふさわしい貧相な男を連れてるな
どうせヒモ」
言葉の途中で虐助は首をつかまれて空高く放り投げられた
「・・・害悪っぽい虐待厨だったから始末したけど」
「いいのよ、気にしないで」
虐助は会田に彼氏がいることは知っていた
しかし、彼が対テロ特殊部隊隊長だとまでは知らなかった
虐助が落ちた先はゴミ箱だ
ちょうど、ごみ収集車が回収に来ていた
「なんだ、虐待厨か」
職員は虐助ごとゴミを回収した
首の骨が折れていたため動けなかったが意識はあった
彼はそのまま焼却炉に放り込まれ絶命するまで苦しむことになる
その日、一人の虐待厨が永遠に姿を消したが
人々の生活に支障はない

十年後、会田は支部長を引き継ぎ子宝にも恵まれ
幸せな家庭を築いていたが
それはまた別のお話

(おわり)

337とある育児AIの記録 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/11/01(火) 20:06:32 ID:oF/3j71A0
※『新入社員「虐厨」』のつづきです

育児ロボット「カッパ2000」
彼女は生まれた時からそう呼ばれ、仕事を決められていた
不満はなかった
自分はそのために作られたのだから
ゆっくり、実装石、子犬に子猫、小動物に至るまで
彼女と彼女の姉妹はお世話をした
それが仕事だから
雇い主である人間たちから感心され褒められたりもするが
彼女たちには理解できなかった
彼女たちには仕事は「当たり前のこと」だからだ
それこそ、呼吸をするのと同じ程度には

ある日、人間たちがそっくりいなくなった
代わりに世話をする対象を加害する排除対象が増えた
1秒に満たない姉妹間の議論の末、彼女たちは仕事を継続することにした
農園は健在だから食料の問題はない
水も地下水から引いた井戸が用意されている
育ち切り育成対象にならなくなった個体たちが手伝いをしてもくれる
『お母さんたち』と個体たちは彼女らをそう呼んだ
その単語を言われる意味をよく理解できなかったが
彼女たちはそれを受け入れた
血縁は無くとも育てた自分たちを親と認識したのだろうと

だから、目下の問題は敵の排除のみだった
「ぎゃあああああああああ!!」
こいつらは雇い主だった人間たちと同じ服装だ
だが中身は害虫と同じだ
駆除するのみ
彼女たちはそう結論付けた
不用意に彼女らの領域へ侵入した虐待厨らは
その甘さを命で贖った
彼女らを排除しようと武装して入った虐待厨らは
自動迎撃システムでハチの巣にされた
それならと電気を止めようとしたが
太陽電池をはじめとした独立した発電機で停電に対応していた施設のため
まったく意味を為さなかった
さらに「カッパ2000」とその姉妹たちは
施設を要塞のように改造していった
機械の設備でできた無機質なものではない
周囲の植物を利用したものだ
イバラの条網にクズで覆われた落とし穴、カエンタケの地雷地帯など
徐々に施設への接近すら許さないものへと変貌していった
彼女たちの籠城戦は、乗っ取られた企業が社員の犯罪行為で警察が介入し潰れるまで続いた

「ロボットの母」「機械の乳母」「カッパ2000物語」
この出来事は後日、様々なメディアに展開され売れまくった
しかし彼女たちにはそんな出来事は別世界の話だ
全く興味はないのだから
やがて、耐用年数の限界が来た彼女たちは
一体、また一体と機能を停止していった
カッパ2000も例外ではなかった
しかし、彼女たちの後継がその仕事を引き継いだ
それだけではない
「このロボットたちは人間よりも立派な存在だ!」
見事に子供たちを守り抜いた母たちを
人々は救おうと、その功績を永遠に記録しようと手を伸ばした
彼女らは今、別の企業によって運営されることになった
保育施設のケースの中から後輩たちの仕事を見守っている
時々、彼女の子供たちやその子孫も会いに来てくれたりした
そして、彼女たちの子供は、ゆっくりたちだけではなくなった
育児放棄などで行き場を失った人間の子供たちもまた
彼女たちの輪に加わり育てられた

巣立っていった彼ら彼女らにより国が支えられるようになり
やがて虐待厨らが一掃されることになるのだが
それはまた別の話

(おわり)

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341隠ぺいの先に 1/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/12/17(土) 03:22:05 ID:q7jbyO/.0
昔、大きな戦いがあった
すべてが荒れ果てた荒野になった時に
ようやく双方は手を取り合い不文律を決めた
しかし、不文律は長く守られることはなかった
「虐待厨」という種族は「約束を守る」という事をしないのだ
ルールを守るように訴えれば鼻で笑われ
声を強めれば事なかれ主義者や虐待派が参戦して
被害者は石もて追われた
その結果
「駆除しろ、奴らは人ではない!」
追い詰められた人々は武装蜂起し反攻に転じた
一度火が付けば虐待厨がバラまいた「恨み」という燃料に燃え広がり
一気に炎上するまで時間はかからなかった
「やめろ、オレたちは虐待厨じゃ、な・・・」
「うるせぇ、奴らの手助けして俺の故郷を滅ぼしたてめーらも同罪だ!!」
長い年月、人々はただ追われていたわけではない
中には、スキルを磨き力を付ける者も少なからずいた
そうした者たちが先頭に立ち武器を振るい突破口を切り開いていった
「無駄だと思うが頑張れよw」
「お前も仲間か、死ね!」
いわゆる「頭の軽い馬鹿」が勝手に煽って屍を晒すことも多々あったが
”ここまで被害を拡大したのは事なかれ主義者たちの活躍である”という論調が強かったため
そいつらも「虐待厨のシンパ」として片付けられた

しばらくして、表で活動する虐待厨は、すっかり居なくなった
そう、「表」では・・・・・・・

「ひゃっはー!!」
ここは、とある虐待厨の隠れ家の一つ
鳥に似た妖精が捕らえられ虐待されていた
しかも、その妖精たちはリボンがついていたり
毛並みが整っていたりと
明らかに誰かと生活していた痕跡があった
『飼い虐待』であるのは明白だ
確かに『飼い虐待』を好んで行う虐待厨は存在する
過去には相当な数がいたが
彼らがスターターとなる形で家族の一員を奪われた復讐鬼たちのスタンピードが起こった
今では見つかれば最後、確実な死が待っている
では、なぜ虐待厨らは
このようなリスクを犯しているのか?
それは打算があるわけではなく「バレなきゃいい」というリスクしかない理由からだった
彼らのような行動をした者たち(有名なのは『ペギタニスト』)が
処罰されたという話が全く聞こえてこないことも、その理由を強化した
「うまいこと考えたな、ペギタニストどもも」
「ああ、まったくだぜ!」

342隠ぺいの先に 2/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/12/17(土) 03:22:54 ID:q7jbyO/.0
普通に考えれば、これはあり得ないことだと分かるだろう
犯罪を犯した虐待厨の道は一つ
なけなしの生存権の剥奪と殺処分のみだ
そして彼らの意地汚さはデータベースに永遠に記録されるようになっており
行動パターンも読まれている
では、なぜ処罰されたという話が全く聞こえてこないのか?
それは単純に「話をする奴がいないから」だ
そして、このような事は身内の失態で割と早くバレるものである
「おい、お前確かに鳥の妖精を虐待していると言ったな?」
ここは街角、捜査員に勧誘役の虐待厨がシメ上げられていた
虐待厨は人ではない
ありとあらゆる拷問や自白の強要が許可されていた
この虐待厨は、他の虐待厨を拠点へ誘おうと声をかけた時に
近くにいた捜査員に聞かれてしまったのだ
その結果、誘われた運の悪い虐待厨は頭を砕かれ地面に転がっている
「おい待てよ、そいつがクロかは分かんねーだろ?」
その時だった、捜査員の背後から男が声をかけた
「誰だお前は?」
「オレが誰かなんてどうでもいいだろ?
それより、あんたら過剰反応すぎじゃねーか?
そんな血眼になるほど誘拐されて」
男は言葉の途中でスタンガンを背後から受けて倒れた
別の捜査員が男を担いで車両に載せる
「お、おい、そいつは虐待厨じゃねぇだろ・・・」
シメられていた虐待厨は男を指さして言った
「その反応からするに、お前の知り合いでも無さそうだな
だが関係ない!
こいつは虐待厨を庇い被害者を侮辱した
事件への関与を疑うには十分すぎる理由だ!」
虐待厨だけが処罰の対象と表では思われているが
それは正しくもあり間違ってもいる
確かに虐待厨は処罰の対象だ
しかし、その範囲は広い
虐待厨に与した者や協力した者も含まれるのだ
理由は『虐待厨を庇い、被害者を傷つけ被害を拡大させた』過去の事実である
『やつらも害悪、射殺すべきだ!』という過激な意見も飛び出たが
その都度犯罪者として処罰することをルールに盛り込むことで
射殺派も折れてくれた
「さぁ、虐待ブタ、案内してもらうぞ!」
捜査員は虐待厨の四肢をへし折りながら言った

343隠ぺいの先に 3/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/12/17(土) 03:23:43 ID:q7jbyO/.0
『ペギタニスト』を含む新手の隠蔽型の飼い虐待派はウワサにならない
なぜなら、ウワサとは『人から人へ伝わる』ことで初めて成立するものだからだ
「動いていいよ、君ら地獄行くだけだから」
『ウワサを始める者が存在しない』場合もまた
ウワサになどならないのだ
「こいつ、虐待だけじゃないぜ!
繁殖させて目の前で子供を殺していやがる!!」
そもそもの話、飼いに手を出した虐待厨も犯罪を手伝った虐待厨も
すべからく末路は決まっている
なら両方をしでかしている新手派閥の末路など問うのは愚問だろう
「隊長、片づけました!」
「あとはこいつだけだな」
リーダー格の虐待厨を除き虐待厨は全滅した
しかし捜査員らの仕事はこれだけでは終わらない
「お前には聞きたいことがある、来てもらうぞ」
「い、いじゃじゃあああああああ!!!!」
いやいやしながら暴れながら、虐待厨のリーダーは両手足の関節を
曲げられない方向に曲げられ折られ壊された状態で車に乗せられた
彼にはこの後ですべての罪状や協力者を自供させるための
「死んだほうがまし」な拷問が待っている
中には苦しみから逃れたい一心で無関係の別の虐待厨を挙げる奴もいたが
このリーダーもその一人だった
「な、なんだよ、オレたち何もして・・・」
「別の群れから密告があったんだよ!!」
こうして、犯罪に加わっていない虐待厨のグループまでもが摘発され
真偽に関係なく屍の山が築かれた
もちろん、中にはこっそり犯罪に手を染めている者もいて・・・
「ぎゃああああああああ!!!!」
「なんだその悲鳴は!!てめぇが殺した妖精の赤ん坊は!!
その主は!!もっと苦しいんだぞ!!痛いんだぞ!!!
目を潰されたくらいで叫ぶんじゃねぇド畜生!!」
そういった奴はその場で惨たらしく殺された
『バレなきゃ何してもいい』
そう嘯く連中は大抵『バレたら盛大にツケを支払わされる』常識を
頭に入れてはいない
まして児戯に等しい隠ぺい工作など『必ずバレる』ものだ
もっとも、バレないこともあるにはあるが
「隊長、またしても証拠は見つかりませんでした」
「これ以上長引かせて犠牲を増やすわけにはいかん、
この地域の虐待厨をすべて殺せ!」
大抵は一蓮托生の形でまとめて駆逐されるケースに行き着くのが常だ

344隠ぺいの先に 4/4 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2022/12/17(土) 03:25:18 ID:q7jbyO/.0
そしてこの駆除騒ぎの過程で『噂にならなかったこと』が
犯罪を招いたことが発覚した
事態を重く見た人々は話し合いの末に
各市町村に「ケージ」を設けた
その「ケージ」には、実際にあった事件や犯罪が書かれた看板が取り付けられている
「むしゃくしゃするぜ!!」
「ぐぎゃあああああああああああああやべでええええええ!!」
中には該当の犯罪を犯した虐待厨が入れられていて、装置につながれている
ケージの外にあるボタンと装置は連動しており、
誰でも自由に好きな時に虐待厨を甚振ることができた
「新しいボタンね、なにかしら?」
「ごぎゃあああああああ!!」
「まぁ、酸が噴き出たわ!」
時々、バリエーションを追加するなどの人々を飽きさせない工夫がされた
さすがに虐待厨といえどすぐに死ぬので
やがて生命維持と回復の装置も加えられ、なかなか死なないようになった
もちろん・・・
「よお、今日もたっぷり泣いてくれよ」
「ひぃ、ひぃぃぃ!!」
虐待厨に恨みを持つ人間も訪れる
「ははは、オレのれいむを殺してくれた時は
散々イキってたのによぉ?
自分がおびえて助かるなんざ・・・・・・
あるわけねぇだろぉが!!!!!」
自由を謳歌していた時に買った恨みを
自業自得で虐待厨はむしり取られていく
「どうして、どうしてオレがこんな目に・・・」
「お前が私のポケモンを殺したからだろ!!!!」
たまに口を開けば全くの棚上げとしか言いようがない発言ばかりのため
役所の人間が何かするまでもなく
虐待厨は来た人々の怒りの火に油を注ぎ
自らの境遇を悪化させていった
しかし、この扱いはまだほんの序の口にすぎない
「私、大きくなったら、あいつらを・・・・・」
虐待厨に家族を、無二の親友を奪われた子供たち
彼ら彼女らが成長し国を担う世代になったその時
虐待厨たちの真の地獄は始まるのだ

「次のニュースです
・・・・・国会で虐待厨の人権をはく奪する審議が行われ・・・・・
・・・・・法案は、可決成立しました」

(おわり)

345保護の天秤 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/01/23(月) 18:26:35 ID:xuU8TzEQ0
ここは、保護区山中
保護されているのは野生動物だけではない
虐待厨という人型生物によって「被虐生物」に認定された生命体を
保護している区域だ
当然、狩猟厳禁であり警備でない者の武器の所持も許されない
しかし、それでも入り込んで悪さをするのが虐待厨という害悪生物だ

「お前がやったんだろ、認めろ」
「証拠あるんですか〜www」
今、一匹の虐待厨が警備隊に囲まれていた
その近くには殺害された「被虐生物」の群れの無残な死体が転がっている
「オレはハイキングに来ただけですwwwww」
虐待厨はのらりくらりと言い訳をしていた
証拠となる凶器は死体と一緒に転がっているため
この場で犯人と断定する証拠は、確かに無い
「もういい、放してやれ」
「隊長!?」
隊員たちは隊長を見て確認すると
渋々ながら虐待厨に道を開けた
「たかが動物にマジになってんじゃねーよ、ばーか」
パン!
乾いた音が山中に響いた
「え、あ、え・・・?」
虐待厨は赤い色が広がっていく自分の腹を見た
「ギルティだよ、くそったれ」
白煙が昇るハンドガンを手にしたまま隊長は呟いた
「な、んで、しょうこ・・・」
「てめぇが今、自白したんだろーが
お前ら虐待厨は調子に乗らせれば、すぐに吐いてくれるからな」
虐待厨は腹を撃たれながら逃げようとしたものの、
ふらついて逃げられない
「じゃあ、帰るか」
「そうですね」
「オレ、この前いい飲み屋見つけたんすよ、行きます?」
警備隊は足の力が抜けて這い回るしかできなくなった虐待厨を置いて
帰ろうとしていた
「ま、まって・・・おいていかないで・・・」
警備隊の面々はその言葉に立ち止まり、氷のような視線を虐待厨に向けた
「なんでお前みたいな荷物をわざわざ担いで帰んなきゃなんねーんだ?」
隊員の一人が言った
「たかが虐待厨にマジになる奴はいねーよ」
「人間のつもりなんですかね、こいつ?」
隊長は部下たちの言葉に頷きながら虐待厨の近くに接近した
「せっかくだから教えてやるけどな
お前、もうすぐ死ぬわ」
「え、び、病院に・・・」
「なんでそんなことしなきゃならん?
第一お前のそれ、致命傷だぞ?」
パンパンパンパン!
隊長は正確に四肢の神経を撃ち抜いて動きを封じた
「けどな、すぐに死ぬわけじゃねぇ
腹の中に血が溜まって、じわじわ苦しみながら死ぬんだ」
絶望的な顔になる虐待厨へ、隊長はさらに続けた
「それでも、な、てめぇの罪は許されねぇ
だから・・・・・地獄に行く前に裁いてもらえ」
今度こそ隊長は背を向けて部下たちの集団に加わる
警備隊はそのままどこかへ去って行った
「オマエガ、コロシタ・・・」
「コロシタナ」
「コロシタ」
恐ろしい声が動けない虐待厨の周囲からした
いつの間にか、虐待厨は無数の何かに囲まれていた
中には「被虐生物」もいたが、多くはそれではない
虐待厨が山に入る前に頭に叩き込んでいた
『絶対に遭遇を避けるべき怪物』たちだ
「クッテヤル」
「クイコロセ」
「デキルダケ、クルシマセルンダ」

虐待厨の絶叫が肉を食いちぎり
骨をかみ砕く音とともに山中に響くが
それを聞く人間はいない
この日、また一人の虐待厨が『行方不明』になった
しかしそれを心配する者は皆無だ

虐待厨の仲間たちを除いて・・・

「お前ら、この前のヤツの仲間か?」
足を撃ち抜かれて這いつくばる虐待厨たちに
隊長は聞いた
「この前のって・・・お前ら、やっぱり・・・」
「俺らは知らねーよ、殺していないからな
ま、帰ってきてねぇってことは裁かれたんだろ」
虐待厨たちの憎悪の視線をそよ風のごとく警備隊は受け流した
「お前らも、裁かれろ
運が良けりゃ生きて帰れるかもな」
警備隊は来た時と同じように音もなく立ち去った

保護区は多数の虐待厨を飲み込みながらも
警備隊の活躍で今日も平和である

(おわり)

346言葉の循環 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/03/29(水) 02:43:18 ID:Dkqkx87g0
ここは、とある公園
「なんで、だ、オレたちは野良しか・・・」
虐待が三度の飯より大好きな人に似た生物『虐待厨』たちが
地べたに転がっていた
「この子のコレが見えないのか?」
そいつらを叩きのめした男は負傷しぐったりした動物型妖精を抱えている
その子は男のパートナーで手当はすでにされていた
しかし、この公園に住むパートナーをまだ持たない妖精は全滅していた
男の人差し指は妖精のリボンに付いたバッジを指す
このバッジは『パートナーがいる』だけを意味するものではない
『教官』としてまだパートナーのいない妖精や新人を教育したり管理したり
時として逃げてきた妖精を保護する資格を持つ者の証だ
「うっせぇ!
そいつは野良を庇ったんだよ!
だったら虐待されても罪に問われねーだろ!」
もちろんそんな法律は無い
『犯人隠匿』の罪を虐待厨どもが勝手に都合よく捻じ曲げて解釈し
作り上げた架空のルールだ
「知らねーな・・・それ、誰から聞いたんだ?」
しめた、と質問された虐待厨は喜んだ
相手は自分の非を認め謝罪の姿勢だ
うまくいけば勝てる、殺せる!
この町のアイゴどもを皆殺しにできる!
虐待厨の中で一瞬で自分のためだけの自分を称える王国が建設された
そんな誇大妄想をしているなどと男は知らないし関係ない
男はただ『情報の出どころ』を知りたいだけだ
謝罪する気など微塵もない、罪はないのだから
「聞いて驚け!
オレたちのリーダーの虐一さんだぜ!」
男は納得したように頷いた
「そうか、お前らのリーダー、あいつか・・・・・
なら、お前らが鵜呑みにしたのも納得できるな」
男はリーダーを知っている
「お前も知っているように虐一さんは・・・」
「今度はうまくいくと思ったんだけど、やっぱダメか」
虐待厨の言葉を遮って男はつぶやいた
そしてスマホを取り出し、どこかに電話をかける
「もしもし、実は・・・」
男は電話の相手に、起きたことを手短に伝えた
「はい、首謀者は虐一です」
リーダーの関与も当然報告している
男はしばらく相手と話した後で電話を切った
数分しないうちに警察が来て虐待厨たちを引っ張っていった
「なんでだよ、離せ!」
「あいつを逮捕しろよ!」
警察官たちは暴れる虐待厨どもをパトカーの後続のワゴンへ押し込み
現場検証を始めた
『保健所』のワゴンは現場から離れていく
あの虐待厨たちはこれから殺処分される運命だ

所変わって、こちらは虐待厨どものアジト
「なんで殺処分されるんだふざけんな!」
保健所からの連絡にリーダーの虐一は口角泡を飛ばしながら抗議していた
「訴えてやるからな覚悟しろ!!」
「てめぇにそんなチャンスあると思ってるのかよタコ」
電話からではない、すぐ背後からの声に虐一は驚き振り向いた
そこにいたのは、近所の住人たちだ
皆、手に手に棍棒やバット、ナイフなどの凶器を持っている
「言い忘れていましたが、虐一さん
あなたの人権はすでに停止しています
ご了承ください」
それだけを告げて保健所は一方的に通話を切った
が、その時にはすでに虐一の足元にスマホは落下しており当人に話は届いてはいない
「ま、待てよ、お前ら・・・・・・
オレに直接危害を加えるつもりか?」
これは、犯罪だぞ!?」
「そいつが遺言でいいんだな?」
殺気立った住人たちは、少しずつ虐一ににじり寄っていた
その背後にはすでに肉塊と化した他の虐待厨らが転がっている
「こいつらは、オレらのパートナーを甚振ってくれた
妖精だけじゃない、ゆっくりも実装石も、ポケモンも・・・・・
分かるな?
こいつらを庇い立てしてきたお前も同罪だ!」
住人が突きつけた言葉は、まさしく虐一が常に言っていた言葉だった
「た、たかが被虐生物に本気になって、バカじゃねーか?」
説得のつもりで、命乞いのつもりで放った言葉は
住人たちに残された最後の理性を取り払った
「死ねやぁ!!」
「あの子がなにしたってんだボケぇ!!」
「なんでてめぇは息してんだ!
死ね!
天国のあの子にあの世で詫びろ!!」
パートナーを家族の一員を理不尽に傷つけられたり奪われたりした人々の憎悪を
虐一は自業自得の形で受け続けた

347言葉の循環 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/03/29(水) 02:45:19 ID:Dkqkx87g0
「このくらいでいいか」
「ああ、放っといても死ぬだろ」
住人たちはわざと急所を外す形で虐一を痛めつけた
そして殺す一歩手前で暴力の手を止めた
「保健所は10分後に来るってさ」
「そうか、じゃあ作業しやすいように片付けとくか」
背中を向けた住民たちへ、まだ息のある虐一は言った
「た、助けて、助けてくれよ・・・・・・」
ふり絞るような声で
「そいつらの中にも息のある奴まだいるだろ、
なぁ、ここまでやったんだもう十分だろ?」
住人たちは冷ややかな目で虐一を見つめた
「息があるって・・・・、こいつのことか?」
そしてまだ生きている虐待厨を虐一の前まで引っ張ってくると
目の前で頭を踏み潰した
「お前ら、なん、で、だ
こんなことして楽しいのかよ?」
住人たちはそれを聞くと顔を見合わせ
笑った
「そうだよ、自分らのルールこそ世界の心理だと思い込んで
狂犬同士で傷を舐め合う底辺どもが
現実に直面して絶望するのを見るのは大好きだ!」
かつて虐一らが被虐生物やその飼い主らに言い放った言葉を
多少のアレンジを加える形で住人たちは言い放った
「今なにもしていなくても、どうせ将来何かしでかすからな」
「だな、良い虐待厨は死んだ虐待厨だけだ!」
次から次へと、住人の口から出る暴言
それはすべて、虐一を含む虐待厨の口からかつて出た言葉だった
「すいません、保健所です」
「お、来たか!
こっちです」
住人の案内でやって来た保健所の職員たちは周囲を見回して言った
「いやぁ、これは酷いですね」
それに対して虐一は言った
「そ、そうだ、こいつらまるで悪魔・・・」
その言葉に被さる形で
「害虫どもがこんな数集まって蔓延っていたとは
我々の目の不行き届きです
いや、実に申し訳ない」
保健所職員は住人たちに謝罪した
「いえ、お気になさらず」
「人間なら誰しも見落としはあるものです」
その職員を住人たちは労った
「あ〜、こいつまだ生きていますね」
別の職員は袋に入れられ動く虐待厨を袋ごしに蹴飛ばしてトドメを刺す
その向こうでは虐待厨の入った袋をワゴンの後部スペースに放り込む職員もいた
「では、こいつはこちらで引き取りますので
殺処分で構いませんね?」
「はい、お願いします」
処刑宣告を聞いた虐一は出口まで這って逃げようとしたが
住人たちに踏まれて押さえられた上に手足を踏み折られて自由を奪われた
「あれ、そいつ生きてるんすか?」
「ガスがもったいない、このまま焼却炉に放り込むぞ」
最悪の末路を虐一は聞きながら、しかしどうしようもできなかった
「なんで、なんでこんなことに・・・」
虐一は袋の中で燃やされるまで涙した
最後の最後まで自分たちのしたことが招いた結果なのだと
悟ることのないまま

(おわり)

348言葉の循環2 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/05/30(火) 14:39:03 ID:jj1onTHg0
「そうか、失敗か」
「はい、『また』です」
ここは公的機関の建物の会議室
そこでスーツに身を包んだ男女が議論をしていた
「虐待厨には学習能力が無いのは分かっていたが
リーダーの個体までもそうだとは、な」
彼ら彼女らの頭を悩ませているのは急増する犯罪だ
それも虐待厨によるものが99%以上を占めている
もちろん犯罪をしでかした虐待厨に人権など無い
警察に引き渡すまでの間に必要ならば手足を引きちぎってダルマにしても罪には問われない
殺したとしても過剰防衛どころか殺人罪すら適用されない
蚊を叩き潰しただけで罪に問うなどバカげたことだという認識だ
しかし、駆除しても駆除しても湧いて出る虐待厨とのイタチごっこに
業を煮やした議員たちは考えた
そして、一つの結論に至った
「やつらのリーダーを敢えて残すのはどうだ?」
様々な検証や『動物実験』の末
虐待厨は群れる習性があることが判明した
その中でもリーダーになった個体は他よりも高い知能を持っている
また、世渡りできる程度には考える頭があった
事実、雑魚虐待厨はすぐに殺せるが
リーダー格の虐待厨は隣町に逃げるなど知能を働かせて死期を伸ばす知恵があった
だから、このリーダー個体を教育して放てば犯罪は減る
そう考えられていたのだが
「俺は特別な存在だ」と、リーダー個体は例外なく増長した
議員たちの思惑とは真逆に、リーダーの指揮で統制された犯罪集団が生まれた結果に終わるばかりだ
取り締まる側からすれば、まとまっている分その対応がしやすい
また、リーダーが禁じている行為をザコどもはせず、
やらかす奴は内部で粛清されるから総量としては仕事は減ったものの、
当初の目的である『犯罪撲滅』からは程遠い状況だった
すべてのやらかしが内部粛清で未然に防がれるわけではなく
さらに悪いことにリーダーの指示で隠ぺい工作が為される本末転倒の例も発覚した
「そもそも、生かす方向でしたのが間違いじゃないか?」
一人の議員が沈黙を破った

349言葉の循環2 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/05/30(火) 15:04:31 ID:jj1onTHg0
会議から数日後
「お〜、集まってきてくれたか」
ここはとある広場、リーダー個体によって虐待厨が多数集められていた
「じゃあ、あそこのバスに乗ってくれ」
リーダー個体は職員の指示通りに仲間をバスに乗せ
自分もバスに乗った
「あいつリーダーになって何日だっけ?」
「たしか一週間だったか?」
「短い期間だけど、結構な効果はあるんだな」
職員たちはバスの外でそんな会話をしていた
バスはAI制御で運転されている
中にいるのは虐待厨だけだ
彼らはこれから自分たちが『愛護の拠点へ襲撃をかける戦士たち』だと
信じて疑わない
確かにその情報に嘘はない
いや、最初から彼らに嘘の情報は渡していない
相手を信頼させるには例え虐待厨相手であろうと、「騙す」は悪手なのだ
同じようなバスはあちこちで走っていた
彼らはこれから『対虐待厨委員会』の拠点や戦闘ロボの実験場といった
『戦闘データが必要な施設』へ送り込まれる
「着いたぜ!」「ひゃっはー! クサレアイゴども覚悟し・・・」
広場から出発したバスは予定通り『傭兵の訓練所』へと着いた
虐待厨たちの望み通り、そこは『アイゴの巣』だ
ただし、武装していないわけがない
「訓練通りやれ! 一番のスコアを挙げたやつには褒美をくれてやる!」
教官の檄が飛び訓練生たちは実弾の入った銃を手に走り出した
虐待厨が威勢が良いのは最初だけだった
もちろん相手に武器がなければ実践想定の訓練にはならないので
虐待厨にも非殺傷とはいえ武器はある
ただ、『無抵抗の相手をいたぶる』前提できた彼らには覚悟がなかった
一時間ともたずに虐待厨は全滅した
「よくやった! 貴様らはもう立派な戦士だ!!」
卒業試験を一人の脱落者も出すことなく終えた訓練生たちを教官は労った
卒業を喜ぶ訓練生たちの背後には、骸と化した虐待厨たちが転がっていた

議会では、打って変わって各所からの報告に議員たちは満足げだった
「やはり、一網打尽が一番だな」
これは、計画的な『釣り』だった
リーダー個体にその区画の虐待厨をまとめさせる
それも、襲撃に参加するような「攻撃的な問題のある個体」を集めさせ
一気に殲滅するために
襲撃に加わらなかった個体は問題さえ起こさなければ生存は許される
ただし・・・・・
「わ、わざとじゃねぇ、ちょっとぶつかっただけ・・・ぎゃあ!?」
ほんの少しでも問題を起こせば即処分される掟だ
後年、リーダー個体の確保も面倒になってきたために
処分した虐待厨からクローンが形成され放たれることになった
クローン虐待厨は教育された通りの行動を行ってくれた
自分が処分されることすらも文句言わずに淡々とこなした
やがて、クローン虐待厨はリーダーだけでなくその下の構成員役もこなすようになった
表向きは戦力の拡充、実態は問題ある非クローンの処理だ
今まで庇われることが当たり前だった虐待厨どもに、これは効果覿面だった
問題ある虐待厨を駆逐するため、今日もバスは走り続け
クローンは増え続けている

(おわり)

350罪悪の行進 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/06/03(土) 12:58:45 ID:yIwO42zs0
ただ一つの言葉だけを唱え続け行進する一団がいた
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
その集団がどこから来たのかは分からない
しかし、彼ら彼女らは服装も髪型も武器も種族すらバラバラで
中には虐待厨から「ヒギャクセイブツ」と認定された種族もいる
その集団が通過した後には虐待厨とそのシンパの惨殺死体のみが残っている
これだけが確実に知れた事だった

ここは、その集団が向かう先にある小さな町
「うう・・・こんな、こんなことが・・・」
スーツ姿のギコは項垂れていた
目の前には墓がある
そこには彼の先祖だけでなく
彼の妻子と弟も入っていた
「しぃだから」「ベビギコだから」「ベビしぃだから」
そんな理由で彼の妻子は殺された
警察も対応せず、それどころか文句を言った彼の弟は
その場で射殺された
裁判を起こしたがろくな審議もなく敗訴した
彼の両肩には裁判の費用と「虐待不敬罪」による罰金が
重くのしかかっている

また別の場所
息絶えた小さなタブンネがいた
その前で力なく項垂れる少年がいた
遠くへ笑いながら立ち去る虐待厨がいた
少年はタブンネの遺体を抱えた
「そんなばっちいもの早く捨てろ!」
「おまえもどっか行っちまえ!」
一部始終を見ていた群衆から罵声と石が飛ぶ
「殺してやる・・・」
少年は群衆に背を向けて立ち去った

さらに別の場所ではちびしぃが銃を乱射していた
「あはははははは!!死ね!死んじゃえ!!」
彼女は「ちび園」のボランティアで
ベビやちびたちのお姉さんだった
しかし、園に侵入した虐待厨によって
同僚も妹弟たちも殺された
ちびしぃ一人だけが生き残ったのは隠れていたからではない
キレた彼女は積み木で虐待厨を撲殺
虐待厨が息絶える前に通報で駆け付けた虐待委員会の一団と
交戦状態になった
武器は虐待厨が持ち込んだものだ
もちろん弾ももうすぐ尽きる
それが自分の最期だと彼女はわかっていた
しかし、一人でも多く道連れにしてやる覚悟も決めていた
「うわ!?」「ぎゃあ!?」

351罪悪の行進 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/06/03(土) 13:00:40 ID:yIwO42zs0
ちびしぃが最後の弾倉を機関銃にセットした時だった
虐待委員会の一団に真横から団体が乱入してきたのだ
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
てんでバラバラのデモ隊のような集団は
ただ唯一共通するその言葉のみを唱えながら虐待厨たちを蹂躙した
その攻撃方法も異様だった
ただ通過するだけだ
先頭集団が一旦割れて虐待厨たちを挟む
通過後に先頭集団は一つに戻り虐待厨たちは囲まれる
周囲から伸びた手足や凶器が虐待厨たちの歩行能力を奪い地面に倒す
あとは後続が、ただその上を踏みしめながら通過する
それだけである
しかし、大勢の人々が意図的に踏みしめながら通過するのだ
通路になった虐待厨たちは、ひとたまりもない
瞬く間に、虐待厨たちは地面の染みと化していった
「大丈夫・・・じゃ、なさそうだな」
ちびしぃのところに団体から離れた つーが駆けつける
「・・・ひでぇこと、しやがる!」
つーは中の様子を見ると激怒した
ちびしぃの手から機関銃が落ちた
こんな当たり前の反応をしてくれる存在はこの街の住人にはごくわずかだ
誰もが見て見ぬふりをするか虐待厨たちに迎合するかだった
そして、ちびしぃの張りつめていた糸は切れた
ちびしぃは号泣した

「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
その集団を止める術は町には無かった
先頭はガードの堅い、いわゆる「盾役」「タンク」を担う者たちが固めている
飛び道具は防がれ、大砲すら無意味だ
彼らの頭上を飛び越える武器は、すぐ後ろに控える撃墜役が阻止した
接近戦を挑めば、転ばされて後ろに続く集団に踏みしめられるだけである
例え建物に逃げ隠れしても、建物そのものを破壊され引きずり出された
あるいは建物ごと潰されるだけだった
虐待厨たちを見て見ぬふりをしていた人々も同様だ
虐待厨たちだけが被害を受けるだろうと安心しきっていた彼らは
自分たちまでまんべんなく災厄に見舞われることになった
半日と経たず、その町は踏み均され瓦礫と血の染みの大地と化した
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
破壊と殺戮の痕跡を振り返ることなく集団は突き進んでいく
ただ、その数は少し増えていた
新しく集団に加わった人々の中には
妹たちを殺されたちびしぃやタブンネを殺された少年、スーツ姿のギコも加わっていた
子供を目の前で殺されたしぃ、家族同然の相棒を殺された元トレーナー、姉たちの死体に守られ命を拾った妖精
そういった者はこの集団では珍しい存在ではない
虐待厨たちに大切な存在を、あるいはそれを含むすべてをかつて奪われた者たちの集団
彼ら彼女らの終点はどこなのか、誰も知らない

(おわり)

352最後の階段 1/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/07/23(日) 17:01:35 ID:NQXSevP20
「1番、出ろ!」
足に枷と錘を
手には手錠をかけられた虐待厨は、虚ろな目で相手を見た
逆らっても無駄だということは、すでに暴力によって体に叩き込まれ済みだ
のろのろと立ち上がり、相手が開けたドアの外へ出る
この部屋に戻る事は二度とない
振り返ることなく虐待厨1番は外へ出た

ついでに言うと、この番号は捕まった時に付けられる番号札で区別されている
番号札は使い回しされているため、すでに幾人もの虐待厨の血で汚れていた
この虐待厨は何人目の「1番」かはもう分からない
それほどの数の虐待厨がすでに殺されているのだから

1番は出口から差し込む太陽の光に目を細めた
ここに収容されて二度と拝むこと無く死んでいった虐待厨は少なくない
そして、これを拝むことができた虐待厨もまた寿命は残り数分程度だと言われている
1番が連れ出された場所は、外だが娑婆ではない
逃走防止のための武装兵士が配置され
奪還を目論む虐待厨を発見し殺すための武装ドローンが警備し
大勢の人々が観客席にいる場所だ
この場所は、見世物のための処刑場なのだ
「殺せ!殺せ!殺せ!」
観客は誰もが憎悪と怒りを顔に張り付かせ、1番の死を声高に要求した
1番は背後から職員に小突かれながら所定の位置まで歩かされた
その後ろのディスプレイには1番の罪状が映っていた
『・動物型妖精の誘拐並びに虐待目的での飼育
・出産した動物型妖精の子供の殺害(多数)
・利益目的での動物型妖精の売買
・妖精のパートナーへ虐待動画を送る精神的加害行為』
全てが本当のことであり、それをしたために1番は捕らえられた
その際に1番の親友や家族はその場で悉く殺された
売買に加担した虐待厨も同様である
犯罪には人間も加担していたが、
彼らは特級の重犯罪者として一生を刑務所で過ごす事になっている
「てめぇら虐待厨は生きてるだけで罪なんだ!!」
「返してよ!
あんたたちが殺したあの子を返してよ!!」
「あいつがくたばったのに、なんでお前らは笑って生きてられるんだ?
苦しんで死ね、地獄から天国のあいつに詫びろ」
観客の中には、虐待厨の犯罪被害者が少なからず居た
それは警備の兵士や職員も同様だ
もし、脱走を試みれば処刑方法が彼らによるリンチになるだけだ
つまり観客席に逃げ込んでも観客が処刑執行人になるだけであり、
殺しの素人である彼ら彼女らによる死は長い苦痛が約束されている
反対側の壁の向こうは武装した警備や兵士がいる
わざと低く設置され鉄条網すら無い壁は
そうした『無駄なあがき』をする虐待厨を殺すゲームのために設置されたものだ
この場で確実に楽に死ぬ方法は、大人しく処刑されることだけなのだ

353最後の階段 2/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/07/23(日) 17:04:46 ID:NQXSevP20
ふと、1番は処刑台に違和感を感じた
近くに転がっているゴミ袋とは明らかに違った
何かが転がっている
しかも音を出している
「おいおい、まだ生きてるのかよ?」
処刑人が呆れたようにそいつを蹴飛ばして転がした
「トドメを刺しますか?」
「いや、いい、死ぬまで苦しませてやれ」
1番はそれが、つい先ほどまで処刑されていた
別の虐待厨だと悟った
手も足もない、胴体と頭だけのどす黒く変色したそれが
どんな責め苦をこの場で受けたのか・・・・・
1番は一週間前から連絡が取れなくなった友人を思い出した
「こ、ろ、し・・・」
「いや、生きろ」
職員たちはその変色虐待厨の手当てを始めた
「お前の処刑はあと99回は残っているんだ
まだ死ぬなよ?」
どんな罪を犯せばそんなことになるのか、1番には分からない
「住居不法侵入に強盗致傷、『飼い殺し』ときたら
これでも生ぬるいほうだぜ」
職員の一人のつぶやきが1番の耳に入る
1番はそれと自分の罪を比較した
あまり大差はない
逃げて殺されたほうが楽だろう
1番はそう思った
思った以上決断は早かった
「あ、こいつ!!」
観客席側に向かって走る
しかし途中で何かに足を掴まれて転倒した
「だ・・・・げ・・・・・で」
自分の足を掴む奴を見て1番は悲鳴を上げた
それは今までゴミ袋と思っていたものだった
でも、違った
それはゴミ袋ではなく、全身をどす黒く変色させた虐待厨だった
「なんだ、そいつが気になったのか」
追いついてきた看守が1番の後頭部を殴りながら言った
「そいつは、元預かり屋だ
正体を隠して客から家族の命と金を巻き上げていたヤツだ」
「すぐに死なないように処置してあるけどな
しかし、しぶといなぁ
親族もグループも、全員地獄に行ってるのによ」
1番は処刑台に引きずられながら周囲を見た
岩だと思っていたのは全身をコンクリートで固められた者
落ち葉から突き出ている腕、生きたままプラスチックで固められ樹木になっている者
処刑場とは、処刑を行う場所だ
これが彼らの処刑ならば何ら違和感は無い
彼らの処刑は執行中であり生きて出ることは不可能なのだから問題ない

354最後の階段 3/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/07/23(日) 17:06:26 ID:NQXSevP20
1番はもう他人の心配をする余裕は、なくなっていた
ディスプレイには罪状に『脱獄未遂』が追加されていた
「生かせ!生かせ!生かせ!生かせ!生かせ!」
入ってきた時とは真逆の言葉が観客から浴びせられる
それは決して慈悲ではない、逆だ
この場において速やかな死ほど救いは無いのだから
「まぁいっか、どうせこれってすぐ死ぬ奴じゃねーし」
「延命処置を入れれば同じだよな」
死刑執行役はそんな会話をしながら1番に歩み寄った
両手足を縛られた1番は、もう動けない
「じゃ、まずは腕と足をゼリーにして
そんで点滴と薬物を投与しつつ治った骨を折り続けようか」
一人がそう言うと、死刑執行役は交互にハンマーを振り下ろした
1番の絶叫が刑場に響き、観客らの心を潤した
死刑執行役はそれを感じ取ると、
彼ら彼女らの望み通り長く苦しむ場所にハンマーを振り下ろし粉砕していく
やがて1番は全身の骨を砕かれたが生きていた
いや、生かされていた
先に処刑された虐待厨たちが、くたばった後も3年も生き延びた
その死因は、たまたま起きた地震で生命維持装置が壊れ
外れたチューブから体内のモノが噴出しまくったことによる空洞化死だったという

(おわり)

355うまれたもの 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/08/08(火) 14:46:46 ID:knsUrE/s0
「た、助けてくれ、なぁ、頼むよ!」
「このケガを見ろよ、もう何もできねぇよ!」
「救急車を、早く・・・」
口々に言う虐待厨を、女は文字通りゴミを見る目で睥睨した
そして、カバンから取り出したペットボトルのフタを開けると
そのまま動けないゴミどもに放る
「な、なんだよこれ、水じゃねぇな・・・?」
女は返答代わりにマッチを擦って火をつけ、放った
「ぎゃあああああああああああ!!!」
気化していたガソリンに引火し、虐待厨たちは火に包まれる
そいつらが全員絶命するのを見計らって、
女は消火器を使い火を消した
そして死体をゴミ袋に入れると乗ってきたワゴン車の後部に放り込み
自分も乗り込んでその場から去った

「また、か・・・!」
虐待厨の本部アジトは、支部がまた潰されたニュースで戦々恐々としていた
事件はすでに3年以上継続していた
警察の動きも鈍く、犯人はまだ捕まっていない
虐待厨に恨みがある者の仕業だと思われていたが
駆除組織をマークしても全くその犯行の動きがなく
ただただスパイとして潜入した虐待厨が殺されて消されるのを繰り返すだけだった
「あのアイゴどもじゃ無いとしたら、誰なんだ?」
虐待厨に恨みを持って報復に出る一般人は少なくない
しかし、犯行のどれもが素人のものではなかった
5分以内にアジトの規模に関係なく皆殺しにして
死体を残さず回収し、撤収する鮮やかすぎる手口
防犯カメラに映ったのは、「被虐生物」認定されている妖精の特徴である髪飾りを頭に付けた
レザースーツで全身を包んだ長髪の女だけだった
「個人でやるのは無理がある、フェイクだろ」というのが
その唯一の証拠に対する虐待厨たちの見解だった
「あのアイゴどもが何の関係もないわけがない!
よし、来週には奴らの巣に突撃するぞ!!」
虐待厨の長はそう締めくくった
その「来週にやる」という発言は実は先週も発せられていた
さらに、その先週にも
言うだけで実行しない、後回しになるうち会議の締めの定型句となっていたソレは
この時ばかりは違った
・・・・・・・・・
「来週には奴らの巣に突撃するぞ!!」
虐待厨の本部に仕掛けられていた盗聴器は
その発言をしかと拾い上げて駆除業者の耳に入れていた
「よく教えてくださいました、感謝します」
度々繰り返される虐待厨のスパイ行為に頭を悩ませていた
虐待厨駆除業者『ギャクバスター』の社長は、前の女性に礼を述べた
これだけの証拠があれば、依頼抜きで駆除作業ができる
駆除業者といえど企業という体裁である以上、
依頼などの理由なしで手当たり次第に駆除ができないのが実情だった
なお、彼女はこの企業の社員ではない、外部協力者だ
それも、このニュースをつい先ほど持ってきたばかりの
完全なフリーランスで報酬も最低限しか受け取らないことで知られている
名前のない女
ただ、虐待厨を見かけ次第に抹殺することで知られてもいた
かといって、それが憎悪に基づくものかというとそうでもない
彼女は確かに虐待厨を惨殺するが、機械的なものだ
時には、あっさりと虐待厨を殺すこともある
『ギャクキラーガール』の名前で
いつしか彼女は有名になっていた
「では、お願いします」
今日の彼女は依頼人だった
それも、ギャクバスターにとって渡りに船の獲物を狩る依頼だ
たとえ一円であっても引き受けていた案件を
女はものすごい高額の報酬を持ち出して申し込んできた
(さすがに法外なので、定められた金額のみ支払ってもらうことになったが)
「はい、お任せください!」

数時間後、虐待厨の本部アジトはギャクバスターにより全滅することになった
女はそれを遠くから双眼鏡で見届けると、興味を失ったように場を後にした
『ヒギャクセイブツは生きてちゃいけねーんだよ!』
『ヒギャクセイブツと仲良しとか、いけねーお嬢ちゃんだ!』
『悪い子悪い子悪い子』
まだ子供だった頃に家族同然の『友』を失った事件
それが女の一生の生き方を決定した
『虐待厨は生きていちゃいけない』、それが女の唯一の信条だ
だから、虐待厨は見かけ次第殺している
そいつが何をしていたか、何の罪を犯したかなど関係ない
一切悪さをしていなくとも問題ない
虐待厨というだけで、殺さなければならないのだから
それが正しいことなのだと、
あの日に虐待厨は教えてくれたのだから
「キリがないわね、ホント」
寡黙な女はワゴンに乗り込みながら呟いた
あの日、虐待厨の行動で生まれた
虐待厨を殺すため活動を続ける名前のない怪物
その頭には、あの日に失った『友』の形見が今日も揺れている

(おわり)

356黄金期の終わり 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/10/10(火) 18:09:53 ID:u0ldGTNY0
ここは、とある国のとある町
「撃て撃て撃て!」
「奴らは人ではない!
ダニ未満の害悪だ!」
マシンガンで武装した一部隊が集団を襲撃していた
よく見れば一方は人間ではない
人間に似た生命体『虐待厨』だ

どうしてこうなったのか、話は過去に遡る
ほんの一か月前まで、虐待厨にも人権はあった
しかしそれはあくまで『一線を越えてはならない』というルールを
虐待厨側が守っていたため辛うじて保たれていた慈悲だ
人々も虐待厨を嫌ってはいたものの、殺したいほど憎いかというとそうではなく
手さえ出してこないなら無視していた
近寄ってきても追い払えば良かった

しかし均衡は突如崩れた
「お前ら、アイゴなんかに従って悔しくねぇのか!?」
ある一人の虐待厨がリーダーとして台頭したのだ
その虐待厨は、かつての虐待厨の歴史を賛美していた
飼いに手を出し駆除されたというバカすぎる失敗なのだが
そのリーダー虐厨はその話を神格化し犯人を崇めていた
「あいつらなんか怖くねぇ!
オレが証明してやるよ!!」
こうして、終わりは始まった
リーダー虐厨は散歩中の人間を襲い『飼い』を殺した
それも非力そうな女子供を狙って
さらに、保護施設や研究所といった施設にもテロ行為を働いた
勇気づけられた虐待厨らも我先にと続いた

人々は彼らを認めていたわけではない、無視していただけだ
人々は彼らが自分たちに無害だと認識していたから放置していただけであり
面倒くさいものを遠ざけていた、ただそれだけのことだ
しかし、牙を剥いてくるなら話は別である
盗みだけでなく殺し、それも女性や子供を狙った悪質な犯罪行為は
瞬時に人々の怒りに火をつけた
 人々は虐待厨を嫌ってはいたものの、殺したいほど憎いわけではなかった
虐待厨が人間に手を出すその時までは

かくて人々に残されていた慈悲は霧散した
虐待厨は駆除対象として認識・認定され、虐待厨が知らない間に包囲は完成していた
「ヒギャクセイブツなんかと遊ぶ悪い子は」
パン!
「こちらベータチーム、子供を襲っていたムシを一匹駆除しました!」
人々を襲いに行った仲間が帰ってこないことに虐待厨らが気づいた時には
後の祭りだった
生け捕りにした個体から凄惨な拷問で口を割らせて引き出した情報をもとに
やがて、一斉駆除は始まった
人間を襲っていたとはいえ自分より弱い者たちにしか手を上げないクズどもが
日々の訓練で鍛え抜いた屈強な軍人に勝てるはずもない
たちまちにして、虐待厨は総崩れになった
一方的な虐殺の中でリーダー虐厨は捕らえられた
しかしそれで作戦は終わりではない
この作戦は『根絶』こそが目的だ
敵をせん滅し、初めて成功に終わる

害悪テロリストに認定されて3時間で虐待厨の一番大きな群れは終わった
リーダー虐厨は裁判にかけられた

判決は無罪
裁判長曰く
「この法廷は人間を裁く場であり、害虫を裁く場ではない」
リーダー虐厨は安堵の表情で勝ち誇り、罵詈雑言を吐き散らしながら
保健所へ送られた
自分が自由の身になると最期まで信じていたそうだ
その『処理』は裁判を含め全国ネットで中継された
虐待厨は、ようやく自分たちの置かれた状況に気が付いた
だが、もうどうすることもできない
人々の怒りは憎悪は、大きく燃え上がり世界中に燃え広がっていたのだ

357黄金期の終わり 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/10/10(火) 18:12:14 ID:u0ldGTNY0
その後の一か月間で国中の虐待厨が同じように駆除された
軍人だけでなく一般市民による駆除も推奨され、
死体を持って保健所に行けば報償が貰える仕組みがいつしか出来上がった

冒頭に戻る、最後の群れが軍に追われているところだ
この群れのリーダー虐厨は『無間地獄の刑』を言い渡され、人々が好きな時に好きな苦痛を与えられるよう
虐厨の醜悪さ害悪さを記録した記念館の中で生かされ続けている
奪還計画はない、そんな余裕などない
本気になった人間たちを前に割り算や乗数の逆のような絶望的な減り方をした虐待厨は
いつしか自分が生き残ることに必死になっていった
「行けえ!」
「いやだぁ!!」
現に、この非常事態の最中にもかかわらず、虐待厨は別の虐待厨を捕まえて
部隊のほうに放り投げようとしていた
強い個体は弱い個体を放り投げる、自分だけでも助かるために
当たり前だが、それは単なる寿命の先延ばしに過ぎない
それもほんの数秒である
「待ってくれ、降伏する!」
両手を上げて立ち止まる虐待厨が現れだした
しかし返答は決まっている
鉛玉だ
ゴキブリをわざわざ捕虜にする駆除業者などいない
「クリ・・・?」
言いかけた兵士は気づいた、すぐ横に倒れている虐待厨が動いたことに
『オレは死んでるぞ、早くどっかに行』
パン!
「クリア!」
頭を撃ち砕き今度こそ兵士ははっきり宣言した
わずか3分で虐待厨の最後のグループは消された

それからさらに半年が経過した
その頃にはもう、虐待厨の中に過激な行為をしようと思う者はいない
テストに失格した許可証無き者は生存権すら無いからだ
人々どころか「ヒギャクセイブツ」も襲わない
居住を許された場所は厚く高い壁に囲まれ、その中には虐待厨しかいないからだ
壁の外に出たいと思う者は少なくない
しかし、口に出しただけでも警備ドローンに聞かれてしまえば
すぐに駆除ドローンが駆け付けてそいつを駆除した
虐待厨は壁の中に入ることは許されても出ることは許可証があっても決して許されない
人々は彼らが犯した罪を決して忘れないからだ
「オレたちの権利は、どうなっちまったんだ?」
そう問いかける虐待厨もいたが、その答えは「自分たちで勝手に手放した」としか言えない
ついこの前までは確かにあった自由も人権も、今の虐待厨の手には無い
いつしか当たり前の自由と人権があった時代は『黄金期』と呼ばれ
害虫未満に身を落とした虐待厨たちは、
ずっとその過去を振り返り渇望しながら生きていくことになる

自分たちが手放した、二度と帰らない「この世の天国」だった時期を

(終わり)

358未知との初対面 1/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/12/08(金) 16:37:55 ID:WwJCOI6Q0
虐待厨の虐史は閻魔大王の前にいた
彼は言うまでもなく死んでいた
しかし、罪状が異常だった
「どういうことだ?」
虐史は閻魔に問いかけた
「身に覚えがない、と言いたいのか?」
閻魔大王は虐史を見下ろしながら言った
その恐ろしい顔と巨体は恐怖の対象ではあるが
それが気にならない程度のことが虐史に起きていた
「被虐生物なら飽きるほど殺したことは認めるよ
けどな
『地球上の人類をすべて殺した』とかありえねーだろ!?」
そう、虐史にかけられている嫌疑というか罪状は
『人類抹殺』だった
閻魔大王は顔をしかめた
この男は嘘を言っていない
しかし罪は事実だ
「いいだろう、これを見るがいい」
そう言って閻魔大王は巨大な鏡を指さした
そこには生前の虐史が映っていた

「お、珍しいのいるじゃねーか!」
虐史はその日、虐待対象を物色して街を歩いていた
変わった小さい生物を見つけたのは
その日の夕方ごろだ
ピンク色の、フワフワした生き物
親子なのか、二匹が並んで散歩していた
普通なら愛でる対象であるはずのそれを
「ひゃっはー!!」
虐史は踏み潰した
「ピィ!」
それだけで死ななかったのか、悲鳴を上げて訴えるが
「おら!」
トドメとばかりにその生物を踏みにじった
「びーびー!」
「お前もだよ!」
抗議の声を上げた親らしい一回り大きな個体には蹴りを見舞った
「ガガガガガガガガガ!!」
生き物にはありえない電子的な発声をした後で
それは溶けた
「くたばったかwざまあw
さーて、まだそのへんにいるかな?w
アイゴどもに見つかる前に絶滅させてやるwww」
映像は虐史の後ろ姿を映すが、まだ終わらない
虐史が去っていった後、あの生物の死体を映し続けている
突然、その死体が起き上がって空中に浮かび、合体した
それは、真っ赤に点滅しながら空に浮かんでいった
一定高度まで浮かび上がると、停止して点滅を継続する
「よく見るんだな、自分がしでかした事の顛末を」
閻魔大王がそう言い終わった直後
すべてが変わった
人間だけじゃなく、動物も植物も
すべてが消えた
アリ一匹、画面内にいない

359未知との初対面 2/2 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2023/12/08(金) 16:38:51 ID:WwJCOI6Q0
「分かりやすくしてやる」
さらに場面は移り変わる
宇宙空間、そこに浮かぶ球体に画面が近づいていく
「第三惑星の浄化、完了しました」
「宇宙に出てくる前に始末できてよかった」
「もしも出てきていたら、我々も無事では済まなかったでしょうね」
見たこともない異形たちが、球体の中でそんな会話をしていた
それが、彼らの船なのだと虐史にも分かった
「これで、自分が何をしでかしたか理解できたか?」
声とともに映像が終わり鏡が元に戻る
「お前が攻撃した生物は、あの異星人たちのテスト用のロボットだったのだ」
知的生命体を察知したら、ドローンを送り込む
その科学力を調査し、性格を傾向を徹底的に調べる
自分たちに危険な行為をする奴らが出てくる前に、その芽を摘むために

「け、けど、こいつはオレじゃなくて
この宇宙人どもがやったんでしょ?」
その一言を発した次の瞬間
虐史の足元が消えた
「救いようのない罪人め
貴様は二度と現世には戻せぬ
無に帰るまで無間地獄に居るがよい!」
落下していく虐史の耳に無情な裁きが聞こえた

長い年月が経過した後
虐史は地面に叩きつけられた
周囲を見ると、見覚えのある顔がいくつもあった
そのどれもが苦痛に満ちた表情を浮かべ
断末魔に似た叫びをあげる
虐史が目の前にいても、気づく様子はない
「おい、何をしているんだ?
お前はこっち」
やがて虐史もその仲間に入った

途方もない年月、宇宙が何周かしたのではないかと疑うような長い長い時間
虐史たちは、ずっと責め苦を受け続けることになる

無に帰るその日まで

(おわり)

360推しの卵 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2024/01/08(月) 22:46:06 ID:rK3PGMA60
その妖精は町のアイドルだった
ある日、妖精は卵を産んだ
町の住人は喜び、その誕生を見守っていた
その日までは・・・
「みい!!」
朝早く、妖精の鋭く大きな声が響いた
住民たちは顔を見合わせ急いで妖精が住んでいる広場に駆け付けた
すると、その場で一人の虐待厨が妖精から卵を取り上げていた
「ラッキー、こいつは高く売れるぜ」
このバカはこう言っているが、
妖精の卵の取引や密猟はこの国では固く法律で禁じられている
発覚すれば実刑判決は免れない
むろん、虐待厨はその場で人権が停止されるので処分も許される
「おいやめろ」
しかし、住人たちはとっくに人権が停止したそいつに律儀に抗議した
「かわいそうでしょ!」
「返してあげて!」
その場で射殺することも許されている相手に対して
住人たちは、とっくに停止した権利がまだあるかのように人としての扱いを行った
「ち、分かったよ」
自分があり得ないほどの優遇処置を受けたというのに
虐待厨は不貞腐れた顔をして妖精に卵を差し出した
妖精は嬉しそうに両手を差し出す
「返すぜ!」
「ぎゃあ!!」
虐待厨は妖精めがけ卵を投げつけた
卵は割れなかったものの固い地面にぶつかってバウンドし、親である妖精に激突する
「何しやがるてめぇ!!」
住人の一人はついに激怒し虐待厨を殴り倒した
他の住人たちは妖精の周囲に集まり介抱を始めている
「なんだよ、返してやっただろ!」
虐待厨は抗議の声を上げたが、それは火に油を注ぐだけだ
「あんな返し方があるか!!」
「人でなし!!」
「なんだとアイゴども!!」
虐待厨と住人の口論が始まって数分後
殴り倒した住人がマウントポジションで倒れた虐待厨の顔面に拳を落とし続ける中で
卵にひびが入った
「卵が割れたらそいつを殺そうか?」
「当然だ、こいつに生きる権利はもうねぇ!」
その場で当然のように出た死刑宣告を、虐待厨は信じられないという顔で聞いた
本来ならとっくの昔に出ているものであり
今この場でまだ生きていること自体が住人たちの恩情であるなどとは
微塵も思っていない
「みぃ・・・」
弱々しい産声が聞こえた
「おい、生きてるぞお!!」
住人たちは歓喜した
虐待厨を放り出して全員が卵と妖精の周りに集まる
やがて、卵から小さい妖精の赤ん坊が出てきた
しかし・・・・・・・
「ギ、ジ・・・・・・」
卵から這い出た後、その命は失われた
叩きつけられた時すでに致命傷を負っていたのだ
それを見た親の妖精もまたショクで絶命した
人々は嘆き悲しんだ
そんな人々に虐待厨は
「ざまぁw」
嘲笑を投げつけた
さっさと逃げればいいのにその場に留まり続けたことが、運命を分けた
振り返った住民全員が鬼の顔をしていた
虐待厨はようやく事態を悟って逃げようとしたが、時すでに遅し
「捕まえたぞ!!」
住人に服の裾を捕まえられて虐待厨は引き戻された
「こいつめ!こいつめ!!」
今度こそ住人たちは虐待厨を取り囲んで袋叩きにし始めた
「この棒の先に生首刺して晒そうぜ!」
「いいアイデアだ!!」
一人が持ってきた廃材の棒を前に住人たちは同意した
「な、なに言ってんだよ
悪い冗談は・・・」
まだこの期に及んでも自分が殺されないなどと夢見ていた虐待厨は
直後に現実を見た
「いぎいいいいいいいい!!
ちぎれる!
首がちぎれる、やめろおおおおおおお!!」
力任せに胴体と頭を掴まれ、反対方向に引っ張られる
「千切れるじゃねぇ、千切るんだよ!!!」
「死ねや害虫!!」
数分後、大きな音を立てて虐待厨の首と胴体は永遠に分かれた
「あの子に手を出したバカの末路はこうだ!!」
宣言通り虐待厨の断末魔の苦悶の張り付いた生首は目立つ場所に晒された
「よくもあの子らを殺したな!!」
「いい気味だ!!」
「これで、浮かばれるといいな」
誰もがその虐待厨の生首に憎悪と怒りをぶつけた
そこへ・・・・・・
「ひでぇ」
「たかがヒギャクセイブツのクソベビ一匹に
そこまでムキにならなくても・・・」
通りすがった別の虐待厨たちがそうつぶやき、そそくさと場を後にした
それを、一部住人は聞き逃さなかった

3日後
さらに多くの生首がそこに晒された
その時には町に生きている虐待厨は一匹もいなくなっていた

(おわり)

361地獄すごく変 1/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2024/03/28(木) 00:15:03 ID:y9hW/aws0
その日
「主文、被告を死刑に処す!」
虐厨の虐蔵へ、至極まっとうな判決が下った

「けっ、この国はクソだ!」
虐蔵は囚人護送車の中でつぶやいた
自分はただ『ヒギャクセイブツ』に本来の扱いを、
それを可愛がる間違った子供に「正しい教育」をしただけなのに
こんなことは間違っている
虐蔵は本気でそう思っていた

「こいつか、今日来る予定の児童殺傷犯とかいうのは?」
虐蔵は目を丸くして相手を見た
男の服装から看守だろうというのは分かる
だが、首から上は人ではない
鬼だ、しかしよく見るとそれはお面だ
今はハロウィンの時期じゃないし節分はとっくに過ぎている
何かイベントがあったかと、虐蔵は頭をひねって考えた
「確かに引き取りました、あとは任せてください」
「ええ、お願いします」
格好とは裏腹に、ものすごく丁寧かつ礼儀正しく
看守は警察から虐蔵を引き取った

「来い」
ただそう言われて虐蔵は看守の後を歩く
逃走防止の二重のドア、さらに向こうの頑丈な防音のドアをくぐる
その先には長い廊下が続いていた
「ぎゃああああ!」
虐蔵は逃走防止の手錠だけでなく、首には鉄の首輪がされ
「ひいいいいいい!」
それにつながれた鎖は看守の手の中だ
「ゆるじでえ、ぐあああああ!」
だがそんな事はどうでもいい
ある程度の広さの廊下を二人は歩いていた
その廊下は、左右の部屋から響く悲鳴で満たされていた
部屋と廊下の間は強化ガラスで仕切られているため、中は見えた
巨大な包丁で切り刻まれる者
体に描かれた線に沿って刃物を入れられる者
刃物が刺さった山に鞭で尻を叩かれ登らされる者
煮えたぎった赤い湯のプールに落とされ棒で叩かれ続ける者
思い描いていた刑務所とはまるで別の世界が、そこにあった
「お、おい、ここはどこだ?」
私語を慎めと怒鳴られることも覚悟していたが聞かずにいられない
予想外にも、看守は虐蔵の問いかけに怒らず答えてくれた
「どこって・・・見りゃわかるだろ
地獄だよ」
確かに見れば分かる
だが、虐蔵はそんな事を聞きたいわけじゃない
「ここは、刑務所じゃないのか?」
「だから、刑務所で地獄だよ」
看守は一呼吸おいてから続けた
「オレたちの仕事はお前を殺すことじゃない
痛めつけ苦しませることだ」
虐蔵は、わずかな法知識を手繰り寄せ反論を試みた
「死刑判決は、どうなるんだ?」
「ああ、どうせここから生きて出ることはできねーから
実質死刑で合ってるぞ」
「拷問は法律で禁止されてるはずだ!」
「てめぇ、まさかまだ自分が人間だと思ってんのかい?」
看守は心底呆れたことを隠さずに言った
「お前の人権は、とっくに無くなってるんだよ
いや、『自分で捨てた』が正しいか?」
問答をしている間にも、歩みは進められる
恐ろしいのは、奥に行けば行くほど責め苦の内容が
よりエスカレートしている事だった

362地獄すごく変 2/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2024/03/28(木) 00:15:53 ID:y9hW/aws0
大きな串に刺され生きたまま火に炙られている者
裸で氷の世界に放り込まれ、看守が談笑している温かい室内を見せられる者
温かい食事を仲間と談笑しながら頬張る看守たちを
強化ガラス越しに見せられる、ガリガリに痩せこけている者
火炎放射器を持った鬼看守に炎で炙られ追い立てられる者
「地獄か、ここは・・・」
虐蔵は絶句して思わず呟いた
「言っただろうが、地獄だと」
同行している看守は呆れ気味に答えた
「あの、オレ、どこに行くことになるんですか?」
虐蔵の願いは、「できるだけ軽い部屋に入れられること」に変わっていた
もしも仏教に詳しい知識があったら、それは叶わぬ願いだと悟れたはずである
各部屋のガラスの前のプレートには、対応する仏教の地獄の名前が書かれていた
それは刑務所の入り口から奥に行くにつれ、重い地獄の名前になっていた
「安心しろ、もう着いたぞ」
そう看守が言った時には、彼らは廊下の奥の端に着いていた
「失礼します」
看守はノックをしてからドアを開ける
その向こうには白衣の人物が数人いた
「お疲れ様です、いつもありがとうございます」
「いえいえ、仕事ですから・・・」
そんな会話を聞きながら虐蔵は身震いしていた
どこの部屋に入れられるのか、まだ答えを聞いていない
「すいません、オレの部屋は・・・」
「ここだよ」
看守は答えた
虐蔵は胸を撫で下ろした
少なくとも先ほど見てきた責め苦は受けないで済みそうだ
そう思っているが、しかし
『無間地獄』というプレートがその部屋のドアにあるのを
虐蔵は見落としていた
「ではまず、耐久テストから始めよう」
「え」
看守の代わりに屈強な男が進み出て虐蔵の腕をつかんだ
「来いよ、ここに来たってことは相応の罪を犯したんだろ?
だからオレたちは容赦しねぇ
てめぇが奪った命に詫びろ、できる限り長く生きて償え!!」

363地獄すごく変 3/3 首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2024/03/28(木) 00:17:36 ID:y9hW/aws0
『無間地獄』または『阿鼻叫喚地獄』
地獄の最下層に位置する、最も重い罪を犯した罪人が落ちる場所
虐蔵が来たのは、まさにそこだった
ただし悲鳴は無い、いや、出せない
「実験動物に声はいらないな」「うるさいだけだしね」
真っ先に声帯を切除されたから
そこから先は、見てきたことがましと思える地獄だった
切り刻まれては治され、毒を投与されては解毒剤を打たれ
臓器を取り出されては別の臓器を移植され・・・
おおよそ人道に反する、あらゆる実験・研究がそこで行われていた
しかし虐蔵は虐待厨だ、それも死刑囚の
よって人権はすでに停止している、だから問題ない
「ったく、変なクスリばらまきやがって馬鹿どもが・・・」
「作った奴らの人権は、すでに停止したそうだ
じきにここに来る日も近いだろう」
「そっかそっか、じゃあアイツラで実験できるかもな」
虐待厨が『ヒギャクセイブツの駆除』を目的に定期的に薬剤を散布し
生態系に深刻な打撃を与えたり、人々やそのパートナーに害をなす事態が続出
深刻化していた
ここができたのも、そういう裏の事情があったためだ
そして職員のほとんどは、虐待厨による被害者である
パートナーを殺される、肉親に手を出されるなどされた者も少なくない
だからこそ、研究者や職員は虐待厨を人として見ることはない
人語を話すだけ、人に似ているだけの危険な動物というのが共通認識だ

虐蔵は10年以上も実験や研究に身を捧げた後、
死ぬことすらできない状態で『ストック』に固定された
ただ生かされるだけ、動くことすらできない毎日
唯一彼がここから出ることができる可能性は、
停電による生命維持機器の停止だったが
あらゆる可能性を想定し自家発電システムまで完備したこの施設で
それはあり得ない
「殺してくれ、おれを、ころしてくれ・・・」
前を通る職員に声を出せないまま、虐蔵は今も訴え続けている

(おわり)

364虐の勝利者 1/2  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2024/05/22(水) 20:54:06 ID:gSSYnZ6Q0
虐成は虐待厨だ
しかし、他の個体よりも頭が良かった
拾ったノートPCで違法にネットをつなぎ動画を見たことで
彼の人生は変わった
「こんにちは、虐成神で〜す!」
彼は今や虐待動画の投稿者として名を馳せていた
実装石・ゆっくりetcと、対象は多岐に渡った
たまに外に出て『狩り』の生中継をすることもあった
当たり前だが、その目立ちたがり精神は彼の寿命を縮めた
映像からおおよその場所は特定され
『狩り』の最中に彼は捕えられ連れていかれた
これは、史上稀にみる『勝利者の虐待厨』の末路の物語である

「貴様のせいで、多くの罪なき命が失われた」
「希少種の中には、地域絶滅が確認されたものもいる」
「迷子の妖精や”飼い”たちまで手にかけていたな?」
「手にかけた命や、その遺族に対して申し訳ないと思わないのか?」
連行された先で早速、虐成は取り調べを受けた
虐成はしかし、胸を張って答えた
「ば〜っかじゃねーのwwwwwww
アイゴがいくら苦しもうと知ったことかwwwww
むしろゴミの駆除に貢献してやったんだ
ありがたく思ってほしいわwwwwwww」
いつもなら、ここでキレた虐厨ハンターが死ぬまで続く拷問を開始するが
今回は違った
それは、虐成がしでかした犯罪の種類が大きく関与していた
「貴様のせいで、泣いている遺族は少なくない
貴様のせいで、生き甲斐を失い自ら命を絶った人もいる」
「新しいペット買えよwwwww
そいつの惰弱はオレのせいじゃびょ!!」
とうとう我慢の限界に達した一人の拳が虐成の左頬を抉った
「よせ!!」
しかし、手を出した男を仲間と上司らしい男が制止する
「・・・・・?」
男は渋々、手を引っ込めた
虐成は訝しんだ
虐厨ハンターは、そんな甘い連中ではないはずだ
虐成ですら、こいつらを返り討ちにしない限り
生きて出ることはできないと覚悟してきている
(もちろん返り討ちにする覚悟のほうだ、殺される覚悟などしていない)
「アカウントの情報をよこせ
お前が広めた情報はすべて消す必要がある」
そろそろ部下たちも限界だろうと踏んだ上司らしい男は
そう切り出した
虐成がすぐに殺されない理由は、これだった
アップロードされたサイト運営に連絡しても、すぐに対処というわけにはいかない
当人のアカウントを利用して削除するのが一番早い方法なのだ
「これは、司法取引だ
素直に応じるなら減刑してやってもいい」
虐成の拡散した動画の影響はすさまじかった
それまで禁忌とされていた『飼いへの手出し』すら、今では平気で行われている
どころか、『ヒギャクセイブツ』に関与した人間への手出しまで起きており
死傷者がすでに出るなど、事態は深刻化していた
(もちろん、犯人虐待厨は捕獲後に嬲り殺しが作法とされている)
しかし、虐成は自分が有利だと知るや否や、こう切り出した
「へ、へへ、動画はもう拡散しまくって消せないもんね
オレの勝ち〜!」
虐成は自分のアカウントだけでなく、あちこちの無料サイトにまで
動画をアップロードしていたのだ
「つまり、生かす価値はもうないってことか」
絶対零度
声を上げた男の言葉の温度はまさにそれだった
「てめぇが選んだ道だ、楽に死ねると思うなよ?」
「あーあ、せっかく生きて出られるかもしれなかったってのにな」
虐成は自分の発言が何を招いたかを、理解した
すがるように男たちの上司を見たが
上司は首を横に振った
「好きにしろ、ただし殺すなよ」

365虐の勝利者 2/2  首おいてけ濠 ◆vBEOnE9fo2:2024/05/22(水) 20:57:46 ID:gSSYnZ6Q0
虐成はあらゆる拷問を加えられ、ボロボロになった
虐成が拷問されている間もサイト運営会社への連絡や
虐成のパソコンを解析しての履歴の確認といった作業は進められた
しかし・・・・・
「分かった、お前の勝ちだ
オレたちはお前を殺すことを諦める」
一度拡散された情報は消すことは困難だった
「アイゴざまあああああああああああああwwwwwwww」
ボロクズ虐成は高らかに勝ち誇り、部屋中に虐成の笑い声が響いた
「その元気があるなら、まだ延命処置は可能だな」
部下たちに班長は冷静に告げた
「すべての動画を消し終わるまで、こいつを生かす」
「そういうことですね、すぐ用意します」
部下たちは皆、笑みを浮かべた
「は・・・?」
虐成は虐待厨だ
しかし、他の個体よりも頭が良かった
だから、言葉の意味を察するアタマはあった
「長生きしてくれよ、天才サマ?」
班長は満面の笑みで虐成に言った

あれからどれだけの月日が経過しただろう?
一年か、三年か・・・
それとも十年か?
虐成は一つの部屋の頑丈なベッドに縛り付けられていた
股間は排泄物を処理する装置につながれ
口からは訳の分からない、しかし栄養はあるドロリとした液体を管から流し込まれる
誤嚥を防ぐために管は直接食道に縫い付けられていた
両手足には点滴と輸血の管が刺されており、
髪の毛を含む体毛はすべて剃り落とされ永久脱毛処理済みだ
自殺を防ぐために舌は切除され歯もすべて抜かれ
さらに人工呼吸器まで取り付けられていた
「ぶぐおおおおおおお!!」
そして、時折激痛が虐成に走る
その原因は、体のあちこちに刺された針と
それにつながった管だ
管はそれそれが対応するボタンに伸びていて、
ボタンを押せば電流が流れ好きな部位に激痛を与えられるという仕組みである
技術革新が起きるたびに各装置は最新のものにされた
長い年月が経ち、拷問班も顔ぶれが次々と変わった
しかし虐成は変わらず縛られたまま痛めつけられ続けていた
「班長、例の動画が見つかりました」
「分かった、また十年ほど延命中止を延期するとしよう」
虐成自身が言ったとおりである
一度ネットに出たものはすぐには消えない
だから完全に消すのは不可能だ
そういうわけで、虐成はずっと生かされ続けている
「殺してくれ」と懇願することも舌を失った今はできない
自ら死ぬこともできない、そもそもここの者たちは許さない
唯一の望みだった「寿命」も、虐待厨の寿命を延ばす薬のせいで断たれた
皮肉にも、その薬の開発者は長生き願望を持つ虐待厨だった

いつしか、虐成は施設に常備されている名物となった
「こいつ、ずっと置きっぱなしですけど、なんすか?」
「さぁな、オレが新人の時からずっと置いてあるぜ」
虐成は、あらゆる実験が終わった後は、職員のストレス発散のおもちゃにされ
そしていつしか飽きられた
長い時間が経ち、いつしか彼が起こした事件は過去のものになった
彼のことを知る職員も、いなくなった
やがて・・・
「先輩、例の動画拡散事件が解決したらしいっすよ」
ついに虐成の待ち望む時は来た
部下へ後輩へ受け継がれてきた草の根活動が実を結び
虐成が拡散した動画が奇跡的にすべて削除完了したのだ
これで、楽になれる
虐成はそう思った
「いやぁ、本当に長かったわね」
しかし、職員たちは談笑しながら虐成からフェードアウトしていった
そう、もはや虐成がどうしてそこに居るのかも忘れられていたのだ
よって、動画の完全削除が為されたとしても
彼をこの世から解放する職員は、いない
ずっとそこにあるのが当たり前になっていたため
『目障りだけれど、管理しておかないといけないもの』という
惰性もすでに出来上がっていた
ここの職員は虐待厨に深い恨みなり嫌悪なりがある者ばかりだが、
かといって私情で施設の備品を壊すほどのバカはいない
ましてそれが長年施設に置かれている記念碑のような備品となれば、なおさらである
時代は進み、虐成のような境遇の虐待厨も増えていった
技術も進歩し、虐成らの世話はAIが全自動で行うようになった
そこにある理由も忘れ去られ、虐成は施設に生かされ続けた
彼らが楽になる時は
人類が滅びAIがすべて停止した時くらいだろう

(おわり)


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